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コーヒーにスプーン一杯のミステリーを

オリジナル小説ブログです。目指しているのは死体の転がっていないミステリー(たまに転がりますが)。掌編から長編まで、人の心を見つめながら物語を紡いでいます。カテゴリから入ると、小説を始めから読むことができます。巨石紀行や物語談義などの雑記もお楽しみください(^^)

 

☂[4] 第1章 同居人の留守 (4)(改) 

 数日前から酒の量が増えている同居人の顔を窺うと、今日も決して気分快晴とはいかないように見えた。
 つまり、女を抱いているような気分にさせる上品なコニャックではなく、今日はそういう気分なのだと言いたいのかもしれない。

 いや、やはり去年の秋以来だ。
 同居人は時々何もせずに考え込んでいることが多くなった。寝ている間は別にして、あるいは仕事にかかる前に絵やその他の美術品を前にして考え込んでいるときを別にして、時間を無駄に過ごすことが少ないように思える男が、何もせずテラスで座っていることが多くなっていたのだ。

 時々、真が気になってテラスに出ると、同居人は何も言わずに五角形の空を見上げている。
 そして、他人行儀な口調で、今夜は月が綺麗ですね、と言う。真が意味を理解できずにガーデンテーブルの向かいに座ると、同居人は木の椅子に深く背を預けた。
 ぎっと、木の合わせが擦れあった音がする。

『I love youって何て訳すか知ってるか?』
 また下らない薀蓄を話し始めるのだろうと、真は返事をしなかった。
『明治時代の日本では『愛している』という訳はなかったそうだな。夏目漱石は、月が綺麗ですねとでも訳すか、と言ったらしい。あなたなしでは生きていけない、と訳した詩人もいたそうだ』

 月が綺麗だなんて言われても、聞いたほうに想像力がなかったら聞き流してしまう、と真が言うと、同居人は真の方を見ないまま、僅かに微笑んだように見えた。
 珍しく真剣な恋でもしているのだろうか、それとも昔の叶わなかった恋でも思い出しているのだろうかと思ったが、追求してもまともな答えが返ってくるとは思いがたく、真は月を見上げる。五角形の空に、ひと際大きく、月が輪郭を浮きたてるように香っている。
 何かを聞いておかなければならないような気がするのに、言葉にならない。あの秋の日以来、真のほうもずっと身体の奥のほうに吐き出せない何かを抱えていた。

「また出掛けるのか」
 やっと形になった言葉は、分かりきったことで、今聞いておきたいことではなかった。
 一番大事なことを聞こうとすると、拙い事態を引き起こしかねないと本能的に感じている真は、今日もまた、当たり障りのない話題のほうに逃げた。
「あぁ」
 返事は短かった。

 同居人はチェアに座って、アルマニャックをグラスに残った半分ほど一気に飲んでしまうと、大きな手のひらの上でグラスを揺らせた。その琥珀の中に、幾つかの曖昧な光が浮かんでは小波のように姿を変えている。
「珍しく、乗り気がしないようだな」
「いつだって乗り気なわけじゃないさ。お前をひとり残していくのは心配だからな」
 基本的に同居人が心配しているのは、真の食事なのだ。
 もっとも最近は『大家さん』のいない間は私に任せなさい、という気合の入った事務所の『秘書』のお蔭で、それほどひもじい思いをしないで済んでいる。
 
 秘書の女の子が同居人の事を『大家さん』と呼んでいるのは、真と同居人の関係を疑う彼女に、恋人ではなく大家のようなものだと真が言ったからだった。
「どのくらい帰らない?」
「一ヶ月くらい、かな」

 あっさりとした返事の割には長い期間に、真は次の言葉を飲み込んだ。
 しばしば一週間単位では家を空ける男だったが、一ヶ月などという期間を聞いたためしがない。真は、もう一口アルマニャックを飲んだ。突然口に含むと、強烈なアルコールが舌を刺す。
 その勢いで、真は尋ねた。
「どこに行くのか、聞いてもいいのか」

 同居人は真の顔を見た。
 その青灰色の深い瞳の色を見ると、真は時々わけもなく不安になる。胸の内のどこかをかき回されるような気がする。深く重い海の色は、真の側頭葉のどこかに刻みつけられた北の海と同じだった。
 幼い頃、溺れかけた海の深みから見た光の色、それは手が届きそうで届かない、摑みかけると姿を変えてすり抜けていく揺らぎのようだった。
 同居人の数多いる恋人たちは皆、その光を何とかして摑みたいと願っているだろう。

 同居人の恋人が本当は何人いるのか真はよく知らない。
 このマンションの上の階に住んでいるブティックを経営している美人はその一人だが、真が顔も名前も知っている相手は彼女くらいだった。
 真と同居してからこの男が恋人たちにどのくらいの時間を割いてやっているのか、それを考えると真は彼女たちに恨まれているかもしれないと思う時がある。

「遠くには行かない、そのつもりだ」
 そう言われてしまうと、やはりそれ以上は聞けなかった。
「深雪さんに頼んで一緒にいてもらうか」
 期間が長いことを気にしたのか、同居人はさらにそう続けた。

 真は、突然降って湧いたような名前の意味をぼんやりと考えた。
 真の方から話したことはないが、この男が真の生活の一部始終を摑んでいたとしても、特別驚くことはない。だから、その女の名前が出ても真は不思議にも思わなかったが、腹の奥のどこかで何かが奇妙な重みを増した気がした。
 それは単純に、真がここ何年かベッドを共にしている唯一の女の名前だったからなのかもしれない。

「余計なお世話だ」
「美和ちゃんにも言っといてやるよ。尤も、どっちも他人の女だ。気をつけたほうがいいぞ」
 最後のほうは、この男らしい冗談を含んだ小気味いい調子だった。
 真はやっと会話のペースが彼らしくなったことにほっとして、あるいは自分が触れてはいけない不機嫌のスイッチを押さなかったことに安堵して、会話を繋いだ。

「人のこと言うより、自分の心配をしたら」
「俺はお前と違って、ちゃんと限度を知っているし、幸い逃げ足も速い。女たちも俺に要求してはならないことや、要求しても仕方のないことを弁えている。お前はその辺、器用とは言いがたいからな、俺のいない間に痴情の縺れで刺されたりするなよ」
 同居人はいつもの茶目っ気のある口調になっていたが、真は咽元で引っかかっている何かがどうしても取れずに気になり、また同居人の顔をちらりと見た。
 その瞬間、あまりにも綺麗な顔でこちらを見ている同居人と予想外に視線が合って、真は思わず頭の隅にあった常套句を口に出していた。
「そっちこそ、人の心配してないで無事に帰って来いよ」
 真が珍しく優しいことを言ったので、結局それが仇になってしまった。

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Category: ☂海に落ちる雨 第1節

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☂[3] 第1章 同居人の留守 (3)(改) 

 同居人はその時、食い入るように新聞を読んでいた。
 真が傍に行ったのも気が付かずに新聞を読んでいることなど、後にも先にもあの時しか記憶にない。真が声を掛けると、同居人は慌てたように新聞を畳んだ。
 後で確かめた、同居人の視線の先にあった新聞記事には、つい先月にローマ教皇となった教皇が急死し、新しい教皇が誕生したと書かれていた。ヴァチカン始まって以来のスラブ人教皇は一九七八年十月二十二日に、戴冠式を行わず教皇就任式を執り行っていた。

 同居人の故郷での新聞記事だから、とその時は考えたが、あれほどに薀蓄を語ることの好きな男にしては珍しく、何の解説もなかったし、その後それについての話題が出たことは一度もない。
 もしかすると、夜中にかかってくる電話の数が増えたのは、あれ以来かもしれないとは思うが、電話についてはそれほどはっきりとした記憶が残っていたわけでもなかった。

 同居人の仕事が、時にはあまり安全とは言いがたい事は知っている。真は女でもないし、心配して待っているような性質でもないが、あの時から、腹の底から何かが突き上げてくるような痛みが湧き起こり、不意に耐えられない瞬間が襲ってくるようになっていた。

 同居人が留守にしている時、ふと何かに呑みこまれそうな感じがして目を覚ます。いつもなら自分の左隣にあるはずのものがそこになく、大きな空洞を感じる。それまでは、一人でいることを淋しいと思うことはあっても恐ろしいなどと思ったことがなかったのに、真は恐ろしいと感じた自分に驚いた。
 もしも帰って来なかったら、と思ったのだろうか。
 多分そんな理屈ではなかった。ただ、傍にいるはずのものがいないというそのこと自体に、恐怖を感じたのだろう。

 女だったら行かないでとすがったりもできるかもしれないが、そんな単純にはいかない。そもそも世間はそう思っているかもしれないが、真と同居人との間にいわゆる恋人同士の関係が成立しているわけではない。
 もちろん、恋人同士だからといって、相手の心の全てがわかるものでもないし、相手の人生の何もかもを所有できるわけでもない。だが、恋人という肩書きのほうが、ただの同居人よりは余程拘束力のある関係に思えた。

 六月になろうというのに夜の風は薄着には冷たく感じた。
 北海道育ちの真に、東京の夜の風が寒いなどというはずもないのだが、ビル風や都会独特の気象に色づけされた風は北海道の牧場にはないものだった。だが、今日の場合は数日前まで熱を出していたからかもしれない。

 子供の頃からよく扁桃腺を腫らせては三日ばかり高熱を出した。
 真を引き取った祖父母はこの身体の弱い子供がまともに育たないのではないかと心配していた。大人になってその頻度は減ったものの、時々都会の空気を拒否するように、身体は何かに反応して馬鹿みたいに熱が出る。

 煙草の半分が灰になってしまった時、洗面所の近くのドアが開いた。
「お前、また熱がぶり返しても知らんぞ」
 外国人とは思えない練れた日本語を話す長身の同居人は、一応日本人の真がパジャマでいるのに、本人はガウンのように着物で寝ている。これを縫ったのは真の祖母で、同居人がそういう生活習慣であることを喜んで腕前を披露している。
 真は返事をしなかった。同居人は無造作に欠伸をして真の傍までやってきた。

「中に入るか、上に何か着ろ」
「吸い終わったら中に入るよ」
 それを言い終わるか終わらないうちに、同居人の手が真の口元の煙草を取り上げて、手すりで揉み消してしまった。
「中に入れ」
 吸殻を持って、同居人はダイニングのほうの扉から中に戻った。いつも通りの鳴かぬなら鳴かせてみせようの精神だ。真には逆らう隙もない。
 真は仕方なく後に続いて中に入った。

 ダイニングに柔らかい照明を灯して、同居人は小さめのブランディグラスを二つ、テーブルに置いていた。
 二人のためにあるとは思えない、大家族のためにこそ作られたような大きなガラスのテーブルは、イタリア人の芸術家に相応しい洗練されたデザインで、二面はゆったりとしたL字型の薄辛子色のベンチに、あとの二面には洒落たデザインの、しかし座り心地の滅法良いチェアに囲まれていた。

 穏やかなオレンジの光を和紙で包み込んで、天井にぼんやりとした大きな円を投げ掛けているフロアライトの傍で、いつもと形の違う、ややスリムな楕円のボトルから、琥珀色の液体をグラスに注いで、同居人は一方を真の方に滑らせる。
 グラスは計算されたように、テーブルの端から十センチほど手前で止まった。

 料理の手が込んでくることとは裏腹に、同居人の機嫌はあまりいいとは言いかねた。
 それは出掛ける前の同居人には珍しいことで、いつもなら本人曰く天職でもある『泥棒と詐欺』の大仕事に出掛ける前は、ちょっと気持ちが悪いくらいハイになっていることが多い。
 もともとイタリア人の性格もあるのだろうが、とにかく人生は楽しく生きるべきという信条をそのまま体現している。もっとも、それは彼の一方の顔で、その裏にかなり複雑で根の深いものが潜んでいることを真は知っていた。

 真は、いつものように逆らう気などなく、ベンチに座ってブランディに口をつけた。コニャックに比べると、随分と癖の強いアルコールが舌の上で小さな火花を散らしている。
 一人で酒を飲むという習慣のない真は、決して酒に強いというわけではない。
 この男と同居するようになって、何とか付き合えるくらいに飲めるようになった程度だった。調子が悪ければ缶ビール一本でも十分に酔っ払えることもある。
 顔をしかめた真に、直ぐに気が付いたのか、同居人は淡白な声でアルマニャックだ、と言った。蒸留を一度しかしないから、ちょっと癖が強いだろう、と言われて、ふと同居人の顔を見る。
 まず十分に手の中でグラスを暖めて、香りを楽しむ、鼻から匂いを吸い込んで口の中に残したまま飲むといい、と説明する声までがいつになく硬かった。


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Category: ☂海に落ちる雨 第1節

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NEWS 2012/2/12 更新情報 

【石紀行】の中のモン・サン・ミッシェルの記事中写真を少し変更しました。
別のSDの中に、羊たちのもっと良い写真が隠れていたので。
実は、こんなすごい羊の群れだったんです!⇒ひつじだらけ
朝もやのモン・サン・ミッシェルも別の写真にしました。
ステンドグラスももっとたくさん見つけたので、そのうち再掲します(これはちょっと待ってくださいね)。

次も、鋭意?準備中。
フランス南西部の美しい村々……中高年の旅行で大人気?だとか^^;
例の、ヨーロッパ版遍路旅、サンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼の経路にあたります。
全部回れたわけではないので、またいつか行きたい場所でもあります。
その素敵な村々、そして小学校の教科書にも出てきたラスコー界隈へ、ご案内いたします。

小説も、よろしくお願いします(__)
頑張ります。
今日は病院受診で午前中は仕事をお休み…年取ると、色々ありますので^^;
さて、仕事も頑張りまする(__)


Category: NEWS

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☂[2] 第1章 同居人の留守 (2)(改) 

 煙草、どこに置いたっけ。

 月の光が真の前に影を作り、柔らかく婉曲したくの字の先へ伸びている。
 素足に廊下の板は冷たいはずだが、あまり現実味を帯びた温度ではなかった。影の伸びた先にダイニングの扉がある。イメージの中では五角形の優雅な弯曲を既に追いながら、煙草のことを考えていると、そう言えば夕食の後でダイニングのテーブルの上に残してきたような気がした。

 イメージを追いかけるように廊下を曲がりダイニングの扉を開け、薄明かりに照らされたテーブルの上に煙草の箱を見つけた。横に置いてあったライターも一緒に手にとり、真はもう一度廊下に出て、そのはす向いにあるテラスへ繋がる扉を開けた。
 
 室内にかかった圧力を解き放つように、空気の流れが変わる。
 テラスに置かれた雪駄を履いて外界に開けた五角形の一角まで行くと、今日は潮の香りがここまで吹き込んでいることに気がついた。
 湿気を含んだ風からライターの灯を守って煙草に火をつけると、真はパジャマのポケットに煙草の箱とライターを突っ込んで、大きくひとつ吹かした。

 同居人は基本的には煙草を吸わないので、部屋の中で吸うことは憚られた。
 駄目だと言われたわけではないが、煙草を吸うときは極力テラスに出て吸うようにしている。それに本数を減らすようにと常に意見されていて、同居してからは、いつの間にか数は減っていた。

 三度ばかり、有毒であるはずの煙を肺に送り込むと、強張っていた身体中の筋肉が弛緩したような気がした。
 目を閉じると、潮の香りの中で、微かにレーズンとオレンジの香りが混じったような刺激が鼻の奥をくすぐった。寝る前に少しだけ舐めたグレンドロナックの甘い匂いを、鼻粘膜が覚えていたのかもしれない。

 ウィスキーなど、銘柄を覚えられるほど精通しているわけでもないし、そもそも気分の勝れないときに匂いなど嗅いだら、それだけで酔っ払ってしまいそうな時もある。
 だが、真の眠りの習性を心配した同居人は、ナイト・キャップを勧めるし、それによって少しはよく眠れるようになったのも事実だった。たまには水で割ったほうが芳香が強くなる品種もあるようだが、少しだけストレートで舐めると、気分が落ち着いて、少なくとも睡眠導入には極めて効果的であるということ知ったのも、同居を始めてからだった。

 もっとも、同居人の好みは、アクア・ヴィテ『生命の水』すなわちブランディの方で、気分に応じては飲み分けているようだが、デラマンという名前のついたデカンターボトルに入ったコニャックが彼のお気に入りのようだった。
 ウィスキーとどこが違うのか、全くわからない真に、本来の同居人なら『原料が違う』に始まる長い薀蓄を垂れるはずだが、その時彼は上品で優しく色気のある表情で、女を抱くような甘い気分に浸れる、と言った。真には全く理解の及ばない感想だった。

 真は、もうひとつ煙を吸い込んだ。
 北海道の澄んだ空気の中では煙草を吸う必要もないのに、都会の空気では何かを消し去りたくて煙草を好むようになった。
 真が高校生の頃から、もちろんその頃はたまのことだったが、吸っているのを同居人はずっと知っていて、時々くどくどとニコチンの悪徳について説教を垂れてくる。
 そういう同居人がたまに吸っている葉巻の方がよほど身体に悪いと真は思っている。もっとも、同居人が葉巻を吸っているのはよほど何かに気分を害している時だけで、彼の実家の誰かがブレンドしているという、眩暈を覚えるほどの強い香りで、神経を麻痺させて何かを鎮めようとしているように見えた。

 目が覚めたのは熟睡できていなかったからだと思った。草食動物並みの本能で身を守っている真は、あまり眠りの深いほうではなかった。子供のときから馬たちと過ごす時間が長かったので、彼らの眠りの習性が染み込んでいるのかもしれない。

 熟睡できない理由は、数日前から食事の内容の手が込んできたからだった。
 一緒に住み始めてから間もなく、それが何の合図かわかった。

 真の同居人は、時々数日、時によっては一週間あまり、家を空けた。
 同居人の本当の仕事が何であるのか、真には未だによく分からない。銀座にビルを持ち、一階にギャラリーを開いていて、その筋では相当有名な修復師だった。有名無名問わず気に入った作家がいるとかなりの援助もしているようで、彼を頼る芸術家がいくらもいるということを、ある時他人の噂話で知った。

 そのビルの二階にはアトリエ兼事務所が、三階には会員制のかなり怪しげなクラブが入っていて、四・五階には半端でなく美味しいものが食べられる、食通の間では知る人ぞ知るイタリアンレストランを、六階には都会の隠れ家としてこれもまた噂になっているらしいバーを経営していた。

 一度だけ同居人の仕事に引っ付いてアラビア半島の小国まで行ったことがある。真が高校生のときで、ただ修学旅行に行きたくないばかりに、大した考えもなく同居人を脅すようにしてついていったのだが、全てが真の理解を超えていて、その上どこかの映画で見たようなシーンが目の前に展開される事態が『三分に一度のクライマックス!』とばかりに襲い掛かった。一緒に行動していたアラブ人のトレジャーハンターは彼を『同業』と言っていた。同居人は自分の職業を泥棒と詐欺だと話していたことがある。

 レストランを所有していただけではなく、本人自身相当の料理の腕前だった。
 というよりも何に対しても中途半端の大嫌いな男で、その徹底振りには真も泣かされたことがある。
 中学高校のとき、真と妹の葉子の勉強の面倒を見てくれていたのは、当時彼らの父親の秘書のような仕事をしていたこの男で、その徹底的なスパルタには、上手く逃げていた妹はともかく、真のほうは完全に捕まってしまっていた。
 そういう男と同居してから、一人では決して食事を作ることのない真の食生活は、結婚した世間の男性に比べても数段勝ったものになった。
 その食事内容の手が込んでくるのは、同居人がまた仕事に出掛けるサインだった。

 始めの一年はそれでも何とも思わなかった。それが前年の秋くらいから、どういうわけか妙に堪えるようになってきた。いや、そのきっかけが何だったのか、真は不思議なことにはっきりと覚えていた。


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Category: ☂海に落ちる雨 第1節

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【物語を遊ぼう】6. 食事シーンの魅力『仕掛人藤枝梅安』 

実は拙作にはよく食事のシーンが出てきます。
『清明の雪』では、龍の寺で2人が精進料理をいただいたり、最後の方で祇園の某料亭(モデルがあります……ってしかもほとんどまんまの名前で出ている……すみません。ちょっと手が出ないような料亭ですが)で夕食をいただくシーンがあったり。
『海に落ちる雨』では、代議士に呼ばれて食事、調査事務所の連中と食事、ヤクザの倅と食事、とにかくやたらと食事の場面があるのですね……

食事シーン。実は結構好きなんです。
先にも書きましたが、『京都殺人案内』の音川家の夕食(鍋率高し)、藤田まことさんつながりで言えば中村主水宅の食事シーン(必ず落ちに出てくる)、ついでに藤田まことさんつながりで言えば『剣客商売』の秋山氏が若―い嫁の作ったご飯を食べているシーン(こっちはついでに食材までそのあたりを走り回っているし)、ホームドラマには欠かせないシーン。

よしながふみさんは、ついに料理からごはんシーンまで漫画にされてしまったし(『きのう何食べた?』……ゲイカップルの日常を描いた漫画で、メインはご飯のレシピじゃないかと思える作品)。
食事中って、結構どうでもいい会話をしながら、でも人間関係がよく分かったり、ほろりと本音が出て登場人物が好きになったり、2時間ドラマでは堀越栄一郎さんが食事中の嫁(山村紅葉さん率高し)と娘の会話に解決の糸口を見つけたり。

その私にとって、最高の食事シーンが『仕掛人梅安』に出てきます。
私はこのシーンを読んで、本を読むのをやめて、夜にも拘らず、ねぎを買いに走りました。
例の、ヤクザさんの家or事務所の裏に住んでいた時です。
食べたくて仕方なくなり、読んでる場合じゃないわ、と思った。

そのシーンたら、たったの2行ほどだったと思います。
梅安宅に仕掛人仲間の彦次郎さんが訪ねてきて、ご飯、というより酒を飲むシーン。
『葱しかないねぇ』『じゃあそれで』みたいな淡々としたやり取り。
たしか焼いて食べるだけ。
それなのに、何だかその葱がものすごくおいしそうに感じたんですね。

『剣客商売』も『仕掛人』も池波先生の作品ですから、思えば、粋な江戸っ子、ダンディな池波先生、そして下町の味をこよなく愛した池波先生の食への想いが、たった数行のシーンからこぼれ出ていたのかもしれません。
それに、仕掛人という孤独で先行きは地獄と覚悟した仕事をしている二人。
友情、仲間意識と、そしてテレビの仕事人でも出てくる、たまにある敵対意識や憤り。
そんないろいろな思いを持っている二人の間にある葱。
物語や人物の背景を感じながらの食事シーンだからこそ、たった数行で私を夜のスーパーへ走らせたのでしょう。

そういえば、昔、今昔物語? 吾妻鏡? 平家物語? なんだったか忘れましたが、酒飲もうと思ったらアテがなくて、戸棚を開けたら皿にこびりついた味噌だけがあったので、それで飲んだ、ってなシーンがあったように思うのですが、その味噌がすごくおいしそうに思えました。

そう、本当に旨い、と感じさせる食事シーンは、1行でいいんですよね。
難しいですね。

こんなお話、いや食事シーンを書きたい。
読んでる人が、本を読むのをやめて、食材を買いに走るようなシーンを書きたい。
そう思いながら、今日も私は食事シーンについつい無謀な挑戦をしてしまうのであります。

参考までに。
葱の苦手な人もいると思うのですが、葱を焼くとき、切った葱を縦に置いて焼いてください。
甘みが増して美味しいのです。


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Category: 物語を遊ぼう(小説談義)

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【死者の恋】(1)お好み焼き 

こうなったら、始めちゃいましょう。
初の章なし、計画なし(それはいつもだった)、タイトルまで仮題。

もしかして、『清明の雪』を飛ばしてこの小説を最初に開いてくださった方!
大丈夫です。
主人公二人の化けの皮はすぐにはがれます。

→ヤクザの所有するビルにある調査事務所の所長。多分26歳かな。妹が嫁に行ったら、一人でご飯を作れなかったので、パパのところに居候中。詳しくはこちら→相川真
竹流→真のパパ(大筋正しい関係性のはず)、もと家庭教師。和名だけど実はイタリア人。真が26なら35歳のはず。修復師、かつギャラリーとめっぽう美味しいイタリアンレストランのオーナー。詳しくはこちら→大和竹流

これで掴みはOK!
彼らの住む竹流のマンションは築地界隈にあります。
これは現代の築地界隈。
築地




 明日は弘前だな。
 弘前に行くなら、『山背』に寄ったほうがいいだろうか。いや、遊びに行くわけではないのだから、寄らなくても失礼にはならないだろう。
 真はそう考えながらマンションのリビングのドアを開けた。

 その途端、いきなり目に飛び込んできたものに、真は思わず固まった。

 時々、竹流はリビングのテーブルに読みかけの本を出しっぱなしにしていることはある。マンションには書斎のような部屋はあるのだが、ほとんど図書室もしくは資料室になっている。
 真と同居するまでは、竹流は仕事をプライベートの部屋に持ち込むことはなかったようだが、銀座のギャラリーや多摩の大和邸で仕事をしていたのでは、真に『飯を食わすことができない』という理由で、資料などはマンションに持ち帰るようになっていた。

 テーブルの上は広げられた本が五冊ばかり、さらに複製画らしき年季の入った紙が幾枚も散らばっている。
 そしてその絵の中には、どでかい男の一物が、あまりにもあっけらかんと描かれ、艶っぽい女性がしどけなく、というよりは堂々と足を開き、その迫力あるものを迎え入れている。
 それを覗き見る小娘の表情が何とも言えず、真はその小娘以上にどこに視線を持っていけばいいものか、狼狽えた。いや、多分小娘は喜んでいるのだろうけれど。

 何も遠回りする必要はないのだが、真は思わず部屋の隅っこを通って、ダイニングキッチンへ入った。

「お帰り。先に飯にするだろ」
「あ、うん」
 いつものことだが、まるで新婚の夫婦みたいな会話だな、と思う。
 調査事務所の共同経営者(本人は『秘書』といって譲らないが)の美和は、この手のことについてはいつも興味津々なのだ。
 帰ったら『お帰り~』『ただいま~』『お風呂にする? ご飯にする? そ・れ・と・も』なんて感じなの? ねぇねぇ、教えてくれてもいいじゃない。
 ホモのカップルじゃあるまいし、と思うものの、確かに大筋はあっている。いや、あっていないか。それとも、はないし。

 テーブルの上の本については特に説明はなし、だ。
 多分、竹流に言わせたら、これは芸術なのだ。もちろん、真も春画という絵があることくらいは知っている。これが彼の仕事の一部だということも理解できるが、幾らなんでもここでやらなくても。

「何?」
 見れば、台所にはものの見事に千切りされたキャベツに、艶やかな桃色の豚バラ肉、すりおろされた長芋、その他、天かすに紅ショウガ、篩にかけられた小麦粉、卵などが混ぜ合わされるのを待っている。
「お好み焼き。何だか、急に食いたくなったんだ」
 料理好きのこの男は、本当にこまめに真の食事の面倒を見てくれる。レストランのオーナーなのだから、食材へのこだわりは半端ないのだが、一方でこういう庶民的料理にやたらと興味を持っている節もある。
 旅先から帰ってくると、一通り作ってみなければ気が済まないらしい。

 コンロの隅に鉄板もしつらえてある特注の台所だ。いわく、普通のフライパンでは美味い肉が焼けないからだという。その鉄板で焼いたお好み焼きはさぞかし美味いのだろう。
「大阪の食い物ってのは、精力がつく感じがするなぁ」
 精力つけて春画の仕事なのか、と脈絡のないことが頭に浮かんだ。
「風呂は後にしろよ。絶対に鉄板焼き臭くなるから」
 
 お好み焼きにはビールだろ、と普段ビールなど飲まない男が、キリンビールを出してきた。キャベツにその他具材をさくさくと混ぜて、特注鉄板で焼く。
 ソースは大阪でもらってきたらしい。中身は秘密の特別ソース。
 確かに美味い。キャベツ量が多いからか、あっさりとしていて、腹にもたれなくていい。

「明日から、ちょっと弘前に行ってくる」
 真が切り出すと、竹流はコテでお好み焼きを切る手を止めた。
 さっきまで、これはコテなのか、テコなのか、ヘラなのかで揉めていたが、一応大阪的にはコテが優勢ということに落ち着いた。

「ちょうど良かった」
 コテでお好み焼きを押さえかけた真の手を制して、竹流が言った。コテで押さえるなんてもってのほか、ということらしい。
「何が」
「俺も弘前に用事があるんだ」
「それって一緒に行くって意味か?」
「何が悪い?」
「まさか、あのテーブルにわざとらしく広げてある本の用事か?」
「テーブルの上?」
 竹流は一度とぼけておいて、あぁ、と頷いてから、面白そうな笑みを作った。
 その辺の男がこういう笑いをすると、かなり下品に見えるはずだか、この男にかかるとそれもまた美しく見えてしまうから困ったものだ。

「ちょっと興奮したろ」
「馬鹿言え。でかすぎてリアルさに欠けるだろうが。あれは何だ?」
「うん、まぁ、あの手のものは、大事に隠し持っている金持ちがいるわけだ。春画は江戸時代から売れ筋だったからな、歌麿、春信、北斎ら名だたる浮世絵師たちが競って描いたんだよ。で、お金持ちの蔵の中にしまわれて何世紀。驚くほど状態のいいものもあるんだ」
「で、弘前の金持ちが蔵にしまっていたってわけか」
「まぁな」
 お好み焼きが美味すぎるので、会話は一旦途切れた。

「連れがいるぞ」
 いささか困った気がしなくもない。だが、女子高生と二人きりよりはいいかもしれないと思い始める。
「別にかまわないさ」
「うるさい女子高生だぞ。絶対あんたの嫌いなタイプだ。生意気で、いっぱしのことを言う割にはガキだ」
「お前の仕事は大体そういうのが相手だろうが。しかも、俺はそういう手合いには慣れてる。お前で」
 確かに、反論の余地はない。
 結局、お好み焼きが美味かったので、あまり検討する余地のないまま、翌日、上野駅の待ち合わせ場所に竹流と一緒に出掛ける羽目になった。




こんな感じで始めて見ました。推敲は随時していきますが、何せ裸のままの文章故、読みにくいことこの上ないかもしれませんが(いつもだけど)、お許しください。
例のごとく、食事シーンから始めてしまった。好きなんです、食事シーン……

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Category: ★死者の恋(間もなく再開)

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【死者の恋(仮)】はじめに 

お約束通り、新しいお話を始めさせていただきます。
女子高生に振り回される真とどうやら春画にまつわる仕事を請け負ったらしい竹流

今度の舞台は青森県
だんだん旅行ミステリー、ご当地ミステリーみたいになってきましたね。
青森県さまには、毎年とてもお世話になっているので、感謝の気持ちを込めて。

せっかくブログを始めたのだから、新作を書かなくちゃ、と思っていたのですが、なかなか重い腰を上げられず、でした。
しかも、ブログ風に小説を書くとか、連載するとか、もうほとんど私には無理なことばかり。

しかも、またそのまま打ち込み始めて、保存せずに内容がぶっ飛んでしまいました。
なので同じことを、また2回目に書いています。しょぼん……(;_;

でも、とりあえずやってみよう、ということで。
まずは余白をたくさん作る。
会話をいっぱい書く。
やたらと心情やら描写にこだわって、余白を字で埋めない。
あくまでもブログっぽく、読みやすく。
楽しんでもらえるように。
その前に、ちゃんと保存する!


結構苦手なことばかりですが、頑張ってみます。
本編が重くてしんどいので(『海に落ちる雨』…でも読んでほしいかも…)、こちらはあくまでもライトに。
果たして落ちがあるのか、起承転結は大丈夫か、伏線拾いは大丈夫か、まったく予測不可能です。
全てが超無責任な内容になるかもしれませんが……

というわけで?、さっそくおまけ映像を。
弘前城
ご覧いただいたのは、弘前城から見た岩木山。
毎年ゴールデンウィークを弘前~金木で過ごしています。
年によっては、こんな素敵な景色に出会えることもあるのです。
弘前城
ちなみに、ゆるきゃら『たかまるくん』が時々城内を見回っています。
たかまる

こんな素敵なシーンは出てこないかもしれないけど、またラストのキラキラシーンに向かって頑張ってみましょう。かなり、無責任ですが……


キーワードは、
青森、弘前、岩木山、冥婚、老夫婦の恋物語、絵馬、春画、ちょっとだけ津軽三味線てな感じでしょうか。
今回はハートフル度70~80%と高め、物の怪度は50%かな…
やっぱり出てくるんですね。青森県ですからね。普通に、普通に、おられますからね。

実は冥婚をテーマにした作品、もう一つ準備しています。
というより、ずいぶん前に第1章だけ書いたまま……こちらはもう本当に、純文学に近い。
いつかお目にかかりましょう。

いつでもテーマは『再生』なのです。
ちなみにタイトルは仮、です。苦手なんです、題名考えるの。
でも、また気象・自然現象シリーズでまいります。

あくまでもライトに、頑張ってみます!(^^)!
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Category: ★死者の恋(間もなく再開)

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NEWS 2013/2/10 真央ちゃん!さとしダッフィーつき 

何の関係もありませんが、本当に良かったですね!
真央ちゃんのトリプルアクセル……
多分、フィギュアスケートファンはみんなこの時を待っていたんですよね。

いつだったか、冒頭のジャンプですっころんでしまって、でもそのあとちゃんと頑張って優勝した時から、真央ちゃんのスケートの中にいつもドラマを見せていただいています。

佳菜子ちゃんも明子ちゃんもよかった!

このショートの2分50秒、フリーの4分、こんな短い時間にこれだけのことができるんだという、本当にドラマ。
だって、この時間の中で、落ち込んで、気持ちを立て直して、またへこんで、持ち直して……そういう小さな気持ちの波をいくつも越えて、集中しているわけですよね。
出だしで躓いたからって萎えてちゃだめなのよ、それを乗り越えたものだけが、その先に行けるのよ、もちろん出だしがいいことに越したことはないけどね。
そんな声が聞こえるような素晴らしい時間ですね。

ボクシングの1Rの3分も、トレーニングで長いんですよ。
三味線の1曲3分も長いんですよ。
何回もへこむんですけど、真央ちゃんのスケートを思い出して、短い時間の中で自分を励ましながら頑張っている時があるのです。

いつでも、いつまでも応援してるよ!

時間って本当に不思議。たった3分、たった4分なのに、無限の物語がある。

嵐

おまけ映像。友人が作った服を着る、さとしくん、しょうくん、じゅんくん仕様のダッフィー。
うちの子はさとしくんです。今も目の前におります。


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小説ネタじゃないけど、バレンタインバージョンを発見したので。

Category: NEWS

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☂[1] 第1章 同居人の留守 (1)(改) 

 深い碧の森。
 高い空から見下ろす大地に、銀色の雨が降りしきる。
 真自身も銀の雫となって大地に落ち、地中の奥深くに潜り込み、密やかに生命の根を支える。大地を踏みしめ足音を地中に落としているのはキタキツネかエゾシカ、それともこの沈むような重みはクマだろうか。心地よい湿度と共に伝わる振動に、真は深く息を吸い込み、溶け出していく自分自身の魂と身体を開放する。
 開放された魂は、地中を突きあがり、碧の森を飛び越えて、遥か彼方の雲の上に昇り、そして大宇宙にそのまま溶け入ろうとする。

 それを押し留めるように、誰かの暖かい腕が背中から身体を締め付けた。
 真は目を開けた。眠りの習性のせいもあるが、ここのところ熟睡できないでいる。
 視界はほとんど闇で、ぼんやりと壁が白んで浮いていた。

 そこはこの二年半の間にすっかり慣れ親しんだ部屋だった。
 サテンのシーツから微かにハーブの石鹸が香り、頬に静かな闇の空気が触れている。部屋の壁には、ベランダに面する廊下に開く大きな窓があり、木製のブラインドを下ろしてしまえば外の気配は伝わってこず、心地よい暗闇に身体を浸すことができる。

 普段改めて意識することはなかったが、時々こうして夜中に目が覚めると、隣で眠っている男の穏やかな息遣いを数えて安堵した気持ちになった。
 自分たち男同士の同居が、多少意味深な外見を世間に向けていることは何となく知っている。いや、むしろそれを利用さえしている。仕事の内容も場所も、ある意味そういう噂を許容する節さえあった。

 夜中に目が覚めて、寂しさも不安も感じずにもう一度目を閉じることができる、こんな穏やかな状態がいつまで続いてくれるのか、考えてみることがないわけではない。
 真は背中から感じる同居人の呼吸を、身体の芯に響く振動のまま受け止めて、軽く身じろぎをするように、その腕から逃れて身体を起こした。

 海からそう遠くはないこのマンションの持ち主は同居人の方だが、真は学生の頃、彼がヒモのような生活をしていて、このマンションについても、幾人もいる金持ちの恋人たちの誰かに金を出させているのだとばかり思っていた。
 真の思い込みはどこまでが事実でどこからが誤解なのか、今でもよく分からないが、同居人が『ビジネス』として女と寝ていたことは嘘ではないようだった。

 真が中学生の頃は、ここに来れば大概女と鉢合わせた。
 同居人は、真が小学生の時に北海道から東京に出てきて以来、真と妹の葉子の家庭教師をしていて、何やらいわくのある人間のようだったが、実際の生活の糧は、ジゴロのように女から得ているのではないかと真は思っていた。高級車に乗り、身に付けているものも、決して豪勢ではなかったが、上品なものばかりで、何よりこの男にはそういったものがしっくりと馴染んだ。

 一体あれから何がどうなってここに行き着いたのか、もしかしてインディアンの長老の言葉が、とてつもない歯車を廻したのか、気がつけばあれから干支もとっくに一廻りを越えてしまって、いつの間にかここに一緒に住むようになり、既に二年半もの時が流れている。

 広い造りのマンションには、他に真が一人で使っても構わないはずの部屋もあったが、もともとベッドを共にする以外の目的でこのマンションで他人と夜を明かす可能性のなかった同居人は、真がここに住むようになっても、ベッドをもう一つ入れようという発想は全くないようだった。
 同居のきっかけが真の方の多少危ない恋愛事件だったこともあって、真の保護者を自任していた同居人は、過剰に何かを心配していた可能性はあったが、こんなに立派なキングサイズのダブルベッドがあるのに、何故もう一つベッドが必要なのか分からないという単純な感覚の方が強そうだった。

 いつも隣で眠っている男との間に数十センチの隙間がある。それは時にはもどかしい思いを抱かせる距離だったが、他人との間としては、心地よい距離でもあった。他人とどれほど強く抱き合って現実の距離が消え去っても、それが何の意味もないということはよく分かっていた。
 真は隣の男が目を覚まさないのを確認する時間を待ち、静かにベッドを抜けると、廊下側のドアから寝室を出た。

 ベッドに入ったときから身体を引っ付け合っていることはほとんどない。眠っていると無意識に温もりを探すのが真の癖で、いつの間にか引っ付いていることはある。それを同居人はよくからかうのだが、真は寝ているの間のことだからと、自分の意識とは関係ないと主張して無視をする。
 このからかいにまともに反応すると、ろくなことにならないこともよく知っている。
 だが、酔っ払っているときは別にして、同居してからは、こんなふうにこの男のほうから真を、背中から抱き締めてくることなどめったになかった。そういう時は多分何か、それもある特定の何かがあった時だと真は何となく察していた。
 それを直接言葉で確かめたことは一度もない。こういうことは去年の秋から多くなっているような気がする。

 優雅に曲がったくの字型の廊下のテラスに向いた側は総ガラス張りで、その日は穏やかな月が空高く上がっているのが見えていた。
 夢の中では、雨が降っているのだろうと思っていたが、降り注いでいたのは雨でも星々の雫でもなく、月から零れ落ちる光だった。
 頭のどこかで覚えている気配と音は、地球に落ちる恵みを、光も水も同じものだと教えている。

 もうすぐ梅雨に入ることを思えば、今日のような月は暖かい気分にさせた。その月明かりが、変形した五角形のテラスを静かに始まる芝居の舞台のように浮かび上がらせている。
 舞台の上には古い農具の板で作られたテーブルと四客の椅子、大きくそれを覆う天女の袖のようなパラソル、木桶に植えられたオリーブの木。パラソルは遠い海からの風に時に大きく、時に囁くように軋む。
 天を見上げれば五角形に切り取られた、ここに住む者だけが所有する空。深い藍に染め込まれた天に浮かぶ月は、陽炎のような光の弯曲を空気に漂わせている。


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Category: ☂海に落ちる雨 第1節

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海に落ちる雨 改めまして 

改めまして、よろしくお願いします。
第1節は、言ってみれば謎ばら撒き編、というところでしょうか。
それにしてもやたらと長い描写があれこれ出てきますが、適当に、適当に読み散らかしてください。

始章を読み飛ばしてこられた方へ、大筋をご案内いたします。

まず『アレルヤ』→竹流(ジョルジョ)編

この人は、ローマのヴォルテラという家の跡継ぎです。家というよりは、ローマ教皇をお守りする組織です。
世襲というわけではないのですが、半分世襲みたいな家。
何よりも幼少時からそれ相応のスパルタ教育を受けていたわけで、どっぷりカソリックの教えに縛られています。
当代の当主はジョルジョの叔父であるチェザーレ。厳しい人ですが、心から甥を愛している。

さて、神の兵士たるべく一生懸命に学び、心と体を鍛えても、何か満たされていないジョルジョの心に、一筋の光を灯していたのは、飲んだくれの修復師。この『神の手』を持つ気難しい天才修復師から後継者になれと言われて、ヴォルテラの跡継ぎを返上しようとしたものの、かなうはずもなく。
家出してしまいます。

船の仕事をしながら世界に出ていくものの、病気で倒れてニューヨークの大金持ちのもとへ。
メトロポリタン美術館に紹介されて、修復師として働きながら、トレジャーハンターたちとも付き合う。
実はこの金持ち、チェザーレに言われて、ジョルジョの面倒を見ていたのです。
いつもどこにいても、叔父に見守れていることを半分で嬉しいと思いながらも、その手から立ち上がり、一人の確かな人間として、自分の力で歩きたいと願う、けなげな若者だったわけです。
そして、ついに日本へ。
神学校の先輩の姉を探すうちに、たどり着いたのが脳外科医の相川功の家でした。

BGMには、IL DIVOの『アレルヤ』をどうぞ
プロミスプロミス
(2008/11/26)
イル・ディーヴォ

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そして『銀の雫、降る』→真編

北海道浦河の競走馬の牧場出身の野生児は、半分ドイツ人の血が流れている母親と、相川家から勘当された父親との間に生まれた、いじめられっこ。
目の色はヘテロで、右目は碧、左目は黒です。
自分からも、誰かと一緒にいたいとか、誰かに分かってもらいたいとかいう感情をあまり持たないようにしてきたために、一人ぼっちが当たり前と思っていた。
遊び相手は、馬と犬と『蕗の下の人(コロボックル)』たち。

それでも、家族はみんな彼を大事にしていたのですが……ある時、叔父にコロボックルを紹介してしまって、慌てた叔父が東京の兄(真の伯父にあたる)のところへ飛んで行ったのです。
その時、ひっついてきた従妹の葉子に対して、騎士精神を刺激されたので、後先考えずに東京の伯父のところに引き取られたものの……いじめられっこ。

但し、いじめられながらも、どこかに反骨精神のある中学生だった。
さて、学校の勉強についていけていなかった(東京の言葉あるいは人間の言葉が理解できない?)真の家庭教師になったのが大和竹流。
このスパルタのおかげで、何とか人間らしく生きていけるようになった真なのでした。
その心に実父の影が……父親からは捨てられたのだと思い切ることで、この壁を乗り越えようとする。しかし、信頼していたもう一人の父=伯父も結局失踪(実は事件あり)。
その真の三人目の父ともいうべき存在が大和竹流なのかもしれません。

真→竹流
精神的にはものすごく頼っているけど、頼り切りたくはない、一人で頑張れる、とあがく状態です。
この感じはこのYou Tubeをご覧ください⇒Kitten "saved" by her mother
冒険に出かけて独立したい子猫、無理やり連れ戻す母猫……
『やめて~、お出かけしたい~、せっかく頑張って階段下りた(落ちた?)のに~』

そして、今回、大和竹流の失踪から物語が始まります。
真はお父ちゃんを探し出せるのか?

Category: ☂海に落ちる雨 第1節

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NEWS 2013/2/10 小説家になろう 

『小説家になろう』さんに『清明の雪』をアップしました。
縦書きで読みたい! 竹流の説教は面倒くさいので、立て板に水でつらつら読みたい、という方は是非、訪ねてみてください。

『清明の雪』
クリックしたら上のほうに、「縦書きで読む」というありがたいボタンが……
やっぱり小説は縦書きが読みやすいです。

Category: NEWS

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NEWS 2013/2/9 反省と方針 

ショックなことに、一度打ち込んだものが、すっかり消えてしまいました。
入力するときって保存しながらしなきゃいけないのね、と今更のようにびっくり。
今日はそのショックで、しばし呆然としておりました。

三味線のお稽古の後、お気に入りの珈琲専門店に居座り、気を取り直して再度作文。
朝の内容とはずいぶん違っている気がするけど……大筋はこんなのだったかな。
忘れるくらいなら、大した内容じゃないのだろうとは思うけど、ちょっと悔しい。
以下、反省文?(になってないけど)

*******

ちょっと読み返してみて、やっぱり読みにくいブログだなぁとしみじみ。
その一方で、私って結構頑張ってるよなぁ、としみじみ。
ほとんど自己満足の世界ですね……

『清明の雪』などは、本当に取っ付きの悪いお話だろうと思います。
読んで下さった方には感謝いたしますm(__)m
エンターテイメントを目指していたのに、何だか出だしだけは妙に文学を気取ってみたりしたので、本当に読みにくいです。

しかも薀蓄たれの竹流のせいで、やたらと台詞が長い……
でも、この薀蓄たれやら教育的指導がこの話のポイントだったりして。
こんな家庭教師がいたらいいのに、と思いながら書いています。
この人、話は長いけど、ある意味情熱的な教育家ですから。

真はもともと野生児なので、文学的な意味での文字・言葉を覚えるのが苦手。
なんせ、馬や犬、コロボックルと話してるような子どもでしたから。
それに対して、言葉を覚えるということは人としての形を作ること、よい言葉はいつかきっとその人を助けてくれると信じて疑っていない竹流は、とっても熱心に教育してくれたわけです。
ちなみに、半分は数式だったようです。
真は、数式見ると興奮するタイプの変人なので、丁度良かったんでしょう。
微分の式見て、恍惚とするんですから。

それはともかく。
シンプルな文章が書けないので、ワンシーンが長いし、ブチブチ切れるとかえって読みにくいんじゃないかと思っていたのですが、文字がぎっしりと、長々と続いているのもしんどいんだな、と反省。

そもそも紙ベースのものを想定して書いてあったもので、しかもこれらは、元は縦書きなのです。
竹流の長い薀蓄なんて、縦書きなら立て板の水のごとくするりと読み流せるのに、ネット上では本当に読みづらいですね。

ここからはつぶやき。
聞き流してください。

『清明の雪』、多分自分の好きなものをてんこ盛りに詰め込んだお話です。
ただ、これは自分の陽の部分、プラスの部分の好きなものがてんこ盛り。
読みようによっては陰の部分もちらちら見えますが、読後感はさわやか系。

ラストのキラキラシーンなんて、もうお伽噺はこうでなくちゃというシーン、のはず。

でもこのシーン、ある友人に言わせると、どうしても『ぼうや~、よいこだ、寝んねしな~』を思い出すとか。
確かに、龍の背中に乗った丸顔のこども、と言えば『ぼうや~』ですね。
でも、このお話の子どもは、もうちょっと毛があるはず。
それにもうちょっといい服を着ているはず。

で、今更なので、もうこの『清明の雪』は諦めてこの長いままで読んでいただこうと思います。
ついでに『海に落ちる雨』の始章も、もう諦めましょう。
読みにくいけど、切りようがないもので。

この『始章』、一体何の話が始まったかと思われたことと思います。
いきなりローマ教皇がどうしてん、って感じですよね。
新宿の調査事務所の話とちゃうん?と。
でも、ジョルジョ=竹流の人となりを知っていただこうと、結構一生懸命書いちゃいました。
この人、とってもかっこいい人なんですけど、どうも女々しいところがあるんですよね。
それに本当にストイック。遊び人の面もあるし、優しいけれど、芯は厳しい。
作者としては、そのいろんな意味での残念さが愛しい。

真の方は、いじめられっこの話になっていますが、実はちらりと垣間見える攻撃的な一面が見えれば、と思って書いていました。
BL的には受けのはずですが、竹流よりも性格はオス。
いずれ出てくるゲイバーのチーママ、さくらちゃんが『真ちゃん見てると、ものすごく雄を感じちゃう』と言っています。
ある友人は、真さんてこんなに生々しい人だっけ、っと。
女の前では『男の沽券に関わる』とか考えて行動してるし、ずるさとか、スケベさとか、色々ちゃんと持っている。しかも野生児。

初めて会ったころ、言い合いになった時に、どうせ負けると思った小学生の真が、竹流に噛みついてるんですね。文字通り、噛みついた。
『星』(雨の次の第3作目)の中で、竹流が
『まさか人類という種の生き物に噛まれるとは思っていなかった』と回想。
真は『だって、言葉で言っても負けるし』
竹流『だからって、普通、噛むか?』
……噛みませんよ、真くん。普通はね。

そんな二人が活躍する?このシリーズ、一体いつ書き終わるのかしら?

そうなんです。この話、調査事務所の話ではありますが、そもそもベースは『人魚姫』。
『雨』は、私の陰の部分・マイナスの部分で好きなもの、というのか、思っていることがてんこ盛りになっています。
だから読後感はだいぶ違うはずです。

お魚のお姫様が人間の王子様に恋をして、そもそもうまくいくはずないじゃん、と思っているあまのじゃくな私の意地悪な部分が出てしまっています。
お魚の王子はおらんかったんかい!と。

別にただいじめているわけではないのです。
そこにある切なさやら、懸命さやら、命がけな気持ちやら、そういう魂の震える感じが好きすぎて、頑張っちゃったんです。
津軽弁では魂が『じゃわめぐ』感じ。

ハッピーエンドが嫌いなわけではありません。むしろ好き。
だけど、ただ『よかった』というのでは納得がいかないことが多いのです。
このシリーズも4代先にはちゃんと結ばれてハッピーエンド、の予定。
しかもそこに至るまでの4代分、つかず離れずです。
ただし、そんなに簡単にはいかないよね……そう思ってしまう。

結局、前置きが長すぎました……実はここからが本文???

というわけで? 『海に落ちる雨』を改変して(中身は変えてませんが)、ブログで読みやすくすることにしました。
本文~作者の世迷言つき、みたいな感じで。

これまでアップした部分はしばらくそのままにしておきます。
もしも、やっぱりがっしり文字ばっかりで読みたい!という奇特な方がおられましたら、それはそれで嬉しいけど。
(多分、小説家になろう、にがっしり文字でいずれupします)

そもそも私、昔、ノートに書いていた頃から、文字ぎっしりが好きで、空白が嫌い、白が目に染みる~というタイプだったんですね。
だから、夏目漱石の『こころ』『それから』などは、あの空白のなさに、もう世界にどっぷり。
活字好き。ついでに言うと、紙媒体好き。
多分、電子書籍には懐かない人間なのです。

でも、そんなわがままではいけないわ、とようやく思ったこの頃。

ついでに、ちゃんと調査事務所の仕事も、同時並行で始めちゃいます。
岩木山でであったおばあちゃんをいやいや探す?女子高生に振り回される真、春画の修復中の竹流、同棲中のつかず離れずラブラブ?な時期です(18禁なし)。
お楽しみに。

ちなみに。

このシリーズの読み方指南。竹流の立場から見たら、こんな感じです。

(真の年齢・状況) → (竹流の立ち位置)
小学生(高学年)~中学生 → 野生の生き物手懐け期
高校生 → 猫かわいがり期
大学受験~入学までの1か月 → 道踏み外し期
              (『海に落ちる雨』に出てきます)
大学生~崖から落ちるまで → 突き放し・遠くから見守る・立て直し期(同上)
崖から落ちて~同棲まで  → 迷い道期 (『清明の雪』はここ)
同棲期 → 第2次猫かわいがり期(『海に落ちる雨』はここ)
      猫だと思っていたら、いつの間にか猫が山猫になっていたけど…
               
この先は……かなり辛い部分がある時期ですので、またいずれ。

すでにこれ自体が読みにくい……反省になっていないなぁ……(しょぼん(..))
反省のお花。フランスの南西部、美しい村で咲いていたシュウメイギク。
花


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Category: ☆真シリーズ・つぶやき

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【石紀行番外編】1.世界遺産:モン・サン・ミッシェル 

石紀行、お休みして、今日は世界遺産、モン・サン・ミッシェルへ。
イタリアが大好きな私は、ヨーロッパに何回も(は言い過ぎですが)行ったのに、イタリア以外の国に行くことはほとんどなくて、これが実はフランス初体験。世界遺産の一つくらい見とかなければ、と思ってここを選びました。
実は、パリは素通り。エッフェル塔も見なかったこの旅の目的地は、カルナックとラスコー周辺の美しい村々でした。

パリからTGVに乗り、レンヌの駅にやってきました。レンヌの駅のわかりにくいところにあるモン・サン・ミッシェル行のバス乗り場。この日は日曜日だったので、結構人が多かったのですが、人が少なかったらきっと不安になるような隅っこ。
バス
時刻表では1時間20分のバスの旅、競馬場などを見ながらぼんやりと乗っていたら、遠くの霞の中に小山が……
世界遺産モン・サン・ミッシェルです。
モンサンミッシェル1
ホテルが干潟の手前だったので、先にホテルの近くでバスを降り、荷物を預けてから歩き始めました。
これが意外に遠いのです。景色は変わらないまま、なかなか近づいてこない世界遺産。
干潟には羊の糞とか、犬の糞とか、とっても自然な世界。
モンサンミッシェル2
ようやくたどり着きました。モン・サン・ミッシェルの中は階段と坂をひたすら歩きます。狭い、小さな宝石箱のような場所。高台まで上がって干潟を見ると、こんな感じです。
干潟
この中心にあるのがモン・サン・ミッシェル修道院です。修道院を中心に村が出来上がり、英国との100年戦争の時には軍事要塞としても活躍した場所。フランス革命からしばらくの間は監獄として使われていたり。
良くも悪くも、ヨーロッパでは古い遺跡、教会、建造物などが今も使われていますね。現代だけではなく、それぞれの時代を映しながら、それぞれの時代に応じた使われ方をしている。
ナポリの地下遺跡も、ローマ時代にはローマ時代の、中世には中世の、そして戦時には戦時のための使われ方をしながら、今につながってきていました。
修道院に入り、上を見上げるとこんな景色。
教会2
教会3回廊
修道院の中は光と影が織り成す美しい物語があちこちに散らばっています。それらを拾い集めながら、ゆっくりと修道院の中を歩きました。
DSC_0054_convert_20130208025740.jpg
あでやかな色彩のステンドグラスもいいけれど、こんなシンプルなものもいかがでしょうか。
ただ、光の色と影の色だけが、最小限の色彩をまとって、天から降り注いでいます。
ステンドグラス貝のシンプルな文様と美しい青。
ステンドグラス2石のファザードを彩る淡く色づいた光。
ステンドグラスばかり撮っていました。この淡い、自己主張のない色彩がとても美しくて、光とはこんな色なのだなぁと思いながら、修道院の中を歩くのです。
艶やかなバラ窓もいいけれど、この透明に近い色彩の窓は、光の本当の色をどうやって捕まえようかと懸命に考えた痕跡のように思えます。

さて、噂のオムレツについても一言。
オムレツ
話のネタにはなりますが、はっきり言ってデカすぎ!
食べきれません。お腹がすいているからと言って、一人ひとつ頼んではいけません。味は淡々としていて、この量はとても日本人のお腹に見合う代物ではありません。あくまでも写真のネタですね。
そして、下は、灌漑の装置。これのおかげで、道は水没せず、いつでもモン・サン・ミッシェルに渡れるようになったわけですが……逆に海に浮かぶモン・サン・ミッシェルはなかなかレアな景色となったそうです。
灌漑
ホテルをモン・サン・ミッシェルの中ではなく、対岸にしたのは、この朝の景色を見たかったから。
朝靄の中のモン・サン・ミッシェルは確かにとても美しいシルエットでした。
朝もや
カメラの方向を変えると、こんな景色。
朝もや2

そして、早朝、なぜかホテルの敷地内を走り抜ける羊たち……
羊2
羊1
昔、何かのテレビ番組で、この辺の草は塩分が多いので、羊がミネラル一杯の草を食べられる(だから美味しい…ごめんなさい、羊さん)と聞いたような気がします。この羊が走るシーンも、テレビで見たことがあって、実はちょっと見たかった。
実際に見たら、結構びっくりしました。半端ない数の羊でしたから。
どうやら、このホテルの敷地が、羊の移動経路みたいなのです。
モン・サン・ミッシェルを背景に走る羊の群れ、一見の価値ありです。


すっかり観光地になった世界遺産に対する印象は、いささか複雑なものもありますが、それでもこうした景色にはやはり世界遺産と認められただけの何かがあるのですね。

さて、次回は、フランス南西部の美しい村々と、ラスコーII(複製ですが、侮るなかれ)・ルフィニャック洞窟へご案内いたします。
石は、少しお休みです。再開は、マルタの石の神殿からの予定です。

Category: 石の紀行文(写真つき)

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【物語を遊ぼう】5.『ダーウィンが来た!』:自然界の壮大な物語 

あまり小説・物語とは関係ないのですが……
この番組を見ると、世界は本当に大きくて素晴らしい!と思います。
人間の世界って、この番組の1エピソードに過ぎないんだ、とか思ったり。
NHKの『ダーウィンが来た』
この番組から、何回見ても面白いエピソードをふたつ、ご紹介したいと思います。

まずはオーストラリアコウイカ(つまりイカ)のお話⇒巨大イカの恋
魚にはしばしばみられるように、繁殖期に効率よくカップルになって子孫を残すために、彼らは繁殖期に集まって、集団お見合い=メスの取り合いをするわけだけど、どういうオスが有利なんでしょうか。

そもそもこのイカ、敵から身を隠すとき、周囲にあるものの色や形を模すという特技があります。身体にあるナミナミの模様をうごめかせて化けるので、このナミナミを速く動かせるオスがメスへのアピール度では有利。そしてもちろん、バトルですから、身体の大きなオスが有利、なんだけど……
実はかなりの数の身体の小さなオスがいる。もちろん、オス同士の戦いになればどうあがいても不利で、やられてしまう。でも実は、彼らは交尾のシーンでただ不利かというと、そうでもないんですね。

なんと、この体の小さいオスたち、女装するのです。
コウイカのオスはメスより身体が大きめで、足?手?を広げながらメスを誘うのですが、メスは小さくて手足?が縮まっている。そこで身体の小さいオスは手足を思い切り縮めてメスのふりをして、オスの攻撃をかわし、メスにこっそり近づいて交尾をするわけです。
しかし、交尾の瞬間は手足を出さないといけないので、この瞬間にばれるから、ちょっくら命がけ。

面白い点が2つ。
①あまりにも女装がうまいと、本当にメスに間違われて、オスに襲われる^^; 
②メスの方は、身体の大きいオスばかりが好きというわけではない。肉体派のオスもいいけど、女装という頭脳プレーも好き。だから身体の小さいオスだって結構メスに好かれている。
蓼食う虫も好き好き? 好みは色々、ということなのでしょうね。
メスが交尾する相手の割合は、身体の大きいオス:小さい女装オス=6:4くらいとか。……こうして、オーストラリアコウイカは多様性(いろんな大きさのイカがいる)を保っているのでした。
いやはや、イカの世界も、なかなか大変ですね。

エピソードその2はアフリカウシガエル命がけの子育て
南アフリカ共和国の草原、夏の雨季になると、地面から出てくる、大きさはサッカーボールなみ。乾季は土の中で10か月もじっとしている。雨が降らなかったら、七年も出てこなかったという記録もあるとか。ちなみに寿命は40年以上?
地面から出てくるその姿は怪獣みたいで、実に可愛くない。ネズミとか、他の小さいカエルもひと飲み。でも、なぜか地元の人々の人気者。

そして、雨季に雨が降り続くと、乾いた草原に巨大な水たまりができます。
さぁ、恋の季節です。
このサッカーボールなみの巨大ガエルと巨大ガエルの雄同士のバトルがものすごく面白い。
技は基本的に、体当たり。頭や口から激突、空中大回転、顔面噛みつき、巨大な口に生えた下顎からの突き上げ(牙つき)、足に噛みついて抑え込み……イカと違って、やっぱり巨大なカエルが有利なのですね。

ぜひ、チャンスがあればこの映像を見てください。
言葉には尽くせない、カエルの迫力のK1バトル……結構格闘技好きの私も大満足でした。
そして、メスは隠れてバトルの観戦です。強い雄を見極めないといけませんからね!
やがてカップル成立。卵を産んだら……もうメスはいません。
そう、このカエル、子育ては雄の仕事。結構不細工なのにイクメンなのです。

ここからお父さんの大奮闘が始まります。雨季にできた水たまりの寿命はわずか1か月ほど。その間に、子供たちにはオタマジャクシからカエルになってもらわないといけません。
食って、食って、食いまくる数千匹のオタマジャクシたち。餌の多い方に、餌の多いほうに、1日100メートルほども移動。お父さん、必死で引率です。でも自分はたまたま見つけた虫程度しか食べられません。
放牧中の牛が近づいてきたり、時には象が近づいてきたりすると……子どもたちを守るために、得意技の体当たり! 蛇が襲ってきても、大きな口で噛みついて……食べちゃった!

そしてさらに、子どもたちを浅瀬に、浅瀬に集めます。そう、水温の高いところに集まらせて早く大きくなってもらうのです。
そんな忙しい子育てより、水のいっぱいある安全な池に住めばいいじゃないかという話もありますが、池には大鯰とか、天敵だらけなので、かえって危険なのですね。

さて、温度の高い浅瀬にいると、太陽の熱で干上がってしまうことも……子どもちゃんたち、大ピンチ!……でも、お父さん、あなたは本当にすごいです。
大きな水たまりに移動したお父さんは、子どもたちのいる孤立した浅瀬まで、後ろ足で土をかき分けかき分け……、何回も何回も往復し、水を引き込む……そう、灌漑工事を始めました。でも、あぁ、もう子どもちゃんたちは水が減ってぐったり……お父さんも炎天下で1時間半、だんだん動きが鈍くなって……がんばれ、お父さん!
そしてようやく水路が完成! 子どもちゃんたちのいるところまで水が流れ込みます。
いやはや、手に汗握る番組でした。科学・自然番組でこれほど興奮するとは…!?

この世界は本当に美しくて楽しい!と思える番組です。
この番組を作っていらっしゃるスタッフの方々にエールを送ります。


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Category: 物語を遊ぼう(小説談義)

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【物語を遊ぼう】4. 『京都殺人案内』:小道具の使い方 

さて、小道具の話などを。
中学生の頃、実は演劇部でした。もちろん、小道具から大道具から役者まで自前なのですが、時々芝居の中身以上に小道具に拘ってみたくなることも多々あったり。もちろん、安上がりの舞台ですから、大したお金をかけられないのですが、それだけに拘って作ってみたり。
小道具って、舞台上ではあまり見えないところにあったりしますが、事件解決の糸口になることもある。あるいはその人物の特性を表す手がかりになったりする。
シャーロック・ホームズはまさにそのあたりを生かしたミステリーですよね。

さっそく話はずれますが(もう開き直りつつあります、このブログでは横道・脇道は日常茶飯事、ということで^^;)、ホームズと言えば、これまで2作公開された映画のホームズ、結構面白いと思ってるんですが、いかがでしょうか?
ホームズのイメージをむしろ原作に近付けたんじゃないかと思っているのです。ただのインテリではなく、実は格闘家であったり、エキセントリックであったり。しかもちょっぴり(いや、かなり)ワトソン君にLOVEなため、ワトソン君の彼女に嫉妬し、微妙な距離感の色気もあったり(読み過ぎ、じゃないですよね、あれは明らかに狙ってますよね)。

私の大学時代~仕事を始めた頃は京都どっぷりでした。
そもそも京都に住んでいた理由は、『京都殺人案内』なのです。
あの藤田まことさん主演のドラマに完全に惚れこんで、京都に住むことを決心しました。思えばなんと単純な理由だったのでしょう。実際に住んでみたら、京都府警さんにお世話になることなんてもちろんないわけですが。
でも、ある時、ヤクザさんの事務所あるいはお住まいの裏に住んでいたことがあります。はじめは知らなかったのですが、伏見のあたりの床屋さんでお偉いさんが亡くなられたとき、仕事が遅くなった私は真夜中に道を歩いていて、京都府警さんたちがいっぱい(言い過ぎ)警備をしていらっしゃる場面に出会いました。
『気を付けて帰りなさいね』(ペッパー警部みたいですが…)
その時、初めて、ああそうか、京都ってこんな町だったんだ、古い町だし色々あるよね…と思ったのですが、何となく納得しただけで、怖いとも思わずに普通に暮らしておりました。
たまに遭遇することもありましたが、何事もなく、比較的長くその場所に住んでいましたが……

ちなみに、ある時、名前だけで『音川』という名前のついたマンションに住んでいたことがあります。
そう、音川音次郎というのが藤田まことさん演じる刑事の名前でした。
はぐれ刑事純情派とどう違うのか?
人物像は同じようなかんじでしょうか。でも、音川さん、結構おちゃめでした。課長(遠藤太津朗さん)とのやり取りが、水戸黄門の印籠並みのお決まりでした。出張をねだる音川さんに課長が、『しょうがないな、その代り、おとやん、わかってるやろな』『わかってますがな』というお決まりの会話。そしてラストでは、なぜか出張先からのかなりしょうもないお土産が課長のもとへ……
見ている私の立ち位置は、というと、気持ちは音川さんの娘、洋子さん(萬田久子さん)なのですね。長いシリーズの中では、結婚して出戻り、それなりに年を取ったお父ちゃんの面倒を見ながら暮らしていて、時々はるかに年下の男(音やんの部下)に言い寄られてみたり。
で、私は、この音川家の食事シーンがとても好き。鍋率、高いんですが。

そして、ようやく本筋です。
この音川さん、実は、雨の日でも晴れの日でも黒い折り畳み傘を持ち歩いています。
本当に、いつも持ち歩いている。
長いシリーズの中、もうこれ以上増えることのないシリーズの最後のお話まで、持ち歩いておられました。
監督さんやスタッフさんは、2時間ドラマですから、きっとしばしば変わったんだと思います。どなたのこだわりかは分かりませんが、ただ何作目になっても音やんは傘を持っているわけです。理由はいちいち説明はないし、多分私の記憶にある限り、それに対する台詞での説明はなかったように思います。あったとしてもたぶん初期のころに少しだけ。
でも、何作目か(比較的早い時期の作品:調べたら第4作でした)に答えはありました。
実は、音やんの奥さんは、ひき逃げで殺されているのですね。それも、音やんが傘を持たずに仕事に行った日、雨が降って、奥さんが駅まで迎えに来てくれた時に。
だから、音やんは、万が一にも洋子さんを雨の日に迎えに来させないために(という説明もないけど)、ずっと傘を持ち歩いているのですね。
見ている私は、何作目になっても音やんが傘を持っているのを見ては鳥肌が立ち、そして安心するのです。

小道具。
何かものに対する小さなこだわり。しかもそれがストーリーの要というわけでもなく、お題というわけでもなく、でもそれがなくてはその人の人となりを表すことができない何か。物語の底辺に流れている細い水脈みたいなもの。
そういうものを上手く出せたらいいなぁ、と思いながら書いています。
そういう意味では、拙作では、竹流の左薬指の指輪はそれかもしれません。
ヴォルテラというのは、ローマ教皇をお守りする(いろんな意味で)警護団というのか金庫番というのか、そういう組織ですが、そこの跡継ぎである印で、すでに結婚しているのと同じなわけで……いつも何かの折には、真がやたらめったら気にしているのですが、どうすることもできずにそこにあるもの。

そこまで何作目になろうとも気になる小道具、というのでなくても、小道具を使うのは結構好きです。
とは言え、意識しているというよりも、結果として拘ってたみたいなことが多いです。
いえ、意識しているけど、意識していないふりをして使う。
意識して使うと、使いすぎてしまう。
使いすぎると手垢がついてしまう。
お茶のお道具などは、良いものはたまに出す。良いものをいつも出してしまうと、目垢がつくと言います。
最後にさらりと、あ、そう言えばこの小道具、そういう事情で絡んでたのか、みたいなさりげなさで使いたいのですが……

実は、いずれ『わたしがBLを書けないわけ』なんて回をしようと思っておりますが、その私が一度だけ挑戦したことがあり(ブログとか見ていると、BL作家志望さんたちがとても楽しそうなので、ちょっと仲間に入りたくて…でも見事に散りましたが)、その時照れ隠しに?小道具で遊びました。
意外にも楽しかった。ライターと傘。ありがちな小道具ですけど。
もしかしたら、いつか期間限定・会員限定?で登場するかもしれませんが……テーマは『あなたの燃える手で私を抱きしめて』って感じです(題名ではありません)。

小道具をさりげなく使えるようになったら、きっとお話に花が添えられるのだろうな、と思いながら。
(新幹線の中で書いていたら、逆流性食道炎が悪化して、気持ち悪くなってしまいました…(@_@)

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【石紀行】6.フランス・カルナックの列石(3) 

では、ケルマリオの列石にご案内いたします。一応、区域ごとに名前が付けられているのです。
とはいえ、前にも書きましたが、もともとつながっていたようにも思えます。
カルナック石9カルナック石10
カルナック石12
下の写真がメンヒル、立石です。メンヒルは大きくて、目印のように一つだけ立っている。
ちなみに近くに乗馬学校があって、小さな子供たちが馬に乗っていました。
実は、森の中で迷子になっていたら、遠くから蹄の音が聞こえ、そしてこの子供たちが道を教えてくれたのです。
さすがに凱旋門賞のある国ですね、こんな頃から既に英才教育が始まっているのでしょうか。
カルナックメンヒルカルナック馬
四角い
上のように四角く囲まれたところもあります(Le Quadrilatere)。
他にも、下のような古墳が森の奥の奥にあります。
カルナック古墳
やはり迷子になっていたら、突然人が現れ、行き先を教えてくれました。この古墳は、『本当に大丈夫かしら、この道を行って…』というような森の奥にあるのですが、行ってみれば同じような人がいるものです。考古学好きという共通点で十分なのでしょう。フランス語で一生懸命説明してくださるので、もしかしてこの遺跡群の関係者の人かと思ったら、単に旅行者。古墳の中に何か書いてある、と言って壁を示してくださいました。

そういえば、以前にも書きましたが、迷子になる前、足元にトカゲがやってきたのです。
私にとってトカゲはソウルメイト。以前からトカゲのことはものすごく気になっていたのですが、ある時、サンタフェでインディアンの方々から教えを受けておられる人が行っておられる前世回帰(といってもそんなに怪しいものではありません)のセッションに参加していて、突然あなたのソウルメイトはトカゲです、と言われたのでした。
あ、やっぱりそうだったんだ、という感じで納得がいったというのか。
ソウルメイトは守護霊とかと違って、守ってくれるわけでもなく、一緒に(人生という)旅をしている魂の連れ合いみたいなものだそうですが、インディアンの言い伝えではトカゲは幸運をもたらすもの。
ありがたいことに、困っていると現れてくれて、そこから先はいつもどこからともなく助っ人が現れるという、私にとっては実に頼もしい連れ合いです。マルタでも、いいことがあるとトカゲが傍にいる、というようなことが何度か。

さて、まだまだ石は続きます。
カルナック石13
ドルメン
上はドルメンです。更に離れた場所にも独立していくつもドルメンがあるようです。
カルナック石14
さすがにこれだけ見たらもう飽きられたことでしょう…すみませんm(__)m
でも本当に、どこまでもどこまでも、石なのです。現在確認されている石の数、2934体。
カルナックというのはケルト語で塚=小高い丘、という意味のことばCairnからきているのではということですが、確かに丘の上にはサンミッシェル古墳、造られたのは紀元前5000年から3400年の間と言われています。

一体、これらの列石は何だったのでしょうか。
太陽など自然現象を拝むための参道? 巨大なカレンダー(暦)? それとも銀河を写し取ったもの?
まるきりのミステリーですね。
ちなみに、周囲には牛やら羊やらがいて、結構のどかな風景です。
もしも機会がありましたら、一度ぜひ訪れてみてください。この不思議な石たちと向かい合っていると、だんだん『何かわからない』ということが快感になってきます^^;

さて、せっかくですので、次回・次々回は少し石を休憩して、世界遺産モン・サン・ミッシェル、そして先史時代への旅(ラスコー・ルフィニャック)へご案内いたします。

Category: 石の紀行文(写真つき)

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【石紀行】6.フランス・カルナックの列石(2) 

プチトランで列石のそばに行ってみましょう。プチトランは列石を十分に見せつけてから、インフォーメーションセンターに連れて行ってくれます。
カルナック石1
プチトランの中から撮った写真。時々木立に遮られながらも、石はどこまでも並んでいます。
そしてインフォーメーションセンターへ。
インフォーメーションセンター
この建物だけが浮き立つように新しい。トイレは是非、ここでお済ませください。
歩き始めたら、途中にお手洗いはあるのですが、結構入るのに勇気がいる感じ。使いましたが……
途中に小さなお店があります。確かクレープを食べることができるお店です。小さな掘っ立て小屋みたいなお店ですが、ここにもお手洗いがあります。
カルナック石2
インフォーメーションの真ん前がもうこの景色です。
さて、列石の中を歩いてみましょう。歩き始める場所に人家があります。
人家には石を使った塀がありますが、その石はどう見ても列石を使ったもの。
カルナック石3
カルナック石3
列石は中に入れないのですが(時間が決まっていて、説明の時間に合わせて入れてくれるようですが)、すぐそばの道を歩くことができます。場所によっては石に触れることができる場所もあります。
カルナック石4
後はもう言葉は要りませんが、とりあえず、ここはメネックの列石。
カルナック石5
カルナック石6
少し芸術的、と思ったけど、やはり写真は上手ではありません……
カルナック石6
プチトランが横切ります。
カルナック石7
カルナック石8
さて、また次はケルマリオの列石です。(カルナック(3)に続く)

Category: 石の紀行文(写真つき)

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【石紀行】6.フランス・カルナックの列石(1) 

そしてようやく、カルナックをご紹介することになりました(^^)
この場所に立った時、本当に、本当に幸せだと思いました。
まずは、やはり圧倒的なその光景を…でも本当は写真には納まりきらない世界です。
DSC_0168_convert_20130203204809.jpg
途中が森で途切れていますが、木立を抜けるとまだまだこれが続いているのです。
何区画にもわたり、途中道路とかに寸断されながら、どこまでもどこまでも。

一体どこに行けばこの光景に出会えるのか、まずはGoogle Mapさんにお借りした地図でお示しいたします。
地図
ブルターニュ地方(ワインのブルゴーニュと似ていますが違います…って私だけかしら、時々混乱していたのは^^;)の海に面した町、カルナック。
ちなみにケルトの文明の跡が色濃い地方であるこのあたり、至る所、石がいっぱいあります。
フランス語を勉強してまたもう一度行きたいです。
多分検索でカルナック、とひいたら、エジプトのカルナック神殿がずらーっと並ぶと思いますが、ここはフランスのカルナック。パリからまずはモンサンミッシェル(また番外編でご案内いたします)を訪ねた後、レンヌというブルターニュの大きな都市まで行き、列車を乗り継いでカルナックへたどり着きました。カルナックの駅からはバスで海の近くに行きます(ホテルが新しい街のほうだったのですね)。
カルナックの新街地はリゾート地なんですね。海水浴のできる、素敵な港町です。
英語はインフォーメーション以外ではほとんど通じません。それでも田舎町の人たちはとても優しかったです。
ホテルの受付のお姉さんは片言の英語で頑張ってくださり、言葉の通じないたくさんのホテルマン・ホテルウーマンの方々もとっても親切で、毎日ご飯を食べたレストランのギャルソンさんは単語ばっかりの注文にものすごく熱心に相手をしてくださり、プチトラン(バスと電車のあいのこみたいな乗り物)の運転手さんは『帰りもこのチケットが使えるよ』と一生懸命身振り手振りで教えてくださり、帰りの日の早朝、バスを乗り間違えてスクールバスみたいな子供ばっかりのバスに乗っちゃった私たちをバスターミナルまで連れて行ってトランジットさせてくださったバスの女性運転手さん(おかげでナント行の電車に間に合いました!)……みなさん、フランス語のまったくできない日本人(たまにしか見かけない人種らしいですが)親子にとても親切にしてくださいました。
感謝です。
では、カルナックのホテル・ディアナからの眺めをご覧ください。
カルナック海
ここから歩いてもカルナックの列石のある場所にたどり着けるのですが、かなりの距離です。
何回か歩きましたが、やはりプチトランが便利。
プチトランプチトラン2
写真の後ろ姿の運転手さんが親切だったおじさま。
さて、下の地図の左下のあたりに町の中心があります。インフォーメーションのあるところです。その上にある三角印のものはみんな石。この地図のはるか上のほうにもドルメンやメンヒル(立石)が広がっています。
このようにいくつかの塊になって並んでいます。でも、道や森や人家で寸断されているだけで、もともとつながっていたのかもしれないと思えるところもあります。
カルナック地図
カルナック地図
私には航空写真は撮れませんので、買った絵葉書で空からの光景をご覧ください。小さい点々はみんな石です。銀河のようです。
カルナック絵葉書1
カルナック絵葉書2
カルナックの街、というより森?を見下ろす高台にあるのがサン・ミッシェル古墳。これは教会ではなく古墳を囲む建物? そしてそこからの眺め。この森々の中に石が散らばっているわけですね。
教会森
さて、次回は列石へご案内いたします(カルナック(2)へ続く)。


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NEWS 2013/2/3 18禁って… 

出張で東京です。仕事を終え、昨日は友人と晩御飯。
今日は仕事がらみで学生さんの相手をするので、待ち合わせまでホテルでまったりです。

それにしても、東京って本当に人がたくさん。
昔、その友人が、大阪は狭いところに人がたくさんいるけど、東京は広いところに人がたくさんいる、と言っていたけれど、本当にその通り。
最近は田舎に引きこもり、仕事場と家を車で往復するだけで、一番人がたくさんいるのを見るのは仕事場くらい?なんて私には、ちょっと街に出ると駅さえもまともに歩けなくて、大変です。

でも、昨日感心したのは、マクドナルドでも店員さんが普通に英語で外国人の方とおしゃべりしてる姿。
さすがに東京だなぁ、と思いました。
そんな私は、プレミアムローストコーヒーMを買い、しっかり飲んで、そのまま爆睡しました。
私にはコーヒーのカフェインはあってなきがごとし。
そのうち、コーヒー談義をしたいです。

実は、逆流性食道炎で苦しんでいる私は、医者に言われて大好きなスパイス(カレーとか)をやめましたが、コーヒーについては断固拒否。
「先生~、コーヒーはやめられませんねん」
こうしてコーヒーを辞めずに病気と付き合う道を選択??
肺癌だけど、たばこを吸いながら付き合う、みたいな(言い過ぎ)
そして今日もプロトンインヒビターを飲みながら、コーヒーを飲み続けるのであった。

この年になると、病気とは克服するものではなく、お付き合いするものだと実感。
そして、財布は分厚くなるのです。
札束じゃなくて、診察券で……

ちなみに、そんな私が、コストパフォーマンスで許せるコーヒーのひとつがプレミアムローストコーヒー。
究極を求めるときは、値段は惜しみませんが、この値段にしてはいいんじゃないかと。
ミスタードーナツのコーヒーもなかなかよろしい。
意外に安上がりな私です。

って、ここまで前置きですよ!
ほらまた、プロットのない人の書く文章がいかにだらだらかが分かりますよね。

今日のミステリーは18禁 。
(もう何でもミステリーにしてしまえ!というこの頃←開き直り)

私にとって、ブログ世界・出版の世界…での18禁は謎だらけです。
ある投稿サイトさんでは、その行為を示す単語があれば18禁、と書かれております。
読者の年齢が不詳である限り、仕方のない措置という気もしますが……
でも書店に普通に並んでいる本の中には、ロマンス系とかじゃなくても、それなりに普通に有名作家さんが書いているものの中に、ページをめくってもめくっても、めいっぱいそういうシーン、ってのがありますよね…
18才未満はご遠慮ください、とも書いていないし。
帯からは多少その気配は伝わってきても、作者さんは10代の読者がたくさんいそうな感じだし。
それは『文学』として認められるからいいのかしら…
逆に18禁となっているブログさんとかでも、結構あっけらかん、と明るいエロもあったりして、そんなに気にしなくてもいいんじゃないのかな、と思ったりすることもあったりして。

それとこれの違いはなに?

確かに、私がこのたび連載させていただいている『雨』(実はみんな気象・自然現象なんです。1作目は雪、2作目は雨、3作目は星……)は、実は困ったのです。
今から宣言しますが、第4節以降は、自信を持って15Rの18禁です。
友人に言わせると、18禁より15Rだよ、というところです。
ちょっと流血沙汰があって(でも、まぁ、期待されるほど大したことないんですけど)。

しつこいけど、本当はハートフルものが好きです。私が目指しているのはいつでも『モチモチの木』と『ごんぎつね』。でもこれを書いたとき、世界の時事問題に触れた本を読みすぎて、いささか怒りが…

それはともかく、すでにupした第1章や第2章に出てくる、『話の流れ的なHシーン』はやはり18禁?
というのが私の疑問。
テレビドラマでなら描写として単語を書かないけど、裸で男女がベッドに入っている映像ってことですよね。
で、いちゃいちゃしながら会話がある、煙草を吸う、殺人がある、ってな感じです。
うちの真くんなんて、いじめのシーンやら、ちょっと流れ上の自慰シーンやら(すみません、こうして書くほうがよほどいやらしいです)、恋人(ということにしておこう)とのHシーンやら、なんていくらでもある。
彼って、どうも普通に男なので、いささか生々しいところもあったりするもので。

でも、本当に本文で見たら大したことないんですよ。
ただ、映像じゃないから、『単語』は出てきます。
Hシーンの会話って、ミステリー的には結構大事なんですね。本音が出てたりして、謎解きの一環にもなって。
これは朝ごはんの会話じゃだめなのです。
でも、単語は書いちゃうよ…
部位を示す語とか、やってますよ的な描写とかはどうしても出てきてしまうので……
(こうやって改めて書くほうがよほどエロい…文章で読んだら、するっと流れるのに)

昨日友人とそんな話をしていて、実は『18禁』というのは、逆に惹きつけるための印になるかもよ、と言われ……
なるほど。そうかもしれません。
そんなにattractiveな単語であるなら、喜んで18禁印をしちゃうけど…
でも今度は逆に、18禁と書いてあるのに、なんだこの程度、つまんねぇ、過大広告じゃないの、ってことにならないの?
それはそれでいささか不安。

だから『プチ18禁』という単語で印をつけることにしました。
つまり、プチ18禁はほとんどどうでもいいくらいのシーンです。
読んでいてもあまり萌えないし、普通にご飯食べる程度のシーンです。
今日の卵焼きはふわふわで、淡い黄が視界の中でとろけるように、口の中でも溶けた。
くらいの感じで、
前の穴よりいい締まり具合だ
なんてエロビデオの中の男のセリフを書いたりしてるけど……こうして取り上げるほうが余程恥ずかしい。
流れの中なら、本当に、するって過ぎちゃうような程度なのに…
それなら、恋人の髪を洗うとか、ふと手が触れるだけのシーンとかのほうが、よっぽどいやらしかったりするんですけど……


そんなこんなで……
好きなことを好きな風に、受け取る側の都合まで考える必要がない(言い過ぎですね、全ての人に受け入れられるのはやっぱり無理で、考えていられない、ということでしょうか)のがブログとは思うけど、一定のルールはあるんだろうな、と思いつつ、初心者の私は今日も悩んでいるのです。
ルールと言えば、ブログを始める前に、私の友人(ブログ歴長し)に聞いたことがあります。
『ブログをするうえで、自分が気を付けている決まり事ってなに?』
すると彼女はこう言いました。
『悪口や批判は絶対書かない』
なるほど、です。
相手の顔が見えないからと言って、なんでも好き勝手に言う風潮、うちの仕事場にもあるけど『ハートメッセージ』とかいう代物。無記名だと、みんな本当に無責任になりがちですから、気をつけなきゃ、ですね。
もちろん本音を言えるのは無記名のいいところですから、節度を守っていたらいいのかもしれません。
で、私もそれだけは守ろうと思いながら、無記名を楽しむのですが……

それにしてもやっぱり18禁はミステリー
皆様は、どうやって印をして、どんなふうに考えておられますか?
本当に、とっても悩んでしまいます…

反省:今日も長くなりました…m(__)m

お気が向かれましたら、コメントなどで教えてくださいませ。ついでにポチも。
でもこのポチ、友人に言わせると、ポチしたら変なページ(ってそれ、ブログ村さんとかFC2さんのページなのよ)にいっちゃって帰ってこれないんだけど、と…
うん、確かに。結構面倒なのですね。
すみませんm(__)m

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Category: 小説・バトン

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NEWS 2013/2/2 【海に落ちる雨】第2章up 

さて、第2章をupします。
少しずつ、この物語の当時の二人の状況が見えてくる感じでしょうか。
このあたりを初めて書いたのはたぶん10年くらい前かも…何度も校正して、あれやこれや付け足して、現在に至りますが、今でも美和ちゃんを書くのが楽しかったことを覚えています。

つかず離れずの同居人同士の距離もお楽しみください。

出張の準備をしていたらこんな時間になり、今から寝たら新幹線に間に合わなくなりそうなので起きていることに……そんなこんなで勢いでupしました。今から新幹線で寝ます

これをupしながら、小説のテーマについて考えていました。
あなたが書くテーマは何ですか、と聞かれることがあって、いつも答えに窮していていたけど、最近わかった気がします。
テーマはいつも『再生』
中学生のころ、聖書の授業で聞いたことを思い出します。
なぜキリスト教はよみがえりという発想があるのか。
砂漠の中であっても、イエス・キリストが生まれたナザレの村は、春には花が咲くのだとか。
花が咲く、ということの中に、再生の深い意味が含まれているのですね。

そして、私のテーマは、たぶんいつも再生なのかなぁ、と思った次第でした。


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Category: NEWS

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