FC2ブログ
02 «1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31.» 04

コーヒーにスプーン一杯のミステリーを

オリジナル小説ブログです。目指しているのは死体の転がっていないミステリー(たまに転がりますが)。掌編から長編まで、人の心を見つめながら物語を紡いでいます。カテゴリから入ると、小説を始めから読むことができます。巨石紀行や物語談義などの雑記もお楽しみください(^^)

 

【物語を遊ぼう】8.引っ張る力?:東野圭吾『分身』 

東野圭吾さんの『分身』を読んだのですが……
『100万人が泣いた』と帯に書いてあったので、どんな泣ける話なのかと思ったけれど、泣くこともなく終わってしまいました。
(ちょっとネタバレ含むかもしれません…でも帯を見ただけで、すでにネタバレですよね)

函館生まれの女子大生・鞠子と東京に住むアマチュアバンドの歌手・双葉。東京に住むと北海道に住む二人の女性。そのうちの一人のテレビ出演をきっかけに周囲で不穏な動きが起こり始める。
体外受精、クローンといった科学と倫理の微妙なバランスの上に成立する物語。
二人の関係は始めから読者には見え見えなので、設定そのものは特別目新しいことにも思えないけど…

東野さんの作品をすべて読んだわけではないので、私が語れることは少ないのですが、確かに『読ませる』。
取り敢えず、最後まで引っ張る力を感じます。
今回の場合は、謎解きよりも、なかなか主人公の二人が出会わないので、ヤキモキしてしまうのだけど。
もちろん、周囲で人が亡くなったり、怪しい人が訪ねてきたり、そして追われたり。
やがて一人はある目的のために連れ去らわれてしまうんだけど、なぜか追い詰められ感が少ない。

そう、何か物足りないのはなぜなんだろう。

扱うテーマの重さに比べて、なんだか二人の女性の心情に緊迫感がなくて、ちょっと拍子抜けしてしまったのかもしれません。あるいは、そんな重大な問題の上に誕生した人間にしては普通すぎて、実在感がなかったからかもしれません。
冷静に考えて、普通に健やかに育つとは思えないので……『おとぎ話的緊迫感のなさ』が感じられたというのか。
最も存在感があって、納得できたのは、主人公二人の遺伝子的『親』ともいうべき女性の、『気味が悪い』という感情。
全体としては、設定が大きい分期待も大きかったからか、読んだ後力が入らず、『で!?』と思わずつぶやいてしまいました…

人物の実在感という意味では、よく似た印象だけど、『プラチナデータ』のほうが上な感じ。
科学ものとしては『ブルータスの心臓』のほうが面白かった記憶があります。
例のごとく、50%の作家買いなので(しかも多分東野圭吾さんに関しては50%以下)、あまり語れないけれど。

ただ、『白夜行』は面白かった気がします。
登場人物に力があったからかも……際立ったキャラクターだった上に実在感があった。
だから、長さが苦にならなかった。
あ、でも、結構電車で読むことが多いので、本の分厚さは、持ち歩くのに苦はあったかな。

それにしても、本当に多くのテーマを扱っておられて、読み終わった後に何か残るかどうかはともかく、最後まで勢いで読ませる、そういう力がものすごく強い作品が多いと思うのです。
会話と地の文のバランスの絶妙さとか、説明の過不足とかに抜かりがないから、読みやすいのだろうな、と思います。

ただ、読んだ後も本棚に置いておこうと思った本は、今のところまだ『白夜行』(とついでの『幻夜』)だけ。
まだ、イチオシという作品に出会っていないだけなのかもしれないのですが。
お勧めがありましたら、教えてください。

ちなみに設定負けって自分で考えているときにもよくあります。
すごく面白い設定を考えても、お話の中身が伴わないまま、自分の中で消えていった設定の多いこと。
あ、いえ、自分をプロ作家さんと同じレベルで語っているみたいでいけませんね。そういう意味ではなくて、ただ、物語を語り終えるのは大変、ということでして。
設定が独り歩きしてもいけないし、どれほど流れが良くても設定がつまらなければ、それもだめだし。
やはり全てはバランスなんですね。

それにしても、とにかく、最後のページまで読ませてしまう力って、すごいものがあるなぁと思うのでした。

にほんブログ村 小説ブログ 長編小説へにほんブログ村 小説ブログ ミステリー・推理小説へ


スポンサーサイト



Category: 物語を遊ぼう(小説談義)

tb 0 : cm 2