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コーヒーにスプーン一杯のミステリーを

オリジナル小説ブログです。目指しているのは死体の転がっていないミステリー(たまに転がりますが)。掌編から長編まで、人の心を見つめながら物語を紡いでいます。カテゴリから入ると、小説を始めから読むことができます。巨石紀行や物語談義などの雑記もお楽しみください(^^)

 

【物語を遊ぼう】10.『鬼平犯科帳』追記:小説と映像 

前回記事を書いたとき、随分らりっていて?ちょっと混同して書いてしましました。
『鬼平犯科帳』
そもそも小説のことを書くつもりだったのに、たまたまテレビで『正月四日の客』を見てしまったので、引きずられてしまって、半分混同して番組のことを書いてしまったのですね。

ただ、このシリーズに関しては、小説とテレビ番組はもう、本当に切っても切れない…じゃありませんが、番組は小説を逸脱しないように作ってあって、派手なことは何もせず、淡々と語る姿勢を貫いているので、どちらの話をしても違和感がないのではないかと思ったりもします。少なくとも私の中では、ちょっと混乱するくらい、世界は重なっている。

もちろん、原点は池波正太郎先生の小説で、私が心酔しているのは、もともとはそちらなのですが、この番組はベストな役者を選んだと思います。きっちゃんの鬼平から、レギュラー陣、1回きりの盗賊や市井の人々まで。そしてベストな語り方をしてくれている。

実は私、多岐川/裕美さんが苦手だったのですが、『むかしの男』で小説のまんまの捨て台詞『あんな男、あなた様に比べたら塵芥も同然』(ちょっと言葉が違ったかも…すみません、私の頭の中ではこんな台詞。当たらずとも遠からずのはず)と、あの派手やかなお顔でぴしゃりと言い切られたとき、おぉ、なんとまさに久栄さんだわ、と感心しました。

…これは鬼平の奥さんは実は昔男に弄ばれて捨てられて、傷物の娘を誰も嫁にもらってくれないと嘆く久栄の父親に、鬼平が『よし、もらってやる』ということがあったのですね。で、その昔の男が盗賊になって現れて、鬼平との対峙で盗賊が『久栄を女にしたのは俺だ』って言うんだけど、鬼平は『本当に女にしたのは俺だよ』ってあっさり受け流し。で、ラストで、久栄さんが言ったのが、『ちりあくた』です。

いやはや、女って、怖いものなのですよ。ろくでもない男なんて、たとえ初めての男であっても、切り捨てごめんってことですね。やっぱり男の方が、『初めて』に幻想を抱いたりもするんですかね。よく『男は初めてにこだわり、女は最後にこだわる』と申しますし(18/禁^^;)。

さて、盗賊改めの密偵(イヌ)の中に、梶/芽衣子さん演じるおまさがいるのですが、おまさは鬼平が好きなんですね。鬼平は察しているけれど、身分も立場も違う、ましてや盗賊改めと密偵ですから、きっちり誤解のないように一線を引いている。おまさもそれが分かっていて、決してあるラインから出ない。

で、この久栄VSおまさのシーン(多岐川/裕美VS梶/芽衣子)はもう、女の私が見るからか緊迫感があって、小説以上に生々しく見えない火花が出ていて、すごい役者さんたちだわと思うのです。久栄さんは、女の勘でおまさの気持ちを知っている、でも知っていてどうこうなるものでもないので、凛とした態度で臨む。そこには上位にいる女の優越感や傲慢や横柄もちょっとあるんですね。だって『殿様は…』と鬼平のことを語る時、私は殿様のことをこんなに知っているし、愛しているのよってのが台詞ににじみ出ていて、それをさりげなく出しながら、一方では鬼平のために命がけで働いてくれている女への感謝も持っていて、優しく言葉をかける。おまさ役の梶さんも、色々分かっていて押さえて演技をしている。…この二人のシーンだけは、小説では出せない『女の戦い』みたいな気がして、映像の勝利かも、と思う。

えーっと、例に漏れず私は伊三次さんファン。でも、大滝の五郎蔵(おまさと結婚)さんも結構好き。何より、昔から、『理想の人は?』『(ためらいなく)長谷川平蔵』と答えてましたから……


余談ですが、フェリーニの『そして船は行く』という映画があります。第一次世界大戦前夜、偉大な歌手の葬儀のためにナポリから出航した豪華客船を舞台にした群像劇。漂流から救出された難民が詰め込まれている最下層のデッキ、上層にいる芸術家、オペラ歌手、貴族、亡命中の皇太子……そしてなぜか船底にいる不眠症のカバ……何だかわけのわからない作品なのですが、これがもう本当に驚くほど人の顔がいい。
確か、フェリーニはこの役者をそろえるのに、かなり気合の入ったオーディションをして、演技の上手い下手じゃなく(何より、演技がどうと言う映画ではなかったような…)、ただ『その当時(第一次世界大戦頃)の人々の顔をした役者』をそろえたのだとか。顔だけでいい、という荒業?だったらしいです。
役者の顔って、本当に大事ですよね。


で、こちら、鬼平の方は、顔だけで演技できなきゃ困るんですが、役者はよく選んでいると思う。だから、ここぞというときは大物の本当にすごい役者さんを使っているし、そうでなくても吟味した気配を感じる。
本当に原作を読んでいる人が違和感なく入れる番組を、よくぞ作ってくださったと思うわけで、これはひとえに製作者さんの池波作品への敬意、この世界を壊さないという繊細な配慮の賜物だったろうと思います。

同じことは、『剣客商売』にも言えるけれど、『鬼平』の方が上かな? 藤田まことさんはあの秋山小兵衛そのものに見えますけど。やっぱり藤田まことさんは、最高に雰囲気のある役者さんのおひとりです。
(関係ないけど、昔、京都の南座に『必殺』の舞台を見に行きました。第2部に藤田まこと歌謡ショーがあったんですが、必殺シリーズの歌もたくさん!で全て知っている自分らにびっくり。大盛り上がりでした)
『仕事人』は全く『仕掛人』から派生した別物だけど、これはこれで別物ってニュアンスを言葉から変えてしまってはっきりさせているので○。『仕掛人』梅安の小林/桂樹さんは良かったけど、映画の萬屋錦之介さんも良かったなぁ。あぁ、古い……


小説と映画/テレビ番組…って難しいですよね。原作のイメージを壊さないでという、原作ファンの声もあるし、たまには原作を越えちゃう映像もあるし。
でもこの話は、あまりにも遠大なテーマなので、またいずれ。

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コメント


彩洋さんこんばんは^ ^

彩洋さんこんばんは^ ^

小説と映画/テレビ番組…本当に難しいですよね。高橋はかなり原作(小説)を重視派で……。
視聴率やキャスティングの諸々で色々事情もあるんでしょうが、あまりにも原作からかけ離れてしまうとちょっと残念ですよね。

高橋月子 #- | URL | 2013/04/06 20:33 [edit]


月子さん、ありがとうございます(^^)

そうなんですよね。
先に原作を読んでいると、やっぱり自分なりのイメージができていますものね。
自分の中にある世界を壊されたくないというのか…
でも逆に、原作はまぁ月並みでも、役者がいいと新しい発見があったり。
きっと、小説から入ったか、映像から入ったか、というのでも感じ方は違うんだろうな、とも思いますし。

たとえば私は、ハリー・ポッター(賢者の石)は映画から入ったんですが、2作目からは小説が先になって…
炎のゴブレットでは、結構小説が面白くて……でも長かったので、これが映画で短くなるのは無理だなと思ったけれど、映画は実によく作ってありました。端折るところは端折って…
でも、1作目を映画で見ちゃったからか、役者さんたちの印象があまりにも強くて、その後小説を読むときに大きく影響したかも、と思います。特にもう、ハーマイオニーが可愛くて…(^^)

浅見/光彦さんシリーズも、わたしにとっては、『天河伝説殺人事件』の榎本/孝明さんが最高で、その後は誰を見ても違和感を感じる。原作者さんも、榎本さんはイメージだっておっしゃってましたけど…
歳のこともあるから、難しいですよね。

どう楽しむか、ってのは結局、見る/読むほうに委ねられるんですね……
小説と映画/テレビ番組…本当に難しいですよね。高橋はかなり原作(小説)を重視派で……。
> 視聴率やキャスティングの諸々で色々事情もあるんでしょうが、あまりにも原作からかけ離れてしまうとちょっと残念ですよね。

大海彩洋 #twaBVMew | URL | 2013/04/07 00:58 [edit]

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