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コーヒーにスプーン一杯のミステリーを

オリジナル小説ブログです。目指しているのは死体の転がっていないミステリー(たまに転がりますが)。掌編から長編まで、人の心を見つめながら物語を紡いでいます。カテゴリから入ると、小説を始めから読むことができます。巨石紀行や物語談義などの雑記もお楽しみください(^^)

 

オリキャラオフ会 in 北海道@また一緒に遊ぼうにゃ~!【浦河パラレル】(4)あの列車に乗って行こう 

シーズン通して見るのが大変なのでドラマは滅多に見ないのですが、ちょっと合唱部ドラマに嵌っています。というよりも、そのうち一人がヒールでなかなかいい味を見せてくれている間、かなり面白かったのですが、先日彼女が「寝返って」しまったので、ちょっと残念。
誰も知らないと思いますが、昔「赤い靴」というバレエドラマがあって、まさにトゥシューズに画鋲、なんていうイジメに主人公が屈せず頑張るという話でした。「キャンディ☆キャンディ」でも、イライザとニールといういういじめっ子がいたからこそ、お話は盛り上がったものでした。あの緊迫感はヒールの存在あってこそ。あの頃、ヒールはヒールに徹してくれたのですが、最近はそうもいかないようで。
というわけで、大海がちょっと合唱ネタを使いたくなったために、盆踊りでは皆さんに歌っていただくことにしました。
その番組でTHE BLUE HEARTSのTRAINTRAINを歌っていたのですが、これは私の好きな曲10本に堂々ランクインする名曲。じゃ、即席オフ会合唱団にも無理矢理歌っていただこうと。でもこの合唱の裏には、何かありそうです。幸生だけが知っているようですが、黒幕は誰? 目的は何? その答えは次回、即席最終回にて。
今回はまだ「悩める真」に愛の手を、の巻です。
え? 真がコトリに恋? そして、マコトはナギとミツルは「漫才と手品」をしていると思っているようです。
マコトよ、それは漫才ではなく、多分、ミツルは真剣だ。


オリキャラオフ会 in 北海道@また一緒に遊ぼうにゃ~!
【浦河パラレル】(4)あの列車に乗って行こう



8月10日のにっきのつづき。
 それから、今日はいそぽにまた会えました! いっしょにたくさんあそびました。アーサーあにきとエドワードあにき、それにポチもいっしょです。とってもたのしかったです。
 うぇるかむぱーてぃーがはじまりました。さいしょにレイさんとリーザさんとしじんさん(ましゅうこで会ったひとたち。おなまえ、おぼえました)が、ふぃっしゃーまんずわーふでやったようなおんがくとおどりをやりました。ぼくもいっしょにやろうと言われたので、おてつだいしました。おおさかのオバチャンがいないので、こんどはわりばしにはさんだ紙はもらえませんでした。
 ぼくはやっぱり何回もぺんだんとをさわろうとしたけれど、にげちゃいます。でも、いつかきっとつかまえます。
 それから、ふたごのキョウダイがてじなとまんざいをしました。目玉がとんでいました。つぎは、へいかとはくしゃくが、みたこともないおどりをおどりました。うたもうたいました。ユキちゃんもうたいました。せいたろーとまこと(ぼくじゃない方のまこと)がたいことしゃみせんをしました。だんごさんとちえさんもおどりにくわわりました。かわいかったです。あやのさんがときどきしゃしんをとりました。ことりさんはにがてだからと言って、おどりませんでした。
 あさってのぼんおどりでソーランぶしをおどるだけじゃなくて、うらかわの人に何かお礼ができないかということになりました。ユキちゃんが、みんなでうたおうといいました。ユキちゃんはこーらすぶなので、しどうすることになりました。かじぺたさんとエドワードあにきとアーサーあにきもいっしょにしゅつえんすることになりました。
 それから、ミツルしゃんが「だめ~」と言ったけど、みんなでいっぱい目玉をつくることにしました。ナギしゃんがぼんおどりの時に、てじなでとばしてくれるそうです。


「いや、コトリさんを紹介しとこうと思うてな」
 長一郎が真にコトリを引き会わそうと連れてきた。実際には、宴会があまり得意ではないと見抜いたから、息抜きにと誘ったのだろう。何しろ、通常の酒豪の域を越えている長一郎は、少々飲んだところで周囲への気配りを失うことはない。もっともそれは人間に対してよりも馬に対しての方が大きいのだが。

「実はさっき、お話したんですよ」
 そう長一郎に言ってから、コトリは改めて真に向き直った。
「改めましてコトリ、いえ、サヤカです。よろしく」
 コトリが右手を差し出した。
 真は手を後ろに隠し、作業衣で手を擦った。汚い手だと思われるのが少しだけ恥ずかしかった。だが、コトリはその真の手を取って強く握りしめた。

「今はコトリって呼んで欲しいの。でも、何だか、君には本当の名前を言っておきたいような気がして」
 コトリは何か事情を聞いたのかもしれないと思った。包み込まれた手から伝わってきたのは、コトリ自身が経験してきた複雑で哀しい想いと、それでも懸命に生きていた人の真摯で強い命の力のようなものだった。
「あの……」
「もう大概のことには驚かないから、心配しないで。だって、どう見てもみょうちくりんな二人連れと出会って、それにまたここに来たらどう見ても次元を越えてきたとしか思えない三人組がいて、何となく小さい人やら黒い服の女性やら見えない猫の気配も感じるし、何でもありかと思い始めてるの。これはもしかすると、ここにやって来たみんなそれぞれに、何かを教えているんじゃないかって」

 真はコトリのことが少しだけ気になっていたことに改めて気が付いた。べたな言い方をすると、一目ぼれのようなものかもしれない。でもそれは恋愛とは少し違う感情だった。
 宴会場になっている建物の方から、「お~い、長さん」と一太郎が長一郎を呼んでいた。長一郎は真にみんなに挨拶をしなさい、ひと風呂浴びてからでいいから、と言い残して戻っていった。

「ね。すごい空だね」
 コトリが牧場を覆う天を見上げて言った。
「天気が良ければ、もっとすごい星空が見えるんだけど」
「うん。でも、この雲の向こうにその空が広がっているってちゃんと信じられる。目に見えなくても、感じる」
 コトリが一歩自分に近付いたような気がして、真は思わず一歩反対側に移動した。恥ずかしいと思ってしまった。

「長一郎さんから多少の事情は聞いたよ」
 そう言ってコトリがもう一度空を見上げた。
「私は親父さんから、あ、私を救ってくれたバイクショップの親父さんなんだけれど、浦河に行って、孫を失った大事な友人の様子を見て来てくれって言われて来たの。親父さんも本当の孫を失ったから、きっと心配だったんだと思う。それで、ここに来て、長一郎さんの顔を見て直ぐに分かった。悲しいことって簡単には乗り越えられないし、忘れられない。それでも今を生きている人間は前を見て歩いていかなくちゃならないんだって」

 コトリは「私を救ってくれた」と言ったけれど、そのいきさつは何も語らなかった。だから、しばらく二人で遠い空と、その空が包み込んでいる牧場を見ながら、夜間放牧中の馬たちの静かな気配を感じていた。
 やがて、コトリが「さぁ」と振り切ったような声を出した。
「じゃ、私はみんなのところに戻るね。君も早くおいで」
 宴会は苦手だけれど楽しそうにしているみんなを見るのは嫌いじゃないと言って、コトリは戻っていた。真はもうしばらく牧場の風に吹かれていたが、気を取り直して風呂に向かった。


 ひと風呂浴びて宴会場に行くと、成太郎が待ってましたとばかりに近付いてきた。一緒にやろうという。真は渡された三味線の糸合わせをして、成太郎と一緒に『道南口説』から始めた。牧場の従業員で唄の心得のある者が唄い始める。

 オイヤ 私しゃこの地の荒浜育ち
 声の悪いのは親譲りだよ 節の悪いのは師匠ないゆえに
 一つ唄いましょ はばかりながら

 その後は、一足早い『ソーラン節』の踊りの稽古、それに「scribo ergo sum 音頭」、「小説ブログ「DOOR」音頭」、「ちいさなほんだな音頭」、「Court Café BLOG音頭」、「Debris circus音頭」、「茜いろの森音頭」、「かじぺたのもっとデンジャラス(そうかも)ゾーン音頭」、「クリスタルの断章音頭」、「コーヒーにスプーン一杯のミステリーを音頭」、さらに「無人島音頭」、「曲がり角ドン節」まで誰でも知っている馴染み深い曲を一通り演奏した。

 もう盆踊りが始まったような賑わいだった。唄えるものは唄い、唄が苦手なものは机や茶碗を叩いて御囃子を入れる。誰も行儀悪いとは言わない。
 テーブルには弘志やかじぺたさんが釧路から運んできた魚介類に、近所の人たちが持ってきてくれた野菜類、そして皆がお土産に持ってきてくれた食材が、いくら大人数でもこんなには食べれない、というほどに並んでいる。
 かじぺたさんが豪快に料理をしてくれたようだ。奏重を始め、牧場の女性たちももちろん手伝っているのだが、かじぺたさんが今では台所を仕切っている様子。
 逆に牧場女性メンバーは、普段台所に縛り付けられていることが多いので、久しぶりに台所からは半解放されたのかと思いきや、すっかり宴会モードの男性陣に替わって、牧場の仕事を手分けしてやることになっている。女性陣はやはり逞しい。

 テーブルには一太郎の持ち込んだ酒や、神戸から送ってきてもらった酒、コトリとダンゴが持ってきてくれたじゃがいも焼酎、それに未成年には千絵が持ってきてくれた美瑛サイダーが並んでいる。
 さらにデザートには、正志が持ってきてくれた柳月の三方六セットと、ナギとミツルが持ってきてくれたマタタビカステラと饅頭。ナギはまだマコトが食べるものだと信じていて、マコトを追いかけては食べさせようとするのだが、マコトは逃げ回っている。むしろ、レイモンド・リーザ・詩人が持ってきてくれたウニに興味津々だ。

 コトリとダンゴが持ってきてくれた熊よけの鈴は、長一郎が新しいものが欲しいと思っていたところだったので、とても喜んだ。レオポルドが持ってきてくれたマタンプシは、盆踊りの時に使おうということになった。
 それからマックスが持ってきた食われ熊はちょっとした話題になった。
「あ!」
 見るなり萌衣が声をあげた。享志も頷いている。

 実は、学院の院長室には生徒たちがあちこちでお土産に買ってきたものが並べられている。その中にいかにも北海道土産です、という熊の木彫りがあったのだが、それが鮭を咥えている熊ではなく、鮭に噛みつかれている熊だったのだ。
 誰もこんなものを見たことがないというので話題になり、一体これはどこからやって来たのかという話になった。院長もよく知らないという。そのうち、院長秘書が北海道の「マシヒサモト」という人から送られてきたということを思い出した。
 しかし、北海道のお土産物屋に問い合わせてみても、熊が鮭を咥えているならともかく、逆はないという。そのうち、誰かが「それは面白い」と言いだし、そのアイディアで商品を作ろうと思うと言った。
(注:本来、真たちは1970年前後に中高時代を送っております)
「これ、どこで売っていたんですか?」
 萌衣がマックスから聞き取りを始めた。そんな時の萌衣は生き生きとしている。

 三味線を弾きながら真は時々隣で太鼓を叩く成太郎を見た。ほんのたまに、成太郎の太鼓に何かノスタルジアのような寂寥のようなものが混じるのを感じるからだ。真の視線に気が付くと、成太郎は一瞬虚を突かれたような顔をして、それから頷く。
 大丈夫だよ、と言っているように見える。
 真は三味線を弾きながら、もう一度、先ほど自己紹介を終えたメンバーを見渡した。

 一番楽しんでいるのは飛び入りだと言ってやって来た謎の二人組だ。しかも意外にも踊りも上手いし、声もいいし、全くの場違いなイメージにも拘らず、完全にこの場に馴染んでいる。人柄なのだろうと思った。特に、マックスと名乗った、少し地味目の男性は女性陣の受けがいいらしい。誰とでも打ち解ける様子は見ていて羨ましい。
 さらに驚いたことに、猫のマコトは結構お囃子が上手い。それを見て、謎の二人組のうち「陛下」と呼ばれているディランと名乗った一見厳めしい男が猫を傍に呼び寄せ、「そちに褒美を取らせよう」と話しかけている。

 マコトはきょとんとしていたが、目の前にサーモンを置いてもらうと、「え? いいの?」と何度も確かめるように「陛下」を見て、それから、かじぺたさんが連れてきた二匹のウェルシュコーギーと幸生さんが連れてきたポチを呼んできて、一緒に嬉しそうに食べ始めた。何とも律儀な猫だ。
 今度は、犬たちが「陛下」に粗相がないか確かめに来たかじぺたさんに、「陛下」が「そなた、うちの宮廷料理番として働く気はないか」とリクルートしている。かじぺたさんの料理がいたく気に入ったらしい。

「陛下」の向かいにはくるくる巻き毛が可愛い中学生のナギが座っている。彼は、女性陣の母性本能を刺激しまくっているらしく、誰彼なく「これ食べない?」と料理やお菓子を持ってくる。しかし、ナギの視線はほぼ「陛下」にロックオンされている。何かとても気になるらしい。いや、確かに気になる人ではあるのだが。

 ナギのところにやって来る女性陣に「ついでに」料理や菓子を分けてもらっているように見えるミツル。ナギの兄貴だと言っていたが、女性陣がやって来るたびにどぎまぎしている様子が初々しくておかしい。彼の一番のお気に入りは、ここで最も目を引く美人の綾乃だというのも直ぐに分かる。
 だが、じっとミツルを見ていると、もうひとつ気が付くことがある。彼が最も気にしているのは実は、その場の空気を全く読まない弟のことなのだ。何か心配して見守っているような、そんな感じだ。

 ミツルの視線を最も浴びている春日綾乃は、この場に馴染もうとさりげなく努力をしているようだが、そしてそれは大方は上手く行っているのだが、時折さびしそうな表情を浮かべる。真と目が合うと、完璧な笑顔を向けてくれるが、何かを迷い決めかねているようなミステリアスな雰囲気を纏っているのだ。それでも話しかけられると、誰とでもそつなく会話を紡いでいる。
 綾乃に気を遣っているのは、何と、享志もそうだ。確かにこれだけの美女なら気になるのは仕方がないのだが。

 おい、俺の妹に手を出しているくせに、殴るぞ。
 と、真がちょっと思っていることを享志は気が付いていないだろう。
 その享志と萌衣はいつものように気遣いを発揮している。あの二人はいつもそうだ。まるで自分たちは端から牧場の従業員とでもいうようにくるくるとよく働いて、あちこちにお酌に回ったり、食べものを運んだりしている。

 そこに、千絵という横浜の看護師が、職業柄なのか人柄なのか、すぐに立ち上がって手伝おうとするのだが、牧場の人たちも、享志と萌衣は従業員のように使っても、彼女のことは直ぐに「座って食べていなさい」と押し戻してしまう。彼女が少し申し訳なさそうにしている様子が微笑ましい。
 その彼女を「誰が見ても見つめすぎだろ」というくらいにガン見しているのが、同行者の山口正志だ。いや、いくら真が男女の仲のことには疎くても、これはあまりにも分かりやすすぎる。あれは絶対にポケットに指輪を忍ばせているに違いない。

 そしてコトリとダンゴ。ダンゴの方は誰にでも打ち解ける性質のようだし、強いかどうかは分からないがお酒もイケるようで、皆に話しかけながら周囲を楽しませてくれているようだ。皆で一緒にはしゃぐのが嫌いでは無いようだ。その様子をコトリが微笑ましいと言わんばかりに見つめている。まるで本当の姉妹のようだ。

 そして、デジャヴの塊のようなレイモンド。レイモンドは以前見た時は、相当に人見知りなイメージだったが、今日は仲間もいるからなのか、何とか周りに打ち解けようとしていて、それはかなり成功しているようだ。聞けば、釧路で大阪のオバチャンの洗礼を受け、それから開き直ったようだという。彼は、猫のマコトが狙っていると思われる胸元のペンダントをしきりに気にしている。
 開放的で力強そうなリーザはいかにも姉御という感じだ。しかも、一太郎・長一郎の酒豪ペアと張り合って、ものすごい勢いで飲んでいる。

「これは何という酒なのだ」
「京都の伏見というところで作られた酒だ。それからこっちは我々の友人が送ってくれた黒松剣菱という酒で……日本では米どころ、水どころの酒がやはり美味い」
 などと酒談義に花が咲いているが、三人とも全く顔色一つ変えずに飲み続けているのだ。
 一方、隣で出来上がっている「詩人」だが、竪琴を持たせるとまるきりしらふに戻って、なんと成太郎・真の演奏に合わせてくれた。

「民謡というのですka~、素晴らしい音楽でsu」
 何やら曲想が湧くのか、次々とアレンジで曲を生み出していく。それを聞くと真の方でも少しだけ煽られてしまって、ついついアドリブを多く入れるようになる。成太郎は真や詩人に合わせて、時に強く、時に慰めるように太鼓を叩く。
 本来なら民謡では、一番は唄、二番は太鼓、そして三味線は一番立場が下なのだが、成太郎は人を引き立てるのが上手い。

 そこに幸生が、即興の歌で参加する。民謡もすぐに覚えるし、みんながよく知っているポップスなんかも歌ってくれる。うん、いい声だなと思うと、演奏にも力が入る。民謡以外はあまり知らない真だが、萌衣が置いてあったキーボードで助けに入ってくれた。萌衣にピアノが弾けるなんて、初めて知った。
「陛下」が幸生に「余にも何か歌を教えてくれ」と言った。
 幸生は意味ありげにちらっと正志の方を見て、それからある提案をした。

「盆踊りの時に、浦河の人たちにお礼の意味も込めて、合唱をしませんか」
「合唱?」
「皆で声を合わせて歌うことです」
 マックスが説明した。
「ふむ、盆踊りというのはそのような儀式めいたことをする場なのか」
「いえ、この時代においては、儀式でなくても皆で声を合わせて楽しむために歌うのです」

 幸生がこれを歌おうと言って披露した曲は3曲。比較的知られた曲で、親しみやすいものばかりだという。
 とは言え、次元を超えてやって来たレオポルドとマックス、レイモンドとリーザと詩人たちには「馴染み」も何もない。だが、彼らは驚異の記憶力と藝術の才能を示した。享志と萌衣と真にとっては、知っている曲が1曲に、初耳2曲。だが、どちらもキャッチ―ですとんとハートに届いた。
 この選曲、何か意味があるのだろうか、と幸生を見ると、幸生がウィンクして「付き合ってくれよな」というような顔を見せた。何かあるんだな、と思った。

 そんな話が決まって、そろそろ今日のパーティーはお開きという時間になってから、成太郎が真に向かって言った。
「そろそろ、本気出す?」
 祖母の奏重と目が合った。いや、本当の祖母ではないのだが、視線が合ったのはまるきり不可抗力のようだった。成太郎が何でもついてくよ、という顔をしていた。奏重が立ち上がったので、皆が静まり返った。

 真はひとつ息をついて、掛け声と一緒にじょんがら節の前弾きを始めた。祖母の十八番なら小原節と思ったが、何となくこの場にはじょんがらが似合っているような気がしたのだ。
 じっと自分を見つめてくれている視線の中に、長一郎とコトリ、一太郎がいた。享志と萌衣がいた。今日知り合ったばかりの正志と千絵、ディランとマックス、ダンゴ、綾乃、ナギとミツル、幸生、レオポルド(は二度目だけれど)とリーザ、詩人、そして台所から戻ってきているかじぺたさん。皆が何かを訴えるような目で真を見ていた。それに、マコトやエドワード、アーサー、ポチまでもがご飯を中断してじっと見守っている。

 一の糸は情けを断ち切る、二の糸は表に出せない心の揺らぎ、そして三の糸はあらゆる人生の色彩を語る。真は長一郎を見つめ返した。
 それでも、これはあなたが教えてくれた音だ。糸を押さえ弾く指遣いも、撥を持つ手の形も、後撥と前撥の僅かなタイミングの取り方も、十六の泣かせ方も、ひとつひとつ、幼い真の手を取って教えてくれたものだ。
 コトリともう一度目が合った。
 イッショニガンバロウネ
 彼女の唇がそんなふうに動いたように見えた。

 そこに、まるでもう十年ほども一緒にやって来たかのように、成太郎の太鼓が重なる。奏重がゆったりと頭を下げる。拍手。「待ってました!」の掛け声。
 素晴らしい唄声を持つ奏重は、自分の伴奏は真にと譲らなかった。祖母が唄うと、真の三味線は自分を越えて、祖父母が出会った日本海に面した海岸線を辿って過去までも震わせた。ぴったりと寄り添いながら唄と三味線が上り詰めていくこの時間は、真にとってまるで自分の魂がどこか彼方へ浮き立っていくような感覚だった。


 皆が寝静まってから、真はこっそり寝床を抜け出した。
 牧場には従業員用の宿舎があったので、グループごとに部屋が準備されていたが、その日、すっかり打ち解けた皆は、部屋ごとに分かれるのは寂しいということで男女別に合宿のように大広間を使うことにした。
 他人と一緒に眠るというのは、真が最も苦手とすることのひとつだ。だが、ふと身体を起こして周囲で雑魚寝をしている面々を見ていると、不思議と穏やかな気持ちになった。

 この時代の人たちはみな自分用の携帯用の電話を持っている。真も萌衣も享志も、そんなふうに簡単に人と繋がるような機器は持っていない。廊下に出ると、昔から真が見知っている黒電話でもない、大きな白い電話機が台に置かれていた。紙で情報もやり取りできるという。
 まさか、と思って、勝手に申し訳ないと思ったが、受話器を取り、記憶の中にある数字を押した。ダイヤルを回す、という代物はもうほとんど見かけないらしい。

 繋がるとは思っていなかった。
「もしもし」
 明瞭な声だった。
「あ」
 相手が名乗る前に思わず意味不明の声をあげてしまう。相手はしばらく黙っていたが、いくらか笑いを押し込めたような声で言った。
「どこの誰のイタズラ電話かと思ったら、真か」
 これは俺の知っている男だろうか。それとも。

「寝てたのか?」
「いや、調べ物をしていた。お前、北海道じゃなかったのか」
「うん」
「北海道」といえば北海道だが、どうとも説明のしにくい場所にいる。
「あの……そっちは何年何月?」
「は?」
 大和竹流が意味不明というように聞き返した。そりゃそうだよな。
「2015年ってことはない、よな」
「何訳の分からないこと言ってるんだ。19xx年だよ。お前、電車を乗り間違えたのか。ウェルズのタイムマシンにでも乗っちまったか」

 竹流は冗談で聞いたのだろうが、真はそうかもしれないと思った。
「おじいちゃんとおばあちゃんは元気か?」
「……うん」
「……どうかしたのか?」
 何かを察したように優しい声で聞いてくる。その声がたまらなく懐かしくて愛しい気がして、真は少しだけ目を閉じた。
 帰れなくなるなんてことはないよな、きっと。享志も萌衣もいっしょなんだし。そう、ピンチになっても、あの二人がいればなんとかなる。そんな気がする。こうして電話だって通じるんだし。

 その時、不意に廊下の先に誰かの気配を感じて目を開けた。
 一瞬、黒っぽい影が見えたような気がした。女性? だが、ただの光の加減だったのかもしれない。
「寂しくなったら迎えに行ってやるから、電話してこい」
「馬鹿じゃないの」
「いや、もう寂しくてたまらなくなって電話してきたんだよな。俺の声が聞きたくて」
「んな訳ないだろ。ちょっと電話が通じるのか確認したかっただけだ。電話代、かかるから、もう切るよ」
「かけ直そうか」
「だからもういいって。……おやすみ」
「うん。おやすみ」
 それからしばらくどちらも電話を切らずに黙っていた。相手が先に切ってくれたらと思ったが、多分これは埒が明かない。真はもう一度振り切るように「じゃあ」と言って、電話を切った。


 外に出て、いつものお気に入りの場所に座る。
 少しだけ小高く盛り上がった場所で、牧場の全体がほぼ見渡せる。風が吹き渡っていく。座った地面から伝わってくる土の温度と草の匂いが心地よい。
 少なくとも、電話はちゃんと元の場所に繋がっている。そして、真のお気に入りの場所も、ここにちゃんとある。

 気が付くと隣に茶虎猫が座っていた。真はマコトの背中を撫でた。マコトはちょっと真の方を見て、それからまるで一緒に牧場を見渡すように首をあげた。ぶるぶると空気を震わす馬たちの気配と微かな声。風が草を撫でいていく音。天空の雲の向こうの星の音。虫の声と、時折空を横切る鳥の気配。

「別に不安なわけでも、寂しいわけでもないんだ」
「にゃん?」
「もしも未来の自分の運命を知ったのだとしても、それで何かが変わるわけでもないし」
「にゃ?」
「生まれ変わったら、今度は猫がいいな」
「にゃ~」
「いや、何度生まれ変わっても、わしの孫に生まれてきてくれ。もっとも、それはもうずっと先のことだろうがな」
「え?」「にゃ?」
 気が付くと、長一郎が傍にやって来ていて、マコトを挟んで向こう側に座った。

「真も、いや、君ではない方の真だが、ここが好きだったべ」
「にゃ!」
「そうかそうか、お前もだったな、マコト」
 それにしても「まこと」だらけでややこしいや、と思った。
 それからしばらくの間、沈黙があった。どんな闇にも光の気配があると教えてくれたのはこの人だったか、アイヌのおじいちゃんだったか。

「僕のこと、一太郎さんに孫だって紹介したのはどうしてですか?」
「隣の世界からやって来たんだとしても、君はわしの孫だ。違うかな?」
「……」
「わしもこのことを考えてみた。少しずつわしの死んでしまった孫と君には違った部分があると分かってきた。わしの教えた『江差追分』を弾いてくれるが、じょんがらの曲調は少し違う。奏重があの子は真だけけれど、真ではないと言いよった。唄を合わせてみたらよく分かる、と。だから、似た部分よりも、違う部分が大事だと思った。のぅ、わしはこう思うんだ。君がここいるのは、与えられた命を先に繋ぐためだと。わしの孫のように十九で死んでしまうためではない。その先の世界を見るためだとな。だからこそ、君はやはりわしの孫なんだべ」
「にゃ!」
「もちろん、お前もだ、マコト」
 そう言ってから、大きな長一郎の手が真の頭に乗せられた。
「この浦河へよく帰って来てくれたべ、な、真」
「……うん」
「お前もな、マコト」
「にゃん!」
「さて、明日からはこき使うべ。早く寝ろ」

 長一郎がマコトを抱いて戻っていく後姿を真はしばらく見送っていた。いつの間にか、少し離れたとことにコロボックルが立っていた。夜の見回りかもしれない。
 フクロウの声が聞こえる。やがてコロボックルは、「おやすみ」というように右手を上げて、優しい穏やかな光を溜め込んだ漆黒の闇の中に消えていった。


8月11日
 おはようにゃ! あさごはんは、あやのちゃんが持ってきてくれたテンネンコウボぱんでした。ぼくもぎゅうにゅうといっしょに、ちょっとだけもらいました。とってもおいしかったです。だから、今日から、ぼくもみんなといっしょにイッショウケンメイはたらきます!
 でも、ボクジョウのひとが、「へいかをはたらかすわけにはいかない」と言いました。へいかははたらきたいと言いました。まっくすさんが「へいかのぶんもわたしがはたらきます」と言いました。こまったジイチャンは、「じゃあ、おびひろにつかいにいってくれないか」と言いました。
 まこととへいかと、それからなぎとぼくが、おびひろにいくことになりました。おびひろにあずけてあるおうまさんのちょうしが少しよくないから、ようすを見にいくのです。おびひろまでの車の中で、おうたのれんしゅうをしました。
 きのう、ユキちゃんがみんなに「がっしょうかだいきょく」をおしえました。ユキちゃんは「まさしさん、このぶぶんのソロをたのみます」と言いました。それからチエちゃんいがいのおんなの人をあつめて、うちあわせをしていました。何かあるのかにゃ? ぽちがニコニコしていました。ぼくもヒミツをおしえてほしいです。
 おうたは、このおおぞらへ~つばさをひろげ~、と、とれいんとれいんはしってゆけ、と、あ~いわずぼ~んとぅ~らぶゆ~、です。いいうただと、へいかが言いました。へいかはひくい声で、おうたがとってもじょうずです。
 なぎは車の中でも、目玉をつくっていました。ぼくもおてつだいをしています。にくきゅう目玉です。
 ぼく、ときどき、うきます。なんでかにゃ?
 だからぼくもうたう。

 ここはてんごくじゃないんだ かといってじごくでもない
 いいやつばかりじゃないけど わるいやつばかりでもない

 せかいじゅうにさだめられた どんなきねんびなんかより
 あなたがいきているきょうは どんなにすばらしいだろう
 
 とれいん とれいん はしってゆけ
 とれいん とれいん どこまでも

 つづくにゃ。
(何だかやっぱり終わらないにゃ。予想通り続くにゃ



マコトと真の会話。マコトの3つ目の台詞?「にゃ~」は「いや、これで猫も結構大変なんだにゃ」と言っていると思われます(*^_^*)
噛み合うような、噛み合わないようなメンバーが、少しずつ近づいていく感じがしますね。いや、もうあちこちで、色んなシーンが展開はしているのですが。
さて、陛下を牧場の仕事から遠ざけたわけではありません。実は、レオポルドに帯広のばんえい競馬の輓馬(ばんば)をぜひ、見て欲しかったのです。
ちなみにマコトは軽いので、ナギの隣にいるだけでも、勝手に浮いちゃうらしい(#^.^#)

そして、またまた電話のラブシーンを繰り広げるこのふたり。
なんだよ、もう、と呆れずに、見守ってやってください(#^.^#)

次回は、(たぶん)最終回。ミツルと萌衣が大接近? そして、QUEENの名曲に籠められた幸生の作戦とは?
オリキャラオフ会in北海道(5)『I Was Born To Love You』、お楽しみに!
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Category: オリキャラオフ会@浦河

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