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コーヒーにスプーン一杯のミステリーを

オリジナル小説ブログです。目指しているのは死体の転がっていないミステリー(たまに転がりますが)。掌編から長編まで、人の心を見つめながら物語を紡いでいます。カテゴリから入ると、小説を始めから読むことができます。巨石紀行や物語談義などの雑記もお楽しみください(^^)

 

【猫の事件】迷探偵マコトの事件簿(7) 

【迷探偵マコトの事件簿】その9.マコト、行方不明になる

*前出・三味線記事へのコメント、ありがとうございます(*^_^*)
本日、演奏に行ってきます。帰ってきたらお返事しますね!

3333Hit記念企画、リクエスト編です。limeさんから頂いたリクエスト。
【海に落ちる雨】と逆パターンで、マコトがいなくなって慌てるタケルです。
遶ケ豬√→迪ォ・狙convert_20130629112022
(イラストは小説ブログ「DOOR」のlimeさん)

連作掌編ですが、これまでのものを読まれていなくても、なんの問題もありません。
内容はあさ~く、なにより楽しむことを前提にしてありますので、気楽にお楽しみくださいませ。
ただし今回は、それなりに力作(!)のため、やや長くなっています。
内容がないので、すぐ読めますけれど^^;

なお、これまで一貫してマコトの一人称で書いてきましたが、今回のお題の関係上、タケル視点などが初めて出てきます。お楽しみください。
また、かなり地の文を端折っております。想像力を駆使してご自由な世界でお読みください。
また、途中、マコトの思い込み、ネコの浅知恵的発言がありますが、さらりと読み流してください。

<登場人物>
マコト:一人前になりきれない、でもオトナだと言い張るツンデレ猫。大きくなったら豹になるつもり。
タケル:ちょっぴり(かなり?)Sなマコトの飼い主。趣味はマコトをおちょくって遊ぶこと。
オンナ:タケルの恋人のひとりらしい。
他、数名(お楽しみに!)



【迷探偵マコトの事件簿その9.マコト、行方不明になる】


[Scene1] ぼくにできること

タケルがびょうきなんだ。
なんかね、とおいトコロに宝さがしに行って、びょうきをもらって来ちゃったんだって。
それでね、うつったらいけないからって、ぼく、部屋から追い出されてるんだ。

ニンゲンのびょうきだから、ねこにはうつらないと思うのに……
だからイイガカリなんだ!
オンナが来て、タケルとふたりっきりでいたいから、ぼくを追い出すんだ。

でも……
いつもだったら、ちょっとくらいびょうきでも、タケルがぼくを中に入れてくれるのに……
きっととってもしんどいんだ。
ぼくは入れてもらえない部屋のドアの横で、ずっと丸まってる。

うん。ぼく、分かってるよ。
ぼくはごはんも作ってあげられないし。
おくすりの用意もしてあげられないし。
毛づくろい、じゃなくて、からだを拭いてあげることもできないし。

だから、ぼく、おとなしくまってるね。

……まってるね。

……

オンナが出てきた。
ぼくはちょっと顔を上げる。

オンナは食べ物とか飲み物とか持って部屋を出入りするとき、きっとぼくをにらむんだ。
あなたが入ったらタケルの病気がもっと悪くなるわって。
だからここでいい子にしてなさいね、って。
そう言って、ぼくの前に冷たいまんまのミルクを置いて行く。

ぼく、もうお子ちゃまじゃないから、ミルクなんていらない。
タケルのねこまんまがいいもん。
だから、タケルが元気になるの、まってる。

……

……つまんないな。

……早く元気にならないかな。

時々、部屋の中からタケルの咳とか、聞こえる。
ぼくは耳を立てて、それを聞く。
ちょっとしんどそうなんだ。
ごはんも、たくさん食べれないみたいで、オンナはため息をついて部屋から出てくる。

なかなかよくならないね。
……ぼく、何もできなくてごめんね。

……丸まって待ってるだけなんて。

あれ、オンナが部屋の中で怒ってる。
ケンカしたのかな。
あ、出てきた。
……すごい睨まれた!
帰るのかな。

そうだ!

ぼくは、帰っていくオンナの後について行って、ドアからすべり出た。

きっとおいしいもの食べたら、すぐなおっちゃうよ!
きっとオンナのごはんがおいしくないんだ。
だって、タケルのごはん、すごくおいしいんだもん。

ぼく、タケルが好きなもの知ってる!
ぼくが採ってきてあげるね。
ぼくはおさかなと海のにおいを追いかけて走った。

いつもタケルがお買いものに行くツキジは、すぐそこなんだ。

わ。
おさかな、並んでる!
一匹、ちょうだいね!

って、わ~~~~~!!
おじちゃんが追いかけてくる~~!
いつも、可愛いねこだねって言ってくれるじゃないか!

今度はあっちのお店で。
一匹、ください!

って、わ~~~~~~!!!!
今度は犬が追いかけてくる~~~!!

タケルがびょうきなんだから。
ね、おねがい! ……って言っても、通じないや……

とぼとぼ。
ぼくは海っぺりを歩く。
ぼく、釣竿持ってないし。
自分じゃおさかな、捕まえられないよ。

あ。
しっぽならどうかなぁ?
しっぽでおさかな、とれるかも。
ぼくは海の方におしりを向けて、水面へとしっぽを垂らしてみた。

……やっぱりぼくのしっぽじゃ、海には届かないや。もちろんおさかなにも。
もうちょっと伸ばしたら、届くかな。

よいしょ。
おしりをもうちょっと落として……

う~ん。
もうちょっと……かなぁ。
ぼくは振り返ってみた……

とたんに! ずりっ! ぐらりっ!

あれ!?
うわっ!?

……じゃぼん!!!!!
ぶくぶくぶく……

わ~~~~~~~~~、タケル、タケル、タケル!!!!!
あっぷ、あっぷ、あっぷ。
ばしゃ、ばしゃ、ばしゃ。
ぼく、泳げないよ!

助け……て……
……ぶくぶくぶくぶく……
何か、まっ白になってきた……

タケル……

……

……待ってて。ぼく、おさかな持って帰るから……

きっと、帰る、から……


[Scene2] 捜索願い

やれやれ。すっかり怒らせてしまったな。
全く、女というのは困った生き物だ。
猫と私のどっちが大事なのって、それを聞くのは反則と言うものだ。
それは答えられるような問いではない。
まぁ、そんなことをわざわざ聞く女という生き物は、それで可愛いものなんだが。
しかも、女は時々、現実的で的を射たことを言う。
猫なんて、何の役にも立たないじゃない。
……それは確かに当たっている。
でも、ちょっとあの拗ねたような、怒ったような顔を見たいんだ。

まだ熱っぽくて体がだるいが、マコトの顔を見て、この間買ったねこじゃらしでちょっとおちょくってみたら、気分もよくなるかもしれない。
そう思って、何とか起き上がって、リビングの方を覗いて見た。

……
マコト?

呼びかけてみたが、返事がない。

マコト?
俺はまだぼんやりとした頭と、動きの鈍い身体でマンション中を探してみたが、マコトの姿がない!

何でだ。
あいつは一人で、いや一匹で出かけることなどできないはずだ。
まさか。誘拐された?

俺は慌てて彼女に電話を入れる。
何よ! 私があんな可愛くないちびねこ、さらったとでも言うの?
冗談じゃないわよ! 熱で、ついに頭がおかしくなったの??
がちゃん!!!!!

俺は勢いよく受話器を叩きつける音に我に返った。
それはそうだ。俺としたことが、何を血迷っているのだろう。
彼女を疑うなんて。

何かの拍子にドアから出ていってしまったんだろうか。
あいつ、怖がりだし、一人で、いや一匹で遠くに行くことはないだろう。
俺はとにかく玄関のドアを開けて、廊下を覗いて見たが、やはりマコトの姿はない。

いったい、どこに行ったんだ。
この間も車に轢かれかけたし、ちゃんと前を見ていないし、危機管理がなってないし。
それに、なによりまだ仔猫だし。

俺はふらつく身体で外に出た。
だが身体がまるきり言うことを利かない。
倒れそうになって、また我に返った。
駄目だ、どうしても今、自分ではどうすることもできない。

俺は部屋に戻って、もう一度、押し入れの中までひっくり返して探してみたが、やっぱりマコトはいない。
そのうち帰ってくるだろうか。
少しだけ玄関のドアを開けて待ってみることにした。

少し動いただけでクラクラする。
俺はソファに横になり、少し休んだ。
その短い眠りの間に、奇妙な夢を見た。
マコトがどこか暗い所に沈んでいく……
俺は、自分の叫び声で目を覚ます。

駄目だ、じっと待っているなんてできない。警察だ。じゃなくて。
俺は電話帳をめくった。
ペットさがし専門探偵社。
あった。
……オフィス天道。


[Scene3] オフィス・天道

香月、お前ね。
天道さんは俺とこの子をじっと見ていたが、やがて溜息と共に言った。
いや、俺はさ、お前が趣味のひとつも持ってくれて嬉しいよ。
けどさ、釣りってのは普通、魚を釣るもんだぜ。それが猫を釣ってきてどうするよ。

ちょっと前、天道さんが、女を作るか、あるいは趣味のひとつも持ったらどうかと言った。
女はちょっと今はいいやと思うから、趣味に釣りなんかどうかな、と思ったんだ。
ぼ~っと暇つぶしもできるし、俺にぴったりだという気がする。
でも、行ったら釣れなかったんだよな。
ボウズってのも悔しいし、釣れたことにして築地の市場で魚でも買って帰ろうと思ったら。

はい、確かに猫を釣ってきました。
溺れてたんで、持っていた網で掬い上げただけなんだけど。

飼い猫かなぁ。
野良猫かなぁ。
病院、行かなくていいかなぁ。
お腹すいてないかなぁ。

ライナスとチップは、びしょぬれで怯えている猫に興味津々だ。
猫は震えながら俺にしがみ付いている。
犬が怖いんだろうか。

その時、電話が鳴った。
はい。
天道さんが電話に出る。

猫ですか。とりあえず事務所に来てくだされば……え? 来れない?
とにかく特徴と、いなくなった状況を教えてください。
え? 今いなくなったところ?
あなたね、それはもうちょっと待ってみたらどうなんです?
待てない? いや猫だってね、色々と忙しいものなんですよ。
いや、うちも商売ですからね、どうしてもというなら、すぐに探しに行きますけれどね。
いやいや、そんな高額の代金をせしめるつもりはありません。
まぁ、何か事情がおありなんですね。わかりました。
特徴をどうぞ。
茶トラ、オス、目は左が黒っぽい茶色、右が碧、いわゆるオッドアイですね。
額にマクドナルドの印みたいなМ、尻尾は長くて端までしましま。
脚も端までしましま。耳にちょっとキズあり。犬にやられた、と。
歳は1歳くらい。いなくなった場所は築地の近く?

天道さんはちらりと俺と猫を見る。

あの、お客さん、今目の前にそれとよく似た猫がいますよ。
いや、極めてそのものみたいな猫が……
うちの従業員が築地の近くで溺れそうなのを助けた……ちょっと、お客さん??

切れちゃったよ、えらく慌ててたなぁ。
そう言いながら、天道さんが猫をまじまじと見る。
確かに、耳にちょっとキズがある。

香月、お前すごいな。予知能力でもあるのか?
この依頼が来ることが分かっていて、魚の代わりに猫を釣ってきたのか?

いやいやいや、幾らなんでもそれはないでしょう。
それを言うなら、偶然にしても、うちに電話をかけてきたその飼い主の方にびっくりしてください。千里眼ですかね。
それから、さかなの代わりに猫を釣ったとか、いちいち言わないでください。

俺はそう言いながら、ずぶ濡れの猫を拭いてやり、温かいミルクを作ってやった。
けれども、猫はミルクには見向きもせずに、ライナスとチップを避けるように窓際の棚に上がってしまう。

猫は窓から外を見ている。
寂しそうに。心配そうに。……不安そうに。

その時、猫の耳がぴんと立った。
いっしょに窓の外を覗き見ると、タクシーから一人の男が慌てたように飛び出してくるところだった。
背の高い金髪の外国人だ。

猫は瞬時に棚を飛び降り、ドアに走り寄り、がりがりと引っ掻きだした。
開かないと分かると、俺の方を見て、にゃあにゃあ鳴く。
開けてやったら、転がるように飛び出していった。

車に轢かれたら大変と追いかけていったら、丁度金髪外国人が階段を上ってくるところだった。

マコト!
金髪外人が叫ぶ。

猫は転がり落ちるように階段を降り、途中でジャンプして、金髪外人の腕に飛び込んだ。
お見事。
金髪外人は猫をぎゅうっと抱き締めて、その頭をしきりに撫でている。

途端に、猫は何を思ったのか、我に返ったように、金髪外人の手にがぶっと噛みついた。
それから、いったん腕から飛び降り、そしてちょっと唸って、最後はちょっとしょんぼりして、結局金髪外人の足にくっついた。

その時。
金髪外人がぐらりと傾いて、階段に倒れ込む。
俺は慌てて駆け寄った。
猫がにゃあにゃあと悲鳴のように鳴く。

大丈夫ですか?
わ、すごい熱だ。

すみません。病み上がりで、ちょっとまだフラフラで。
金髪外人は流暢な日本語を話した。
病み上がりって、まだ十分、病の最中に見える。
そりゃ、自分で探しに行けないわけだ。
天道さんが下りてきたので、彼を助けて、とりあえず猫と彼をオフィスに誘う。
ソファに横になってもらって、それからしばらく休んでもらった。

猫は尻尾を海に垂らして、こんな感じで。
状況を説明してみると、この猫は魚を釣ろうとしていたような気がしてきた。
もしかして、病気の飼い主に美味い魚でも食わせてやりたいとか、思ったのかなぁ。
……まさかね。

やがて、如何にも時代がかった「執事」という感じのむっつりとした顔の男が、猫と金髪外人を迎えに来た。
何もしていないからと天道さんは代金を受け取らなかった。

でも、次の日、擦り切れてぼろぼろで穴も開いていたオフィス天道のソファは、素晴らしいすわり心地の新品にとって代わり、俺にはピカピカの釣竿セットが届いた。
某アイドルグループのリーダーも釣りが趣味だというし、お魚と戯れすぎてブログ更新もままならないブロガーさんもいるくらいだから、釣りってこれからちょっとトレンディかもね。

あの猫も、もう少ししたら、自分一人で、いや一匹で出かけるようになるだろうな。
そうしたら、たまに一緒に海釣りもいいかもしれない。
あるいは、もしかして、猫探しを手伝ってくれるかもしれない!
……なわけないか。
猫だし。

というわけで、しばらく「趣味」は釣りってことにしておこうと思う。


[Epilogue] When You Wish Upon a Star

……だって。
ぼくとしたことが、テンパっちゃって、タケルの胸に飛び込んじゃった……
まるで月曜日の夜9時からやっているドラマみたいだよね。
だから、ぼく、照れ隠しに、タケルの手、噛んじゃった。
……怒ってる?
……怒ってない?
タケルはまだしんどそうだけど、おうち帰ったら、ぼくのねこまんまだけは作ってくれた。
それから、一緒にお布団で眠るの。

……ぼくはタケルの横で夢を見る。
古いレコードから、音楽が聞こえる。

星に願いをかけるとき 君が誰かなんてことは関係ないんだよ
だから星に願いをかけてごらん 心から願えばきっと叶うから

うん……ぼくがねこでも、願い事をしていいんだよね。
だからぼくは星に願いをかけてみる。
タケルが早く良くなりますように。
オンナがぼくを苛めませんように。
ぼく、早くおっきくなって、いつかタケルのお手伝いができるようになるね。

……いつかきっと、豹になるぞ!






limeさん、リクエストありがとうございました。
お楽しみいただけましたでしょうか。

ペット捜し専門探偵社・オフィス天道についてはこちら→→オフィス天道
【凍える星】の物語はすごく悲しいことや苦しいことも含まれていますが、私はlimeさんの物語の中でも特別にいいなぁと思いました。構成も登場人物たちも、とても素晴らしいです。
まだ読まれていない方は是非に!

さて、どうせ変な秘境にトレジャーハンターに行っていて、熱出したんだろう。変な感染症じゃないのか、とか、それなのに、うろうろしていていいのか、とか、あれこれ思うのですけれど、自分じゃどうしようもないくらいしんどい、という設定に無理やり持って行ってしまいました。
ま、これはファンタジー(!!)ですから、細かいことは目を瞑ってくださいね!

読んでいただいて、ありがとうございます(*^_^*)

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Category: 迷探偵マコトの事件簿(猫)

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