07 «1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31.» 09

コーヒーにスプーン一杯のミステリーを

オリジナル小説ブログです。目指しているのは死体の転がっていないミステリー(たまに転がりますが)。掌編から長編まで、人の心を見つめながら物語を紡いでいます。カテゴリから入ると、小説を始めから読むことができます。巨石紀行や物語談義などの雑記もお楽しみください(^^)

 

【死者の恋】(2)すっぽかし 

@ちょっと大きな間違いに気がついて、書き換えました。書いたとき、ちょっとぼんやりしていて、新幹線にでも乗っているように書いてしまった…光景が昼間。
時代からは、弘前までの移動は、飛行機でなければどう考えても夜行なので、夜行の景色に変えました。
気をつけなきゃ^^;
再掲です。偉そうに、その時代にないものを書かないように気を付けると書いてあるのに…^^;^^;
では改めて、よろしくお願いいたします。


お待たせいたしました!…って誰も待っていないかもしれませんが…^^;^^;
突撃連載!【死者の恋】(2)をアップします。
このお話は、18禁要素は全くありません。

でもあまりにも(1)が前だったので、一応ジャンプできるようにしておきます…
(クリック→死者の恋(1))
でも、実は真と竹流がお好み焼きを食べているだけなんですが。

初めてこのブログにたどり着いてくださった方のために…
相川真は私のつたない物語のメインキャラクターです。
新宿の調査事務所の所長。
そして同居人(というよりも真が居候している)が修復師の大和竹流(ジョルジョ・ヴォルテラ)。
この二人の生い立ちは【海に落ちる雨】始章のページを開いてみてください。
いきなり、ヨーロッパ大河ドラマになっていますが……

幾つか確認事項。
このお話は、多分真が26歳のはずなので、1978年くらいの話。
1978年と言えば、サザン・オールスターズのデビュー、ピンクレディのUFO、キャンディーズのサヨナラコンサート、成田空港開港、初の24時間テレビ(萩本欽一と大竹しのぶ!)、ザ・ベストテンの放送開始。
もう、本当に楽しすぎます。
だから、携帯電話なんてありません。
そう、連絡の取れない切なさと不便さが物語にも歌にもなった時代なのですね。

大好きな曲のひとつ、徳永英明さんの『レイニー・ブルー』の歌詞にある、電話ボックスの外は雨、かけなれたダイヤル、回しかけて……と、この切なさを分かる世代の方は、思い出して楽しんでいただけると嬉しいです。
そして、そんな不便なのはあり得ない、という世代の方も、ちょっと想像して楽しんでいただけると嬉しいです。

だから、冷凍ミカン! 東北へ向かう国鉄の始発駅は上野! そう、JRじゃなくて国鉄!
何だか楽しいですね。
岩木山のスカイラインがそのころあったのか、思わず調べちゃいました。
ありました。よかった。
でもわからないのが、8合目から9合目までのリフトの沿革。ちょっと困ったなぁ。

さて、第2話、ようやくミステリーの気配が…?





 若い女ほど気まぐれなものはない、ということは知っていたつもりだった。女子高生となると尚更だ。
「で、これはすっぽかされたわけか」
 竹流は例のごとくあれこれと修復師の七つ道具(もちろん、七つ以上ある)が入った重そうなアタッシュケースを足元に置いて、上野駅の待合の椅子に座り、傍で突っ立ったまま腕時計を確かめる真を面白そうに見ている。
 ちらちらと自分たちを見る周囲の視線にはもう慣れていた。そもそも竹流が目立つ。背は百八十はあるし、淡い金の髪と青灰色の目、それに整った顔かたち、ついでにこの外見からは想像もできないくらい流暢な日本語、耳をくすぐるようなハイバリトンの声を聞けば、誰だって振り返るのだ。
 クォーターである真自身も、決して目立たない顔かたちではないのだが、もしも真一人だったら、それほど周囲の視線を集めることはないだろう。
 どういう組み合わせかと興味深く見られているに違いない。
「そうらしいな」
 ちょっと電話をかけてくる、と言い捨てて、真は公衆電話を探した。
 ホームの真ん中に見つけると、ポケットを探って小銭を取り出す。
 春とは言え、夜になると風は冷たい。
 電話番号は覚えていたのだが、念のために内ポケットから手帳を出して確認し、幾分かかじかんだ指でダイヤルを回した。

「あんたか。朝っぱらから何だよ」
 眠そうで不機嫌な声が受話器の向こうから聞こえてくる。朝、というのは彼にとって一日の始まる時間、つまり世間一般の夕食が終わる頃合いだった。
「お前が連れてきた島田さんと待ち合わせているんだが、来ない」
 ふーん、と興味なさそうにロッカーの色男は息を吐き出した。カチッとライターを打ったらしい音が聞こえてくる。ついでに、りょうちゃん、だれよ~という甘ったるい声が聞こえる。
「そこにいるんじゃないのか」
「馬鹿言うなよ。これは詩津ちゃんじゃなくて、みどりちゃん」
 えー、しづってだれよぉ、という声が、さっきより大きく聞こえてくる。
「嶺、お前、いい加減にしないと、そのうち女に刺されるぞ」
「あぁ、それもいいなぁ。で、オレは伝説になるってわけだぁ」
 向こうで何をしているのか、きゃっきゃっと女がはしゃぐ声が聞こえている。
「伝説になるのは、もう少し売れてからだぞ。今死んだらただの野垂れ死にだ」

 今年十八になる向井嶺は、中学生の時に家出して、バイトをしながらバンド活動をしている。以前は、メジャーデビューはしていないもののその世界では有名なあるバンドの使い走りをしていた。バンドは何度かメンバーを入れ替えたが、そのうちに嶺がボーカルに収まり、一気に女の子のファンが増えた。嶺のルックスと物憂い感じが引きのポイントだったようだ。メジャーデビューに最も近いバンドのひとつだと言われているらしいが、この世界にはそんな話はごろごろしている。
 流行のものは一通り経験したという嶺は、大麻や法律すれすれのクスリにも手を出していて、それがきっかけでチンピラと喧嘩をしたことも一度や二度ではない。
 まだ真が唐沢調査事務所で働いていた時、その時はまだ嶺のことを心配していた母親からの依頼で家出していた嶺を探したことがあった。何度か繰り返された捜索依頼は、嶺が十六になった年にぴたりと止んだ。母親が再婚したのだ。
 悪い奴じゃないことは知っていた。だが、この年にありがちな刹那的で投げやりな態度では、そのうち本当にどこかで刺されるのじゃないかと心配にもなる。
 その嶺がどういうわけか、いささか真に懐いてくれている。
 もちろん、態度は思い切り不遜だ。

「とにかく、詩津はここにはいねぇよ」
「今から弘前に行く。向こうから連絡先を知らせるから、もし彼女が連絡してきたら、電話をくれ」
 へいへい、と曖昧なあてにならない返事を聞いて、真は受話器を置いた。
 ちょうど列車が入ってきた。
 ホームの待合を出た竹流と視線が合う。
 購入した冷凍ミカンと駅弁と透明ボトルに入ったお茶を持って、座席に収まった。
 乗り込んですぐに寝台の座席のカーテンを引いて籠るのもどうかというところだったし、四人分の寝台が上下向かい合わせになっている区画の中、同席になるもう一人は、小柄な年配の女性だったので、眠る場所も考えた方がよいかと思った。
 いい加減で蓮っ葉な女子高生とはいえ、島田詩津が一緒なら多少は女性も安心したかもしれないが、こんなでかい外国人の男と左右の目の色が異なる愛想の悪い男と同席ではおっかないのではないかと思うのだが、例のごとく、竹流が押しつけがましくない程度の愛想の良さで女性としばらく会話を交わしているうちに、すっかり女性の気持ちはほぐれたようだった。この男は、年配の男女の気を引くことにかけては天下一品で、日本全国あちこちに茶飲み友達か日本の父または母ともいえる老人の知り合いを持っている。その数は、多分付き合っている、あるいは付き合ってきた女の数をはるかに凌駕しているはずだ。
 本来なら女性が上段のベッドだったのだが、ある程度の年齢以上で梯子の上り下り楽ではないだろうということで、志津がいないおかげで空いた下段を譲ることにした。
 しばらく他愛のない会話を交わした後で、女性は眠るまでのしばらくの時間、詩集を広げて読み始めた。

「連れ合いが来ないなら、テスタロッサで行くのもありかと思ったけど、列車もいいもんだな」
 弁当を食べて終わり、冷凍ミカンの皮をむく。皮は膝の新聞紙の上にばらばらに散らばっている。このミカンがいたく気に入ったらしい竹流は、年配の女性にもひとつを譲って、代わりに女性が自ら漬けたという茄子の漬物をもらって、すっかりご満悦だった。
 竹流のテスタロッサは、フェラーリの会長の許可のもと、デザイナー兼エンジニアがヴォルテラの御曹司のためだけに作ったという特別仕様車で、スポーツカーにありがちな長時間ドライブで腰を痛めることもない。
 だが、確かに、たまにはこうして列車の旅をするのも悪くないかもしれない。
 行きがけに共同経営者の美和がにこにこしながら言ったものだ。
 先生、大家さんが一緒となると、女子高生は邪魔ですねぇ。別に依頼人が一緒でなくてもいいんじゃないの。
 それがそうにもいかない。依頼人、島田詩津の話がいい加減すぎて、つかみどころがないので、とにかく現地に行ってはっきりさせる必要があったのだ。ほとんど学校に行っていないのかもしれないが、それでも良識ある大人としては女子高生に学校をさぼらせるわけにはいかなかったので、ちょうど数日後に始まるこの連休を選んだのだが、いい加減なのは話だけではなかったようだ。
 ちなみに、大家さんというのは竹流のことだ。二人の仲を疑う美和に、真が『あれは大家のようなものだ』と言ったので、美和はそれ以来竹流のことを大家さんと呼んでいる。

 詩集を広げていた女性が、二人に断ってカーテンを閉めたのは、高崎を過ぎたあたりだった。目の前のカーテンを閉じられると、急に二人きりで寝台車の座席に座っていることが間の抜けた感じに思える。
 窓側に座った真は、本当なら時間を逆行するような春の景色が見えるはずの真っ暗な窓の向こうへ目をやり、ふと上着の内ポケットを確認した。
 その気配をどう受け止めたのか、竹流が不意に真を見る。
「で、どうするんだ」
「あんたはどういう予定だ?」
「とりあえず寺に泊まる」
 また寺だ。本当によく寺に泊まる男だな、と思っていたら、竹流がまた勝手なことを言う。
「予定外の連れがいるんで、もう一人一緒に泊めてくれと頼んでおいた」
 この予定外の連れというセリフはもう何度聞いたことか。
 それにしても、寺と春画はちょっと微妙な組み合わせだ。いや、竹流のところに来る修復依頼には時々とんでもない種類のものがあるようだから、別に意外でもなんでもないのかもしれない。
 とりあえず、島田詩津が来るまでは付き合ってもいいか、と思い直す。土地勘がなかったので、もともと弘前に着いてから旅館もしくはホテルを探すつもりだった。

「それで、行先は?」
 竹流が自分の予定と真の予定を突き合わせようとするのか、尋ねてきた。
「ひとまず車を借りて、岩木山スカイラインに行ってみる」
 島田詩津が、曰く『迷惑なばばぁ』に出会ったのは岩木山の登山道だ。詩津以外に彼女を目撃していた人がいてもおかしくはない。尤も、もう二週間も前の話なので、そんな簡単に目撃者に出会えるとは限らないのだが。
「で、お前をすっぽかした女子高生は後からでも来るのか?」
「分からない。伝言はしたんだが」
「お前、その依頼は金になってるのか? 相手は女子高生だろうが」
「あぁ。小遣いだけは随分持っているらしい」
 嶺の話では、詩津は随分と金を貢いでくれているらしいし、多分金持ちのお嬢様なんだろ、ということだったが、正直なところ真はその金の出所を心配し、先に詩津の家の事情を調べていた。万が一、詩津が女子高校生としては許されない方法で金を稼いでいるのなら依頼を受けるわけにはいかないと思ったからだ。
 だが、確かに詩津の家は立派な家で、父親は中堅の企業の重役だった。
 それでも、金の出所と、この依頼の成功報酬が正しく支払われるかということについては、今でも百パーセント信じているわけではなかったが、前払い金は確かにもらっていた。それに、嶺の頼みを断りたくなかったのだ。
 あいつ、家に居場所がないらしいしさ。
 そう言った嶺の顔が、昔一度だけ真に見せた不安な顔つきだったからだ。

 そしてそれだけではない。詩津が持ってきたあるものが、真を動かしていた。それを考えると胸のあたりが熱いような気がして、ふとジャケットの上から左胸を押さえた途端、竹流がすかさず聞いてきた。
「で、その胸の内ポケットに入っている小瓶は何だ?」
 本当にこの男はどこで何を見ているのだか、恐ろしいくらいだ。千里眼ってやつなのか。もっとも、竹流に言わせたら、真が隙だらけらしいのだが。
 真は観念して竹流に小瓶を手渡した。
 竹流はしばらく、その小さな紫の薬瓶のような小瓶の中を見つめていた。そしてすぐに真の内ポケットに戻す。
「骨か?」
「あぁ」
「ヒト?」
「確認してもらった」
「それで、どうにも断れなかったか」
 真は返事をしなかったが、竹流は納得したようだった。
 小瓶の中には、ヒトの第二頸椎、いわゆる舎利といわれている骨と、両手の指の先の骨がきっちり十、入っていた。舎利は仏の座った姿、そして指の骨は立ち姿と言われているが、後者は火葬の場合焼け残らないことが多いという。それが十本、そろっている。
 しかも、この骨は火葬されたものではないというのだ。
 沖縄じゃ戦前は土葬して洗骨するっていう風習があったけど、最近は衛生的な問題で保健所から指導が入ったっていうしな。しかし、これはどう見ても焼いた骨じゃないぞ。
 訪ねた先の骨学者はそう呟いた。
 この瓶を真の手元に残していった女子高生、島田詩津は、気味が悪いから預かってくれと言った。その『迷惑なばばぁ』に押し付けられたというのだ。
 どこまでが本当の話なのか、詩津にもう一度確かめたかったのだが、とにかく今は嶺からの連絡を待つしかない。
 いつまでも話していると、カーテンの向こうの女性に悪いというので、もう眠ることにした。
「上に上がるのが面倒だったら、一緒に寝るか」
「馬鹿言うな」
 言い捨てて真は梯子を上った。カーテンを引きかけて、隣の誰もいない寝台の席を見ると、自然と息が零れた。詩津がいい加減な女子高生であると思う批判的な気持ちと、彼女の中の本当の姿をまだつかみ切れていないような焦りのようなものが、どちらも一緒に存在していた。
 そしてさらにまた、カーテンを引いてしまうと、突然取り残されたような寂しさと一人きりになった穏やかさとが、同時にこの狭い空間を満たした。




ちょっと解説
『やたらと寺に泊まる男』『予定外の連れ』というのは【清明の雪】で竹流が京都のある寺から依頼を受けていて、真を連れて行った件を指しています。
さらに、日本に来た頃、まだ修復師として無名だったころは、日本全国の神社仏閣を歩き回り、一宿一飯の恩義として修理や修復の仕事をしていた(最初はちょっと押し売り)ので、大和竹流には日本のあちこちに泊めてくれるお寺や神社があるのです。


応援してくださると、とても喜んで頑張れますm(__)m
にほんブログ村 小説ブログ ミステリー・推理小説へ

関連記事
スポンサーサイト

Category: ★死者の恋(間もなく再開)

tb 0 : cm 2   

コメント


NoTitle

寺の宿泊は意味合いてきには深いですよね。もっとも、今の世の中ではそうでもないのかもしれないですが。……しかし、今の世の中だからこそ寺の意味合いが強くなってくるような気がしますけど。それを考えさせるような文章ですね。

LandM #- | URL | 2013/04/21 18:18 [edit]


LandMさん、ありがとうございます

よくぞこの微妙なところを指摘してくださいました!
そうなんですね。実は、【清明の雪】でもお寺に長逗留しているのですが、この『寺に泊まる』というのが、自分の中の萌え?みたいなものなんです。で、つい、彼らを寺に泊めたがる作者でした^^;
学生時代、旅行に行けば1泊は宿坊に泊まりました。イタリア放浪中は修道院に泊まるのがマイブームで…安いし、清潔だし、朝のパンは美味いし(門限さえ気にしなければ)。
宿坊は、永平寺でちょっと『見て』しまってから、やや遠慮しておりますが……しかも近年は取りあえず温泉、てなことになっておりまして^^; 
LandMさんのおっしゃる通り、お寺の役割、今はお葬式をするところみたいになっていますが(しかもお葬式さえ葬儀屋になり)、やはり昔の『寺』のイメージに立ち返っていく時代になってきているかもしれませんね。
うちの村では結構集まりは多くて、私も三味線演奏に行かせていただいたこともあります。お寺の本堂は大変よいホールです(音響がよい)。子どものころはお寺でそろばんと習字を習っていました。人が集まり、困りごとを相談する場所だったのですよね。
でも、今でも、こちらが出かけて行って、門を叩けば受け入れてくださる、そんなところは多いのではないかと思います。
竹流は…放浪していましたから、多分イタリアでそうだったように、日本でも寺や神社が人々の魂のよりどころだと思っていたようです。
微妙なところに気づいていただいて、嬉しいです(*^_^*)

大海彩洋 #XbDIe7/I | URL | 2013/04/21 21:25 [edit]

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://oomisayo.blog.fc2.com/tb.php/108-3723b0c1
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)