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コーヒーにスプーン一杯のミステリーを

オリジナル小説ブログです。目指しているのは死体の転がっていないミステリー(たまに転がりますが)。掌編から長編まで、人の心を見つめながら物語を紡いでいます。カテゴリから入ると、小説を始めから読むことができます。巨石紀行や物語談義などの雑記もお楽しみください(^^)

 

NEWS 2014/5/31 TOKYO / 追記:テンションmax築地 

海鮮丼
(頭に追記その2を持ってきてしまいました(^^))
海鮮丼! 朝から豪勢です。
朝パックとかでもう少し小ぶりにして欲しいけれど……そうもいかないのね。
ご飯はすし飯でした(*^_^*)
築地、6時過ぎからにぎわっていました(6/1)。


(品川某ホテルより。何の因果か26階に泊まる破目に……怖いので、カメラだけ窓辺に出して撮った写真(;_:))
今週末は東京出張。昨夜ひと仕事終えた後です。
今日からまたセミナー。
東京に来るたびに思うけれど、こうして上から見るのと、下を歩くのとではずいぶん景色の違う町だなぁと。
面白いのですけれど、地方から来るとやっぱり疲れるダメな私でした。

時々時代小説などを読むと……品川なんて超辺鄙な宿場だったんですよね~
100年後も変わらないなんて、誰にも言えないなぁと思うのでした。

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ホテルの部屋にあった版画。「はじまりの日」ですって。
容器みたいなのに小さな玉が入っていく感じ?
この先はどうなるのでしょうね。
物語の始まり、こんな感じなのかも。
色んな人物や物事、景色なんかが器の中に入っていって、世界が生まれる……

 追記です 

2泊目は土日のセミナー会場に合わせて築地の近くに。
と思って取ったホテルがなんと、築地の市場のすぐ近く。
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魚ちゃん印で以前から気になっていたホテル。入り口は築地の市場に向かう路地に面していて、魚屋さんやら乾物屋さんやらあれこれ。
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なんか変なものも置いてある。
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マグロ解体準備中も(*^_^*)
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こちらがホテルの入り口前。この先に店が並び、さらにその向こうに市場が。
建物も結構昭和って感じのものも残っていて、わくわく。
(この辺、竹流のマンションの近く、なのです)
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路地もちょっと懐かしい感じ。
築地……テンション上がりまくります。
今日は朝、荷物をホテルに預けに来て、楽しそうなワールドに嵌り、危うく遅れるところでした^^;
今度ゆっくり来ようっと(*^_^*)

明日はまたセミナー&打ち合わせ会議。終わったら帰ります(^^)
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Category: NEWS

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[雨116] 第23章 喪失(3) 

【海に落ちる雨】第24章その(3)です。
竹流が立ち寄った焼けたアトリエ跡から真が拾ったのは、ローマ教皇からヴォルテラ家後継者に贈られるという指輪。
捨てられた指輪は、竹流の想いの表れなのか……
そして真は、最後に彼の姿が確認された新潟へ向かう。
その時、竹流の車に同乗していた男は誰だったのか。

今回は、草薙の名調子、お聴きください。
いい人なのかどうか。それはこの話ですから、「人間とは不思議なものだ。いいことをしながら悪いことをし、悪いことをしながらいいことをする」……そんな連中です。

関係ないけれど……もうすぐカウンターが10000を越えそう……
キリ番リクエストは今回はありませんが、踏んでくださった方には、きっと幸福の青い鳥が訪れるに違いありません!(他力本願^^;?)






 新潟に着いたとき、既に陽は傾きかけていた。
 気持ちは焦っていたが、さすがに多少は空腹を感じられるようになって、草薙が主張するままに駅前の定食屋に入った。
 狭い店の奥には、仕事帰りには少しばかり早すぎる時間にも関わらず、数人が夕食にありついていた。若い者も、比較的年配の男もいる。

 蕎麦くらいなら咽を通るだろうと思って注文すると、草薙が、身になるものを食えと、白飯と一緒に刺身やら天麩羅やらを追加した。
「狩に行くときに空腹で出て行くやつがあるか。全く、世話の焼ける野郎だ」
 真は、桜の言うとおり、自分は「雄」かもしれないと思った。だが、狩りに出る心構えが足りていないのだろう。

 結局、真は草薙の監視の下でいつになくしっかりと夕食をとり、それからふと、隣のテーブルの男が広げている新聞に目を留めた。
『上蓮生家』という文字が目に飛び込んできたのだ。
 男は新聞を畳んでテーブルに投げ出して立ち上がった。レジに行こうとする瞬間をつかまえて、その新聞を譲ってもらう許可をとると、真は訝しげに覗きこむ草薙にも見えるようにして、三面記事の小さな欄を読んだ。

『全焼した上蓮生家の古い蔵の床下から白骨死体』
 先日焼け落ちた上蓮生家の蔵の下には地下室があり、そこから女性と思われる白骨死体が発見された、鑑定の結果は少なくとも百年ほど昔の遺体で、蓮生家でも地下室があるということは知らなかったという話である。
 短い記事にはゴシップ的な内容が書かれているだけで、真実に近付くような情報は何もなかった。

「蓮生も、今更昔の傷を抉られたところでどうしようもないだろうにな」
「何か知っているのか?」
 草薙は白飯をかき込みながら意味深に真を見た。
「あんたの相棒が蓮生の絵のことで関わっていたのは知っているけどな。ま、とっとと食え。荒川に行く気なんだろう」

 車に乗り込む前に、草薙の提案で真は缶コーヒーを買いに行った。食事代は草薙が出してくれたので、その上コーヒーひとつとはいえ、甘えるのは悪い気がした。

 真が車のドアを開けたとき、先に助手席に座っていた草薙は、何か小さな紙切れを見ていたが、ちらりと真のほうを見ると、ゆっくりとした動作でその紙切れを握り込み、上着の内ポケットに仕舞った。
 真は草薙に缶コーヒーを渡し、自分も半分くらい飲むと、エンジンをかけた。
 今から荒川に行くとすっかり夜分にお邪魔する、ということになるが、明日まで待っていられない気がした。

「戦争には士気が要る」
 草薙が呟いた言葉に、真はしばらく反応できなかった。
「村野耕治って男は記者としてのモラルなどこれっぽっちもない人間だったさ。いや、もともと戦時中の事業を戦後にどうやって広げるか、それしか考えていなかったかもしれない」

「戦時中の事業ってのは、アヘンか?」
「資金源になったアヘンや士気高揚のために使われたヒロポンにしても、戦争にクスリはつきものだ。どんなに感覚が麻痺しても、人間、死ぬのは怖いさ。状況が悲惨になれば早く死にたい、死んだほうがましだと思うかもしれんが、目の前に死があって、怖くないと思う方がどうかしている。大体、綺麗になんか死ねなかった時代だ。死にに行く兵士に、気持ちが楽になると薬を渡したところで、罪だなんて言われなかったんだろうな」

 真は黙って前を見つめていた。
 市街地を抜けると直ぐに道は暗くなった。街灯も疎らになり、暗い真っ直ぐな道の彼方を照らしたヘッドライトが、当てのない行方を探している。

「軍が組織的にアヘンやヒロポンを使っていたことは、ある程度知られた事実だ。だが誰も騒ぎ立てて責任を問うたりはしない。軍というのは当時の国家という意味だからな。いつか、そうだな、こういう話の責任者がある程度この世を去って時効がやってきたら、もう少しはっきりとマスメディアで取り上げられたりもするんだろう。だが、その時点で世の中に過去の事実が伝えられたところで、戦争など知りようもない世代にどんなふうに受け止められると思う? へえ、そんなことがあったのか、程度の感想だろうよ。馬鹿な連中は、クスリを使うことに対する罪悪感を正当化されたような気持ちになるかもしれん。時間が過ぎてしまえば記憶は薄れる。どんな悲惨な事件でも、後から思い出を語っても遅い。臨場感がないからな。澤田顕一郎が記者として目指していたのは、手遅れにならないうちに真実を明らかにして犠牲者を贖うってことだった。村野には、むかつくような正義感だったろうよ」

「それで、蓮生と村野の接点は?」
 草薙は、深い角度に倒してあった助手席のリクライニングを戻した。

「俺も何もかもを知っているわけじゃない。村野の後妻だった女のところに、いくらか古い手紙や資料が残されていた。もっとも、村野の流儀は『右手がしていることを左手に知らせるな』ってやつだったし、そもそも罪の告白を喜んでするような手合いじゃなかったろうから、残された記録に全ての真実が書かれてあったわけじゃない。その女は癌になった村野に家政婦兼介護婦として金で買われたようなものだったし、少しくらい金目になりそうなものがないかって、村野の懐を探ってたんだとしても罪にはならんだろう。俺が見たのは、村野の死で実家に戻ったその女が持っていた、いくつかの手紙だ。村野家と澤田家はもともと親戚だったんだ。家系としては結果的にはどちらも没落しているが、戦前に澤田と村野の当主の間で何やら揉め事があって、村野の家は大分を追い出されたような形になった。その時、逃れた先の新潟で村野親子を預かったのが蓮生だ」

 真は思わず草薙を見た。それから直ぐに前方へ視線を戻す。彼方に信号の緑が浮いて見えていた。
「村野の父親が、軍の絡みでアヘン事業を始めたのは満州事変の頃だと聞いている。村野はまだ小学生にもならない年齢だが、ある意味、子どもは使いやすい一面があったんだろう。子どもの時分から父親の使い走りをしていた村野は、汚い仕事のノウハウも教わりながら、父親から毎日、澤田家に対する恨みつらみを聞いていたんだろうよ。新潟にいる間は、父親の手伝いをしながら、古の栄華を極めた旧家の古い因縁物語、つまりゴシップを随分集め回っていたようだ」

「何のために?」
「さぁな、半分は趣味で、半分は小銭稼ぎかもしれんな。古い家ってのは多かれ少なかれ世間に晒すことのできない恥部を持ってるもんだ。脅迫というより、奴にとってはお遊びだったんだろうけどな」
「下蓮生のお手伝いの女性が、子どもの頃に、地元の噂話を集めた雑誌があったって言っていた」
「そんなもんでも、身に覚えのある人間たちには気味が悪かったろうな」

「蓮生家は、村野に脅されていた、と」
「さてね。蓮生の話など、その後の村野がやらかした、本格的な脅迫のうちにも入らないもんだろうさ。蓮生には大きな波紋になったとしても。いや、それが村野のハイエナ人生のスタートライン、予行演習みたいなものだったのかもな。味を占めやがったんだ」

 真はチェザーレ・ヴォルテラが話していたことを思い出した。
 村野がつかんでいたのは、アヘンや覚せい剤を利用していた大国の首だったと。

 時間がたてばともかく、当時としてはまだ一般大衆に知られるわけにはいかない、あるいは補償や裁判の都合で、敵国には知られるわけにはいかない多くの事実があったのだ。
 そんな中で、まさか協力者がそのまま脅迫者になるなどとは、当時の大国の誰もが思わなかったことだろう。
 大国だけではない、大きな野望を抱いている妙な秘密結社も同じだったろう。脅迫者にも常に同じだけの危険が纏わり付いているはずなのだから。

 だが、村野は自分の不利益、つまり犯罪者として断罪される危険を顧みなかった。正確に言えば、いつか断罪される可能性を楽しんだ。犯罪者であることに酔いしれていたのだ。
 それは狂気だ。一体、村野をそんなところへ駆り立てたものは何だったのか。

 信号は赤だった。自分たち以外には人も車も見当たらない交差点で、真は素直にブレーキを踏んだ。
「あんたは、何故自分の父親をそんなふうに突き放して話すんだ?」
 草薙が鼻で笑った気配を感じたが、ほとんどエンジン音に消されてしまっていた。

「あんたはどうなんだ? アサクラタケシの息子さんよ。人殺しの親父にどんな気持ちを抱いている?」
 真は思わずハンドルを握る手に力を入れた。
 この男は、相川真を調べていたのだ。そしてこんなふうに簡単に見つけ出されるのなら、アサクラタケシの足下は案外脆い。

 だが、アサクラタケシのために相川真が危険な目に遭ったとしても、あの父親は息子を庇ったりはしないだろう。そんな感情を息子に抱くくらいなら、とっくの昔に何とかしてくれていてもいいはずだった。
「親父という人種に期待なんかしても仕方がない。お前も、俺も、寺崎昂司もな。あれは全く別の生き物だ。遺伝子の半分が同じだからって妙な感慨を抱いたら、おのれの足下さえ危うい。まぁ、もっとも、俺自身、ろくな生き方はしていないがな」

 その通りだ。遺伝子など、自分の中の何を決めているというのだろう。
 唐沢の言葉を今更ながら有難く思い出しながら、真は今一度、親と切り離された自分自身としての覚悟を決めるべきだろうと思った。

 それに、蓮っ葉な言葉を口にしながら、この草薙という男には、外観や表に出した言葉とは噛み合わない不思議な側面がある。
 唐沢と同じだ。どこかに信じてもいいと思える何かを持っている。
 真はナンニという黒人の少年の黒い目を思い出した。

「でも、あんたは、行き場のない密入国者の子どもの面倒をみている」
 草薙がふん、と鼻で笑った気がした。
「法は破ってるがな。お前さんだって、親父を刺して少年院に入っていた小僧や、ヤクザのなり損ないの面倒をみている。褒められた人間じゃなくても、親父がどんなろくでなしでも、多少はいいことができるってわけだ」
 ようやく、真はハンドルを馬鹿みたいに握りしめていた手の力を抜いた。

「だがな、お前さんは、いい親父を持ってるよ。親父、という歳でもないから、兄貴という言うべきか、世間の噂どおりに言うなら、恋人というべきか。俺はてっきり、ヴォルテラを継ぐ日のための参謀でも育ててるのかと思っていたら、あんな雑誌で家を継ぐつもりはないと抜かしやがった。じゃあ何でアサクラタケシの息子の面倒をみてるのかって聞いたら、出会って運命が拓けちまったから仕方がない、ってな」

「運命?」
 真はもう一度草薙のほうを見た。草薙はフロントガラスの向こう、遥か闇の先を見つめていた。
 その横顔には、人類の遺伝子の刻印が残されているような気がする。ただ一代前の記憶などではない、遠い昔から変化し続けてきた種の、あるいは生命自体の記憶の一部だ。

「お前さん、登校拒否で潰れちまったんで、一年ばかりカリフォルニアに住んでたろう? その時、夏の間、サンタフェのアウタースクールに預けられていた。あの男がお前の伯父さんに頼まれてお前たち兄妹の様子を見に行ったとき、お前はインディアンの村に行ったまま戻ってなかったそうだな。そこの長老が、今日サンタフェに着いた男に村まで迎えに来させろと言ったってんで、あの男はお前を迎えに行ったらしい。お前さんは、知ってたのか?」

 真は、この暗闇の中、唯一の頼りであるヘッドライトの明かりでも届かない行方を見つめた。
 車のエンジン音がそのまま振動として身体に伝わってくる。目の前に浮かび上がるのは、あの日、インディアンの村のはずれで見上げた、頭の上に広がっていた大宇宙だった。
「いや。確かに、あの頃は、まともに生活のできる子どもじゃなかったことは認める」

「そこの長老に、お前たちの運命が繋がれている、と言われたらしいよ。オカルトと心霊現象には興味がないと抜かす割には、あの男は遺跡だの古代の人智だのに触れると、畏敬の念を禁じえないタイプだからな、信じたんだろう。もっとも、その頃はあの男もお前さんのことを、多少むかつく面白い子供だと思っている程度だったってな。生憎、出会うべき運命など信じない、と答えたら、長老は言ったそうだよ。出会うべき運命などない、既に出会ってしまったが故に運命が拓かれたのだ、と。簡単に言うと、ちょっぴり気になる女の子がいて告白しようかどうか迷っていたら、友達に背中を押されてしまった、というような話だって言ってたな」

 よく分からない例えだ。
 真はしばらく言葉を継ぐことができずに自分の手を見つめていた。
 確かに、あの時サマースクールの教師は、真には精神的な癒しが必要なのだと言って、町のヒーラーのところに連れて行った。ヒーラーの老いた女性は古い絵本から抜け出してきた魔女のような目で真を見ると、あるインディアンの長老のところに行くべきだと言った。

 長老は真に、子どもの頃の唯一の友人だったアイヌの老人を思い起こさせた。
 真の顔を見たとき、長老は、ようやく友人が戻ってきた、と言って真を歓迎してくれた。メディスンマンでもある長老は幾日も掛けて真を癒し、そして、お前には避けられない運命が与えられていると言った。その運命は乗り越えるには辛い運命だとも。

 だが、恐れてはならない。それは大いなる意思に捧げられる、成就されるべき運命だからだ。おのれの信じた道を往きなさい。どれほど苦しい道であろうとも、運命は既に拓かれたのだから。

 苛めに耐え切れずに上級生たちを叩きのめしたあの日からずっと重かった身体は、何かの植物を燻した煙に包まれて、宇宙に浮き上がるようだった。目を開けると、頭の上には子どもの頃から馴染んできたのと同じ、大天界の星が降らんばかりに瞬いていた。
 そして、植物の葉を敷いた大地の上で身体を起こしたとき、迎えに来た男が、黙って真を見つめていたのだ。

「何で、竹流はあんたにそんな話を?」
「さぁな。誰か、第三者に聞いて欲しかったのかもな」
 草薙はそう言って、真のほうを見た。
「ところで、信号、青だぞ。もう三回目だけどな」






「あなたを蔵と一緒に焼き殺そうとしたわけではありません。でも、もしもあなたがあそこで焼け死んでくださったら、この家の呪いが浄化されるような気がしていたのは事実です。あなたが犠牲になってくださったら、私もこの家の過去を許し、真実を葬ってしまってもいいと、そう思いました。でも、あなたは死ななかった」

再び荒川の蓮生家を訪れた真。
次回は、あの蓮生家での火事の真相が明らかに。

Category: ☂海に落ちる雨 第4節

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【雑記・小説】創作裏話バトン 

TOM-Fさんが回しておられたバトン: 『創作裏話バトン』 、拾わせていただきました(^^)
裏話、と改めて言うほどのことって実はあまりないのすが、他人様のを拝読していて、感心することもあったので、自分も書いてみようと思った次第で。
皆様のバトン回答はこちら→TOM-Fさん八少女夕さんサキさん

私の方は、やはりあのシリーズに話の重点が偏りますが……よろしければどうぞ(*^_^*)



1. キャラクターの名称


大和竹流の本名はジョルジョ・ヴォルテラだが、当初、母親がドイツ人という設定で、ミドルネームに(というよりも母親の主張により)ラインハルトというのが入っていた。しかも、彼の物語『Eroica』(ノートにして8冊ほどになる)は『ラインハルト』という名前で書かれている。この名前は没にしました。ちなみに、現在の設定では母親はスウェーデン人。
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(証拠写真:「ラインハルトは……」となっている。ちなみに枠外に描かれているのは「うわばみ」……下の方の小さい黒いものは羊らしい。「うわばみってとっても険呑だろう。ねぇ、羊の絵を描いて」? 何の因果でここに……)


『清明の雪』を書いたのは、10年近い執筆のブランクの後で、その時、1か月ほどの間、『竹流』の漢字が『尊琉』だった。キラキラネームに憧れてちょっと凝ってみたくなったけれど、しっくりこなくて、没にした。


真がバイトで勤めていた唐沢調査事務所の所長は唐沢正彰という。名前をつけてから「唐沢寿明」にそっくりだと気が付いたけれど、何だかもう自分の中でしっくりきちゃっているので、そのままになっている。
ちなみに、同事務所の助手は三上司朗というが、何となく「三上博史」に語感が似ている。芸能人コンビなのね。


そう言えば、真の自称親友・享志のフルネームは「富山享志」……実は大元の名前は声優の「富山敬」さん。こちらの読みは「とみやまけい」→まんまだといけないので「たかし」と読み替え、長い間そのまま「敬」という字を使っていた。ブログにアップすることを決めた際に、字を変えたのでした。


昔ファンタジーを書いていた。その時の登場人物の名前は無茶苦茶だった。友人と共作していた物語の主人公はアンケセナーメン(ツタンカーメンの嫁)で、天上界の三兄弟の一番の実力者(末弟)は天照狼(もちろん、天照大神をもじった^^;)だった。
そう言えば、主人公の女の子がスペインからアステカにタイムスリップする話では、恋人はケツァルコアトル(蛇の神様)だった。あれ? その頃から例に漏れず、神話系、好きだったらしいです^^;


総じて、名前の付け方がいい加減だと最近反省しています……でも、あまりキラキラな名前は付けない。

名前で一番のお気に入りは、『奇跡を売る店』に出てくる和子(にこ)。この名前は、ずっと以前からあっためていた。


2. キャラクターの性格


大和竹流はもともともっとかっこよくて、何でも受け入れてくれる心の広い神のような人だった。今では、すっかり暴君になっているし、打たれ弱いことも判明した。そして、実は彼の設定はもともとルパンのような怪盗さん(美術品専門)だった。


相川真の嫁・はもともと悪妻の設定だったが、その後、大和撫子の代表のような、しとやかで芯の強い女ということになった。そして、現在、もう一度「比較的悪妻」に戻っている。
ちなみに「優しくて芯の強い理想的大和撫子」の性質は、竹流の女房・珠恵(タエ)が受け継いだ (腹に一物あるかどうかは不明です)。このタイプはまさに竹流の好みだと思ったから。
真はどうも「悪女系」にひっかかる傾向にあるので……


真シリーズは非常にオッチャン率が高い。各種おじちゃんを楽しめる物語といってもいいかも??


3. キャラクター以外の名称


今のところ、あんまりエピソードになりそうなものはないです。基本、現実界のお話なので、地名は現実にあるものだし、お店などもモデルがあったりする。


この間書いた『迷探偵マコトの事件簿』の半にゃライダーの話で、怪人軍団の隠れ蓑となっている見世物小屋の『触蚊屋』、は遊んだかも。


4. 設定


相川真の職業の選択肢に、①サラリーマン、②科学者、③剣道の師匠、というのがあった。小学生の時に彼が現れた始めから仕事は私立探偵だけれど、結婚を機に職業を堅気に変えようかと思った、ことになって……でも、真は他人に合わせられないので①は直ぐに没。②は今の物語の中でもそうなるはずだったのが、ある事情で大学を中退してしまったし、今さら難しい。③は、結果的に結婚後、お寺に居候して子どもたちに剣道を教えている時期があるので、これは成立しているかも(でも、ボランティア)。


ちなみに、真―竹流関係は、明智小五郎―怪人二十面相が原点^^;


真シリーズの最後のストーリーは、オードリー・ヘップバーンの『麗しのサブリナ』(シンデレラを下敷きにしたストーリー)の焼き直しのようなお話。竹流の曾孫♂と真のやしゃ孫♀が駆け落ちして大団円……
こんなにも複雑なひどい話を書いておきながら、最後は甘々なのでした。

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日本地図に喧嘩を売ったような設定をしたこともある。


5. 背景


真シリーズの時代は昭和20年代から始まっている(彼は1952年生まれ)。読む人があまり時代が気にならないようにと、現代に置き換えても通用するように書いているけれど、陰では、当時なかったものを書かないようにかなり気を付けています。携帯など分かりやすいものはいいのですが、公衆電話の緑はなかったよなぁ、とか、缶ビールや缶コーヒーはどうだったかとか、ビデオやラブホテル、風俗産業など。100円ライターはいつから、とか。車の車種とか。
焦ったのは、竹流の愛車・フェラーリのテスタロッサの販売が、この時代よりも後だったこと。だからモデル車ということにして、ヴォルテラの御曹司のための特別仕様車にした。


何とか時代を現代に持ってこようとしてみたことがあるが、父親が冷戦時代のスパイであることを変えたくなかったので、結果的に元のまま。平成の今は真の息子・慎一が30歳くらいで現在とオン・タイム。この物語が完結する真のやしゃ孫の時代は一体何時?という未来。


6. 人称


基本的に、三人称。但し視点は一人称と同じ。つまり三人称を騙った一人称みたいなの。なので、その人物の心の声は出てくる。但しワンカットで心の声が複数は出てこないようにしています。不器用なので、複数の人間の感情を同時に書けない。そう、いわゆる神の視点が難しくて。
1つの作品を同じ視点で通すようにしている場合(中編とか)と、シーンごと(章ごと)に動かす場合(長編はこっち)があります。


一人称は短編でやってみた。……最近の話。ブログを始めるまでは一人称のお話は一切なかったです。一人称は、「面倒くさいところは端折れる」ことに気が付いた。


7. 没ったキャラ


割と面倒見がいいので(?)、一度生まれたキャラはどこかで使う。
中学生くらいの時に相川真シリーズの第一話を書いたけれど、この時から『高遠賢二』という人物はいて、少年探偵団のリーダー格だった。つまり、彼は竹流よりも古いキャラ。その後、少年探偵団はないよな~と思ってこの立ち位置はなくしたけれど、今彼は真の助手として残っている。……って感じです。


8. 没ったストーリー


大学時代だったか、真面目に『イエス・キリストの生涯』を書き始めた。中高6年間、どっぷり聖書の勉強をした知識と、彼は砂漠の国の民族指導者であるという立場から、歴史的に(歴史の中の奇跡・軌跡として)物語を書くつもりだった。
ノート半分くらいまで書いたのだけれど……もう知識が頭の中からなくなったので、書けない。使徒の名前も全部言えたのに……どんな人かも知っていたのに……


異世界を舞台にしたスペース・ファンタジーを複数、書いていた。
中でも、「全く自分からは何もしない主人公」でどこまで物語になるかやってみたことがある。前市長の息子で、現市長の愛人で、超美少年という設定で、何にも(自分にも)興味がないという冷めた人間。こうなると周囲が熱くなりすぎて、バランスが悪くなり、没った。
これもノートに半分は書きました。友人が挿絵を描いてくれていた。主人公はラリストラ、という名前だった。
昔から言われる、主人公は熱血であるべき(動くべき)という法則は正しいと思った。
ただ、この何もしない人物と、周りにいる熱血革命家などの人物のイメージは、どこかで使いたいと思っている。
……でも、もしかすると、この性格の一部、真の中に残っているかも。


9、バトンを回す
まだの方で、やってみようかなという人はぜひ(*^_^*)

読んでくださいまして、ありがとうございます(^^)
ところで、先週から高1の姪が我が家に転がり込んでいて、あれこれ大変です。
しかも高校の勉強に付き合わされております……もう思いだせないよ~(;_:)

Category: 小説・バトン

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[雨115] 第23章 喪失(2) 

【海に落ちる雨】第23章その(2)です。
竹流が御蔵皐月という女性にフェルメールの偽物を描かせていたというアトリエ。
火事で焼けてしまい、今は何も残っていない場所で、真はあるものを見つけます。
それは竹流にとって身体の一部と言ってもよいはずのもの。
ここから先、この小さな「物」があちこちで存在を主張します。

物語における小道具。時々思いだしたように出てきて、人と人、場面と場面を繋いでいく。
こんなふうな小さな「もの」に注目してみると、ちょっと違う側面から物語を楽しめるのかもしれません。





 フロント代わりの喫茶店のコーヒーは、全く期待していなかったのに、意外にも美味かった。
 真の胃には多少堪えたが、コクが深く、酸味が少ないためか幾分甘みさえ感じるようなコーヒーだ。草薙も朝は弱いのか、食事はとらずに熱いコーヒーだけをすすっていた。

 お互い口もきかないまま、車に乗り込み、昨夜行きかけた郊外の道に向かう。空はまたはっきりしない天気で、降るような降らないような曖昧な湿気を含んでいた。
 明るい時間に見ると、全く人気のない山道でもなさそうだった。それほど遠くないところに高速が見えていた。

 部分的には林程度の木々の繁りがあったが、途切れたところには廃車を解体する小さな作業場や、何か工事現場で使う部品を扱う会社が敷地を占拠している。
 住宅街があるわけではないが、車の通りは意外に多い。この先に団地でもあって抜け道になっているのかもしれない。

 草薙は車を降りて、脇道にへの侵入を拒んでいたチェーンを外した。真が車を進めると再びチェーンを掛けて、車に戻ってくる。
 そこからは両側から木々に襲い掛かられるような道で、山の中というほどの印象ではないのに、深みに嵌っていくような気配だった。

 舗装されていないので、しばしば振動で胃が暴れる。天気が良くないせいもあるが、昼間でも薄暗く、不意に何かにハンドルをとられそうになった。
 車二台がすれ違うのは多少困難に思える。所々、回避地のようになっているのはそのためだろう。

 大して走ったわけでもなかった。おそらく初めて辿る道だから、少し長く感じただけなのだろう。ぽつん、ぽつんとログハウスのような建物が建っている。
 チェーンの意味するところは、私有地の目印だろう。建物の周囲は木が切り開かれているので、空に遮るものがない。

 その一番突き当たりは丸く切り開かれていて、随分と明るく見えた。中心部にはまだ草も生えないところが残っている。建物の残骸は燃え痕も生々しいまま、この場所から運び出されずに申し訳程度に真ん中に寄せ集められていた。
 割れたガラスが足下で壊れる。焼け残ったものは、比較的大きな家具の一部と、柱の一部、建物自体の枠組みだけのようだった。
 他は、元の姿を思い浮かべることもできないような屑となって、半分土と同化している。変形した絵具のチューブや、イーゼルのネジのようなもの、歪んだガラスの小瓶などが所々に隠れていた。

 真は足の下の気配をひとつひとつ確かめるように、ゆっくりとその焼け跡を歩いた。
 ここで、御蔵皐月はあの贋作を描いていたのか。そして、傍で竹流がその女に語りかけ、時には肩を抱き、時には唇を合わせ、そして時には、この焼け残ったベッドが丸く完全な形を持っていた頃、その上でその女を愛したりもしたのだろう。

 だが、今、冷めた焼け跡にはもう何もない。この場所から、何かが湧き上がってくるわけでもない。
「そのガラクタをひっくり返すなら、手伝うぜ」
 草薙は言外に、何もあるわけがないけどな、という響きを十分に含ませて言った。
 真は返事をせずに焼け跡を歩き続けていた。じっとりと湿り気を含んだ地面は、人為も自然もない交ぜにして、一歩を進めるたびに足に絡みつく温度となる。

 その真の足の先を、矢のような光が横切った。
 見上げると、重い雲が僅かに切れて、隙間から光が漏れ出していた。
 あそこに天国があるような気がする、という少女趣味な感慨を抱くつもりはなかったが、何かに導かれるような気がして、真はその光を追いかけ、僅か先の地面を見た。

 それは、真の視線がちょうど落ちるあたりに光っていた。
 真は歩み寄り、思わず息を飲んだ。気持ちの揺れとは裏腹に、ゆっくりと屈んでそれを拾い上げる。
「何だ?」
 草薙に問いかけられてもすぐに返事ができなかった。予想外のものが目に飛び込んできて、今、真の手の中でそれは紛れもない鈍い光を跳ね返している。

「指輪?」
 真はスラックスで指輪の泥を拭った。明らかに見覚えのある銀の指輪には、荊と十字架のモチーフが浮かび上がっていた。
「どうした?」
「竹流の指輪だ」

 真は自分の声がかすれていることに気が付いた。安いホテルに泊まると、いつも喉の調子を悪くしてしまうからに違いなかった。
「落としたのか?」
 落とすわけがない。この指輪は竹流の身体の一部のようなものだ。指から抜くときはいつも身を切るような仕草で抜いている。あの日、真がこれを抜こうとした時も、簡単には関節を越えてはくれなかった。

 誰かが彼の指から抜いてここに捨てていったのか、それとも。
 真はもうひとつの可能性を、嫌でも探らねばならなかった。そして、そのことが何を意味しているのかを、目を閉じて、脳の隅々の全ての細胞までも働かせて考えていた。

 ここに竹流が来た理由は何だったのだろう。既に燃えかすしかない焼け跡に何か特別なものがあったのだろうか。あるいは、ただ指輪を捨てに来たのか。佐渡に行くまでの間に、彼がここでしようとしたことは、これまでの彼の人生への決別だったというのだろうか。

 どれほどローマの家と喧嘩をしようとも揉めようとも、修復作業のとき以外に竹流が今までこの指輪を外したことはない。それは、それでも彼がいつかはあの家を継ぐつもりがある、あるいは捨てられないという証明だと思っていた。
 そして、竹流があの指輪をしている限り、真も、あるいは事情を知っている添島刑事や彼の仲間たちも、いつかは彼と離れる覚悟をしていなければならなかった。

 雑誌のインタヴューに答えたときでさえ、竹流はあの指輪を外してなどいなかった。それなのに、何故今、ここに捨てていったのだろう。
 誰かが彼の手から抜いて捨てる、などという象徴的なことをするはずはないと思った。ヤクザなら、指ごと切り落とすことはあっても、丁寧に指輪だけ抜くというようなことはしない。これはあくまでも儀式のようなものだ。

 真は指輪をスラックスのポケットに入れて立ち上がった。
 もう一度あたりを見回したが、天啓のようなあの光は消えてしまっていた。
「どうするんだ?」
「役所に行きましょう。この土地が誰のもので、あるいは今どうなっているのか、確認したい」

 村役場で確認すると、そのアトリエがあった土地の所有者はある大手鉄道会社で、こんな東京都との県境の二束三文の土地など、誰も注目していなかったという扱いだった。
「でも、焼け残ったものを、誰か預かったって言ってませんでしたか」
 受付の年配の女性が後ろの男性を振り返った。

「そうだったかな」
 男性も記憶が曖昧のようでしばらく考えていたが、やがて思い立ったようにどこかへ去っていった。
 五分ほどして戻ってくると、真にメモを渡し、そこに書かれた人物を訪ねるといい、と教えてくれた。

 礼を言って役場を出る。車で十分ほど行くと、すぐに田畑の広がる区域に入った。
 住所の家を訪ねると、四十代くらいの女性が出てきて、その人は畑に出ていると教えられた。女性は真と草薙を畑まで案内した。
「おじいさーん」

 屈んでいた腰を伸ばしてこちらを見たのは、人の良さそうな老人だった。夏野菜の準備をしていた手を止めると、客人に気が付いて、そのまま真たちのほうへ歩いてきた。腰は曲がってもおらず、かくしゃくとした歩き方だった。
 真が来訪の事情を告げると、老人は不思議そうな顔をした。

「大和さんなら、十日ほど前に来なすったけど」
「来た?」
 老人は何度か頷いた。真は頭が引っ掻き回されたようになるのを感じた。
「わしが預かっとったものを取りに来られたんだ」
 真はしばらく、老人の人の好さそうな目を見つめていた。

「預かったもの、というのは、火事になったアトリエで燃え残ったものですか」
「ああ、それも預かっとるけど、取りに来たのはその後で預かったものだ」
 聞けば、この家は竹流のレストランの契約農家のひとつだという。それ故に行き来はしばしばあったのだろう。

 いや、実務的なことでなくても、この老人の顔、そして節くれだった手を見ていると、竹流が時折茶でも飲みながら、レストランで使う食材、野菜について思いを語り合い、時には語るでもなく共に過ごすにふさわしい相手に見える。

「それは何ですか?」
「さぁ、なんか小っさい箱みたいなもんだったけどなぁ」
「絵を預かりませんでしたか?」
 老人は首をかしげた。少なくとも絵画というような大きなものは預かっていないようだった。
 葛城昇が絵を探したときに、ここも探した可能性は高いし、やはり絵は御蔵皐月という女が持ち去ったのだろうか。

 それなら、竹流が持ち出したという箱は何だろう。わざわざ追われているときに取りに来なければならないようなものだったのだろうか。
「その後、どこへ行くか、言っていませんでしたか?」
「いや、聞いとらんなぁ」
 ここに来て、それから佐渡に向かったのだろうか。

 真は礼を言って、草薙と一緒に車に戻った。
「どうするんだ? 俺に案内できる場所はここだけだがな」
 真はエンジンをかけずに、しばらく考えていた。それから、草薙を見て確認した。
「あなたは、一緒に佐渡に行ったわけではないんですね」
「佐渡どころか、一緒に関東を出たこともないな」

 では、竹流が佐渡に渡ったとき、一緒にフェラーリに乗っていた男は誰なのだろう。
 美人が一緒なら絵になったのにねぇ、と目撃者が語っていた。そのときは、てっきりこの村野の息子が一緒だったのだろうと思っていた。それなら一体誰だ。

 寺崎昂司である可能性は? だが、真が怪我をした寺崎に会ったとき、寺崎は竹流の居場所を知らないと言っていた。嘘をついていた可能性は否定できないが、あの時の寺崎の様子からも、わざわざ嘘を言っていたとは思えない。では、誰が一緒だったのだろう。

 竹流はその誰かと一緒に佐渡に行き、そこで更に暴行を受けたのだとしたら、一体その相手は誰だろう。
 頭が混乱してきた。
 寺崎昂司の父親、寺崎孝雄という可能性もあるが、それにしても接点は何だろう? 大体、竹流がテスタロッサに嫌なやつを乗せるとは思えない。
 江田島道比古という可能性は? フェラーリに乗せるほど親しい相手とは思えない。

 だが、「その男」と一緒にわざわざ佐渡に行ったのだ。
 大体、彼が佐渡に行った目的は何だろう。あの隠れ家の鍵を取りに行ったわけだから、やはりあそこで何か見落として来たのだろうか。

 真は、嫌な想像をいちいち否定しながらも、身体が固まっていくのを止められなかった。最悪の想像は、それがアサクラタケシだったという可能性だった。だが、父には竹流を暴行する理由はないはずだ。
 万が一にも、息子の将来を案じて、その原因になるかもしれないジョルジョ・ヴォルテラを抹殺したいと考えていたとしても、それなら真っ直ぐにチェザーレ・ヴォルテラを始末すればいいことだ。
 竹流は決してあの家を継ぎたいと思っているわけではない。

 真はエンジンをスタートさせた。
「どうするんだ?」
「新潟に行きます。あなたはどうしますか」
 草薙は感情を読み取れない声で答えた。
「もう少しつき合ってやるよ」






『右手がしていることを左手に知らせるな』
戦時中の残酷な現実については、少し言葉を濁すことになりそうです。
でも、公然と覚せい剤や阿片のようなものが使われていた時代。
この言葉は阿片王と呼ばれたある人の信条だったのだとか。
敵でも味方でもない、しかし父親という存在については互いに思うところのある二人の道行き。
もうしばらく、お付き合いください。

Category: ☂海に落ちる雨 第4節

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【雑記・小説】昭和な物語-『百舌の叫ぶ夜』 


『せいぜい1日か2日もあれば読み飛ばせる小説を、何が面白いのか3年半もかけて書くという作業は、馬鹿馬鹿しいといえば馬鹿馬鹿しいし、ほほえましいといえばほほえましくもある。長い時間かけたからといって、それだけ出来がよくなるというわけはないので、閑人の道楽と言われれば正直なところ返す言葉がない。
 3年半の間には、いろいろなことがあった。阪神タイガースの優勝をはじめ、とかくびっくりすることが多かった。とりわけ、のんびりこの作品を書いているさなかに、同じような状況設定の海外ミステリが翻訳されたときは、さすがに愕然とした。
 この種の小説を書いていれば、そうしたリスクは常に避けられないのであるが、3年半という年月が無駄になったかもしれないと思うと、今でも冷や汗が出そうになる。筆を折らなかったのは、その翻訳物が、状況設定を除いては全く別の小説であり、私の作品も独自に存在を主張できると判断したからである。』


これは今、某テレビ局で放映されている、主役の俳優の筋肉美を魅せることを目的としているようなシーンが満載で、近頃は、登場人物たちがやたらめったら煙草を吸っていて、ついでに歩き煙草もしていると言うので、小さく物議をかもしている某番組の原作本のあとがき、です。
(長い解説^^;)


阪神タイガースの優勝とは、もちろん、1985年の優勝(「びっくり」とか言われてるし)。
この原作本、いわゆる百舌シリーズ、実は私、全て単行本でもっています。
あ、さすがに私、第一刷(1986年)当時はまだ学生でしたので、本を読んだのはもっと後ですけれど^^;
単行本で小説を買うなど、今ではありえないのですけれど、あの頃は文庫本を待ちきれなくて、あるいは単行本の装幀が好きで、買っていたみたいです。

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逢坂剛先生は、尊敬する職場の先輩がお好きだと言うので、私も話題について行こうとこそこそ読み始め、結構嵌りました。
それが時を経てテレビ番組になっているのは、ちょっと嬉しい気もします。


毎回オープニングが凝っていて、次回予告が映画の予告編みたいになっているのもお洒落。役者も気合いが入っている。これまでのところ、台詞も含めて原作にかなり忠実で、それも納得できる。


ただ。あの時代を映像にできるだけ再現しようとしてくれているムードがあって、そのために画面が全体が暗いし、登場人物が恐ろしくハードボイルドで妙にエキセントリック。敵対者の殺し屋なんて、怖すぎる……(いや、みんな怖い人ばっかなんだけれど)
そして、例の煙草問題。とにかく無茶苦茶、吸いまくっている。
もしかして、禁煙協会からかのアニメへのクレームに対する嫌がらせじゃないかと思うくらい。


でもあの時代。あれが私の中の「昭和な時代」です。
昭和って、3丁目の夕陽とか、サザエさんよりも、小説やテレビ番組から感じるのは、こういうイメージだった。
煙草吸っているシーンなど、もう本当に「昭和」な刑事もの、って感じがします。
(『太陽にほえろ!』とか『西部警察』とか『Gメン75』とか……歳が……^^;)

でも、これ、現代に受けるのかしら? いささか心配なのでした。

丁度、今連載中の『海に落ちる雨』がその時代。自分の中のあのイメージをそのまま書いたから、ちょっとエキセントリックで「昭和な」、つまり平成の今は受けなさそうな話になっているのかもしれません。


もっと軽快でポップな話が、平成には合っているのかもしれませんね。
でも……この期に及んで『百舌シリーズ』をテレビドラマにするってのは……我々の世代が制作部のトップになっていて、あの時代に帰りたがっているのかしら。
……じゃ、私も開き直ってしまおうかな。

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久しぶりに『百舌シリーズ』の本を開いてみて、ちょっとしんみりしていました。
それにほら、あの時代ですけれど、こんなふうに、意外に視覚的にも不思議なところもあったのですよ。
(2段のページや1段のページが混じっている)

それにこのページ、ちょっとハードなシーンです(たまたまです)。
こういうのを読むと、『海に落ちる雨』第4節をアップする勇気が出てくる(どんなんだ)。
有難う、逢坂先生。


話は戻って、逢坂剛先生のあとがき。
小説家・物書きって、ベストセラー作家も、こうしてブログでこそこそ作品をアップしている場末の物書きも、同じようなことを感じているのだなぁ。
(なんて言ったら、逢坂先生に失礼なのですけれど……)

私も、「存在」を主張できるような物語を編み出していきたいなぁ、と思ったのでした。

Category: 小説・バトン

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【8888Hitリクエスト第1弾】半にゃライダー危機一髪! 宿敵の魔の肉球迫る! 

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末広がり・8888Hitのリクエスト、今週から1つずつ消化していきます。
まずは、【scribo ergo sum】の八少女夕さんからのリクエスト、「半にゃライダー危機一髪! 宿敵の魔の肉球迫る!」です。


八少女夕さんは、本当に精力的に物語やエッセイを書いておられる、尊敬するブログのお友達。
もう私がここで敢えてご紹介する必要はありませんね(*^_^*)
夕さんの企画・scriviamo ! がいかに大変か、よく分かります。
発想力の豊かさと柔軟性と、そしてウィット。書くということに対する情熱と、他の人の作品をきちんと読み昇華する力。どれが欠けてもできない企画と思いました。
たった3つ書くのにこんなに足掻いている自分が悲しい((+_+))

さて、リクエストくださったタイトル。
これをどう料理できるか。
これを普通に書くと、できの悪い15分番組くらいのシナリオにはなるんだろうけれど、内容があまりにも陳腐になりすぎる。
そこで苦肉の策としてこのようにさせていただきました。


テーマは、生存所属を異にするものの魂の流通共鳴(またか!)
ちょっと新鮮な「あの人」の一人称、お楽しみください(*^_^*)

リクエストを下さった夕さん、ありがとうございます!!



半にゃライダーとは……limeさんのイラストに物語を書いた際に湧いて出た謎のヒーロー?
「はんにゃ」と打ち込んだら「般若」より先に「半にゃ」に変換されるという話題から生まれました。
詳しくはこちらを→【般若の面】【秘すれば花】 
【秘すれば花】の前書きに登場していますが、実は中身は全くない。
ただの番組名として登場しただけでした。これを如何に料理するか……

基礎知識は全く不要です。
猫と人間の心の交流?
独立した短編でもありますので、ぜひお楽しみください(*^_^*)


<登場人(猫)物>
マコト:まだまだ半人前の茶トラ猫。最近のお気に入りはヒーロー番組『半にゃライダー』。
タケル(語り手):ちょっぴりSなマコトの飼い主。『半にゃライダー』を一緒に見てやる優しいところも。

   
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Category: 迷探偵マコトの事件簿(猫)

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【雑記・花】春の花、一段落 


季節の花だよりは春の花、後半戦です。
他人様のお庭では薔薇の花やラベンダーがとても美しくて今まさに花盛り、というところも多いのですけれど、うちはちょっと地味めになってきています。

芍薬が咲き始めました。
ピンクと白があって、白は後で咲きます。同じ花でも、こういうちょっとした時間差があるので、花たちはカレンダー代わりになるのですね。
芍薬って、植えてあっても消えてしまう、という話をよく聞きますが、今のところ、実家から株分けでやって来て10年。同じく実家から婿入りした信楽タヌキ君と共に、まだ消えずに頑張っています。

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傍では、紫蘭がこれもまた花盛り。白のもありますが、やっぱりこの色がいいかな。

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そして、鉄線。巻き付いている相手は、山茱萸の木。
この季節の、このブルーの色、初夏の気配を先取りしているようでいいですね。
庭の新緑の中にこの色があると、はっとします。

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我が家の超だめだめ薔薇シリーズ。
始め、鉢植えで2株貰ったのですが、ひとつはあっけなく枯れてしまいました。
こちらは残った1鉢。放置して肥料も適当なのに、なぜかたくましく生き残っています。
うちの庭って、花たちのサバイバルゲーム劇場、なのかも。
これが開くと、こんな感じに。
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名前が分かりません。でも薔薇ってものすごく種類があるので、ネームカードを無くした時点でお手上げですね。
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こちらはアイスバーグ。白くて花弁の数が少なめ。地味めですが、白い花って夕闇に映えるからいいのです。
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で、こちらがもうほんと、ごめんなさいのピエール・ド・ロンサール……だったはずなのですが、手入れが悪くてこんなみじめな姿に。
本当は中のピンク色が濃くて、外になるほど白い、素敵な花なのに。
咲いただけでも良しとしますか……
つくづく、薔薇には向かない私でした。

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でも、こちらはちょっと嬉しい梅。
庭の隅に放置してあった枯れかけた苗を、椿が枯れて抜いたあとに、先月ようやく植えました。
根切りを失敗して、しばらくの間葉が萎えていたので、ちゃんとつかないかと思ったのですが、今はしっかりしています。
これのお蔭かな。
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超ミニ畑の野菜も少し大きくなりました。葉っぱたちは付け合せや野菜ジュースに活躍。
なすびとキュウリは……ちゃんとできるかなぁ。
ひとつめの花を落とすんだったっけ? 

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野にある時も綺麗だけれど、時々こうして飾ってみます。
庭に出て愛でる時間よりも、台所で眺める時間の方が長いかも。
こちらは玄関の小さな花瓶。以前にもちらりとお見せした、熊本の小さな村で買った「蕾」をモチーフにした花瓶です。
活けてあるのはピンクのマーガレット。
下の籠は、手編みのオブジェのような籠。
こうして手許に飾るのもまた、花を愛でる楽しみかもしれません。

今は、紫陽花が準備中です。
一番早いのは七段花。今朝見たらもう花が開き始めていました。
カシワバアジサイも花芽が大きくなってきています。

Category: ガーデニング・花

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[雨114] 第23章 喪失(1) 

【海に落ちる雨】第4節の幕開けです。

新宿にある調査事務所所長・相川真の同居人・大和竹流。
ローマにある教皇庁と深い関係があるヴォルテラ家の後継者であるが、その立場を捨てて今は東京でレストラン・バーとギャラリーを経営する美術品修復師。

大怪我をして入院していた大和竹流の失踪。
その失踪に重なるように蠢いていた人間たちの影が、今となっては静まり返っていた。
代議士・澤田顕一郎、溺死した元傭兵の田安、内閣調査室の『河本』、『河本』の命令で動いている警視庁の女刑事・添島麻子(竹流の恋人)、米国中央情報局に雇われている真の父親・アサクラタケシ。

真はようやく竹流の失踪時、最も身近にいたはずの男に行き当たった。
澤田顕一郎の元秘書・村野耕治の息子・草薙。

竹流が失踪前に関わっていたのは、新潟の豪農・蓮生家の蔵から見つかったというフェルメールの贋作だった。
蓮生家の怪しげな面々、贋作の鑑定に関わったという弥彦の村役人・江田島、フェルメールのことで政財界の大物たちを脅迫したうえで自殺したとされる雑誌記者・新津圭一、口がきけなくなったその娘、新津の愛人で真の恋人でもあったバーのママ・深雪。

それぞれがそれぞれの事情で事件に絡み、物事を複雑に見せている。
だが、事件の核心はただ一つだ。
「妙に大物が動く割には起こっていることが小さい」
絡み合う人間の欲望の泥沼の中から、真は彼を探し出せるのか。
そして、竹流が本当にしようとしていたことは何だったのか。
彼の本当の『敵』は誰だったのか。

草薙に案内されて、真は、竹流がフェルメールの贋作を描かせていた女・御蔵皐月のアトリエに向かう。

【海に落ちる雨】登場人物紹介はこちら→【登場人物紹介】





 草薙は車も免許も持っていないというので、添島刑事が用意してくれたカローラは、有難いことに早速役に立った。
『河本』は多分土俵を下りたのだろうし、これから真が振り切らなければならない相手は警察関係だけかもしれないが、首都高速道路に乗ったカローラの周囲には、今のところ誰の気配もなかった。

 夜半に高速を西へ走る車は、トラックを別にするとさすがに少なく、具体的な目的地を思い描けない状況では、まるで異次元に向かって車を走らせているような錯覚に陥る。
 むしろ、直接的な敵からの接触があったほうが、この道が確かに彼の元へと繋がっていると信じられるのに、ここに至って何の気配もないことが辛かった。

 とりあえず、どういうことになっているかと考えると、相川真は、幼女誘拐および内閣調査室で窃盗を働いた寺崎昂司と一緒に姿を消した怪しい外国人、大和竹流の行方を知っている参考人で、楢崎志穂への婦女暴行の容疑者としてマークされているという状況のようだ。しかも、どちらも真にとっては言いがかりのようなものだ。
 そう考えると、罪状的には大したことはないように思えてきた。もっとも現時点では、『大和竹流の捜索の断念』という条件で『河本』から不問と安全を買ったことになっている。

 いや、『河本』は多分、真が結果的に諦めるとは思っていないだろう。相川真がアサクラタケシの息子であることを知っている彼は、この親子がどういう性質の遺伝子を持っているかを十分に理解しているはずだった。
 何よりの問題は、アサクラタケシは相川真をチェザーレ・ヴォルテラには渡すまいとしてくれているようで、その背後事情から一旦、どういう事情にしても真を拿捕しようと考えているかもしれない。
 そうなると、自分が一番振り切らないとならない相手は、実は父親なのか、と思った。

 甲府まで高速は順調だった。
 草薙は助手席で黙っていた。大柄ではなく、真よりやや背が高いかどうかで、顔振りが小さいからか全体にはむしろ小柄に見える。痩せて骨ばった頬に尖った顎は、動く獲物を狙う爬虫類に似ている。

 草薙は短い単語だけで、高速のインターを指示し、その先の道を誘導した。
 インターを降りてから二十分ほど走って、言われるままに車を止めると、全く車が走っていないわけではないが、深い山の中のように思えた。もっとも灯りがほとんど消されたこの時間では、たとえ人家があっても、どこも山や森の中のように感じたかもしれない。

 草薙の無言の気配で車を降りると、湿った木々の匂いがした。
 車のライトで照らされた道は、まっすぐに木々の中を走り抜け、少し先でやや登りの坂道になっている。登りの途中からは闇に吸い込まれているのか、実は下りに変わっているのか、いずれにしてもその先は奈落へ沈んでいるようにも見えた。

 もっともこの闇の中だ。距離感は曖昧で、昼間に見る景色とは随分違っているのだろう。
 突然、甲高い鳥の鳴き声が闇に木霊して、真は思わず頭上を振り仰いだ。
 舗装された道の両脇には木が覆うように並んでいて、車を停めたのは、舗装道の脇から伸びている砂利道の角だった。砂利道の入り口には杭が打たれ、チェーンがかかっている。

 草薙が助手席のドアを開けたまま、身体を乗り出すようにして冷めた声で言った。
「どうする気だ? この時間じゃとても探しものはできないぞ」
 地面に落ちた生命の残骸が湿った音をたてているのは、風のせいか、それとも足音を忍ばせた生き物が蠕く気配なのだろうか。時々、侵入者を確認するように、無音になる。

 真は草薙の問いかけには答えず、闇の向こうを見つめたまま尋ねた。
「この先に、御蔵皐月のアトリエがあったのか」
「そうらしいな。だが、今は完全な燃え跡で、もう何も残ってない」
「ただの火事だったのか?」

「わからん。色々と燃えやすいものが多かったから、何かが引火したんだろうって話だけどな」
「よく大火事にならなかったな」
「アトリエまでの道と周辺は随分切り開かれていたし、幸い風のない日だった。それに、通りかかった隣の別荘の人間が、部屋の中で燃えている火を見かけて、直ぐに消防を呼んだらしい。それでも消防が来たときには、アトリエはほとんど燃えてしまっていたらしいがな」

 真が諦めきれずにその先の闇を見つめていると、草薙がぽん、と投げ出すように言った。
「明日にしよう。まさか、お前を追っかけている連中も、山梨にいるとは思ってないさ」
 誰かに追いかけられているという強い緊張感はない。むしろ、こっちが何かを追いかけているのに、目的のものに届かないという焦りのほうを強く覚える。
 どちらかと言えば、追いかけてきて姿を見せろという気分だった。

「悪いが、生きている保証はないぞ。だが、今日生きているなら、明日もまだ生きているだろうよ。すでに死んでいるなら、一晩焦ったところで仕方ないだろう」
 真はそれには答えなかった。

 だが、確かに、この時間からこれ以上身動きがとれるとは思えなかった。
 そのまま甲府に泊まることにし、駅前のちっぽけなビジネスホテルに入った。
 建物の一階が駐車場になっていて、その脇の粗末な鉄製の階段を昇って、透明の扉を押し開けると、ロビー兼喫茶店になっていた。

 喫茶店のレジがそのままフロント代わりだった。カウンターと二席ずつのテーブルが三つ縦に並んで、狭い通路があるばかりの喫茶店だ。申し訳程度の観葉植物が、十分な水と栄養と日光を与えられないために、葉の先端を重力に任せたまま、細い自動扉の脇に納まっている。

 シングルの部屋を二つ頼んで、染みた汚れが取れなくなっている鍵を受け取ると、古く安っぽい暖簾のかかった通路を通り、更に狭い階段を昇って、足下の何かの荷物を踏み越えて部屋に入った。火事にでもなったら逃げられないな、と思ったが、値段を考えたら、別に訴えるようなことでもない気がする。

 部屋は本当に狭く、決して大きくはないベッドがようやく一つきり入っていた。窓の外は建物の壁で、まるで監獄のようだ。ユニットバスも一人でも狭いと思うような作りで、ドアも完全には閉まらなかった。
 正直、よく営業を続けていると感心するようなホテルだった。普段、客が泊まることがほとんどないために、傷んでしまっているのかもしれない。

 シャワーを浴びて、ベッドの上に放りだしてある、糊だけは十分にきいた掠れた青の浴衣を着て、身体を横たえた。カビのような臭いと染み付いて取れない古い体臭が入り交じっていたが、不快とも何とも思わなかった。

 実際、次にどうしたらいいのか、分からなくなっていた。
 御蔵皐月のアトリエの焼け跡に何かが残っているとも思えない。それでも一度はそこに行ってみなければならない気はしている。おそらく皐月があの絵を描いていたのは、そのアトリエなのだろう。

 だが、不思議な符号だな、と思った。佐渡の爆発事故と山梨のアトリエの火事。竹流が火傷を負ったのは実際はどっちなのだろう。
 それに、本当に寺崎昂司は御蔵皐月を殺したのだろうか。
 楢崎志穂はどうしているのだろう。真に暴行されたと、警察に言った。彼女は荒神組の連中に脅されていたのだろうか。

 疲れているのだ。休息を与えられない脳が、過剰に活動している。
 子どもの頃から、網膜に映ったシーンは何時もばらばらだった。それを脳内で意味のある一つの絵にするためには、意識的に使い慣れない脳の部分を刺激する必要があった。
 ばらばらのカードを並べて、組み合わせていくという作業をするためだった。

 落ち着いたらできることが、焦るとできなくなる。今、頭の中にはばらばらのカードが散らばっていて、その中で真は、疲れてぼろぼろの身体で歩き回りながら、途方に暮れている。
 そこに交じっている無関係そうに見えるカードが、時々悪質な臭いを放ち、真の足に絡み付く。
 いや、これこそが最も中心にあるカードなのか。屈みこんで触れようとすると、身体が痺れたように硬直した。

 思考が整理できないことに焦りを覚えながらも、一度横になると身体を起こすことができなかった。
 ヤクザに殴られたのも、もう随分前のことのように思える。実際に身体に受けた暴行からは少しずつ立ち直り、むしろここ何日かは、短くともベッドに平穏に横になる時間さえあった。

 それなのに実際は全く眠れていない。夢を見た記憶もない。ただ暗い天井を睨みつけていただけだった。荒神組の連中に殴られた趾がたまに疼くのは、今日の午後、草薙の店で受けたものが追い打ちをかけたからだろう。
 眠れないのは、まだはっきりとは抜けきらない薬の幻覚が、脳のどこかに住処を作っているからだ。

 幻覚と現実の境目をうろうろしていると、つい今日の午後、男達に殴られたり蹴られたりしたその場面が、身体の内側から突き上げてくるような気がした。
 ベッドに横たわっているのではなく、殴られて身体がどこかへすっ飛んでいくような不気味な感覚を、あたかも身体そのものはまだその現場に残っているように感じていたのだ。

 そして、不意に大きな男に顎を摑まれて分厚い唇を押し付けられた感触と、誰かのごつい手が自分のものを握った感触が幻覚を越えた。
 今この身に起こっている実際の出来事ではないのに、真は跳ね起きた。何よりも、身体が幻想に反応していることに自分で驚いたのだ。

 今でも、ほんのたまのことだが自慰をすることはある。けれどもさすがに中学生や高校生の頃のように、夢精をすることはなくなっていた。
 もともと眠りのスパンが短い真は、夢を見て覚えていることは比較的多くそれが現実と区別がつきにくいことも少なくない。その中で艶夢を見ることもあったが、下着を汚すようなことはなかった。真は自分の勃ち上がったものの先端が僅かに湿っているのに触れて、自分は一体何をこんなに餓えているのだろうか、と思った。

 俺は、やっぱりおかしいらしい。
 ここに至って、理由は明らかだった。
 いや、本当は以前からずっと解っていたのだ。美和とベッドを共にした後、何となく盛り上がっていた気持ちがほんの数日で急速に冷めたのは、何も仁に叱られたからではない。
 日一日と時間が経っていく中で、彼の不在を身体も心も恐怖に感じている。

 自分で今の状態を処理しようとは思わなかった。
 単に勃起して感情の昂ぶりがないまま射精できないことなど、珍しいことでもない。そんなことで欲求不満になるほどのこともない。
 だが、ふと気がつくとまた、涙も流さずに泣いていて、情けないほどに頼りないのを感じた。会ったところで、抱き合ったりキスしたりすることが簡単にできるわけではないのはよく解っていた。
 満たされないことがあるとしたら、ただ耳の中の小さな産毛まで震わすようなあのハイバリトンの声と、鼻腔をくすぐる白檀のようなオリエンタルな香りが、今ここにないこと、そのことだけだった。

 美和に追及されてもさすがに答えられなかったが、大学に入る前、ほんのしばらくの間あの男とそういう状態にあったことは事実だった。だが、真自身は大学入試で参っていたし、その後のまるでハネムーンのようなイタリア旅行の間、自分たちが多少箍が外れていたのも知っていた。しかも、あの時竹流は、日本に来てから何年も帰らなかった故郷に久しぶりに足を踏み入れて、色々と複雑な感情になっていたのだろう。

 実際にそうなってみて、分かったことがある。
 自分は以前からずっとそのことを望んでいて、他の誰かを抱いたり抱かれたりしている時にも、彼の手を探していた。だから、そうした行為の最中に、他の誰かの手を探さなくてもいいということが、どれほど満たされた思いがするのかということを知った瞬間の、あの震えるような感覚も、真はまだはっきりと覚えていた。

 あの男が、その後なぜそういった行為を一切止めてしまったのかも、何となくは解っているつもりだった。彼は、やはり女しか抱けないと言っていたが、それが思わず口をついて出た言い訳に過ぎなかったのではないかと、時々そう感じている。
 彼がそう言った時は、真のほうも納得して何となく安心し、妙に開放された気分になったりもした。その上でベッドの中では半分は無意識に、半分は意識的に、彼に甘えた。彼は酒の量が増えていたような気がする。

 それでも、セックスをしないことが苦しいと思っていたわけではない。厩舎の藁の中と同じ匂いがするあの空間を、頭の上に広がったあの大宇宙と同じ温もりを、手離すつもりもなかった。
 その一方で、彼が留守をしている期間は、おかしなくらい深雪のところに通いつめるようになっていた。しつこい男だと思われるのは情けなく、行かない日には、熱い風呂に入って早くベッドに潜った。眠れないので、自分で自分を慰める日もあった。
 代わりになるようなものは何もなかった。

 彼も自分も決して同性愛者だとは思わない。彼以外の男にどうこうされたいとは一片も思わないし、女性に対しての性欲は全く普通だと思っている。あの男もそうだ。普通に女性を抱いている。もっともかなり複数、という点は問題だが。

 あの男が目指し求めているものが何なのか、真にはよく分からない。ひと時燃え上がって終わってしまうような恋ではなく、もっとはるか高みを求めているのかもしれない。
 その理想を自分が理解できないことは、もう構わなかった。
 しない、というならしなくてもいい。したい、と言われたら応える、それだけのことだと思ってきた。どうせ自分の中で答えが出ない問題なら、そのまま呑み込んでしまったほうがいい。

 何より、始めから真はあの男のものだった。指の先、爪の先、髪の毛の先の、明日剥がれ落ちしまうような細胞の一片までも、あの男のものだった。全ての血を搾り出して見せろと言われたら、躊躇わずにそうする。
 真の命の核は、十九のあの日からあの男の中にあった。

 それなのに、あの男は何故、俺の首を締める権利を持っているのに、それを行使しないのだろう。
 真は、自分が狂いそうになっている理由をよく知っていた。あの男が自らの命を危険に晒している理由が「相川真」ではないからだ。狂いそうになっているのは、何かわけの分からないものに対する嫉妬だった。

 酒の一杯でも手に入れておくべきだった。そうすれば睡眠薬代わりになって、一気に眠れたのかもしれない。
 不意にドアがノックされた。飛び上がるように驚いたが、それが真の昂ぶりを鎮めてくれた。

 ドアを開けると、草薙が立っていた。
 部屋に入る前に食事に出ないかと誘われたが、まだ殴られた趾も辛くて気分も悪かったので、断っていた。草薙は缶ビールを真の手に押し付けた。
「睡眠薬代わりにはなるぞ」

 缶ビール一本がこれほどに有り難いと思ったのは初めてだった。しかも、これだけで十分酔っぱらえる自信もあった。草薙は真を見て、泣いていたのか、と聞いた。真は、そうか、涙を拭うのは忘れていたとぼんやりと思った。
「とにかく、飲んで寝ろ。ああは言ったが、俺もあいつに簡単に死んでもらっちゃ、寝覚めが悪いんでね」
 真は礼を言って、ドアを閉めた。

 作り付けの細長い机の上の鏡は、長年磨かれた気配もなく、ひびが入っていた。鏡の中の薄暗い世界に、真は亡霊のように立っている。ひびの部分で歪んだ世界の中では、二つの感情もそのままひび割れていた。

 真は涙など欠片も流していないことに気が付いた。泣いていたのは、上手く鏡になど写らない心だけだった。草薙は、真の背中に張り付いているもうひとつの世界を見ていたのかもしれない。
 ベッドに座って、苦い薬を流し込むように一気に缶ビールを空にして、そのままカビと古い汗の臭いが染みた薄い布団にくるまった。すぐには眠れそうになかったが、少なくとも泣かずに済みそうだと思った。

 彼に会いたかった。本当にただそれだけでよかった。


(つづく)


次回予告?

「あんたは、何故自分の父親をそんなふうに突き放して話すんだ?」
 草薙が鼻で笑った気配を感じたが、ほとんどエンジン音に消されてしまっていた。
「あんたはどうなんだ? アサクラタケシの息子さんよ。人殺しの親父にどんな気持ちを抱いている?」

Category: ☂海に落ちる雨 第4節

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【雑記・小説】物語を書くということ 

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(文字がびっしり書いてあるノート。【Eroica】……ジョルジョ・ヴォルテラと真の息子・慎一の壮絶な親子葛藤の物語。ノートの上部には、読んだ本の感想とか、ちょっとした日記とか、あれこれ)


自分の書くものを分類すると、多分2種類に分かれる。
ひとつは、人に読んでもらうことを意識した物語。
もうひとつは、自分のためだけに書いた物語。

人に読んでもらうことを意識しなければ、文章が洗練されないし、読みにくいままだし、向上しない。だから、物書きはいつだって、人に読んでもらうことを意識するべきだ。
ブログで小説を発表するようになって、そのことを強く感じるようになりました。


文章だけではなく、読みやすいように文字の大きさや色、テンプレートを変えてみたり、文字数を少なくしたり、イラストや写真を散りばめてみたり。
あ、文字数は多すぎますね。もっと少なくしなくちゃ。

こうやって読み手をいつも想定してこそ、物語は体裁を整えていく。
人からいいねって言ってもらえたり、感動したよって言ってもらえるようになる。


でも、実際には、私には自分のためだけに書いた物語がある。
長いこと、具体的には二十年以上かけて、書いたり、止めたり、手書きからワープロ、パソコンと手段も変わり、読み直しては何度も書き直し、逆に無情なほど存在を忘れて放置した時間もあり……それでもまだ自分の手元にある。

もちろん、書いていない時も「彼ら」はそこにいたので、全く疎遠だったわけではないけれど、中断して一字も書かずに放置した年数の方が、書いていた時間よりもずっと長い。


そう、書き始めた日付けも書かれていないので、わからないけれど、ノートの端の落書きに、「岡田」「亀山」とあるので、某関西のプロ野球チームで彼らが選手として活躍していた時期に書き始めているよう……

読み手は想定していなかったので、全く自分のためだけの物語。
だからちょっと酷い。いろんなものを詰め込んである。
苦しいこととか、頑張ったこととか、情けないこととか、ものすごく崇高な想いも混じっているし、欲望とか欲情とかどろどろなものも混じっている。すごく綺麗なエピソードも入っているけれど、怒りと悲しみと、自分の中のあんまり綺麗じゃないものも、こんな理不尽は許せないってこととかも、入っている。
自分でも読み返せないエピソードまである。


ある日、何の拍子にだったか、友人に読んでもらったことから、事情は変わってしまったけれど(友人の「もっとたくさんの人に読んでもらいなさい」というツルの一声。いえ、今でもたくさんの人が読んでくれているわけじゃないのですけれど……)、今でもこのお話だけは、やっぱり人に読んでもらうために書いたものじゃないと、そう思える。

自分のために書いたものが読んでもらえて、人に受け入れてもらえたら嬉しい、とかそういうことではなくて、これはもうそんなことを越えた、超自己中な物語なのです。
本音を言うと、もしかして、永遠に読者が私一人でもいい。


じゃあ、何故、こうしてブログに発表しているんだろう。
それもまたよく分からないのです。


例えば、ダ・ヴィンチの『モナ・リザ』。
彼は生涯この絵を手元に置いて、筆を入れ続けたのだとも。
例えば、ミケランジェロのミラノにあるピエタ(ヴァチカンのではなく)。
未完成という噂もあるけれど、石から湧き出るままに彫って、あそこまで来たとき「もうこれ以上は彫れない」と感じたのだとも。
(あ、比べる対象がでっかすぎましたね^^;)

あれらは、もしかすると画家の、彫刻家の、彼自身のための作品だったのかも。
芸術は万人のためのものであったとしても、その絵や彫刻、その音楽などと向き合っていのはあくまでも個。
だから極めて自己中心的なものなのかも。


その一方で、分かち合いたい、わかって欲しいという思いも、やっぱりあるのでしょうか。
(ポッキーの宣伝みたいに)

ぐるぐるまわって、冒頭に挙げた、自分にとっての2つの種類の物語は、結果的に裏表なのかもしれませんね。
……何だか、書きながらよく分からなくなってしまったのでした。
何のために書く? やっぱり自分のためなのですよね。


そんな私だけの物語だった【海に落ちる雨】……ついに問題の第4節に突入、です。
「だった」と書いたのは、「だめだよ、こんな話」とか思っていらっしゃるかもしれないけれど、根気よく付き合って下さる、数少ない、でも暖かい読者様がいてくださるから……(感謝です)

こんな理由で、ダメダメなお話ですが、もしかすると魂と情念は、他のどの物語よりも深いのかも。
テーマは? 上手くいえないけれど、私の書くものは、いつも『再生』の物語なのです。


テーマソングはB'zの『Calling』だと以前に書きましたが、この物語を書いていた頃、最も聴いていたのは、尾崎豊の『太陽の破片』、そして長渕剛の『何の矛盾もない』でした。
どちらも、第5節の章題に、戴いています。
私にとっての「昭和」は3丁目の夕陽じゃなくて、これらの歌のイメージを抱えた時代でした。
(『続きを読む』に畳んでいます)

ちなみに、【清明の雪】は前者。読んで下さる方を(一応)意識して書いたものです。
多分、他の多くの物語も前者です。
でも、前者であるからには、もっとお勉強しなくてはなりませんね。

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(ノートの続き。びっしりの文字だけれど、たまに余白があると自慢して喜ぶ作者^^;)
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(縦長の余白に狂喜したり)
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(こちらは【海に落ちる雨】のノートにシャーペンで自筆時代。まだワープロも持っていなかった。初めて買ったワープロは『書院』でした。ちなみに、このシーンは、真と美和ちゃんのシーン)
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(こちらは【死と乙女】……今アップしているものは、この時ノートに書いていたものより、倍の長さになっている)
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(ノートの端には、こんな薀蓄?も……^^; 読めるかなぁ?)
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Category: 小説・バトン

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【図書館の手紙】(4)人の心に希望あり(完結) 

【図書館の手紙】その(4)、大団円です。

図書館の本の間に挟まれている手紙。
それは『学院の七不思議』に語られる、結ばれなかった恋人たちの秘密の手紙だったのか?
20年も前に交わされたはずの手紙が、なぜまた図書館の本に挟まれているのか?
一方通行で、日付もばらばらの手紙の意味は?
日曜日に限って早めに図書館に来る司書、イースターの礼拝にやって来た子ども。
彼らが謎のキーパーソンなのか?

予定以上に長くなってしまいました。
でもあと1回で終わると宣言したので、長いけれどアップします。
何時も長くてごめんなさい。
う~ん。何とかしなくちゃ。

≪登場人物≫
富山享志:私立幹学院に通う中学生。責任感は強いが、面倒なことを押し付けられやすい級長。
相川真:中学2年生で幹学院に編入した帰国子女。一人でいるのが平気な元苛められっ子。
杉下萌衣:クラスの図書委員の女の子。急性虫垂炎で入院して、図書館の謎を亨志に託す。
草加先生:学院の英語の先生。病気で入院中のおばあちゃん先生。詩人でもある。
ゆうじくん:イースターの礼拝にやって来た子ども。
廣原さん:図書館の司書。日曜日に早めに図書館にやって来る。
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Category: (2)図書館の手紙(完結)

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【雑記・旅】今年の津軽 

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今年は大した観光もしなかったので、記事はなしにしようと思ったのですけれど、お決まりですので少しだけ。
今年は何をしていたのか……飲んで、温泉に入っただけだったものですから^^;
でも、戦利品は公開しなくちゃ!(いや、そんな必要はないだろうけど……)

いかせんべいは、いつもお世話になっている金木のSさんからのお土産。
謎のドリンクは「シジミエキス」……「飲む前に飲め」と書いてある。
林檎の蜂蜜に、大好きな紅玉のジャム、そして例の赤い林檎のジャム。
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室内の鉢植えの写真で申し訳ないですが、こちらが赤い林檎の花。
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そのリンゴジュースはこんな感じで、本当に赤いのです。

そして、日本二大シジミの産地のひとつ・十三湖。
帰ってから毎日、シジミ汁です(*^_^*)
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ちなみに、こちらは津軽三味線酒場のシジミ汁。
見えにくいですが、ものすごくシジミが入っている(*^_^*)
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こちらはシジミごはん(*^_^*)

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東北のお土産と言えば……このチーズケーキ「八甲田」
今年はチョコレートバージョンと焼きチーズケーキバージョンが増えていました。
「らぷる」は鹿内せんべいというせんべい屋さんのお菓子。
中に焼き林檎が入っていて美味しい。
毎年、大量に買って送って、みんなに配ります。

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三味線の形のストラップとか、なぜか林檎を抱いたくまもんとか、ヒバの香り袋、こぎん刺しの小さな袋、輝石で作った勾玉などなど。友人たちへのお土産です。

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こちらは三味線絡み。
三味線柄のハンカチ、大会に行ったら購入しておく三味線の糸、左端の薄緑のものは「指擦り」……これがないと、三味線が弾けません。左手の人差し指と親指に嵌めて、これでスムーズに竿で指を移動させることができるのです。
それから今年初めて購入の「忍び駒」……これはいわゆる弱音器。夜中に練習できるように……
これで、夜中にカラオケボックスに行かなくても済みます^^;
缶バッジは、白クマが三味線を弾いている、可愛いもの。

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そしてこちらは……今朝のうちの花たちと一緒に写っているのは、毎年、購入するリンゴジュース。
今年はもう「紅玉」ジュースが売り切れで、ものすご~~~く残念がっていたら(毎年、紅玉ばっかり買う^^; だって、好きなんですもの。あの酸味が好き。フジとかは甘すぎて……)、お店の人が「お得意さんのために少しだけ残してあったもの」を1本、分けてくださったのです。
いえ、私も一応お得意様? 毎年、ここで買っているのですから。
なにはともあれ、貴重な1本、ありがとうございます!!! 
ちなみに花は、今年の一番薔薇です。オレンジは名前が分かりません^^; 白はアイスバーグ。

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あ、こちらは「わさお」です。
なぜか、今年も会いに行ってしまいました。
鯵ケ沢の某イカ焼きの店の「ぶさかわ」犬。
丁度店じまいで、今からおうちに帰るところでした。
わさおそっくりのお母さんが運転する軽トラに乗って、ご帰宅です。……疲れてるみたいね。

さあ、ちょっとだけ津軽の旅の写真館、ご案内いたします。続きを読む、をクリックしてくださいね。
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Category: 旅(あの日、あの街で)

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【図書館の手紙】(3)空行く雲に啓示あり 

【図書館の手紙】その(3)です。

図書館の本の間に挟まれている手紙。
それは『学院の七不思議』に語られる、結ばれなかった恋人たちの秘密の手紙だったのか?
20年も前に交わされたはずの手紙が、なぜまた図書館の本に挟まれているのか?
一方通行で、日付もばらばらの手紙の意味は?

(1)(2)を合わせても短いお話ですので、よろしければ始めから読んでやってくださいませ。
(1)清明の候、君を想う
(2)流るゝ川に言葉あり

≪登場人物≫
富山享志:私立幹学院に通う中学生。責任感は強いが、面倒なことを押し付けられやすい級長。
相川真:中学2年生で幹学院に編入した帰国子女。一人でいるのが平気な元苛められっ子。
杉下萌衣:クラスの図書委員の女の子。急性虫垂炎で入院して、図書館の謎を亨志に託す。
草加先生:学院の英語の先生。病気で入院中のおばあちゃん先生。詩人でもある。
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Category: (2)図書館の手紙(完結)

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【雑記・旅】 そうだ 京都、行こう。(2) 

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『そうだ 京都 行こう。』というのは、JR東海のCMのキャッチコピーですね。
このCMが始まったころ、2年半ほど埼玉に住んでいたので、いつも京都が懐しかったことを思い出します。
お時間があれば、ちょっと覗いてみてください→JR東海キャンペーンCM

1993年の三千院、伏見稲荷大社などは画面にも動きがあって、当時このCMには心が引きつけられたものです。
1994年の高雄、北山も素敵なCM。
(ちなみにこのお寺、どこかよく分からないんです。Yahoo知恵袋で志明院だと回答されていましたが、山門も石段も全然違いますので、志明院ではありません。途中で映っているお堂は高山寺の金堂によく似ているのですけれど……茅葺のお寺……? 京都には拝観できないお寺もいっぱいあるし……)
1997年の詩仙堂も好きなCM(『清明の雪』のモデルにしたお寺です)。

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さて、こちらは大原の三千院。
拙作『奇跡を売る店』で仏師の凌雲が大原の里に庵を構えて住んでいる、という設定なので、久しぶりに訪ねてみようと思ったのです。
大原は観光地の中では北の外れですが、雲ヶ畑を訪ねた後ではとても立派な観光地に思えます。
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門を入ってお参りします。満天星躑躅はもう満開。
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窓枠から見る光の中の石楠花は光り輝いて見えます。
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お庭は作られた部分もあるのですが、半分は自然の山の姿を残しているようでもあります。
石楠花がやはり光を跳ね返しています。
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大きな株もありますが、下のように苔むした庭にまだ若い株もみられます。
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石楠花と、紅葉の若葉のコントラストも綺麗です。
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池に映る石楠花も綺麗。まるで花が自分の姿にうっとりとしているようにも見えます。
あれ? それって、水仙のことでしたっけ?
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庭の中には花や木のための供養塚があります。
杉の木が真っ直ぐに伸びている中、石楠花の花が供えられているように暖かく見えます。
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このお庭の見事さを作っているのは人の手でもあります。
こうして、終わることのない作業を日々繰り返しているのですよね。
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そう言えば『そうだ 京都、行こう』の中で、散った紅葉を掃くのが大変だろうと聞く人に僧侶が答えていました。
「時間はいくらでもありますから」
その時間を何に使うのか、人の生涯って短く儚くて、そしてまたこの自然の営みの中では果てしなく長い。
掃いても掃いても散ってくる紅葉、抜いても抜いても生えてくる雑草。
それでも、永遠に目的地の見えない作業を続けることを無駄とは言わない。
こうして、果てしなく長い、悠久の時の中に自分を置くことができるのですね。
このひと時を、どう感じるか、それは自分次第なのかも。

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黄緑の葉と黄色い花が光の中では区別がつきません。
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近づいてみると、光を照り返した花は、黄色じゃなくて黄金です。

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苔の碧と紅葉の若葉の翠の中で手を合わせ、仏に見守られている自然の風を感じるひと時です。

門の前の道は……観光地。
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抹茶とバニラのソフトクリームを舐めながら歩いていると、シャガの花が細い川の流れに沿って咲いています。
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車道から覗くと、こんな鳥居が見えたり。
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道に面した小さな祠。敷地の片隅のようなので、個人のお宅のものでしょうか。
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チューリップも咲き乱れ。
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川の土手を、シャガだけでなく芝桜もまた覆い尽くし。
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細い川と、民家の間を抜けていく。

こちらは寂光院のお庭の……海棠桜でしょうか。
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最後に寂光院を訪れて、京都の1日旅行を締めくくりました。
寂光院と言えば、尼僧のお寺。何年か前、消失したお堂は新しくなり、本尊のお地蔵さまも新しいお姿になっていました。
だから、古い仏像ではないのですが、なにより現代にもこれほどの仏様を作り上げる仏師の方がいる、ということに感動します。
お地蔵様が身に纏われている衣服の布地の襞のひとつひとつが、今にも動きそう。

そう言えば、拙作で大和竹流(修復師)が言っていました。
昔はお堂の中は絢爛豪華な光の世界。本当は修復する時もキラキラにしてやりたい、と。
それは仏の世界は類稀なる美しさであるという、人間の願いの象徴なのだから。

だから、新しい見事な色彩の仏様も悪くない。
いえ、私も、ひなびた感じ、歴史の重さを感じたがる日本人ではありますけれど……
職人の技、特に祈りの籠められた手の跡を見る時には、新しさも古さも、関係ありません。

いいお天気で、桜の後の春の後半を彩る花たちが満開。
何よりも志明院の石楠花の桃源郷、そして三千院でもまた石楠花を堪能した1日でした。
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京都の旅にお付き合いいただいてありがとうございます(*^_^*)

Category: 旅(あの日、あの街で)

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NEWS 2014/5/3 津軽から 


新幹線とバスを乗り継いで青森の五所川原に来ています。
タブレットから記事を書いているので、不自由です(;_;)
今日は三味線酒場で大盛り上がり。
来て、飲んだだけ(^-^;)
明日は大会の応援、その後は鯵ヶ沢温泉です。
出場なしでこちらに来たのは初めてなのですが、すごい気楽。
久しぶりにゆっくりします。
5日には帰るという強行軍。
こちらは少し涼しいです。桜はもう半分散っている状態。
というわけで、少し更新はお休み?
また5日に京都記事の続きをお送りします。
あ、もうあさってだ。・・・・・・短い旅(>_<)
皆様もGW、楽しくお過ごしくださいね。

写真は赤いりんごの花。その名も『御所川原』
りんごの断面も赤いのです。

Category: NEWS

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【雑記・旅】 そうだ 京都、行こう。(1) 


先日、京都に行って参りました。
毎年、京都の観光地図からはみ出した雲ヶ畑、賀茂川の源流、鞍馬よりも貴船よりもはるかに北、携帯電話も圏外、電気もかなり不安、雪の重みで木が倒れてしまうような山の中を訪ねるのですが、3月ごろにお参りさせていただくことが多かったのです。

以前から、4月の終わりには石楠花が綺麗だと聞いていたのですけれど、上手く時間を作ることができなくて、今年初めてこの季節に訪ねることになりました。
いつもなら、この花の部分は緑だけ、なんですけれど、やっぱり花が咲くと世界が変わりますね。
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岩屋山という名前の通り、本当に岩の山なのです。
拙作の【清明の雪】では、このお寺・志明院を訪ねて、主人公たちが『自分たちの足元の地形』を思い、『汝の足元を掘れ、そこに泉あり』ってことになるのですけれど(舞台のお寺は、実は詩仙堂と曼殊院がモデル)、まさに自分の立つ地面を思いながら、山を登るのです。

ここは歌舞伎『鳴神』の舞台でもあります。
水の起源、龍神の伝説の残る場所。
司馬遼太郎先生が『街道をゆく』の中で、現代でも魑魅魍魎が住まう、しかし清浄なる気配が漂うと記した聖地。
山門を潜ると、緩やかで長い階段が本堂まで続いています。

龍神が閉じ込められていたという洞窟、そして賀茂川の源流ともなる水の滴る聖地、その場所に設えた舞台。
清水さんの舞台よりはるかに小さな舞台ですが、楓の新緑が光と共にすぐ目の前にあります。
風が通っていきます。

今回は、初めて天然記念物の植栽のある場所にも行くことができました。

何故天然記念物なのかというと、山自体が岩なので、土は岩の上に少ししかない「貧栄養」の土壌。
貧栄養のために木があまり大きくならないことが幸いして、自然に植物が新旧入れ替わり、他にはない植栽となって長い年月変わらぬ姿を保ち続けているということ。

一応、山の斜面に道が作られているのですけれど、その傾斜はかなり急。
登ること10分くらいで更に険しい斜面になります。ちょっと岩登り的な場所を登ること5分。
(と説明を受けましたが、実際にはもう少しかかるのでは?)

そこまで来ると、もう辺りは石楠花がいっぱい。
ミヤマツツジの明るいピンクも霞むくらいの石楠花の白やピンク。
目の高さにも、自分より下の山の斜面にも、見上げる道の先にも。
そして、最後は「石楠花のトンネル」をくぐって行きます。
本当にトンネルなのです。花のトンネルの下を潜るって、本当に贅沢だと思いませんか。

先に登った方が「桃源郷のようでした」とおっしゃっていた石楠花の花園。
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(こちらは山門前の石楠花です)

頂上にはお不動様がおられます。
そしてその先に、少し地面の岩が露出したところがあって、うねった岩はまさに龍の背のようです。
低い木々の植栽は、風を通してくれます。そして目の高さには咲き乱れる石楠花。

このお寺、山門から先は写真はNGなのですが、だからこそその場の空気を本当に楽しむことができるのかもしれません。
許可を頂いて、少しだけ撮らせていただいた写真。
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そしてこちらは、樹齢400年の椿。見事な大木です。
(この椿のエピソードは、【清明の雪】の中でも使わせていただきました(^^))
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さて、お寺を後にして少しだけ山を下ります。
司馬遼太郎先生が「魑魅魍魎が住まう」と書かれていた『結界』との境界線は、小さな橋なのですけれど、この橋のたもとに小さな店があるのです。
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いつもやっているのかどうか、よく分からなかったお店。
いや確かに、これまで私が行った時は閉まっていたような。
多分、石楠花の季節で、休みの日だったから、開いていたのかしら。
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お蕎麦を食べました。
間口は小さいのに、奥行きがあるというのは京都のお店のお約束。
写真の右手は縁側のような店の廊下、そして川。
向かいには、やっているのかどうか不明の料理旅館。
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本当に小さな集落ですが、ここはその外れ。
確かに、今でも「魑魅魍魎さん」が闊歩していそうです。

さて、冒頭の蝶と芝桜は、この後訪ねた大原の里で撮ったもの。
(うぅ。アップしてから気が付いた……蝶々のお腹のところ、やっぱり気持ち悪い(;_:)もともと芋虫だった部分(;_:)写真は一瞬の見事な瞬間だったと思ったのに((+_+)))

この日は、この後、少し南に戻って、東へ車を走らせ、大原へ。
大原も大概京都の外れですけれど、雲ヶ畑に比べたらすごい町に見える^^;

次回は大原をご案内いたします。→【そうだ 京都、行こう。(2)】へ
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Category: 旅(あの日、あの街で)

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