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コーヒーにスプーン一杯のミステリーを

オリジナル小説ブログです。目指しているのは死体の転がっていないミステリー(たまに転がりますが)。掌編から長編まで、人の心を見つめながら物語を紡いでいます。カテゴリから入ると、小説を始めから読むことができます。巨石紀行や物語談義などの雑記もお楽しみください(^^)

 

【物語を遊ぼう】16.名作を書き換えよう 



「このお手てにちょうどいい手袋を下さい」
すると帽子屋さんは、おやおやと思いました。狐の手です。狐の手が手袋をくれと言うのです。これはきっと木の葉で買いに来たんだなと思いました。そこで、「先にお金を下さい」と言いました。子狐は素直に持ってきた白銅貨を二つ帽子屋さんに渡しました。帽子やさんはそれを人差し指の先にのっけて、カチ合わせてみました。
しかし、白銅貨からは何の音も聞こえません。やはり木の葉のお金でした。

子狐が手袋を買いに帽子屋さんにやってくるシーンです。
最後の一文だけは、原作通りではありません。
私ったら、何で狐が本物の白銅貨を持っていたんだろ? って天邪鬼な疑問を抱いておりまして。

さぁ、この先をどうしましょう?


久しぶりに『物語を遊ぼう」シリーズの記事を書くことにしました。
物語を練っている時、行き詰まることってありますよね。あるいは書きたいけれど、ストーリーが全く思い浮かばなくて焦っちゃう。
そんな時に難しい「小説の書き方」のノウハウを考えて思いつめると、ゴルフで言うところのイップス、つまり固まってしまって手が動かなくなってしまうことがありますよね。
実は私もノウハウ本を結構読んでみたことがあるのです。一度は文章教室に行ってみたことも(ひやかしだったので、たった半年しか続かなかったけれど^^;)。
確かにそれが全部できたらすごい小説が書けるよなぁ~っていつも思っていましたが、実際にはノウハウ本を読んだら余計に書けなくなってしまいました……ダメな私。物書きのプロになるような人は、このノウハウをきちんとできる人、なんでしょうね。
そう、高みを目指す人は、この「筋トレ」に耐えなければなりません!(小説を書くのは筋トレ、というのも先生の名言)

でも、そんな高みを目指しているわけではない、一介のアマチュア物書きにも、スランプ、あるいは、書く気が全くしない時もあるのです。


そういう時は気分転換にこういう遊びをしてみてはいかがでしょうか。
いえ、実はこれ、文章教室で教えてもらったのです。あれこれやった中で一番面白かった授業でした。
もっとも、その時に使った「名作」はもっとお堅いものでした。聞いたこともないような、日本純文学で、そもそも元のラストを知らないという作品だったり。

ここで言う書き換えは、登場人物の名前や設定を借りて自由な物語を展開するというタイプの二次創作とは違って、基本的にストーリーの途中まではもとのままで、途中~ラストを変えてしまうというものです。
一応ルールがあって、基本的には物語の途中までは原文のままで設定は変えない(自由枠アリ)、物語の流れに違和感がないようにする(原文の部分~改変部分の継ぎ目に違和感がないように)、などなど、いくつか決まりがありました。
だから自由度は思ったより低かったんですけれど。

でも、ここでは遊びですから、自分が気になっている「あの有名な」物語をいじくってみるのが一番いいですね。
悲劇が気に入らなければハッピーエンドに変えちゃう。
『ごんぎつね』なんて、それにぴったりじゃありませんか。
ごんが死んじゃうなんて! ってきっと皆さまも一度は思ったはず。
逆に、ご都合主義は気に入らないというのなら、「いつまでも幸せには暮せませんでした。なぜなら三年目には王子が浮気を……」ってことにすればいい。(そして昼メロへ……、いや、昼顔? あ、あれは浮気するのは奥さんの方か……)

そういう意味で大きく自由枠を広げて考えると……
「書き換えの名作」と言えば、ディズニーの『リトルマーメイド』ではないでしょうか。
私自身、『人魚姫』の物語については語りたいことがいっぱいあったりしますが……(なぜなら、真シリーズは(『人魚姫』+『源氏物語』)÷2なのです。ちなみに、息子の慎一の時代はロマン・ロランの『ジャン・クリストフ』、ラストのシリーズになるやしゃ孫の時代は映画の『麗しのサブリナ』)
それはさておき、海の中に暮らす人魚たちの世界という素敵な設定に目をつけたディズニー、でも悲劇的結末は夢の国にとってはNG。それならハッピーエンドにしちゃえ。
実に大胆な書き換えですよね。しかも大成功。楽曲の力も大きいですけれど。
ただ、ラストを大きく変えるときは、少し設定も変更・追加しなければならないことが多いようです。


実はこれ、scribo ergo sumの八少女夕さんが時々提案される企画(神話でタイトル、とか、地名でタイトルとか)に加えていただけないかしら、なんて思ったりもして。
書き換え部分だけでいい、あるいはアイディアだけでもいい、もちろん期限なし、って遊びです。
行き詰まった時にはぜひ、物語で遊んでみてください。


さて、冒頭の『手袋を買いに』の続きを書き換えてみましょう。


帽子屋さんは木の葉のお金と、寒さで震えている子狐の小さな手を交互に見つめました。
今日、帽子屋さんの家には小さな孫が遊びに来ていました。雪遊びで冷たくなってしまった孫の手に、新しい手袋をはめてあげた時のかわいらしい笑顔を思いだしたのです。これから大きくなっていく小さな孫の手は、どんな未来をつかんでいくのでしょう。
それはこの子狐の小さな手も同じです。
帽子屋さんは棚から子供用の毛絲の手袋を取り出してきて子狐の手に持たせてやりました。

やれやれ。
孫に新しい靴を買ってやろうと思っていたのに、しばらくはお預けです。
帽子屋さんは、明日には木の葉に戻ってしまっているに違いない音のしない白銅貨を、亡くなった奥さんの仏壇の前に置きました。
お前、今日は子狐が手袋を買いに来たよ。小さなかわいい手がすっかり冷たくなっていたから、つい新しい手袋をやってしまった。仕方ない、また明日、新しい手袋を編もうかね。
写真の中の帽子屋さんの奥さんはにこにこと笑っていました。

次の朝。
帽子屋さんは仏壇の前を見て驚きました。
何と、昨日子狐が持ってきた白銅貨を置いた場所にあったのは、木の葉ではなく、春を告げる白い花だったのです。
帽子屋さんはお店を開けました。夜のうちに雪は止んでいたのでしょう。もう子狐の足跡はありませんでしたが、向こうの山から子狐とお母さん狐のこーん、こーんと啼く声が聞こえていました。

さあ、新しい手袋を編まなくては。
こうしてまた、帽子屋さんの忙しい一日が始まりました。
春はもうすぐそこまで来ているようです。
(おわり)


あれ? このお話は、どうしてもハッピーエンドになりますね(*^_^*)
春告草=スノードロップ、です。でも、春になったら手袋要らないじゃん、って突っ込まないでね^^;
来年に備えるのです(#^.^#)
本当は「ありがとう」という花言葉の花を思ったのですけれど、カーネーションとかダリアとか、季節も何もかもおかしいし……冬のお話だけど、早春はあり、ということで。

ちなみにちゃんとした「筋トレ」としてやってみる場合には、文体や表現も元の物語に合わせて書くのです。どこから書き換えたのか、分からないくらいに。そうすると、表現なども工夫するようになって、文章のいいトレーニングになります。
ちなみに私、「こころ」でこれをやろうとして玉砕しました^^;

何はともあれ、物語は楽しまなくちゃ! 読むときも、書く時もね。
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この本(ダースベイターの子育て本)は……少し違いますけれど^^;
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Category: 物語を遊ぼう(小説談義)

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