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コーヒーにスプーン一杯のミステリーを

オリジナル小説ブログです。目指しているのは死体の転がっていないミステリー(たまに転がりますが)。掌編から長編まで、人の心を見つめながら物語を紡いでいます。カテゴリから入ると、小説を始めから読むことができます。巨石紀行や物語談義などの雑記もお楽しみください(^^)

 

オリキャラオフ会 in 北海道@また一緒に遊ぼうにゃ~!【浦河パラレル】(5) I was born to love you(前篇) 

何ということか、終わらなかった。何はともあれ、あまりにも長すぎるので、前後編に分けました。盆踊りに熱が入ってしまった。残りはわずかなのですが、後日談を少し入れなきゃいけないので、今回は前篇ということで。
さっさと終わらせてStellaの原稿を書こうと思ったけれど、断念しました。サキさん、ごめんなさい!(もしかしたら土壇場で足掻くかも)
気になるのは、真が少しマコト化していることです……(=^・^=)


オリキャラオフ会 in 北海道@また一緒に遊ぼうにゃ~!
【浦河パラレル】(5) I was born to love you(前篇)



8月11日のにっきのつづき。
 おびひろにあずけてるおうまさんは、ばんばと言って、ものすごくものすごくおっきなおうまさんでした! おしりなんか、すっごい、ば~~ん!!!ってかんじで、ぼく、たべられそうになって、きをうしないそうになりました。
 とってもむかし、ホッカイドウではたけやぼくそうちをたがやすときに、かつやくしたおうまさんです。なぎとぼくはならんで、ぽか~ん、としていました。
 おうさまとまことは、ばけんをかいました。いっぱいあたったから、とうもろもろ~をかってかえることにしました。
 ちゅうしゃじょうにもどったら、くるまのまわりに人がいっぱい、いました。
 くるまのなかでは、目玉がいっぱいぷかぷかしていました。まことが「これはふうせんなんです」といっしょうけんめいおはなししました。ぼくのにくきゅう目玉もぷかぷか、ういていました! わ~い。なぎはてじながとってもじょうずです。
(タケル添削:馬は草食動物だから猫は食べないよ。マコト:そうなの? でもまちがえてのみこんじゃうかも!)


「なんと、素晴らしい馬だ。この堂々たる体躯は、牧場にいる馬たちとは全く違うではないか」
 パドックもレースも、馬たちのごく近くまで行って見ることができる。仕事をさせてもらえなくていささか不満そうだった陛下、ことレオポルドも、この魅力的な重量馬を身近で見て大喜びだった。いや、そもそもこの人は馬や人が大いに好きなのだろう。
「この馬たちは、いわゆる現代の競走馬とは全く種類が違います。重種馬で、体重も800から1200kgくらいあります。以前は農耕馬として北海道開拓時代に活躍していたのですが、戦後はモータリゼーションが進んでその数は減っていきました。昔から農耕馬のたちの『草ばんば』という競走は各地で行われていたのですが、今ではすっかり廃れていて、こんなふうに観光地化して何とか維持できているのはこの帯広競馬場くらいだとか」

 実際の真の時代とこの2015年でもまた事情は変わっているのだが、酪農専業農家が一頭だけこうした馬を飼育しているというのは、昔からよくあることだ。もっともそうした多くの馬は競馬に出すために飼育されているわけでは無く、一歳頃に市場に売りに出すことを目的としている。乳牛と違って、あまり質の良くない飼料を与えても問題はなく、現金化もしやすいというメリットがあるようだ。
 相川牧場はいわゆる酪農業というわけでは無く純粋な馬産農家だが、創業時からばんえい種を一頭育てていた。現在の馬が、偶然良い馬で、ばんえい競走馬となり得ると判断したため、一歳で売りには出さず、この帯広競馬場の傍の厩舎に預けているのだという。

 マコトとナギは馬たちに釘付けだ。家猫にしては珍しく競走馬を多く見ているマコトでも、この馬の迫力は目を奪われるだけのものがあるのだろう。目玉づくりを通してナギとはいつの間にか意気投合しているのか、ナギに大人しく抱かれている。
 すると、観光客が「かわいい~、一緒に写真撮ってもらってもいい?」と話しかけてくるのだ。つまり美少年と美猫、というマニア垂涎の構図、ということらしい。

「レースはばん馬が騎手と重量物を積載した鉄製のそりを曳いて、200メートルのコースを進みます。途中に障害が二か所。最初の障害は低くて大したことはありませんが、二つ目の障害は高くて、ここを重いそりを曳いて登るのは大変です。何度も停まったり、引き返して勢いをつけて再度やり直したり。普通の競馬と違って、そりの後ろがゴールラインを一番に越えた馬が勝ちです。賭けますか? 賞金は安いので、一攫千金はありませんけれど」
「おぉ、そうしよう。そなたはどの馬が強いかわかるのか」

「ばん馬はよく分かりません。速く走るかどうかは分かるけれど、障害を越える力があるかどうか、耐久力はどうか、それに騎手との相性、サラブレッドの競走馬よりも検討する要素が多すぎるし、八百長だってレース場に乱入する客もいるんです」
「八百長なのか!」
「さぁ、でも、鼻先は一番でゴールラインを切ったのに、そこで全く動かなくなる馬もいるんです。そうしているうちに他の馬が横をのろのろ歩いてゴールしてしまって、結局一番ビリになるなんてことも。ただ速く走ることを目的とするレースとは少し訳が違う」
「それは面白い。何とも人間臭いレースだ」

 走るコースの真横で馬たちを見ることができるというので、レオポルドは喜んで観覧席からコースの真横の地面に降りた。まさに、馬たちが重いそりを曳いて目の前を走っている……走っているというのか、歩いているというのか。
 レオポルドはさすがに今日はアイヌの衣装を着ることを躊躇っていたが(さすがに何となく浮いていることには気が付いたらしい)、かといって牧場で支給された作業衣はいまひとつだったらしく、結局女性陣があれこれアレンジして、往年のロックスターのような格好になってしまった。競馬を楽しみに来た観光客は何か特別な撮影でもあるのかと思ったらしく、テレビカメラの存在を確認している。

 確かにかなり見世物っぽいが、何かの撮影ではない。だが、後で車に帰った時はもっと驚いた。車に人だかりができていたのだ。中を見て仰天した。目玉がいっぱい浮いている。真は「これはお祭りに使う風船なんですよ」と周囲の人に説明したが、納得されていたかどうかは不明だ。マコトは大喜びしていた……ようだけれど。
 相川厩舎が預けていた馬は、結局、蹄鉄の具合が悪かっただけのようで、真たちの用事もすぐに済んでしまった。だから結果的にレオポルドと真、そしてナギは(マコトも?)、レースを楽しんで、結構な賞金を得た。

 そもそも真は競馬の予想をしたら結構読みが当たるのだが(もちろん、それは超能力ではなく、馬を見る目の問題だ。もっとも高校生の身分で馬券は買わない)、今日は何故か勘が冴え渡り、ことごとく予感が的中した。
 真は傍らに立つナギを見た。ナギも真を見上げた。何となく、お互いに波長が合う感じがした。
「ぼく、浮かすことしかできないけど」
 ナギが不明なことを言った。
「僕も、変なものが見える程度だけれど」
 真も不明なことを返した。それから二人で何となく微笑み合った。
 マコトがにゃあとナギの腕の中で鳴いた。ま、いいんじゃない? とでも言っているようだ。もっとも、通常の競馬ほどには配当金も大きくはないので、少し豪華な食事にありつけるかどうか、という程度だったのだが、彼らは大いに満足した。

 ナギはマタタビ何とかで一生懸命マコトを手なづけようとしていたが、成功しなかったようだ。でも、目玉作戦は成功している。いや、目玉については作戦ではなく、単なる結果論だったのかもしれない。もともとマコトは、レイモンドのペンダントを狙っていたようだが、今はナギの目玉に夢中らしい。
 レオポルドは馬主や騎手たちに話しかけ、馬のことをあれこれと聞いている。一国の王とは思えないほど気さくに誰にでも話しかけているが、やはりそのオーラは只者ではないことを語っている。生まれというのは、どういう環境に置かれても隠せないものらしい。
 それにしても、仕事をさせてもらえないと拗ねていたのが、ようやく機嫌が直ったようだ。

「なんだ」
「いえ、失礼かもしれませんが、楽しんでいただけて良かったと思って」
「余は、本当は『労働』がしたかったのだ」
「馬の糞を片づけたり、草を刈ったり、飼料を運んだり、それはやっぱりあなたのすることじゃないと、みんなそう感じたんだと思います」
「だが、世の中の人々がどのような仕事をしているのか、それを知り、体験することは国王として大事なことなのだ」
「でも、世の中の人は、あなたにそんなことを求めているわけじゃないんだと思います。あなたにはあなたの仕事がある」
 それはナンパじゃないけど、と真は心の中で付け足した。いや、一国の王にとって、それこそが大事なのかしれない。丈夫な跡継ぎを産んでもらう女性を探すことは、たやすいことではあるまい。
 レオポルドはしばらくじっと真を見ていたが、やがてばん馬たちのほうへ視線を戻した。

「ところで、そなた、馬を操るのが上手いな。いや、これはオヤジギャグではないぞ」
 真は始め理解できなかった。じっと考えてようやく何のことか分かったものの、一瞬迷った。笑うべきかどうか? レオポルドは昨日の宴会で「ダジャレ」「オヤジギャグ」なる単語を覚えたらしい。
「朝方、馬を走らせておったろう。見事であった。鞍がなくても乗れるのか」
「えぇ。でも、競走馬は鞍をつけるところからがトレーニングで、つまり鞍をつけられないような馬は競走馬にはなれません。だから、あれは反則です」
「そなた、グランドロンに来る気はないか? 聞けば、時空を彷徨っているという話ではないか。馬丁、いや、いずれは余の参謀になってくれるのもよい」
 彷徨っているつもりはない。必ず帰ると信じている。

「マックスさんはあなたの参謀ではないのですか?」
「あれはあれで一国の主なのだ」
 昨日はかじぺたさんをリクルートしていたし、女性陣にはことごとく声を掛けていたし、一体この人は何をしに来たんだろうと思った。でも、ここが真の知っている北海道ではないのだとしても、こうして皆がこの町に来てくれたことには、お互いに何かの縁があるのだろう。
「でも、僕にも仲間がいますから」
 レオポルドは今度はナギを見た。ナギがにこっと笑った。
「僕にもミツルがいるから」


8月12日
 おはようにゃ! きょうのあさごはんは、きのう、おびひろでかってきたとーもろもろこしのすーぷでした! よーぐるとはてづくりです。ぼく、とーもろもろはたべないけど、だんごちゃんが、ねこまんまをつくってくれました! わ~い。
 きのうはおっきいおうまさんを見にいったあと、ボクジョウにかえっていそぽとあそびました。えどわーどアニキとあーさーアニキとぽちもいっしょです。

 よるはみんなでおうたのおけいこをしました。ぼく、おうた、じょうずになりました。ゆきおしゃんはおしえるのがとってもじょうずです。そーらんぶしのおけいこもしました。ぼくもおどりました。
 それからあしたのぼんおどりのときにきていくユカタをじゅんびしました。おうさまが、きんいろがいいといいました。それをみて、ゆきおしゃんが、おうさまにへんなうたをおしえました。おうさまは、みんながよろこぶならと言って、おうたをおぼえました。
 お・れ! おうさま、すごいです!

 きょうはぼんおどり! わ~い。
 ばあちゃんとちさとちゃんとかじぺたさんは朝からタキダシのおてつだいに出かけました。ゆかたのじゅんびもしました。おうさまのきんきんきらきらゆかたもできあがりました。じいちゃんといちたろーじいちゃんと、せいたろーとまことは、たいことしゃみせんのウチワをしました。ぼくもオハヤシのおけいこをしました。
 おしごとがおわったら、みんないっしょにおふろに行きました。ぼくは行きません。ぬれるのきらいです。でも、おおうたはだいすき。
 いま~ とみとか~ めいよならば~
 いらないけど~ つばさがほしい~にゃ
 わ~い。でも、ぼく、さいきん、ときどきうきます。つばさがはえたのかにゃ?
 みつるしゃんが、とびそうになるぼくのしっぽをつかまえたので、まちがえてぱんちしちゃったこともありました。やっぱり、つばさがはえたにゃ!
(タケル添削:ウチワじゃなくて、打ち合わせ? マコト:ウチワワセ!) 


「よく考えたら、僕らここでは何歳よ? どうして20歳になってから来なかったんだろ~」
 と間抜けなことを抜かしている享志を放っておいて、真は幸生と萌衣と一緒に音響のセッティングを手伝いに行った。萌衣がキーボードで伴奏をすることになっていたので、幸生が起こした楽譜を二人で確認している。

 櫓にはすでに成太郎と一太郎、それに長一郎と奏重も上がっている。櫓の周りには四方に向かって提灯を釣ったワイヤーが伸びていて、広場の周囲に屋台が並んでいる。テーブルと椅子、それからもうひとつ、特設ステージがあって「我こそは」と思う者が芸を披露する。まだ挨拶も済んでいないのに、すでに出来上がっているような賑やかさだ。
 そしていよいよ開演。町長の挨拶などそこそこにして、今年の特別な祭りが始まった。珍しい客人が来ているというので、今年の参加者は特別に多い。何でも隣町からやって来た人たちも随分いるらしい。

 酔っぱらって踊り始めたら収拾がつかなくなるというので、ステージでの出しものが優先だ。皆が興味津々で「相川牧場の特別な客たち」の芸を見に集まっている。
 もちろん、トップバッターはレイモンド、リーザ、詩人の大道芸だ。リーザは既に飲んでいるはずだが、全くもって酔っぱらっているという気配がない。見事なナイフ捌きを見せて、一躍、町の老若男女のスターになっていた。おもちゃのナイフを使って、子どもたちのためにさっそく屋台風即席ナイフ投げ教室の始まりだ。

 それから、レオポルドが金色の浴衣を着てステージに上がると、みんな大盛り上がりだった。サンバのリズムが会場を謎の熱気の渦に巻き込んでいく。幸生の演出と指導は大したものだ。
 バックダンサーには、マックスとダンゴを中心とした厩舎のスタッフと、いつの間にリクルートしたのか、近所のおばちゃんたちの特別参加だ。マックスとダンゴは、人柄なのか、おばちゃん・おじちゃんたちの人気者になっている。ダンゴはともかく、マックスはまさか、こんな年齢層が高い人たちの相手をすることになるとは、と思っているかもしれないが、それはそれで結構楽しそうだ。
 バックダンサーにコトリと綾乃は加わっていないが、千絵とかじぺたさんは巻き込まれたようだ。千絵は練習の始めこそ少し恥ずかしそうだったが、踊り始めると、何てことはない、結構うまい。彼女が参加すると聞いたからか、正志も彼女を気遣いながらの参加だ。
 でも。目が泳いでいる。こんなことしてる場合じゃないんだよ! とでも言いたそうだ。

 周りを見ると、「マツケンが来てくれたんだべ~」と泣きだす老人までいる。勘違いでも、ちょっとぼけていたんだとしても、そう思えて幸せになってもらえるなんて、レオポルドも嬉しいだろうなと思った。何しろ、ステージから降りたとたん、レオポルドは老人たちに握手攻めになった。スターなのか、王なのか、何しろその凛々しく自信に満ちた姿がレオポルドらしくて微笑ましい。
 彼自身が仕事をするよりも、牧場のスタッフと意見を交換し話をするだけで皆に不思議な安心感を与えている、彼はそういう存在なのだ。

 それから、即席合唱団の登場となった。
 皆で並んでも、どうやらレオポルドの金色浴衣が目立ちすぎるようだ。ステージでは照明が当たるので余計にそう思える。羽織袴を身に付けた幸生が指揮者として登場した時も、ちょっと「しまった」という顔をしているのが可笑しかった。女性陣が上手く千絵を正志の隣に並ばせるのに成功していた。
 一礼をして顔を上げると、配られた歌詞カードを手に、いつの間にかみんなステージの周りに集まってくれていた。萌衣が幸生と目を合わせ、キーボードで前奏を弾きはじめた。

『翼をください』は有名すぎるほど有名なナンバーなので、意外にも『マツケンサンバ』に湧いていた年配の人々も、大きな声を合せて一緒に歌ってくれる。一番の歌詞の時点では、まだ恥ずかしそうに歌っていたメンバーも、その人々の様子を見て、二番に移った時には自然と目を見合わせて、自信を持って前を見つめた。
 今 富とか名誉ならば
 いらないけど 翼がほしい
 子供のとき夢見たこと
 今も同じ 夢に見ている

 たった二日間だけれど、協力し合って仕事をした。それぞれができることをし、できないことを補い合った。大自然の風を感じて、自分のちっぽけさを思った。心の中に持っていたグダグダは簡単には解決できないけれど、前を向こうと決めた。何より、気が付くと、仲間ができていた。
 ふと足元を見ると、何となく、マコトとエドワードI世、アーサーが浮いている。ポチはさすがに浮いている様子はないが、ちょっと慌てたような顔をして真を見た。ミツルが隣のナギをつつく。ナギは「あ」という顔をしたが、どうしようもなかったらしい。
 ま、世間は手品と思っているから、猫と犬が多少浮いていてもいいか。『翼をください』の演出だと思ってくれるに違いない。

 二曲目の『TRAIN TRAIN』からは会場を巻き込んでノリノリになった。既に謎の踊りを始めている人々もいる。「本当の声を聴かせておくれよ」と何となく皆が正志の顔を見るのだが、正志の方は次のソロで頭がいっぱいのようだ。隣の千絵のことを気にしているようだが、緊張とのバランスが取れないでいるらしい。
 彼は、自分が何故次の曲の冒頭のソロを任されたのか、よく分かっていないようだ。もちろん、営業ではカラオケ盛り上げ役などもしているようだし、鬱憤を晴らすのにたまにカラオケボックスでシャウトすることもあるというから、決して下手ではないのだが、もっと他に上手い人がいるじゃないか、何で俺が、とまでは頭が回っているのかどうか。他の事に気を取られていて、幸生の「お願いしますね、正志さんしかいないんですよ」という慇懃ながら、秘かな命令に逆らえなかった、というところだろうか。

 曲は途切れなくよどみなく、次の曲へ移っていくように編曲されていて、萌衣が冒頭の雷サウンドをキーボードで再現してみせると、いきなり正志の出番だった。
 くそ真面目すぎて、自分の気持ちに一生懸命過ぎて、千絵の気持ちが不安で、みんなの気持ちにまだ気が付いていない。いや、千絵は絶対にOKなのに、それを思う余裕もないらしい。でも、それが正志らしい。
 I was born to love you
 With every single beat of my heart
 Yes, I was born to take care of you
 Every single day of my life

「兄ちゃん、誰にプロポーズだべ」という会場の声に一気に曲が盛り上がった。もっとも、緊張しているのか、飲んでしまったからなのか、正志の耳には届いていなかったらしい。
 知らぬは本人ばかりなり、とはまさにこのことだ。でも、ポロポーズを前にした男の気持ちって、そんなものかもしれない。
 それでも、正志は大役を果たした。合唱は大盛り上がりのダンスに繋がり、曲の途中からは成太郎が櫓に駆けあがって、ドラムさながらに太鼓を打ち鳴らした。

 You are the one for me
 I am the man for you
 真はふと周囲のメンバーを見回した。そう、みんな誰かのために一生懸命に歌いながら、誰かを想っている。
 I wanna love you
 I love every little thing about you
 真は信じた。きっと帰れる。そして、生きていく。大事な人のために、この鼓動のひとつひとつを重ねながら。真は足元で一所懸命、にゃあにゃあ言っているマコトを抱き上げ、一緒に歌った。お前も、一人でお留守番、頑張ってるもんな。

 そのままリズムはソーラン節に重なっていく。真も成太郎を追いかけて櫓に上がった。成太郎が目で合図をくれる。アドリブのクィーンと民謡のコラボレーションだ。櫓上の太鼓と三味線のバトルに皆が大喝采をくれる。成太郎のリズムに合わせていたら、安心して三味線を叩くことができた。やがて奏重が櫓に上がると、村のスターの登場に一層の盛り上がりを見せた。北海盆歌から始まって、ソーラン節へ。

 ソーラン節の踊りは昔と随分違っていると真は思った。普段は札幌など街に出て行ってしまっている若者が帰って来て、ハードな踊りを披露する。その影響なのか、盆踊りもバージョンアップしたのかもしれない。それでも、メンバーたちは彼らに引けを取らないくらいに実に見事に踊っている。というよりも、みんな自分なりにアレンジしているようだ。多分、自然に個性が出てしまうのだろう。

 傍らでは成太郎が太鼓を叩きながら徐々にヒートアップしていくのが分かる。飛び散る汗も風に吹かれて一瞬で乾いていく。成太郎には何か抱えているものがあると、初めの日のセッションした時から分かっていた。何もかもが解決したりはしないだろう。でも、今日の成太郎には何を吹っ切ろうとする力強さを感じる。そしてそれは否応なしに人を惹きつける。
 まだまだ、自分にはそれだけのものがない。それでも今、この時にできることをここにぶつけようと思った。

 ナギの目玉が浮き始めた。手品だと皆に説明してあるが、みんな素面だったら、そんな言い訳が通じるとは思えない。でも、今日はマコトに倣って言ってみよう。
 ま、いいか!
 櫓の上から見ていると、皆の様子が微笑ましかった。

 マックスとダンゴは意気投合している。幸生とポチ、エドワードⅠ世とアーサーは見事なコラボで踊っている。マコトは一生懸命みんなを追いかけているように見える。時々浮いているけれど、まあ、いいか。ダンゴが千絵を誘い、時々正志をけしかけているのだが、どうやら伝わっていない。千絵が照れ隠しなのか、ナギの手を引っ張って踊りに加わった。ミツルが少し面白くない顔でその様子を見送っている。千絵がミツルを手招きしたが、ミツルは顔を伏せて答えなかった。

 そこへ、また珍客が登場した。くすんだ赤の袖の膨らんだ上着に灰色の胸当て、マントという妙ないでたちの男と、大きくデコルテの開いたアプリコット色のドレスを着た妙に色っぽい女性だ。レオポルド、マックスと何事か語り合ったと思ったら、周囲に「ドン引き」の気配が湧き出す。マックスに何か嫌疑でも持ち上がったのだろうか。やがて何か折り合いがついたのか、新参者も一緒に踊りの輪に参入した。
 ことに色っぽい女性は、町の人たちを大いに沸かせた。リーザとのダンスバトルは一週間ばかり語り草になることだろう。老人たちが鼻血を出さないか、子どもたちの教育上どうなのか、櫓の上から見ていても心配になるくらいだったが、その踊りは藝術的にも満点だった。
 アップテンポばかりでは疲れるので、と、時折バラードが混じると、詩人の竪琴が大活躍だった。皆の写真を撮りながら踊りの輪を外れていた綾乃が、レオポルドに誘われて輪の中に入ると、一層の盛り上がりを見せた。

 踊りの輪を見つめる人々もいる。その中に、真は黒衣の女性を見つけた。あの人、誰なんだろう? じっとずっと傍にいるような気がする。まるで事の成り行きを見守っているかのようだ。もう一度ふと顔を上げるともう姿は見えなくなっていた。
 そう言えば。ふと思い出した。
 札幌駅で待ち合わせたかじぺたさんのことだ。浦河に着いて車を降りようとしたら、かじぺたさんと犬たちが消えてしまっていたのだ。もっと驚いたことに、牧場に着くと、そこには既にかじぺたさんと犬たちが待っていた。あれは何だったのかな?
 うん、もう、ま、いいか!

 真は時々、長一郎に替わってもらって櫓を降り、皆の様子を見ながら広場を歩いた。唄はまだしも、踊るのは得意じゃない。享志を探すと、すでに村のスタッフの一員のようにして働いている。店番を頼まれたのか、いつの間にか焼きそばを焼いているのだ。全く、級長はどこに行っても級長だなと思うと、少しほっとした。
 コトリは踊りには加わらず、やはり踊らずに飲んでいるレイモンドと時々言葉を交わしながら、皆を見守っている。真と目が合うと、「座る?」というように隣の椅子を指した。
 真はレイモンドと会釈を交した。同じオッドアイ同士、というと変だが、二度目の異世界での邂逅ともなると、妙に親近感がある。

「踊らないんですか?」
「君こそ」
「あんまり得意じゃないので」
「でも三味線と唄は平気?」
「あれは、まぁ、習性みたいなものなんです」
「私も、歌はみんなと一緒に何かがしたいって思えたから参加したけれど、踊りは見ている方がいいかな」
 そう語り合っているところへ、レオポルドが近付いてきた。
「その方ら、座っている場合ではないぞ。このような時に踊らぬとは、かえって場を白けさせて良くないものだ。なに、旅の恥はかき捨てというではないか。余の命令だ。踊りなさい」

 だからと言って(手当たり次第に?)ナンパはどうかと思うよ、王様、と真は思ったが、彼の言うことは一理あるような気がした。もう二度と会えないかもしれない人たちだ。そしてもう二度と見ることのない、真の知らない浦河の記憶だ。
 真は立ち上がり、コトリに手を差しだした。
「踊っていただけますか」
 コトリは少し意表を突かれたような顔をしていたが、やがてそっと真の手に手を重ねて立ち上がった。
「喜んで」
 レオポルドはそれを見て、満足そうに踊りの輪に戻っていった。


「踊らないの?」
 ミツルはドキッとした。さっきまでみんなのためにキーボード演奏をしていた萌衣だ。茶虎猫を腕に抱いている。一生懸命踊りについて行こうとしてたが、誰かに蹴られそうなマコトを輪の中から救出したらしい。犬たちも踊り疲れたのか、幸生と一緒にテーブルに戻り、食べものをもらっている。
 レイモンドの胸のペンダントは、ついこの間までマコトのターゲットだったが、マコトは今度は目玉に夢中だ。代わりに、エドワードⅠ世とアーサーがじっとペンダントを注視している。ポチは少し大人びているようで、あるいは何か事情を察知しているのか、ペンダントのことは見て見ぬふりをしている。

「みんな、ナギと踊りたいみたいだし」
「そうなの?」
 そんなことはないんじゃない、というような響きが籠っていた。ミツルは顔を上げた。
「萌衣さんは踊らないんですか?」
「そんなに歳は違わないんだし、そもそもここじゃ一体自分がいくつなのか分からないし、萌衣、でいいよ。ね、綿菓子食べようか」
 子ども扱いなのか、と思ったが、萌衣は単に自分が食べたかったらしい。一つの綿菓子を二人で分け合ったら、甘くて暖かい気持ちになった。

「級長はまたあんなふうに人から頼まれて嫌とも言えずに焼きそばなんか焼いちゃってるし、相川君はここじゃ忙しそうだし、私もちょっと置いてけぼりな感じなの。あ、かじぺたさんに、ここにいる間は名前で呼びなさいって言われたんだ。享志と真、ね」
「恋人、とかじゃないんですか?」
「え? 誰が誰と?」
 萌衣はミツルを見て微笑んだ。
「級長、じゃなくて享志は、真の妹と付き合ってるの。真にはちゃんと彼女がいるよ」
「え? そうなんですか。そんなふうには見えないなぁ」
「うん、大事にしているのかどうかは不明だけれど」

「萌衣さん……萌衣は?」
「私? う~ん、今は誰かと付き合うとかよりも、もっと色んなことをして、色んなことを知りたいって思ってるの」
「でも三人、仲が良さそうですよね」
「うん、仲間だもの。信頼してる。ミツル君、じゃなくて、ミツルだって、ナギくんととても仲がいいじゃない。彼のこと、とても心配して見守ってるし。それと一緒かな」
「え? 僕は……ナギに腹立てたり、イライラするばっかりで。だってあいつ、天然すぎて勝手なことばっかりするのに、みんなナギがすることは何でも許しちゃうんだ」
「何か分かるなぁ~。うちも天然の妹がいて、時々イラッとするんだよね。でも、ナギくんを一番許して、一番心配してるのはミツルだよね。見てたら分かるし、みんなもちゃんと分かってるよ。なんてのか、みんな、ナギくんが可愛いから構うってのもあるけど、ミツルに、たまにはナギくんのことは置いといて、自分も楽しみなよって言いたいんじゃないかな。それに、ナギくんもミツルのこと大好きだからこそ、いつもミツルを追いかけてちゃいけないって、自分で何とかしようと思っているのかもね」

「真さんにもそう言われました。あ、そう言えば、萌衣はコロボックルがいるって信じる?」
「って、真が言ったの?」
「いや、あの、ナギの目玉1号がなくなって、捜したらコロボックルが遊んでたって。いや、そうナギが言ってて、えっと……真さんは、寂しい時に現れるって。残念ながら、僕は見えないんだけど」
「きっといるよ。寂しい時だけじゃなくて、幸せな時にだって現れるのかも」
 そう言うと、萌衣は立ち上がった。

「ね、踊ろうか」
「え? 僕は……」
「ミツルの歌、結構良かったよ。きっとリズム感、いいんだと思う。君自身は知らないだけで」
 萌衣はそう言って、マコトを膝から下ろして立ち上がった。
 ミツルはしばらく萌衣を見上げていたが、やがて自分は立ち上がり、逆にもう一度萌衣を座らせた。萌衣が「踊りたくないの?」とでもいうように心配そうにミツルを見上げると、その隣でマコトも心配そうにミツルを見上げていた。

「僕から誘わせてよ。……あの、僕と踊っていただけますか?」
 萌衣はにっこりと笑った。
「もちろん」
 テーブルの上では、マコトと並んで立っていたイソポが手に持っていた目玉1号をぽんと蹴った。マコトとイソポ、エドワードⅠ世とアーサー、ポチは目玉1号を追いかけながら会場を走り回った。頭上にはいくつもの目玉が浮いている。マコトが作った肉球目玉も浮いている。その様子を櫓の上から、一匹の猫が見守るように見下ろしていた。


8月12日のにっきのつづき(みだれたにくきゅうもじのなぞをとけ!?)
 あ~いわずぼ~んとぅ~らぶゆ~\(^o^)/
 ぼくまちがえて、なぎくんといっしょにぶどうジュースをのんじゃいました~。
 うぃずえぶりしんぐるびーと おぶまいは~~~と!
 しかも、おわらないにゃ~。まだつづくのだにゃ~~~(ばたんきゅ~)
(もうあきらめたにゃ。つづくにゃ。でも次回は本当に最終回だにゃ)
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Category: オリキャラオフ会@浦河

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