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コーヒーにスプーン一杯のミステリーを

オリジナル小説ブログです。目指しているのは死体の転がっていないミステリー(たまに転がりますが)。掌編から長編まで、人の心を見つめながら物語を紡いでいます。カテゴリから入ると、小説を始めから読むことができます。巨石紀行や物語談義などの雑記もお楽しみください(^^)

 

NEWS 2013/5/15 探偵はバーにいる2/ 災害の備え 

探偵
今度のパンフレットは、ショーパブのマッチ風で、華やかさを感じさせるものです。
そう、観てまいりました、『探偵はバーにいる2』

前半はちょっと遊びが多すぎて、ファンには面白いけれど、これを初めて見た人には、あれ?という感じがするんじゃないかと思ったりもしました。映画1本のストーリーとしての出来のよさは1作目のほうが上という気がします。
ただですね、細部は今回もよくできていいたのです。
大きな流れはともかく、細かい部分での遊び、エンターテイメントとしていうならば、上出来です。
ショーパブの華やかな小物とか、探偵の部屋とか、ケラーオーハタの小物とか、『ちょっと前』の時代を十分に感じさせる小道具にあふれていて。
乱闘シーンが大好きな私は、それだけでも楽しんでしまいましたし、今回も松田龍平さん演じる高田が最高。
原作では、本当に探偵は一人ぼっちで戦う印象の話なのですが、そこをあえてエンターテイメントにするべく、常に高田が近くにいる(例のごとく、来るのは遅いけど)。
しかも、乱闘中に高田がやられた!って感じの場面での、洋ちゃんの必死な顔、などなど、人物のかかわりは十分に楽しませていただきました。
しかも、絶対それ、アドリブを素で撮って、そのまま使っているんじゃ、というようなシーンがあちこちに。
水曜どうでしょう、かと思っちゃった。
ちなみに、そんなに銃とかぶっ放していいのか、って点はもう無視しましょう。
It's a show time! ですから^^;

そして、後半に追い込む感じは前作同様、GOOD!でしたよ。
結局、結末=犯人がこんなやつで悲しすぎて動けない、という洋ちゃんの感じも、よく伝わってきましたし。

個人的には、最後の屋上で、探偵に煙草を渡して、ライターを差し出す高田、その手を覆うように火をもらう探偵のシーンにきゅん、となりました。
いえ、決して腐ではないのですが、これはもちろん屋上だから、風が強くてってシーンなんだけれど、事件の結末にちょっと悔しくて何となくすっきりしなくて、悲しいような、世の中こんなものかって思っているに違いない探偵に煙草・火を差し出すだけだけど、友情というほどにもクサくない距離感、でも独立した人間同士が信頼しあっている(来るの遅いけど)感じが、このシーンに集約されていて、その真下にススキノの交差点があるのです。
この映画の題名が、ススキノ大交差点、というのが、このシーンでぎゅっと心に感じられる。
色んな人生が、良くも悪くも交錯した場所なんですね。

記事を書いていたら、やっぱりいい作品だった!としみじみ感じてきました。
も一回観ようかな。

ちなみに、1作目は小雪さんの超絶な感じ(やっぱり美しい、というのか雲の上的印象)が物語を引っ張ったという気がして、作品としての出来栄えに大きくつながったのかも。
今回のヒロインの尾野真千子さんも全然悪くないのですが、小雪さんがちょっとスーパーだったというだけで。
でも、今回のヒロインはギャップを楽しむ、という感じですので、超絶美人では逆にダメなわけでして。

そして、私が気になって仕方がなかったのが、作中でやたらと食べられている、北菓楼のおかき。
もう、大好きなんです。北海道に行くと、山のようにお土産に買ってきます。
特に甘海老が最高。
細部に…こだわっているんですね、きっと(^^)


ところで、映画館に行くには、神戸の僻地にいる私は、半時間ばかり車で山を越えていくのですが、ちらりと見ると、ガソリンは少ないし、携帯の充電も危ういし、あらら、と。でもレイトショーに間に合うべく、そのまま走りました。
今、災害が起こったら大変!とか思いながら。

そう、災害への備えとして、必要なもの…
常にガソリンは満タン、携帯の充電も満タン、ベッドの傍には靴。
ガソリンに困るのは絶対見えているし、携帯は懐中電灯代わりにもなるし、大震災の時裸足で出て行って怪我した人が多いので靴は必須、と。
避難袋とか置いていてもすぐ忘れるけど(どこに置いたかわからなかったり^^;)、この3つはまずやっておくというのが神戸の人間の結論のようです。
もちろん、水とかも大事だけど。

そんなことを考えながら、昨日は映画レイトショーに走った日でした。
眠い……(@_@)

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[雨42] 第6章 水死体(4)/ 昔イラスト第2弾(4) 

添島刑事と真の会話、後半です。今回、第6章『水死体』、そして第1節の完結です。


「三年半ほど前……ICPOにいた?」
 添島刑事が何を聞くのか、という顔で真を見た。
「えぇ」
「竹流とは、その頃からの知り合い……ですよね?」
「知り合ったのはもっと前だけど。それがどうかしたの?」
「一九七六年の一月ごろは? 彼が何をしていたのか知りませんか」

 添島刑事は厳しい目つきになった。
「それが何か関係あるの?」
「彼が火傷を負ったのはその頃だ。丁度ロッキードの頃」
 真がそう付け加えると、添島刑事は少し考えていたが、やがて呟いた。
「ソ連」
「ソ連?」
「ロシア貴族の末裔がウクライナに住んでいた。ロシア帝国の財産の一部がそこにまだ隠されていて、それが日露戦争の頃に幾つか新潟へ持ち出されたという噂があったの」
「財産? 金塊か宝石? それとも美術品ですか」
「絵画よ。何百億かって話だったわ。何しろものはレンブラント、ルーベンス、デューラー……、値段のつけられないものもあったかもしれない。ところが蓋を開けてみればそれは贋作で、新潟県は贋作を安く買い取ったことはあって、それはそんな古い時代の事ではなくて、近年のことだって言ってたけど。鑑定家が贋作の確認をしたと思うわ」

「新潟」
 真はその地名を繰り返した。今の話はまさに高瀬の言っていたことと一致する。
「彼は贋作を盗むんだと言って笑ってた」
「贋作? それで見逃した?」
「えぇ、まぁ、そういうことになるかしら」
 添島刑事は明言を避けた。彼女が覚えていたのは、彼女なり職業意識への罪悪感が残っていたからなのかもしれない。
「本物だった、ということは?」
「新潟県が鑑定を複数の人間に依頼したの。そういう可能性は十分に検討されたはずよ」
「本物ではなく、贋物であることを証明する為の鑑定ですか」

 真は呟くように言ってから、初めてこの理屈のつかない事件が同居人のテリトリーに入ってきたと思った。
 三年半前、竹流が寺崎昂司と『贋作を盗みに』新潟に出掛けていた。何があったのかはわからないが、そこで竹流は寺崎昂司を庇って背中にあんな火傷を負った。
 丁度その頃、新津圭一は誰かを脅迫していたが、『自殺した』。この二つの出来事の接点は不明だが、竹流は高瀬のところに新津の自殺の新聞記事を残していた。
 そして今、竹流は河本、つまり内閣調査室長が追いかけている人物の関係者と接触している。それが多分、美和がつけていった男の事なのだろう。美和がどこかで会ったことがあるようで、思い出せなくて気持ちが悪いと言っていたその男。
 その男を、何故か楢崎志穂もつけまわしている。彼女は、香野深雪が新津圭一の恋人、いや不倫相手だったという。その上、何故か彼女は香野深雪を『肉親』と言い、更に澤田顕一郎を恨んでいるようなことを言っていた。

 河本が追っている相手は誰なのか、河本自身も分からないらしいと添島刑事は言う。勿論、河本がこちらに情報を全て広げてみせるわけはない。だが、その『誰か』を澤田も香野深雪も捜しているらしいという。
 そして、澤田顕一郎の親代わりだったという田安隆三が殺された。
 まるでばらばらに思える出来事が、静かに絡まり始めている。

 自分の事として考えてみれば、深雪と付き合うようになったのは一年以上前のことだ。澤田顕一郎はずっと自分の『愛人』の若い恋人の事を知っていたはずなのに、今までは何も言ってこなかった。真の父親が特別な仕事をしていると知って、初めて接触してきた。澤田にとっての相川真の意味は、愛人の恋人ではなく、相川武史またはアサクラタケシの息子ということだ。それは河本にとってもそうなのだろう。

 二年半前から、大和竹流と同居している。
 そのきっかけになったのは、真が付き合っていた小松崎りぃさの自殺だった。あの時、胃潰瘍と肺炎でひっくり返っていた真を庇いながらも、真の看病を知り合いのロシア人女性に任せて、竹流はどこかへ出掛けていた。
 ソ連だ。彼の専門分野の一つに聖画があるので、彼がソ連に出掛けることはそれほど珍しいことでもないのかもしれない。もっともそれは、イコン画家だったという、そのロシア人女性の夫の絵を捜しに行っていたからだと聞かされている。今度の事と関係しているのかどうかは分からない。

 竹流はいつも仕事に出掛けるときは楽しそうだった。嫌な顔をしていたことはほとんどない。真自身が引っ掛かっているのは、彼が今回出掛けるとき、珍しく乗り気がしないような顔をしていたことだった。ただ絵のことなら、彼はあんな顔をしなかっただろう。何か嫌なことが絡み付いているのだ。
 それが澤田顕一郎や、河本が追いかけている誰かや、真の父親のことと関係しているのだろうか。
いずれにしても、始まりは多分新潟にあるという『贋作』なのだろう。

「もう大丈夫?」
 不意に添島刑事が優しく気遣うように話しかけてきた。
「どうして今度は田安さんのことに関わっているんですか。上からの命令って」
 ようやく吐き気が落ち着いてきて、少しだけ頭が働いてきた。
「私にもよく分からないのよ」
「あなたは捜査一課でしょう? 何故こんなことに首を突っ込んでいるんです?」
「今回は特別な手伝いをするようにと言われているわ。それ以上はあなたに説明する義務はないと思うけど、でも私もちゃんと説明を受けているわけではないのよ」

 真はしばらく部屋の硬質な床を見つめていた。
「河本さんに聞けば、竹流の居場所はわかる?」
「どうかしら。でもあなたはあの人がどういう種類の人間か知っているでしょ。無害そうな顔をしているけど、彼が要求してくる代償は高いわよ」
「代償?」
「あなたのお父上が何を考えているのかわからないし、今回彼がどこからどんな命令を受けているのかも知らないけど、河本に接触すること自体は問題がないんでしょうね。彼があなたを心配して駆け引きという危ない橋を渡ろうとしているのでなければ」

 真はまだ床を見たままだった。窓の外の大きな楡の木が作る光の小さな輪は、ちらちらと揺れながら、単色なのに複雑な景色を足元に展開している。
 そして、十分に三度は頭の中で彼女の言葉が廻ってから、真は顔を上げた。
「父に、会ったんですか?」
 添島刑事は真を見つめ返した。
「河本は私に言ったの。しばらく一課を離れて、特別な任務につくように、上との話はついていると。ジョルジョ・ヴォルテラ、つまり大和竹流が病院に担ぎ込まれたと連絡があった日よ。私が受けた命令は、大和竹流と、澤田顕一郎と、そしてあなたを見張っているように、ということだった。あなたを見張っておく理由は二つだけでしょ。一つはあなたが大和竹流と接触すれば、あるいは相手はあなたと彼の関係を知っているのだから、あなたに接触してくるかも知れない、そうすれば相手の尻尾が捕まえられる。もう一つは、それでもあなたが危ない目に遭うのは困る、なぜならそれを回避させることであなたの父親に恩を売ることができるから。でも、昨日私が呼び出されて会ったのは、澤田顕一郎よ」

「澤田?」
「自分の恩人の店が爆破されたということで、どういうことか所轄も警視庁も飛び越えて、河本のところへやって来た。澤田は自分が捜している相手が、河本の捜している相手と同じだということを知っている」
「澤田はあなたたちの味方ではないのですか、あるいは利害を一致させているわけでは?」
 添島刑事は首を横に振った。否定というより、分からない、というような感じだった。真は続けた。
「今回は澤田が竹流をさらっていったという可能性は? 澤田に彼をあんな目にあわせる理由はなくても、その『誰か』に接触するために必要な駆け引きの切り札になるかもしれない、ということは? 相手は何かを探していて、それを竹流が持っていると思っているのでは」
「考えられなくはないわね」

 真は、添島刑事自身が何もかもを知らされて動いているわけではないことを知った。上の考えには理由など問わずに従うしかない、というのが彼女の立場だ。自由にやっていられる真とはずいぶん違う。
「でも、澤田が大和竹流の素性を知っていて、尚且つ賢明な人間ならば、彼には手は出さないでしょうけど」
「どういう意味ですか」
「ヴォルテラの跡継ぎに手を出すということがどういうことか、多少はこういう世界の事情を知っている人間なら分かっているはずよ」
「澤田は分かっていると?」
 添島刑事が真を見つめる目は思慮に富んでいた。

 改めて見ると、厳しく鋭いとばかり思っていた彼女の眼は、深みのあるハシバミ色に近いブラウンで、奥に芯が強く深い優しさを湛えているようにさえ見えた。人というのは、近づいて語り合ってみなければ分からないことがあるのかもしれない。
 いや、どこかで、何かを期待している。同居人につながる人間の誠意というやつを、だ。組織や上からの圧力とやらに屈することなく動いてくれることを。もちろん、それは真の虫のいい願いに過ぎないのだろう。

「澤田は田安隆三とは古い付き合いよ。田安隆三は傭兵を辞めた後でも、情報を売って生きていた。ヴォルテラの名前を知らないはずはないわ」
 真はしばらく添島刑事と目を見合わせていた。
「それは、つまり、竹流をあんな目にあわせた奴は、彼の叔父のことを知らないということですか? それとも、知っていて挑戦状を叩きつけた?」
 添島刑事も真から視線を逸らさなかった。
「どうかしらね。駆け引きをする気なら、あえて挑戦状を叩きつけたくはない相手であることは確かね。何より敵にするよりも、利害を一致させたほうが得な相手だし。大体、もしもあのイタリア人が彼のあの姿を見たら」
 それは真も同意見だった。
「では、知らない、と?」
「分からないわ」

 竹流に勝算があって自ら消えたのなら問題はないと信じたい。真は両手を組み、額を乗せた。自分の手が異様に冷たい気がして、心のうちまで震えた。
 田安隆三の店の地下の射撃場。あれは一体どうなったのだろう。添島刑事は何も言わないが、知っていてあえて黙っているのか、それとも誰かが恣意的に隠匿したのか、多少は気になったが、ここで真がそれを追求することはあまり賢いことではないような気がした。
 それから長い間二人とも黙っていた。

 締め切った部屋にいるからなのか、昼間とは思えない静けさだった。今頃、検屍官が田安の遺体から何か情報を探り出しているのだろう。田安ほどの人間が、あんな死に方をするのかと思うと、人間の人生の終わりというものに対しては、あまり多大な期待をしないほうがよさそうだった。
「もう大丈夫? もし辛いなら、少し横になって休んだら? 顔色悪いわよ」
 真は返事をしなかった。女に気遣われるというのも、多少有り難くない感じがする。
「女に慰められるのはいい気分じゃないでしょうけど、私は単に慣れてるだけだから」
「慣れてる?」

 真が聞き返すと、添島刑事は穏やかな優しい声でゆっくりと話した。
「水死体よ。ICPOで仕事してるとき、盗難美術品の担当だった。ICPOってほとんど事務仕事みたいな組織なの。現場に出ないと事情が摑めないって上司に掛け合って、一年ばかりマルセイユに住んでいた。色々、地元の警察と揉めたりしたけど、いい経験だった。盗難品の出入りと一緒に随分水死体にもお目にかかったわ。あまり有り難くないことに、慣れちゃったのね」

 真はしばらくぼんやりとその言葉を考えていた。
「そこで、竹流と知り合ったんですか?」
「マルセイユで私に住まいを提供してくれたのは、フランスでは知られた収集家の一人だったわ。そこで随分と絵の事を教えられた。その男の自慢は数点のジョルジョーネと言われている作品だった。ジョルジョーネ自身は生涯も謎に包まれているし、同時代のティツィアーノの作品と見分けのつかないものもあるし、本当かどうかは定かじゃなかったけど、ジョルジョはそれを見るために年に何度かはマルセイユに来るのだと言っていた」
 真は少し懐かしむような顔をした添島刑事を見て、それから視線を逸らせた。

「彼の仕事を知っていたんでしょう? 単に絵を見るためだけに来ていたのではないと」
「どうかしらね。ジョルジョは上手く尻尾を摑ませないで仕事をしていたし。それに、そうだと確信したときには既に特殊な関係になった後だったし、それでも暫く悩みながら仕事をしていたけど、丁度父が亡くなって、ICPOを辞めるいいきっかけになったわ。続けていたら何時か彼を追い込まなくちゃならなかったかもね」

 真は暫くの間、添島刑事が彼を本名で呼んだことに僅かな抵抗を感じながら黙っていた。二人きりでいる時に、彼女は彼をその名前で呼んでいるのだろう。それは真が永遠に呼ぶことのない名前だった。
 自分の感情の中に湧き上がる何かを押さえつけるように、真は質問した。
「その、新潟の事件に詳しい人は?」
「事件? 噂と声明でしょう。事件とは言いがたいけど」
「でも、あなたはICPOで盗難美術品に関わっていた。そういう分野に暗いわけではありませんよね。何か妙な感じはなかったんですか?」

 添島刑事は暫く何をどう答えるか考えていたようだったが、とにかく差しさわりのない事を答えたように見えた。
「あいにく、彼が何をしようとしていたのかは知らないわ」
「でも贋作を盗みに行くと、そう言っていたのでは?」
「あの男は時々酔狂で妙なことをしでかすから」
 酔狂とは言え、贋作を盗みにいく、とはどういうことだろう。当然のことだが、わけもなくそういうことをする男ではない。

 真は添島刑事が差し出した煙草を断った。
 気分はまだ悪くて、とても煙草を吸う状態ではなかった。いつの間にか空は重く暗くなり、光の輪は床から消えてしまっていた。

 田安隆三の解剖の結果、相当量のアルコールが体内から検出された。死因は明らかに溺死、しかも東京湾の水で、ということだった。死亡推定日は六月二十三日、四日前である。勿論時刻までは綿密にはわからない。水路部の情報も合わせると、入水場所はやはり芝浦の近くではないかということだった。他に死因と結びつきそうなものは何も出てこなかった。腹の傷はやはり死後のものだということだった。
 追加の報告があれば知らせると言われて、真は事務所の電話番号を残して東京に戻ることにした。多くは期待しないでくれ、というような気配だった。

 パトカーで送ろうかと問われたが、断って電車に乗った。
 電車の揺れは気分の悪さを増長するばかりだった。何が自分を苦しめているのか、考えたくなくて手は震えていた。電車の扉に体の右半分を預けて外を見ていると落ち着いてくるかとも思ったが、気分の悪さは変わらなかった。
 さっき見たばかりの遺体の残酷な姿と、電車の中の人間たちが、同じ種類の生き物だとは思えなかった。それはつまり、誰にもいつでもそのような姿になる可能性があるということだ。
 真は目を閉じた。
 今はもう何も考えたくないと思った。

(第6章 完結・第1節 完結)



さて、これで事件は起こりました(って、どんだけ長い『事件』なんでしょう。普通はひとつ死体を転がしておけばいいのに……あれこれ起こって、やっと第6章で水死体ひとつ^^;)。
ここからは、ひたすら足跡を追いかけていく第2章に入ります。
因果関係はともかく、水死体を見てからはすっかり不安の塊になっている真は、よからぬ想像を打ち消したいからか、やたらと過去を思い出す始末→『若葉のころ』。
高校生のころの可愛い(かな?)真をじっくりお楽しみください。

以下、コラムです。

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Category: ☂海に落ちる雨 第1節

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