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コーヒーにスプーン一杯のミステリーを

オリジナル小説ブログです。目指しているのは死体の転がっていないミステリー(たまに転がりますが)。掌編から長編まで、人の心を見つめながら物語を紡いでいます。カテゴリから入ると、小説を始めから読むことができます。巨石紀行や物語談義などの雑記もお楽しみください(^^)

 

【物語を遊ぼう】9.短編は難しい… 

さて、今日は起承転結の話でも。
この間やってみたバトンにもありましたが、文体・文章で最も影響を受けている作家さんは?という質問……実は、かなり答えるのが難しくて、結局はその時読んでいた本に左右されることが多いというのが答えかなぁ、と思ったのですが……そう、まるで、『好きなタイプは?』『その時付き合ってる人』って感じですね。
でも、短編について語るなら、この大先生を置いて、他にはありません。

O・ヘンリ大先生。新潮文庫の『O・ヘンリ短編集』全3巻は私のバイブルでもあります。時々、行き詰ったら読む。短い話ばかりなので、どれかを適当に選んで読んでいるわけですが、何だかリフレッシュします。
たまに、昭和に浸りたいときは、松本清張さんの短編集ですが。

バトンにも書きましたが、まともにプロットを書かない私ではありますが、プロットを作らないわけではありません。頭の中では、ものすごい勢いで話が流れています。特に長編はその勢いで書くので、確かに何が何だかってことは多いのですが、もう妄想をぶつけてるって感じになります。
こんないい加減な人間なので、短編が下手。
短編が書けない奴に長編は書けない、とか言われそうですが、それはもう、重々承知していますので、あしからず。

そう、短編こそ、正確なプロットが必要と思うのです。短編は怖い、といつも思っている。短編こそ、起承転結がはっきりしてないと、読み終わって何も残らない。短いから、登場人物に入れ込む間もないわけで、純粋にストーリーの面白さが問われる。
もちろん、長編があってのおまけ的短編なら、つまり知っている登場人物が活躍するのなら、筋立てはいい加減でもいいのかもしれませんが……それはエピソードであって、短編とは言わないのではないか?と思ったりするのですね。
世間で、作家の○○氏の短編がよいと言われて読んでも、なんだろ?と思ってしまったことはいく度もあり、すぐに読むのをやめてしまった。結局、基本中の基本、起承転結が見えないと嫌になってしまうようです。もちろん、起承転結の考え方は人それぞれで、たまたま私の琴線に触れなかっただけなのかもしれません……

O・ヘンリと言えば、『賢者の贈り物』『最後の一葉』ですね。この『起承転結』は、皆さんよく御存じなので、あえてここでは書きませんが、どちらも、しっかりと起承転結があります。
で、今日は、もう私が好きで好きで、何回読んだかしら、という短編をご紹介いたします。
『黄金の神と恋の射手』
……文学なので、ネタバレはいいと思いますから、ストーリーをご紹介します。

登場人物は、金持ちの爺さん(もしかして思っているより若いのかも?)とその息子、そして息子が思いを寄せる女性、金持ちの爺さんの妹、そして……

金持ちの爺さんは金で解決できないことなどないと主張しています。その息子は生真面目で奥手の悩める若者。彼は恋をしていますが、その女性に言い寄ることはできない。告白するチャンスも、二人きりになるチャンスもないまま、彼女はヨーロッパへ旅立って何年も帰ってこない、という状況に。金持ちの爺さんは、息子のその奥手さ加減が歯がゆい。お前はものすごい金を持っているのだから、金で何とでもできるはずだ、と。でも奥手の真面目な青年は、『お父さん、金では解決できないこともあるんですよ』と。

時代も時代で、女性に交際を申し込むには社交界の色々な掟もあり、やっと二人きりになれるのは、彼女がヨーロッパへ旅立ってしまう前に親戚と舞台を楽しむ劇場までの馬車の中のほんの4・5分。駅にいる彼女を迎えに行き、劇場まで送るという許可を、ようやくもらったのです。でも、そんな短い時間で、これまでちゃんと話をしたこともなかった彼女のハートをつかむことは到底無理と、青年は諦めています。
青年の叔母は、青年の母親の形見の品である『愛をもたらしてくれる指輪』を青年に渡します。叔母もまた、金で解決できないことがあると思っているものの、時間がたっぷりあればともかく、今となっては、甥が心を奪われた女性と結婚するのは難しいだろうと思っている。

そして、彼女を迎えに駅へ行き、ようやく二人きりになった馬車で……青年は、母の形見の指輪を落としてしまったことに気が付きます。青年は馬車を止め、彼女に断って、1分で戻ってくるので、と言って指輪を探しに行って戻ってくると……
その1分の間に彼らの馬車の前に電車が止まっていて、馭者がすり抜けようとすると荷物配達車に行く手を阻まれ……そこへトラックやら二頭立て馬車やらも絡まって……ふと見ると、彼らが進むべき広小路は大渋滞です。
始めはお芝居に間に合わないと言ってイライラしていた彼女も、とても進めそうにないことに気が付いて、諦めたようです。『僕が指輪さえ落とさなかったら…』と謝る青年。彼女は、『いいえ、どうせお芝居だってつまらないんだわ』

さぁ、どうなったと思いますか?
2人は婚約しました! 叔母は兄の金持ち爺さんのところにやってきて、『指輪を落としたおかげで、結局2時間も大渋滞に巻き込まれたんですよ。その時間にゆっくり話ができて…ほら、真実の愛を象徴する指輪が二人を結びつけたんですよ』と。

この話、これで終わったら、『で?』ってことですが。
翌日、金持ち老人のところに男が訪ねてきます。金持ち老人『だいぶ上首尾だったようじゃな』、男『足が出てしまいました。荷物配達車や辻馬車は5ドルで話が付いたが、トラックや電車は10ドル……しめて5300ドルかかった』と。
皆まで言いますまい…と言いたいところですが、つまり2時間の大渋滞、爺さんが金にものを言わせて作り出したものだったんですね。
金持ち爺さんは男に尋ねます。『ところで、太った裸んぼの小僧が、しきりに矢をはなっていたのを見なかったか?』と。『そんな小僧がいたら、ポリ公にふんじばらてますぜ』
『わしもそうだと思っとった』……爺さんは満足であった……

これこそ起承転結というものだわ、と思って、読むたびに満足な短編 (面白さは色々ですが^^;)ばかりです。
さて、皆さんはいかがですか?
私は、SSでも一生懸命、起承転結を作ろうと思いながら書いているのですが、とても難しい。でも、一生懸命さが伝わるといいなぁ、と思うこの頃です。
短編の先生をご紹介しました。是非、一度読んでみてください。落語と一緒で、落ちが分かっていても面白いですし、学ぶ姿勢で読むともっといい。そういう目でみると、すっかり手垢が付いたような有名な話である『最後の一葉』も『賢者の贈り物』も味わい深いですしね。


ちなみにこの話があまりにも気に入った大海は、相川真シリーズの4代先、大和竹流=ジョルジョ・ヴォルテラのひ孫(もろもろややこしい家の跡継ぎ・やや優柔不断)がヴォルテラの家を捨てて、相川真のやしゃ孫(繊細だけど言いたいことは言う、でも自分の気持ちにはなかなか素直になれない考古学者ちゃん)と結ばれる話の最後に、このシーンを頂きました(#^.^#)
ヴォルテラの力を持ってしたら、誤解したまま東京に帰ろうとする彼女を引き留めるために空港ひとつ塞ぐくらい、なんてことないはず!(やったのは優柔不断な兄貴にイライラしていた弟だけど…そう、『麗しのサブリナ』の本歌取りさせていただきますので(#^.^#))
でも、私がたまたまその空港に居合わせたら、怒るけどね!
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コメント


NoTitle

 こんにちは。
僕は 短編は一発芸と言う感じで 書いてますね。
如何に 鮮やかに仕掛けるか 如何に切り口を遊ぶかでしょうか。
確かに 短編は 長編を短くしたものを書くと たんなる あらすじになりますからね。
短編は 思っているよりも 手間暇かかります。

僕が 難しいと感じのは 中編です。
短編の様な 仕掛けだけでは書けない でも長編ほど 詰め込む事は出来ない。
上質な中編は 長編の面白さと短編の鮮やかを持ち合わせているのですが…
失敗すると 唯 長編のあらすじに 短編を引き延ばし長くしたものになりますからね。
長編も 短編も巧みに書ける方は 稀ですね。

そうそう 此の前のバトン 書き終わってから気が付いたのですが 僕のシリアスな方の文章に
影響を受けたのは  ポーの詩集の様な気がする…

ウゾ #- | URL | 2013/03/28 07:58 [edit]


NoTitle

『黄金の神と恋の射手』、とてもよく練られた、秀逸な、そして軽快な短編ですね。
こういうのを、現代日本版でさらっと書いてみたいです^^

わたしも同感で、「短編は怖い」と思っています。
昔は短編をよく読んでいたのですが、最近は人物にどっぷり感情移入できる長編が好みに合うと気づき、短編はほとんど読まなくなりました。

だけど先日、今をときめく女流作家ばかり8人で作られた、書き下ろし短編集を読んだのです。「甘い罠」だったかな??
だけど、どれ一つとして面白いと感じるものがなく、「え?これはいったい、どこを楽しめばいいんだろう」という疑問ばかりが残りました。
有名な作家たちの短編でさえ、そうなのかと、かなりがっかりしてしまいました。
いや、それか、私にその短編を楽しむ才能がなかったのか・・・。

いずれにしても、登場人物に感情移入する時間のない短編は、難しいですね。
SSなどはもう、ストーリーの瞬発力、オチが全てで。

どのくらいの長さまでが短編というのかわからないのですが、以前読んで心に染み付いたのは、赤江瀑先生の短編集です。(短編といっても、長めかな?)
短い中に、しっかり人物の魅力や、雰囲気、影か書き込まれていて、読み終わったあとも、じわじわ思い出されて来ました。
ああいう、怪しげな短編が書きたいなあ・・・と。
でも、素人が書くと、ただの俗物的R18になりそうで、危険なラインなのですが。

長編、短編、いずれにしても、これは自信作!と言える作品を、生きているあいだにひとつだけでも、書いてみたいです><

lime #GCA3nAmE | URL | 2013/03/28 09:19 [edit]


ウゾさん、ありがとうございます

さすがウゾさん、中編…とは、また別なる難しい世界を出してこられますね…
一発芸、という表現もなかなか面白いです。
うん、とコメントを頂いて、一体、短編・中編・長編の定義ってなんだ?
と疑問を感じたので、ちょっと別記事も書いてみました。
また、ウゾさんの一言が聞きたいです(^^)

> そうそう 此の前のバトン 書き終わってから気が付いたのですが 僕のシリアスな方の文章に
> 影響を受けたのは  ポーの詩集の様な気がする…
確かに、ウゾさんの文章は、ちょっと懐かしい詩的な印象がありますね。
懐かしい、というのは単に私の感想です。高校生の頃、結構詩を読みました。
もう今となっては、誰のなんという詩なんて覚えていなのですが。
ポーですか。うちの詰め込まれた本棚のどこかにあったはず…
探して読んでみます。
私は、お決まりのように、ランボーやヴェルレーヌをよく読んでいました。
あとは、ロルカやタルコフスキー(映画監督のお父さん)やら、革命家の詩も大好きで。
懐かしいです…
あとは、掌編にも書きましたが、伊良子清白や土井晩翠など、日本の詩人さん方…
かなり偏った読み方ですけれど…
この頃、詩って読まなくなったけど、ブログではよくお見かけするので、みなさん、うまいなぁと感心しています。

大海彩洋 #XbDIe7/I | URL | 2013/03/29 06:55 [edit]


limeさん、ありがとうございます

limeさんのコメントを読んで、そしてウゾさんのコメントと合わせて、確かにいったい短編とかの定義ってなんだ?と思い、記事を追加してみました。
要するに、よくわからないのですが、でも短い話が難しい!っていうのは確かですよね…

『黄金の神と恋の射手』、実はこの話のいいところは、真実の愛は…と信じる妹(青年の叔母)に、兄の金持ち爺さんが、わしが金でやったんだとは言わなかったことなんですよね。忙しいからと追っ払って、彼女の夢見る気持ちを?傷つけなかった。そしてひそかに悦に入る。
実はチャーミングな爺さんに違いないと思ったわけで。
きっと、息子にも言わないまま、自分で首尾に満足していたんだろうな。
で、息子を溺愛している、バカ親って面も良くて、お気に入りなのです。

limeさんのおっしゃるように、短編って当たり外れ大きいですよね。
自分の琴線に触れる範囲の狭いこと…だからやっぱり難しいと思います。私もよく、この作家の短編は素晴らしい、というので読むんだけど、ブンガクが分からないからか、はてな?となることは多いです。
だから、O・ヘンリーと松本清張は、私の中でちょっと別格。
赤江瀑先生の短編…読んだことがないので、今度読んでみます。
私も怪しい話、大好きなもので(^^)

> 長編、短編、いずれにしても、これは自信作!と言える作品を、生きているあいだにひとつだけでも、書いてみたいです><
同感です(*^_^*)

大海彩洋 #XbDIe7/I | URL | 2013/03/29 07:06 [edit]

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