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コーヒーにスプーン一杯のミステリーを

オリジナル小説ブログです。目指しているのは死体の転がっていないミステリー(たまに転がりますが)。掌編から長編まで、人の心を見つめながら物語を紡いでいます。カテゴリから入ると、小説を始めから読むことができます。巨石紀行や物語談義などの雑記もお楽しみください(^^)

 

【迷探偵マコトの事件簿】(12) トモダチのわすれもの 

『迷探偵マコトの事件簿』、事件を解決しているのではなく、いつも自分が事件を起こしているマコトですが、今回はお盆にちなんで亡き人を想う物語をお送りいたします。
登場人物は(いや、登場犬物かも)こちらをご参照ください→(5)ちょっと切ない事件簿
重要なアイテムとして登場するのはオニキス。石です。まるで『奇跡を売る店』シリーズのようですね。
オニキスオニキスペンダントトップ2
まっくろなオニキスが、こんなふうにアレンジされているものをイメージしています。

大事な人を想う時間となれば幸いです。

<登場人物>
マコト:茶トラのツンデレ仔猫。大きくなったら豹になるつもり。飼い主のタケルがお仕事で忙しいので、いつもひとりでお留守番をしている。
タケル:ちょっぴりSなマコトの飼い主。でも本当はとても優しい。
トモダチ:亡くなった老犬。飼い主が死んでしまって取り残され、最期を看取るためだけにタケルが引き取っていた。



【迷探偵マコトの事件簿】(12)トモダチのわすれもの

[SCENE1] ぼくの「おもいでだま」

タケルは今日もおでかけ。ぼくはひとりでおるすばん。
でもね、ぼくこの頃ちょっとだけだいじょうぶなんだ。
タケルにはないしょだよ。
あのね、ぼく、宝物があるの。

このあいだ、ベッドの下で見つけたんだ。
銀の籠みたいな飾りの中に、まっ黒な、まあるい玉。
ころころ転がしてみたら、ふしぎなことが起こったんだ!

とっても懐かしい匂いがするんだよ。
会ったことないけど、ママの匂いってこんなのかなぁ?
ねこまんまを作ってくれてるタケルの後ろ姿がうかんだりもするの。
いっしょに『半にゃライダー』見てるような気持ちになったり。
モノレールに、ぼくとタケルがならんで乗って、お空に手をふってるとこが見えたり。
センパイといっしょに布団基地にもぐっている感じがしたり。
それからね、トモダチにも会えたんだ!
トモダチのおっきなお背中の上で、ぼく、上がったり、下がったり、落っこちたり。

これ、まほうの玉なのかも。
ぼく、タケルにも見つからないように、こっそりベッドの足のすみっこに隠してるの。
だって、もしこれを見たら、タケルもきっとほしくなると思うんだ。
でも、これはきっと、がんばってひとりでおるすばんしてるぼくへの神さまからのプレゼントだよね。

とくにきれい好きのおばさんにはみつからないようにしなくちゃ。
捨てられちゃったら大変だもの。
だからいっぱい転がしたあとは、またこっそりベッドの足のすみっこに、おばさんにぜったい見えないようにかくしておくの。

ぼくは今日もころころ、まあるい黒い玉をころがしてみる。
ころころ、ころころ、ころころころころ。
ころころ、ころころころ、ころころ。
そうしたら、ぼく、さみしくないんだ。
ママの匂い……タケルの匂い……布団基地の匂い……トモダチの匂い……

トモダチ、今はお空にいるのかな。
ぼくは前足でまっくろの玉をなでてみる。
なでてみたら、あったかいトモダチを思い出すよ。
トモダチのせなかで、上がったり、下がったり、下がったり、上がったり……
ぼく、これ「おもいでだま」って呼んでるんだ。

……あれ?
ぼくはびっくりして飛びのいた。
今、何か見えたね?
ぼくはじっと「おもいでだま」を見て、それから辺りを見回す。
なにもいない。

……ぼくはゆっくり近づいて前足でちょんちょんしてみた。
「おもいでだま」は、周りを囲む銀のかざりできらきら、きらきら。
きっと光がはんしゃしたから、何か変なものが見えたんだね。

でも……
いっしゅん、おじいちゃんと小さい女の子が見えたんだ。
もしかして、おばけ?
それとも、うちゅうじん?
でも、カッパ寿司のこまーしゃるに出てるのとはちがって、ふつうのおじいちゃんと女の子だったから、うちゅうからきたのでも、立体ほろぐらむでもないよね。

と、その時。
とつぜん、おへやのドアが開いた。

わ!
ぼくはあわてて「おもいでだま」の上に乗っかった。
おなかの下にかくして、知らん顔をする。

……タケルだ。
み、見つかったかな?
ぼく、おじいちゃんと女の子のおばけ?にびっくりしてて、タケルが帰ってきたの、気が付かなかったよ。

でも、時すでにおそし、だった。
タケルはぼくの首っこをつかまえて、抱き上げた。
ぼくは床を見下ろす。
床の上では「おもいでだま」がぽつん、と光っていた。
真ん中は黒く、まわりは銀できらきら。

……タケルに見つかっちゃった。ぼくの宝物。
ぼくはちらっとタケルを見る。
タケルは「おもいでだま」をつまみ上げる。不思議そうにそれを見つめて……ポケットにしまっちゃった!

ぼくはがっくり。
そうだよね、タケルだってやっぱり欲しいよね。
でも、ぼくの宝物だったのに……

それからタケルはぼくを車に乗っけた。車の後ろには釣り道具。
わぁ、海に行くんだね!
「おもいでだま」は取られちゃったけれど、海に行くのならいいや。
そのかわり、おさかないっぱいとってね!


[SCENE2] 大事な人が帰って来る日

でも、タケルは釣りに行く前に、花屋さんに寄って、お花を買った。
あれ? 海じゃないの? どこ行くの?
たどり着いたのは、海じゃなくて山。
四角い石がいっぱい並んでた。

いい匂いのする木を燃やしたにおい。
石の前には、お花とか、お菓子とか、おいてある。
タケルはバケツに水を入れる。
キラキラ、水が光ってバケツの中に落ちていく。
タケルはバケツを持って、たくさんの石の中のひとつに向かった。

ぼくはトコトコ、ついて行く。
タケルは石の周りの草を抜いたり、石のくぼみをきれいに水で洗ったりしておそうじをする。ぼくは小さな虫が飛んでいるのを見て追いかける。
マコト、おはかで虫をいじめちゃだめだ。
……おはか?
ぼくは言われた通り、虫を追いかけるのをやめて、タケルといっしょに草をぬくお手伝い。
それからタケルは、石のくぼみに水を入れて、お花を入れた。
きれいだね。
それから細いムラサキの棒に火をつける。けむりが風に流れる。
タケルは何も言わないで、じっと四角い石を見つめていた。
ぼくもよこに座って、タケルを見てから石を見上げる。
字が書いてある。ねこには読めないけれど、きっと大事なことが書いてあるんだね。

おぼん、なんだよ。
死んだ人が、帰って来てくれるんだ。だから、今日はお迎えに来たんだよ。
ふ~ん。
死んだ人って、お空に行っちゃって、もう帰ってこないのかと思ってた。

それからやっと海に行く!
海は「おもいでだま」の銀のキラキラよりももっとキラキラしてた。
風が吹いてる。太陽はとってもあつい。キラキラって海の上で光る。
いっぱいいっぱい光る。
海の上をお船がすべってく。
タケルはイスに座って、ぼうしをかぶって。でも今日はどうしたわけか釣りばりの先っちょにエサのミミズをつけないんだ。
エサがなくてもおさかながとれるのかなぁ。
タケルはエサの代わりに、ビンから水を海にこぼした。
おさかなが集まって来るのかな?
ビンには『田酒』って書いてあるよ。たんぼのおさけ?

いつも海に釣りに来たら、おさかなが釣れるまで、ぼくは待ってるの。
タケルからちょっとはなれたところで影ふみごっこ。
ぼくは自分のしっぽを追いかける。
それからトリさんの影を追いかける。
しっぽにも、トリさんにもぜんぜん追いつかない。
くるくる、くるくる。目が回ったらきゅうけい。

時々人が通りかかると、ぼくはあわててタケルのところへ飛んでもどる。
タケルのかげからそっと人が通り過ぎるのを確かめて、いなくなったらまたタケルからちょっとはなれて、くるくる、しゅわっ。くるくる、くるくる。
車の音が聞こえたら、またタケルのところへ飛んでもどる。
タケルのかげからそっと車の音が聞こえなくなるのを待つ。
海の音だけになったら、またタケルからちょっとはなれて、くるくる、くるくる。

でも今日は、タケルはつり針にエサをつけないで釣り糸をたれる。
それから、思い出したようにポケットからぼくの「おもいでだま」を出してくれた。
ぼくの前に置いてくれる。
わぁ、タケル、ありがとう!
ぼく、タケルが取っちゃったのかと思った。

だからぼく、今日は「おもいでだま」をころがす。
ころころ、ころころ、ころころころ。
海に落っこちないように、タケルから少し離れたところで、ころころころ。
人が通りかかったら、いそいで「おもいでだま」に乗っかって、見つからないようにかくす。
だって、だれかにとられちゃったらたいへんだもの。

ころころ。ころころ。ころころころ。
海の風がとっても気持ちいいけれど、ちょっと暑くなってくる。
タケルは釣りをしているというよりも、何か考えごとをしているみたい。
遠く遠く、海の向こうのほうを見てる。
ぼくはころころ、ころころ、ころころころ。

その時。

ぼくはあわてて「おもいでだま」の上に乗っかった。

……


[SCENE3] 探しびと・探しもの

またあのおじいちゃんと女の子だ。
女の子は、おじいちゃんとつないでいた手をはなして、ぼくのほうへ走ってきた。
ぼくは目をまん丸にして女の子を見上げる。
白いワンピースとむぎわらぼうし。風とははんたいの方向に、スカートがひらひらゆれている。
女の子は近付いてきて、じっとぼくを見る。

そして、がっかりしておじいちゃんのことろへもどっていった。
ぼくはじっと様子をうかがう。
あの人たちも「おもいでだま」が欲しいんだ。
これはぼくのだから、だれにもあげない。
おじいちゃんと女の子がいっしょにちかづいてきた。
ぼくはもっとしっかり、「おもいでだま」にはりつく。

……もし、その玉を見せてもらえませんかの。
おじいちゃんがぼくに話しかけてきた。
ぼくは目を合わさないようにしてうずくまる。

……おじいちゃん、この子はねこだよ。フジマルじゃないよ。ぜんぜんちっさい。
……しかし、わしがフジマルにつくってやった玉とそっくりだ。もしかしたら、フジマルの玉かもしれない。
ちがうよ。これ、ぼくのだ! フジマルのじゃない。
だいたいフジマルって、だれだよ!

……もし、ちいさいねこさん、実はわれわれはフジマルとはぐれてしまっておるのです。われわれはフジマルを迎えに来たのだが、見つからない。われわれとフジマルを引き合わせてくれる目印は、わしがフジマルに作ってやったオニキスの玉だけなのですよ。もしかして、フジマルをご存じじゃありませんかね。

フジマルなんか知らない!
これ、ぼくのだ。ぼくが見つけた「おもいでだま」。
タケルがいない時も、これがあったら、ぼく、さみしくないんだ。
ころころ、ころがしたら、タケルが近くにいるみたいだし、会ったこともないけれどママの匂いがするし、それに布団基地とかトモダチのこととか思い出して、ぼく、さびしくてもがんばれるんだ。
だから、神様からぼくへのごほうびなんだ。
だから、これ、ぼくのなんだ。

……フジマルはまだこの世をさまよっておるのです。いつまでもフジマルが三途の川にやってこないので、われわれはこの世にフジマルを探しに来たのですが、そばにいたとしても目印がなければ魂を見つけることができない。われわれはお盆の間しかこの世に来ることはできない。だから、時間が限られているのです。

何のことか分からないよ!
あっち行って!
ぼくの「おもいでだま」、取らないで!

タケルは今日、おさかなをつかまえるつもりじゃなかったみたい。
少しの時間、海を見たかっただけなのかも。
いつもよりもずっと早くに釣りはおしまい。
お盆だからね、殺生はいけないんだ。ちょっと海にご挨拶をしにきただけだよ。今日はお前も、缶詰でいいかな。
うん、ぼく、カンヅメもきらいじゃないよ。

タケルが作ってくれたカンヅメのねこまんまを食べて、ぼくは「おもいでだま」をころころしてから、タケルを見上げた。
タケルは「おもいでだま」をつまみ上げて、ベッドの上のぼくのお気に入りの場所に置いてくれた。
ぼくは「おもいでだま」を抱いてねむる。
今日はトモダチの夢を見るんだ。

…………

あれ。ここはどこだろ。
ぼく、夢の中かなぁ。
知らないおうちだ。
……誰かいる。……おうちの中を歩いてる。
おばけ?
あ、そうか。夢の中だもんね。
ぼくはまっくらな家の中を歩きまわっている影の正体を見ようと、じっと目をこらした。
何か探してるみたい。
くんくんと鼻先を鳴らすような音がしている。

……!

トモダチだ!
ぼくを上に乗っけてくれてた大きなからだが見えた!
ぼくはあわてて隠れた。
なんでだろ。ぼく、何だか見つかっちゃいけない気がしたんだ。
トモダチはずっとくんくんと音を立てながら、何か探してる。
それから顔をあげて、悲しそうな顔をした。

トモダチはいっしょうけんめい、おへやの中で何かを探して。
それから家の外に出て行った。
お部屋の中に黒い大きなハコ。いい匂いの木の燃えカス。
そのハコの前に写真がかざってある。
トモダチと、あのおじいちゃんと女の子。
……ここはトモダチの家だったんだ。
今はもうだれも、住んでいないみたい。

写真の中のトモダチはくびわをしていて、そこにあの「おもいでだま」が埋め込まれていた。
ぼくはトモダチを追いかけて庭に出てみた。
トモダチはお庭にある小さな小屋の中に入って、ごそごそ、中を探している。
……犬小屋なんだね。そこには、下手くそな字でなまえが書いてあった。

……ぼくは目をさました。
どきどきしてた。
タケルはすやすやと眠っている。
お部屋はまっくらで、ぼく以外、だあれもいないみたいだった。
ぼく、「おもいでだま」をぎゅっとにぎりしめた。
トモダチ、これを探してるんだ。
トモダチの名前は、フジマルっていうんだ。

でもこれ、ぼくが見つけたんだから、ぼくんのだ。
ぼく、これがあったら、ひとりでおるすばん、がんばるもん。
だから、これ、……ぼくんのだ。

ぼくは「おもいでだま」をベッドの足のうらにかくした。
だれにも見つからないように。
ぼくがころころしなくなったので、タケルはちょっと不思議そうだったけれど、何も言わなかった。

それから毎日、ぼくは探しものをしているトモダチの夢をみた。
トモダチは探しものが見つからなくて、とても悲しそうだった。
でもぼくは、やっぱりこれ、返したくないんだ。

それから何日かたって、タケルはもう一度、石のいっぱいあるところに行った。
今日でお盆はおしまいだから、お見送りに行くんだって。
ぼくはとぽとぽついて行く。
……ねぇ、タケル。ここにはタケルのだいじな人がいるの?
タケルは何も言わないまま、帰りにまた海に連れて行ってくれた。


[SCENE4] あったかいキモチ

タケルはじっと海を見ている。
それから思い出したようにポケットから何か出して来て、ぼくの前においた。
あ。「おもいでだま」。
かくしてあったのに、持ってきちゃったの?
見つかったら、取られちゃう! 
ぼくはあわてて「おもいでだま」の上に乗っかった。

周りを見たら、少しはなれたところでじっとぼくを見ているおじいちゃんと女の子と目が合っちゃった。
……やっぱり、あれ、フジマルのだよ!
女の子が言った。
ちがうもん! ぼくんだもん。……ぼくんのだ。
ぼくにポケットがあったら、うまく隠せるのに!
ぼくは「おもいでだま」を隠したおなかにきゅっと力を入れた。

……もし、ちいさいねこさん。われわれは今日でもうあの世へ帰らなければならないのです。もしフジマルに会ったら、われわれがずっと三途の川の向こうで待っていると、お伝えください。
ぼくは耳をふさいだ。

その時。ふいにタケルがぼくの頭をなでた。
……でも、俺にはまだお前がいるんだな、マコト。
タケルは遠く、海の向こうを見ている。
タケル、だれか大事な人をお見送りしたの?
その人はまた遠くへ帰っちゃったの?

ぼくをなでてくれるタケルの手があったかい。
ぼくはタケルといっしょに海を見る。キラキラ、キラキラ。
波は上がったり、下がったり、下がったり、上がったり。
まるでトモダチの背中みたいにぼくを運んでくれる。

……トモダチ、おじいちゃんと女の子が遠くに帰っちゃったら、ひとりぼっちなんだ。
ひとりぼっちで、ずっと探さないといけないんだ。
これがないと、おじいちゃんと女の子に会えないんだ……
ぼく、ぼく、トモダチの大事なものをとっちゃったんだ……
でも、ぼく……

……まだ間に合う?

ぼくはタケルに言った。
あのね、トモダチんちに行きたいんだ! それでね、ぼく、この「おもいでだま」をトモダチに返さなくちゃ! でないと、トモダチがね、だいじな人に会えなくなっちゃうんだ! ぼくのイジワルのせいで、トモダチが悲しんでるんだ! だから……!
今日でおぼんがおわっちゃうんだ!
トモダチの大事な人たちが、行っちゃうよ!

……でも、ぼく、ねこだから、タケルにうまく説明できない……

ぼくはいぬのまねをしてみたり、「おもいでだま」をころころしてみたり、あれこれやってみた。タケルはふしぎそうにぼくを見ていたけど、そのとき「おもいでだま」がきらって光ったんだ。
タケルはひかりの中をじっと見ていた。
そして、あ、という顔をして「おもいでだま」を拾い上げ、太陽にかざしてゆっくり回しながら何かを確かめると、ぼくを車に乗っけて走り始めた。

……そこは夢で見たとおりの家だった。
トモダチはひとりぼっちでさみしそうに家の庭にすわっていた。
タケルがぼくの前に「おもいでだま」を置いてくれた。
トモダチがぼくを見た。
……ごめんね。きっと怒ってるよね。
でも、ぼく、ちゃんとあやまって、これを返さなきゃ。

ぼくはころころと「おもいでだま」をころがして、トモダチの前に行った。
……あのね、ぼくね、えっとね……ぼく、ぼく……
ぼくはトモダチを見上げた。
……ほんとうにごめんなさい! これがあったから、ぼく、さみしくなかったんだ。だから、ぼくのものにしたかったの。言えなくて、かくしちゃってて、ごめんなさい!

……

おへんじがない。きっとトモダチ、怒っちゃってるんだ。
ぼく、わがまましてたんだもんね。

そのとき……

ぽん。
トモダチのおっきな手が、ぼくのちっちゃい頭にやさしく乗っけられた。
それから、その手は、そっと、とっても大事そうに「おもいでだま」の上に乗っけられた。

きらっ!!!
わぁ!
突然、「おもいでだま」から虹いろの光が飛び出した!
あたりは光色に染まって、太陽が落っこちてきたみたいだった。
フジマル!
ひかりの中からあの女の子が走ってくる! おじいちゃんもいっしょだ!
フジマル!
トモダチが立ち上がった。わん! って吠えて、大きなしっぽをせいいっぱい振った。

わん! わん、わん!
フジマル! フジマル!

……わぁ、よかった。
お盆が終わる前にみんながまた会えて。トモダチがひとりぼっちじゃなくなって。
おじいちゃんと女の子と、トモダチはお互いを抱きしめあった。
それからぼくを振り返る。
……ねこさん、ありがとう。
……ううん。あのね……ぼく、いじわるしてて、ごめんなさい。
……なに、こうして無事にフジマルに会えたのだから、もういいんだよ。ちいさいねこさん、本当にありがとう。
そう言って、三人でいっしょに光の輪の中へ歩き始めた。
ぼくはじっとその背中を見送った。

ばいばい、トモダチ。ばいばい、ぼくの「おもいでだま」。

と、その時だった。
光の中から、ころころころころころ……
あれ、「おもいでだま」だ!
ころころころころ、「おもいでだま」は転がってきて、ぼくの前で止まった。
ぼくは返ってきた「おもいでだま」をじっと見つめる。

……ありがとう、小さいともだち。これ、だいじにしておくれね。
「おもいでだま」から、トモダチの声が聞こえたような気がした。

あのね、ぼく、分かったんだ。
さびしくてもがまんできるのは、またちゃんとタケルがぼくのところに帰って来てくれるって分かってるからなんだ。
またちゃんと会えるから、なんだね。
だからぼく、ちょっとくらいさびしくてもがまんする。

ぼくは時々窓からお空を見上げる。
あ、ほら、トモダチがいるよ! 真っ白な雲になって、ぼくを見てくれてるんだね。

それでもやっぱりさびしい時は、ぼくは「おもいでだま」をころがす。
ころころ、ころころ、ころころころ。
楽しいこと、幸せなこと、だいじな人へのキモチ、そんなのがいっぱいつまってる。だからころがすたびに、あったかい場面が転がり出してくる。
ママの匂い、トモダチの匂い、タケルの匂い、それからぼくとタケルがいっしょにいる時のキモチ、トモダチのあったかいキモチ。

……ころころ、ころころ。ちょん、ちょん。
……ころころ、ころころ、ころころころ。ちょん。
転がしてから手を乗っけてみたら、ぼくはちょっとだけ強くなった気がした。



オニキス。その漆黒の色は迷いのない信念の象徴。
辛い時、苦しい時もあきらめず、前に進むための忍耐力や意思の強さを与えてくれる石。

(『迷探偵マコトの事件簿』(12)トモダチのわすれもの 了)


註) 『田酒』:青森県のお酒。
少しずつ、マコトもオトナになっていっているんですね。
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Category: 迷探偵マコトの事件簿(猫)

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