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コーヒーにスプーン一杯のミステリーを

オリジナル小説ブログです。目指しているのは死体の転がっていないミステリー(たまに転がりますが)。掌編から長編まで、人の心を見つめながら物語を紡いでいます。カテゴリから入ると、小説を始めから読むことができます。巨石紀行や物語談義などの雑記もお楽しみください(^^)

 

[雨39] 第6章 水死体(1)/ 昔イラスト第2弾(1) 

さて、第6章『水死体』を始めたいと思います。
第5章までのあらすじは『limeさんのイラストと…』(→click)に載せております。
いよいよ病院から完全に姿を消した大和竹流。そして浮かび上がる3年半前の雑誌記者の自殺。
竹流が関わっていたのは何? 雑誌記者の自殺の裏には何が?
ミニコラム復活しました。教えていただいた記事の畳み方を実践(*^_^*)
そして発掘された昔のイラスト(というより記事の1ページ)を公開しております(^^)
→続きを読む、からどうぞお入りください




 マンションに戻ると、美和の靴が玄関にだらしなく脱ぎ捨ててあった。真は、薄暗い照明の中に浮かび上がるヒールの低い靴をしばらくぼんやり見つめていたが、きちんと揃えようと屈んだ。そのとき、まだ自分の身体に深雪の残り香が纏わりついていることに気が付いた。麝香の香りに似ている、それは深雪の身体の匂いのようだった。それを感じた真の身体の芯は、まだ火照っている。
 今日の自分はどうかしている、と真は思った。深雪と寝るという行為が、極めて動物的で肉体的な欲望であると同時に、生命が太古の昔から宿している生殖という聖なる儀式であるということを、この身体が認めていることを感じていたのだ。

 ただ不思議だった。深雪と寝るとき、真は明らかに自分が生物学的に雄であることを強く感じている。雌を追い込み、その性器の中に己の雄を突っ込み、生殖行為をするという当たり前の生物としての営みをしていると感じている。だからこそ、そこに愛おしさや優しさが入り込む隙間がなく、ただ寝たい、やりたいと思っているのだ。それは高校生のとき美沙子としていたセックスとはどこか違っていた。あの頃も、ただやりたいという気持ちがあったのだとしても、生殖行為という感覚はなかった。ただ思春期の男の身体の欲望に過ぎなかったと思う。そう思うと、今まで自分は何か勘違いをしていたような気持ちになった。

 何故、深雪と寝るときにだけ、こういう感覚があるのだろう。他の女と寝ても、一度も雄としての本能を強く感じたことはない。自分の遺伝子を残そうとする雄の強烈な本能は、端から自分には縁の無いもののように思っていた。性行為に対して、子孫を残すという意味づけ自体を感じていなかったし、自分の遺伝子にはどこか認めてはいけない穢らわしいものがあると思っていた。だから、これまで曲がりなりにも付き合ってきた女性に、本能からこの遺伝子を残すために子どもを宿して欲しいと願ったことがない。
 深雪には子どもができないことは聞いていた。その理由までも確認したことはないし、その言葉を信じる根拠もなかったが、深雪がそれについて嘘を言う必要などないと単純に信じていた。子孫を残せない女に対してだけ、真自身の身体も心も特殊な反応をしている。

 真は美和の靴を揃えてから部屋に上がり、リビングに入った。
 リビングのソファで、美和が上着も脱がずに丸まって眠っていた。
 初めて美和を抱いたとき、子どもができたら責任を取ると言った。だが、自分の心は、そんなことはないと知っていたのではないか。今日、深雪を抱いてきて、ここに立っている自分自身は、もう以前の自分ではないような妙な感覚があった。

 だが、こうしてこの部屋の中で真の帰りを待っている美和に対して、愛しいという思いを抱いていることは、決して嘘ではなかった。それはもしかすると、女としてではなく、家族のような、あるいはお伽噺の幼い恋人のような、そういう優しい愛情なのかもしれない。こういう種類の愛情に身を委ねるのは、ある意味では心地よいことなのかもしれない。自分が人間として正しい、理性的な優しい人間であるような錯覚を感じさせてくれる。
 美和はどのくらいこうしていたのだろう。そう思うと、今更だが胸が痛んだ。

「美和ちゃん」
 美和は呼び声に少しだけ反応したが、相当飲んだのか、起きる気配がなかった。
だが真が抱き上げると、彼女は目をこすった。
「先生?」
「うん」
「……もう帰ってこないかと思った」
 寝ぼけているような口調だった。

 帰ってきたとは言え、することはしてきているのだから美和に言い訳する言葉もなかった。寝室に運びベッドに寝かせると、美和は目が廻る、と言った。布団を掛けてやると、美和はもう話しかけてこなかった。
 その寝顔を暫く見つめ、額に口付けると、真はリビングに戻ってまだ美和の温もりが残るソファに座った。
 上着の内ポケットから煙草とライターを取り出し、火をつけて、上着を脱ぐこともなくそれをゆっくりと吸った。相変わらず味のない煙草だった。
 一人になると、本当は女のことなどではなく、全く別のことを考えている。その自分の中にある不可解な『何か』が、自身の底のほうから湧き出してきそうになると、慌ててそれを意識から遠ざけた。気が付くと、手のひらに爪の瘢が残るほどきつく自分の手を握りしめていた。

 身体には深雪の匂いが残っていた。不快にも思わず、何も感じず、ただそういうものだという気分だけが移り香と一緒にまとわりついていた。さっき感じた不可思議な印象を、真は考えたくないと思った。深雪との行為にあんなにも身体は悦んでいたのに、何かもっと大事なものを感じるための器官は完全に麻痺していて、全く機能している気配がなかった。
 そういう意味では美和を抱いていたときも同じだったのかもしれないと思ったとき、理性はそれを完全に否定した。美和は違うと、その理性らしいものは真自身を説得しているようだった。

 煙草が一本終わると、真は手の仕事を探すようにテーブルの上の資料を広げた。
 美和が調べてきた澤田顕一郎の略歴だった。

 澤田顕一郎。
 頭の中でその人物を思い描くのに、たっぷり十秒は時間が掛かっていた。
 澤田の出身地は大分県の国東半島で、実家は廃寺になっていた。父や伯父と同じように地方から出て、地元の期待と後押しと誇りを背中に負って東京大学で学び、東京の出版社に勤めてから直ぐに九州日報に勤めを変わっていた。
 長崎の原爆被害については随分いい仕事をしたようで、某かの賞を貰っていた。
 地元大分から衆院初当選が昭和三十年とあるから、僅かに二十代後半である。その後当選六回。三十を過ぎてから東京で結婚、相手は後に首相になったSの親戚にあたるらしい。澤田の初当選の翌年が総裁公選であり、八個師団誕生の年になる。その年から四代目でSが首相になり、澤田はSの元でそれなりに羽振りのいい時期を過ごしていたようだった。時の大蔵大臣は後に首相となるTで、澤田自身は政策に対する意見ではTとはかなりぶつかることが多かったようだが、対立するというほどではなかったように見える。その後S内閣は退陣を迎え、昭和四十七年にT内閣が誕生した。澤田はこのS派を席巻したT派にはやはり加わらなかったようで、とは言えアンチT派にも加わらず、ここから数年の二派閥対立時代には中央ではすっかりなりを潜めている。

 澤田はこの頃、地元や地方を中心に、文化芸術方面の組織の結成、コンサートホールや美術館の整備に力を注いでいたようで、近隣諸国との友好にも一枚噛んで、民間レベルの文化交流に協力をしており、その中で天皇陛下にも拝謁している。その際に、『地方の外交』と賞賛され、一部からは悪態をつかれつつ、主に中国やソ連、東欧の国々との文化交流を助けている。
 T内閣から二代目に、Tとは対立関係にあったFが首相になったのが昭和五十一年。
 新津圭一が首を吊った年である。
 相変わらず澤田の位置ははっきりしていない。しかし、地元大分県では災害対策や観光事業のために尽力し、かなりの人気であったようで、彼の代議士生命は底辺で脈々と繋がっていた。昭和五十年、新幹線が博多に到着するが、この時岡山から博多までの土地確保のために何年も前から協力していたらしい。
 美和が澤田と握手したというのは、この頃のことなのだろう。

 昭和五十一年一月二十日、新津圭一の自殺。同年二月四日、ロッキード社不法献金発覚。
 そして同年十二月にF内閣が発足すると、澤田はここでようやく中央の政治にも名前を出されるようになっている。新幹線のために使った手腕で成田問題を鎮めろとでも言われたのか、ご意見番の一人となって、それから二年以上、澤田顕一郎はF内閣の一員として、着実な歩みを続けているように見える。
 真はその紙の束をパサリとテーブルの上に置いた。
 新津圭一と澤田顕一郎のつながりは見えてこない。全ての出来事は澤田顕一郎だけを遠巻きにして起こっているように見えた。


 ソファでほとんど眠れないまま朝を迎えた。意識があるのかないのか自分でも分からない状態で、朝、電話の呼び出しでたたき起こされた。
「もしもし」
 電話に出ることは出たが、次の言葉が出てこないまま黙っていると、向こうからははっきりとした声が聞こえてきた。
「お早う。まだ寝ぼけてるの?」
 添島刑事だった。
「出頭命令ですか」
 頭が廻っていなくて、浮かんだ言葉をそのまま言うと、向こうで彼女は呆れたようだった。声が尖っている。
「まぁ、そんなところね。ここは横浜海上保安庁。あと半時間で来れる?」
「横浜? 無理ですよ。一体何ですか?」
「あなたに会って欲しい人がいるのよ。もっとも、既に『人』の域かどうかは不明だけど」
 真は受話器を握りなおした。

「つまり、あなたが言っているのは、水死体という事ですか」
「ご名答。早く来てもらわないと解剖ができないのよ」
 真はまだ暫く声も出せずに受話器を握りしめていた。頭の中を色々な種類のあてもない疑問や曖昧な答えが浮かんでは過ぎっていた。まさか、ということがあるのか、と自分の中で自分に問いかけている。いや、この女が冷静にしゃべっているのだから、それはないだろうと自分で答えを出している。
「まさか、とか思ってるんじゃないでしょうね。いくら何でもそれは私も困るわ」
 一瞬だけ真の頭を過ぎった最悪のシナリオは、添島刑事にさっさと否定された。
「パトカー回すから、急いで支度なさい」
 それだけ言うと電話は切れた。

 その時隣の寝室から美和が出てきて、明るい声で、寝過ごしちゃった、と言った。
「何の電話?」
「添島刑事だ。ちょっと出掛けてくる」
 いつ帰ってきたのとか、昨日はどうだったのとか聞かれる前に逃げるほうが賢明にも思えたし、タイミングは実によかった。真は洗面所に行って髭を剃って顔を洗った。気が付くと昨日の深雪の移り香がまとわりついたままだった。とりあえずシャツだけ着替えたところで、もうインターホンの呼び出しがあった。
 まるで犯人として連行されているようだと思いながら、サイレンを鳴らしたパトカーに乗せられて横浜に向かった。何故自分が呼ばれるのだろうと思ったが、やって来た警察官も何のために連れて行くのか分かっていないようで役に立たなかった。


          * * *

 その朝、いつものように早朝のジョギングをしていた伊藤健二は、去年四十年以上勤めた会社を定年退職し横浜の潮の匂いのする古い家に妻と二人移り住んだのだが、たまたま気が向いてその日に限って海のほうを覗き込んだという。沖のほうで工事のクレーンやタンカーが見えている中に、何かチラッと気になるものが視界の隅に見えたからかもしれない。
 コンクリートの低い堤防の向こうで、明け方の鉛色の海水は静まり返っていた。
 その物体は陸のほうに近づくのでもなく、沖へ逃げるのでもなく、居場所を決めかねたように静かに浮かんでいた。初めはそれが何か、はっきりとは分からなかった。しかしそのすぐ後、伊藤は腰が抜けるほど驚いて、近くの電話ボックスに飛び込んだ。

 横浜海上保安庁の辻利泰は、海上保安官としては三十年目のベテランだった。その日はようやく目が覚めるか覚めないかの早朝に呼び出しを受けた。水死体と聞けば一分一秒も惜しいように飛び出していく夫の後姿を見送って妻も三十年目を迎えていた。
 巡視艇は半時間後には現場に到着した。
 伊藤健二が発見したときよりも死体はかなり沖合いのほうに移動していたが、発見は困難ではなかった。巡視艇はゆっくりと船首を死体のほうへ近づけ、数メートルのところに来ると停泊した。船のデッキから死体揚収ネットが下ろされる。

 水死体は薄いベージュの作業服のようなものを着てうつ伏せに浮いていた。髪には海のごみやらヘドロがまとわりついていて、はっきりしないが見掛けよりもがっしりした男のようだった。
 死体から二メートルの距離を置いて揚収作業が続けられた。ネットは海面下に沈められる。幸い潮流は緩やかで死体は流れていくことはなく、死体の直下にネットが入り込むと上手く縦一メートル、横二メートルの長方形のネットに向きを合わせて四角のロープを引っ張る。
 ネットは太いパイプの枠組みの底になっていて、死体はうまくそこに乗った。

 辻と一緒に巡視艇に乗っていた若い保安官は無言のまま手術用の手袋をつけて、デッキの上に乗った死体を仰向けにした。腹は例の如く割れて、血液はもう海へ流れでてしまっていた。普通の人間なら倒れてしまうような情景も、辻にとってはいつもの仕事の風景だった。
 すばやく船は基地に向かって走り始めていた。多少の揺れはものともせず観察を行う。別の若い保安官が記録を始めている。若い保安官は二人とも辻と共に巡視船に乗って、この手の死体に慣らされていた。この光景を一般人が見ても、とても水死体を検分している空気を感じることはできないだろう。それほどに、辻たちには日常の業務だった。最も、だからといって楽しい仕事とは言えない。

「身長は百七十二センチ、着衣の乱れはありませんね」
 水死体の衣服は薄いベージュの上下で建設現場の作業衣に似ている。背は高くはないが体つきはがっしりしていたと思われる。しかし、そういう生前の面影を素人の目で想像するのはかなり困難な状態だった。それでもこれらの死体を見慣れた専門家は、死後に修飾されたものを彼らの頭の中で取り去って、生前のイメージを作り始めている。
「六十は出てますよね」
 服の内に何か身分を示すものを身に付けていないか見ても、それらしいものはなかった。辻は、少なくとも自殺をするようなタイプの男ではないと思っていた。

「あれぇ」
 記録している若い保安官が声を上げた。
「この男知ってますよ」
「本当か」
「えぇ、芝浦でジャズバーを経営している老人ですよ。何年か前、芝浦の近くで身元不明の水死体が上がった時、この男が通報してきたんですよ。俺、初めての揚収だったんでびびってたんですが、この男、死体なんて見慣れてるって顔で、俺に頑張れやって声を掛けてくれたんですよ。その後何度かこの人の店に行きましたからね。今年、ハマに移ってからは久しく会ってなかったんですが、えっと、何て名前だったかなぁ」
 辻は死体を見つめていた。
「死体を見慣れている?」
「えぇ、何か戦争の地獄を山のように見てきたからだって言ってましたよ」

 こうした事情で身元は直ぐに割れた。警察に連絡すると一時間後には本庁から刑事がやって来た。異例のことだった。
「本庁臨時特捜部から来られた添島麻子警部補です」
 横浜警察署の馴染みの若い刑事が、緊張気味に本庁からのお客を辻に引き合わせた。
「特捜? なんだ、一体?」
 しかも女か、と思った。
 その上美人ときている。どうせ警察学校を優秀な成績で卒業して若い頃からトップを約束されていた経験の浅い青二才だろうと思うと、辻は幾分か敵意を露にしていた。

「この男はブラックリストに名を連ねていますので」
 澄んだ明瞭な響きの声が、その美人の口からこぼれた。
「ブラックリスト?」
 その辻の質問を無視して添島刑事は死体安置室に入り、お世辞にも美しいとは言えない水死体を見ても顔色一つ変えなかった。しかも、その遺体の腹は割れて、内臓には半分喰いちぎられた痕がある。女ならもう少し可愛げのあるところを見せてくれ、と思う。
「検屍の結果が出るまで、何とも言えませんがね」
「でも、あなたの勘では殺し、ですね」
「私の勘など」
 辻が言いかけると、添島刑事は振り返り、親子ほども年の離れた男を真っ直ぐ見上げた。
「あなたの勘はほぼ間違いないと、父から聞かされていました」
「お父上?」

 辻が、こんな立派な娘を持つ父親の知り合いなどいないと思いを巡らせている間に、添島刑事は水死体を確認するべく手袋をはめていた。その横顔には明らかな面影はなかったが、添島という名前を思い返して、あぁと思った。
「するとあなたは、あの捜査一課の添島刑事の」
「娘です」
 添島刑事とはそれほど親しい間柄ではなかったが、デスクにつかず歩き回るのが性に合っていると言って、刑事一筋で三十年以上勤め、今時珍しい人情刑事だと噂されていたが、その情が仇となって一昨年殉職した。エリートコースとは程遠い叩き上げの男で、若い頃から随分苦労したと聞いていた。女ばかり三人の子供で苦労させなくて済むと思っていたら、長女が刑事になってしまって、某かの試験に通って国際警察機構に勤めていると笑っていた、その顔が思い出された。数回、水死体が縁で一緒に仕事をしただけだが、印象のいい男で、何度か飲んだ。
 あれは私と違って頭もいい、母親の血でしょうな、と恥ずかしげに自慢していた、これがその娘なのか。その母親は一番末の娘が小学校に上がる前に癌で亡くなったと聞いている。

「確か外国にいらっしゃったのでは」
「父が亡くなって、妹たちの面倒を見なければならなくなりましたので。まだ成人していない妹もおりますし」
 添島刑事は裸になった遺体を検屍の邪魔にならないように見ている。
「死後数日、ですか」
「そうですね。解剖を始めてもいいでしょうか」
「あと一時間ばかり、待って頂けますか」
 この死体を見ても顔色も変えないというのは、優秀ということとは関係はなさそうだった。
「身内の方がいらっしゃるのですか」
「えぇ、まぁ、そのようなものでしょうか」
 添島刑事は承諾を得て、電話を二箇所に掛けていた。

 亡くなった男の名前は田安隆三、年齢は不詳だが七十前後のようだという。身体つきは筋骨逞しく、とてもそのような年齢には思えない。身体には、古傷は別にして、生前のものらしい傷はなく、口の中に泡沫が見られ溺死はほぼ間違いがない。つまり少なくとも水中に没した時点で、意識は別にして生きていたということだ。硬直はまだ緩解しておらず、腐敗の程度も酷くはない。しかし水死体には独特の臭いがあり、こんなふうに腹を割かれた酷さには目を覆うものがある。
「この傷は、船のスクリューか何かに巻き込まれたものでしょうか」
「おっしゃる通りですね」
 添島刑事は落ち着き払っている。辻ほどのベテランならともかく、いくら刑事と言っても、水死体を見て若い女がここまで落ち着いていられるのは不思議だった。
「慣れてますね」
「一年以上、マルセイユにいましたの。水死体はもっと酷いものを随分見ましたわ。あなたが見たほどではないかもしれませんけど」
 そうなのか、と納得した。

「この男はどういう男なのですか」
「長い間傭兵をしていたと聞いています。中南米、中東のいくつもの国を渡り歩いて、いつからか芝浦でジャズバーをしている男です。実は昨日この男の店で爆発事故があって、行方を捜していたのです」
「何か犯罪を?」
「さぁ、どうでしょうか」
 添島刑事の説明では、爆発事故は午後四時ごろで、周辺の倉庫を二棟巻き込んだが、負傷者はいなかった。周辺への聞き込みでは、ここ数日店を開けていないようだったという。事故の原因は明らかに仕掛けられた爆弾によるものだということが分かっている。
『身内の者』を待つ間、辻保安官と添島刑事はコーヒーを飲みながら、亡くなった父親の添島刑事の話をして次第に打ち解けた。こ憎たらしい程落ち着いていた彼女がコーヒーを口にしてほっと息をつくのを見たとき、辻保安官は妙に安心した。

 十時過ぎにパトカーのサイレンが保安庁の前で止まって、暫くすると刑事が若い男を連れてきた。
 息子、というわけではなさそうだ、と辻は思った。
「横浜海上保安庁の名探偵、辻利泰保安官よ」
 若い男は緊張した面持ちで頷いた。
「こちらは新宿の名探偵さん。失踪人調査では、かの名瀬弁護士のお気に入りの捜査官ですの。特に未成年の事件では大変な活躍ですわ」
 添島刑事の言葉に若い男が何か言いたげに彼女を見た。辻保安官は、若いくせに妙に苦労癖のついたタイプだと思った。ハーフかクォーターか、異国の血が混じっているのか、瞳に碧の色が混じって髪の色も幾分か明るい。
「名瀬弁護士はご存知でいらっしゃいますか?」
「勇名は聞こえていますね」

 若い男は添島刑事につつかれて頭を下げた。
「相川真です」
「辻利泰です。よろしく」
 相川と名乗った男は添島刑事の方に何か言いかけたが、彼女はそれを遮った。
「会って頂いてもよろしいですね」
 辻が頷いたので、添島刑事は自らその若い男を死体安置室に連れて行った。辻はその後ろからついていった。随分印象的な男だと思ったが、生きているときに田安と名乗っていた水死体との関係は窺いようもなかった。

「シャワーを浴びる間もなく来たでしょ」
 よく通る声で添島刑事が言ったので、辻保安官の耳にも聞こえた。
「え? ……あぁ、そう、その、パトカーがあっという間にやって来たし」
 確かに若者の身体からほんのりと甘い香りがしていた。女の香水の匂いなのだろう。女にはそれなりにモテそうなタイプにはみえた。近頃の女は、こういう中性的なムードを好むらしい。いや、中性的というよりも、性別や種の枠を越えて、まるで別の生き物のようにも思える。性別は確かに雄だ。顔つきも整っていはいるが、女顔などでは決してない。何より、不思議な目の色だった。見つめていると、男だろうが女だろうが強烈に引き込まれてしまうような何かを、雄としての魔力のようなものを持っているように思える。

 安置室のドアを開けるときに、添島刑事は相川真に確かめていた。
「水死体は、大丈夫?」
 辻保安官は遺体確認の現場で気を失った遺族をしばしば見てきた。腐乱した夫の遺体に取りすがって泣いた妻も見た。父の死体に気を失った三十代の逞しげな息子もいた。総じて女は泣きわめく率が高く、男は倒れてしまう率が高いように思う。
「田安さん……、なのか」
「聞いたの?」
「パトカーの中で、芝浦の爆発事故の事を」
「その通りよ」
 すでに腐敗臭は漂ってきていた。相川真は気丈な横顔をしていたが、添島刑事がドアを開けると顔をしかめた。
 手袋をはめた捜査官がシートを取り去ると、こちらに足を向けた男の裸体が必要以上に膨れ上がって見えた。若い捜査官は顔だけを見せるはずだったが、この仕事を始めて一年目の若者で、水死体と二人きりで残されて舞い上がっていたようだった。

 辻はいつの間にか相川真の後ろに立っていた。もしかして倒れたら、と思っていた。
「どう思う?」
 淡々と添島刑事は聞いた。
「殺されたんですね」
 意外にも若者の声はしっかりしていた。
「腹の傷は死後のものね。でも酔っ払って海に落ちたとは考えにくいわね」
「誰が?」
「あなたに心当たりは?」
「俺? 何故?」
「昨日、彼の店に行ったわね」
 この女刑事は、水死体の視覚的衝撃を利用して、関係者の口を開かせようとしているかのようだった。
「昼間のことですか?」
「そう、何の用だったの?」
 相川真は添島刑事の方を見た。
「あなたこそ、何故田安さんの死体に付き合っているんです?」
「上からの命令よ」
「上?」
 添島刑事は相川真の腕を摑み、辻のほうを振り返った。
「解剖を始めて頂けますか」
 辻は頷いた。辻もこの若い男を別室で休ませた方がいいと思った。添島刑事に遺族のための控え室の場所を教えると、彼女は、それより御手洗を教えてもらったほうがいいかもしれません、と言った。





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Category: ☂海に落ちる雨 第1節

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[雨:番外] limeさんが描いてくださったイラストとあらすじ 

真(limeさん)
真2
このページを開いた途端、あれ、別のブログに来ちゃったんでは?と思った方も多いはず(*^_^*)
そうなんです。このイラスト、なんとなんと、小説ブログ「DOOR」のlimeさんが真を描いてくださったのです!!!!!!!!!!(;_:)ヽ(^o^)丿\(^o^)/(*^_^*)(;_:)
limeさんから「自由にお使いください」との有難いお言葉を頂いたので、ここに載せさせていただきました。limeさんのブログ…は有名なので?皆様ご存知とは思いますが、一応clickして飛べるように…→→小説ブログ「DOOR」
言わずもがなですが、この絵の著作権はlimeさんにあります。無断引用・転用は固くお断りします。
作成秘話などは、またlimeさんが書いてくださるに違いない????
とにかく、ものすごーく、ものすごーく、ものすごーく嬉しいです(;_:)\(^o^)/
なぜか昔から、真はあまり描いたことがなかったのです。
あ、これは誤解を招く表現ですね。昔はいささか私もイラストを描きまして…今は描きません、というより描けません^^;
で、下手なイラストを描いていた昔でさえ、真のイラストは少ないし、なんかイメージが自分でも上手くまとまらなくて、描けなかったのです。思い入れが強すぎると、そんなものなのかもしれませんが。
それをlimeさんがするりと絵にしてくださったのです!!!
実は実は、本当のところを白状しますと、こころの中でlimeさんが描いてくださらないかなぁ、なんて見えない光線を送っていたのですが、ネットの海の儚いラインに乗って、届いたのではないかと思ったくらい、びっくりしまして…
やっぱり【電脳うさぎとココロのありか】(→limeさんのお話へGO)なみに心が伝わったに違いありません(;_:)(*^_^*)
limeさん、本当にありがとうございます(*^_^*)m(__)m

limeさんの絵、今更なんですが、本当に素敵ですよね…
何だか、温かくて、そしてミステリアスで。
小説も面白いし、limeワールド!って感じの素敵なブログで、そしてココロがこもっていて。
いちファン(あ、私がlimeさんの一ファン)のだらだら小説にこんな素敵な絵を描いていただいて、もう本当にもったいなくて…
ありがとうございます…(;_:)

嬉しさのあまり、アップも載せてしまいました。
目を見ていただくと、右目は碧の左目は茶~黒(光線の加減で…)、そう、この人オッドアイなのですね。
多分青い目のオッドアイの人よりも目立たないと思うのですが。
ま、よく小説に出てくるオッドアイですが、これはこの子が自分の出生に不安を覚えていて、自分に刻印された異国人の母親(正確にはハーフですので、本人はクォーター)の影として捉えている、その表現型のひとつにすぎませんので、あまり本編で云々することは少ないのですが……
髪も…剣道をしていて、時々ちょんちょんに切っては、竹流には栗のように扱われている?のですが(あ、栗は撫でられない…)、面倒くさがりなので放置して、この長さになって…また切って…の感じなので、まさにこんな時があるのです。
新宿に事務所を開いてからは(25の時です)、多分近くの床屋が彼に目をつけていて、ちょっと伸びたら店に呼び込んでいるに違いありません。
で、この世の中を拗ねたような顔! もう、本当にこんな人なんですよ。
ま、今ではこの初々しさは半減して、ちょっとおっさんですけれど。

さて、お礼に、真と竹流のハネムーン(って、勝手に呼んでる作者。本人たちは迷惑でしょうが)の話を書く予定です。
大学受験頑張ったから褒美にお前の国に連れて行けと家庭教師に駄々をこねた真が、初めて見たイタリアの町々。
行ってみたら…みんな自分の知らない名前で彼を呼ぶので、すごく不安になっていく…そんな顔だわ、とこのイラストからインスパイアされて、以前こっそり書いていたイタリア旅行編(多分、このイラスト描いていただくことがなかったら、決して日の目をみなかった…^^;)を改定してお出ししたいと思います。
この旅、アドリア海クルージングから始まって→パレルモ(シチリア)→ナポリ→ローマには寄らずに海岸線を上がってピサ→シエナ→フィレンツェ…ここでローマに連れ戻され、しばらくローマ滞在→アッシジという旅だったのです。
この旅の前が、幸せのピークだったと思います。この旅で、結局光の裏にある影を見てしまったのかもしれません。イタリアって、それにぴったりな国ですし。
その後はいろいろありまして。
【海に落ちる雨】が終わりましたら、年表なども公開できればと思います。

で、この場面は、シエナだ! 泊まっていたのは教会を改装した小さなホテル。中に教会が実際にあります(本当にあるホテルです)。その庭にこんな像があったことにして(卓球台とオリーブ畑はあったけど…)、ちょっと一人ぼっちで寂しいので、あの美しいカンポ広場に行って……
旅の途中、時々真は一人で放り出されるんですね。竹流には色々訪ねなければならない人(多分老人、たまに女)がおりまして。で、その間にたまに一人でうろうろしてあれこれ巻き込まれる真。言葉もわからないし、変なもの見えるし、どうしましょう、ということで、「シエナの休日」演じていただきたいと思います。
わくわく(●^o^●)(って自分がわくわくしてどうするんだ???(?_?))
こうご期待(*^_^*)



さて、【海に落ちる雨】再始動です。
津軽で三味線に夢中になっていて、ちょっと間が空いてしまったので、あらすじをまとめて載せてみました。
併せて、第5章のあらすじも載せておきます。


<第1章:同居人の留守>
相川探偵事務所所長・相川真(27)は、もと家庭教師(?)かつ保護者である大和竹流と同棲を始めて2年半が経過している。大和竹流(=ジョルジョ・ヴォルテラ)(36)は美術品の修復師であるが、実はヴァチカンを支える裏組織ヴォルテラの跡継ぎであり、本人は望んでいないが、いずれローマに帰ることを期待されている。
このところ竹流が考え込んでいることが多くなっていたが、真は事情を聞きだすことができない。親であり兄であり、また教師でもある同居人がいなくなることが、実は不安でたまらなくて、考えたくないと思っている。
そんな時、竹流がしばらく留守にするといって出かけて行った。
ちょうどその頃、竹流が某経済・社会雑誌のインタビューに答えた記事が掲載される。オーナーとなっているレストランやギャラリー、修復師としての仕事について、そしてついでにプライベートにまで触れた記事には、同居人の真のことまで書かれていた。ふたりの関係をちょっと誤解されるような答え方で…
事務所のメンバー、共同経営者の女子大生・柏木美和、孤児施設出身のヤクザ志望・宝田三郎、バイトの主婦たち、その他事務所のある新宿で働く知り合いたち、などなど周りからインタビュー記事のことを面白がられている気配を感じて、いささか面白くない真は、恋人というよりも体の関係だけを続けている銀座のバーのママ・深雪に会いに行ったりしながら、竹流の帰りを待っていた。深雪は代議士・澤田顕一郎の愛人という噂もあるが、実のところはよくわからない。
そんな時、自分の実の父親のことを知る老人・田安隆三の経営するジャズバーで、真は楢崎志穂という雑誌記者と会う。志穂は、澤田顕一郎のことを調べていて、真に深雪から澤田のことについて何か聞いていないかと尋ねるが、真は覚えがないと答える。

<第2章:同居人の入院>
同居人・大和竹流が仕事の内容も告げずに出かけて3週間、新宿の調査事務所所長・相川真のところに、警視庁の捜査1課の女刑事・添島麻子刑事から電話がかかってくる。
竹流が怪我をして入院しているというのだ。病院へ行くと、竹流の怪我は真の想像以上に酷いもので、山梨の県道で見つけられてから数日意識がなく、昨日集中治療室から出たばかりなのだという。その上、修復師として『神の手』と言われていた右手まで傷つけられていた。医師はその手が元通りに動かない可能性を告げ『まるでいたぶられたようだ』と言うのだが、当の本人は話をはぐらかして何も言おうとしない。
はるかに年上で、自分が頼ってばかりいた相手が傷ついてベッドから離れられないでいる姿など初めて見た真は、いつものように身体の関係だけを続けている銀座のバーのママ・深雪に会ったりしながらも、頭の中では竹流のことでいっぱいになっている。
しかも、竹流の背中には数年前の古い火傷の痕があるという。真は同居してから彼の背中など見たことがなかったことに改めて気づき、さらに竹流が自分に何も話さないでいることに傷ついたり、イライラしたりしてしまうのだった。
竹流の恋人の一人であるブティックのオーナー・室井涼子に入院中の竹流の世話を頼み、何も話そうとしない竹流の怪我の事情を知るための糸口をつかもうと、真は竹流の仲間であるゲイバーのママ・葛城昇を訪ねて事情を聞こうとする。しかし、昇も元ボクサーのイワン・東道も何も知らないという。竹流の仕事仲間たちは、ボスである竹流のためなら何でもするような連中で、真に、自分たちで何とかするから、お前は引っ込んでろと告げるのだった。

<第3章:同居人の恋人たち>
竹流の許可のもと、事務所の共同経営者で女子大生の美和は、竹流のマンションに泊まり込んでいる。実は彼女の恋人は事務所のあるビルのオーナーで、ヤクザなのだが現在タイに出張中。
ある日、真が帰りの遅い美和を待っていると、電話が2本かかってきた。一つは竹流の無事を確認する男からの電話。そしてもうひとつは、真が付き合っている銀座のバーのママ・深雪のパトロンだという噂の代議士・澤田顕一郎の秘書からだった。澤田が真に会いたいと言っているという。
美和の帰りが遅いので、事務所に行ってみると、事務所は荒らされていて、いくつかのどうでもいいようなフロッピーやテープ類が盗られていた。そこへ、ジャズバーの経営者・田安隆三のところに出入りしていた雑誌記者・楢崎志穂が現れる。先日、いささかけんか腰になっていたことを謝ろうと思っていたという。彼女から、『美和を見かけた、どうやら自分(志穂)と同じ男をつけていたらしい』という話を聞いて、志穂に事情を聞こうとするがはぐらかされる。一体何がどうなっているのかと思いながらマンションに帰ると、美和が戻ってきていた。
美和は、竹流のところに面会に来ていた男のあとをつけていっていたという。そしてその男から、『下手に関わると危ないから手を引け』と言われたことを告げる。美和はその男と会ったことがあるような気がするのだが思い出せなくて気持ち悪い、と真に告げる。
ちょっと昔話や恋愛談義(と言っても美和の一方的?)をしながらいいムードになっていた二人だったが、結局何もなく、終ってしまった。いささか美和のご機嫌を損ねてしまったようなのだが……
翌日病院に行った真は、竹流に怪我の事情を問い詰めるが、結局相手にされず、何も教えてもらえない。
事務所に訪ねてきた添島刑事からは、彼女がある筋から特別な仕事を任されていて、どうやらその件に竹流が関わっているらしいことを匂わされる。そして、そこには澤田や深雪も関係しているような気配が…
もしかして、竹流の怪我と澤田が関係している? 澤田から接触があれば、知らせてくれと言う添島刑事は、最後にちらりと爆弾発言を残して去っていく。実は、彼女もまた、大和竹流の恋人の一人!
添島刑事には澤田の秘書から連絡があったことを告げていないのだが、これが糸口かも知れないと思って、真は意を決して、澤田に会うことを決めた。
一方の美和は、澤田の秘書らしい男が真を迎えに来たことに驚く。自分に何も教えてくれなかった真に憤慨しながらも、事務所の従業員、気の弱いヤクザ志望の宝田三郎、そして少年院上がりの高遠賢二に『真が誘拐されたからさっさと後をつけて』と言い残し、自分は竹流の病院へ。
竹流は慌てる美和を窘めて、あっさりと受け流す。しかし、帰るふりをして見張っていた美和は、竹流が誰かと電話をしていて、『真が澤田に呼び出されたらしい』などと会話する声を聞いていた。
やはり、竹流の怪我と、真の恋人・深雪のパトロンである澤田は何か関わっているのだろうか?

<第4章:同居人の失踪>
恋人(というよりセフレ)である銀座のバーのママ・深雪のパトロンという噂のある代議士・澤田顕一郎から呼び出された真は、赤坂の料亭で会うことになった。澤田は竹流の怪我と何か関係しているかもしれないと、女刑事・添島麻子、雑誌記者・楢崎志保からにおわされている真は、探りを入れるつもりで乗り込む。もちろん、深雪とのことでちくちくいたぶられる可能性もあるのだが…と思いつつ行ってみると。
話の内容は予想もしないことだった。
真に、澤田のもとで働かないかという勧誘だったのだ。それも、澤田は真の実の父親、相川武史(世間ではアサクラタケシという名前で通っている)の大学の先輩であり、真の出生の事情、伯父・功が真を引き取ったことも知っていた。澤田は、自分のもとに来ることが真の安全を保障することになると告げる。しかも、ジャズバーの経営者・元傭兵の田安隆三は澤田の育ての親だという。
話の内容には警戒しながらも、澤田のペースに巻き込まれて飲んでしまった真は、過去の話にいささかセンチメンタルになっていたことも手伝って、心配して真の帰りを待っていた美和とセックスをしてしまう。もちろん、美和のことは可愛いと思っていたので、勢いではなかったつもりなのだが、事が終わってしまうと自分の中で何かが冷めていることに気が付く。
そこへもう一人真のことを心配していた竹流からの電話。何も話してくれない竹流に対してイラついていたにも関わらず、声を聞いているうちに恋しさがこみあげて来てしまう真に、竹流が『この件が終わったら、俺のところに来るか(=仲間として仕事をする、あるいは自分の全てを話すというニュアンス)』と言い、最後に『誰も信じるな』と告げる。
美和は、真と電話の相手(=大家さん、つまり大和竹流)の間には割り込めないことを感じながら、真と初めて会った時のことを思い出していた。
そして翌朝、二日酔いの真のもとへ、病院から竹流が姿を消したという電話がかかってきた。

<第5章:誰も信じるな>
竹流の姿がないと聞いて、真は病院へ急いだ。そして確信する。竹流は何か事情があって自分から出て行ったのではないか。その後、入院費を届けに来た男がいて(竹流のところに面会に来ていた男?)、さらに、大和邸の執事・高瀬には、自分がいなくなったら真に渡して欲しいとある新聞記事が残されていた。竹流の失踪は本人の意思には違いないが……
しかし、看護師も心配していた通り、彼の身体はまだ十分回復していたとは言い難く、しかも効き手である右手は不自由なままのはずだった。
添島刑事が、竹流をどこかに隠したのかと怒鳴り込みに来る。少しばかり喧嘩のようになってしまったが、彼女が焦っている理由は、内閣調査室の河本という男が調べている『ある男』の件で、竹流の方が首を突っ込んできたというのだ。危ないから関わらないようにという河本からの説得にも関わらず、竹流は深くこの件に入り込んでいるようだという。
『誰も信じるな』という竹流の言葉を胸に、あれこれと思い巡らす中、真は澤田の育ての親だったという田安隆三のジャズバーを訪ねるが、彼は留守で、楢崎志穂が田安を待っていた。しかし田安は現れず、真は志穂に連れられてあるラブホテルに行く。志穂が言うには、このホテルは『ある雑誌記者がある女と不倫密会に使っていた』という。そして、その雑誌記者は自殺していて、女はどうやら香野深雪だというのだ。志穂はその雑誌記者の後輩であり、好意を抱いていた相手であり、彼の死に疑問を抱いていた。志穂は竹流のところに面会に来ていた男を見張っていたという。
一方、美和が、事務所によく顔を出す新聞記者・井出に確認したところ、井出がその事件の記事を書いていたことが判明。『自殺した』雑誌記者・新津圭一には8歳になる女の子がいて、寝たきりの妻がいる身でありながら香野深雪と不倫関係にあったこと、どうやら政財界の当時の大物を脅迫しており、逆に追い詰められて3年半前に自殺した、ことになっていた。井出は協力を約束してくれる。
そして、深雪に呼び出された真は、彼女から1か月だけ預かっていてほしいと、貸金庫の番号・印鑑・手紙などを預かる。そして、ふと気になった志穂の言葉を確認する。
楢崎志穂は、真のことを肉親の恋人、と言っていたのだ。しかし深雪は、自分には妹もいないし、家族も知らないのだと答えただけだった。

さて、だんだん複雑になってきて、わけもわからない感じがしますが、謎?は大体出揃ったかな?
ここからは解決に至る成り行き…として、あれこれ起こる側線には惑わされずに、真と一緒に『彼』を探しながら、成り行きをお楽しみください(*^_^*)


Category: ☂海に落ちる雨 第1節

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NEWS 2013/5/12 津軽戦利品/庭の守り神 

GWの充電が済んで、忘れないうちにと思って書いた旅行記に使ったパワーも回収できて、休んだ後の仕事の怒涛もちょっとだけやり過ごして、昨日は三味線のお稽古でついに!太鼓のレッスンもしてもらって、ようやく今日、家でまったりしています。
ということで、今日は更新をがんばるぞ、と。
庭掃除もしなければなりませんが。

ちなみに、太鼓のレッスン。
三味線というのはもともと伴奏する楽器でして、そこから出発して、津軽は前奏の独奏部分をメインにした曲を作るようになって、世間に浸透したと思うのですが、やはり根本は伴奏=唄付け。しかも民謡の場合、曲・節の長さは唄い手次第なので、あ~~~とか唄ってても、いつ終わるか分からないので、顔伺いながらアレンジ力が問われる。つまり、唄主導なのです。
唄の場合、太鼓が必要になりまして。
この太鼓の部分を教えていただいたのです。
いつか、唄も…と思っておりまして。
糸
行く前にも糸を変えましたが、また一部変えました。
三味線の竿、今一の糸を張っておりませんが、手前から一、二、三と細くなっていきます。
左にある3つの丸まった糸がその3本。一と二は絹、三はナイロンです。
津軽は、弾くというより叩くので(初めて聞いた人は、叩いている!打楽器なんだ、と納得してくださいます)、三の細い糸が絹だと、すぐ切れてしまいます。で、ナイロンかテトロン。一時テトロンにしてみましたが、硬くて痛かったのでナイロンにしています。津軽は、はじいたり掬ったり、結構糸を操るのです。
使い終わった糸…切れるまで使うこともありますが、くたっとしてくるので、どこかで変えます。そのいらなくなった糸、ありがとうの気持ちで、お正月にまとめて神社にどんと焼きに出す笹に結びつけております。
(これは、ある人がやっているのを聞いて、自分も真似をしています)
ちなみに、三味線の竿、私の三味線は沈みトチであまりはっきりしませんが、木の模様…斜めに筋が入っているのが見えますでしょうか。高い三味線ほど、このトチがぐるぐる巻きです。

お土産=戦勝品。
津軽土産
金木の三味線会館で売っているTシャツです。右の黒は定番で、ピンクとオレンジは毎年出る限定カラーの一種。
ピンクのは後ろのデザインです。
津軽土産
いつも必ず購入してみんなに配るお土産。
斜陽館=太宰治の生家の前で売っているリンゴジュース。濃厚で、各種リンゴの味(10種類くらいある)が別々に作ってあって、甘い~酸っぱいまであります。私は酸っぱい紅玉が結構好き。で、このジュースは木から落ちて捨てるようなリンゴではなくちゃんと木になってるリンゴから作られています。
ちなみに、リンゴは岩木山ふもとのリンゴが美味しいですよ!
私は初めて青森に行ったとき、リンゴってこんなにおいしい果物だったんだ!とびっくりしました。
今まで食べていたリンゴは何か間違っていた!と。
そして、シャリシャリのリンゴが入った焼き菓子の『らぷる』…いつも山のように購入して送ります。
八甲田はチーズケーキ。帰りに買います。美味しいです。
青森土産はぜひ、これらをお試しください。

お庭の守り神、フクロウ君。再びの登場です。
守り神
我が実家に約40年鎮座まします人相の悪いカエル。
守り神
このくらい人相の悪いカエル、最近はなかなか見かけません…
で、庭の蓮の鉢に泳いでいるメダカと金魚。金魚は勝手に越冬。1匹大きいのが2年越し、他は1年越し。
金魚は割とじっとしていて、カメラを構えていても動かないけど…
問題はメダカ!
なんというか、すごい敏感で、影が動いただけでも逃げるし、カメラのピントを合わせる音もダメ。
なかなかシャッターチャンスがありませんでした。水面の木の陰と一緒に写っています。
めだか
きんぎょ
そして今、庭のヒオウギが綺麗。朝と夕方の光の違いもお楽しみください。
ちなみに朝の写真のほう、バックの青は、実は昔の火鉢なのです。
夕日を受けたら、頬を染めた少女みたいですね。
ひおうぎ
ひおうぎ

さて、本筋の記事に向けて、今日は頑張ります(*^_^*)

Category: ガーデニング・花

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