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コーヒーにスプーン一杯のミステリーを

オリジナル小説ブログです。目指しているのは死体の転がっていないミステリー(たまに転がりますが)。掌編から長編まで、人の心を見つめながら物語を紡いでいます。カテゴリから入ると、小説を始めから読むことができます。巨石紀行や物語談義などの雑記もお楽しみください(^^)

 

【石紀行】43.福島飯野町・UFOの里の巨石(4)~いつかまた・赤岩~ 

赤岩山前の巨石2
引き続き、福島県飯野町の巨石です。
前回、1日かけて飯野町の巨石巡りをしているとき、なぜかここで引き返してしまった赤岩に戻ってきました。この山を再訪するために戻ってきたと言っても過言ではない場所です。
『神社の鳥居手前に重ね餅のような巨石があり、鳥居より91段の石段を登りつめたところに観音堂、さらに43段登ったところに赤岩稲荷神社があります。』
この看板を読んだはずなのに、なぜか「さ、帰ろ」となってしまったのはどういうことか、今でもよく分かりませんが、リベンジ飯野町の闘志を持って5ヶ月ぶりの再訪となったのでした。
その時の顛末はこちらに→【石紀行】37.福島飯野町・UFOの里の巨石(2)~村を見守る石たち~
赤岩鳥居
でも今日はなんだか「お帰り」と言ってもらっているようで、鳥居の向こうの階段も明るく感じます。
赤岩山前の景色
鳥居を背に振り返るとこんな景色です。3月の南東北の景色はまだまだ冬の気配を引きずっていますが、畦に水仙が咲き始めていました。
赤岩・水仙
鳥居の先に見える階段を上り、途中にある観音堂(大悲閣)に手を合わせます。
大悲閣
このお堂の左方向にまだ階段が延びています。
大悲閣~稲荷神社
赤い鳥居の先に赤岩稲荷神社がありました。
赤岩稲荷
ところで、どこも「赤くない」ですよね。看板の説明によると、次のような伝説に基づく名前のようです。
『その昔、八幡太郎義家が木幡山(二本松市)から石を投げて、落ちたところがここ赤岩山だそうです。その石が、落下して岩に当ったときに大きな火花が出て、 あたり一面の岩が赤く輝いたことから「赤岩」と呼ぶようになったと言われています。この赤岩稲荷がある赤岩山一帯は、巨石が重なってできていると 言っても過言ではなく、地下深くは巨大な岩盤になっているのが確認できます。
昭和37年から43年まで、町道の維持管理に敷き砂利を生産するために、町営の砕石場が置かれました。連日、 岩を爆破して採石した場所が現在もむき出しになっており、岩盤の様子がよくわかります。』
稲荷大神
赤岩稲荷神社の拝殿です。本殿はやはりこの背部の岩場でしょう。ところが……
稲荷社の右手
拝殿の右手に回って見上げると、上がっていけなくはないのですが、道がちゃんとあるわけでもなく。
稲荷神社奥の岩
左手から見ても「山頂まで登れる」ようには見えず。少なくとも、冊子にあるような「積み重ねられた巨石」らしきものの姿もありません。せめて写真で見た景色を少しでも、と、神様に「はるばる2度目の訪問です。少しお邪魔させてください」とお願いして、山に登らせていただきました。
稲荷大神右手星つき
ちょうど星印の辺りです。
oinarisann.jpg
そこに至るのはちょっと難しいのですが、ちゃんとお参りのできる足場がありました。紙垂も新しそうで、きちんと手入れをされているのが分かります。2月にはお祭りがあると書かれていたので、今もここは大事にされているのだろうなと納得し、手を合わせます。
おいなりさんお社
奥の方の穴は狐さんの住処にもなりそうです。そっと覗いてみましたが、今は雨宿りする神様もいないようです。
稲荷大神奥の穴
さて、山頂に至る道はあるのでしょうか。拝殿の左手に戻ってきました。
稲荷大神左手
途中までは行けそうなので上がってみます。先の方の地面に丸っこいものが見えていて、近づいてみると……
地球が埋まっている?
見事な丸みを見せてくれる巨石の一部です。地面に埋もれている部分はいったいどうなっているのでしょうか。きっとまん丸で、地球が埋まっているに違いないと、名も無き巨石としばらく戯れます。
が、この先には道がありません。もしかして元々はあったのでしょうか。以前にここを訪れた方のブログや、冊子の写真にも「山頂近くの人為的に積み重ねられた巨石」が載っていましたが、斜面は決して緩やかではなく、足場も悪く、繁った木々で進むことはできませんでした。木々の先にメンヒル状の岩は見えているのですが、重なっているようには見えませんでした。これが精一杯の視界。
赤岩山山頂はどこ?
後から考えてみると、もしかして他に道があるのかもしれませんが、周囲を散策するだけの残り時間もなく、またまた名残惜しくこの地を去ることになったのでした。
『胎内くぐりができる巨石や、人為的に重ねたような石碑状の巨石が頂上付近にそびえ、赤岩の象徴と言えます。また、 稲荷神社のお仕えとも言える狐が住むには、格好の場所で、方々に狐の出入りする穴が確認できます。』
冊子の説明文に「なるほど!」と言えるすべてをなかなか見せてくれない赤岩山。今回は少しだけ奥まで覗かせてくださった赤岩の神様は、お前、まだまだだな、と再々訪を待っていて下っているのでしょうか。
もしかして地球
でも、今回、お気に入りの岩を見つけました。いえ、私にとっての赤岩山の象徴? きっと全部が見えたら「丸く収まる」けれど、埋もれた部分を見ることは簡単ではない、この地球の一部のような丸い岩。見えるようで見えない、分かるようで分からない、そんな巨石たちが魅力的に見えるのは、やはり地球から生まれ出て、雨も風も受け入れながら、土に埋もれても木々に埋もれても、そこでじっとその場所を見守ってくれているからなのですね。
狐たちがこの小さな丸い地球の上で遊んでいる姿なんかも想像しながら、赤岩を後にしました。
重なったお餅のような巨石まで戻ります。この巨石の脇には大きな桜の木があります。
サクラ咲け
いつか満開の桜を見に戻りたい、この木を見上げながらそう思うのでした。
もしかして、山頂への道をご存知の方、是非ご教示ください!


次回は、飯野町巨石の最終回、豊作岩・くじら岩・方位岩です。
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Category: 石の紀行文(写真つき)

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2016年12月のつぶやきコーナー/12/25白菜って減らない 

<Twitter代わりのつぶやきとお知らせのコーナー>
【雑記・旅】地元観光にGo!~この期に及んで大阪観光~
【真シリーズ・クリスマスイヴ掌編】ラグタイム
【石紀行】42.福島飯野町・UFOの里の巨石(3)~飯野町の聖域・岩塚~ 



2016/12/25白菜ひと玉
この3連休、お掃除する元気もなく、結局、農家の方から頂いた白菜1玉(それもかなり巨大な)を消費することに費やしております^^;
えっと、お鍋(和風、ハーブ鍋)、白菜クリームシチュー、白菜と豚肉のミルフィーユ。
もう煮込むのは飽きてきたので、そろそろ炒め物でもしようかな。白菜ってなかなか減りませんね。最後は漬け物になるのか。
でも、ここのところ職場が遠くなって家で料理するパワーがなくなってたので、久しぶりに料理に時間を使ってみると、やっぱ楽しいなぁ。
実は今週になって、右腕がしびれて首を動かすのがしんどくて……肩こりですね。文字を打つのもちょっとしんどかったのですが、今日やっと「貼る」系のウォーマーで暖まっています。少しましかな。


今月の古いつぶやきは、「続きを読む」にあります。
-- 続きを読む --

Category: つぶやき

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【石紀行】42.福島飯野町・UFOの里の巨石(3)~飯野町の聖域・岩塚~ 

ご無沙汰しております、【石紀行】の再開です。
記事が遅れ遅れになっていましたが、その間に石を巡る旅だけは続いておりました。身近な石も巡らなければ、と兵庫県内の巨石を見て、その後は出張とボランティアで東北に行く機会があったので、併せて福島巨石巡りリベンジと、その巨石があることで「岩手」という県名になったという岩手県の巨石巡り、そして短い夏休み(といっても秋だけど)の岡山・広島巨石巡り、でした。
2016年1月 兵庫西宮:北山公園巨石群~甲山四国八十八ヵ所(甲山石仏)
2016年2月 兵庫淡路島:伊弉諾神宮~一宮町岩上神社~山王神社~先山千光寺~先山岩戸神社~三熊山八王子神社
2016年3月 福島巨石巡りリベンジ:飯野町再訪~夫婦岩・岩塚・赤岩・豊作岩・くじら石・方位石~
2016年3月 岩手遠野:呼ばれ石~続石~金勢様~羽黒岩~五百羅漢
2016年4月 岩手盛岡:石割桜~三ツ石神社~櫻山神社・烏帽子岩
2016年11月 岡山・広島石巡り:岡山総社・石畳神社~岡山玉野・玉比咩神社~広島宮島・弥山巨石群~広島庄原・日本ピラミッド葦嶽山と鬼叫山巨石群~岡山総社・最上稲荷の題目岩・八畳岩~岡山総社・岩倉神社
防備録代わりに書き出してみたら大変なことになっている! 
じわじわと参りましょう。
福島の巨石をご紹介していたところで止まっていたので、訪問順ではありませんが、2016年3月の飯野町からスタートです。


2015年に一度訪れた福島県飯野町で見残した巨石たちに会うため、2016年3月、飯野町を再訪しました。
飯野町には『巨石探訪』という冊子が発行されるくらい巨石が多いので、すべてを観て歩くにはかなりの時間を要するようです(巨石マップには32の石が載っている)。でも気になる石がまだ残っていて、なんだか呼ばれているような気もしたので、再訪させていただきました。
でも、今回改めて行ってみてわかったのですが、震災の影響でとても手を入れられない場所もあるようで、道なき道には慣れてきた私たちでも、草刈り機や電動のこぎりを持ってこない限りは近づけないとわかった場所が多くありました。巨石ファンとしては少し残念でもありますが、草の中に埋もれている巨石もまた別の顔を見せてくれるのです。
以前、山登りを趣味としておられる福島県の某地域の方のブログを拝見していたら、ご自身で放射線量を測りながら歩いておられて、ここは大丈夫、ここはまだ入っちゃダメだ、というような記事がありました。誰も正確な情報をくれないし、大丈夫なのかどうかも分からないから、自ら確かめて情報を発信しているのだと。福島から遠く離れた場所に住む私などは、その方の思いを想像するしかないのですけれど、山や自然を愛する人には辛い事には違いありません。それでも同じく山を愛する人のために情報を発信されているのですね。
では、気を取り直して参りましょう。なんといっても、この魅力的な岩塚の巨石をご紹介しなくてはなりません。
岩塚入り口1
飯野町の巨石は、比較的車道から近い場所にあるのは有り難いのですが、何しろ周囲は田畑に山で、近いとは言え景色に埋もれた岩を発見するのはちょっとだけ大変。「ここから上ってね!」という看板があったりなかったりで、その辺りは「嗅覚」を発揮するしかありません。
たとえば上と下の写真を見てください。
岩塚入り口2
これは道路脇の『岩塚』の看板の近くの景色。もちろん、下の方は道に見えなかったので、こっちかな?と思いながら上の写真の方の少し轍が残った道を徒歩で上がりました。轍があるのは軽トラックくらいは行けるからで、小山の奥にあるいくつかの家屋への抜け道だったようです。
その途中の左手に「岩塚」に上る階段がありました。
岩塚庚申塚1
ここには「足尾山」「猿田彦大神」「山祇神」「己待信心塔」「日吉神社」「三日月供養」「天熊人神祭印」「道主貴い神祭霊馬頭観世音」、さらに岩の割れ目には文殊尊がまつられています。
岩塚庚申塚3
可愛らしい草鞋が吊ってある木の下にも、山のてっぺんには塚がいっぱい。
岩塚庚申塚2
庚申などは宗教というよりも民俗学的な意味を持つものですが、こうして「グローバル」な世界になってみんな共通の神とか仏とかを信じることになったものの、そもそも「信じる」という行為はすごく個人的なことなんですよね。こうしてたくさんの石塚があって、それをここに寄進したたくさんの人たちがいて、そう思いながらこのたくさんの小さな石たちを見ていると、すべてひとつひとつ、別の神様で、小さくても重くて深いものを感じます。
岩塚庚申塚5
200塔ほども庚申塔があるそうです。
岩塚庚申塚4
大きな石もある。割れ目の奥に文殊尊……いらっしゃいました。
岩塚庚申塚6
でも、冊子の説明文には「岩塚は周囲が杉や松の林で囲まれており、まず始めに岩塚の西側の巨石が目の前に迫り、この石の大きさに圧倒されます」と書いてあります。う~ん、そんな巨石は見えないんだけれど。
岩塚庚申塚降りる道
でも、そう言えば、さきほど小さな石塚がいっぱい並んでいたところって……足元はなんとなくでっかい石だったような? ところが、ここからどうしたらいいのか、道らしいものはないし。
すると母が「あの松の倒木の先が気になる!」と言い出したのです。
岩塚巨石降りる
倒木を乗り越えていくと、下の方へ降りていく道がありました。ご覧の通り、木にロープが結わえてあって、これにつかまって降りなければならないような足場ではありますが、下に向かってみます。
岩塚巨石見上げる
途中に小さな祠がありますが、さらにそこから降りていきます。もう下には威圧感さえ覚える迫力ある巨石の姿が見えています。
岩塚巨石降りる3
後から振り返って思いました。上る方じゃなくてよかった……と。そう、実は反対から来ていたら上らなければならなかったのですね。でもここを降りているときはもうそれどころではなくて、ただただ見事な岩肌に感動しておりました。
あぁ、福島の岩に会いに戻ってきた! と思わせてくれる素晴らしい巨石。
岩塚巨石2
少し遠景にしてみても、カメラのフレームに収まりきらないのです。
岩塚巨石見上げる2
後ろを振り返ってみて、ようやく少しカメラのフレームに収まってくれるかな。祠がもうあんなに小さくなっています。
岩塚巨石7
巨石の脇を降りてきて、角から奥を見ると、その奥行きがものすごくて(これも写真だと十分にわかりにくいのですが)、この山が巨石でできていることがよく分かります。
岩塚巨石8
影になっている部分はより迫力があります。この苔むした様子、素晴らしい岩肌、まさにこの飯野町の巨石の中の王者の風格ですね。
岩塚巨石5
降りてきた道は、実は巨石に挟まれていて、下の写真の向かって左側の巨石も地面に埋もれるようになっていますが、相当に巨大な岩です。
岩塚巨石10
道はまだ下へ下っています。少し道幅が広くなってきて、木々の間から見える巨石が少しずつ遠ざかっていきます。それでもまだフレームに収まらない……
岩塚巨石4
道幅が広くなってきてようやく納得したのですが、やっぱりこの道が巨石詣での参道だったようです。車道から道を探していたときには、この道に繋がるような入り口はなかったように思ったのですが……
岩塚巨石3
名残が惜しくて何度も振り返るのですが、本当に圧倒的な岩です。
車道に戻ってみて分かりました。どこに出てきたかというと、冒頭に2つ並べた2枚目の写真の真ん中辺りの黒い辺りにもこって出てきたのです。車道から見たらとてもここに入って行こうとは思わないし、まさかこの先に広い道があったとは……
もっと草を刈っておいたら、巨石への道だと分かるのに? いえいえ、まるで隠された道のようでいいじゃないですか。本当のところは、きっと今は巨石参道の草刈りにまで手が回らない村のご事情もあるのだろうなと思うのですが、中の道はきれいに草や低木が払われていましたし、もしかしたら敢えて入り口を分かりにくくしてあったのかしら? 祈りの場所はひっそりとしているほうが良いかもしれません。
岩塚看板
道に立っている看板です。

飯野町は福島駅からもそう遠くはありません。UFOに出会えるかもしれませんし(!)、もしも訪れる機会がありましたら、是非、会っていただきたいと思うような巨石です。
ここが古代の祈りの中心だと感じるのはもう一つ理由があります。飯野町には巨石はたくさんありますが、千貫森、つまりピラミッドのような形をした山の頂上と南北の直線上に乗るのはここだけなのです。
飯野町地図
地図の黄色星印が千貫森(頂上)、赤色星印が岩塚です。
後日ご紹介する葦嶽山(広島県)も日本ピラミッドと呼ばれる山の1つですが、この千貫森も見事なピラミッド型です。等高線を見たら分かるのですが、きれいな同心円状の山。
千貫森
下は留石公園から見た千貫森ですが、これを見れば、この山が古代には神として崇められていても不思議ではないと思いますよね。その神の山のほぼ真南にあの巨石のある岩塚。ここが祭祀場とされていた可能性は高そうです。
千貫森

次回は、前回、私を受け入れてくれなかった『赤岩』。今回は受け入れてもらえたようですが……

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【真シリーズ・掌編】ラグタイム 

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実は、【奇跡を売る店シリーズ(2)・砂漠に咲く薔薇】の第2話を書いていたのですが、carat!主催のcanariaさんのしばらく休止します記事を拝見して、悩んだ結果、書き下ろしの読み切りに変更しました。そのためにアップが遅くなってすみません。canariaさん、待っていただいてありがとうございました! しかも、実はちょっと長い……本当に申し訳ありませんが、許してくださいませ!

読み切り、と言っても、誰でも楽しんでいただけるお話かどうかは自信がないのですが(いや、背景を知らなくても何も問題ないのですが、多少知っていると「は~そんなことに~」な部分があるというだけで)、実はこれ、八少女夕さんの主催されている?【バッカスからの招待状】にも参加希望の掌編です。
語り手の「原田佳彦」はこちらのブログではまるきりの初登場人物です。実は純粋に私のキャラではなくて、あれこれ裏設定はありますが、またいつかの機会に。とりあえず、ちょっと気のいいバーのマスターという理解でなんの問題もありません。

この「ラグタイム」というお店は、西新宿の老舗喫茶バーがモデルです(名前は違う)。リアル友人でもあるsayaさんとロケハンで見いだしたお店で、この店を舞台にした未公開のお話があるのですが、人物関係がかなり際どいので、少しマイルドに書き直していつかここにアップできたらと、こそこそ思っています。
「ラグタイム」という格好いい店名はsayaさん。彼女のタイトルのセンス、なかなかなんですよ。
そしてここに登場する「客の男」、読み始めたら、あ~あの新宿で調査事務所やってるあの人ね、とすぐ分かるのですが(タイトルに書いてあるか^^;)、最後の方に「え?」な部分もあるかも。この話は【海に落ちる雨】よりも、その続きの【雪原の星月夜】よりも後の話なのです。

canariaさんのお休みは少し寂しいですが、お帰りをお待ちしようと、頑張って久しぶりに書き下ろしました。
あ~、『マルモのおきて』の残り5話を見ちゃったせいで(またバカ泣きして頭が痛い)、アップが遅くなりました。ほんとに済みません。


【真シリーズ・クリスマスイヴ掌編】ラグタイム
~バッカスからの招待状~



「いっらしゃいませ」
 原田佳彦はグラスを磨いていた手を止めて、その日、三組目の客を迎え入れた。

 組、と言っても今度の客は一人だった。
 今日は、社会的に言うと特別な日なので、早い時間に「ラグタイム」のような店にやってくる客は少ない。開店早々に、これからパーティーに出かけようという常連のカップルがやってきて、一時間後に出勤前のホステスが数人一緒にやってきて、以後は一人きりの静かな時間が流れていた。

 通常であれば客からのリクエストがない限り、店に音楽は流さないのだが、たまに開店前や開店直後、ほとんど客のない時間帯に好きなジャズのレコードをかけている。
 でも、こんな日は世の中に逆らって、思い切り演歌でも流したい。
 そんな他愛もないことを考えていた頃合いだった。

「ラグタイム」は新宿西口から歩いて数分の飲食店街の地下にある小さなバーだった。東口とは違って、繁華街も狭く、賑やかさは広さに比例して東口の二十分の一くらいだ。
 それでもコアな客が多いのもこの辺りの店の特徴でもある。佳彦は同じ新宿でも歌舞伎町とはまた違う雰囲気が好きだった。

「雨、まだ降っていましたか」
 男のコートの肩で、雨の滴が薄暗い灯りを吸い込んでいた。
「もう雪に変わりかけていますよ」
「ホワイトイヴですか。人肌恋しくなる、見事な神の演出ですね」

「特別な日」に一人で入ってきた若い男は、マフラーを外しコートを脱いだ。預かろうとする佳彦に手で合図をして、いつものように入り口から二つ目のカウンター席の椅子を引いて、その背にコートを掛ける。
 佳彦はこの物静かな男が、一人掛けのソファーのような低い椅子を引いて、すっとその内側に収まる仕草がなんとなく気に入っていた。

「そう言えば、あなたがここに来る日は雨が多い」
「おかげでここには何度も傘を返しに来る羽目になった」
 佳彦はふと微笑んだ。雨というキーワードで緩やかに客と繋がっていることが、奇妙に心地よく感じられた。
「お仕事、終わりですか」
「今日のような日にうちに来る依頼者は滅多にいません。もっとも、普段とそんなに変わりませんけど」

 この客は常連というほどこの店に足繁く通ってくるわけでは無い。そのせいか、打ち解けてくれているのかどうか分からない、ぎりぎりのラインのままで丁寧な言葉遣いを崩さなかった。
 それでも、佳彦にとっては特別な客だ。

「歌舞伎町は賑やかでしょうね」
 聞かれるまでもなく、佳彦はお湯で薄く割った赤霧島を出した。酒に弱いと言っていたので、頼まれればアルコール控えめのオリジナルカクテルを作りもしたが、ある時、この芋焼酎を出したら、これなら悪酔いしそうにないと言われたので、それ以来「とりあえずビール」ならぬ「とりあえずアカキリ」にしている。
「だから早々に事務所を閉めて逃げ出してきました。あそこに遅くまで残っていると、そのうち襲撃されるので」

 男は新宿三丁目にある調査事務所の雇われ所長だった。歌舞伎町は目と鼻の先だ。
 歌舞伎町で「襲撃」というと危ないものを想像しそうだが、もちろん、そういう意味ではないだろう。
 当然、仕事のことはあまり話さないが、言葉の端々から窺われることに、事務所には事務員を含めて幾人かの従業員がいて、さらに出入りする連中のおかげでかなり賑やかな場所となっているようだった。こんな無口な所長で、よくもあの街でもっているものだと思うが、この雰囲気が逆に人を寄せ付けているのかもしれない。
 賑やかで派手な街には、外見からでは分からない、孤独で寂しい人間が多く集まり、どこかに居場所を探しているのだ。

 男は、この店のことを、歌舞伎町の仲間たちには内緒にしているようだった。
 あの街の連中には遠慮が無いから、きっとこの男が静かに過ごせる場所なんて無いのだろう。
 さっき男が言った「襲撃」というのは、今日のような日には、パーティが終わった酔客や、店を閉めた後に行き場を無くした水商売の連中が、遅い時間に無遠慮に事務所に押しかけて来るということだろう。その場所の本来の使い方を間違えていることなど、気にしない連中だ。

 男は冷えた手を温めるためだけに焼酎グラスに触れたようで、まだ飲もうともしなかった。厚い木製のカウンターの木目模様が、薄暗い照明で濃淡を浮かび上がらせている。
 グラスと言っても、土色の陶器製なので、同じ色合いのカウンターに吸い込まれそうに見えた。
 この店の前の経営者が佳彦の恩人だったこともあるが、この厚い一枚板のカウンターが店を引き受ける最大の理由だった。もちろん、きっかけは別にあったが、最後に背中を押したということだ。

 佳彦は顔を上げて、薄暗い店内に視線を向けた。七席のカウンターと三つのテーブル席だけの狭い店には、佳彦と客が一人。客のいない店の中は、恐ろしく空虚で暗く沈んで見えるものだ。とても今日がクリスマスイヴだとは思えない、何の飾りもない空間だが、明るい世界に背を向けて生きてきた自分たちのような人間には、ふさわしい隠れ家かもしれない。
 世間が浮かれているこんな日には、特にそんなことを感じる。

 この調査事務所の所長がこの店に通うようになったのは、個人的なつながりだったので、改めて聞かれたことも話したことも無いが、おそらく佳彦の前身についてもある程度は感づいているだろう。あまり大きな声で話すことのできない仕事、という意味だ。
 佳彦自身は足を洗ったつもりでも、どうしても切り離せないしがらみはついて回ってくる。誰も佳彦を今さらどうこうしようとは思わなくても、佳彦自身がふと、今自分のいる場所を疑うのだ。
 そちら側には住んでいない客が楽しそうに語る日々の出来事を聞いているときも、公園ではしゃいで走り回る娘を妻が追いかけている姿を見ているときも。

「家に帰らないんですか」
 男は左の薬指に指輪をしていたが、家族のことはほとんど話さなかった。以前に一度だけ、妻が一人目の子どもを身籠もった時に煙草をやめるつもりだったのに、と言ったことがあったが、その後、子どもの話題が出たことは無いし、少なくともこの店では今でも煙草を吸っている。もっとも、家で吸えないので、職場や飲食店で吸っている男も、世の中には多くいるだろう。

「あなたも、こんな日は店を閉めて家族サービスをしたほうがいいんじゃないのですか」
 この男には、二歳になる娘がいることを話したことがあった。
「でも、あなたのようなお客さんがやってきて、店が閉まっていたら路頭に迷ったりするでしょう。こんな日こそ、帰りたくても帰れない人もいる」
 男は顔を上げて真正面から佳彦を見た。そしてふと笑みを浮かべる。自嘲のようなこの微かな笑みは、初めて会ったときから佳彦に好印象を与えていた。

「思えば、クリスマスなんて本来は日本人には何の縁も無いイベントなのに、いつの間にか、その日に一緒に過ごす恋人も家族も居ない人間は惨めに思えるようにすり込まれてしまいましたね。あるいは、そんな日に一生懸命働いていると馬鹿らしく思えるように」
 普段は常連客ともあまり長話をしない佳彦だったが、この男に対しては話しかけずにはいられなかった。

 もっとも、佳彦は決して話し嫌いでも賑やかな会話が苦手というわけでもない。ただ、このような店でカウンターの内側で仕事をしているうちに、自分の本来の性質とは関係なく、二通りの人種に分かれていくものらしい。
 客との会話を楽しみ、時には自分のことを語り、酒の蘊蓄を語りながら客と楽しい時間を共有したいと思う者。そして、客の話に耳を傾けながらも受け流し、自分の方からはあまり話しかけず、静かに酒を提供する者。佳彦は自分は完全に前者だと思っていたのだが、気がつくとごく一部の人間を相手にする時を除いて、後者に収まっている。

「実際には、ひたすら働いている人間の方が多いのに」
「違いありません」
 佳彦が自分も焼酎を飲んでいいかというサインを送ると、男はうなずいた。客の前で飲むこともほとんどないのに、今日は少し気分が違っていた。

「イエス・キリストも驚いているでしょうね。まさか自分の誕生日が、こんな離れた極東の国で恋人同士の記念日みたいに扱われているとは」
「でも、それをきっかけに人が集まることを喜んでいるかもしれません」
「それが鬱陶しくて歌舞伎町から抜け出してきた人が言うんですからね」
 男は意外なことに、いつもよりもずっと分かりやすい笑みを浮かべた。
「決して、こんな日のあの街の雰囲気は嫌いというわけじゃないんですよ」

 男は佳彦が焼酎に口にしたのを見てから、自分の手で暖めているグラスに酒が入っていることを思い出したように、ようやくグラスに口をつけた。そしてまたしても意外なことに、半分ほども飲んでしまった。
「ただ、なんとなく、今日は一人になりたかっただけで」

 佳彦は、客が何かを語りたいというオーラを放っている時には好きなだけ語らせてやろうと思っていたが、この客が自分のことを何でも話したいと思っているようには感じなかった。
 ただ、一人になりたい時の相棒に、この店と自分が選ばれたことは嬉しかった。

「今日は演歌を流していないんですね」
 さっきそんなことをちらりと考えていたので、まるで頭の中を覗かれていたようで面映ゆい。一人の時は、時々、演歌を聴きたくなるのだと、そんなことも話したのだっけ。
「そう言えば、あなたが二度目にここにいらっしゃった時、北原ミレイをかけていたんでしたね」

『懺悔の値打ちもない』というタイトルを二人が同時に口にしたので、思わず顔を見合わせた。
「今日は街にクリスマスソングが流れていると言うのに、『懺悔の値打ちもない』はないですね。でも、たまに聞きたくなるんですよ。日本人のソウルミュージックじゃないですか。『ラグタイム』に演歌はないよって、人からは言われるんですけどね」
「いや、ズレてる、って意味からすると、ちょうど合っているかもしれませんよ」

 二度目に彼がこの店に来た時、店名の由来を聞かれた。音楽用語ですか、という問いだったので、詳しいなと思ったことを思い出した。
 ラグタイムというのは、十九世紀から二十世紀始めにアメリカで流行した音楽のジャンルで、ジャズの原型のひとつだ。メロディーラインとベースラインの拍のずれをRagged timeと呼び、その不揃いのタイミングの中から色々なニュアンスが生まれる。この店もそういう場所であったらいいと思って名付けた。
「確かに。今度言われたら、そう言い返します」

 男がショートポープの箱を上着の内ポケットから取り出したので、佳彦は灰皿を彼の前に置き、ポケットからライターを取り出した。男はちらりとライターを見て、それから佳彦の手から火をもらい、ひとつはき出して、ようやくほっと息をついたように見えた。
 何か音楽をかけましょうか、と尋ねると、男は少し考えてから、ブルースをと言った。

 佳彦は少し考えてからルイ・アームストロングのアルバムを選び、レコードに針を落とした。ざざっという微かな雑音の後、『We have all the time in the world』が流れ始める。
 酒を勧めるのにいいタイミングだと思った。
「今日はせっかくですから、少し強めのお酒をいかがですか」
 男は意味を察したようだった。
「では、あなたがいつか作ってくださったジェームズ・ボンドの酒を」
「ジェームズ・ボンド・マティーニですね」

 イアン・フレミングの『カジノ・ロワイヤル』にはモロトフカクテルと書かれている。ジェームズ・ボンドが、ロワイヤル・レゾーのカジノで敵との大勝負の緊張感をほぐすためにオーダーしたカクテルだ。
 ボストンシェイカーにゴードンジンを三、ウォッカを一、あとはキナ・リレのベルモットはキニーネが入っているので日本では手に入らないため、代わりにリレ・ブランを〇・五の割合で加える。

 初めてこの男に作った時と同じように、彼が曲を楽しむのを邪魔しないかと一瞬気になったが、またあの時と同じように、男はカクテルを待ち望むように佳彦の手を見た。安心してシェイカーを振り、カクテルグラスにきりっと冷えたマティーニを注ぎ、オリーブではなくレモンの皮を薄く切ったもの沈める。
 ボンドはこのカクテルにヴェスパーという、恋に落ちた女の名前をつけた。この女は裏切り者だったが、ボンドは一度味を知ってしまうと他のものは飲めないと言った。
 愛とはそういうものなのだろう。

 佳彦はカクテルグラスを取りあげた男の右手から、カウンターの木目の上に残された左手に視線を移した。薬指に嵌められた指輪は、鈍い銀の光を不安定に揺らめかせている。
 この指輪を外さずにいるのは、自分が何かから逸脱してしまうのが恐ろしいからだと言っていた、その表情を思い出した。
「寒い冬なのに、こんな冷たいカクテルを出す店って、どうかしてますね」
「ご心配なく。かのスパイと同じように僕も味音痴なので」

 佳彦は思わず嬉しくなった。
 マティーニは本来ステアで飲むもので、シェイクするものではないが、ジェームズ・ボンドは「冷たいものはとことん冷たく、熱いものは最高に熱く」が主義で、カクテルもシェイクさせるほうが冷たくなっていいという。酒好きの理論では、シェイクして冷やし過ぎると舌がしびれて味が分からないから、ボンドは味オンチだということになる。
 そのように説明したことを覚えていてくれたのだ。

「でも、クリスマスイヴに強い酒を勧めてご主人を引き留める店は、やっぱり不味いでしょうね」
 男はそれには答えなかった。
 俺はこの人の前ではしゃべりすぎるな、と佳彦は思って、また言葉を引っ込めた。ただ、この男も以前やってきた時に、ふと漏らしたことがあったのだ。
 ここに来たら、しゃべりすぎる、と。

 不思議だった。名前を知っているのに、なぜか名前を呼ぶことはない。あなた、と今でもいかにも他人行儀に話しかける。他の客ならば数度も通ってくれたら、名前を呼ぶというのに。それでも、この男は他のどの店でよりも、この店でしゃべりすぎると言い、佳彦も、他のどの客にもそうしないのに、この男にはやたらと自分の方から話しかけている。

 それでもここから先は、というぎりぎりの部分で留まるだけの理性と職業倫理は持ち合わせているつもりだった。そのつもりなのだが、他に客も居ないこんな夜は、もっと話して欲しいと思ってしまう。客に深入りするのは良くないことだと分かっているし、そんなことをしても、客にも自分にも何の役にも立たないことも分かっているのだが、時折、無性に気になって仕方がない客がいるものだ。

 クリスマスイヴの夜。一緒に過ごすべき人がいるだろうに、その場所を避けてバーのカウンターに座っている。たゆたう紫煙の向こうの不安な表情。情人と会う時にも外さない結婚指輪。
 ふと、エディット・ピアフの歌に涙を流さずに泣いていた氷のような横顔を思い出した。あいつは最も大事なものと引き離されているんだ、と共通の知人が話していたことも。
 それでも、誰かが誰かを心配して、気にかけ、涙を流したり、黙って側に立っていたり、ただ一緒に音楽と酒を分かち合うことは、きっと悪いことじゃない。家族でもなく、恋人でもなく、ただの店の主人と客の関係であっても。

「今日は、帰っても本当に誰もいないんです」
 男はいったん言葉を切り、不思議な表情を浮かべた。最高に幸せそうな、それでいてものすごく不幸で不安そうな、どこかで道を間違えたことに気がついて後ろを振り返った時のような、複雑な表情だった。あるいは、ただ暗い照明が作り出した影が、そう見せたのかもしれない。
「妻は、今、まだ入院していて」
「病気、ですか」
「いえ」

 また少し間を置いて、男は続けた。
「今朝、子どもが生まれたんです」
 何がこの男を不安にさせているのか、佳彦は自分の経験に照らし合わせても、上手く理解はできなかった。おめでとうございます、と素直な言葉が一瞬喉につっかえてしまったのは、男のさっきの表情の故だった。

「そうでしたか。それは、おめでとうございます。男の子ですか。それとも」
「男の子です」
 男は冷たいマティーニを思い切って飲んで、カウンターにグラスを戻した。
「以前亡くした子どもは、女の子だったんですが」
 佳彦は言葉を失った。一人目の子ども、と言っていたのは、その子のことだったのか。

「もう性別も分かるほど大きくなっていたのに、この世界を見ることはなかった。不思議ですね。僕は、どこかでもう一度その子に会えるのではないかと思っていたのかもしれません。その子がまた妻と僕を選んで戻ってきてくれたらと願っていた。その子を失ったのは僕が」
 男は言いかけて、そのまま言葉を無くしたようだった。
「すみません。ちょっと混乱しているらしい」

「生まれてきたお子さんを、愛せないと心配しているのですか」
「いいえ。そんなことじゃないんです。ただ、置き忘れてきたものをどうしても振り返ってしまって、不安になるのかもしれません。それとも、ただ単に、父親というのがどういうものか、よく分かっていないからかもしれません」
「父親って、始めからこんなものという型があるわけではありませんよ」

「ただ、あんなに小さくて儚いものが、この世界に放り出されて、生きていゆけるのかと」
 あなたが守るんですよ、と言いかけて、この男の不安が突然に理解できたような気がした。
 娘が生まれて、初めて腕に抱いた時、潰してしまわないかと心配になった。自分の指一本よりも小さな手が、いつか何かを掴めるようになるとは信じられなかった。そんなことを、この男は過剰に敏感に受け止めてしまうのだろう。

「相川さん」
 佳彦は初めて、男の名前を呼んだ。
「子どもって意外に逞しいですよ。一年経ったら、三倍の重さになるんですからね」
 短い前奏の後に黒人シンガーの声が耳に届いた。
 男はふと顔を上げ、ずっと探していたのに届かなかった景色を見つけたような表情を浮かべ、それから静かに目を閉じた。

 曲が終わるまで、佳彦も男も、何も言わず、動くこともしなかった。
 佳彦は、不安を見いだしては震える彼の睫毛を、左右に異なる色合いが見える目を、唇の前で組まれた手を、そして彼を縛り付けている指輪に揺らめく光を、美しいと思った。狭い店の中に揺れる灯を、明るい光の下で見たら小さな疵も隠せないけれど、こうして誰かの不安を包み支えている椅子やカウンターを、佳彦が店を譲り受けるずっと前から壁に掛かっている古いアメリカの街の絵を、絵の中ですっかり色あせて消えかかった虹を、そして、ずいぶん前に誰かが忘れていってくれたおかげで、突然の雨の日には誰かを庇うことのできる傘を、今、愛しいと思った。

 そして、大都会のこんな暗い地下の片隅にいても、世界を美しいと感じることができることに、ふと感謝の気持ちを覚えた。
「今度は温かいホットオレンジのカクテルを、お祝いにご馳走させてください。その子はきっと、あなたの不安を踏み越えて、素晴らしい世界を見るに違いないんですから」
(2016/12/18書き下ろし)


『We have all the time in the world』:『女王陛下の007』に使われていた、ルイ・アームストロングの名曲。ジェームズボンド・マティーニを飲むきっかけにしました。
最後に彼らが聴いているのは、タイトルは出しておりませんが、お察しの通り『What a wonderful world』です。
ほんとのことを言うと、こんな順序に曲が並んでいるレコード(アルバム)があるわけじゃないのですが、お目こぼしください。時代が時代ですし。でも『What a wonderful world』って1967年の曲なんですね。そう思ったら、余計にすごさを感じる。

生まれた子どもは、慎一。クリスマスイヴ生まれなんですね。不良パパを許してやってね。
何しろ、真はほんとのパパには捨てられちゃったので、父親ってのがなんだがよく分かっていないのです。おじさん(功)やもと家庭教師(竹流)のような仮の父には恵まれていたはずなんですけど……
幸い、慎一は性質的には母親の血を受け継いだのか、中身はかなりしぶといかも知れません(長命だし、中年期以降になってものすごい年下の美人と一緒に暮らしてるし……いや、そういうことじゃないか)。

Category: ☆真シリーズ・掌編

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【雑記・旅】地元観光にGo!~この期に及んで大阪観光~ 

ネギ焼き
2016年12月某日。
大阪と言えば「粉もん」! と観光客さながらにガイドブックやグルメ記事をチェックして、こちらのネギ焼きを食しました!
場所は、大阪キタではディープなエリア、十三。
私が十代の頃は、十三って少年少女が降りちゃいけないような駅みたいなイメージがありましたが、私の予備校時代の友人たちはこちらの駅を利用する某進学校出身者が多くて、通学路のショートカットのためにはラ○ホテル街を行くのが早いとか、あれこれ聞いていたものでした。
でもずいぶん十三駅周囲も変わってきているのですね。
そういえば、最近は、どの駅も再開発とやらで顔つきが似通ってきて、その駅ならではの雰囲気が消えていっているような気がします。でも、一本筋を入ると少しその名残があったりして。

なぜこの期に及んで地元・大阪観光なのか?
実は、毎年、青森遠征の時にお世話になっている五所川原・金木在住のご夫婦が来阪。
そのうち1日、おつきあいいたしましょうと、奈良や京都の観光もご提案したのですが、やっぱり「大阪」がいい!と。
そういえば、大阪生まれの大阪育ち(北摂だけど)なのに、あえて大阪観光なんてしたことがない(当たり前か)。USJも行ったことがない。大阪観光の検索をしてみたら……「あべのハルカス」「空中庭園」「天保山の観覧車(直径100m、シースルーのゴンドラもある)」……もちろん、そんな恐ろしい場所はオール却下。

ご夫婦は2日目はUSJ(一応大阪では「USJ」じゃなくて「ユニバ」だから、とお伝えしておきました。イントネーションも伝授)の近くのホテル泊まりだったのですが、1日目は難波に泊まりたかったのに、ホテルがいっぱいで取れず、取れたホテルが十三(のラ○ホテル街の奥にあるホテル)。どっちにしてもディープな大阪ですね。
お昼前にホテルにお迎えに上がり、まずはランチに粉もんを。
向かったのは十三駅から徒歩数分の「ネギ焼き やまもと」さん。
ちょうど開店直後だったのですぐに入ることができましたが、できあがりを待っている間に後ろにはすごい列が……
ネギ焼きーお好み焼き
スジネギ焼き、牡蠣ネギ焼き、ミックスお好み焼きを3人でシェアしていただきました!
看板のネギ焼きも美味しかったけど、お好み焼きがなんともふわっふわ、外はぱりっ、かつ厚みがあるお味で美味しかった!
阪急梅田のプロムナード
阪急に乗って梅田を歩きながら地下鉄へ向かいます。青森の地方都市からやってこられたご夫婦には、まず大阪の「狭いところにすごくたくさん人が居る」を味わっていただいて、人混みを歩く実体験を? HEPの観覧車も見てもらいました。
「田舎の人間って歩かない」から疲れた~と(普段は車移動だからね)。
百貨店はすっかりクリスマス。ショーウィンドウは幾種類ものクリスマスのシーンが飾られて、撮影スポットになっていました。
大阪うみねこ?
次に向かったのは、ちょっと恥ずかしい大阪観光方法「ダックツアー」!
ツアーの出発待ち合わせ場所に向かって天満の駅から川縁を歩いていたら、水の都・大阪の雰囲気が味わえます。えっと……並んでました。ウミネコ? と思いつつ家に帰って調べたら、これはユリカモメなんですね。
ウミネコは足が黄色い。ユリカモメは赤。他にもあれこれ違いはあるようですが、アップで撮った写真の足が赤かったので、ユリカモメと判定。
なぜか1羽だけあまのじゃくがこっち向いていますが^^;
ダックツアーのバス
さて、ダックツアー。
一度、ボストンで乗ったことがあったのですが、日本で乗るのは初めて。しかもこの恥ずかしい外見のバスで大阪の街を走るのですが……いや、実はそれほど恥ずかしいという気持ちもしなかったので(大阪の人間は、この程度では恥ずかしいと思わないのかも)、かなり楽しめました。しかも、ガイドさんの語りが「大阪」! でしたよ。大阪人でも十分に受けましたから、なかなかの語りです。
ポイントはこの小さなタイヤ。
バスの中
バスはしばらく街の中を走った後、川に「スプラッシュイン!」します。上はスプラッシュインの瞬間。ガイドさんの指示でウォーターフォールみたいにみんなで手を挙げての入水です。
窓に映るバス
川巡りの終わりごろにはこんなふうに自分たちが乗っているバスが窓ガラスに映るようになっています(これはこの会社の建物)。タイヤは飛行機みたいに仕舞われることなく、普通に水中に剥き出し、です(当たり前か)。タイヤが小さいのは、水の中でのことを考えてですね。
でも確かに「バスが溺れてる!」ように見えなくもないなぁ、この図。
中之島噴水
ツアーの時間は定時に吹き出すこの噴水に合わせてあるのかどうか、中之島の隅っこ、出鼻からの噴水。水の向こうに見える街の景色はまた違う大阪を見せてくれますね。
橋の下1
途中、桜宮橋の下を潜ります。ここには新旧2本の橋が並んでいるのですが、、上の写真は古い方の橋。分かりますか? 橋桁がありません。向こう岸までするっと見えています。新しい方の橋はこんなふうに途中に橋桁があるんですが。
橋の下2
思えばすごい技術ですよね。
すごい技術と言えば。
蛸石
ダックツアーで何度も大阪城をチラ見させられて、すっかり大阪城が気になったらしい青森のご夫婦。今度は大阪城に行ってみたいと。私としても、いずれ大阪城の巨石についてゆっくり取材(?)したいと思っていたので、下見ついでに喜んでご案内。
この巨石は「蛸石」という大阪城で一番大きな石。表面積がおよそ36畳敷(59.43平方メートル)、重量は約108トンと推定されています。写真に収まったらあまり大きく見えないのが難点。
大阪城巨石2
こちらは大手門を入ったところにある大手見附石、城内で4番目の大きさだそうです。
門を潜る度に、真正面にこんな巨石がでん!と構えているというのは、やはり攻め入ってきた敵に「こんなにでっかい岩を設えることができるとは、敵ながらあっぱれ。攻め入っても負けそう」とか思わせて戦意をくじくためなのでしょうか。あ、でもこのあたりが整備されたのは徳川時代の再建時だから、太平の世を転覆させようなんて思っちゃいけないよってことかしら。
城壁に使われる石は、各藩が担当して運んできたそうですが、城内の「巨石」の大半は備前・池田藩の担当。石の生産地は瀬戸内海の島々に多く、そこから船で運んできたことは確かなのですが、どのようにしてここまで運んできたのか、まだ明確には分かっていないそうです。
そういえば、西宮の越木岩神社にもいくつかの藩の印が入った石がありました。
越木岩神社しるし
これも大阪城に運ばれる予定の岩だったそうですが、それにしても磐座さえ切り出して運ぼうとしていたのですね。矢印の先は、担当藩の印。
甑岩後ろ2
越木岩神社の磐座・甑岩の背部に回るとこんなふうに鑿の痕が残っていました。
(参考:【石紀行・緊急特集】29.兵庫西宮・越木岩神社~磐座を守りたい~
大阪城
大阪城の天守閣に入ったのも何十年ぶりでしょうか。エレベーターで5階くらいまであがれるようになっていて、ちょっと驚きましたが、迷わずエレベーターを選択しちゃいました。
真田軍
天守閣の中には色々な展示がありましたが、やはり今年はこれですね。でもそういえば、思ったよりも「真田丸」を全面に押し出している気配はなかったような。
この天守閣は3代目。現在の天守閣は昭和初期に再建されたのですが、その様子が展示されていました。
大阪城歴史
これを見るだけでも、築城って本当にすごいことなんですね。
またいずれゆっくりと大阪城の巨石について記事を書きたいと思います。

そして最後は道頓堀へ。夕食予定まで少し時間があったので、今度はミナミのディープなエリアを少し散策。「粉もん」のたこ焼きをみんなで分け合って1日の行程修了(*^_^*)
道頓堀
いつも見慣れた景色だと思っていたけれど、改めて我が町・大阪を巡ってみると、やっぱり奥深く、味わい深く、面白い。最後に難波にとても気になる神社(巨石は無いけど、巨大な○○がある)があったので行ってみたのですが、なんと門が閉まっていた! 境内にも入れない神社とは!(5時閉門?)
こちらも含めて、次に誰かをご案内する時は、天神橋商店街に行って大阪のおばちゃん見学?をしていただこうかな。
うん、たまには地元観光も行ってみるもんだ!

Category: 旅(あの日、あの街で)

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