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コーヒーにスプーン一杯のミステリーを

オリジナル小説ブログです。目指しているのは死体の転がっていないミステリー(たまに転がりますが)。掌編から長編まで、人の心を見つめながら物語を紡いでいます。カテゴリから入ると、小説を始めから読むことができます。巨石紀行や物語談義などの雑記もお楽しみください(^^)

 

[雨156] 第32章 焼ける(2)女贋作者の告白 

【海に落ちる雨】第32章その2です。
楢崎志穂に続いて、その姉である御蔵皐月が語ります。と言っても、ビデオの中のこと。これを福嶋がどうやって手に入れたかって。それはもう、なんやかやと言いくるめて寺崎孝雄から取り上げたんですね、多分。
友人Aと話していて、福嶋の裏設定があれこれとできていたんですよ。本編では出しませんが、例えば、生れは大阪の八尾で、小学校の時に京都に引っ越してきた当初は「八尾だって」とか言われて苛められて、それを姐御のように優しかった淑恵(珠恵の母親)とその腰ぎんちゃくだった寺崎孝雄に助けられていた。そのうち、持ち前の大阪人根性を発揮していじめっ子に変わったかも?
でも、その時の恩義がありますからね。あんな奴でも、これまで寺崎孝雄を見捨てられなかったんですよ、きっと。そして淑恵への恩義があるので、珠恵のことは手を握るぐらいで我慢しちゃってる。実は結構律儀な男なんです。
戦時中は部隊の副隊長って立場で、隊長さんのことをすごく尊敬していて、仲間からも結構慕われていたんじゃないかって思うんですよね。けれど、部隊は全滅。偶然一人だけ生き残ってしまって、気が付いた時、累々と横たわる仲間たちの屍の中にいた。
そんな過去を持っていて、今でも時々魘されている。だからこそ、戦後はのめり込むように仕事をして、むしろ命などどうでも良かった。のし上がって今の立場にいても、もう明日はどうなってもいいって思っている。あの時死んでいたはずなんだから、ってね。早く仲間たちのところに行かないと申し訳ないと思ってるんです。
でもこんな渋い過去があるなんて、絶対真には言わないだろうし、ここでも書かないぞ。あ、書いちゃったけれど、これは本編には出て来ない裏設定。そんなことよりも、今は存分に悪人度をお楽しみくださいませ。

登場人物などはこちらをご参照ください。
【海に落ちる雨】再開に向けてのキーポイント
【海に落ちる雨】登場人物
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Category: ☂海に落ちる雨 第5節

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【物語を遊ぼう】18-3.探偵役の造形~探偵は風~ 

【物語を遊ぼう】18-2.キャラの魅力~探偵役の造形~に続く話題。
そうそう、もうカテゴリ【雑記・小説】と【物語を遊ぼう】の違いが自分でもわからなくなってきちゃいました。なので、本当に適当です。小説についてのいろんな話題がどちらにもあれこれ詰まっていますので、よろしければカテゴリからお楽しみくださいね。

今回、探偵役の造形について、その2を書くに至ったきっかけは……ケーブルテレビで市川昆監督・石坂浩二主演の横溝正史シリーズをずっとやっていまして、ことごとく見てしまったのですね。そこで石坂浩二さんのインタビューコーナーがあって、探偵役(つまりここでは金田一耕助)のキャラ像について語られていたのです。

原作を読んだのはもう○十年前。そこに描かれていた金田一耕助像についてはちょっと記憶が曖昧で、その後に見た映画やドラマのイメージに引きずられちゃっているかもしれません。そもそも石坂浩二さんは7代目くらいの金田一耕助で、それまでは結構二枚目で、あんなマントにぼさぼさ頭の金田一ではなかったそうで。
そこで石坂浩二さんが金田一のキャライメージについて市川昆監督に尋ねたところ、「金田一耕助は風なんだよ」。

風? つまり探偵役は事件のドロドロに染まらず、通り過ぎるだけという立ち位置、って意味のようです。金田一は物語の主人公ではなく、主人公はあくまでもドロドロを生み出したり、どろどろに巻き込まれている○○家の人々。だから彼の立ち位置は(外見はともかく)「風」なんです。

そもそも、金田一は桃さん(桃太郎侍)よろしく「しまった!」ってな感じで、全然事件を未然に防げていないし、大概犯人は毒をあおったり飛び下りたりあれこれで死んじゃうし。職業的には探偵としては役に立っていないみたいに見えることもあります。もちろん、物語の最後に謎解きはしてくるので小説的には十分役にたっていますが、大体主要人物は死んじゃっていますしね。
でも、彼が主人公ではないと言われると、あ、そうか、と納得です。

金田一は○○家の人たちに感情移入をすることなく、むしろ事件の成り行きの方に興味を覚えているようで、自分が事件に巻き込まれたり「誰かを守らなければ!」というヒーロー的義務も持たない。まるで読者と同じ立場ですよね。そういう立ち位置で、最後は風のように去っていくのです。
市川昆監督の映画の最後では、いつも金田一は経費だけを受け取り(謝礼は断る)、見送りの人を躱して(見送りされるのは苦手なので)、列車にこっそり飛び乗って去っていってしまう。「不思議な人だったね」と周りの人に好印象を残して……

あ、そうか。探偵小説における探偵の役割はやっぱり「事件の語り部」であり、自分は「事件に振り回されない」ってことなんだな、としみじみ。いや、前回の結論とは少し違う方向ではありますが。
そもそも○○家の事情なんて、もうそんな事情の家がどこにあるんだろってくらいすごい世界だけれど、そのどろどろを見せられた後でも映画の印象が陰湿ではないのは、金田一の「風」的存在感のおかげ、なんだろな。

この○○家。これは日本の映画ならではのドロドロぶりだそうで、海外の映画ではどちらかというとつながりは「横」。恋人とか職場関係とか、家族にしてもせいぜい2世代ほどの世界。でもこの百年単位の怨念渦巻く血族の「縦」のドロドロは、さすが日本映画というおどろおどろしさなのだと……海外の映画でも血脈ドロドロは無いわけではないと思うけれど、そうなると大体○○王家みたいな話になるのかな? やっぱり歴史のあるところにドロドロが生まれるのか……

で、わが身を振り返る。うちの探偵、事件に巻き込まれ過ぎだなぁ……気がついたら渦中も渦中、自分が事件の引き金だったり、感情的にも巻き込まれまくり。猫の迷探偵に至っては、自分で事件を作ったりしてるし^^;
ふむ、探偵小説って難しいものです。

ところで、昔の映画って、本当によく首が転がるので、「制作者の意図により敢えて当時の作品のまま放送いたします」ってコメントが出るのですけれど、確かに、現実とファンタジーの区別がつかない子どもらには見せられんなぁ~と思った次第。何しろ最近は映像にリアリズムを求めすぎていますから。ただあそこまで「作り物」って印象が強いと、それほど「見ちゃいけない!」感は強くなくて、それでも作品が浮き上がらないのは、人の心の描写部分にはちゃんとリアルがあるからなのかもしれません。

Category: 物語を遊ぼう(小説談義)

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