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コーヒーにスプーン一杯のミステリーを

オリジナル小説ブログです。目指しているのは死体の転がっていないミステリー(たまに転がりますが)。掌編から長編まで、人の心を見つめながら物語を紡いでいます。カテゴリから入ると、小説を始めから読むことができます。巨石紀行や物語談義などの雑記もお楽しみください(^^)

 

2016年10月のつぶやきコーナー/上海帰りの…… 

<Twitter代わりのつぶやきとお知らせのコーナー>
【8888Hitリクエスト短編】人喰い屋敷の少年・(9)秘めごと



2016/10/23やっぱり甘かった
上のタイトルですぐに「りる」なんて思ったあなた……お互いに何も言いますまい~^^;
上海への出張から帰ってきました。あれこれ準備に時間が取られて、最後の方はパニックになっておりましたが、なんとか出発。
ブログにご挨拶を書く時間もなかったのですが、向こうに着いてから、多少高くついてもタブレットで書き込めるか、だめでもホテルのWiFiでなんとかなるかな~と思っていたのですが。
あ~、さすがに中国でした。「コーヒーにスプーン一杯のミステリーを」なんて怪しいブログは閲覧不可!って感じだったのでしょう。あまりあれこれ見ていませんが、見ることのできるものはYahooとか、ごくわずかでした。Wikipwdiaもダメだったなぁ。たった2時間半、飛んだだけなのに、しっかり異国、そしてしっかり中国でしたね。
帰りの飛行機は、飛んでくるのに1時間遅れて、出発もプラス1時間遅れ。「出発の順番待ちだということですが、時間も教えてもらえないので何時に出発できるか定かではありません」的な、ちょっと切れ気味の機長のアナウンスが……(いや、あくまでも紳士的に切れている?)
各国からやってきた人々の半分くらいの送迎はすっぽかされたり(時間どおりに動いていない)していたようで、う~む、なかなか大変でした。それに何より、高所恐怖症の私(登るのも、見上げるのもダメ)、心拍数が上がりっぱなしでした。ホテルと会議場の隣にでっかいテレビ塔が……(T_T) 見回したら、高いビルばかり……(@_@) しかも台風~
私にとっては20年ぶりの上海。いや、もう一見は別世界でした。あの頃はまだまだ、「南京路に花吹雪」って雰囲気が香っていましたが(これで反応する人は年がばれますね^^; 昭和初期の何とも言えない時代を舞台にした某漫画)、今や、もう……でも、路地を入ると……
ほとんど会議室に缶詰だったので、あんまり土産話もないのですけれど、とにかく、20年前はなかったトイレのドアがあっただけでも良かったです。また時々写真でもアップしますね。
隊道
今回の一つ目はこれ。上海ディズにではありません。なんと、川の両岸を繋ぐトンネルトロッコの道。いろんなきらきらが出てくるのです。なぜキラキラ?
というわけで、コメ返およびコメ周り、もう少しお時間くださいませ。今週末もお仕事2つ掛け持ってるんです(T_T)
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Category: つぶやき

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【雑記・小説】会話って奥深い!~『北の国から』に学ぶ、男の子って!~ 

S 「あばよ」
J 「あばよ」
S 「やっと富良野から逃げ出せるぜ」
J 「やっと富良野が静かになるぜ」
S 「あの馬鹿によろしくな」
J 「誰だ、あの馬鹿って」
S 「努の野郎よ。あいつ見てたら昔のお前、思い出したぜ。こっちに来た頃のもやしっ子みたいな、弱虫のくせに生意気で、最悪だったよな。あいつとほんと、よく似てたぜ」
J 「じゃ、今の俺はどうなんだよ」
S 「 (ここがどうしても聞き取れない)……まぁ、死なないで生きててくださいよ」
J 「おたくも、しっかり生きててくださいよ」


何なんだ、この会話! ちょっと萌えるぞ! と久しぶりに『北の国から』を見て思いました。会話をしている二人は多分、中学校1年生?位の設定。
『北の国から』と言えば、1981年からドラマ~スペシャルと制作されて2002年の遺言まで、同じ役者を使って撮られた、今考えてみれば奇跡のようなドラマ(ハリポタより断然長い!)。
残念ながら私のひいきの正吉くんは、あまりにも長い年月の間に役者さんが一般人になってしまったため、最後の方は声だけだったり手紙だけだったりしちゃいましたが……

離別と不倫と離婚が妙に多いのが気になるけれど(脚本・倉本聰氏の構想の中での続きは、まださらに離婚やら福島の原発にまつわる話もあったよう)、まぁ、よくもこの長い年月、さだまさし氏の「ああ~、ああああ、あ~あ~」や田中邦衛氏の物まね、純の語り「~しており」「~なわけで」「そんなことは全然知らなかった」なども含めて愛されてきたように思います。

でも、若い人はあまり内容を知らないだろうし、ストーリーを説明してと言われたら、結構困りますよね。
妻の不倫をきっかけに故郷の富良野に二人の子供(純と蛍)を連れて帰ってきた五郎が、大自然、厳しい社会とあれこれありながらも生きていく話、といえば、まぁそんな感じ? でも若い人が思うほど、大自然は素晴らしい!って話じゃないし、家族で力を合わせて生きていこう!って話でもない。むしろ、周囲の出来事は何もかも、自然も含めて、過酷だったりする。

ちなみに、このドラマについては、以前にも記事を1つ書いております→【物語を遊ぼう】15.名シーンを書きたい~『北の国から』'98時代~(蛍にプロポーズしようと花を贈り続ける正吉の某シーンについて)

さて、今回の会話は、そういう「シーン」の感動ではないのですけれど。
このお話、改めてみてみたら、博打で借金作って保証人の五郎にすべて背負わせて富良野から逃げちゃった正吉の母親・みどり、とか、理由はよく分からないけれど不倫して家を出て病死した母親とか、その妹も不倫相手と結婚したりとか(しかもまた離婚する)、借金だけを残して家族を捨てて富良野を出て行ったのにボケて帰ってきて、自分の山がまだあると思い込んでいるじいさんとか、あれこれ先走って結局先に死んじゃって後に残されたものが借金や経営で困ることなったあんちゃん(草太)とか、まぁ、ほんとに、結構どうしようもないなぁという人ばかりなんですよね。主人公一家も例に漏れず。
ヒーローも居なければ、ヒロインも居ないし、ものすごい悪人も居なければ、ものすごくいい人も居ない

思えば、最近の流行のドラマでも映画でも、もう少し明確な性質を与えられた登場人物が多いような気がします。いわゆる「キャラが立っている」ってことなんでしょうか。悪人にしてもかなりエキセントリックで存在が際立っていたり、ギャップ萌えが求められたり、わかりやすく角があって、記憶に残るようなキャラ。普通の高校生の女の子、という主人公であっても、学年で一番かっこいい男の子と恋愛しているってだけで、もう「普通じゃない」ですよね。そして、仲間は大事だ!家族は素晴らしい!前向きに生きよう!的な話になっていったりで、それはそれで悪くないし、面白いんですけれどね。

でも、この昔のドラマ、なんだかみんな、本当にどうしようもないんですよ。どうしようもなくて、情けなくて、悲しくなっちゃう。そしてまぁ、昭和歌謡の似合うことと言ったら! 
雨がいい人連れてきてくれたり、時代は回ったり、今はもう悲しい歌聞きたくないと言われたり、恋人よ、側に居て、と泣いたり、あのメロディと歌詞のムードは、今の物語には合わない。時代には時代の音楽があるのですね。

子供たちだって、無邪気でかわいいわけでもない(かといって、残酷なばかりでもない)。
友達にそんなひどいこと言ったりしたりしちゃダメでしょ、人のもの盗っちゃだめでしょ、みたいなことをしちゃって、でもそれも、ほんとに、あ~なんか子供ってそういうのあるわ、と身につまされるような部分が多くて、逆に身につまされすぎて見てられないときもあったりして。
でも、言葉も解説もなく、大人がどこかで見守っていて、あるいは時が味方して、罪を正すとかかっこいい展開なんてなくて、それでも結構それなりに友達と関係を築いて、それなりに大人に成長していく、何も際だったことのない、普通の子供が普通の大人になっていく、ひとつの普通の人生。
あ、このドラマで際だっていると言えば、五郎の生活スタイルかも? それにしばしばシーンに挟まれる小動物たち。

上の会話は、純と正吉の別れのシーン。
前の冬に五郎の、つまり純と蛍の家が焼けたとき、本当は自分がストーブの上の物干しに濡れたシャツを放り投げたのが火元になってしまったのに、自分はやってないと言ってしまった純は、その後「自分がやったかもしれません」と告白した正吉やみんなの前で本当のことを言えないままになっていたのですね。
正吉は、自分の母親が五郎に迷惑をかけたこと(借金の保証人にして逃げちゃった)、自分を置いて富良野を出て行ってしまったので五郎の家に引き取られて純や蛍と一緒に暮らしていたのもあって、思わず罪を被っちゃったようなのですが(二人とも慌てていたので記憶が曖昧だったのもあるかも)、どこかで純が「僕がやった」とか言ってくれるかも、と思っていたかもしれない。
でも、純は結局言えないまま。

正吉は正吉で鬱屈していて、都会からやってきた努という少年(マイコン!を持っていることを自慢したり、五郎の悪口を言ったりした)が持っていたマイコン(時代ですね~)の雑誌を物欲しそうに見ている純を見て、その雑誌を勝手に持ってきてしまう。
またある日、純・正吉・努の三人で一緒に筏下りをして、みんな川に落ちて溺れかけて、けんかになってしまって、努を雨の中に裸で放り出してきてしまう。放っておいていいのかと心配する純に、悪いのはあいつだと言う正吉。

そんな正吉の言葉の端々、お前はやっぱり卑怯者だという言葉から、火事のことで自分が本当のことを言えなかったからだと感じる純。そして、五郎に問い詰められて「全部正吉がやった」と言ってしまった純に、五郎が「そうか。悪いのは全部正吉だな」と言われても何も言えなかったのです(ちなみに、正吉と別れた後で、告白したのですが)。
何も語られていませんが、もちろん五郎は感づいていますよ。正吉だけが悪いんじゃないって。火事のことだって、多分。
そんな中で、正吉の母親みどりがなんとか息子を引き取れるようになったからと、正吉を迎えに来る。

そして、男の子って! な冒頭の会話になるわけです。
正吉だって、純が本当は申し訳ないと思っていることは分かっているし、自分だって悪かったこともあったし、一方で純だって正吉に謝りたいと思っているのです。でも、何も言えないまま別れの時が来る。
いよいよ別れの時なら、ドラマ的には、もうちょっと「ごめんな」「いいよ、もう。俺も悪かった」とかなんとか言うんじゃないの? 
(花男だって、「ど~みょ~じ~、私まだ大切なこと何も言ってないよ」ってな会話がちゃんとあったのに。あれ? 例えがおかしいな)

いや、これでいいんです。言いたいことは何にも言葉になっていないけれど、伝わっているんです(多分)。
別れの時。
一人みんなから離れて背を向けたまま、ホームの柱にもたれている純。みんなと挨拶を交わしながら、純をちょっと気にしている正吉が、ふらっとその柱に近づいていって、同じようにもたれかかって、柱を挟んでお互いに背を向けたまま、顔も合わせずに、ぽつりぽつりと交わされたのが上の会話。

伝わっているのか伝わっていないのかもよく分からないけれど、申し訳なくて皆の前に顔を出せないみどり(正吉が火事を出したと思っていて、自分も正吉も本当に五郎に迷惑をかけたと思っている。けど、懲りないところもあるお母ちゃん)に列車に引っ張り込まれて、最後に手だけ窓から出してピースサインする正吉。
何も言えなかったけれど、「しょうきち、顔出せ」と念じながら列車を追いかける純。結局、顔をまっすぐ見ることも、謝ることもなく、別れていく(この時は)。

もしかすると、ちゃんと伝わっていなかったかもしれないけれど、そんな嫌でダメなところもひっくるめて、納得していて、友達なのかも。お互いそんな奴だけれどそれでいいと思っているのかも。

何で、こんな何も名言のかけらもない会話に萌えているの、大海は、と思われているような気もしますが、これはもう、萌えるでしょ。気持ちは言葉になっていないのに、何かが伝わっている……あるいは、細かいことは伝わっていなくても、何かを共有している。
子供ってまんまで、面白いなぁ。
あぁ、映像は表情がありますからね。一方で、小説は少し分が悪い。これを小説でどう表すか。どう読み手に感じてもらうか。
ついつい、読者さんの想像力に頼ってしまうのですけれど(^^;)

男の子って!
そういえば、このセリフ、ハーマイオニーも同じことを言っていました。
ハリーとロンがけんかしていて、謝りたくても謝れないので、直接会話せずにハーマイオニーを伝言板みたいにして言いたいこと(伝えたいこと)を言う。それでもちゃんと何かが伝わっていて、なんだかんだ言っても、怒っていても、上手く謝れなくても、結局は親友である二人に対して、ハーマイオニーがつぶやいたのですね。

ハリポタでは、けんか中のハリーとロンは口もきかないけれど、純と正吉は「肝心なこと以外」ではちゃんと友達の会話をしているんですよ。でも、何かの拍子に不信が顔を出してしまったり。そのあたりもまた、なんだかもどかしくて。
でも、冒頭のような会話、表向きはただの会話なのに、その背後にある感情がじわじわと文字(言葉)からわき上がってくる。書かれていない「言えない部分」がなおさら浮き上がってくるような。

これって実は、書けそうで書けない、ちょっと高度な会話に思えたのでした。

Category: 小説・バトン

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【8888Hitリクエスト・短編】人喰い屋敷の少年・(9)秘めごと 

limeさん
【人喰い屋敷の少年】第9話です。一応あらすじなど、書いてみました!
最初から読むための目次はこちら→【人喰い屋敷の少年】目次

あらすじ
唐沢探偵事務所の見習い探偵・相川真が留守番中に、松岡綾という女性が「もうすぐ失踪して7年になる夫の圭吾の生死を確認して欲しい」と依頼をしてきた。探して欲しい、ではなく、生死を知りたいという依頼に不穏なものを覚えながらも、綾の「夫は人喰い屋敷に喰われた」という言葉を聞いて、カグラの店にやってきた。
カグラの店ではしばしば、そのような都市伝説のような話題が持ち上がり、その日もまた、店には「作家」「教授」「窓さん」などいつも顔を合わせる連中がいて、真の持ち出した「人喰い屋敷」の話題に飛びついてきた。
店を出て彼らと一緒に潜り込んだ、噂の人喰い屋敷で、真は白い猫を抱いた少年に出会う。

翌日、真は唐沢所長と一緒に、元刑事だったという松岡圭吾の消息を訪ねる。松岡は「あまり良くない噂の多い」悪徳刑事だった上に、妻の綾に対して暴力を振るい、自分の相棒である真田と綾の関係も疑っていた。誰も、松岡圭吾に対しては良い感情を抱いていなかった。松岡の失踪を調査していた元刑事で喫茶店店主の田代も、真田と綾は好き合っているに違いないから、一緒になったらいいのにと7年の年月が過ぎ去るのを待っているように見えた。

一方、真の先輩探偵・三上はある養護施設からの依頼で調査をしていた。唐沢は相当金にあざとい男でもあるが、養護施設からの依頼だけは、どんなに些細なものでも断らない。今回の依頼は、養護施設からいつも少年がひとり抜け出しているのだというもので、その少年の写真を見て真は驚いた。真が人喰い屋敷で見かけた少年・ルカだった。
ルカは「死んだ人が見える」と言うので周囲に溶け込めずにいるようで、心を開かない少年だった。一度、門倉という家に引き取られたのだが、ある日何も言わずに戻ってきたことがあるという。門倉家はルカを引き取った年配の夫婦が亡くなっており、弁護士に後のことを任されていたようだったが、詳細は分からないままだった。
その門倉の屋敷、というのがなんと、「人喰い屋敷」だったのだ。

真は、偶然とは思えない依頼の重なりに唐沢を問い詰めるが、唐沢は綾がかかっている精神科の病院を教えてくれるだけだった。しかし、どうやら依頼の裏には、綾の本当の願いが潜んでいるように思えた。
今では誰も住んでいない人喰い屋敷に残る、誰かが潜んでいる気配。真が人喰い屋敷の中で見つけた絵に描かれた、ルカそっくりの少年。私は人を殺した、と精神科医に打ち明けていた松岡綾。彼女の旧姓は門倉、といった。なくしたものを探し出すように彼女が描く絵。そして、「作家」「教授」が話していた「人が周りとの接触を一切断ってしまったら、その人間の存在を証明することはできないのかどうか」という問い。

もうすぐ、綾の夫、松岡圭吾が失踪して七年。果たして、彼は……
真は不動産屋を訪ね、最近「人喰い屋敷」の隣の家を借りた人間がいることを確かめていた。そして今、真はその家で借り主と会っていた。しばしば顔を合わせていたものの、正体を知らなかった飲み仲間に。
そしてその時、隣の人喰い屋敷から、少年の悲鳴が聞こえてきた。

*冒頭のイラストの著作権はlimeさんにあります。

登場人物
相川真>大学を中退し、唐沢調査事務所に勤めている私立探偵見習。子どもの頃の遊び相手はコロボックルという不思議青年。3年ほど前に崖から落ちて生死の境をさまよってから、ますます霊感に磨きがかかっているという噂もあり。
カグラ>真の上司・唐沢が出入りする三畳酒場の女主人。本人がホラーのような存在。
作家>カグラの店の常連。本当に小説家かどうかは不明。真を観察して小説のネタにしようとしているらしい。
教授>カグラの店の常連。何の教授か、本当に教授か不明。おっとりとした声で理屈を言うのでそう呼ばれている。
窓さん>カグラの店の常連。いつも酔っ払っているサラリーマン。
松岡綾>真の依頼人。7年前に失踪した夫・松岡圭吾の生死を知りたいという。
ルカ>「人を喰らう屋敷」で真が出会った、白い猫を抱いた少年。
唐沢>真の勤め先『唐沢調査事務所』の所長。戦時中は十代、その後アメリカにも長く住んでいた、傭兵あがりのおっちゃん。ギャンブルと酒と女が好き。ちゃらんぽらんだが、どこか憎めない。
三上>真の勤め先『唐沢調査事務所』の先輩。真のいいアニキ。
田代>7年前、綾の夫・松岡圭吾の失踪事件を調査した班の元刑事。若くして警察に嫌気がさし、今は喫茶店をやっている。
真田>綾の夫・松岡の元同僚の刑事。松岡は、綾と真田の関係を疑っていた。



【人喰い屋敷の少年】(9)秘めごと


「ルカ! どこにいる!?」
 少なくとも、大声を出して誰かが彼を助けに来ていることを知れば、ルカの身に迫った危険が去ってくれるかもしれないと、その時はそれしか考えていなかった。

 ルカの声が聞こえたのだから、自分の声も届くはずだと思ったが、声は一瞬で闇に吸い込まれる。音は上に登ってくるが、平行方向へは壁が邪魔をする。
 真は、何度も潜ってその感覚をすっかり覚えていた秘密の通路を一瞬で通り抜け、一直線に先日開いていた窓に向かった。しかし、その窓は固く閉ざされている。

 屋敷の中から何かが倒れるような物音が響いてきた。
 ルカ!
 器物破損に及ぶにも、周囲に適当な石も落ちていない。すべての窓を見て回る余裕はない。ルカはどこから入った? 先日潜り込んだときに唯一人の気配のあったのは、玄関脇の小部屋だった。子供部屋のようだった。あの部屋の窓はどうだ。
 真は建物の周囲を探りながら走った。

 目は闇に慣れてきているし、さっきまで居た貸家の灯りがぼんやりと届いてきているものの、とても足下を確かにしてくれるものではない。しかもこの屋敷の中から灯りが漏れてきている様子はない。足元に何か障害物があったらすっ転んでしまうかもしれないが、構っていられなかった。
 予想に反して、小部屋の窓も閉まっていた。

 そのとき、再び屋敷の中から振動が響いてきた。すぐ側からではない。建物の対面だ。
 真は建物の角を回りかけて、足を止めた。いや、足に何かが纏わり付いてきて、真の足を止めたのだ。
「シャーロック」
 白い猫だった。猫の目が闇の中でもはっきりと黄金に光った。

 猫は真が自分を認識したことを確認すると、玄関の方向へ滑るように移動していった。
 シャーロックの影は真を導くように、闇の中でも靄のように白く浮かび上がっている。その白い靄がするりと何かの隙間に潜り込んでいく。
 玄関の扉がかすかに開いている。
 その隙間から、また何かが倒れるような鈍い音が聞こえた。

「ルカ!」
 真は我に返り、叫びながら玄関扉を引き開けて走り込んだ。その先の暗闇に、床だけがうっすらと白くにじんで見える。
 あの部屋はリビングだったか。ルカにそっくりの少年がシャーロックを抱いている絵が置いてあった。漏れてくる光は頼りないが、非現実ではなかった。懐中電灯か何か、床に転がっているのかもしれない。
「やめて!」

 今度は明らかに聞き覚えのあるルカの悲鳴だった。真は一度玄関の三和土に足を取られながらも軽い身のこなしで廊下に飛び上がり、微かに白んだ靄の中へ飛び込んだ。
 とたんに、何かが視界の中で光る。
「ルカ!」

 暗闇に慣れた目は、光に目を焼かれた。それでも光の中にルカがいると分かっていた。シャーロックの影だけは、光にも闇にもかき消されずに真の前にあったからだ。
 そのシャーロックがシャーとうなった声のままに、真は光に手を伸ばした。
 キラリと何かが跳ね返った。

 とたんに、鋭い痛みが腕をかすめた。どこまでが現実か分からない。だが、痛みと同時に床に倒れ込んだことだけは確かだった。鋭い痛みを受けた腕は何かにぶつかり、また別の何かにぶつかって絡み、もつれ合うように倒れ込んだ。
 腕に抱き取った重みは確かにルカのものだ。
 同時に、真の網膜は、床だけを照らしている光の中でナイフの残影を捕まえた。

 まるでスポットライトを浴びたように、床に転がったナイフだけが浮かび上がる。とっさに腕を伸ばして押さえようとしたが、同時に別方向から誰かの手がナイフに伸びてきた。
 真の指がナイフにかかると同時に、その手が真の手からナイフをかすめ取ろうとした。真の方がナイフまで遠くて、明らかに分が悪かった。

 指先からナイフの質量が消えたとたんだった。
 光が床から消えた。
 正確には、光がいったん浮き上がり、大きくグラインドして、別の場所へ焦点を移した。真はいつの間にか、ナイフに背を向けて自らの体で抱き留めたルカを庇っていた。とっさに、ルカを守ろうと身体が反応したのだ。

 その体勢から、突然場所を変えた舞台のスポットライトを振り返ったとき、真は光の中に意外な人物の顔を見た。
 いや、どこかで絡んでくるとは思っていた。だが、今ここにいるのは別の人物だと思っていた。
「窓さん……」
 いつも酔っ払っている姿しか見ない「窓さん」の腕が、床に呆然と座っている白い影に伸びて、「彼女」を助け起こした。

 光源の向こうの人影が、霧の中に浮かぶ強大なドッペルベンガーのように揺れた。
「いや、これは意外で面白い展開になりましたね。いささか役者が足りない上に、シーンは番違いのようだが」
 落ちた懐中電灯を拾い上げた影は、真を追いかけてきた「作家」だった。光は床に散った赤い血を追いかけて、真の腕を探り当てた。

 真の腕からもがくように逃れて、真の傷と出血に気がついたルカが、突然わめくような声を上げて、自分の手で傷を塞ごうとでもするように真の腕を握った。
 真はルカの手を優しくつかみ、大丈夫だと言った。誰かの痛みにとっさに反応するのだから、この子は死者が見えるとしても、その精神はずいぶんと健全だ。少なくともここに集まっている裏表のありそうな大人たちに比べれば。

「だが、今はとにかく探偵さんは手当が必要なようだ。こんな暗闇では何もできない。どうでしょう、俺の部屋に来ませんか」
 誰もが不承不承だったろうが、その言葉には従わざるをえなかった。確かに、ここには頼りない懐中電灯しかなく、真実を語る場にはふさわしくない。

 何かに突き飛ばされたのか、あるいは自分から倒れこんだのか、「窓さん」が複雑な表情で床に座り込んでいたが、その「作家」の言葉に首の後ろを軽く叩き、それから自分の側に呆然と座り込んでいる女性の腕に軽く触れて促した。
 光の加減だったのかもしれないが、彼女の顔は真っ白だった。唇にも色はなく、視線が定まらず彷徨っていた。彷徨いながら、やがてゆっくりと自分の腕に触れている「窓さん」の手に視線を固定し、それで初めて意識が返ってきたように見えた。

「あなたじゃないの」
 彼女は小さくつぶやいた。何を問うたのか、真には分からなかった。
 部屋を去り際にルカを支えながら立ち上がった真の目に入ったのは、ナイフで裂かれた一枚の絵だった。


 出血はそれほど多くはなかったにもかかわらず、興奮していた雰囲気を鎮めるには十分な傷だった。
 結果的にはかすり傷で、消毒と圧迫だけで済んだのだが、松岡綾は誰かが何かを言う前に真の傷の手当てを始めていた。自分のせいで真が傷を負ったということに申し訳ないと思っているような様子ではなく、ただ目の前に湧いて出た仕事を片付けているだけという淡々とした動作で、その指先は冷たかった。

 ルカは唇を強く引き結んだまま、真の側に立っていた。座るように椅子を差し出されても座ろうとしなかった。唇には色がなく、頬は白かったが、伝わってくる気配は綾よりも遙かにしっかりしたものだった。
 今は、彼の側にシャーロックの影はない。

 シャーロックが見えるから、ルカは真を信用した。
 実際のところ、真には時々、生きているものと既にこの世のものではないものとの区別がつかない。人間ならともかく、動物ではなおさらだった。シャーロックが生きている猫かどうか、というよりも死んでいる猫かどうか、今でも真にはよく分からない。
 ルカは多分そのことを察知したのだろう。

 ルカもまた、他人の目に何が映っているのかを窺い、自分に見える世界と他人が見ている世界の違いを確認している。自分が他人と違うものを見ているならば、それを悟られないように、用心深く、自分を隠しながら。

 もっとも、世の中というものは、誰の目に映っていても、すべて同じであるという保証はないし、確認することもできない。網膜と脳、二つのフィルターを通している間に、大きく歪められていても、原型がどんなものであったか、本当のところは分かるはずもない。新生児の視力は0.01、六ヶ月の乳児でも0.1ほどで、脳の発達とともに認識可能となっていくこの世界は、もしもその時脳が認識違いを起こしていたら、他の人たちとは相当違った像を結ぶようになっているかもしれない。
 もしかすると、七十億の人間は七十億の別の世界を描いているかもしれない。

 それでも、死んでしまったものが見えると言えば、かなりねじがぶっ飛んでいると思われても仕方がない。
 ルカは包帯を巻かれた真の腕ばかり気にしている。真はそっとルカの腕に触れてやった。心配しなくてもいい。その言葉は多分ルカには伝わっただろう。

 そして、今さらに一人、真の目の前に座っているのは、難しい顔をしたままの「窓さん」だった。酒が抜けているからか、あるいは芝居をする必要がなくなったからか、いつものただの酔っ払いではなく、深刻で怖い顔のまま綾の手を見つめている。
 この中で「作家」の顔だけは艶があって、いかにもこの状況を楽しんでいる様子だった。

「なるほど、ちらりとあなたの役割を考えたこともあったが、俺のシナリオにはなかった。こういう意外性は小説には大いに必要ですからね。実に興味深い。是非とも説明していただきたいものだ」
「窓さん」はちらりと「作家」を睨み付けてから、真を正面から見た。
「うちに訪ねてきた『探偵』はあんたか。俺だということを確かめに来たのか」
 真は頭の中でパズルをきれいに当てはめる時間を置いてから答えた。

「そうです。松岡綾さんのご主人、松岡圭吾さんのことを調べに行って、あなたの後輩の喫茶店に行った。その時、店の前ですれ違いましたよね」
「なるほどね。あの時、あんたたちを見かけて慌てて店から逃げだしたんだが、あんたがこっちを振り返った時には、俺だと気がついていたわけか」
「酔っ払っていようといまいと、人の骨格、歩き方の基本的な癖や雰囲気というのは変わりませんから。窓さん、いえ、真田刑事、聞くまでもないことかもしれませんが、『誰を』見張っていたのですか」

 真の傷の手当てを終えて、側に座っていた綾が初めて意識を取り戻したように顔を上げ、じっと真田を見つめた。
 綾の夫・松岡圭吾にその仲を疑われていた男女だ。だが、真田の目はあくまでも刑事の目だった。何かを疑い、何かを探っている。そして、綾の目の中にあるのもまた、愛とは別の何かだった。何かを畏れながらも、何かを期待し心を奪われている。
 あるいは、誰かを一緒に闇に引き込みたいと願う目かもしれない。

 綾が通っている病院の医者は倫理的配慮を盾にはっきりとは言わなかったが、綾が心に抱えている闇の気配は、真には直接伝わってくる。彼女を見ていると、閉じ込めたはずの記憶の引き出しの鍵が回りそうな気がする。
 だから、真はあえて綾を見なかった。

「やれやれ、探偵さんを出し抜いているつもりでしたが、これはどこかで一杯食わされていたようだ。窓さん、いや、真田刑事、つまりあなたは始めから俺と同じ『誰か』を見張っていたわけですね」
 それでも「窓さん」、いや真田刑事は何も答えなかった。
 ちらりと真を見て、煙草に火をつけてひとつ吹かすと、一瞬、恐ろしく冷めた目で綾の手元を見た。
 真はルカが不安そうに二人の表情を窺っていることに気がついた。

【人喰い屋敷の少年】(10)に続く。



最初に真実を語るのはなんと「窓さん」でした。
さて、人喰い屋敷には何が隠されているのでしょうか。
死体? それとも。

Category: ★短編(1)人喰い屋敷の少年

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【雑記・小説】自作を語るのはまだ早い?(3)~『人喰い屋敷の少年』 

 【雑記・小説】自作を語るのはまだ早い?(1)~『死と乙女』
 【雑記・小説】自作を語るのはまだ早い?(2)~『奇跡を売る店』


『自作を語るのはまだ早い?』シリーズ?の第3回目。
今となっては、連載中に時間が経ってしまっている作品のおさらい会みたいになってしまっております。粗筋だけ書いてあるものの、細かい確認が終わっていなくてまだ穴だらけなのでとてもアップできないでいる間に、眠れないくらい忙しい日々が続いて、時が過ぎ……数少ない読んでくださっていた方ももう忘れておられるだろうなぁ~。
というわけで、自分もおさらいです^^;

まずは真シリーズの短編・中編について。
本編がかなり文字数も多くて長いので、とても読んでられないわ、と思われているでしょうし、広く興味を持ってもらえるような話でもないので、もう少し短い話をいくつか書いて、このシリーズの登場人物たちに興味を持ってもらおうと始めた短編ですが、結局私が書くと長くなるということを暴露しただけでした。

短くきゅっと締まった話を書きたいんだけれど、ついついその人物の背景とか考えていたらそれが楽しくなっちゃったりして、必ず予定より長くなる悪い癖。きっと物書きのプロもしくはプロに近い人たちは、そういう枝葉をすべて払って、シャープでクールな物語を作り上げるんだろうなぁ、とアマチュアの下の下の私はしょんぼりすることばかりですが、楽しく書くこと、登場人物たちのいろんな側面を知ってもらうことが大きな目的の1つと割り切っておくことにします(って、開き直りか??)。
limeさん
さて、この『人喰い屋敷』ですが、もともとは8888Hit企画で小説ブログ「DOOR」のlimeさんが「このイラストに小説を」とリクエストをくださったのでした。
(申し上げるまでもありませんが、この絵の著作権はlimeさんにあります。無断転用はご遠慮ください。)
わ。すごい前の話だ!

さて、今回は、登場人物たちを整理してご紹介することで、物語を思い出していただこうという、ちょっと姑息なな記事です(@_@)

登場人物
相川真>大学を中退し、唐沢調査事務所に勤めている私立探偵見習。子どもの頃の遊び相手はコロボックルという不思議青年。3年ほど前に崖から落ちて生死の境をさまよってから、ますます霊感に磨きがかかっているという噂もあり。
本編ではすでに自分の調査事務所を経営しておりますが(唐沢が詐欺その他余罪で逮捕されたため独立)、この時はまだ雇われ探偵。共同経営者の柏木美和に尻に敷かれている真もいいけど、唐沢のおもちゃにされているようで頑張って躱している真も楽しんでいただけたらと思います(*^_^*)

カグラ>真の上司・唐沢が出入りする三畳酒場の女主人。本人がホラーのような存在。店にはカウンターしかなく、安い酒しか置いていない。
『奇跡を売る店』の玉櫛よりもさらにたちの悪いばあさんかも。ファーストシーンはこの酒場でした。「誰にも存在を認識されなくなったら、すなわち存在していないことになるのか」なんて話題で盛り上がっていたのですが……

「作家」>カグラの店の客。本当に小説家かどうかは不明。真を観察して小説のネタにしようとしているらしい。
「教授」>カグラの店の客。何の教授か、本当に教授か不明。おっとりとした声で理屈を言うのでそう呼ばれている。
「窓さん」>カグラの店の客。いつも酔っ払っているサラリーマン?
飲み屋でいつも顔を合わせる「知人」のこと、どれくらい知っているかなぁ? ということからこの3人が登場。いつも会っているのに、家も知らない、職業もよく分からない、でも結構いろんな話をしていて、よく知っているような気がしている。ブログの世界もちょっとそんなところがあるかも。

松岡綾>真の依頼人。7年前に失踪した夫・松岡圭吾の生死を知りたいという。「死んでいたらそれでいい」という言葉の中に秘められた彼女の想いとは?
自分は人を殺した、と主治医(精神科医)に言ったりもして、どこか壊れているように見えるかもしれないけれど、実は結構したたかな女かも?

ルカ>「人を喰らう屋敷」で真が出会った、白い猫を抱いた少年。児童養護施設に住んでいる。死んだ人が見えるらしく、真とはちょっと通じるものがある?
かつて、一度「門倉」という家に引き取られたことがあるが、施設に戻ってきた。引き取られている間のことは何も話さない。limeさんの絵の中の猫は「シャーロック」。ルカ曰く「あの子」がそう呼んでいた、と。
limeさんが描いてくださった少年ですから、特殊能力持ちにしてみよう! と思って書いているけれど、やっぱり特殊能力者はlimeさんにお任せした方がいいなぁとしみじみ思うのでした。私が書くと、どこかしぶといキャラになる^^;

唐沢>真の勤め先『唐沢調査事務所』の所長。戦時中は十代、その後アメリカにも長く住んでいた、傭兵あがりのおっちゃん。ギャンブルと酒と女が好き。ちゃらんぽらんだが、どこか憎めないところもあるが(ないかも?)、その中身は「深い井戸」。そこに何かがあるような気がするので、気になるから下まで降りてみたけれど、何もなかったって感じのおっちゃんで、金にはあざといのに、養護施設からの依頼はほとんどただで受けている。

三上>真の勤め先『唐沢調査事務所』の先輩。真のいいアニキ分。唐沢と同じ戦災孤児で、もともと養護施設の先輩後輩の腐れ縁。唐沢は三上にとって「捨てられない親のようなもの」。今回は、養護施設を抜け出してはどこかに行っている(『人喰い屋敷』に?)ルカの行き先を確認して欲しいと依頼を受けていた。

田代>7年前、綾の夫・松岡圭吾の失踪事件を調査した班の元刑事。若くして警察に嫌気がさし、今は喫茶店をやっている。
真田>綾の夫・松岡の元同僚の刑事。松岡は、綾と真田の関係を疑っていた。

こんな人物たちがうごめいている物語ですが、最終話まであと少しです(のはずです^^;)。
誰かが幸せになる話でもないし、華やかさもない話ですが、町の片隅に、普段通りかかってもとてもドアを開ける気がしない店があったり、隣り合っていても中で何が起こっているのか知らない家がたくさんあったり、生きているけれど誰からも存在が認識されていない人もいるのかも……そんな都会の街が、もうひとり(ひとつ?)の登場人物なのかもしれません。

Category: 小説・バトン

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