06 «1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31.» 08

コーヒーにスプーン一杯のミステリーを

オリジナル小説ブログです。目指しているのは死体の転がっていないミステリー(たまに転がりますが)。掌編から長編まで、人の心を見つめながら物語を紡いでいます。カテゴリから入ると、小説を始めから読むことができます。巨石紀行や物語談義などの雑記もお楽しみください(^^)

 

【物語を遊ぼう】8.引っ張る力?:東野圭吾『分身』 

東野圭吾さんの『分身』を読んだのですが……
『100万人が泣いた』と帯に書いてあったので、どんな泣ける話なのかと思ったけれど、泣くこともなく終わってしまいました。
(ちょっとネタバレ含むかもしれません…でも帯を見ただけで、すでにネタバレですよね)

函館生まれの女子大生・鞠子と東京に住むアマチュアバンドの歌手・双葉。東京に住むと北海道に住む二人の女性。そのうちの一人のテレビ出演をきっかけに周囲で不穏な動きが起こり始める。
体外受精、クローンといった科学と倫理の微妙なバランスの上に成立する物語。
二人の関係は始めから読者には見え見えなので、設定そのものは特別目新しいことにも思えないけど…

東野さんの作品をすべて読んだわけではないので、私が語れることは少ないのですが、確かに『読ませる』。
取り敢えず、最後まで引っ張る力を感じます。
今回の場合は、謎解きよりも、なかなか主人公の二人が出会わないので、ヤキモキしてしまうのだけど。
もちろん、周囲で人が亡くなったり、怪しい人が訪ねてきたり、そして追われたり。
やがて一人はある目的のために連れ去らわれてしまうんだけど、なぜか追い詰められ感が少ない。

そう、何か物足りないのはなぜなんだろう。

扱うテーマの重さに比べて、なんだか二人の女性の心情に緊迫感がなくて、ちょっと拍子抜けしてしまったのかもしれません。あるいは、そんな重大な問題の上に誕生した人間にしては普通すぎて、実在感がなかったからかもしれません。
冷静に考えて、普通に健やかに育つとは思えないので……『おとぎ話的緊迫感のなさ』が感じられたというのか。
最も存在感があって、納得できたのは、主人公二人の遺伝子的『親』ともいうべき女性の、『気味が悪い』という感情。
全体としては、設定が大きい分期待も大きかったからか、読んだ後力が入らず、『で!?』と思わずつぶやいてしまいました…

人物の実在感という意味では、よく似た印象だけど、『プラチナデータ』のほうが上な感じ。
科学ものとしては『ブルータスの心臓』のほうが面白かった記憶があります。
例のごとく、50%の作家買いなので(しかも多分東野圭吾さんに関しては50%以下)、あまり語れないけれど。

ただ、『白夜行』は面白かった気がします。
登場人物に力があったからかも……際立ったキャラクターだった上に実在感があった。
だから、長さが苦にならなかった。
あ、でも、結構電車で読むことが多いので、本の分厚さは、持ち歩くのに苦はあったかな。

それにしても、本当に多くのテーマを扱っておられて、読み終わった後に何か残るかどうかはともかく、最後まで勢いで読ませる、そういう力がものすごく強い作品が多いと思うのです。
会話と地の文のバランスの絶妙さとか、説明の過不足とかに抜かりがないから、読みやすいのだろうな、と思います。

ただ、読んだ後も本棚に置いておこうと思った本は、今のところまだ『白夜行』(とついでの『幻夜』)だけ。
まだ、イチオシという作品に出会っていないだけなのかもしれないのですが。
お勧めがありましたら、教えてください。

ちなみに設定負けって自分で考えているときにもよくあります。
すごく面白い設定を考えても、お話の中身が伴わないまま、自分の中で消えていった設定の多いこと。
あ、いえ、自分をプロ作家さんと同じレベルで語っているみたいでいけませんね。そういう意味ではなくて、ただ、物語を語り終えるのは大変、ということでして。
設定が独り歩きしてもいけないし、どれほど流れが良くても設定がつまらなければ、それもだめだし。
やはり全てはバランスなんですね。

それにしても、とにかく、最後のページまで読ませてしまう力って、すごいものがあるなぁと思うのでした。

にほんブログ村 小説ブログ 長編小説へにほんブログ村 小説ブログ ミステリー・推理小説へ


関連記事
スポンサーサイト

Category: 物語を遊ぼう(小説談義)

tb 0 : cm 2   

コメント


NoTitle

東野圭吾さんの作品って、恥ずかしながらちゃんと読んだのは「手紙」と「秘密」くらいで、あとは全部ドラマで触れたように思います。
ガリレオシリーズは、私の好きな物理ものだったので、楽しかったです(ドラマですが^^)

それにしても、あれだけ多岐にわたる作品を、次々に生み出す作家の脳、発想力って、ほんとうに神技としか言いようがないですね。
知識と、発想力、想像力、バイタリティ。

とはいえ、読んでいる途中で、ちょっと向かないな・・と思って、閉じてしまった作品も、あったりするのですが^^;

『100万人が泣いた』というコピー、気になりますね。
実は、私、なかなか泣かないタイプで><
感動しまくって嬉々とすることはあっても、とても涙腺が硬いらしくて、実生活でも、映画やドラマを見ても、なかなか泣くことができません。これはけっこう、辛いものがあります。
泣きたい・・・・><
泣くことは健康にもいいらしいし。

私はそれこそ10歳の頃から本の虫でしたが、読んで泣いた本は、たぶん5冊。1冊は小学生の時ですから、大人になって4冊。
この中の2冊は、あの世まで持っていきたい本です^^

心を揺さぶる登場人物たち。そして、一気に読ませる卓越したストーリー展開。
そんな物語に、また出会いたいです><

力のある作家さんたちに、どんどん力作を生み出してもらって、いつか、いつか、また泣きたい><
抱いて寝たくなる本を、増やして行きたいと思っています^^

(ありゃ。なんかズレた変なコメになってしまって、ごめんなさい)

lime #GCA3nAmE | URL | 2013/03/21 21:25 [edit]


こんにちは、limeさん(^^)

はい、私もごく少数しか読んでいないのです……東野圭吾さん。
大作家さんなのに……でも、少ないながら読むたびに、このネタの多さは半端じゃないし、ネタから物語を思い立ち、それぞれを『それっぽく』、少なくとも物語として完結させてしまう力、そして最後までとにかく読ませてしまう力はすごいものだと、それがプロってものなんだ~と感心してしまいます。
でも、自分の仕事に関係あるものがネタになっていると、ついつい突っ込んでしまうので…皆さんも、同じなんだろうな、と思ったりしますけど。
多分、多様性という意味では第一人者、でしょうか。
そしてlimeさんのおっしゃる通り、バイタリティですよね。
でもわかります。私も途中でやめる本、結構ありますから^^;

『100万人が泣いた』……私は泣かなかったんですが……というより、入り込めなくて泣けなかったんですが、私の予想では、もしお読みになられたとしたら、limeさんも泣かれないと思います(V)o¥o(V)

私は結構泣いちゃうほうなんですが、どちらかというと映像とか音に反応するようです。
景色とか絵画でも、泣けてきちゃうことがあるので。しょうもないドラマでも……
映画館で泣きすぎて、後ろの人に大丈夫ですか?と聞かれたこともありまして^^;
忘れもしない、『風の谷のナウシカ』です。
それ以来、公共の場所で泣くときは、できるだけ静かに泣くようにしています。
ついでに、小学生の時、花月で笑い過ぎて、両親に恥ずかしいからもう連れてこれん、と言われたことも^^;
でもこれは、大阪人としてはありですよね~
音は…『アルプスの少女ハイジ』のオープニングの出だしでも泣いちゃうんです…^^;
三味線を始めたのも……音で泣けてきたからなんです。
まさに、『じゃわめいた』(津軽語…わくわくする?ドキドキする?魂が震える?うまく言えないですが)。

> 力のある作家さんたちに、どんどん力作を生み出してもらって、いつか、いつか、また泣きたい><
> 抱いて寝たくなる本を、増やして行きたいと思っています^^
おっしゃる通りですね!
たくさん読んで、ともに発掘してまいりましょう!

大海彩洋 #XbDIe7/I | URL | 2013/03/22 19:20 [edit]

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://oomisayo.blog.fc2.com/tb.php/101-17d91a0d
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)