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コーヒーにスプーン一杯のミステリーを

オリジナル小説ブログです。目指しているのは死体の転がっていないミステリー(たまに転がりますが)。掌編から長編まで、人の心を見つめながら物語を紡いでいます。カテゴリから入ると、小説を始めから読むことができます。巨石紀行や物語談義などの雑記もお楽しみください(^^)

 

NEWS 2014/4/29 末広がり8888のリクエスト/更新予定 

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カウンターの数字に一喜一憂するのも大人げないけれど、末広がりは嬉しいです(*^_^*)
ゲンを担ぐわけでもないのですけれど……これからも少しでも長く続けられたらいいなぁ。


さて、その8888に頂いたリクエストの発表です!

scribo ergo sumの八少女夕さんから
「半にゃライダー危機一髪! 宿敵の魔の肉球迫る」
……了解いたしました! 日曜日の朝の番組、乞うご期待!
まさか夕さんがそこ(半にゃライダー)に引っかかって下さるとは思わなかったので、すごい変化球が来た!って気がしました。マコトの出演も込みで、ちょっと練ってみたいと思います。
多分、「桃太郎侍」も絡みそうな予感が。となると、世界=お江戸を救うヒーローなのかしら?

のけいさんから
拙作・掌編『センス』の世界で、けいさんちとうちのキャラたちが戯れる、みたいな。
丸投げでいいですよ、と言ってくださったのですけれど、できるだけこの世界観でチャレンジしてみたいです。
あ、あれこれ行き来もありまして、けいさんは「真に安眠を」運動推進者を名乗っていただいておりまして。
安眠する真の話とか、真の曾孫の真(ロックバンドのヴォーカリスト)とけいさんちのスクランプシャスのメンバーが交錯する物語とかも検討していたのです(*^_^*)

小説ブログ「DOOR」のlimeさんから
limeさんのイラストでSSを、です!
lime縺輔s_convert_20140429173839
こちらのイラストは、limeさんが先日アップされていたもの(limeさんいわく「ちょっと手抜きに見えるけど意外と時間をかけたモノトーンイラスト、私がUPしたものよりもちょっときれい目に描きなおしてあります」)。
アップは後日、お目にかけたいと思います。この猫ちゃん、マコトのつもりで書き始めてくださったとのこと。
ちょっと大人猫?なので見知らぬネコでもいいよ、とのこと。男の子は誰にしようかな。


以上、リクエスト発表のコーナーでした!
しばしお時間を下さいませ。
手許の仕事をいくつか片づけなければならないので、その狭間で『図書館の手紙』を書き終えて、そのあとでかかりますね!

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そして更新情報です
先日、京都に行ってきました。
毎年、清明の季節に訪れる【清明の雪】にも出てくるお寺、京都の北の果てにある志明院。
今年は、初めて石楠花の季節に訪れてみました。
そして、上の写真は大原・三千院の石楠花。
石楠花を堪能した1日となりましたので、そのご報告を予定(*^_^*)
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お土産は、寂光院前の紫ば漬屋さんから……見えにくいけれど、生姜と梅干が美味しそう(^^)





カテゴリを少し整理しました。少し見やすくなった……かなぁ?

【海に落ちる雨】は月・木曜日の更新を定着させようと努力中。
本日いきなり火曜日になってしまいましたが^^;
今日、同時に第3節の最終話をアップしておりますので、よろしければご覧ください。
第4節の章題ラインナップも載せています(*^_^*)

GWはまた津軽へ。今年は強行軍なので、あまりゆっくりはできないのですけれど(*^_^*)

というわけで、昭和の日のNEWSでした!
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Category: 小説・バトン

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[雨113] 第22章 死んだ男の息子(3) 

【海に落ちる雨】第22章その(3)です。いよいよ第3節が終了です。
色々な大物が絡んできて混乱している真は、ようやく竹流が姿を消す前に一緒に行動していたはずの男に行き当たります。怪しげなファイティングクラブを経営する男・草薙。
代議士・澤田顕一郎の秘書で片腕だったともいう男・村野耕治の息子だという彼。

このお話には「完全な敵」も「完全な味方」も存在しませんが、幸い、道案内人はそれなりにいるようです。
安全な奴かどうかは別にして。
では、草薙がどんな男か、覗いてみてください。





 男たちは笑いながら真の身体を自由にした。
 真は反射的に立ち上がって、服を直し、唇を手の甲で拭った。口の中で血の臭いがしていた。
「悪かったな。力自慢が集まって酔っ払うとろくなことをしないようだ」

 これが村野の息子か、と思った。
 想像していたよりも小柄で、一見のところ老けて見えるが、目つきも身体つきも機敏そうで、年齢不詳だった。髪の毛は、刈っているのか薄いのか、申し訳程度にあるだけで、シルエットは小柄な坊主のようだ。
「奥へ来てくれ」

 言われるままに後をついていった。途中で尻を撫でられて何か下品な言葉を掛けられたが、睨み付けると余計に刺激するような気がして、無視した。
 ホールの奥は短い廊下で、幾つかのドアがあったが、どれも冷たく堅く閉ざされている。どこにも開かれていない狭く薄暗い廊下だけが、奇妙に浮き上がって見えた。

 村野の息子は一番奥の扉を開けた。
 四畳半ほどの狭い空間に、机とソファとキャビネットが上手く納まっている。ドアが閉まった後も、どこかからあの店の中の喧騒が震動のように伝わってきていた。
「初めて来た人間で、あそこを通ってきて意識があったやつは少ない。お前さんの同居人は衣服ひとつ乱してなかったけどな」

「竹流はどこだ」
 まあ座れ、というように村野の息子はソファを指した。真は言われるままに座った。
「草薙謙二だ。相川真さん」
 真は相手を睨んだままだった。

「そう怖い顔をするな。俺も、あの男とずっと行動を共にしてきたわけじゃない」
「だが、病院から一緒に出て行ったんだろう」
 草薙はデスクの上から、見たこともない銘柄の煙草を取り上げて、真に一本差し出した。真は相手を睨んだまま受け取った。余裕のあるところを見せておきたかった。

 草薙はライターで火をつけながら、世間話のように淡々と語った。
「あのまま病院に置いとくと危険だったからな」
「どういう意味だ?」
 真は吸い付ける時に一度だけ煙を吸い込んで、後は空気に任せた。吸い込んだ煙が殴られた腹と胸に沁みて、吐き気がした。

「お前さん、彼から何か預からなかったか」
 真はまだ黙ったまま、草薙の顔を睨み付けていた。何を言っているのかよく分からなかったし、この男が味方かどうかもわからない。
 草薙は真の気配を蛇のような視線だけで確認して、自分は美味そうに煙草をふかした。

「まあいい。放っておくつもりだったが、あの極道の女もお前さんもえらくしつこいんで、ちょっとばかり俺も感動したよ。全く警告を聞き入れもしない。第一、大和竹流自身が一番、こっちの警告を聞いてもいないからな」
 言いながら、真の方へ安っぽいアルミの灰皿を滑らせた。
 真は、一度ふかしただけの煙草を捨てた。もみ消さなかったので、煙はいつまでも細く揺らぎながら天井へ昇っていた。

「今、どこに?」
「さぁな」
「放り出したのか」
「馬鹿を言うな。俺はあの男に頼まれたことに応えただけだ。契約に、損得勘定を抜きにしてアフターケアをするなんてのは入っていない」

「竹流はあんたに何を頼んだんだ」
「始めはこの店にやって来て、村野耕治が本当は生きているのか、と聞いてきた。俺の知っている限りでは本当に死んでいる、と答えた。それから、御蔵皐月の行方を捜して欲しいと言われた。御蔵皐月のことは、俺に責任があるはずだと言ってきたんだ」

 真は理解できずに草薙を見つめていた。細い煙の向こうの草薙の顔は、時折二つに割れて見えた。
「どういう意味だ?」
「御蔵皐月は俺の妹だ」
「じゃあ、その女は、本当に村野耕治の娘なのか」
「いや、彼女は村野花の娘だが、村野耕治の娘じゃない」
「村野花の娘?」

 ノックもなく静かに扉が開いて、さっきの黒人の少年が飲み物を運んできた。
 年齢は全く分からないが、未成年には間違いがない。労働基準法が通用する世界とも思っていないが、真は思わず草薙を睨んでいた。草薙は真の視線の意味を察したのか、淡々と言った。

「ナンニは、滞在期間を過ぎて本国に強制送還された親に取り残されたんだ。正確には、日本に着いた途端に捨てられたから、取り残されたというわけじゃないか。素直でいい子だ」
「国に帰れるようにしてやらないのか」
「子どもに銃を握らせて戦場に送り込むような国だぞ。そうでなくとも、飢えて病気になって死ねっていうのか」

 村野は叩きつけるような鋭い声で言い放った。真は確かに正論だと思って黙った。
 いや、あるいはその国に生まれたら、その運命を受け入れなければならないものなのかも知れない。子どもには生まれる場所を決める自由はないのだ。
 草薙が興味深そうに真を見つめている。

「村野花、というのはあんたの母親か。もともとは澤田の恋人だった? あんたの草薙っていうのは彼女の旧姓なのか」
 草薙は面白そうに笑った。
「草薙は俺を引き取った男の苗字だ。けちな商売をしていたがアル中で死んだよ。村野花は、あんたの言うとおり澤田の昔の恋人だったが、澤田の帰りを待ちきれない、身勝手で流されやすい女だった。澤田は優秀な記者だったし、熱意があった。女よりも仕事を取ったんだよ。花は男に執着して付きまとって鬱陶しがられて、腹いせに村野と寝たんだろう。村野と花は似合いの下衆なカップルだ。花は俺と皐月の他に、もう一人子どもを産んでいる。全部父親は違うし、誰一人として自分で育ててはいないけどな」

「彼女は、村野と別れて死んだのか」
「届け出ていないから離婚はしていない。死んだことになっていたようだが、詳しい事情は知らん。男と出て行ったなんてのは村では体裁が悪かったんだろう。結果的に籍から抹消されたというだけのことだ」
「つまり、生きているということなのか」
 草薙は馬鹿馬鹿しい、という顔をした。

「大分で、お前さんとこの秘書が、お節介な村人から聞いてきたんだろう? 花は失踪したって。だが、何時の時点までかは知らないが、村野と一緒に暮らしていた。夫婦生活をしていたかどうかは不明だけどな。花が産んだ他の二人の子どもの親を聞いたら、お前さんもちょっとびびるぞ」
「どういう意味だ?」

「誰でも知っているような経済界の大物だからだ。花はな、魔性の女だよ。意識していようがいまいが、男に喰らいついたら骨までしゃぶるのさ。そして村野はハイエナのような男だ。その二人が手を組んでも、唯一靡かない男が澤田顕一郎だったわけだ」
 真は勧められて、ナンニという少年が持ってきたジントニックを飲んだ。口の中にはまだ血の味が残っていた。

「強請っていた、ということか」
「寝ただけなら大したスキャンダルじゃないが、子どもがいるとなるとな。ちょっと昔なら、闇に葬ることも可能だったろうが、村野はさすがに抜け目なく、いつでも切り札に使えるように、二人の子どもを隠していた」
 草薙の声は、ドラマのナレーションのように淡々としている。
 始めから感情の薄い男なのか、あるいはこれまでの経験が彼をそのようにしたのか、掴み切れなかった。

「村野が握っていた強請りのネタは、戦争のときの大国相手も含めて、とんでもないものが入っていたと聞いている。よく消されなかったものだと感心するよ。まぁ、悪党は小心者ほど生き延びると言うから、まさに村野はそんな奴だったのかもしれん。奴にとって強請は趣味だったわけだ。博打と同じように止められなかったんだろうよ。特に、じりじりと澤田を心理的に苛めるのはたまらなかったんだろうな。村野は何も語らなかったらしいが、何せ、右手のしていることを左手に知らせるなってのが信条だったらしいからな。だが、さすがに目の届かないところで所々に穴が開くこともあったんだろう。澤田はどこかから村野を疑っていたようだ」

 真はジンを飲んでいるのか、血を胃に流し込んでいるのか分からないな、と思った。
「ところが、天は上手く人を裁くもんだ。村野は胃癌で死んだよ。村野の後妻は、癌になった村野の世話をするために家政婦代わりに嫁いだようなものだ。あの田舎の村で、後ろ盾のない女が一人で生きていくのは難しいからな、どんな扱いを受けても文句も言えなかったろうよ。その女は一人、村野の子どもを産んだが、その子は十歳の時に病死したらしい。後妻はその後、どうしているのか分からないがな」

「澤田は、村野とあんたの母親の間に子どもがいたことを知らないのか」
「だろうな。というよりも、興味もなかったんじゃないのか。花や村野が自分に執着してるなんて、これっぽっちも思っていなかっただろうからな」
「村野が澤田に執着?」
 執着、というのは奇妙な言葉のように思えた。

「そうさ、大物を強請って金をたんまり溜め込んで、人生面白く生きていたはずの村野にとって、唯一の超えられない壁が澤田だったんだ。いや、澤田を超えられないことが分かっていたからこそ、村野は闇の側で生きるしかなかったのかもしれないな。村野から見た澤田は、どんなに落ちぶれてもいつでも光の側にいる人間だった。憎たらしくてたまらないのに、愛しくてたまらない、屈折した憧憬や愛情の対象だったわけだ。だから、澤田が記者として油が乗り切っていたときに、足を引っ張ることになった事件を利用して、澤田を精神的に追い込んだりしたんだろう」

「どういうことだ?」
 草薙は自分もジントニックを一口飲んだ。
「澤田が糸魚川の翡翠仏事件を取り上げたとき、その記事がきっかけで当事者夫婦が首を吊って自殺した。澤田は何もその夫婦だけを責めたかったんじゃないんだろう。その証拠に、随分前からその家族と接触しているし、そこの女の子が澤田に懐くくらい親しくもしていたようだった。だが、その夫婦が首を吊った後、澤田が取材で集めていた大事な資料は全て消えていた。世間は澤田が功名心からはやって事件をでっち上げたとまで言った。澤田には申し開きをする術もなかった。だから澤田は九州日報をやめたんだ」

「女の子というのは、香野深雪」
 真が呟くと、草薙は頷いた。
「香野深雪に聞いたらいい」
「深雪は、澤田のことを覚えていないんじゃないかと思う」
「だが、彼女は嫌でも思い出すことになったろう」
「どういう意味だ?」
「お前さん、彼女のことは彼女から直接聞け。それがお前の義務だろう」

 真はしばらく草薙を見ていたが、俯いた。その通りだと思った。
「いずれにしても、あれはただの『翡翠仏事件』じゃなかった。澤田はそれ以上の取材を断念したんだろうけど、裏にはかなり胡散臭いものが絡みついていた。政治資金の出所なんて生易しいものじゃない、政治や経済の裏には闇の商売が幾つも絡みついていて、金の行き来の中には政治家や経済界の大物たちの後ろ暗い性癖も、べったり張り付いていたんだよ。澤田が社会的にも記者を辞めるまでに追い詰められたのは事実だが、澤田を一番追い込んだものは、社会の冷たい目じゃなくて、香野深雪の存在だったんだろうよ。そうして落ち込んだ澤田を励まして衆院選に担ぎ上げたのが村野だ。多分、村野は気分が良かったろうよ。ついに澤田を自分の目の届くところに置いて、自分の思い通りにできるとでも思ったんだろう。自分を頼りにさせ、自分がいなけりゃ何もできないと思い知らせ、もしも澤田が羽根でも生えたように手元から逃げようとしたら、ちょっと香野深雪の話をしてやったらいい。澤田は落ち込んで自分を責める。その時、優しく手を差し伸べてやって、お前の力でこれだけのことをしてきたじゃないか、誰が知らなくても俺が知ってるよ、と励ましてやる。澤田は村野に支えられている、誰もがそう思うようになる」

「村野という男の気持ちが分からない」
「そうれはどうかな。村野は何でも持っていたが、唯一、自分自身の中に光る玉を見つけられなかったんだよ。その焦がれてやまない玉が、自分ではない誰かの中で光っているのを見つけちまった。つまり、もともと澤田は他人に助けられて光る玉じゃなかった。だが村野は澤田に、自分がいなけりゃ光ることはできないと思わせたかった。何でも持っていたからこそ、手に入らないものに異常執着してしまったんだ。残酷なことに、澤田の方はそんなことに頓着していなかったはずだ。そもそも、自分で光ることができる奴ってのは、そういうことに頓着しないものだ。澤田は自分でも気が付かなまま、常に村野の前を歩き、村野の上で輝いていたってわけだ。だから村野は、今度はまた別の嫌がらせの花火を上げようとしたのさ」

「それが、九州の小松とかいうヤクザのことか」
「小松は戦争中から、中国やタイあたりの芥子農場の経営に噛んでいたという噂だった。戦争が終わって、一切閉鎖されたことになっているが、それなら今の世の中にどうやってこれだけ麻薬が蔓延る? 今でも、小松が麻薬事業にかんでいるのは間違いがない」

「元締めは村野だったのか」
「そうらしいな。だが、村野が掴んでいたのは農場経営そのものじゃない。その麻薬を使っていた大国の首だよ」
 真は右手に持ったまま灰になりかけていた煙草を揉み消し、灰皿に捨てた。
「ロシアの妙な組織も?」

「さぁ、俺も何もかも知っているわけじゃないし、今更興味もないけどな。第一、この手の話には時効がある。戦争の時代に行われた非人道的なことなど、その当事者があと数十年もしてみんな死んでしまったら、公表されたところでスキャンダルにもならないもんだ。そんなところから得た情報や金が、いつまでも金ぴかの光を放っていることはないんだよ。だが、癌で苦しんだ村野には、阿片やら麻薬やらは有難かったかもしれないけどな。あの男が死ぬとき、がりがりに痩せて、もう誰だか分からないくらいになっていたそうだ。警察は伏せたけど、阿片の証拠を隠すために本人が家に火をつけたという噂もある」

「墓石に村野が死んだ日付がなかったというのは……」
 草薙は首を横に振った。
「さてね、村野自身が自分の死を認めたくなかったのか、生きているかもしれないと思わせておく方がいいとでも遺言したのか、あるいは誰かが村野という存在に死んでほしくなかったのかもしれないな。失踪した女房とかがさ」

 真はようやくソファの背に凭れた。身体が重く痺れるような気がしていた。
「竹流は、御蔵皐月を探してくれとあんたに言ったのか」
「御蔵皐月を守れ、って言ったんだよ。あの男は大馬鹿だ。御蔵皐月が自分に刃を向ける可能性など、これっぽっちも考えていない。あれは花の娘だ。男をどうしても自分のものにしたいと思う女の血を引いている」

「村野花のもう一人の子どもというのは?」
「お前も知っている女だよ」
「まさか、楢崎志穂?」
 草薙は頷いた。
「じゃあ、楢崎志穂と御蔵皐月は本当に姉妹だったのか」

「本人たちは知る由もないだろうけどな。しかも、村野花はとんでもないことをしていやがったのさ。村野の気が付かないところで開いていた穴のひとつが花だったんだ。いや、知っていたのかもしれないな。ある意味じゃ、村野の強請という商売の一翼を担っていたのが花で、村野にしてみたら花がその女が何をしていようとも自分に火の粉がかからない間は、全く興味もなかったんだろよ。村野がその女に興味を持っていたんだとしたら、それはただ澤田という男を挟んでのことだ」

 真は、淡々と自分の両親の悪事を話す草薙を見つめていた。
 この距離感はなんだろうと思った。この男は、両親の悪事を自分の身に関係のある不幸な出来事、とは思っていないのだろうか。

「とんでもないことって?」
「幼児売春と幼児虐待および猟奇殺人のビデオ製作だ。相棒は」
「寺崎運送の……」
 真が呟くと草薙は頷いた。
「寺崎昂司を知っているのか?」

「いや、直接には知らん。寺崎孝雄が自分の息子の昂司をその手のフィルムやビデオに出演させていたことは知っているけどな」
「竹流は、そのことを知っているのか」
「あぁ」
「何て……」
 真は呟いて、声にならなくなった。

「だから、あの男は馬鹿だと言ったんだよ。御蔵皐月も、寺崎孝雄も放っておけばよかったんだ。遠い昔の豪農の物語、あるいは本来請け負ったはずのフェルメールの絵だけに関わって、そこで手を打ってしまえばこんなややこしいことに巻き込まれなかった」

 起こっていることが小さい、というのは本当なのだ。
 どこかで、『河本』は気が付いたのだ。脅迫者などいない、彼が追いかけている人物はやはり形のない幻だったということに。『河本』はアサクラタケシがワシントンからわざわざやって来たので、一瞬、幻が実体になった瞬間を見てしまった。だからしばらく浮き足立っていた。
 だが、どこかでこれが私怨の絡んだ個人戦、もしくは社会のダニのような連中の『悪戯』であることを認識したのだろう。だから、全て忘れることも可能、などと言って、舞台を降りたのだ。

「敵がでっかい空の上にいるなら、あるいは躱すことができる攻撃も、隣にさりげなく座った人間から横腹に喰らったら、人間は結構無防備だ。あの男は、今無防備の塊みたいなもんだ」
「寺崎孝雄、というのはどこに」
「さぁな。家は京都だが、そんなところでのほほんとしているわけじゃないだろう」

「竹流が病院を出たのは危険だったから、と言ったな?」
「妙なトラックが出入りし始めたからな、俺が、しばらく姿を隠すように勧めたんだ。二日ほどここに匿ってたんだが、あの馬鹿は自分から出て行ったよ」
「どこに?」
「山梨に行ってみるとは言っていたが、一度新潟から電話があった。以後は知らん」
「山梨?」

 草薙は舌打ちした。
「御蔵皐月のアトリエがあったんだ。ただそれは何年か前に火事になっている。だが、御蔵皐月が山梨に土地勘があったのは確かだ」
「一緒に行かなかったのか?」
「山梨までは追いかけたがな、俺も何時までも付き合ってられなかったんでね」

「御蔵皐月、あんたの妹は? それに、楢崎志穂も妹なんだろう?」
「悪いが、俺にあいつらが妹だなんて感慨はないね」
「でも、竹流はあんたに御蔵皐月を守れって言ったんだろう? あんたはそれが契約だったって。しかも、あんたは御蔵皐月と会ったんじゃないのか」
「あぁ、会ったよ。本当に妹なら、何か感慨を覚えるものなのか、と思ったのさ。だが、生憎何にも感じなかった」
 草薙はやはり淡々と語った。肉親の情というものをまるきり感じて生きてこなかったと、その顔は伝えていた。

「御蔵皐月のほうは俺が村野耕治の息子だと名乗ってやったら、びっくりしていやがったけどな。御丁寧にその後、自分の妹、つまり楢崎志穂に俺のことを調べろ、とまで言ってやがった。俺を調べたところで、何にも出てきやしないのにな。どっちにしても俺は、可哀相で可愛い妹たちを愛しているとか、何とかしてやりたいとかいうような気持ちにはならなかっただけだ。相手は成人している立派な大人だぞ。自分で自分のことに責任をとるべきだろう。大和竹流は納得できないって顔をしてやがったけどな、結局どうするかは俺の勝手だと納得してくれたんだろう。それに死んだ人間を守るのはどっちにしても無理そうだしな」

 真は思わず息を呑み込んだ。
「本当に御蔵皐月は死んだのか?」
「さぁ。寺崎昂司が殺した、と楢崎志穂がほざいていたけどな」
「死体を見るまで信じるべきじゃないだろう」
 唐沢が言ったそのままが口をついて言葉になった。草薙は鼻で笑うと、首を横に振った。

「全く、所長が所長なら、秘書も秘書、しかもその根元はあの大馬鹿野郎か。黙って降りかかる火の粉を払い落して、目を瞑っていればいいものを」
「大馬鹿野郎って……」
 その言い方はないだろう、と真は思わず素直にむっとした。自分の反応が幾分か美和に感化されてきたような気がした。

「ああいう男が組織のトップになるってのはとんでもない迷惑だ。真っ直ぐすぎて始末に負えない。まわりはいつも気が気じゃない。大体、ああいう男を作り出したのはどういう了見なんだろうな」
「了見?」
「あいつを教育した人間は、もっと冷静で冷淡で、常に組織を崩さないことを第一に考える、冷めた頭を持った後継者を作るべきだった。だが、そいつは分かっててそうしなかった。人情に厚く情熱的なトップは、いつか組織を潰すもんだ」

 真は、草薙がヴォルテラの事情を知っているのだろうかと思った。
「どういう意味だ」
「教育者は、その子どもを愛してたんだろうよ。村野耕治や花とは違って」
 真は思わず草薙から目を逸らした。
 チェザーレ・ヴォルテラは自分の息子のためなら何でもする。それは十分に分かっていることだった。

「まぁ、俺も、これから先もこの世界で生きていくにあたって、あの男と縁があるのは悪いことじゃないけどな」
 草薙は立ち上がった。真がぼんやりしていると、何時までここにいる気だ、と言った。
「行かないのか?」
「どこに?」
「あいつの足跡を捜したいんだろう」
 時計は夜の十時を回ったところだった。真はしばらく草薙の顔を見ていたが、ようやく立ち上がった。


 添島清香が渡してくれた鍵のホテルに電話を掛けると、伝言が残されていた。電話が繋がった先は清香のマンションだったようだ。
「無事なの?」
 清香が受話器を渡した相手は、姉の添島麻子刑事だった。
「しばらくはまだあなたを見張っているみたいだけど、そう長くはないと思うの。でも、あなたは一秒が惜しいでしょう」

「えぇ。お蔭で助かりました。妹さん、大丈夫ですか。ホステスの振りまでしてもらって」
「清香のこと? この子、本当にバイトしてるのよ。社会勉強だって言ってるけど、どうなんだか」
 向こうで笑い声が聞こえていた。

 添島刑事の凛とした厳しさとは違う、華やかで明るい雰囲気の清香の顔を思い出した。それでも、確かに姉妹なのだ。添島刑事は世界を舞台に生きる道を、妹たちのために断念して日本に帰ってきたと聞いている。どこか芯の部分は揺らぐことなく繋がっているのだ。
 それは御蔵皐月と楢崎志穂の間にもある絆なのだろうか。

「あなたが無事に帰るまでアサクラタケシは納得しないでしょうけど、あなたはここで引き下がるわけにはいかないはずだし。一切関わるな、という命令だから、こちらはおおっぴらには動けないけど、そのホテルと車は何時使ってもらっても構わないわ」
 添島刑事はふっと息をついた。

「もう一度聞くけど、いいのね? ここから先は堕ちた人間たちのいる場所よ。『河本』たちが手を引くのは、その場所では理屈なんて一切通用しないからよ。話せば分かるなんて奴はひとりもいない」
 真は不思議と静かな気持ちだった。
「こうして俺に協力してくださって、今さら聞きますか?」
「そうね。矛盾しているわね。本当はあなたのことが嫌いなのに」
 そう言った彼女の声は、言葉とはまるきり違う響きだった。

「添島刑事。俺の目的は始めからひとつだけだ。信じる相手も、ただ一人だけなんです」
「知ってるわ」
 短い沈黙。その間に、電話線は言葉を越えた低い響きを伝えていた。
「だから、私はあなたを信じる」


(【海に落ちる雨】第3節 了)







お付き合いくださいましてありがとうございます(*^_^*)

ついに第4節に突入です。
以前より、本当にそのままアップするかどうか躊躇っている章です。

あるドキュメンタリーと、その実話をもとにした小説を読んで怒りが爆発していて、アドレナリンが出まくっていましたので、とんでもないものを書いていたなぁと、いま読み返してもびっくりします。
18Rの18禁の……いえ、時々お見かけするブログさんでも、これ以上のものはあるので、それほどでもないんじゃない?と言われるかもしれませんけれど……

第5節の真の怒りが伝わるためには欠かせない部分でもあるのですけれど、このままアップするかどうか、少しまだ気持ちが行き来しています。
書いた時の勢いというものがあって、それはもう取り戻せないので、同じものは二度と書けない。
だから伏せてしまうのもちょっと違うのかな、と思ったり。
いや、やっぱりダメだろうと思ったり。

このブログがメジャーならアップできないけれど、逆に超絶マイナーなのでいいのかな、と思ってもみたり。
大海さん、こんな人だったんだ、とは思わないでくださいね。
いや、その前に、読むときって「そのまま(ありのまま)読みたい」と思われるものなのかしら。
う~~~~んと、まだ悩む大海なのでした。

あ、と次章はそれほど問題はありません(*^_^*)

ちょっと真の独白、聞いてみてください。

『しない、というならしなくてもいい。したい、と言われたら応える、それだけのことだと思ってきた。
どうせ自分の中で答えが出ない問題なら、そのまま呑み込んでしまったほうがいい。
何より、始めから真はあの男のものだった。指の先、爪の先、髪の毛の先の、明日剥がれ落ちしまうような細胞の一片までも、あの男のものだった。全ての血を搾り出して見せろと言われたら、躊躇わずにそうする。
真の命の核は、十九のあの日からあの男の中にあった。』

また次回、お楽しみに!



第4節のタイトルラインナップです。

第23章 喪失
 竹流と最後に一緒にいた男と彼の足跡を辿る真。山梨、そして再び新潟へ。
 蓮生家の事情と村野耕治が繋がります。
第24章 宝の地図
 真の『恋人』香野深雪の過去が眠る新潟。そこで真が出会うのは……
 そして、フェルメールに焦がれた男・江田島の事情とは。
第25章 佐渡に横たふ
 大和竹流……彼は今、どこに囚われているのか……
 (注:かなり苦しい章です)
第26章 戻り橋
 舞台は京都へ。竹流の女房とも言うべき芸妓・珠恵との邂逅。
 そして、ついに真の手は竹流に届くのか……
第27章 ずっとここに
 「ずっとここにいてもいい。東京にも、ローマにも帰らないで、ずっとここに」
 真のメッセージはただこれだけだったのです。
第28章 恋歌
 真と珠恵。実は壮絶なる三角関係? 想いの深さは比べられません。
第29章 赤い糸
 もう一組、恋に惑うカップルが。そう、ヤクザの北条仁と、女子大生の美和。
 二人の心の軌跡もお楽しみください。
第30章 巷に雨の降る如くに
 竹流の心の声が溢れだします。
 そして、怒りの収まらない真が選んだ道は……


Category: ☂海に落ちる雨 第3節

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【雑記・ガーデニング】 春の庭・後半戦/三人静? 


春も後半。そこで今日は、百花繚乱が少し落ち着いてきた春のお庭をご案内いたします。
冒頭は、開き始めたモッコウバラ。棘がないので、庭に好んで植えられていますね。
うちは黄色と白を並べて植えていたら、絡まっちゃって、今では分離できません^^;
白は匂いがあって、黄色は無臭。白の方は「いかにも薔薇」という匂いです。
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前回、【今日は彼の誕生日】の記事で大輪の牡丹の写真をお届けしましたが、今日見たら、5つとも開いておりました。
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蕾の時のわくわくをちょっとお届けして……まだ開き始めで小さいのですけれど。2番目と3番目に開いた花。
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この牡丹はもう10年選手。今年こそはもうダメかなぁ、と思っても、やっぱり開いてくれる。
薔薇と一緒で肥料食いとも聞いたことがあるのですけれど、うちは放任主義(って、面倒くさいだけ^^;)。
それでも頑張る、可愛い花なのです(ごめんね、できの悪い親で……)。

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こちらはハナミズキ。赤の方は植えた場所が悪かったのか、枯れかけていたので切り倒そうかと思っていたら、去年くらいから復活。今年は少し花数も復活しました。
白の方は、苗を捨て置いていたら根付いちゃったもの。もう動かす気もないのですが、ちょうど山茱萸の傍にあって、大きくなったら困るかも^^;

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そして八重山吹。
山吹は、本当は一重が好きなのですけれど、「八重山吹」って言葉が詩的でいいですよね。和歌の世界。
その一重の山吹もあります。
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一重でも趣があります。白もあるのですけれど、正確には少し種類が違うようです。
山吹は実をつけない……「七重八重 花は咲けども山吹の(実)みのひとつだに なきぞかなしき」と歌われましたが、この白は実をつけます。
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八重のついでに、八重咲コデマリ。こちらはまだまだ三分咲くらいです。
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紫蘭も咲き始めました。
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満天星躑躅(どうだんつつじ)ももう満開。
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え~っと、これ名前なんだったかな。忘れちゃった。
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→アルメリアだ! 思いだしました(*^_^*)
下は山野草のホウチャクソウ。山野草って、植えてもしばしば消えてしまうのですけれど、これとイカリソウは健在です。あ、一人静も全然静かじゃないんですけれど。
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日陰では、こんな植物も大活躍。
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フッキソウにギボウシです。

さて、ここから先は、最近のニューフェイスをご紹介。
先日「刃物」を購入した際、お店で苗をいくつか見つけました。
まずはこちら。左がピンクの凌霄花(ノウゼンカズラ)、そして右が紫のライラック。
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花は来年以降かな。

白のヒメシャラの木の横に、やはり白の夏椿を植えてあったのですが、枯れてしまいました。
その場所はずっと空いていたので、こちらにも、このたび新しい仲間を植えました。
ピンクのヒメシャラです。夏椿をもう一度植えたかったのですけれど、あまりいい苗がなくて、ふと見たらこの子が……「私を買いなさい」と。
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木の根元には、都忘れと一人静と二人静を並べてみました。
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さて、その一人静に二人静。裏庭には先輩がおりまして。
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うちの一人静、何だか清楚感はなく、大迫力の姿です。
葉っぱの真ん中にひとつ穂状花序を出し、花が開いたらブラシ状になります。
群生するので、うちの裏庭でも群生状態なのですが……何だかでかくなってきました。

一方、こちらは二人静……のはずだったのですけれど。
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写真、ボケちゃいますね。緑緑で見えにくいし。
ということで、クリスマスローズの花弁にお手伝いいただきましょう。
二人静
そう、奥は確かに「二人静」。でも、手前のは?
「三人静」……というよりも「三角関係」もしくは「三つ巴」あるいは「三すくみ」?
家族、にしては大きさがみんな同じで、これまた迫力がありすぎるし……

ちなみに、これは珍しいことではないそうです。
この、俗に「二人静」と呼ばれている山野草、花穂は1本のことも、3本や4本のこともあり。
ただ、「二人静」のイメージに惹かれて植えたのに、3本や4本だと、ちょっと興ざめすることもあるのかも。

ついでに。花だけでなく、夏野菜も準備。野菜の苗を購入して……
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うちの露地の畑……は言い過ぎですね、ただの庭の隅。でも土は……結構ふかふかなんですよ(^^)
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植えてみました。あ、しまった! 放置している檸檬の木まで写っておりますね(^^)
この間、木の下を歩いていたら、檸檬の実に頭をぶつけました。結構痛かった……

というわけで、我が家の庭、春の後半戦、お楽しみいただけましたでしょうか。
次に開くのは……ウツギ、紫陽花と、キンシバイ、などなどでしょうか。
また次の季節にお目にかかりましょう(*^_^*)
ご覧くださいまして、ありがとうございます(*^_^*)

Category: ガーデニング・花

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[雨112] 第22章 死んだ男の息子(2) 

【海に落ちる雨】第22章その(2)です。
ローマからやって来た竹流の叔父・チェザーレに会い、田安の死は自分の父親の「仕事」の結果だと知らされた真。
ここで、要になる台詞を反芻。


「あの馬鹿者は、わざと雑誌のインタヴューに応じたんですよ。どういう意味かお分かりですね。あの雑誌はヨーロッパに姉妹社があり、日本で発売されるよりも前に同じ内容の記事がヨーロッパ中で売り出される。これは些細なことではありません。あなたを愛しているなどと馬鹿げたことを言ったことは大目に見るとしても、ヴォルテラを継ぐつもりはないと、こんな形で宣言することは許されません。あれの一言が、ヴォルテラの内にも外にもどれほどの波紋を投げ掛けたか、想像したことがありますか。もちろん、あの馬鹿者はそれを狙ったのでしょうが。そして、あなたの父上は、私が次に出る行動を読んだのです」


「あなたに銃の使い方を教えるようにタヤスに言ったのは私です。私は、あなたを私の息子の夜伽の相手に雇うつもりはない。馬鹿息子ですが、いずれあなたがあれの盾にさえなってくれることを期待して、そのように頼んだのです。あなたの父上はそれが気に入らなかったのでしょう」


だから、チェザーレ・ヴォルテラはここにやって来たのだ。息子を探し出すためだけではない。後継者を傷つけた者を二度と立ち上がれないまでに叩き潰し、自分の意にそぐわない状況を覆すために。そして、彼の言葉によれば、アサクラタケシの息子を手に入れ、後継者の忠実かつ確実な盾とするために。


さて一方、真をヴォルテラの魔の手(?)から遠ざけようとする「河本」。
実は、真の父親・武史の大学の後輩だったんですよね(以前、真に告げています)。
私の予想では、きっと、憧れの先輩だったのではないかと思うのです……ま、そんな感傷に浸るオッチャンじゃありませんが。


「ご存知と思いますが、チェザーレ・ヴォルテラは真っ向勝負で来るタイプの人間ですが、彼の後継者のためなら、同じ理屈で卑怯にもなる男です。あなたを利用するなど、赤ん坊の手を捻るようなものですよ」


「大和竹流の捜索はチェザーレ・ヴォルテラに任せて、少し休まれてはいかがですか。身体がまいっていると、ろくな考えが浮かばないものです。そのように他人の言葉に簡単に踊らされたりします。全て忘れることも、あなた次第で可能なことのはずです。あなたが決心されるのなら、あなたの立場を守ることは、私には簡単なことです。元の生活に、ただし、大和竹流のいない生活にお戻りください」


頑張れ、真。こんな腹黒いおじちゃんたちに負けるな!
さぁ、腹黒すぎてかえって磨かれた黒曜石のような(?)唐沢の名調子を聞きに、ご一緒に刑務所に面会に行きましょう!
後半は、竹流と最後に一緒にいたはずの男、村野耕治の息子に会いに、怪しいファイトクラブを訪ねましょう!
(って、観光案内じゃないのに^^;)





 翌日は朝から雨だった。
 指定された面会時間に千葉県まで行くと、いつものように淡々とした手続きが進んで、真は狭い面会室でしばらく待たされた。
 コンクリートと変わらない冷たく厚い壁を通しても、外の湿気はしみ込んでくるようだった。

 座るべきかどうか考えながら暫く突っ立っていたが、真は結局安定の悪いパイプ椅子を引いて、腰を下ろした。椅子のせいなのか、落ち着かない気分になったが、目を閉じて黴臭い空気を吸い込んだ。
 目を開けると、薄暗く狭い面会室の壁が、身体を押しつぶすように迫ってくる。息苦しくなって、真は咳き込んだ。

「何だ、お前、また痩せたんじゃねぇのか」
 刑務所に入っている時の方がこざっぱりして見える唐沢が、鉄の扉が開いた途端に、例の如く無遠慮な声で言った。真は立ち上がった。
「お元気そうですね」
「そりゃあな、三食食える環境は健全でいいわ」

 唐沢が立会人に勧められて座ると、真ももう一度座り直した。
 胡散臭い目つきは変わらないが、確かに刑務所に入ってから唐沢は少し太ったように見えた。短く刈られた髪のせいで、そう見えるだけかもしれない。いい加減な性質は、時にその人間を実年齢よりも若く見せることがあるが、唐沢の場合はまさにそれだった。

「ずっとお知らせしないと、と思ってたんですが、遅くなって」
 唐沢は椅子に斜めに座って足を組んでいた。刑務官の立会人が嫌な顔をしていたが、唐沢は全く意に介していない。
「田安の爺さんのことか」
「どうしてそれを」
「北条仁が来たからな」

 真は息をついて、少し姿勢を正した。唐沢は身を乗り出すようにして、僅かな幅しかない仕切り台に肘を預けた。
「おい、坊主、何か知らねえけど、妙に神妙になるんじゃねぇぞ。あの爺さんはな、まともな死に方ができるような生き方をしてこなかったのよ。何時、どこで、どうやって死のうとも、大方変わりばえのしない人生だったろうさ。そりゃあ、俺も同じだ」

 真は唐沢の顔を見たままだった。
「俺も、爺さんも、戦争やら内戦やらという事情があったにしても、人を殺してきてるんだ。後ろにゃ雲霞の如く悪霊を背負ってんのよ。だから、どういう形で死のうとも、それは仕方がねぇ」
 一体、北条仁はどういうふうに唐沢に話したのだろうと思った。

「あなたは、知ってたんですね」
 唐沢ははぁ? というような不可解な顔をしてから、更に真のほうに身を寄せてきた。
「坊主よ、俺も爺さんも、お前を囲うのが楽しかったのは事実さ。お前が何者かを知って、うようよと寄ってくる色んな種類の虫どもの顔を観察するのは、そりゃあ面白いもんだった。だが、これだけは忘れるなよ。お前の親父が誰だろうと、お前と付き合ってる男がどんな人間だろうと、その周囲に誰が群がってこようと、お前の値打ちはそんなもんじゃ測れねぇ。お前は自分の気持ちと欲望に素直になりゃいい」

 真は唐沢の言葉をしばらく頭の中で反芻した。そして、それが、言葉は違っていても、聖職者が語る内容と同じだと気が付いて、妙におかしく感じた。この男は、坊主になると似合うかもしれないとさえ思った。
「北条さんは、田安さんが誰に殺されたと言ったのですか」
「俺は『事故』だって聞いたがな」

 真は黙って唐沢を見つめた。唐沢の目は、相変わらずどうとも取れる目つきで、何を考えているのか、全く読み取ることはできなかった。
「なぁ、坊主。事故だろうが、殺しだろうが、あるいは自殺だろうが、あの爺さんにとっちゃ同じことよ。お前がその事実を突き止めたところで、爺さんの生涯が褒められたものになるわけでも何でもねぇ。爺さんのやってきたことは、俺と一緒でどっちにしてもろくなもんじゃねぇのさ。気楽に考えろ」

 多分、唐沢はあらゆる可能性をすでに考えているのだろうと思った。
 事実をふたつ、みっつ並べれば、唐沢がちゃらんぽらんに見える爆発的な想像力で十ほどの可能性を並べることができる能力を持っていることを、真はよく知っていた。

「誰かを問い詰めたって、お前さんが幸せになれるわけじゃないぞ。なんせ、これは戦争だからよ。戦争ってのはな、坊主、反射だ」
「反射?」
「頭なんか使ってねぇ。多分せいぜい脊髄あたりまでの反射だ。目の前にきた的をただ反射的に撃つってだけのことだ。それが敵か味方か、兵士か一般人かなんてのはどうでもいい。戦争ってのはな、どんな理屈を並べてみたところで、起こってしまえば、そこには正義は一切ない」

 真は、自分が唐沢という男を信じている、と感じた。それは「信頼」ではなかったが、唐沢の言うことには嘘がない。奇妙な感覚だった。
「それより、生きている人間のことを考えたほうがいいんじゃないのか」真が何のことか、と思っていると、唐沢は先を続けた。「彼氏が行方不明だそうだな」

 唐沢に、彼氏ではないと言い訳するのは最初の一回でやめてしまっていた。全く人の話を聞いていないことがわかったからだった。
「えぇ」
「それで憔悴してるわけか」
 それには答えなかった。
「生きてるか死んでるか分からない、なーんて情けない顔すんじゃねぇよ」
 何故か、唐沢から目を逸らすことはできなかった。

「なぁ、お前さんは自分の最大の武器が何か知ってるか?」
「武器?」
「俺がお前を、失踪人調査にはもってこいだって、名瀬に売り込んだ理由さ」
 真が何も答えないでいると、唐沢は気分よさそうに笑った。

 唐沢ほどでもないが、真もまた、社会からはみ出ているからだろうか、とぼんやりと考えていたが、唐沢は思いもよらぬ言葉を言った。
「お前は鼻が利くんだ」
 その言葉だけでは、真は意味を理解できなかった。

「何も実際の臭いに対してじゃないぞ。お前は人の感情に対して鼻が利く。時々においが強すぎて気を失いそうになってるみたいだけどな。それも、良い感情や世間的に理解可能な感情に対してだけじゃない。自分にとっての悪意でも、犯罪者の常識を逸した感情でも、普通では理解できない感情にも、同じように反応する。お前の身体も精神も、それを整理しないで記憶しちまうのさ」

 唐沢はガラスの仕切りの向こうで、右手の人差し指を立てた。
「怖がる必要はない。死体を見るまで信じる必要はないさ」
 真はひとつ息を吸い、頷いた。

「ま、励むことだな。後悔って言葉を、俺は一生の間に一回しか使わないことに決めてんのさ。それももう使っちまったからな。お前も、そう考えて、でっかい気持ちでやっていくほうがいいぞ」
「何時、使ったんですか?」
「生まれたときに決まってんだろ」
 立会人がそろそろ、というような気配を見せてから、唐沢がもう十センチほど真に身を寄せた。

「三上にな、今度は嫁さんの手作りのもんより、もっと気の利いたもん差し入れろ、って言っとけ。エロ雑誌とかな、大人の玩具とかよ」
 真は一瞬呆気に取られたが、怒る気も失せて頷いた。
「三上さん、面会に来ているんですか」

 三上に直接、唐沢に会いに行っているのかどうか聞いたことがなかった。聞きにくい質問でもあったからだ。
 だが、六本木のバーのマスターが言っていたように、三上は唐沢が出所するときはきっと迎えに行く気だろうと、真も思っていた。
「いや。車椅子でここに来るのが面倒なんだろ」
 面倒くさそうに言う唐沢の本心は、真には計り知れない。

「三上さんに、会いたいんじゃないのですか」
 一度は聞きたいと思っていたことだった。唐沢は真の目を見つめたままだった。
「会おうが会うまいが、あいつは俺のもんだ」
 真は思わぬ返事に、しばらく唐沢の目から視線を逸らすことができなかった。
「だからって……」
 どう言葉を続ければいいのかわからない。だが、唐沢は淡々と先を続けた。

「お前の彼氏に聞いてみろ。お前のことをどう思っているのか、な。しかも、お前さんだって満更じゃないはずだ。身体も心も、命も、捧げてもいいと思ってるだろ。殴られたって蹴られたって、首を絞められたって、あるいは死ぬまでケツに突っ込まれてもいい。銜えろと言われたら銜えるし、飲めといわれたら何だって飲む、ケツを拭けと言われたら拭くくらいどうってことはない。そういう二人の間のことは、他人の誰にも理解はできない」
 真が呆然としたまま唐沢を見つめていると、唐沢は笑いながら立ち上がった。

「お前、成長してねぇな。ちったぁ上手くかわせ。そんな神妙な顔をされちゃあ、言ったこっちも、からかったつもりだったのか、真剣な話をしてたのかわからなくなっちまう。三上にも、名瀬にもよろしく言っといてくれ。そうそう、北条仁にな、伝えといてくれ。タイの芥子農場の元締めに、確かに日本人が絡んでて、そいつが小松と関係があったかどうかはわからねぇが、確かムラタだったかムラノだったか、そういう名前を聞いた事があった気がするってな。まあ、もう戦争の後のことだから、古い話だけどよ。それから、うちの可愛い弟子に妙なことすると、後で火傷するぞって言っとけ」

 真がいちいち言葉を理解できないうちに、唐沢は真のほうにちょっと身を寄せた。
「もっとも、お前さんがたまらなくなってケツを差し出すんなら別だけどな」


 唐沢はどこも変わっていなかった。それに妙に安堵しながら、真は刑務所を出た。
 それに、唐沢が今でも自分を弟子だと思っているのか、と考えると、奇妙なことに嬉しい気がした。
 信じるものも足がかりも失った気がしていたのに、唐沢だけは何も変わらず、そこに存在している。

 つけられているのは感じていたが、気が付かないふりをしたまま事務所に帰り着いた。
 美和も、宝田も賢二も、ごく普通に仕事をこなしている。
 夕方の早い時間に、しばしば飲みに誘いに来る新聞記者の井出が、いつもの当り前の風景のように、食事に誘いに来た。どういうわけか、ゲイバーのチーママの桜も一緒だった。

「真ちゃーん、よかったぁ。相談に乗ってほしいことがあったのよぉ」
 桜は例の如く、逞しい腕と作り物のむっちりした胸を誇張して真に抱きつかんばかりに寄ってきた。今日は休みなのか、と聞くと、遅出だからいいのだという。
 真の冴えない顔を見ると、桜はんー、と意味不明の唸りを発して、スマイルよ、スマイル、愛は貫くためにあるのよ、と言った。

 いつもの居酒屋に行くと、桜はびっちりと真に引っ付いて、ひとしきり別れた男の愚痴を言い、それから唐突に真の顔を真剣に見つめた。
 何かと思って真が桜を見返すと、桜は、どう頑張っても骨の太さは隠せない力強い両手で真の頬をつかんだ。

「真ちゃんはねぇ、本能が雄なのよ。世間がどう考えてるかは別にして、真ちゃんを見てるとあたしはすごく雄を感じちゃう。相手を守りたい、守るために狩に出る、そういうタイプなのよね。身体のほうでは相手を受け入れる側になっちゃっても、心が雄だから、待ってるだけじゃ我慢できないはずよ」
 一体、桜は誰から何を聞いてそんなことを言ったのか、半分以上酔っ払った桜に確認するのは不可能のようだった。

 その後も、入れ替わり立ち代わり知り合いのホステスやホストの誰かが顔を出し、時々真を彼らの店に連れて行っては居酒屋に連れ戻した。
 美和と井出の計画なのか、と真が気が付いたときには、真は夜の町を桃姫という源氏名のホステスと一緒に歩いていた。綺麗な顔つきの若い娘で、大学生だと言っていたが、どこかで見た面影だった。

「お姉ちゃんから」
 桃姫は真の耳元で囁いて、真のポケットに鍵らしいものを入れた。
 真が彼女の顔をもう一度見つめると、楽しそうに桃姫は笑った。
「添島清香です。車はそのホテルの駐車場に停めてあるそうです」

 それだけ言うと、桃姫は地下に潜る階段の前で足を止め、真を促すように一緒に階段を下りた。そして、真を一軒の店に案内すると、自分は地下廊下をどこかの抜け道に出ていった。
 背後を振り返る時間はなかった。

 押し込まれるように一軒の店に入った真は、狭く暗い入り口に自分がいることを認識し、人が一人やっと通れるだけの数メートル先の廊下の奥のカーテンが開くのを黙って見ていた。

 奥からは薄暗い赤い光と一緒に、パシンと鋭く何かが叩かれるような音と、歓声のような叫びが響いてきていた。靄のような煙は、煙草なのか、それ以外の何かなのか分からない。
 開いたカーテンの所に立っているのは、小柄な黒人の少年で、暗い闇の中で目だけが異様に光って見えた。

「ナンニ、客か」
 聞こえてきたのは英語だった。少年の背後に立ったのは上半身裸の大柄な黒人で、真を見ると躊躇いもなく真っ直ぐ近付いてきた。真がまだ呆然としているうちに、真の襟首をつかみあげるようにして、奥へ引きずっていく。

 カーテンの向こうは思ったより広いホールだった。
 パシン、という音が幾つも木霊している。
 大きな黒い身体、また小柄ながら機敏そうな身体がそこかしこで踊っていた。身体同士をぶつけ合うような音は、高い響きを伴ってホールで跳ね返った。踊り、というのは正確ではない。明らかに格闘技を、しかもルールのない格闘技を繰り広げているのだ。それを取り囲む幾人もが、応援というよりは野次を飛ばしている。

 男が真をホールの入り口で放すと、一斉に中にいた人間たちの動きが止まった。
 やがて幾つかのひそひそ声が交わされ、黒い大きな影が真のほうに近付いてきた。何の準備もしていなかった真のすぐ傍にやってくると、大きな影はいきなり真の背中に腕を回し、抱き上げるようにしてホールの真ん中まで、まるで荷物のように運んだ。

 からかうような叫びと口笛が上がった。あちこちで、コインの当たるような音が響いた。
 英語で叫んでいるのは、時間のようだった。何の時間なのか理解できなかったが、数分単位の時間の読み上げが、真にとって有難くない賭けのスタートだということだけは何となく理解できた。

 目の前の大柄な男は、数本の太い傷の残る黒い身体を誇示するように立っていて、幾つかジョブをすると、いきなり右手でストレートを飛ばしてきた。
 とっさに、真は身体を低くした。周囲の男たちの歓声は一気に期待度が増したように感じた。

 大柄な黒人は口の端が裂けそうなほど釣り上げて、面白そうに笑った。特別に活きのいい獲物が飛び込んできたことが分かったからだろう。
 右の拳で自分の左手掌を幾度か叩き、そのまま腕で来るのかと思ったら、いきなりまわし蹴りを披露してきた。

 不意打ちに、真は逃げ送れて足を掬われる。床に転がったところへ、ほとんど時間差なく腹に拳が食い込んできた。腹に力を入れる時間だけは僅かに残っていた。
 それでも激烈な衝撃だ。筋肉を硬くしないまま、まともに食らっていたら、そのまま意識が吹っ飛んでいただろう。いや、命も吹っ飛んでいたかもしれない。

 瞬間に転がって二発目を躱すと、相手は床を強か打って叫びを上げた。だが、悪いことに、同時に闘志にも火がついたようだった。
 やばい。真は跳ねるように立ち上がった。
 そこへ、素早く次のパンチが飛んでくる。顎が歪むような勢いをかろうじてかわした。だが、身体は背後へ吹っ飛ぶ。背中が後ろのテーブルにぶつかり、テーブルが滑って壁に激突した。二重の衝撃が背中で炸裂する。

 一瞬に逃げる場所を失った真は、衝撃で僅かに意識が飛んだようになり、そのままでかい男に組み敷かれた。
 グローブのような手で左の顔面をはたかれる。口の中が切れた。
 もう一発来る前に、反動をつけて男の股間を蹴り上げる。

 だが、男は一瞬ひるんだだけで、面白そうに笑った。
 今度は胸倉をつかまれて持ち上げられた。咄嗟に男の肩に両手をついて、弾みをつけて男の身体に膝で蹴りを入れた。男の身体ごと床に転がったが、そのゴツい体がクッションになる。

 逆に男を組み敷くと、間髪を入れずに鳩尾に一発くれてやった。時間をかけると自分が不利なのはよく分かっていた。
 男たちの歓声はますます激昂してきた。コインの音はうるさくなってきた。
 さっきの時間は自分が気を失うまでの時間か、と思い、真は立ち上がりかけた。

 途端に、頭を上から押さえつけられた。そのまま、別の男の手元に投げ込まれる。
 さっきの男よりも一回り大きな男に思えた。男は面白そうに真を抱き締めるようにし、思い切り力を入れてきた。
 呼吸ができなかった。

 そうなると、さすがに体格の小さい真は不利だった。どうもがいても腕ひとつ逃れることができない。
 苦しくて足だけで暴れると、今度はいきなり離されて、床に押し付けられた。男は舌なめずりをして、真のベルトを引き抜くとスラックスを下げ、シャツをたくし上げた。

 回りから、一段と大きな歓声が上がった。ここに来て、真はようやく男たちが強か酔っていることに気が付いた。酒なのか、それ以外の何かなのかはわからなかった。
 これはフェアな勝負じゃない。相手を失神させる方法はどうでもいいらしい。

 その時直接腹にくらった一発は、ここに入ってきてから最も強力なパンチだった。
 意識が一瞬朦朧となる。危ないと思ったときには、いきなり顎を砕けるほど強くつかまれ、殴られるのを覚悟した僅か先に、いきなり呼吸ができなくなった。

 食らったのは拳ではなく、口も鼻も塞がれるような分厚い唇の感触だった。顎を摑まれていて噛み付くこともできない。半分まで下げられたスラックスがもつれて、蹴り上げることもできなかった。腕は別の誰かの手で床に押し付けられていて、自由が利かない。次は下着の下に直に手を突っ込まれて、いきなり摑まれた。

 まじにやられる、と思った瞬間。
「それくらいにしておいてやれ」
 太い声が頭のずっと後ろのほうで聞こえた。






22章は短めなのです。次回はもう22章の最終話。
村野耕治の息子・草薙という、これまた喰えない男の登場です。
仁の代わりに、今度は彼が道案内人になります。
さて、本当に味方なのか、頼れるのか……少なくとも良好な関係にはなりそうにはありませんね……

「だから、あの男は馬鹿だと言ったんだよ。御蔵皐月も、寺崎孝雄も放っておけばよかったんだ。遠い昔の豪農の物語、あるいは本来請け負ったはずのフェルメールの絵だけに関わって、そこで手を打ってしまえばこんなややこしいことに巻き込まれなかった」
 起こっていることが小さい、というのは本当なのだ。どこかで、『河本』は気が付いたのだ。脅迫者などいない、彼が追いかけている人物はやはり形のない幻だったということに。


次回もお楽しみに!

Category: ☂海に落ちる雨 第3節

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【雑記・小説】 今日は彼の誕生日 

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(イラスト:【小説ブログ「DOOR」】のlimeさん 著作権はlimeさんにあります)

今日4月23日は、聖ジョルジョの日。
聖ジョルジョの日といえば……彼、ジョルジョ・ヴォルテラ、つまり大和竹流の誕生日なのです。
彼は聖人の生まれ変わりというコンセプトもあったので、誕生日は同じ名の聖人の記念日と定めました。
最愛キャラ、その2かその1か、もう分からなくなっております(^^)

limeさんが描いてくださったイラストは本当にイメージにとても合っていたので、嬉しがって何回も使わせていただいております。limeさん、重ね重ね、ありがとうございます(^^)
あ、傍にいる猫は……半にゃライダーに憧れるマコトです。→【迷探偵マコトの事件簿】

真とマコト、竹流とタケルの位置づけについては、作者もよく分かっておりません^^;
マコトはツンデレの設定だったけれど、最近妙に素直だし……真はこんなに可愛くありませんし……

さて、今日誕生日の彼。
昔、この長大な物語を実際に字に起こした時、真と竹流の物語をいくつか書きましたが、その後、真の人生をすっ飛ばして、真死後の竹流の人生を書いておりました。
始めは、真を見守るいい役だったんだけど、あまりいい男だったので(作者が言うか^^;)、物足りなくなって掘り下げたら、とんでもない男でした……
詳しくはこちらを→大和竹流・紹介文
ついでにこちらも→【最愛オリキャラバトン】

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このノートは全て真シリーズなのですけれど(込・真の曾孫の真の話まで)、右の山の上半分(多分9冊くらい)が件の真死後の竹流、というよりジョルジョの物語。舞台はローマ。ジョルジョと、真の息子・慎一の壮絶な親子葛藤の話です。
『Eroica』というタイトルで、ベートーヴェン交響曲第3番をイメージしておりました。
中身は……今読んでも、今の私にこれだけ書けるかしら、という濃厚さ。
いつかお目にかける時が来たら嬉しいです。

竹流さん
昔、友人たちとコピー本を作っていて、その時、この『Eroica』が300ページを突破した記念記事の冒頭。

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その中のイラスト……もっと男前だよ、と書いてある……
やっぱり私の画力じゃだめだわ^^;

というわけで、今日はまた一人(なぜか同居の姪を巻き込んで?)、ケーキはないのでイチゴ大福でお祝いです(*^_^*)

あ、お花もプレゼントしよう! 花はこちら!
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今日、ついに開いた牡丹です。うん、タケルにはピッタリだ。あ、竹流?
百花の王ですものね。あと4つも蕾があるのです(わくわく(*^_^*))。

おまけに。
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艶やかな躑躅。木はずいぶん小さくなったけれど、まだまだ色鮮やか。

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拓き始めたモッコウバラ。黄色は匂いがなくて、白は匂いがあります。

というわけで、春の花と共にお送りいたしました、お誕生日記事でした!

Category: ☆登場人物紹介・断片

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[雨111] 第22章 死んだ男の息子(1)/あらすじ付 

【海に落ちる雨】第3節・第22章その(1)です。第3節の最終章になります。
左の最新記事のリストから前回のが消える前には次をアップしようと考えていたのですが……

もう書きあがった作品なのですが、あちこち言葉や表現を手直ししながらアップしているので、忙しいと延び延びに……
でも、真の回想章はもうなくて(竹流視点の回想は、最後の方に想いが溢れるように出てきますが)、再開したら怒涛の展開になるので、これまでみたいに時間を空けていたら気が削がれるなぁ……と思い、頑張って(月)(木)くらいの週2連載を心掛けることにしました。
頑張りまする←できてないよ^^;(2015/6/13追記:以下にあった、あらすじまとめコーナーは新しい記事へ移動しました)

登場人物一覧はこちらのページを→→【海に落ちる雨】登場人物
登場人物もほぼ出揃っています。
重要人物はあと2人:竹流の女房・珠恵と怪しいおじちゃんがもう1人

さて、ローマからやって来たチェザーレ・ヴォルテラは真を「使う」つもりだったようですが……
真が日常に戻るために「河本」から出された条件は「大和竹流に関わるな」。
真はこれを条件に事務所に戻ることを許可されます。
「河本」は「もう1人のキーパーソン」と何か取引していたようですね。






「先生」
 相川調査事務所というドアの逆さ文字の向こうに立っている人影を見つけた美和は、ドアを引き開けて、半分悲鳴のような声を上げた。そして思わず真の腕を握り、そのままゆっくりと事務所の中に引き入れた。
「添島刑事から電話があったの。もう先生が事務所に帰っても大丈夫だからって」

 真は黙ったまま美和の腕を握り返し、それからソファから身体を浮かした宝田と賢二のほうを見た。
 宝田は稀に見る機敏さで、身体を浮かした途端に真のところに駆け寄っていた。何を思ったか、宝田の身体よりも十分ひとまわりは小柄な真を、目一杯力を込めて抱き締めると、わんわん泣き始めた。

 泣く役を奪われてしまった、と美和は思い、それから突っ立ったままの真からようやく宝田を引き離すと、皆のために暖かいコーヒーを淹れた。
 真は久しぶりに触れる事務所のソファの座り心地を確かめているように見えたが、心はどこかに置き忘れているような顔だった。

「名瀬先生が、先生が戻ったら連絡をしてくれって」
 コーヒーを渡しながら、美和は努めて穏やかな声で言った。
 真の肌には血の気がなく、まるで動いている彫像のように思える。唇は何も語るまいと決めているようで、堅く引き結ばれ、ひどくやつれたような目はいつもの碧の光を失っていた。

「それから、三上さんからも」
 添島刑事は多くを話さなかった。
 だが、真が無事に事務所に戻り、元通り仕事をしていくにあたって、某かの取引がなされたような気配があった。大和竹流のことにはもう関わるな、というような取引だ。

 先生は納得したんですか。
 美和が尋ねると、添島刑事は長い間を置いて、そのようね、でも、とだけ言った。
 明瞭に言葉にしなかったのは、添島刑事なりの心の表れだったのだろうか。
 もちろん、自分の恋人を見捨てるような言葉を言えるわけがない。たとえ、大和竹流の叔父という人がやってきて、その人がどれほどの力を持っていようとも、真が大和竹流を諦めるということは、添島刑事にとっても彼を見捨てることになる。

 真はコーヒーを飲むと、まず名瀬に電話をし、午後からの面会の約束を交わしていた。それから三上に電話をして、心配する三上に言葉少なく謝っていた。声は極めて冷静で、抑揚さえなかった。
 電話の向こうの名瀬や三上が何かを感じてくれたらいいのに、と美和は思っていた。美和は横目でちらちらと真の顔を見ながら、落ち着かない気持ちで、時々宝田や賢二と視線を交わした。

 真が午後から名瀬弁護士のところに出掛けていくと、美和はようやく息をつき、机の一番上の引き出しをそっと開けた。
 あのように言われてしまった後では、仁に頼ることもできなかった。もちろん、真を守るのは自分と宝田や賢二の仕事だと言いたい。だが、これまで大和竹流がしてきたようなことを、果たして自分たちにできるだろうか。何より、一体どんなふうに支えたらいいのだろう。

 もちろん、自分たちこそが真を守る筆頭であるべきなのは分かっている。この期に及んで、真をもう一度危険の中に放り込むことはできないという気持ちも、もちろんある。
 だが、何だか気に入らない。
 不可解なことに、急に今になって、色々な人間が一気に真を「庇う」方向へ進み始めている。その上、庇うための条件が突き付けられたことも確かだ。

 その条件とは、今まで彼にとって最も堅固な砦だったものを打ち壊すことで、その上で、付け焼刃的に別の柵を作り上げようとしているかのようだ。
 真が自ら、手を引くことを望んでいるのなら仕方がない。だが、本当の真自身は何を願っているだろう。

 宝田も賢二も何も言わないが、美和の逡巡を察知している気がした。
 窓を見ると、現実の闇を覆うように、街はわざとらしい明るさに満ちていた。サイレンの音もクラクションの音も、はるか彼方の次元にあるようだ。

 もしも、真が大和竹流の捜索を諦めて、ここで静かに今まで通りに仕事をして、そして自分たちが真を助けていくなら、それはそれで穏やかで幸せなんだろうか。
 もう一度だけ、その可能性を考えた。

 今なら目を瞑る、と仁に言われたとおり、今度こそ真の手を握って離さないようにしたら、新しい何かを積み上げていくことができるだろうか。しばらくは辛いかもしれないが、やがて時が解決してくれるのかもしれない。
 美和はボールペンを机の端から転がし、それが向こうへ落ちていくのをぼんやりと見つめた。

 私はそれで幸せだろうか。先生は……本当に諦めることができるだろうか。
 真を危険に追い込むのは確かに不本意だ。だが、一度失ったら永遠に取り戻せないものを心に背負ったまま、ただ余生を生きていくような人を、傍で見つめているなんて、多分不可能だ。

 賢二が床からボールペンを拾い上げて、机の上に戻してくれた。
「いいのか」
 賢二が呟くように言った。美和は頬杖をついた。

 丁度その時電話が鳴って、宝田が受話器を取り上げた。電話の会話は短く、宝田が数度、相手の言葉に分かりました、という意味の返事をしただけで終わった。
「何?」
 真に明日の刑務所の面会が許された、という電話だった。

 夕方真が戻ってくるまで、皆、何をするでもなくただ待っていた。
 この事件が始まってから真が事務所に戻れなかった時間を思えば、ほんの数時間という短い時間だったにも関わらず、それはとてつもなく長い不在だった。

 真は窓からの光が橙に染められる頃に戻ってきて、食事に行こうと皆に声を掛けた。真のほうから食事に誘うなどということは、どちらかというと珍しかった。宝田が、刑務所の面会の件を真に告げると、真はただ頷いた。
 表情の乏しい顔は、体中から血を抜かれてしまった美しく冷たい彫像のままだった。
 その真を見つめているうちに、美和の腹の底の方から湧き上がってくるものがあった。

 やっぱり我慢がならない。
 何より自分の性分に合わない。我慢は一日すれば十分だ。
「行こうか」
 静かな声で真が言ったとき、美和は机の一番上の引き出しを大きな音をたてて開けた。

 宝田も賢二も、そうこなくちゃ、という顔をしたように見えた。真は血の気の薄い顔のまま美和を振り返っている。
「やっぱり、納得できない」
 美和はどう気持ちを表現していいのか分からず、とにかく自分に言い聞かすように叫んでみた。
 真は怪訝そうに美和を見ている。

 美和は、机の一番上の引き出しから一枚の名刺を取り出し、真に突きつけた。
「先生、どこで何言われたか知らないけど、やっぱり大家さんを探しに行くのは先生しかいないわ。仁さんは先生を一人にするなって言ったけど、それに添島刑事も、先生が事務所に帰れる条件はもう首を突っ込まないことだって言ってたけど、こっちは納得も我慢もできない」
 真は美和の差し出した名刺を受け取り、しばらく黙って見つめていた。

「これは?」
 やっと少し、真らしい声のトーンが聞こえた気がした。
「村野耕治の息子から」
 真はまだしばらく名刺を見つめていた。静かなまま、まるきり動かなかったが、頭の中で何かが大きく動いている、そんな顔だった。
「会ったのか?」
 美和は頷いた。

「九州日報で、昔、澤田代議士や秘書の村野耕治と一緒に働いてたって人に会ったの。その人が古い名簿を持ってて、澤田と村野の出身地だってところに行ってきた」
 美和が一度言葉を切ると、真は出て行きかけていた事務所の扉を閉めた。それから四人で事務所の接客用のソファに座った。

「二人は同じ村の出身だった。といっても、村野家ってのは何か複雑な事情があったみたいで、村野耕治がまだ小さい時に父親と一緒に新潟に移ったみたいだけど、そもそも村野家と澤田家ってのは親戚だったんだって。村野は高校生のときに、新潟から九州に戻ってる」
 美和は、真の横顔に僅かな手応えを感じながら続けた。

「村野の最初の奥さんも同じ村の人で、もともとは澤田代議士の恋人だった。と言っても、澤田が高校生で相手が中学生なんて年回りの頃の話だけど。澤田が大学進学のために東京に出て、その恋人とは遠距離恋愛が続いていたの。澤田は一旦東京の出版社に勤めてから九州日報に入ったでしょ。澤田はその頃から記者として精力的で、取材で飛び回っていた。恋人はほとんどほったらかしだったみたい。その恋人が、いつも澤田の帰りを新聞社の廊下の椅子で待っていたんだって。可愛らしい人で、いつも涙を溜めたみたいな目をしてたって。村野のほうは、新潟から九州に戻った後は地元から出ることはなかったらしいけど、ものすごく金回りが良かったそうなの。何でも戦争中から始めた事業が大当たりしたんだって話だったらしいけど、誰も詳しいことは知らなかった。大分だけじゃなく、福岡あたりの不動産も随分所有していたらしいし」

 美和は一枚の写真を机の上から取り上げて、真に差し出した。陸井から借りた写真だった。
「それが九州日報に入った同期の人たちの写真。澤田は分かるでしょ。その隣にいるのが村野耕治だって」
 真はしばらく写真を見つめたままだったが、やがて小さな声で呟いた。
「もっと、いかにも悪人という顔の男を想像していた」
「うん。私もそう思った」

 真はようやく、美和の顔をしっかりと見た。美和は頷く代わりに見つめ返した。真の顔に少しずつ生気が戻ってくる。
「人混みを歩いていれば目立たないような、印象の薄い男でしょ。澤田代議士の方は身体つきもしっかりしてるし、取材焼けの顔も、一瞬で人を惹きつける感じだけど」
 返事はないまま、真はまだ写真をじっと見つめている。自分自身の感覚の中にある違和感を、何かで埋める作業をしているように見えた。

 やがて納得したのか、真は青い名刺を手元に残したまま、美和に写真を返した。
「大当たりした事業って、麻薬かな?」
 真の心の在り処を確かめようと尋ねてみる。今度は、真は答えずに、手元に残った名刺に視線を戻した。
 美和は、陸井と敷島清美が話してくれたことを、自分なりに順を追って話した。

 経緯を話す間、真はただ名刺を見つめていたが、美和が話し終えるとようやく顔を上げた。
 それは美和の待っていた、いつもの真の顔だった。目は碧に光を放ち、唇にも血の色が戻っている。美和の横で宝田がほっと息をついたように感じた。
「村野の息子は、その花って人の息子なのか」

「そうみたい。澤田は、村野と花が結婚してから後は、福岡を離れることが多くなって、政治資金の裏金調査の取材とかで長い間関東に行ったり、同じような事件を追いかけて北陸にも行ったり、とにかく精力的に日本中を歩き回っていて、地元にはほとんど戻らなかった。で、新潟で仕事をした後、突然記者を辞めちゃったんだって。それからは人が変わってしまって、九州に帰っても大分にはもう澤田の家はなくて、福岡ではかなり自堕落な生活を送ってたみたい。その澤田を助けたのが村野だった。村野は自分の財産を資金にして澤田の後ろ盾になって、彼を市議会に担ぎ出した。これが澤田の政治家としての出発点だったわけ。澤田も、もともと福祉や芸術方面では記者時代から民間には協力的で、市民レベルの大陸外交なんかを盛り上げて地元の活性化に貢献していたから、世間の覚えも目出度かったみたい。村野って男は、澤田にくっついて、澤田を担ぎ上げることで自分も存在価値を見出しているみたいな、そんな感じに見えたそうよ。全面的に澤田をバックアップして、それはもう崇め奉るようなムードだったんだって」

「その後、村野は澤田の秘書に納まったってわけか」
 美和は頷いた。真は再び手元の名刺を見つめている。
「澤田の話では、村野は癌で亡くなったってことらしいが」
「うん。澤田の右腕というか、ほとんど戦友って言われてたらしいけど、最後はあまりべったりではなかったみたいね。郷里の大分で亡くなったって」

 美和は立ち上がり、机の上に束ねてあった資料から、何枚かの新聞記事のコピーを選び出した。確認してから、それを持って真の隣に戻る。

「これ、澤田が書いた翡翠仏事件の記事。それによると、大昔、佐渡に金が埋まっているって教えたのは神仏の遣いで、江戸時代に金山で翡翠の仏像が掘り出されたって古文書が、古い家から見つかったんだって。翡翠ってもともと古代天皇家が呪術のために使っていて、その中でも糸魚川の翡翠は太古の昔から珍重されていた。その翡翠仏がある人の家の屋根裏から見つかった。その後、その人は小さな商売から大成功して、今では誰もが知っている大企業の創始者になった。その成功を見納めた後、翡翠仏は姿を消したって、ありがちな怪しいお話が伝わってる。その翡翠仏が実は新潟のある旧家に眠ってて、密かに売りに出された。つまり『莫大な富を産む』翡翠仏が、闇で売られているっていう噂があって、結構闇世界ではまがい物っぽい仏像が高値で売られたりしていたそうよ。で、、澤田はあちこち取材をして回って、その古文書からしてでっち上げで、つまりありもしない『幻の翡翠仏』を売るための偽情報が操作されていた、しかもそこから出た利益が政治資金として活用されていたという記事を書いたわけよ。その偽翡翠仏の製作に関係していたのが、深雪さんのご両親だったんでしょ」

 なんだって世間は、そんな巨万の富を生む翡翠仏があるなんて、馬鹿げた話を本気にするんだ。言葉にしないながらも、真の顔はそう言っている。

「あのね、先生、政治家とか企業家とかはね、ものすごく大事な決断をするとき、今でも神様にお伺いを立てるのよ。みんな大っぴらには言わないけどね。だから、座敷童に会える旅館とかに偉い先生やら社長さんやらが集まるの。日本って今でも『神』に頼る国なのよ。苦しい時の神頼みは日本人の遺伝子に組み込まれた本質的な体質なのよ」
 美和が真の顔を覗き込んで笑ってみせると、真は少しの間驚いたような顔をしていたが、やがて納得したように新聞記事に視線を戻した。美和はもう一枚別の新聞記事を上に重ねる。

「それから、これは、澤田が原爆のことで賞をもらった記事。戦争時には正義なんてどこにもないけど、後に残る犠牲に対しては必ず報いてあげなくちゃならないっていうようなことが書いてある。澤田の記事って真っ向勝負っていうのか、ちょっと青臭いって感じもあるけど、何て言うのか、優しいとこがある」
 真が顔を上げて美和を見た。
「こういう取材ができる記者になりたい。いつかね」
 真が自分を見つめる目が、随分と優しく思えた。

「それから、これ」
 美和は問題の記事を取り上げた。
「戦争の資金源の話だけど、当時、世界中で、一応国際基準なんてのがあったみたいだけど、つまり兵士を戦場に送るのに阿片を使ってたって話。日本も例外じゃなかったし、多分他の国も。そういうことからして、村野家が羽振りが良くなったのは、阿片絡みだった可能性は高そう。戦時中に軍の阿片事業に協力していた民間人がいたらしいけど、その一人が村野耕治の父親だったんじゃないかって。この辺の話になるとみんな口が重くなるんで、十分に聞けなかったんだけど」

 真は十分だよ、というように頷く。
「九州の小松って暴力団の幹部がいるんだけど、タイ人のヤクザと関係があって、当時澤田の政治資金の一部はそこから来てるんじゃないかって噂があったの。結局、澤田は嵌められたって話に落ち着いたみたいだけど、噂の出所に村野が関係していたんじゃないかって」

「村野が、澤田を嵌めた、ということか?」
「もしくは、小松と関係があったのは澤田じゃなくて、村野の方だったのかもしれない。でも、そのすぐ後から村野は体調を悪くして入退院を繰り返すようになって、結局亡くなったわけだけど。澤田の事務所で働いていた人の印象では、澤田の政治生命が絶たれるようなことは何もなかったけど、ちらちらと澤田の立場を追い込むような暗い噂が出ては消える、みたいなことが何回もあったんだって。澤田はその度に少し落ち込んでいるように見えたりもしてたみたいだけど、それを村野耕治が一生懸命励ましてたのを、何度か見たそうよ」

「どういう意味だろう」
「澤田は、地元では大らかな印象でどっしりと構えてて、頼りがいがある政治家だったみたいだけど、たまに何かにひどく傷ついているように見えたって。政治生命には関わらなくても、精神的には追い詰められるようなことは結構あったみたいだし、それも政治家としての仕事より、記者時代の取材のこととか、昔のことで。その人が言うには、時々、澤田は村野に操られているように見えたこともあるって」

「操られる?」
「うん。村野は精神的に澤田を支配したがっているように見えたみたいよ。自分が澤田を支えている、澤田は自分がいなければ何もできない、そういうふうに澤田に思わせたかったのかな。でも、澤田って男は、傷つきやすい一面もあったけど、内情はものすごく情熱的で優しい人だったみたいだし、結局は支援者が沢山いたみたいだしね」

「どこかの誰かと一緒だな」
 真はぼんやりとした声で呟いた。
 やっぱり大家さんのことを考えてるんだ、と美和は思った。真は新聞記事のコピーをひとつひとつ確かめるように読んでいる。美和はその手を見つめ、それから顔を上げたとき賢二と目が合った。

 美和は賢二に頷いて見せた。そう、ここからが大事なのだ。
「ね、先生、私たちが上手く庇うから、とにかくその男に会ってみてよ。何だかんだといって、向こうも先生が簡単に引き下がるとも思ってないだろうし。それに、添島刑事の話のニュアンスでは、絶対誰かが先生を見張ってるはずだから、上手く撒けるかどうかは分かんないけど」

 井出がいつか言っていたように、誰も信じられないかもしれないが、私たちだけは別だよ、という気持ちを目一杯込めたつもりだった。
 ただ、真はまだ何かを躊躇っていたのか、とりあえず食事に行こうと言って、立ち上がった。






<予告編?>
次回は、真が以前勤めていた探偵事務所の所長、自分の事務所を爆破しちゃって刑務所に入っている唐沢を面会する真、そして、村野耕治の息子のファイティングバー?を訪ねる真です。

「北条仁に伝えてくれ。(中略)それから、うちの可愛い弟子に妙なことすると、後で火傷するぞって言っとけ」
 真がいちいち言葉を理解できないうちに、唐沢は真のほうにちょっと身を寄せた。
「もっとも、お前さんがたまらなくなってケツを差し出すんなら別だけどな」

(どこを切り取るんだ^^; 相変わらず下ネタ好きのおっさん^^;)

 

Category: ☂海に落ちる雨 第3節

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NEWS 2014/4/19 満開の枝垂れ桜/もうすぐ8888 

さくら24
これまでチラ見していただいておりました我が家の枝垂れ桜、満開シーンをお届けいたします。
(*^_^*)

と、その前に。ここの所気になっているもの・プチニュース。

(1)テレビドラマの『MOZU』……
この間、奇しくも【読書バトンに便乗】に書いたのですが、好きな本で逢坂剛さんの百舌鳥シリーズを挙げていたら、なんと、ドラマが始まったのですね。しかも、西島秀俊さんではありませんか。
嬉しくて、大野さんの『死神くん』と一緒にハードの「毎週録画する」をぽちっとしました。

(2)私も買ったよ!
かぜっぷさんの『今日吹いた風』で刃物購入について書かれていましたが……ホームセンターで私も買いました! 鋸、剪定鋏、芝生用鋏! 今日はこれからワクワク庭掃除です。
新しい刃物を試すときって、何でこんなにわくわくするんだろう^_^;
しかも、昨日はようやくライラックの苗を買ってみました。ついでにアーモンドの新しい苗を発見。
今日植えます(*^_^*)

(3)やっと! もうすぐ8888
本当に亀の呪い、じゃなくて鈍いのブログですが……やっと末広がりになります。
実際にはカウンターが動き始めたのは6月だったのですけれど……ちょうど10か月?
以前から決めていたのでキリ番リクエスト、戴こうかなと思います。
あ、555のリクエストが終わっていませんが、こちらは内容が濃いのでゆっくりさせてくださいませ(夕さん、すみません)。
あれから私もちょっとSS慣れしたので、もう少しうまく捌けるかも…・・
先着3名? よろしければ、ご参加くださいませ! って、誰も名乗って下さらなかったら寂しい……
シチュエーション指定もの、お題もの(3題噺? 落語か!)、この曲にお話をつけて、この絵にお話をつけて、何でもありです。例のごとく、時間はかかると思いますけれど……
あ、もうすぐとか言いながら、なかなかだったりして(・・?
それも寂しい((+_+))



では、さくら・さくら・さくら(2)……お楽しみください(*^_^*)
さくら1
満開少し前ですね。枝垂れ桜は花が一気に咲かないので、長く楽しめていいですね(*^_^*)
さくら13
そしてほぼ満開。
さくら3
八重なので、見ごたえがあります。
さくら4
青空にも映えます。
さくら5
ほぼ満開だけれど、まだ蕾も見えます。
さくら7
その翌日。もうこれこそ満開。落ちてきそうなくらい……
さくら9
さくら8
まだまだ続きます!
続きでは、夕陽や夜桜もお楽しみください(*^_^*)
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Category: ガーデニング・花

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NEWS 2014/4/16 パンダの駐輪? 

パンダ駐輪場
え? パンダ専用の駐輪場?
こういう感じ?
並ぶパンダ
(from 中国四川省・繁殖基地)
(注:ぬいぐるみではありません)

以前から狙っていた上の写真……丁度、1週間に1度車で通る道から見えるのですが、写真を撮るのは信号が偶然赤になった瞬間しかなくて。今日はその瞬間がやってきました。
上のようにパンダが並んでいるところを想像して、結構ツボに嵌っていたのですが、実は……
喫茶店
カフェの名前が『パンダ』というだけでした。
でも、何回見ても、何だか違和感……パンダの駐輪場でした。
しょうもなくて、ごめんなさい^^;

25さくら
さて、次回予告です。我が家の枝垂れ・満開編、お楽しみに(*^_^*)
はなみずき1
おまけは夕陽に照るハナミズキの蕾。この木、実はもうダメかなぁと思っていたのですが、ちょっと復活の兆しが見えて、今年は花芽が戻ってきました。あんまり立派ではないのですけれど。
ちなみに、この2枚、同じ日のほぼ同時刻の写真です。
夕陽を向いているか、背を向けているかの違い。空気の色まで違って見える感じですね。

ところで、レイアウトを変えてみて、約半月。
いかがなものでしょうか。
コメント欄がちょっと……コメントとコメントの間に仕切りがなくて、見にくいのですけれど……
(あれこれやってみたけれど、いじり方が分からなかった……)
戻すか、これでしばらく行くか、あるいはまた別の世界に入るか、悩み中です。
これはこれで、結構気に入っているのですけれど。

Category: NEWS

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【limeさんのイラストに物語を(2)】秘すれば花 

闊ャ闍・_convert_20140409201015霑ェ・ォ郢晄ァュ縺慕ケ晁肩・シ迢冂onvert_20130824193448_convert_20140414070547
(この絵の著作権は【小説ブログ「DOOR」】のlimeさんにあります)

今日は日曜日。ぼくは朝早く起きて、顔を洗って、タケルを起こして。
それからねこまんまを作ってもらって、食べて、うんちとおしっこも済ませて。
よし、準備は万端。

そう、ぼくね、最近お気に入りの番組があるんだ。
『半にゃライダー』
ぼくみたいに半人前のねこが、般若の面を被って、世界征服を企む悪の組織と闘うんだ!

わ~、タケル、始まるよ~
タケルはぼくに付き合ってくれるの。
……あれ?

「『半にゃライダー』の時間ですが、緊急特別番組をお送りいたします。『半にゃライダー』のモデルともなった能楽師・京極瑞月さんの兄、京極翔月さんは三年前、不審な死を遂げておられますが、この度新事実が判明したようです。奈良県の山深い村から実況中継でお送りいたします。なお、『半にゃライダー』はこのあと、十五分遅れて放送予定です」

え~~~。何だよ、つまんない。

テレビには、深い山の中、蛇行する道が映っている。
そして、桜を背景に学ラン姿で立つ少年。あ、ほんとだ。半にゃライダーのモデルの人だ。
大人しく待とうな、というようにタケルがぼくの頭を撫でた。
そして、緊急特別番組が始まった。




というわけで、limeさんの素敵なイラストに物語を、その2です。
出だしからマコトの登場となりましたが、これは【茜いろの森】のあかねさんと私のPCでは、「はんにゃ」と打ち込むと、最初に「半にゃ」と出てくる、というので、前回のSSに引っ掛けて遊んでしまいました(*^_^*)

さて、実はlimeさんの妖艶なる少年の学ラン姿を見て、最初に思いついた物語はこちらの方だったのです。
でも、お風呂でぼや~ん、と中身を練っていたら、多分、風呂場の天井辺りに住みついていたのでしょうか、関西の家には一家に一人はいる、座敷童「笑いの神」が降りて来ちゃったんですね。
で、あんなSSになってしまい……
でも、やっぱりこっちも放っておくのはかわいそうなので、【図書館…】は待たせて、先に書いちゃいました。

ちなみに、Rなシーンはありませんが、同性の恋愛が絡みます。
と言っても、BLというほどにはファンタジックな恋愛ではありません。
でも、苦手な人は、本文を飛ばして、最後に再登場するマコトに会いに行ってやってください。

お能……室町時代、為政者のスパイだったともお小姓だったとも言われる世阿弥ですからね、ありなのです。
【清明の雪】に登場する和紙職人さんの言葉を借りると。
「織田信長も三島由紀夫もそうだったというし、だいたいあちこちのお寺にゃ、いわゆる寺小姓というのがいたし、つい近年まで日本では衆道というのは恥ずかしいことでもなんでもなかった。お前さんの国辺りでも、アレキサンダー大王とやらも、ダ・ヴィンチやミケランジェロもそうだったというじゃないか、わしは驚かんが」
ってなことで、お許しあれ。

でも、コメント欄などを拝見すると、limeさんのイラストを見て、ちょっとこういう耽美な世界を思い描いたのは、私だけではなかったようで。
そしてちょっと設定が被っているのが、【scribo ergo sum】の夕さんが書かれた世界。
でも夕さんはさすが、ワールドワイドで設定が豊かで、そう来たかって感じで、淡々と書かれているのに耽美です。

また、先に述べましたように、『天河伝説殺人事件』の二次小説的な部分もあります。
物語の舞台は明記していませんが天川村です。神社のイメージもまんまです。
小説からは、お能の流派の設定を少し借りています。そして件の般若の面の名前、さらに舞台の上で次期宗家が亡くなるという点。
でも、他の登場人物や犯人などは、まるで違う世界です。
でも、私も物語の詳細を覚えていないところもあるので、何か粗相があるかもしれません。些細でもどんなネタバレも許せない人は、まず『天河伝説殺人事件』をぜひお読み(ご覧)ください。
映画は特に……榎木さんが素敵で……
あの映画、市川昆さんの映像美、やはりもう一回観ようっと。

では、お楽しみください。
limeさんのイラスト、やっぱり物語がわき出てきますね。
ありがとうございます(*^_^*)

そして、今回のBGMは安全地帯さんの『出逢い』。内容がまさに火曜サスペンス劇場ですから……

(2:00くらい~)この曲、大好きなんです。玉置さん、あれこれややこしい方のようですが、曲はほんとすごく胸に来ます。
あ、limeさんがピックアップされていた『二人静』はもう、まんま、物語に沿っているかもしれません……(*^_^*)
(テレビでなら『出逢い』、映画になったら『二人静』?)
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Category: イラストに物語を

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【limeさんのイラストに物語を】般若の面 

闊ャ闍・_convert_20140409200945
(イラストの著作権はlimeさんにあります)

limeさんがまたまた素敵なイラストをアップされていました。
→→limeさんのイラスト
本当はじっくり練った作品を挙げたかったのですけれど、神が降りてきました。
超短い、これぞSS? 何も言いますまい。お楽しみください。





愛しい人の生き血を吸って、闇の中に花が咲く。
闇を儚く淡い白に染めゆきながら、叶わぬ恋の成就を誰に願うのか。
そのあまりにも無垢な色でさえも、天幕のような闇を覆いきることは出来ぬというのに。
それでも、お前はただ命を限りに咲き尽くし、静かに終わりの時を待っている。

ではせめて、私はお前を弔おう。
お前の真白な魂を、ひとつたりとも逃さぬように、この手に抱こう。
お前のひと時の愉悦のために、この手を血に染めて、彼方の闇と闘おう。
お前がこの僅か七日の晴れ舞台のために、残りの三百と五十八日を静かに待ち続けたように、私もこれから迫り来るあらゆる試練を、耐え忍んで越えてゆこう。

お前が愛したこの世界を救うために……

(注:続きがあります!
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Category: イラストに物語を

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【図書館の手紙】(2)流るゝ川に言葉あり 

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【図書館の手紙】その2です。
実は、この物語、リアルには1967年だったのですね。昭和42年!!
気になったので、曜日と天気を調べちゃいました。なぜならイースターの日付がポイントだったので。そうしたら、その年のイースターは3月26日、天気は23日から26日までは晴れ。
(なんでも調べちゃえる、便利な世の中になりましたね。)

もちろん、あまり年代は気にせず読んでいただいていいのですけれど、思えば学生運動とかが盛んな頃に大学に行っていた世代の人たちなのですね。
私にとってはちょっとアニキ先生たちの世代。

さて、今回のポイントは……
「相川って、二語文以上の日本語が喋れたんだ!」
(あまりにもひどい……)

何だか、喋らないハリーと、美人じゃないハーマイオニーと、心が広いロン、みたいになってきた3人組……

*写真は、満開間近、我が家の枝垂れ桜、でした。(よく見たら、虫が食ってる……)
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Category: (2)図書館の手紙(完結)

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【図書館の手紙】(1)清明の候、君を想う 

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【8月の転校生】に続く第2弾、中学生の富山享志が語る学園の七不思議シリーズ(掌編)です。
いつの間にシリーズになったのか……本当に七つ続くのか……全て行き当たりばったりです。
今回はよくある、本の間に手紙を挟んで恋文をやり取りするという、今じゃあり得ないロマンティックな恋物語の不思議を紐解きます。

実は、季節はただ今『清明』なのです。
いえ、実は今年の二十四節気の『清明』は4月5日。
桜の記事に舞い上がっていて、記事を出す日を間違えちゃいました。
しかも、毎年3月に京都の山奥にある志明院に行くのですが、今年はちょっと遅れそうです。
せっかくなので、境内に数多植えられた石楠花の季節に訪れてみようと画策中。

そう、毎年1度、【清明の雪】を宣伝する日になりました(*^_^*)
志明院はその【清明の雪】にも登場する京都の最果てのお寺。
折しも、春なのに寒波の来る今日。
京都に降る春の雪を背景に、古寺に伝わる消える龍の謎、鈴を鳴らす不動明王の謎に触れてみませんか?
→→【清明の雪】を始めから読む

……それはさておき、こちらでは天然ボケの級長・亨志が活躍する(かな?)掌編をお送りいたします。
全3回、2週間以内に終了の予定。ぜひ、お楽しみください。
ちなみに、完全に独立したストーリーなので、初めてさんでも大丈夫です。よろしくお願いします。
(前回同様、中身は大したことがありません^^;)

≪登場人物≫
富山享志:私立幹学院に通う中学生。責任感は強いが、面倒なことを押し付けられやすい級長。
相川真:中学2年生で幹学院に編入した帰国子女。一人でいるのが平気な元苛められっ子。
杉下萌衣:クラスの図書委員の女の子。急性虫垂炎で入院して、図書館の謎を亨志に託す。
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Category: (2)図書館の手紙(完結)

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NEWS 2104/4/5 さくら・さくら・さくら 

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桜満開祭りその2です。
前回夕方の光の中で桜の写真を撮って、やはり花は午前中の光の中で写真を撮りたいものだと思い、翌日、早起きして出勤前に写真を撮ってみました。

確かに、花はまるで違う顔に見えます。
でも、写真を撮ってみてわかったのは……朝って光が強いのですね。
空気も澄んでいてとてもすがすがしい写真になりますが、光が強い分、影も強い。
自分の影が入ってしまったり、明るい写真になるのかと思ったら、影が強く出てしまったり。
夕方の光は少し弱くて、輝きは少ないけれど、まったりと優しいほんわかした写真になるようです。

時間、天候、その時の風や光。特に空の色は大きく関係しますね。
それによって同じものを撮っても、写真の中の世界もずいぶん違って見えます(*^_^*)
写真って、やっぱり偶然と瞬間の魔法なんですね。

夕方の光の中の桜はこちら→→【桜満開祭り】
よろしければ、比べてみてください(*^_^*)

では、朝日の中の桜、お楽しみくださいませ。
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まだまだ続きます(*^_^*) 続きを読む、からどうぞ。
最後に、満開間近の我が家の枝垂れ桜の写真も載せています。ぜひご覧ください(*^_^*)
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Category: ガーデニング・花

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【雑記・小説】 読書バトンに便乗(^^) 

本棚1
limeさんの小説ブログ「DOOR」で、読書バトンをされていたので、拾わせていただきました(*^_^*)
実は、私も最近、小説と花の写真の記事ばかりだったので、丁度バトンを探していたのです。でも、小説のバトンもなんだかだんだん似たり寄ったりになって来ていて……

と言うわけで、ちゃっかり便乗(*^_^*)
実は私の本棚には「バイブルコーナー」がありまして。
そのコーナーをご紹介する企画をしようかと思っていたところでもあったのです。
(いつになるのやら)
と言うのも、最近、カテゴリの【物語を遊ぼう(小説談義)】がお休みになっていたので、そろそろ何か小説ブログらしいことを書こうかな、と。
でも、今回はバトンで逃げて、またいつか、お目にかかる日を……(^^)

何はともあれ、バトン回答です(*^_^*)




1.いつ頃から本が好きになりましたか?

えーっと、記憶にありませんが、多分、小学生の3-4年生くらい?
limeさんと同じく、学校の図書館で本を借りていました。……どんな本?
それは……明智小五郎とかホームズとかルパン(少年少女向け)……です(*^_^*)
本好きにさせてくれた一番の功労者(本)は多分、『三匹荒野を行く』。

2.家族に本好きな人はいますか?

う~ん? うちは基本、農民で……でも会ったことのない祖父(父が3歳の時に他界)の自筆(自作)の本が家にありましたから……
それから、やはり農家に嫁いだ叔母(軽トラを運転してうちに来る、いかにも田舎のおばちゃん)が、ある日、私の本棚から『カラマーゾフの兄弟』を借りていった時、結構、ポテンシャルはあるのかも、と思いました。
おじいちゃん
おじいちゃんの本。何かの空き箱の紙を使って自力で作った本のようです。中身は……実は達筆すぎてほとんど読めません^^;
おじいちゃん
絵も、おじいちゃんの直筆です。

3.幼い頃に読んだ絵本は?

私が子どもの頃って、今のように絵本が沢山あって、なんて時代ではありませんでした。むしろ、大人になってからのほうが、絵本を読んでいるかも。
でも、1冊だけ、私のバイブルの絵本があります……これは多分、小学生の時に買ってもらった。
『モチモチの木』

4.学生時代、読書感想文を書くのは好きでしたか?

好き嫌いというより、宿題という感じ? 宿題はそれなりに真面目にやりました。
実は、limeさんと同じく、私も小学校の時と中学校の時に賞を貰いました。
その時の本も覚えています。小学校の時は『考古学の美』と『三匹荒野を行く』(バイブル)、中学校の時は『背教者ユリアヌス』(この本も私のバイブル)

5.毎号チェックする雑誌はありますか?

定期購読しているのは、NATIONAL GEOGRAPHICと邦楽ジャーナル(*^_^*)

6.ベストセラーは読む方ですか?

たまに読みますが、ほんのたまに、です。でも、ベストセラーの定義って?

7.本は書店で買いますか、それとも図書館で借りますか。

基本的に買います。図書館は最近行かないなぁ……雰囲気は好きなんですけれど。
秋の日の 図書館の ノートとインクの匂い~♪って時代に生きておりましたから。

8.あなたは「たくさん本を買うけど積んどく派」? 「買った本はみんな目を通す派」?

本の内容によりますが、結構「積んどく」状態の本もあります。資料として買った本はその傾向にあって、必要な時に読み漁る。小説は大概読みます。ただ、途中でつまらなくなって読み投げすることはある。
あ、うちの本棚で最高の積んどくは『夏目漱石初版本復刻版』と『網野善彦全集』かも。あまりにももったいないので、別に文庫本を購入して、そっちを読んで、こっちは大事に手つかずでおいている^^;

9.本を捨てることに抵抗がありますか?

若いころ、引っ越しの度に、泣く泣く本箱1箱分は処分しました(古本屋へ)。でも、基本的に捨てることはできません。
今は、引っ越しをする可能性が(多分)なくなったので、本はひたすら増殖中。ネズミ算みたいな増殖の様子を見ていると、たまに引っ越しも必要かと思うこの頃。

10.本をよんでる人は”眼力”があると耳にしたことがありますがそう思いますか?

え? 眼力って、何の?? 目の力で、本に穴をあけるとか??

11.本屋さん、何時間いられますか?

開店から閉店まで居ろと言われたら居ることができます。
1度足を踏み入れると、時間の縛りがなかったら最低でも数時間は過ごします。
最近、読書コーナーのある本屋さん、増えましたしね。でも、この頃、忙しくて……(;_:)

12.お気に入りの本屋さんがあったらおしえて♪

神戸はジュンク堂。座って「立ち読み」できるベンチや、本持ち込みOKのコーヒーショップが店内にある。
大阪の紀伊国屋は人に酔うのでしんどいです。でも最近は、買うときはAmazon……かも^^;

13.本屋さんへの要望・リクエストがあったらどうぞ。

いつもお世話になっております。

14.気になる箇所にはラインを引く派? 隅っこを折る派?

電車内で読んでいる時は端っこを折るかも。でも、家なら付箋を貼る。

15.速読派と熟読派、あなたはどちらですか?

速読は基本できません。

16.本を読む場所で、お気に入りなのは?

電車の中。ベッドの中。limeさんと同じく、車(バス含む)で読むと、酔う(@_@)

17.無人島に1冊だけ本を持っていけるとしたら。

『鬼平犯科帳』(あ、24(+1)巻ある(>_<) )←limeさんの真似^^;

18.生涯の1冊、そんな存在の本はありますか?

う~ん、バイブルは沢山あるけれど、1冊となると難しいです。宝物はある。前出の、祖父の自作の本。

19.あなたのおきにいりの作家は?

池波正太郎先生。全集(しかも初版本の復刻版)を持っているのは夏目漱石(『こころ』『それから』はバイブル)。
多分、池波先生と司馬遼太郎先生の本はほぼ全部あるはず( 街道シリーズの一部とエッセイの一部はないのがあるけれど)。
現代のベストセラー作家さんたちは、作品が気に入ったら、特にシリーズ物は全て読む(以後、放り投げることも多い^^;) 私もlimeさん同様、作家じゃなくて作品で読むほうです。
宮部みゆき先生の歴史もの、柴田よしき先生の某シリーズ、逢坂剛先生の百舌鳥シリーズ、志水辰夫先生の節回し(シミタツ節?)、……以下、挙げればきりなし。

20.本を選ぶときのポイントやこだわりはありますか?

あまりこだわりはない……ほとんど直感と勢い?(よく外れる)
でも、歴史ミステリーと考古学絡み、絵画が絡むものはしょうもなくても手を出してしまう。
うちの本棚を見た人は、あまりの「多様さ」(つまり無茶苦茶)に驚かれます。
小説よりも、歴史書、美術書、科学書、薀蓄類が多いです。選ぶときは……やっぱり勢い^^;

21.本はどこから読みますか?

あとがきから読むことが結構ある^^;
あ、雑誌も結構後ろから読む。癖です。

22.昔、読んでた漫画

小学校の時『キャンディ・キャンディ』に驚いた(何故なら、さんざん引っ張った挙句、主人公が相思相愛の男を横取りされて終わったから……って、解釈が間違ってる?) ……あ、歳がバレバレ^^;
中高生の頃、竹宮恵子先生にどっぷり嵌りました。え~っと、サインをもらいに行ったことがあります。好きな短編は『ジルベスターの星から』、中編は『ロンド・カプリチオーソ』、長編では『地球へ…』と『変奏曲』、『私を月まで連れてって!』かな。
そして、花郁悠紀子先生。この方の本は全て、私のバイブルです。台詞を覚えるくらい読んだ。たった8冊しかなくて、これ以上増えないのが本当に残念。でも妹さん(波津彬子さん)が頑張ってくださってて嬉しい。
時代的にはやっぱり、池田理代子先生、萩尾望都先生、森川久美先生、などなど? 青池保子先生の『エロイカより愛をこめて』にも嵌ったなぁ(^^)
少し後の時代では、『シティーハンター』(北条司先生)にかなり嵌りました。あと、『マスター・キートン』(浦沢直樹先生、他)と『ギャラリー・フェイク』(細野不二彦先生)……どちらもバイブル。

23.学生時代ハマった本

中学時代は、何故か児童文学とミステリーを読み漁り。『あばれはっちゃく』『王様シリーズ』、そしてクィーンにクリスティ。そう言えば、小学校の時に少年探偵団で嵌った江戸川乱歩の作品の原作(大人向け作品)を、中学生になって初めて読み、その妖艶な世界におののいたのも懐かしい……『黒蜥蜴』忘れられない本です^^; (この明智小五郎と黒蜥蜴の関係性、私の中のみみっちい作家魂に火をつけたかも?)
高校時代は、辻邦夫と清岡卓行に嵌りました。『背教者ユリアヌス』『アカシアの大連』…やっぱりバイブル。結構、詩を読んでいた気がします。アポリネール、ヴェルレーヌ、ランボー、リルケ、ロルカ。そして、一番嵌ったのは、トルストイ『戦争と平和』、ロマン・ロラン『ジャン・クリストフ』……この2作は今でも本棚の神棚位置にあります。ドストエフスキーは……今でもよく分からん^^;
そう言えば、この頃、エド・マクベインの87分署シリーズにも嵌りました。ジェラール・ド・ヴィリエのプリンス・マルコシリーズ……も(知ってる人、いないだろうなぁ^^; オーストリアの王子にしてCIAエージェント)。
大学生の頃、タルコフスキー(ロシアの映画監督)に嵌り、サリンジャーのグラース家シリーズに嵌り……私も若かったなぁ(*^_^*) 
池波先生の作品に出会ってからは、人生も人間も五分五分、ということに気が付いた。

24.つまるところ、あなたにとって本とは。

なくてはならない最高の道楽。

25.バトンを回す人

どなたでもどうぞ(*^_^*)

本棚3

やっぱり、長くなっちゃった。……退屈でごめんなさい m(__)m
お付き合いくださってありがとうございます(*^_^*)

Category: 小説・バトン

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NEWS 2014/4/2 桜満開祭り 


今日はまさに満開の日となりましたね。
どのブログさんちも桜満開ですが、例に洩れず、私も桜祭りに参加させていただくことにしました。
出張帰りに通り道の公園にちょっと立ち寄り、写真を撮りまくり。

ただ、ちょっと残念なのは時間帯。
花は午前中の光の中で写真を撮りなさい、という教えを実感しました。
夕方、しかも雨交じりの曇りの天候の中では、少し勿体ない感じはしますけれど、それでも桜は最高の被写体ですね。

でも……遠くから見たらすごいのに、何だか近づいたら、ちょっとまばら。
写真にしたらもっとまばら感が強くて……写真は人間の目には追いつけないなぁ。

そう言えば、蓮華畑って、遠くから見たら、まっピンクなのに、近づいたらそうでもない。
向こうの方がもっとたくさん咲いている、って追いかけた昔を思い出しました。

弘前の桜がものすごく綺麗に見えるのは、人間の目の高さに花が来るように剪定しているからだとか。
リンゴの木と同じ剪定をしているそうです。

それはともかく、追いかけて追いかけて、今日は写真を撮りまくりました。
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そうそう、今日はまさに、阪神打線も満開
明日に取っておいてほしいけれど、昨日が昨日だけに、今日はもう打っといて(*^_^*)
では、桜満開祭り、お楽しみください(*^_^*)(*^_^*)
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まだまだ続くので、『続きを読む』からどうぞ(*^_^*)
夕方の光の中で、どんどん色合いを変えていく花をお楽しみ下さい。
-- 続きを読む --

Category: ガーデニング・花

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