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コーヒーにスプーン一杯のミステリーを

オリジナル小説ブログです。目指しているのは死体の転がっていないミステリー(たまに転がりますが)。掌編から長編まで、人の心を見つめながら物語を紡いでいます。カテゴリから入ると、小説を始めから読むことができます。巨石紀行や物語談義などの雑記もお楽しみください(^^)

 

【雑記・あれこれ】limeさんのコメキリ番10000を踏みました! 

このブログを初めて、まる4年ですが、1か月前に、コメント数が1万を超えました半分は私の返信なのですが、それでも5000です。いやもう、ものすごい貴重な時間と優しさを皆様から頂いていたのだなあと実感。小説や雑記へのコメントは本当に、ブログを続ける何よりの励みですし、宝物です。改めて皆様にお礼を!いつも温かい、そして楽しいコメント、本当にありがとうございます!今回は、1万回目にコメントをくださった、大...
(雑記)コメント1万記念。リクエスト・イラスト



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まずはlimeさん、コメント数10000というすごい数に到達、おめでとうございます(*^_^*)
limeさんのセンス、小説への熱意、持続力、コメントへの丁寧なお返事、ブログの読者さんへの思いやり、全てが相まっての10000コメントという偉業、素晴らしいですね。
その10000目のコメントを踏ませていただいたのは、なんと私でした^^;

ものすごく得をした気分です。それをいいことに、我儘なリクエストをさせていただきました。
limeさんちの春樹とリク、そしてうちの真が、どことなく似ているんじゃないかというのが、limeさんと私の共通の印象だったので、ぜひともイラストで確かめていただきたいと……

3人を並べての感想。
≪もしも私が面接官で、3人から誰かひとりを採用するなら≫
リク→時間通りに仕事に来そうにないし、営業に行ったら帰って来そうにないので不採用。
真→人と合わせられそうにないし、変な仕事をさせたら保護者が怒鳴り込んでくるという噂なので不採用。
春樹→まぁ、取りあえず誠実そうだし、雇ってみる……・雇ってみたら、ウザい友人(ごめんなさい!)が押し掛けてきたので、今、再検討中。

リクと春樹はコートを着ているのに、妙に軽装のマコト、じゃなくて真(変換すると、先に『マコト』になっちゃう^^;)。
例のごとく走っているのかしら。
limeさんが書かれている通り、真は昭和の人(あ、でも、中期よりは後期かな??^^;)。この3人が出会うことは時間的にはないのですけれど。
(それ以前に、別のコラボであり得ない時間を乗り越えて会っている人たちがいますけれど^^;)

そして、コメント欄に「猫バスが来そう」というのがあったので、なるほど!と思い、その辺りにイマジネーションを刺激されて、このあまりにも素敵なイラストを物語にしてみました→→追記からどうぞ。
(あ、でも期待はしないでくださいね! 極めてつまらない掌編ですので^^;)

と、その前に、真を切り抜いたイラストを頂きましたので、それをご披露。
逵滂シ点convert_20131206223537
(このイラストの著作権はlimeさんにあります(*^_^*))

この白い猫、もしやもち姫さん??(→→ウゾさんのブログ:百鬼夜行に遅刻しました
いや、レディか……^^;(【真シリーズ・掌編】聖夜の贈りもの
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Category: ☆真シリーズ・掌編

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連作短編【百鬼夜行に遅刻しました】秋・菊(後篇) 

stella
Stella 2013/12月号 投稿作品

どうやら、タイトル通り、遅刻することが常連になっているこの作品(何の言い訳??)。
スカイさん、ご迷惑をおかけして、しかもご配慮いただき、ありがとうございました m(__)m
お待たせしました(待ってくださっていたと信じて!)、秋篇の後篇をお届けいたします。
すっかり12月号なのに、世間はクリスマス物語で溢れているのに、いまだに秋の菊。
でも、近所のお庭には菊が綺麗に咲いています^^;
……本当はクリスマスのお話も間に合わせたかったけれど、それはまたクリスマスに(できれば)。

前篇はこちらです→→【百鬼夜行に遅刻しました】秋・菊(前篇)
サクラちゃんがキブネの森に通っている。百鬼夜行学校の先生の一人・パーフェクトのっぺらぼう女子にそのことを教えられたウゾは、丑の刻参りをする女の人を見てしまいます。サクラちゃんは病に伏すその人のために、不老不死の霊水・菊の雫を運んであげているのですが……
人の生死を左右しようとすることは危険なことのはず。
そして、ウゾは、菊の雫を司る不老不死の菊慈童に会い、命を定める菊の霊水を授かります。
サクラちゃんと出会ったウゾ、果たしてどうする?






「ウゾくん……!」
 いつでもウゾよりも逞しくて、物知りで、努力家で、何だか頑張っちゃっているサクラちゃんだったけれど、その時、サクラちゃんは気持ちの糸が切れたみたいだった。ウゾに駆け寄り、抱きつくと、わっと泣き出した。
 ウゾはどうしたらいいのか分からず、少しの間何も言えなかった。でも、サクラちゃんの涙の重みを受け止めているうちに、助けてあげたいと心から思った。
 ちょっと恥ずかしいと思ったけれど、ウゾはサクラちゃんをぐっと抱き締めてあげた。

 しばらくするとサクラちゃんはようやく泣き止んで、ぐすんと鼻をすすりあげた。
「一緒に来て」
 サクラちゃんがそう言って、昨日と同じように菊の花に手を合わせた。それから葉を手折ろうとしたけれど、ウゾはそっと止めた。
「菊の葉は、もう僕が持っているから」
 サクラちゃんはウゾの掌の上の菊の葉、その菊の葉の上に溜まった雫を見つめていた。雫は、鬼にしか見えない光を映して、ウゾの掌の上でキラキラと転がっているように見えた。

「これ、どうしたの?」
「菊の精、じゃなくて、菊慈童に会ったんだ」
 サクラちゃんはびっくりしたような顔をした。
「……そうなの」
「彼と話した?」
「ううん。私は会ったことはないの。やっぱりウゾくんはすごいね。花たちとお話ができる」
 え、そうなのか、とウゾはサクラちゃんを見た。それは誰でもできることだと思っていた。特にサクラちゃんのような優秀な鬼なら。
 ウゾはサクラちゃんと一緒に川を下った。川を下って、昨日の大きな建物まで行って、それからあの女の人が眠っている部屋に壁抜け(今回の場合は正確には窓抜け)をして入っていった。


 サクラちゃんはじっと女の人を見つめて、それからポロリと涙をこぼした。
「私のお母さんなの」
「うん」
 ウゾは頷いた。
「病気なんだね。確か、サクラちゃんは病気のお母さんにナカラギのサクラの花びらを見せてあげたくて、それでバイクに轢かれちゃったんだよね」
 サクラちゃんは頷く。

「私、もしかしてお母さんの病気が治ったらいいのにって、そう思って、ずっと菊のことを調べていたの。お母さんの病気は治らないって、もうそんなに長くは生きられないんだって、それは知っていたんだけれど……病気で苦しそうなお母さんを見ていたら、治してあげたくて、少しでも苦しくないようにしてあげたくて、病気が治って少しでも長く生きて欲しくて。そうしたらあの菊が不老不死の雫を持つ菊だって、病気も治るかも知れないって、キブネの森の精が教えてくれたの」
「それで、お母さんに菊の葉の雫を運んであげていたんだね」

 ウゾはそっとサクラちゃんの手を握った。サクラちゃんもきゅっとウゾの手を握り返してきた。震えていたけれど、そして鬼の手だから決してあったかくはないはずだけれど、ウゾにはとても温かく感じられた。
「お母さんは犯人ものかもしれないっていうイリュウヒンを警察の人に見せられて、その中から何かを手に入れたみたいなの。それを使って……」
「丑の刻参りを始めたんだね」
 丑の刻参りには呪う相手の一部が必要だ。イリュウヒンが何かは分からないけれど、サクラちゃんのお母さんはそれが犯人のものに違いないと思ったのだ。

「毎日、お母さんの魂が抜け出して、あの山に行くの。もしかしてお母さんが闇の鬼になってしまったら……どうしたらいいのか分からなくて。先生かもち姫に相談しようと思ったけれど、それも怖くて。お母さんがしていることはいいことじゃないよね。お母さんが罰を受けるかもしれない、鬼にもなれなくて、ジョウブツもできなくて、私たちとは違う世界に行ってしまうかもしれないことが怖くて」
「今日は何日目?」
「7日目」
「じゃあ、まだぎりぎり間に合うよ」
 ウゾは掌の上の菊の葉を見つめた。

 呪いが成就される前に、お母さんを清めてあげて、そして魂が抜け出すことのないようにしてあげればいい。
でも、サクラちゃんのお母さんの、サクラちゃんを殺したハンニンへの恨みは消えることはないだろう。だから、生きている限り、また恨みはどんどん降り積もっていく。
 サクラちゃんは、お母さんの病気を治したくて、そして少しでも長生きをしてほしくて、呪いをかけたまま死んでしまったりしないようにと、一生懸命だったのだ。
 でも、このままなら……

「サクラちゃん、お母さんの命の時間は、きっとサクラちゃんには変えられないよ」
「……分かってる」
 僕が願えば、それが叶えられる。
 菊慈童はそう僕に言った。
 この菊の雫は霊水だ。菊の精が言いたかったのは、命を永らえるのも、命を終わらせるのも、この霊水の役割なのだということだったのだろう。
 僕が命を決めるのは正しくない。運命に逆らうようなことなのであれば、僕が決めるべきじゃない。でも、この菊の雫は、その人の運命を正しく決めてくれるはずだ。サクラちゃんが生きていてほしいと願う人の命であっても。

「私のお父さんは、私が生まれてすぐに交通事故で死んじゃったの。だからお母さんは一生懸命働いて、一人で私を育ててくれたの。少しでも私と一緒にいられるようにって、保育園の先生になって、時には夜も働いていて。お母さんが忙しかったり、他の子のことで一生懸命だったりして、寂しい時もあったけど、二人きりの時は、あったかい手で私の手を握ったまま、いつもいっぱいお話をしてくれた。優しい声だったよ。一緒にカモガワをお散歩したり、お花を探しに行ったりもしたの。でも、一生懸命働いて、一生懸命私や他の子どもの面倒も見て、頑張りすぎちゃったから病気で倒れちゃったの。それからすぐに私が殺されちゃって」

 サクラちゃんはさらりと言ったけれど、ウゾはちょっと背中がぞくっとした。
 そうだ、サクラちゃんは殺されたんだった。そして、ウゾだって、その犯人が憎いと思うお母さんの気持ちが分かるのだ。
 だって、サクラちゃんはこんなにも可愛い子なんだから。

 サクラちゃんはしばらく下を向いていたけれど、やがて顔を上げた。
「お母さんは、お父さんも私もいなくなって寂しいと思うけれど、でも、やっぱり元気になって欲しかった。長生きして、私の代わりに、お母さんを頼っているたくさんの子どもに、幸せを教えてあげて欲しかった」
 サクラちゃんの気持ちはとてもよく分かった。でも、お母さんの病気はあんまりよくないんだね、とウゾが聞いたら、サクラちゃんは何も言わずに涙を流して俯いてしまった。
 お母さんは、残り少ない命で犯人を捜すことも叶わないなら、鬼になって呪って死のうと思ったんだろう。でも、それはサクラちゃんのお母さんの心を追い詰めてしまうだけだ。

「サクラちゃん、どうなっても、僕に任せてくれる?」
 サクラちゃんは黙ってウゾを見つめていた。悲しく、辛く、とても苦しい顔に見えたけれど、やがて目を伏せ、それから顔を上げた時には、いつものサクラちゃんの目だった。強くて、頑張り屋で、泣き虫だけれど自分にとても正直で、とても優しいサクラちゃんだった。
 サクラちゃんはウゾの目をしっかりと見て、それから、うんと頷いた。
「ウゾくんを信じる」
 
 ウゾはサクラちゃんに、今日は丑の刻参りに行くお母さんを見てもついて行かないようにと言った。
 サクラちゃんは少しの間考えていた。そして、俯いたままだったけれど、最後にはしっかりとした声で言った。
「ウゾくん、ごめんね。ウゾくんに任せるよ」
 サクラちゃんはギュッとウゾの手を握った。そして、まるでお母さんの手を離したくないとでも言うように、いつまでもウゾの手を離さなかった。
 本当だったらウゾは女の子にこんなふうに手を握られたら、照れてしまって手を離してしまうのだけど、今はサクラちゃんに、ぜったい僕が君を守ってあげるということを伝えたかった。だから、ウゾもギュッとサクラちゃんの手を握った。




 偉そうに、かっこいいことを言ったものの、ウゾは困ってしまった。
 もち姫の知恵を借りようと、こそこそともち姫の家まで行ってみたが、もち姫は縁側で眠っていた。ウゾは何度も声を掛けようと思ったけれど、何故か声が出なかった。
 そうだよね。
 もち姫は僕に一人で頑張れって、何度もそう言いたかったんだよね。
 でも……
 もち姫の家の竹垣の陰でウゾはふぅとため息をついて、足元を見た。

 あれ?
 ピンクの花びらが落ちている。この匂いは……
 ナカラギのサクラの花びらだ。
 どうしてこんな季節に?
 その時、ふと、ウゾは思い出した。初めてサクラちゃんに会ったとき、のっぺらぼうになりかかっていたサクラちゃんの手を引っ張ってここに来て、その時サクラちゃんのスカートのポケットから、ナカラギの桜の花びらがいっぱい零れ落ちたのだった。

 サクラちゃんは、病気のお母さんに桜の花びらを持って行ってあげたくて、そして事故に遭ったのだ。
 この桜の花びらは、サクラちゃんの魔法なのかも。サクラちゃんの気持ちが、この空間のどこかに花びらを残している。それとも、もち姫からの応援のメッセージ?
 ウゾは桜の花びらを拾い集め、ポケットにしまった。
 うん、もち姫、サクラちゃん、僕、やってみるよ。




 そしてその夜、丑の刻。
 それでもやっぱり、ウゾはびくびくしながら一人でキブネの森にやって来た。
 もちろん、学校はサボっている。パーフェクトのっぺらぼう女史が何かを察してくれているのか、学校からはこの数日の無断欠席について何も言ってこない。本当なら、使いの蛇がやってきて、サボった理由についてのレポートを108枚も提出させられるのだけれど。

 そのことは後で考えよう。
 ウゾはおっかなびっくり、つまり呪いを被らないようにしながら、足元の虫の鬼を踏まないようにしながら、そろそろと歩いている。
 キブネの森はタダスの杜よりも奥が深い。本当の闇の世界にもつながっているような気がする。この奥に入り込んでしまったら、抜け出せなくなることもあるのかもしれない。

 ウゾは木に凭れて、ふうっとため息をついた。
 サクラちゃんはちゃんと学校に行ったかな。一緒に行きたいというのを止めて、今日はちゃんと学校に行くほうがいいよ、と言ったら、黙って俯いていた。
 サクラちゃんは僕に任せると言ってくれた。だから、僕はそれに応えなくちゃ。何ができるかは分からないけれど、サクラちゃんのお母さんを救ってあげたい。
 でも、救う、なんてことは本当は簡単には言えない。僕はちょっとはやまってしまったかもしれない。サクラちゃんにかっこいい所を見せたかったし、それにこのままじゃいけないと思ったのだ。何だか分からないけれど、人を呪うなんてのは。

 その時、白い影がゆっくりとウゾの隠れる木のほうへ近づいてきた。ウゾは慌てて立ち上がる。
 サクラちゃんのお母さんだ。
 数日前に見た時は、もう少しニンゲンのような顔つきだった。でも今日は随分と違ってしまっている。誰かを呪うということは、そのニンゲンを人間ではなくしていくことなのかもしれない。
 もちろん、呪うには呪うだけの理由があるのだ。それは分かっているけれど。

 サクラちゃんのお母さんはゆっくりと大きな木に近付いて行く。木の前で立ち止まり、足元に灯りを置く。冷たい土を踏んでいる足には靴を履いていない。白くて消えてしまいそうな肌の色だった。
 どうしよう。
 ウゾは特別な方法があればそうしたかった。お母さんが鬼のウゾを見たら、お母さんはそれだけでも死期を早めてしまうかもしれない。サクラちゃんが、少しでも長く生きていてほしいと菊の雫に祈っていたお母さんの命を、ウゾが取り上げてしまうことになるかもしれないのだ。

 でも、今回ばかりは、もち姫も何も教えてくれそうになかった。ウゾにサクラちゃんのことを知らせたパーフェクトのっぺらぼう女史だって、ウゾの欠席については配慮してくれているのかもしれないが、このことに手を貸してくれる気配などない。ましてや、タタラになんか知られたら大変なことになりそうだ。
けれど、小鬼の知恵で何ができるだろう。
 風が木々の間から不穏な臭いを伴って吹き込んで、枯葉を舞い上げた。

 どうしよう。
 いつもなら、サクラちゃんがウゾの知恵袋だった。一緒に遅刻した時の言い訳だって、サクラちゃんの役割だった。サクラちゃんは好奇心旺盛で、何だって一生懸命勉強していた。そのサクラちゃんこそ、今一番苦しんでいるのだ。
 ウゾが思いを巡らしているしばらくの間、お母さんは木の前に立ったままだったけれど、やがて懐から藁で編んだ人形を取り出した。
 そして、人形を木に押し付けるようにして、藁の胸に釘を当て、手に持っていた木槌を振り上げた。

「待って!」
 もう妙案など考えている場合ではなかった。
 振り上げられた木槌は、お母さんの頭の上のほうでぴたりと止まった。
 風の音が急に止んだ。
「サクラちゃんのお母さん、サクラちゃんが悲しむようなことなしないで」
 その言葉に、お母さんはウゾを振り返った。その形相は、鬼のウゾよりもずっと鬼のようだった。

「吾を呼ぶものは誰だ」
 ウゾは足が竦んでしまっていた。それはサクラちゃんのお母さんの声とは思えなかった。サクラちゃんはお母さんは優しい声をしていたと言っていた。きっとサクラちゃんによく似た綺麗な声だったのだろう。
「ぼ、僕は……」
 ウゾは喉の奥に何かが引っかかってしまって、言葉を呑み込んだ。
「見られてしまったからには、お前を殺さなくてはならない」
 お母さんが闇に響くような声で言って、ウゾに向かって木槌を振り上げた。口が大きく裂けたように見えた。

 ウゾは咄嗟に叫んだ。
「だめだよ。僕はもう死んでるんだから、もう死なないんだ。お母さん、僕、サクラちゃんの友だちなんだ! サクラちゃんが僕にお母さんのことを頼んだんだ。だから僕は……!」
 ウゾは声を振り絞った。お母さんは、ウゾの言うことなど聞こえていないようだった。そのまま木槌を振り上げる。ウゾはその木槌を見上げて驚いた。

 呪いのかかった木槌は、鬼を裂き殺してしまいそうな刃に替わっていた。闇の中でもぞっとする光を吸い込んで光っている。
 もしかして、鬼でもやられちゃうのかも。
 そうだった。呪いがジョウブツしようと頑張っている鬼に降りかかることがあるって、そうなったらもうジョウブツできなくなってしまうんだって、この間の授業はそういうことだったじゃないか!
 だから呪いを被るようなところに行っちゃいけないって!

 あぁ、でも、呪いをかけた方はサイバンがあるんだって聞いたけれど、とばっちりで呪いを被っちゃった鬼はどうなるんだろう。
 ジョウブツもできなくなって、学校にも行けなくなって、サクラちゃんにも会えなくなって……!
 その時、ウゾの頭に大きな衝撃が加わった。
 ウゾは咄嗟にサクラちゃんのお母さんの手を掴んだ。

 ウゾは叫んでいた。
 お母さん! サクラちゃんのお母さん! 僕、それでも、どうなっても、サクラちゃんを悲しませたくないんだ!!!
 その時、ウゾは何かに吸い込まれていくような気がした。
 サクラちゃん……!
 もち姫……!
 ……それから、先生たち。
 あれ、どうして、タタラの顔が真っ先に浮かぶんだろ。
 意識がふわりと身体から一度抜け出しそうになった。


 急に、辺りは真っ白になった。
 ウゾは真っ白の中に引っ張り込まれていた。
 離れそうになった意識がウゾの身体の中に戻ってきたとき、ウゾは真っ白の中に立っていた。
 不思議と明るい真っ白。
 闇の光とはまるで違う、どこまでも白い明るさ。
 ここ、どこだろう?

『あなたはいったい誰なの?』
 いつの間にか、目の前に真っ白な着物を着た女の人が立っていた。顔ははっきりと見えなかったけれど、ウゾには分かった。
 サクラちゃんのお母さん。
『僕はウゾ。サクラちゃんの友だちなんだ』
『咲耶姫の友だち? なぜ、咲耶姫の友だちがこんなところに……。咲耶姫はどうしているの?』

 ここは、サクラちゃんのお母さんの心の中だ。まだ心の中にこんなに綺麗なまっ白な世界があったんだ。
ウゾはくっと背を伸ばした。
『サクラちゃんに約束したんだ。お母さん、サクラちゃんは毎日、お母さんの傍にいたんだよ。毎日、お母さんを心配して、お母さんの病院に通ってたんだ。そしてキブネの森にも。呪いを被るかもしれないのに、お母さんのことが心配で』
『咲耶姫は死んでしまって、いいえ、殺されてしまって、私はもう咲耶姫に会えないのに』
『でも、お母さんが人を呪うようなことをして、呪いのために闇の鬼になってしまったら、サクラちゃんはものすごく悲しむよ。お願い、サクラちゃんを悲しませないで』

『私の命はもう長くない。毎日のように警察にも行ったけれど、咲耶姫を殺した犯人は捕まりそうにもない。ちゃんと調べてもらえているのかも分からない。私には方法も時間もないの。犯人が憎い。咲耶姫を殺したのに、その誰かは生きているなんて。だから、呪い殺してやることに決めたの!』
 サクラちゃんのお母さんの白い顔が急に炎に巻かれたようになった。ウゾは慌ててお母さんの手を握った。その手も怒りのためか、赤く熱くなっていた。
『お母さん、サクラちゃんは、お母さんの病気が治って、長生きしてくれたらって。もしかして病気が治ったら、他の子どもたちに幸せを分けてあげて欲しいって、そう祈ってたんだよ。不老不死の霊水だという菊の葉から零れる水をとるために、おっかないキブネの森の奥に一人で来て、お母さんに届けてたんだ。それからこれ』

 ウゾはポケットに手を入れた。そして、お母さんの怒りと悲しみで熱くなった手を取って、ポケットの中から取り出したものを、そっとその掌に載せてあげた。
 お母さんの掌に、いっぱいのナカラギの桜の花びらが溢れた。花びらたちは掌からひらひらと舞い落ち、そして最後に、一番の桜色の花びらが残った。
『これがサクラちゃんの気持ちだよ』

 お母さんは動かなかった。最後の桜の花びらはお母さんの怒りを吸い込んで、少し濃いピンクに染まり、そのうちお母さんの炎のような手は、再び白くなっていた。
 お母さんはやはり動かないまま、掌に残ったナカラギの桜の花びらをじっと見つめていたが、やがてその上に涙をこぼし、強く握りしめた。桜の花びらはお母さんの涙を吸い込んで、元の優しい桜色に戻った。
『咲耶姫に会いたい。咲耶姫を抱き締めてあげたい』

 ウゾは、自分が覚えていないお母さんのことを思った。僕のお母さんも、僕のことをこんなふうに思ってくれているんだろうか。
 お母さんに会いたい。僕も、サクラちゃんも。でも。
『お母さん、サクラちゃんのことは僕に預けてください。サクラちゃんを殺してしまった犯人のことも。僕がきっと見つけ出して、訳を聞くから。もしもその人が後悔していないなら、僕が……』
 ウゾは言葉を飲み込んだ。僕に、決められることじゃない。でも。

『でも、もう遅いのよ。今日はもう7日目。私はこうして闇の鬼に取り込まれて、消えていこうとしている。呪いだけがこの世に残って、キブネの森の奥で渦を巻くわ。もう私は本当の鬼になってしまったの』
『そんなことはないはずだよ。今日はまだ7日目なんだ。今日、釘を打たなかったら』
『ごめんなさい。小鬼さん。あなたの名前を聞いていなかったわね』
『僕はウゾ。サクラちゃんの友だちだ』
 真っ白なお母さんは最後にウゾの手を握りしめて、ウゾの手にナカラギの最後の桜の花びらを残し、ふわりと消えた。


 途端に、ウゾは目の前の悪鬼と対面することになった。
 完全に鬼になってしまったサクラちゃんのお母さん、いや、サクラちゃんのお母さんだった呪いの鬼は、ウゾに刃を光らせる木槌の鉈を振り上げ、今まさにウゾの頭に振り下ろそうとしていた。
 その瞬間、ウゾは鬼の肩越しに、藁人形を見てしまった。
 木槌で打ち付ける前に、お母さんはもう藁人形に釘を突き立ててしまっていたのだ。藁人形は不安定な格好で、頭と足を逆さまにして、木に背中をつけたままぶら下がっていた。

 うわ、どうしよう!!
 サクラちゃん、もち姫、タタラ先生、……!!!!
 そうだ、何か呪文を!
 あぁ、思いつかない。断末魔って、鬼でもこんなふうにあれこれと走馬灯みたいにいろんな人の顔が思い浮かぶんだなぁ。それなのに、適切な呪文は思い浮かばない。
 って、悠長なことを考えている場合じゃないんだ!
 何かいい呪文はなかったっけ?
 呪文、じゅもん、ジュモン……!!

「ジゲンジシュジョウ フクジュカイムリョウ!!!!!」
 それしか覚えていない! もち姫が最後に教えてくれた呪文!

 その時、ぶわっと水があふれ出した。少なくともウゾにはそう感じられた。
 何が何だか分からないまま、ウゾは水に巻かれていた。水は、何とウゾのポケットの中から流れ出していた。ポケットから流れ出した水は、ウゾの周りを巡るように巻いて、大きな渦になった。そのまま目の前の呪いの鬼を巻き込んでいく。水は鬼の鼻や口の穴からものすごい勢いで入り込み、内側から鬼を膨張させた。
 鬼は、いや、呪いは、大きな渦巻きとなって闇の鬼の中で暴れまわり、鬼自身を破壊した。
 凄まじい力で、一瞬のことだった。
 鬼を突き破った水は鬼から溢れだし、呪いを世界中に撒き散らさんとして辺りを呑み込もうとしていた。

 ウゾは自分自身から迸る水に守られ、呆然とそれを見ていた。
 やばいんじゃないの!
 そう思ったが、全てが一瞬のことでなす術もなかった。

 その時、ウゾの目の前に小さな少年が現れた。
『ジゲンジシュジョウ フクジュカイムリョウ!!!!!』
 ウゾははっとした。そうだ、ぼうっとしている場合じゃない!
 自分もう一度呪文を叫んだ。
「ジゲンジシュジョウ フクジュカイムリョウ!!!!!」

 いや、これは呪文ではなく、この世の王だけに授けられるという法華経の八句の偈、その中の普門品の二句。周の穆王が釈尊から授かり、寵愛する童子が罪に問われて流罪となった時、哀れに思って授けた句だ。それを忘れないようにと童子が句を書きつけた菊の葉から零れる水が、霊水となり、不老不死の薬となった。
 観音様はいつでも優しく思いやりの目を持って私たち衆生を見てくださる。観音様を一心に信じれば、福の集まること海の如く無量にある!

 そして今。霊水はウゾのポケットの中の菊の葉から迸り出て、呪文と共に死を呑み込んでいく。
 ウゾは願いを込めた。
 この霊水は、ただ生を与えるだけではなく、ウゾが望めば死をもたらすことができる。菊慈童はそう言ったのだ。
 何故なら、生と死は裏と表、陰と陽、張り合わされて決して離れないものなのだから! 生きている者は、みんな死を抱えて生まれてきたのだから!
 お母さん、僕がきっとサクラちゃんを守るから!
 あなたは生きてこのまま闇の鬼になってはいけないんだ!




 ウゾは気を失っていた。
 ぼんやりと辺りにオレンジ色の灯りが揺れていた。
 影が見える。大きな影と、小さな影。それからより小さい影。
 これは夢? それとも。
『全く、学校をサボっているから、何をしているのかと思えば』
 これはタタラの声だ。

『お前は菊の精か。いや、確かその昔は慈童と言ったのではなかったか』
『さよう。吾も3000年も生きていると、あれこれと見聞きすることも多い。あなたはもしやミドロガイケに縁の者。そして、そうか、この小鬼は何やら懐かしい気を持っていると思ったが、やはりあの方に縁の者であったか』
 あの方? ミドロガイケ? やっぱり、龍なの、タタラ?
『それにしても、すごい力であった、慈童。お前は生も死も司るのか』
『それはこの菊の霊水の力。もっと言えば、釈迦が残した言葉に宿る霊力、人はこれを言霊とも言う。吾自身の力ではない。菊は長寿を与えもするが、時に死を司ることもできる。この小鬼が正しい判断をしたのだ。呪う闇の力に対して、本当の意味での死の審判を下したからこそ、菊はそれに応えた』

『小鬼に死の審判を委ねるなどと……!』
『いや、ミドロガイケの主、吾は感じることができる。人も鬼も定められた場所で、成すべきことを成さねばならぬ。あなたがどれほどこの小鬼のジョウブツを願っても、叶わないことがあるようだ。それをこの小鬼自身が証明してしまったのだ。かの呪文は、誰がどのように唱えたとしても霊力を発するものでもない』
『だが、お前も手を貸したであろう』

『ミドロガイケの主よ、吾はただ手を添えただけなのだ。何故なら、吾は愛する者の死も知らずただ悪戯に命を永らえ、知らされてもなお1800年も悲しみの時を生き続ける孤独の証に過ぎぬ。吾に関して言えば、菊の霊水は、死を与えてくれようともしなかったのだ。どれほど愛する者の傍に往きたいと願っても、叶わぬ夢であった。だが、この小鬼と共に呪文を唱えた時、吾に分かったことがある。吾が、愛する者の死に添うことも許されずこちらに残されたことには、何か意味があるのであろう。哀れにも不老不死を願うヒトというもの、病を内に抱えながら、すなわち死を内に抱えながら生きねばならぬヒトというものの苦しみ、それに添わねばならぬのが、吾やその小鬼のあるべき姿なのかもしれぬ』

 菊慈童の声はウゾの頭の中に香りを残している。ウゾは目を閉じたまま、その匂いを体中で嗅いでいた。
『では、ミドロガイケの主よ、また会うこともあるであろう。しかも、今日は懐かしい顔と再会した。確か、もち姫と言った、あの方の使いの君に』
 より小さなもう一つの影は、もち姫だったのか。
『菊慈童さま、姫さまはいつでもあなたを頼りにしておられましたよ』
 確かにもち姫の声だ。姫さまって?

『それは吾のほうだ。もしもあの方に今も会えるのなら、もち姫よ、吾の心も少しは癒されるのかもしれぬ。だが、それは今はよい。吾にはまだ仕事が残っているようだ。誰かこの仕事を継いでくれるものであれば、解放もされようが、それはまた誰かを同じ悲しみの中に取り込んでしまうことになるのであろう。愛するものを失う悲しみに寄り添うことこそが吾の仕事であるならば、吾は誰よりも長く、より深く、悲しまねばならぬのかもしれぬ。死とは何であるのか、生き永らえて3000年もの時を経た今も、吾には分からぬ。そして生とは何であるのか、それもまた分からぬ』
 ふわっと菊の匂いが消えた。
 同時に大きなため息が聞こえる。

『清狐は随分と余計なことをしてくれた。もち姫よ、お前は知っていたのか?』
『タタラ、清狐はウゾの力を試したかったのかもしれない。あなたがウゾの運命に逆らおうとしても、大きな力がそれを阻止しようとするわ』
 タタラは答えなかった。もち姫のあったかさがウゾの頬に触れた。
『タタラ、サクラのことは……』
『母親であろうとも、人の死を操作するのは罰則に値する』
『でもサクラの気持ちは、あなたには誰よりも分かるはず』

 タタラは何か言いかけたのか、大きく息を吸い込んだ。だが結局、言いかけた言葉を呑み込み、代わりにいつものように大きな声で言い放った。
『冬の間は、キョウト中の花の種、根の世話を命じよう。ウゾにもそう言っておいてくれ』
 そのまま、疾風が巻き起こり、今度はタタラの気配が消えた。
 もち姫がウゾの頬を舐める。ザラザラと温かい。
「ウゾ、行きましょう」
 ウゾの身体は何かから解放されたように自然に起き上がった。
 見回してみると、キブネの川の側だった。ウゾの側で白い菊の花が揺れ、そっと匂いを零した。


「もち姫、聞いたら答えてくれる? ……わけないね」
 ウゾはとぼとぼともち姫の後を追いかけながらつぶやいた。もち姫は何だか普通の猫みたいに、てくてくと一生懸命歩いている。
「何だかますますわからなくなっちゃった。答えにはたどり着ける?」
 ぴたりともち姫の足が止まる。
「ウゾ、答えがあると思う?」
 ウゾも足を止める。
「分からない。でも、僕、サクラちゃんのお母さんとの約束は守らなくちゃ」
 もち姫はじっとウゾを見つめていたけれど、やがて頷いた。

 もち姫の家にたどり着くと、縁側でサクラちゃんが待っていた。サクラちゃんはウゾともち姫の顔を見ると、じっと座ったまま、ぽろぽろと涙をこぼした。
 サクラちゃんが何も言わなくても、ウゾには何が起こったのか分かっていた。
 だからただサクラちゃんの側に行き、隣に座った。そして、ポケットからサクラちゃんのお母さんの憎しみも哀しみも、サクラちゃんへの愛情も、いっぱいいっぱいに閉じ込められた最後のナカラギの桜の花びらを取り出し、サクラちゃんの手を取って、その掌に載せてあげた。

 サクラちゃんは少しの間、花びらを見つめていたけれど、そのまま膝の上に置いたその手をそっと握りしめた。ウゾはサクラちゃんの手に手を重ねて、強く握ってあげた。
 もち姫もサクラちゃんの傍らに行って、ただじっと寄り添っていた。
 竹垣に、菊の花が揺れていた。

 小鬼よ、病には二通りある。一つは死に至る病、もう一つは死することのない病だ。あるいは、ひとつは心を殺す病、もうひとつは心の闇を乗り越えていくための病だ。
 死とは何であるのか、生き永らえて3000年もの時を経た今も、吾には分からぬ。そして生とは何であるのか、それもまた分からぬ。

 菊慈童の言葉が、匂いに乗ってウゾの身体を包み込んでいた。


連作短編【百鬼夜行に遅刻しました】秋・菊(後篇) 了



さて、もう冬ですね。秋の話を冬にようやく終わらせていて、すみません。
幸い、正月の休みがありそうなので、今度はぜひ、普通に間に合いたい!!

いよいよサクラちゃんを殺してしまった犯人と対峙するウゾくん。
そしてウゾくん自身の出生の秘密も……ウゾくんに定められた運命とは。
運命に立ち向かうウゾくんと、それを見守る人、じゃなくて、鬼と猫と花たち。
実は、サクラちゃんにも秘密があります。そう、サクラちゃんの名前の漢字が出てきたので、何かを察した方もいるかもしれませんね。
(でも、サクラちゃんって、実はキラキラネームだったのね^^;)
ちなみに、清狐というのは、パーフェクトのっぺらぼう女史の名前です(^^)
読み方は普通に「せいこさん」? 狐だったんだけど^^;

しかも、菊慈童、そんな聖闘士星矢みたいなやつだったのか!
イメージは、お能のあの静の世界の人だったのに^^;
来年の秋には、この話は一応の完結を見ているはずですが、もう1回くらい登場してもらいたい、奥の深いキャラでした。
(でも、もう一つ秋の話を書くなら、やっぱり『菊花の契り』ですね。雨月物語。ちょっとホモちっくな話なので、今回は控えましたが。でもこの菊慈童も、よく考えたら……^^;)

さて、次回は冬篇。
冬に花を咲かせる植物にするべきところですが、タイトルは『忍冬(スイカズラ)』……花が咲くのは5~7月。でも、花の名前の由来は、常緑性で冬の間も葉を落とさないからつけられたのです。

お楽しみに(*^_^*)
読んでくださいまして、本当にありがとうございます。

Category: 百鬼夜行に遅刻しました(小鬼)

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