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コーヒーにスプーン一杯のミステリーを

オリジナル小説ブログです。目指しているのは死体の転がっていないミステリー(たまに転がりますが)。掌編から長編まで、人の心を見つめながら物語を紡いでいます。カテゴリから入ると、小説を始めから読むことができます。巨石紀行や物語談義などの雑記もお楽しみください(^^)

 

【幻の猫】(7) 真実の一歩手前 

真250kuroneko250
えーっと、ですね。そうなんです。また長くなってしまいまして、どうしてなのか自分でもわからなくなっちゃいました(?_?)
やけくそでこんな題名をつけてしまった…
もう次回最終回とか言うの、やめようかなぁ。

つまり、前回までのお話で、すごい竹流が悪人になっているので(いや、悪人ですが)、ちょっと言い訳させてやろうと思ったら、長くなってしまって。
今回のラストシーンは、もともとこの第7話のファーストシーンだったのに^^;

いえ、もう言い訳は終わりにします。まずは、竹流の言い訳を、聞いてやってください。
ついでに、プリンター/スキャナーのWiFiまで馬鹿になっておりまして、おろおろ…の大海でした。





 竹流はクラリッサと一緒に、ゆっくりと歩くジョルジョの黒い背中と長い尻尾を追いかけていた。猫は時々彼らを待つ。そしてまた、時々人や車の陰に隠れて見えなくなる。そんな時でも、尻尾だけが視界に残っている。
 幻を追いかけているような気がする。

 幻。

 パレルモで陸に上がってから、昔からヴォルテラの家に出入りをしていた幾人もの人たちに会った。彼らのいる場所を選んで通っていたわけではなかったが、逆にこの国の中では、ヴォルテラにゆかりの人のいない場所を探す方が難しかった。クルーザーを預かってもらったり、長年の無礼を詫びる必要もあったし、自分が日本にいる間にも、直接『息子』に何も言わないチェザーレの代わりに、何彼と連絡をしてくれようとした人もあったのだ。

 その懐かしい人々の顔を見て話をすれば、里心もつくというものかもしれない。
 あれほど苦しい思いをしてこの国を出たのに、帰ってきてしまえばすべてが愛おしい。
 日本の湿度を帯びた緩やかな気候、四季の花々の豊かな香り、古の人々が愛でたあらゆる品物、芸術的なものも、ただ日常の生活で大事にされていたものも、そして愛しい女の肌や声、それらが完全に自分を満たしてくれたと思っていたのに、まだ何かが足りないというのだろうか。

 あんたの国に連れて行ってほしいと真に言われたとき、この国に戻ればこんな思いを抱くことを予想していたのではなかったか。それなのに、ほとんど何もわかっていない真をダシにして、ここへ戻ってしまった。

 一緒にいれば、全てが満たされるのだと思っていた。たとえ世の中の全てが、神までもが敵であっても、二人ならばこの世界を渡って行けるのかもしれないと考えた時もあった。それは、確かに彼が、竹流が幼いころから抱えてきた誰にも何にも埋めることができなかった空洞を埋める唯一のものだと、そう感じていたからだ。
 それは今でも決して思い違いではないと思う。だが、何か間違っていたのだろうか。
 方法が?
 それとも人間というものは、完全に満たされるということは幻想にすぎないのだろうか。

 今、幻に溺れそうになっている。

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 カンポ広場に入って行ったジョルジョの尻尾が、ふいと光の中に消えた。
 おや、と思ってクラリッサを見ると、彼女も不思議そうに竹流を見上げた。黒猫なのに、光の中に見失うなんてことがあるのだろうか。

 日曜日の広場のにぎわいは予想以上だった。
 多くの人々が、カップルや友人同士、家族で輪を作り、あるいは歩き、あるいは座りこみ、子どもたちはまるで足元も見ずに走っている。クラリッサの方へ走り寄る子どもに気が付いて、彼女の腕を抱き寄せると、クラリッサがふいに竹流を見て言った。

「ベルナデッタは教会へは行かなかったのかしら」
 竹流はクラリッサを見つめた。
 確かに、彼女は大変信心深い人だった。今日は日曜日だし、出かけるとしたら教会だろうに、バールとはどういうことだろう。『片羽根の天使協会』に残っていた女性は、いつものことだからと言ったが、曜日を勘違いしていたのだろうか。

マンジャの塔
 聞いていたバールは広場の片隅にあったが、訪ねていくと、主人は忙しそうにカプチーノを淹れながら首を横に振った。今日は祭りの初日だから、イベントの行われる店に行ってみないかとベルナデッタに勧めたのだという。バールの主人は家族のために予約を入れていたようだが、急な用事で行けなくなったらしい。ベルナデッタに連れの女性がいなかったかと聞くと、彼は首をかしげた。

カンポ広場
 広場を横切り、探し当てた店の入り口には、中に入りきれない人々が覗き込んでいた。表には、ラ・フィエスタ・ジャポネーゼ、と町のあちこちで見かけたのと同じ看板の上に、、四人組の大道芸人たちを撮った芸術的な写真が貼られていた。怖いような美人のフルート奏者と、袴を穿き三味線を持った日本人男性が背中合わせに立ち、二人の西洋人らしい男が向かい合わせで座っている。

 店の中では、写真の大道芸人たちがパフォーマンスをしていた。パントマイムと手品、そして哀愁の漂うフルートとギターの調べ。席はほとんどが埋まっている。

 入口からはそれほど奥に入っていない席に、ベルナデッタの背中を見つけた。痩せた背中を少し丸めるようにして、舞台の方を見つめている。
 竹流は一度クラリッサと顔を見合わせてから、狭い通路を通ってベルナデッタの座る席に行き、そっと呼びかけた。しっと誰かの窘めるような音が聞こえる。二人は、ベルナデッタの他には誰も座っていないテーブルの席についた。ベルナデッタは何も言わずに舞台を見つめたままだった。

薔薇
 舞台のほうを見ると、そのパフォーマンスは大詰めのようだった。美しく悲しい顔をした青年がふと高い場所を見上げ、静かに微笑む。
 青年の胸のあたりに、真紅の薔薇の花束が咲いたとき、ふとベルナデッタを見ると、声も出さずに涙を流していた。
 周囲の拍手と声援の中で、竹流はベルナデッタの手をそっと握った。
「ベルナデッタ」
 呼びかけた時、ベルナデッタは小さな声で、舞台を見つめたまま答えた。
「もうしばらく、このままここにいさせて」
 ざわめきの中で、よく通る彼女の声は竹流の鼓膜に振動のように届いた。

 竹流もさすがに何も感じないわけではなかった。あるいは、握りしめた彼女の手から直接、何かが流れ込んできたのかもしれない。
 クラリッサが不安そうに竹流を見つめている。だが、何も答えてやることはできなかった。

 たとえばベルナデッタが誰かの罪を何もかも知っていて、それを誰にも告げることなく黙っていたら、それはやはり罪になるのだろうか。もちろん、法律としてはそうなのだろう。けれども、彼女の思いの中にあるものを責めることができるほどに正しい人間が、果たしてこの世にいるのだろうか。

 次に始まったパフォーマンスは『蝶々夫人』をモチーフにしているらしく、パントマイムを演じる青年は、特別女装のようなことはしていないのに、人物そのものと言うよりも、裏切られながらも信じようとする女性の細やかな感情を、僅かな動きの中で表現しているように見える。ヴェルディの国の人間にとっては、『友よ、見つけて』や『ある晴れた日に』、『さらば、愛の巣』などの曲想を聴いただけで、物語の芯にあるものを理解するので、大仰に表現する必要がないのだろう。

 だがただ裏切られて悲しいと言うのではなく、生きて恥を晒すよりは死を選ぶというのは、あまりにも激しい想いだ。そこに重なる三味線の音が、ヴェルディの西洋的な音をかき消していく。いや、死を越えて、どこか遥かな場所へ行こうとする想いの鮮烈さが、後半の曲の中に、まさに情念のように籠められていた。

 随分と思い切ったモチーフを選択するグループだと思った。舞台の上で艶やかで激しい、そして情念を見事に浮かび上がらせているのは、まさにあのフルートの女性の立ち姿だ。だがその女性は、パフォーマンスが一段落し、レヴューのように明るいショウタイムに変わると、舞台の雰囲気を一変させた。大道芸とは言え、恐ろしい完成度だ。

 竹流はベルナデッタの手を握ったままだった。
 どこかのタイミングで話を切り出すべきなのか、あるいはこのまま、静かに彼女を見守っているべきなのか。
 だが、見事なパフォーマンスに感心したりベルナデッタを思いやっている余裕が失われたのは、まさにその直後だった。


 真?
 その瞬間、竹流は思わずベルナデッタの手を離していた。そして、逆にベルナデッタが驚いたように竹流を見た。
三味線
 フルートもギターも、西洋の楽器であることを忘れてしまうような、見事な和のリズムを刻んだ。それに煽られたように続いて三味線を叩く真は、いつものようにその外見は静かなままだった。そしてやはりいつものように、一の糸から二の糸、三の糸へ指を移すと、静かに目を閉じる。あまり大柄ではないが、背をすっと伸ばして目を閉じている姿は、人の目を惹く。微かに唇と頬が震えているように見えるのは、照明のせいかもしれない。

 このところ、言葉数がいつもよりも減っている真は、言いたいことも半分以上、あるいは大事なことはすべて飲み込んでしまっているように思えた。
 だが、こいつの三味線は雄弁だ。言葉ではなく、直接、心を貫くような思いをぶつけてくる。元から言葉があまり自由ではなかった真にとって、思いを乗せるのはこの糸の上、そして叩きつける撥の上にしかなかったのだろう。

 そして自分も、何か大事なことを言ってやっていない。

 完全に店内は静まり返っていた。日本よりもずっと乾いた空気を湛えるこの空間は、三味線のさわりを増幅していた。十六のツボの、雪が降りしきるような、鈴虫が鳴くような、鳥がさえずるような響きが、ここにある全てのものを震わせている。
 やがて、少しずつ、少しずつ音が強く、激しくなっていき、それと同時に黙り込んでいた聴衆も耐え切れないとでもいうように手を叩き、そして真は、もうこれ以上音も感情も溜め込めない所へ来たというように、目を開けた。

 その瞬間、何かに導かれたように、真はまっすぐに竹流を見ていた。
 竹流も、ただ真を見ていた。

 声も言葉もないまま、そして目は竹流を見つめたまま、最後の三、四のツボへ指が滑って行く。
 もう三味の音は竹流の頭の中から消え去っていた。

 飛び入りの演奏者と、その演奏者を見出し舞台へ引き上げ自らも見事な演奏を聞かせた美しい女性、そしてその演奏者の隠れた力や想いを挑発という形で誘い出した素晴らしいテクニックのギター奏者に対する惜しみない拍手は、スタンディングオベーションという形でしばらく鳴りやまなかった。

 突然の周囲の状況に気が付き、戸惑ったような顔をした真は、三味線をギターの青年に渡し、撥と指摺りを返すと、そのまま何をどうしたらいいのか分からないという様子で、何かに押し出されるような気配で、まっすぐに竹流のいる席の方へ歩いてきた。

 いや、それは竹流に近付いてきたというよりも、ただこの店から出て行こうとしたようで、たまたまその通路わきに竹流が座っている席があったのだが、一瞬、竹流のテーブルの近くで歩を緩め、目を合わせた途端、逃げるように店を飛び出していった。
 もちろん、店の中の人々は呆然とその後ろ姿を見送ったが、すぐに興味は舞台の上に戻ったらしく、また大道芸人たちにアンコールを強請り始めた。

 だが、竹流のすることは一つだけだった。
 自然と椅子を蹴るように立ち上がり、幾らか驚いた顔をしているベルナデッタとクラリッサを置いて、真を追いかけた。

 真は何が何だかわからずに混乱しているようで、走るというよりも惑うように早足で広場へ飛び出し、斜面を下りかけている。後姿はまるで子どものように頼りなく、儚く見える。何が何だかわからないのは竹流の方も同じだった。
 放っておくと何もかもが崩れ落ちてしまう、という思いが胸を締め付ける。

カンポ広場
 その思いが結集するように、黒い塊がどこかから湧き出し、真の足元に絡み付いた。金の首輪がきらりと光りを跳ね返す。
 ジョルジョ。
 不意に真が足を止めたのと、竹流が真の腕を捕まえたのは同時だった。

 引き寄せ振り向かせた真は、何かに驚いたように竹流の顔を見ている。
「どうしたんだ?」
 その表情に思わず問いかけた時、いきなり真が竹流の腕を掴み返し、逆に竹流を引き摺るようにして、広場の斜面を元の店へ引き返し始めた。
「真」
 名前を呼ぶのが精一杯だった。
 賑わう店の中へ、人をかき分けるように、竹流を引っ張って急いだ真は、ベルナデッタとクラリッサが座る席の前でぴたりと足を止めた。
 そして、ようやく竹流の手を離すと、ベルナデッタをまっすぐに見つめて絞り出すような声で言った。

「アウローラの、お母さん?」

 何が起こっているのか分からずに、竹流は呆然と真の横顔を見つめていた。
 足元に、一緒についてきたらしいジョルジョが座っていて、竹流を見上げ、にゃあ、と一声鳴いた。どこか切羽詰ったような声だった。




何も言いますまい。
だって、何だか、終わるのが寂しくて…(嘘です)

あ、途中の写真のマンジャの塔、朝と夕方のを並べてみました。
光によって、こんなに違うんですね。
それから、三味線の上に載っているのは、撥と、そして指擦り。
左手の親指と人差し指に引っ掛けます。
これがないと、竿で指を滑らせることができません……

次回こそは、2時間ドラマの最後の20分です。
第8話『そして、天使が降りてくる』……絶対終わらせる、末広がりの8だし、という意気込みでこの題名。

さあ、みんなで、崖に参りましょう!!

ところで、なぜ2時間ドラマでは崖に行くかご存知でしたか?
松本清張さんの『ゼロの焦点』のラストシーン以来、定番になったそうですよ。
って、今更なのは私だけ?



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Category: ☀幻の猫(シエナミステリー)

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NEWS 2013/6/2 京都土産のお菓子/ 本日の花 

京都お菓子
昨日は京都に出張で出かけておりました。
観光も何もなく、ただ仕事。
帰ってきたら、ネットが全くつながらず……
うちは〇:COMなのですが、WiFiが死んでる????という状態でして……
あちこち電源切ること複数回、で、今朝やっと何とか繋がっているけれど、何となく不調。
妙に時間がかかる…
fc2さんのせいでもなさそうで(タブレットは普通にサクサク…)、いまいち不安な状態です。
タブレットは読むのにはいいけれど、打ち込むのはもうごめんなさい、って感じで。

というわけで(?)、京都から新しく発見したお土産のお菓子をご紹介。
私は人生の中で、3年弱の埼玉生活以外は関西在住。三都物語を地で行く感じですが(多分ちょうど3分の1ずつくらいの期間ですね)、自らの意志で住んだ町は京都のみ。いつかは京都に戻りたいと思うのですが。
今も、仕事でもプライベートでも京都に行くことは少なくありません。

で、今更なんですが、一応京土産のお菓子はチェック(^^)
そうしたら、ちょっと目新しいものを発見。

高野屋さんのヴァッフェルの夏みかんバージョン!季節限定・地方限定に弱い私は、即購入。
えーっと、中身は、まぁ、普通に夏みかん味…なだけなのですけれど^^;

そして、あぶら取り紙で有名なよーじやさんの最中ですよ!
植物繊維いっぱい、と書いてありましたが? どこに?
この最中、自力製作版です。あんこと、最中の皮と、牛皮がそれぞれ別々にパックされていて、自分で作るようになっていました。
小さいし、ちょっと割高感あり。いささか面倒くさいし。
でも、皮がパリパリで食感はよいかも。

いずれにしても話のネタ、ですね。
それなのにどうして、人って、○○限定とかに弱いのかしら。
それが分かっているからか、某昼飯パックなどは、次々中身を変えて販売。
新しいものは試してみなければね、ということなんですが、最後は昔に戻ることも多いかな。

そんな中で、今朝の花たちからごあいさつ。
金糸梅
金糸梅
金糸梅です。紫陽花が咲くまでの間、庭を一番明るくしてくれるのですが、やたら大きくなって場所を取るのが難点。

そのあじさいですが、今はカシワバアジサイと山紫陽花が咲き掛け、といったところです。
カシワバアジサイを縦方向から撮ってみました(横から見たら横長…って変な言い方)。
とにかくこの紫陽花、植えた時はいいんですが、巨大化するので困りものです。毎年刈りまくっているのですが……
かしわばあじさい

そして、下は、六甲の山で発見された幻のアジサイ・七段花。幻、と言われて繁殖されて、今はそんなに物珍しくないのですが、本当になかなか大きくならない。この株は10年目なのですが、やっとちょっとこんもり、といった感じです。花も地味ですが、清楚な印象で、お茶花にいいので植えて大事にしています。
しちだんか

萩が綺麗ですね。今年は花が多い気がします。
はぎ

そして、下がユキノシタ。後ろにぼんやり写っている石が、我が家の庭にところ所に存在する『昔のものシリーズ』、ひき臼の一部です。
ゆきのした

そして、謎の花。
実はどこかから飛んできたようで、毎年毎年、本当に腹が立つくらい伸びるので切っていたのですが、サボっていたら大きくなったのか、今年初めて花を見ました。
で、何かわからないのですが…
はてな


さて、次回の花の記事の時には、うちのジャカランタをご紹介いたします。
本当に、石の上にも3年どころか、って感じなのですが。

取りあえず、無事に記事がアップできるのか、そこが問題の今日のネット環境。
一抹の不安を感じつつ、まずは今から皆様のブログへお邪魔しようと思います(*^_^*)



Category: ガーデニング・花

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