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コーヒーにスプーン一杯のミステリーを

オリジナル小説ブログです。目指しているのは死体の転がっていないミステリー(たまに転がりますが)。掌編から長編まで、人の心を見つめながら物語を紡いでいます。カテゴリから入ると、小説を始めから読むことができます。巨石紀行や物語談義などの雑記もお楽しみください(^^)

 

【猫の事件】迷探偵マコトの事件簿(2)…(・・? 

真250kuroneko250

これ、何だかやめられなくなってしまいました^^;
akoさんから頂いたコメントからさらに広がった妄想作品。
前回同様、極めてしょーもないのですが、何故か続いていく……


登場人物
マコト:ツンデレ猫。イメージでは茶トラ。もしかするとキジトラ。
タケル:その飼い主。趣味はマコトをおちょくって遊ぶこと。

さぁ、今日のマコトはどんな事件を解決するのでしょうか!?
タケルのお土産編、お楽しみください(*^。^*)



【迷探偵マコトの事件簿その3:マコト、呪いの尻尾に挑む!】

タケル、おそいなぁ。
ぼく、ひとりでおるすばん、キライ……つまんないんだもん。

……あ、かえってきた~(=^・^=)
でも、ぼく、あかちゃんじゃないから、うれしそうにおでむかえなんかしないんだ。

クールに言うの。
あ、お帰り、おそかったんだね。
あれ、それなに?

タケルが赤いふわふわのしっぽみたいなのを買ってきた。
しっぽには棒がついてるよ。
それに、マタタビのにおいがする~~
ふわふわ、ってタケルがぼくのお鼻のまえでくるくるする。

き、きになる……
あぁ、だめだ! だめだ!
ぼく、おこってるんだもんね。
タケルとあそんでなんてあげないもん。

ふりふり。
くるくる。
ほら、おいで、って。

ば、ばかにしないでよね。
ぼく、もう子どもじゃないんだからね。
それにそんなので、ぼくを放っておいたことをごまかそうなんて、甘いんだもんね。

ふりふり、ふるふる、こちょこちょ、……
ふん、知らないもんね。

ふりふり、ふるふる、くるくる、……
あぁ、もう、そんなへんなしっぽであたまをさわんないでよ。

こんどはソファのかげから、ふりふり……
あ、かくれた!
また、ふりふり……
ぼくはおもわずたたかうじゅんび。

あ、あやうく手を出すところだった。
ぼく、もうおやすみするんだ。ばいばい。

……でも。
うぅ。
マタタビ、いいにおいだなぁ……

ちらっ。

いやいや。
しらんぷりっ!

……
あ、あきらめてタケルがねたよ。

よし!
さっそく赤いしっぽのちょうさだ!

これはしっぽなのか?
しっぽではないのか?

どうして赤いの?

ちょん。
あ、かってにうごくよ?
あれ? うごかないよ?
う~ん、あなどりがたいやつだ!

えい、えい、えい!
このやろう!
こうしてやる、こうしてやる!

う~む。
つかみどころのないやつだ。
テキもなかなかやるな。

ちょっとうしろ足で立ち上がって、
ダ~イブ!っと。

わ、すべっちゃった。
いてて。

あ、タケルと目があっちゃった……

えーっと……しんだふり、しとこ。


それ、きっと、のろいのしっぽだよ。
ぼくとしたことが、まりょくでおどらされちゃった……



【迷探偵マコトの事件簿その4:マコト、新たな敵に挑む!】

タケル、おそいなぁ。
やっぱり、ぼく、つまんない。
あ、かえってきた。

あれ、またへんのものを買ってきたの?

…………

……それ、あたらしいネコ?


なんだよ、そいつ。
うごかないし。
しゃべらないし。
においもしないし。
ミルクものまないし。
ねこまんまもたべないし。

なにより、ぜんぜんかわいくないし。


なのに、なんだって、そいつといっしょにねるの?
なんで、よしよしとかするの?

……いいもん。
ぼく、ひとりでねるもんね。
もう子どもじゃないもん。

おやすみ。
べー、だ。


……
しーん。


みみをぴんとのばしてみる。
……
しーん。


タケル、ねたかな?


そーっと。
ぬきあし。さしあし。しのびあし。

つかまえたぞ。
えい、こいつっ!
まえあしでけりっ!

ちょっと、のいてよ。
そこ、ぼくのばしょなんだから。

くいっとおして、っと。
くいくい……

ふぅ。
やっと、すきまに入れた!


……よかった。やっぱりここがいや。
ねよっと。

……あ、タケルと目が合っちゃった。


だって、タケル、こんなにゃんも言わないやつ、つまんないでしょ。
あったかくないし。
においもないし。
ごはんもたべないし。
ぼく、タケルがさびしいかなぁと思って、来てあげただけだもんね。


……あたま、なでないでよ。
ぼく、もう、子どもじゃないんだからね。

でも、ま、いいか!


ぼく、もうねるね。
おやすみ。


……ちょっとだけ、しあわせ。



にゃんた



さて、このくだらない企画、続くのか? 続かないのか?
それはミステリーですね(^^)

ちなみに、この、ぬいぐるみを押しのけて間に入って寝る、というのは出典?があります。
実は私、パンダが大好きで、PCを持って初めてお気に入り登録したサイトは、中国にあるパンダ幼稚園のサイト。

ある日、たまたまテレビを見ていたら、その幼稚園を新庄剛志さん(元タイガース、そしてメジャーから戻った後は日ハム)が訪問して、パンダの飼育を手伝うという番組をやっていました。

パンダにも色々いて、1匹、まだ幼稚園に入りたてで、みんなとうまくやっていけない子がいたのです。
新庄パパ、赤ちゃんパンダたちと一緒に生活し、そのはみだしっこのことをいつも一番気にかけていた。
でも、それでもなかなかこの子だけは懐いてくれない。
他の赤ちゃんパンダたちはもう新庄パパ大好き!でいつも一緒に遊んでいる。
そしてある夜。
赤ちゃんパンダたちはみんな新庄パパのまわりで群がって、固まって寝ている。
はみだしっこパンダは、一番遠いところで寝ていたのですが……

みんなが寝静まったのを確認し、のっそり起きたと思ったら……
新庄パパにくっついている他のパンダをくいくい、くいくい、と押しのけて、自分が新庄パパの真横に!

新庄パパは萌えまくり。
もちろん、大海も萌えまくり。

それからは、はみだしっこパンダくん、新庄パパにくっついて遊ぶようになり、そのうちみんなにも打ち解けていったのです。 
もう別れのシーンでは、ぼろぼろ泣いていた大海でございました。

で、ちょっと使ってみました(^^)





お待たせいたしました。(って、待ってもらってるのかしら??)
次回はいよいよ、【幻の猫】最終回のアップですm(__)m
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Category: 迷探偵マコトの事件簿(猫)

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[雨54] 第9章 若葉のころ(3) 

回想の章となっている第9章の最終回となりました。
本当は2回に分けるつもりだったのですが、分けどころがうまく見つからず、一気にアップです。
かなり長いのですが、中身は比較的読みやすいと思いますので、お楽しみください。
今回の見どころは、竹流の啖呵です。





 それから半年もたたないうちに、真が滝沢基のモデルをしていた時の写真がポスターや吊広告になり、フィルム会社の宣伝として町中に貼られた。

 知らない顔をし通したが、さすがに誰も気が付かないというわけがなかった。電車の中では極力、顔を上げないようにしていたが、それでも写真を撮られた時からまだ一年と経っていないわけで、不意に誰かの視線を感じることが多くなっていた。
 その上、一度ならず痴漢にもあってしまった。男としては沽券に関わる気がして言い出せなかったが、ある時、何かの話のついでにそのことを竹流に話すと、自業自得だと取り合ってくれなかった。もう少し、可哀相に、という種類の言葉を期待していた真は、自分でもおかしいくらいに落胆した気分になった。
 それでも、竹流と一緒に満員電車に乗った時、彼が真を庇うように引き寄せてくれたのには、真もさすがにびっくりした。

 勿論、そんな微笑ましいエピソードで終わる話ではなかった。
 真にしてみれば、もう半年以上も前の出来事だったが、写真を見た者にとっては、それはまさに今の出来事だった。中でも、写真の中から世の中を篭絡してフィルムやカメラを買うように誘っている少年を預かっている学校にとっては、とんでもなく現実的な問題になるわけだった。

 具合の悪いことに、その写真は世間でもかなり話題になっているらしく、少年を探せ、というキャッチフレーズでマスコミが盛り上がったのもいけなかった。

 ある時、竹流が相川の家にやって来て、功の書斎で本を読んでいる真の顔を覗き込んで言った。
「停学だって?」
「保護者を連れてこいって、それまで学校に来るなって感じだっただけだ」
「どういう意味だ?」
「よく分からない」
「自主的にさぼってるんじゃないだろうな」
 真は返事をしなかった。

「で、保護者はどうするつもりだ? 北海道のおじいちゃんを呼ぶか?」
「冗談だろ。おじいちゃんが卒倒するか、こっちが殺されるよ」
 厳格な祖父に知られるのなど、恐ろしくて考えられなかった。
 祖父が世間に疎いことを、これほどにありがたいと感じたことはない。それに、叔父の弘志も、大伯父たちも、このことを知ったとして長一郎の耳に入れようなどとは思わないだろうから、その点でも真は救われていたようなものだ。

「斎藤先生は?」
 斎藤というのは功の親友で、真の不整脈の主治医だった。功の失踪後は真たちの保護者を自任してくれている一人でもある。
「電話くれたけど、大丈夫って言った」
「俺が行こうか?」
 真は不思議そうに竹流を見た。
「あんたが俺の保護者って、学校が信じると思うか?」
「そりゃあ行ってみないとわからん」

 ポスターも写真集も、モデルが誰であるかを一切公表しなかったし、事実カメラ会社もその点では写真家に一切を委ねていたので知らない、と突っぱねていた。一部の週刊誌では、毎日人々が目にして話題になっているだけに、面白おかしく書き立てて、更なる世間の注目を集めたが、当の写真家はすでに日本からトンズラしていて事実は闇の中だった。

 しかし、毎日真に会っている同級生には、それが真であることは明らかだったろう。
 ただ、真がもともと人を寄せ付けない人間だったので、誰も面と向かっては真に事情を追及してこなかった。天然ボケの級長でさえ、そのポスターを見て明らかに真だと気がついていたのだろうが、比較的いいとこのお坊ちゃんやお嬢ちゃんが多いこの学校では、あまりそういうことで同級生をからかったりするものではないというムードがあった。

 問題は写真集だった。
 誰が見ても、『破廉恥な写真』といってもいいものが含まれていたし、写真家が色々と噂のある人物であれば、モデルとの間に何か複雑な関係があったと思うのも当然だった。事実そういうことを示唆するようなベッドの上の写真もあり、同級生たちは、いつものように普通に授業を受けている真の方に、色々な複雑な視線を向けていた。しかも真があまりにもいつも通りなので、余計に彼らの視線は複雑になった。

 まわりが真に注目したのはこの時が初めてではなかったが、これまで知らなかった者までが真を知るようになった。事実、そういう趣味のあることを隠していたある種の者は、真に接触を試みようとしたりもしたようだった。


 結局、その写真集がある生徒の母親の目に留まった。もちろん、PTAを介して問題にならないわけがない。院長のところへ駆け込んできた立派な保護者達は、こんな子供をこの学校に通わせるのは教育現場としてあり得ないのではないかと院長に掛け合った。

 しかし、院長には始めから真を咎めるつもりがなかったようだった。そもそも真であるという確証は、本人がそうだと言わなければありもしないわけで、できればそっとしておきたいと彼女は思っていたようだった。だが、ことこうなってしまっては、保護者会と他の教師たちの手前、放っておくこともできず、院長は真を呼び出した。

「これは君なの?」
 真は写真集の方をちらりと見た。とは言え、写真を撮られたことは事実でも、その作品を見た訳でなかったし、契約金さえ支払ってもらえれば後のことは自分には関係がなかったので、何とも返事をしなかった。

「功くんは、いえ、君の父上は知ってるの?」
 真は院長の顔を真っ直ぐ見た。
 真はこの院長を嫌いではなかった。嘘をついたり、大人の事情で物事をねじ曲げたりしない人種であることを感じていたからでもあった。

「父は、今、日本にはいません」
「え?」院長は驚いたように真を見た。「どうしたの?」
「アメリカに」言いかけて真は言葉を切り、うつむいた。何を言おうとしたのだろうと自分で思ったのだった。「研究で」
「いつ帰ってくるの?」
「分かりません」

 院長に父が失踪しているなど言えなかった。学校から祖父母にそのことが伝われば、物事は叔父、つまり実の父親を巻き込んでややこしくなるのは目に見えていた。
 親戚一同の中では、真が次男の武史の子どもであることは、皆が知っているのに、口に出してはならないタブーのような気配があった。もっとも、それは真が子どもなりに察知したムードであって、事実はどうだか知らないが、実父の立場がかなり複雑で、そのことと功の失踪の間に因果関係を感じざるを得ないのは、何も真の想像ばかりではないはずだった。

「じゃあ、君たちは今、つまり妹と二人きりなの?」
「今までも父は忙しくてほとんど家にいなかったし、何も変わっていません」
「では、今の君たちの保護者は?」
「保護者を連れてこいということですか? 僕がその写真のモデルをしたからですか」
「モデルは君なの?」

 真はついに観念した。
「そうです」
「どうしてそんなことをしたの?」
 真は少し考えた。差しさわりのない答え、というものを何故か吟味したのだ。
「お金が必要だったので」
「お金? 今、困ってるの?」
「いえ」

 追求されると、子どもながらに考えた答えには多少の無理があることに気が付いた。院長は少し間を置いてから、子どもを怖がらせないように、とでもいうようにゆっくりと語りかけるように言った。
「とにかく、今、君たちの保護者になる人を連れてきなさい。もしも本当にお金に困るような事があるのなら、放ってはおけないでしょう?」

 責めるような調子ではなかった。しかも院長は、一部の保護者たちが最も問題にしていた『真がこの噂の写真家と身体の関係を持ったのかどうか』については何も聞かなかった。
 だが院長が好意的に解釈してくれても、そうは思わない教師たちも多かった。結局教頭からしばらく自宅にいるようにと言われ、その前から行く気もなかったので、言われたのをいいことに自宅に篭っていた。

 本当のところは、少しばかり学校を気に入り始めていたところだった。ただ、自分自身が撒いた種だっただけに、どうすることもできなかったのだ。

 竹流は結局、学校へ真を連れて出かけた。
 院長室には、うるさ型の教頭も幾人かの教師も一緒にいた。真は興味のない顔を装ったまま、竹流の後ろにくっついていた。

 その時のために髪をばっさりと切った竹流は、手触りも見た目も明らかに高級なスーツを身に着け、頭の先から足の先まで、どこにも一点の陰もないほどに完璧な堂々たる態度で、大和邸の執事に運転させたベンツの後部座席から降りて、学校の門の前に立った。
 その姿はいかにも上品で、そこに立っているだけで周囲を威圧するほどの威厳に充ちて見え、恵まれた体格と、優雅で美しいとまで言える品位のある顔立ちは、ある意味神々しくさえあった。
 それはヨーロッパの貴族という人種が持つ何百年もの伝統や血統から滲み出る気配で、どれほど努力をしても俄かには身に付けることのできない種類の品格だった。

 おそらく、教師という人種に対してはかなり効果的だったのだろう。いや、竹流がその部屋に入った時点で、すでに物事は決着がついていたのだ。

「父親は」
 教頭は目の前に立っている竹流の姿に圧倒されたことを隠すように、咽を鳴らして聞いたが、竹流は彼や周囲の誰も彼をも睥睨するような、それでいて実に優しい笑みを見せて、優雅に少し頷くようにして説明した。

「私が、この子の父親の秘書をしていましたので、彼がいない間のことを頼まれておりました。今アメリカにおりますが、特殊な研究で居場所も定まらないようですので、直ぐには連絡もとれませんしここには戻って来ることができません。その間に真がしたことが、私の監督不行き届きであったことは認めます。しかも」
 竹流は真の方を少し見た。
「真のほうは、私を含め周りの大人に頼ることを良しとは思っていなかったようですし、ましてや他人である私に遠慮もしていたようですから、自分で解決したかった問題だったのでしょう」

「自分で解決する問題?」
「子供とは言え、目の前に沸いて出た問題を自らの力で解決したいという気持ちは持っています。私などが言わなくとも、あなた方教育者はもちろんよく御存知の事だと思いますが」

 外国人の竹流が、あまりにも流暢な日本語でつらつらと話すので、聞いているほうも丸め込まれるような勢いだった。しかも幾らか失礼なほど断定的な言い方をしているのに、まるで気にならないのは、やはり端から勝負がついていたということなのだろう。

「それは、どういう種類の問題だね? 第一君は何であんな破廉恥な写真のモデルになどなったのだ?」
 それでも何とか冷静を保とうとしていた教頭が、院長が何も言わないので自分の仕事だとでも言うように真を責め始めた。もちろん、彼は自分の仕事に忠実な、優秀な教師だった。

「破廉恥? 教頭先生はあれをご覧になられたのですね? それならもちろん、美の何たるかをご理解しておられる先生は当然お分かりだと思いますが、あれは芸術作品です。私も美術品を扱う仕事をしておりますし、メトロポリタン始めいくつかの美術館で修復師の仕事もしてまいりましたのでよくわかるつもりですが、物事の出方がああでなければ、皆が芸術と認めたはずです。教頭先生にも、ここにいる皆さんにも、世間に対して大人になろうと足掻いた子ども時代があったでしょうが、まさにあれはそういう時期の子どもの不安定な輝ける一瞬を残そうとした芸術です。モデルがこの子でなければ駄目だったわけではないでしょうが、あの時でなければならなかったし、それにこの子が見かけだけをとってもそれに値するのは、皆さんも認めるところでしょう」

 教頭は返す言葉に詰まったように見えた。それから、この異国人相手ではやり込められると気が付いたのか、真のほうに話しかけた。
「しかし、つまり君はあのカメラマンと、その」
「身体の関係があったかということですか」
 あまりにもずばっと竹流が先を続けたので、教頭がたじろいだ。

「そうなのか?」
 竹流は真の方を見て語気強く問いただしたが、言葉ではなく視線ではっきりと、否定しろ、と強要していた。真は黙って竹流を見ていたが、その勢いに中途半端に首を横に振った。
 それを見届けると、竹流はさっさと次の言葉を継いだ。

「本人は否定していますが? あなた方は何を根拠にそうおっしゃるのですか?」
 冷静に考えれば、確かに根拠はないはずだった。
「あのカメラマンは、随分危ない破廉恥な写真ばかり撮っているそうじゃないか。しかも、モデルとそういう関係になることも再三あるらしいし、相手が女だけではないことも知られているとか」

「それでは、先生方は憶測だけで真がそのカメラマンと身体の関係を持ったと仰るわけですか。それはあまりにも子どもの感情を傷つける言い分です。子どもの言葉を信じないとは、教育者にはあるまじきことと思いますが」
 急に声のトーンを厳しくして竹流が言い切った。まるで、神が雷を振り下ろすような力強さだった。
 真は呆気に取られて竹流を見つめていた。

 嘘もここまで強く主張すると、事実などどうでもよくなるのだということかもしれないが、この男の言葉にいかに力が篭っているかを見せ付けられたように思った。
 不意に、真は竹流が聞かせてくれたヒトラーの演説の調子を思い出したくらいだ。

 教頭は言葉に詰まって、それから話を別の方向へ向けた。言葉の勢いは霞んでいた。
「しかし、何より何故モデルになろうとしたんだね?」
「別にそれは問題ではないでしょう。してはいけないこと、ではないのですから」
「しかし、バイトとして、というなら、中学生には禁止しているはずだ」
「この子は、自分の力で何とかしようとしただけです」
「何をだね?」

 竹流は、静江の事をこれ以上隠すのは真にとって精神的にも負担になる、真がひとりで抱えるには問題が大きすぎるし、いっそ周りの大人に知らせたほうが、真も救われると思っていたようだった。
「この子の母親が長期に入院をしています。手術を受けることになって、費用が必要だったのでしょう」
 真は、何を言うんだ、と思って竹流を見た。

「誰か相談する相手がいなかったのかね」
「ですから、私の監督不行き届き、と申し上げました。真は、父親が留守の間、自分がひとりで何もかも対処しなくてはならないと気が張っていたのですから、自分の力で何とかしたかったのでしょう。責めを負う者がいるとすれば、むしろこの私であって、この子を責めるようなことではありません」
 教頭はまた言葉を飲み込んだようだった。

「もちろん、これより先は私がこの子達のことはきちんと監督を致します。もしも、何か皆さまにお気に沿わないことがありましたら、私にお話しいただけたらと思いますが」
 結局、竹流の立板に水の話しぶりで、大方は煙に巻かれてしまい、処分のことはさておいて真はしばらく家にいるようにと言われた。


 他の教師が出ていってから、院長が二人に話しかけた。
「あなたのことは功くんから聞いていたわ。真にとって、親よりも頼りになりそうな人間だって」
「それは光栄です」
 真は院長が父のことを功くん、と呼んだのにひっかかった。
 そういう意識の上へ、次の言葉が降りかかってきた。
「お父さんは静江さんと離婚したのではなかったの?」

 真はさすがに驚いて院長を見た。院長は二人にソファを奨め、三人ともようやく座った。
「ごめんね、功くんが君にどこまで話しているのか分からなかったし、立場上ここで私が保護者然としてしゃしゃり出るわけにもいかなかったから、君に何も説明しなかったけど、私も一度は功くんから君の母親候補に声を掛けられた人間だから、気にはしているのよ。もちろん、もう時効になった話だけれど」

 真は意味がわからずに院長を見つめていたが、竹流の方が、何かに思い当たったようだった。
「じゃあ、あなたが先生の昔の恋人だったんですね」
 院長は、年を経ても凛とした姿を保っている宝塚の男役スターのように、爽やかに笑った。
「聞いていたの」
 僅かにはにかむような響きが心地いいほどだった。

「ええ、時々先生は昔話をしていましたから。ちゃんとつきあった恋人はひとりだけだと。その人に真の母親になってくれないかと頼んだことがあると、そうおっしゃっていました」
 真は院長と竹流を交互に見つめた。功が、自分を疑い殺しに来たような勢いの竹流に対して、自分の過去の恋愛事情を話していたというのは驚きでもあった。

 それから、母親候補に、ということは、静江が真の母親でないことをこの院長は知っているし、もしかして功が真の実の父親ではないことも了解していて、しかも、本当の父親のことも知っているのかもしれないと思った。
 もしもこの人が母親になってくれていたら、自分の生涯は変わっていたかもしれない。

「でも保護者の押し売りをする気はないのよ。それに、功くんは頼りになる人がいるって話していたのだから。ただ、彼は静江さんとは別れたような事を言ってたけど」
「この子たちに、母親が精神疾患で入院していることを話したくなかったし、世間の耳にも入れたくなかったんだと思います。真は既に知っているので、今はもう隠すことでもないのですが、世間の子どもたちへの視線を心配したのでしょう。ただ、私は先生の考えにそこだけは反対で、むしろこれまでのように隠し続けることは真の気持ちの上でも良くないことだと思っています」
「そうね、そういうことはあなた一人の肩には重すぎるわ」

 院長は真の方に向いて言った。
「もし、何か力になれることがあれば言ってちょうだい。たまには周りに頼りになる大人もいるって知っておいて欲しいわ」

 院長は言葉を切ってから、竹流に向き直った。
「あなたを頼りにしていた功くんだから、私はこれ以上知らないことにするけど、本当のところ、彼はどうしているの?」
「とは?」
「連絡がつかないって事はないでしょう? この子のことをあんなに心配していたのに」
 竹流は初めて了解を取り付けるような表情で真を見た。そして院長に向き直り、ゆっくりと噛み砕くように言った。
「色々事情はあるようなので、これ以上は話せませんが、確かに今は連絡がとれません」
「それは、武史君と何か関係が?」

 真は顔を上げた。
「叔父を、知っているんですか?」
「ええ、彼は剣道部の後輩だったし、学部の後輩でもあったからね」
 そう言ってから、院長は真の実の父親の話だったことに気が付いたように、優しく微笑んで続けた。

「いい男だったわよ。強くて賢くて、骨太で男っぽくて、功くんとは全然タイプが違ったけれど、大学では剣道部の暴れ駒だって名を馳せていたわ。実際には功くんの方がちょっとばかり強かったけどね。そうね、彼は強がりだったけど随分お兄ちゃん子だったのよ。東京に出てきたのも功くんを追いかけてだった。今は外国にいるとは聞いているけど、危ない仕事をしているんじゃないかと、功くんが随分心配していたのよ」

 真は竹流の方を見た。竹流は真の腕を少し掴んで、心配するなというようにした。
「今、騒ぎ立てることはできないのです。蜂の巣をつついてしまって、この子たちに危害が加わるのは困りますから。警察も、いや日本の警察ではこの件では全く力が及ばないことなので、何も言っていません。あなたも、今はできれば聞かなかったことにして放っておいて欲しいんです」

 竹流が何をどこまで功から聞いていて、そして功の事情について何を調べたのか、真には一切わからなかった。
 それでも、今、現実の中で既に失われてしまっている幻を追う気はなかった。それよりも、目の前にある光だけは、見失いたくないと思っていた。

 院長は多少複雑な顔をしたが、それ以上は何も追及しなかった。彼女の第一の使命は子どもたちを守ることであると、そういう行動を、彼女がいちいち大脳で確かめなくても反射のように、疑いもなく選び取ってきたということなのだろう。
「とにかく、もうちょっと自宅で大人しくしていて頂戴。すぐに学校に戻すから。で、提案だけど、この間剣道部の主将が私のところに来て、君に剣道部に入ってくれるよう説得してくれって言ってたわ。こういう噂はすぐに止むでしょうから、できれば部活でもしてくれたら嬉しいけど。君が強いのはみんな知ってるのよ。それに仲間を持つのは悪いことではないわ」


 真が竹流と一緒に院長室を出たのは丁度昼休みの終わりかけだった。二人が並んで校舎を出ていくのを、窓から生徒たちが見ていた。真が誰かと一緒に学校に来ていたという噂は、昼休みの短い時間の間にほぼ全校に広まっていたようだった。
 この日から、真の保護者として現れた『白馬に乗った王子様』のような男に、女の子達が大騒ぎになった。彼女達が最初に真の味方になり、結局真が学校に復帰した後では、例の写真のことでとやかく言う者はなかった。その代わりに、彼女達が真に問い掛けたのは、あの王子様は誰なの、ということだった。

 竹流はその後、保護者を自任して、時には学校にかなりの寄付をしていたようだった。その上、学校でのイベントにも来ることがあったが、そこら中が盗撮の舞台になっていた。真は何かの拍子に彼がいつものように何気なく自分の身体を抱き寄せたりしないかとドキドキしたりした。そんなことをしたら、例の写真家と寝ていたかもしれない、という話は信憑性を帯びてしまうに違いなかった。

 その後の竹流のファンクラブの女の子達のやっかみの対象は、中学部の葉子に集中した。実際、真はあまりにも愛想がないし、同級生の篁美沙子と付き合っているという噂もあって、真に興味を持っても黄色い声で騒ぐ対象にはならなかったようだが、剣道部で一番強いという噂の真には隠れファンが多くいたようだった。そんな兄を持ち、あの素敵な王子様にお姫さまのような扱いを受け、揚げ句の果てに、学年でいつもトップクラスの、天然ボケと『いい人』過ぎることさえ除けば結構『いけている男』の富山享志とつきあっているという羨ましいような女の子が、葉子だったわけだ。


 何れにしても、真のこの事件は大人たちが思っているほど深刻な悪影響を子供たちに与えずに過ぎ去っていった。
 その後の二週間ほどの自宅謹慎の間、竹流は毎日のように相川家にやって来た。真の保護者を買って出ていたからでもあろうが、放っておいてまた登校拒否に拍車がかかっても困ると思ったのか、ずっと勉強を教えてくれていた。

 学校から、明日から来るようにと連絡が入ったとき、じゃあ明日からは真面目に学校に通え、と言われて真は竹流に言った。
「学校で授業に出るより、あんたが教えてくれる方がずっと面白い」

 竹流はしばらく真の顔をじっと見つめていた。これまで何年も勉強を教えてもらってきていたのに、これほど素直に真が感想なり感謝なりの言葉を口にしたのは初めてだった。真は言ってしまってから、竹流の幾らか驚いたような顔を見て、初めてそのことに気が付いた。

 竹流は、不思議な、いかにも幸福であるというような笑みを浮かべて、子どもに対してするように真の頭に大きな暖かい手を置いて言った。
「真、これはまたいつでもどこでも、お前が勉強したいと思えばできることだ。それに、俺が教えていることは今までの先人がつかみ取ってきた歴史であって、俺だって自分に教えてくれた教授陣の受け売りをしゃべっているに過ぎない。地球にも宇宙にも、まだまだ人間の知らない真実があって、もしもお前がそれを知りたければ、いつか自分で研究し考えて、真実の欠片でも掴み取って、それを自分の言葉で話せるようにならなければいけない。そしてそれは今でなくてもいいはずだ。だがな、俺はまともに通わなかったら知らないが、学校には大人や教師から教えられることだけではない何かがあるはずだな。あの心配して毎日のようにここに来る級長にしても、ただ級長としての仕事をするだけならそんなに一生懸命通ってくる必要はないはずだ。そういうことは俺が教えていても、決して手に入らないことだ」

 確かに、転校してきて以来、あの級長のおせっかいは度を越している。始めはただ与えられた義務に対して忠実なだけなのかと思っていたし、いささか鬱陶しいとも思っていたが、この頃、それが少しだけ嫌ではなくなっている。相川真の親友を自称する彼が毎日ここに来るのは、純粋に友人を心配しているからなのだ。そういうふうに接してもらうことに慣れていない真は、大概数回のコンタクトで相手から引かれてしまっていたが、あの級長だけは全く怯む様子がない。
 もっとも、彼の相川家への訪問理由の半分は、妹の葉子を気に入ってるからなのだと思うが、三人で、時には竹流も一緒に四人で囲むテーブルは、そんなに悪いものではなかった。

 それでもちょっと不満な顔をした真に、竹流はもう一つ付け加えた。
「それから、院長が言っていた部活のことも考えてみろ。お前は確かにこれまでひとりの自分のために、まあ多少は葉子ちゃんのためもあったと思うが、強くあろうとしてきた。だがな、そういう戦い方とは違った闘い方もあるんじゃないか」
 
 真は考えるように俯いた。それを竹流が子どもをあやすように頭を撫でたので、気に入らなかった。
「しばらくは学校でもいい子にしてろ。鬱陶しい連中もいるだろうけど、みんなそれぞれ何かいいところを持っているものだ。相手を認めることは必要なことだぞ。あの教頭もな」
 と言っている本人が気に入らなかったのだろう。真は顔には出さなかったが、やっと少し心の内で笑った。


 あの頭の上に載った大きな手の感触、そして何よりもあの旅館で抱き締められた身体の温もり、彼のキスには生命の源に還るための道標があるようにさえ思っていた。
今でも、その手の気配と温度と唇に触れる感触は、どれほど離れていても、身体にずっと残っている。






さて、次回は、新潟です。
竹流が2年半前『盗みに行こうとしていた贋作』…その絵にまつわる物語を少し紐解いていきます。
ちなみに、この『贋作』(の一枚)を持って、遠い未来、真のやしゃ孫の詩織がローマのヴォルテラの長男(家を出ていますが)のところに嫁入りするという、いわくつきの絵画なのです。

えぇ、鬼も笑う話ですけれど……(いつやねん)^^;

以下、雑談です。
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Category: ☂海に落ちる雨 第2節

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