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コーヒーにスプーン一杯のミステリーを

オリジナル小説ブログです。目指しているのは死体の転がっていないミステリー(たまに転がりますが)。掌編から長編まで、人の心を見つめながら物語を紡いでいます。カテゴリから入ると、小説を始めから読むことができます。巨石紀行や物語談義などの雑記もお楽しみください(^^)

 

[雨52] 第9章 若葉のころ(1) 

少し間が空いてしまいました。
自分でも忘れそうなので更新しようと思ったら、この章は独立でも読める章なので、あまり記憶の維持には役立たないことに気が付きました。この長い物語、時々こうして独立の回想章が入っておりまして、これまでのお話をご存じない方にも読んでいただけるようになっております。
一部、かなり色っぽいorきわどい話が出てきますが、あまり具体的なシーンとは自分では思っておりませんので、18禁指定はしておりませんが、15歳未満の方はお気を付け下さい。
相川真、15の頃の出来事。
いささか引くようなエピソードがありますが、しれっと読み流してくださいませ。

なお、現在、真は竹流を探して、新潟行の夜行列車に美和と一緒に乗り込んでおります。
多分、列車の中で、あの頃のことを思い出していたのでしょう。





 あれは十年以上前の、やはり同じ季節だった。
 梅雨入り宣言はあったが、実際には雨はまだ少なく、それでも空気が少しずつ重くなり始めていた。その日は夜になって雨がぽつぽつと降り始めた。

 真は随分躊躇ってからレセプションの紳士に訪問の意を告げたが、訪問先からはロビーで待っていろと言われて、自分の格好を思わず考えた。このマンションはまるで豪華ホテルのロビーのようなエントランスを持っていて、とてもずぶ濡れで待っていられる場所ではなかった。レセプションの紳士は真の格好にもいやな顔をしなかったが、それはトレーニングの成果であって、実際には鬱陶しく思っているに違いなかった。
 どうせ竹流はいつものようにパトロンの女とベッドに入っているのだろう。

 一時間は待たされるかな、と思いながら、少しその辺りをうろうろしています、とレセプションに断って、真はもう一度雨の中に出た。小雨だと思っていた雨は、僅かの間に少し勢いを増したようだった。真は両腕を抱くように身体を震わせて、せめて歩いていればましかと雨の中に出た。とは言え、少し歩くと人とすれ違い、傘のない真を哀れむような不審がるような目を向けるので、思わずマンションの脇の茂みに隠れた。学校の制服のままだったし、その格好でずぶ濡れというのは、いかにも人目を引きそうだった。

 そのまま背中をマンションの外壁に預けて座り込んだ。
 まだ夜の雨は堪える季節だった。不意に、通りかかった車のテールランプを頼りに自分の手を見つめると、紅く染まって犯罪者の手のように冷たく穢れている気がした。

 泣いているつもりはなかったが、竹流にはそう見えたかもしれない。
「ロビーで待っていろと言ったが?」
 真は顔を上げて竹流を見た。

 後から竹流が冗談交じりに、あの時は本当にやばいなと思った、と話していた。
『お前、ほだされそうなくらい色っぽく見えたし、本当は誰かに頼りたいのに頼れないという強がりが男心をくすぐる、まさにそんな状況で、そのまま抱き締めて本気でキスしようかと思ったよ』
 いつものように戯言だと思っていた。

「何で、中で待たない?」
「ずぶ濡れだったし、中で待ちにくかっただけだ」
 そう返事をすると竹流も納得したようだった。エレベーターに乗り込むと、急に体から熱が奪われたように感じたが、竹流は自分の着ていた上着を脱いで、包むように真の身体に掛けてくれた。

「学校の帰りか」
 真は首を横に振った。竹流の手は暖かく感じたが、その声は冷めていた。
「また、あの男のところか」
 それには返事をしなかった。

 部屋に入ると竹流はタオルを取りに行ってくれて、玄関から直接風呂場に行くように言った。テラスに面した浴室の窓には、屋外の照明が映りこんでいて、ぼんやりとした丸い光の影が、雨のために幾度も辺縁の形を変えていた。
 真は馬鹿みたいに身体をこすって、それでもまだ足りない気がして、もう一度石鹸を泡立てた。

 自分は泣いているのかもしれないと思ったが、声を上げることもできなかった。もし泣いているのだとして、自分自身にも気付かれたくなかった。
 石鹸を絡みつかせた指を肛門の奥にまで入れて、身体の奥深くに放たれた残滓をかき出そうとしたが、かえって残り火に油を注いだようになった。真はシャワーを止めると、どうしても取れなかった穢れを感じたくなくて、そのまま湯船に身体を沈めた。
 まだ身体には這い回るような指や唇の感触が残っていた。何よりも、そういうものを自分自身が嫌だと思っているばかりではなく、受け入れてきたという現実に対して、どう始末をつければいいのかわからなかった。

 あの女に会う日にいつもしている行為には、性的な意味合いは無く、ただ排泄するための行為で、真にとっての意味合いは、自分の中の穢れを搾り出すことだった。あの女のために身を売った時も、性交渉とはそういうものだと疑ってもいなかった。
 だが、真にとって意外なことに、滝沢基という男は、ファインダーを間に挟んでいないときは極めて常識人で優しい人間だったような気がする。もっとも未成年を相手に性的な行為をすること自体が常識的とは言えないが、それは真が望んだからだと言えなくもない。滝沢基の腕の中で、あの男に教えられながら、身体は明らかにそれに応えるということを覚えていった。

 時々、もっと酷く扱われたいと願った。
 このままでは、目的を果たすことができないと感じたからだ。だが、滝沢基はベッドの中ではあくまでも真を優しく扱った。真が恐がらないように気を使い、感じることができるように彼の知っている限りのテクニックを使った。そして少しずつ、真の身体は快楽を覚えていった。滝沢基に対して愛や尊敬という概念は全く持っていない。だが、身体は別の答えを出そうとしていた。

 今日、仕事は終わったと言われたとき、真はもう会わないとだけ言った。滝沢はそのほうがいい、と答えた。テーブルの上に出された厚い茶封筒は、事件は解決ではなく迷宮入りになったことを語っているように思えた。

 真が風呂に入っている間に、竹流は濡れた服をどうにかしてくれようと思ったのだろう。真が風呂場から出てくると、竹流は脱衣所にいて、洗面台に置いてあった茶色の封筒を取り上げていた。
 半分は気が付いてくれたらいいと思っていた。意識してわざと分かりやすいように洗面台に放り出しておいたのだ。真は取り戻そうとして手を伸ばしたが、竹流は渡そうとはしなかった。

「これは何だ?」
 竹流の声は厳しかった。
「なんだっていいだろ。返せよ」
「一体、お前、何をやっているんだ」
「あんたには関係ない」
「関係ないって、高校生が持っているような金じゃないぞ」
「わかってるよ」
 真は竹流を睨んでいた目を伏せた。
「いいから、それ、しまっといて」

 意識して相手を誘うような表情をしたことを、真自身十分に自覚していた。もしも今、この未解決事件の始末をつける方法があるとすれば、その鍵を握っているのはこの男だと知っていた。
 真が風呂場からリビングに入ると、竹流はテーブルに札束を放り出して見つめていた。真を見上げると、厳しい表情で前に座るように手で示す。

「訳を話せ。これは、あの滝沢という男から受け取ったのか?」
 真は相手を見たまま返事はしなかった。
「ベッドの相手をした報酬か。それにしちゃあ、随分な金額だな」
「契約をした。仕事の報酬だ」
「仕事?」
「写真のモデルをしてた。ベッドの相手をした分も入ってるだろうけど」

 竹流はわざとらしい溜め息をついて、ソファに背を預けた。真は、一度も目を逸らそうとしない竹流にこれ以上言い訳する言葉も思いつかず、ついに目を伏せた。
「で、これをどうするつもりなんだ」
 真はうつむいたまま、今日泊めてほしいと言った。淡々とした声で、それは構わないと竹流は答えた。真は思い切って顔を上げ、聞いた。
「明日、時間ある?」
「デートの誘いか?」

 真は、相手が怒っていてこんなものの言い方をしていることを分かっていた。そして自分のほうも、相手を篭絡する気であるという自覚があった。もちろん、後から考えてみたら、余裕なんてこれっぽっちもなかったのだが。
「連れていって欲しいところがあるんだ」
「遊園地か、それともラブホテルか」
「何言ってるんだ」
「その滝沢とやらに頼めばいいだろう」
「彼とはもう会わない。今日、そう言ってきた」
「これを受け取ったからか?」

 真は返事をしなかった。竹流の青灰色の瞳は、怖いくらいに澄み渡り、その奥にある確固たる意志の存在と、精神の奥底に彼自身が培ってきた自尊心を、惜しげもなく見せ付けてくる。
 わざとらしい溜息をついて、竹流は硬い声の調子を変えることなく聞いた。
「で、どこに?」
「秩父」
「埼玉の? 何だってそんなところに」
「その」真は一瞬躊躇した。「お金を払いに」

 竹流は怪訝そうな顔をした。
「誰に?」
「病院。お金払うの、待っててもらってた」
「病院?」竹流は鸚鵡返しに言って、真をしげしげと見た。「静江さんのか」

 今度は真の方が驚いた。
「何で、知ってんだ?」
「親父さんから聞いていたんだ。彼がいなくなる前に、万が一お前が困ったら助けてやって欲しいとは言われたが、お前が何も言わなけりゃあ、放っておいて構わない、むしろ放っておいてくれ、と。で、何だって?」

 功がどれほどこの男を信用していたのかと思うと、心の奥深くに突き刺さっている棘の存在を否応なしに感じる。
「癌なんだ。もう助からないかもしれないけど、手術して、今薬を使ってる。できる限りの治療をして欲しいって言った。何だか知らないけど、認可されていない高い薬を頼んだんだ」
「入院費は功さんが残してたろう?」
 残してあったが、それはただ普通に入院していれば、という金額で、特別な時のための治療費ではなかった。それに実際は、真自身が自ら稼いだ金であの女のために何かを、それも命に関わる重大な何かをするということに意義があった。

 相川静江、すなわち真の義理の母ということになる女性は、精神を病んで秩父にある、昔の結核病院を改装したサナトリウムに長く入院していた。引き取った赤ん坊の首を絞めたり、娘を道連れに家に火を点けようとした女性は、今も精神のバランスを戻せないままだった。

 自己犠牲が必要だと思っていた。それだけが、唯一あの女を真の内側から追い出してしまう方法だと思えた。己の身体を傷つけた血で贖うことによって、あの女への恐怖も、憎しみも、そしてあの女に対して抱いてきた殺意も、帳消しにできるはずだった。

 だが、結局真は説明が面倒で、つまり竹流に何かを理解してもらえるとは思えずに、それ以上何も言わなかった。この男には陰という部分がない。だから真の中の恐ろしく穢らわしいものを分かってもらえるはずがない、少なくともその時の真はそう思っていた。
 竹流は首を何度か横に振ると、分かったからもう寝ろ、と言った。

 ベッドに真を寝かせた後、竹流はリビングに戻って行った。
 どうしても身体が疼いて眠れないまま、真は時々ソファに座って本を読む彼の様子を窺った。テーブルに広げられた分厚い本には、様々な紋章が並べられている。竹流は幾つかの本を比べながら、時々ノートに何かを書き出していた。その背中は大きく暖かく感じたが、同時に弱い心など跳ね返す厳しさを持っていた。
 真は、ぼんやりと、父親の背中というものはこういうものなのだろうと想像した。


 翌日、いつもバスを利用している真は病院の場所をよく分かっておらず、住所を頼りに人に聞きながらのドライブになったので、何とか病院にたどり着いたのは昼も回ってからだった。
 真は竹流に、ちょっと待ってて、と言ってひとりで病院の玄関に向かった。足は何とか前に進んでいたが、少しずつ重くなった。一瞬真は立ち止まり、竹流の方を振り返ったが、目を合わすことはできずに、すぐにまた玄関へ歩き始めた。

 竹流は、真が赤ん坊の時、静江に首を絞められたのを知っていたはずだった。

 それがただの育児ノイローゼだったのか、自分を捨てた恋人への復讐心からであったのか、実際にはわからなかったが、赤ん坊の記憶に残らない時期であったにも関わらず、真はしばしば首の回りに巻き付く何かの気配で目を覚ますことがあった。
 それが何なのか、子どものうちは全く分からなかったのに、彼女を初めて見たとき、明らかに記憶のパズルに何かがはまり込んだ。真にとって、彼女はどうしても克服しなければならない恐怖、あるいはどうしても消せない心の中の染みだった。

 伯父の功が失踪する前、功は初めて真に静江のことを打ち明けた。
 彼女が相川功と離婚したわけでもなく、亡くなったわけでもなく、そこに存在していて、精神の病を抱えたままもう長い時間、社会との関係を絶って病院に入院していることを。

 真は功がなぜあの時、静江のことを自分に打ち明けたのか、今でもよく分かっていなかった。
 あの頃、幾らか落ち着いたとは言え、真はやはり精神状態の不安定な子どもで、功に付き添われて月に一度は精神科医のところに通っていた。竹流は行く必要はない、と言ったが、真自身は自分の中の何かにまだ怯えていた。行っても大した話はしなかったが、眠れなくなったら来るようにといつも言われていた。薬はもらったが、飲んだことはなかった。

 そんな状況で功が静江の話を真に打ち明けたのは、やはり功が、自分の弟、すなわち真の実父が静江を捨てたことを許していないからだと考えた。
 もちろん、誰かが真にそう説明したわけではない。真が大人たちの気配から想像したに過ぎないが、功がいつも何かと闘っていると感じていた真は、その理由が自分の実父のせいだと思い込んだ。功は、真の存在を介して、何とか弟を許そうと葛藤しているのだろうと想像したのだ。そして一方で、静江の事については、息子である真も、実父の武史と一緒に責任を負うべきであると、功がそう考えているのだろうと感じた。

 真は、功が失踪してから、月に一度は静江に面会に行った。そうしろと言われたわけではない。そのことは竹流にも話したことはなかった。実父と功と静江との間に何があったのか、敢えて聞くこともなかった。

 静江に会いに行くと、彼女は、真を功と間違えているような言動をした。真はその女を抱き締め、求められるままに何度か功のふりをして、白い肌には不釣合いな紅い唇に口づけた。真が帰ろうとすると、静江は真にしがみつくようにして何処へも行かないで、と泣いた。この美しい義理の母親と、舌を絡めるような接吻をしたこともあった。そんな時は、静江は真を武史、つまり彼女を捨てた男と混同しているようだった。
 
 そういう日は、家に帰ると真は必ず自慰をした。いつもその女のことを考えていた。自分の体の中にとてつもなく穢らわしいものがある気がして、自分の性器を扱いて内に溜まったものを吐き出すと、後はただ虚しいばかりだった。

 静江の中では、色々なものや人、出来事が完全に混乱しているようだった。その彼女の混沌は、真を混乱させていたはずだが、一晩自慰をした後では、真は悪夢から少しだけ抜け出したような心地がして、翌日には何事もなかったように学校に行った。

 カリフォルニアから戻った後に通い始めた私立校は、校風も自由で、広々とした敷地はいつも明るい光に満ちていた。院長はすれ違うたびに笑顔で挨拶をしてくれた。お節介な級長は『相川真の親友』を自称し、いつも真のことを気に掛けてくれていて、つまらない日常の出来事を面白おかしく話す技術を持っていた。
 サナトリウムのことは、真にとって小さいが重い義務で、確かに静江に会いに行くことは恐ろしいことだったにも関わらず、会いに行かないことはもっと恐怖の原因になるように思えていた。ただ、それを浄化する場所が学校になるとは、真自身その時まで想像もしないことだった。

 その日、真が病室に入ると、静江は鎮痛剤が効いていて、よく眠っていた。白いベッドの上に、その白よりもまだ白く透き通るような肌の女が横たわっている。女は死んでしまっているかのように静かに横たわっているのに、唇だけが生きて存在を主張しているように紅く、微かに震えるように見えた。優しい看護婦が彼女にいつも紅を引いてくれていた。

 ガラスを通して降り注ぐ光は柔らかで暖かく、僅かに開いた窓からは鳥の声、木々の葉が触れ合う音、遠くに何かがはねる音が、少しずれた次元から空気の中の微粒子を僅かに震わせている。
 真は彼女の傍に座り、彼女の顔の上で透明な光の輪が踊っているのを見つめていた。自分自身が硬くなっていることに気が付いたが、何もしなかった。

 ただ静かだった。

 やがて真は立ち上がり、彼女の唇に接吻し、部屋を出た。
 一刻も早く恐怖から逃れるために、早足でその場を離れたかったのに、心とは裏腹に足はゆっくりとしか前に進まなかった。
 手洗いに入って鏡を見ると、唇が血を吸ったように赤かった。指で紅を拭い、狂ったようにその手を洗った。それから個室に入り、真は自分の性器を扱き、穢れたものを吐き出すようにしてから、紙で拭って流した。もう一度洗面台で手を洗っている時、鏡に映った自分自身は魂の抜けた紙人形のように薄っぺらで頼りがなかった。

 病院の玄関を出ると、竹流の赤いフェラーリが光の中に溶け出すように輝いていた。竹流は運転席のドアに凭れて、空を見上げていた。

 真も空を見上げた。晴れていたと思ったが、雨雲が低い空にたまり始めている。真に気が付くと、竹流は助手席のドアを開けてくれ、真が乗り込むのを見届けてからドアを閉めた。
 竹流は何も聞かなかった。






『若葉のころ』という章題には出典があります。
以下、興味のある方はどうぞ。
…続きを読む



『若葉のころ』

Kinki Kidsの堂本剛くん、堂本光一くんが出ていた、恐ろしく昔のドラマです。彼らがまだ、Kinki Kidsとしてデビューする前、初々しくて泣きそうな(私が^^;)頃のドラマですが、ドラマ自体はとんでもなく暗い路線。
このひとつ前に『人間失格』というドラマがあって、こちらも恐ろしく暗いドラマで、いじめで息子(剛くん)を失った父親(赤井秀和さん)が、いじめの首謀者(光一くん)に復讐する話。

『若葉のころ』は、実は兄弟の二人が(腹違いになるのかな?)一方(剛くん)は貧しい家で育ち、育ての親(根津甚八さん)からは複雑な感情をもたれている。裕福な家庭で育った腹違いの兄弟(光一くん)とは友情をはぐくむが、ある事件をきっかけに剛くんが少年院に入り、その間に剛くんの彼女(奥菜恵さん)と光一くんができてしまい、2人は決別。家を出た光一くんと引き換えに、剛くんが裕福な家の跡取りとして入るのだが……光一くんが事故で意識不明の重体に……

と、あの頃のドラマのドロドロ・ごてごてを地で行くような話でした。
赤いシリーズといい、それこそ、トウシューズの中に画びょうが、なんて世界でしたね^^;

いまどきのドラマみたいに、まったりな回などまるでなく、どんどん追い込む追い込む、そしてラストももう、で、これからどうなるのよ~~~みたいな終わりで。
超欲求不満になるけれど、見るのを止められない、そういう世界でした。

彼らの演技が上手だったかどうかは置いといて、私はこのドラマでまず剛くんに魅かれました。まさにあの年齢の少年の輝きが、放出されていたと思います。


この話の中で、14・15歳の頃の真が、ある写真家のモデルをしていたエピソードが出てきます。
この章はまさにそのころの話。
そして、その写真集の副題は『二度とないこの時を』です。
私の印象の中では、この世代の少年たちは(全員かどうかは別にして^^;)、かなり輝いてい見えている……ような気がする。それは多分、自分と、自分の外にある世界の境を認識し、これからその世界へ出て行こうとするからなのだと思えます。

じゃあ、少女は?
その答えは『ミツバチのささやき』のアナにあるような気がします。
女性は、自分と自分の外にある世界の次元が一致する年齢が、男性よりも早いという気がする。
あのアナの目。
傷ついた兵士を、姉から聞かされたフランケンシュタインだと誤解しながらも、少しずつ世の中を自分の世界へ引き寄せていく、まさに輝ける時。

今でも私の映画・ベストテンの中に入っている作品です。

お蔭で、このアナをモチーフに作品を書いたことがあります。
それが、真の曾孫・真(ロックグループのヴォーカル)のシリーズのひとつ。
いつかお目にかける日が来るといいなぁ。

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Category: ☂海に落ちる雨 第2節

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コメント


NoTitle

これは、複雑な感情ですね。
生い立ちというのか、殺されかけたトラウマ、もしくは実父と叔父が同じ女と関わっている複雑さによるのか、それともコロボックルが見えちゃう繊細さによるのか、とにかく真の対人関係でのものすごく複雑な感情の持ちように驚きます。

ただ憎いとか忘れたいというようなものだけではなくて、その反対の感情というか情念も持ち合わせている。究極の恐怖や憎悪を持っていてもおかしくない義母に対してすらそうで、さらに未成年に対して不適切な事をしている写真家に対してもそうで、それが真の持っている運命なのかと考え込んでしまいます。

簡単に切り捨てる事ができれば人生はかなり楽になり、だから世の中には鈍感であるが故に強くて幸福である人がたくさんいるわけなのですが。

いろいろあったけれど、少なくとも無事に成人して生きているのは、竹流がいたからなのかもしれないなと思います。これだけ危ういと、普通死んじゃうと思うので。

八少女 夕 #9yMhI49k | URL | 2013/06/09 05:55 [edit]


NoTitle

 おはよう御座います。
ああっ ミツバチのささやき まさか ブログ上で 此の映画の名前が出てくるとは…
アナ 驚異な瞳と称せられた アナちゃんだぁ!!!!
アナちゃんの為にに作られた カラスの飼育 も 中々でした。

ウゾ #- | URL | 2013/06/09 07:31 [edit]


NoTitle

ここは単発でも読めるということなので、こちらにもお邪魔しました。
(順番に、読みすすめていますよ^^)
14,5歳。一番多感な時期・・・とひと言で言ってしまうと簡単ですが、育った環境によって、本当に個性の別れる時期ですよね。
そして、男の子は性の欲求に絡め取られてしまう時期。
それなのに、やはりまだ未熟で甘えん坊で、親からの愛情を無言で求める頃。

真は、人よりも更に繊細で感受性が強いだけに、辛いですね><
そりゃあ、そんな悩める表情を見たら、竹流でなくても、どうにかしてやりたいと思ってしまいそう(歩く危険物です)

愛情を注がれなかった子供は、自分を痛めつけるか、外へ怒りを爆発させるかに分かれると思うんですが、真は前者ですよね。その分余計に放って置けない。
それがまた、沸き立つような色気や魅力を放出してしまうんでしょう。
写真家の気持ちが、すごくわかります。ええもう、いけないとか、いいとかをとっぱらうと。その一瞬の輝きを芸術として閉じ込めておきたい。自分の中にも・・・って気持ち。

私は敢えて男の子の性というものを避けて物語を構築していますが、リアルな少年を書きたいと思ったら、そこは外せない部分ですよね。
そんな意味でも、そこをしっかり描くこの物語を、すごいな~、と羨望を含めて読ませてもらっています。
さあ、この危うい時期の真に、竹流はどう接するのか。
そんなことにも注目して、読ませてもらいます。^^

lime #GCA3nAmE | URL | 2013/06/09 09:15 [edit]


夕さん、ありがとうございます(^^)

何だか、中休みみたいな章なのに、色々と深く感じていただいて、本当に嬉しいです。
というのか、私の中では彼の二面性は、もう今となってはあまりにも自然すぎて、こうして夕さんが思い遣ってくださって感想を下さるまで、あまり深く考えていませんでした。

真には、優しさと裏腹の残酷さとか、穏やかな面と急に激情に走る面と、そして性的には妙にストイックな面とどうしようもなく節操がないところがあるような気がしています。
どれも私には不自然ではなかったのですが、今更のように、あ、そう言えば、と教えられたように思います。長い間書いてきて、彼のそういう部分に慣れ過ぎていたのかもしれません。
これって、やっぱり作者が一人で納得していて、読んでくださる人を置いてきぼりにしているみたいな、ダメな面だなぁと反省しつつ。でも、夕さんが気が付いてくださって、複雑な感情と読み解いてくださって、ちょっとほっとしています。

夕さんが書いてくださったとおり、自分の首を絞めた義母に対しても、憎しみばかりではなく、奇妙な情愛を抱いてもいる。【清明の雪】の中で、「あの女だけが自分を騙さなかった」と言っていますから…
この人のことは、今書いている(止まってるけど^^;)【雪原の星月夜】でまた答え合わせがあります…ずいぶん先ですけれど、またいつかお目にかけたいと思います。
多分真は自分の『情念』と彼女の情念が、同じような形であることを感じているのかもしれません。そもそも、彼が精神状態がやや危うくなる時には、根本にこの義母のことがあるのが確かなんです。

そして、幼いころ、無条件で愛され、抱きしめられた経験が乏しいのですね。
彼の祖父母はいい人たちなのですが、両親に捨てられた孫の教育という面でかなり戸惑いがあったのかもしれません。
結果的に、結構大人の顔とか、同級生たちの顔色とかを見ながら生きてきていた。
竹流は、多分それに気が付いて、はじめて彼を無条件で抱きしめてくれた人なのだと思います。
ただ、この章の時代はまだ竹流のほうもそこまで真のことが分かっていなくて、少しずつ理解していったのだと思います。もう1章(『再び、若葉のころ』)、回想があって、この二つで答え合わせみたいになっています。

多分、一生抱えてしまうことになる苦しさ、苦さなので、結局あれやこれやで覆ってみても、最後にはどうしようもなくなったのかも…しれません。夕さんのおっしゃる通り、まったく切り捨てることができずに、全部抱えていましたから。
ただ、ある事故で記憶の一部が飛んでいるので、今まで何とかやってこれたのかなぁ。
この【海に落ちる雨】の間は、彼はその逆行性健忘の部分を思い出していませんから……

でも、とりあえず、この『若葉のころ』x2は読後感は悪くない章なので、お楽しみいただけたらと思います。

> これだけ危ういと、普通死んじゃうと思うので。
このコメントは、とても怖いです。
いえ、本当にそうだと思うし、私がこの物語が、もしかすると壮大な(は言い過ぎ!)お伽噺を書いていると思っているのは、実は竹流が、もしかしたら真は19の時に事故で死んでいて、今のこの時は、自分が彼を失いたくないばかりに長い長い夢を見ているのではないかと思っているからなんです……
本当にそうかもしれないと思う時が、作者にもあります。
『シックスセンス』みたいで怖いですね…^^;

いえ、とりあえず、まずは楽しんでくださいませ!
夕さんの鋭い突っ込み?にドキドキしながら、戴いたコメントを読ませていただきました。ありがとうございます。

大海彩洋 #nLQskDKw | URL | 2013/06/09 20:11 [edit]


ウゾさん、ありがとうございます!

はい。私の愛する映画のひとつです(^^)
昔、友人たちを作っていたコピー誌にも、この映画の評を書いたことがあります。
それくらい好きだったのですねぇ。
この間、その原稿(手書きですが)を発見したので、またいつか公表しようかとも思っています(^^)
やはり、さすがウゾさん、ご存じでしたね。
私は、このアナはこの年齢で、この瞬間だったからこその奇跡だと思います。多分、時のいたずら・神秘ですね。
そのカラスの飼育、私は見ていないのですが、映画としては悪くなかったんでしょうけれど、ミツバチのささやきを見てしまった後で見ると、やはり残念だという評があったように記憶しています。
私の中では、アナの、あの時、あの時期の彼女だからこそ、の映画だったんだと思うんですよね。
あの時期の少女は、確かに、怖いものがありますし……(*^_^*)

でも、ウゾさんは本当に古い映画をよく御存じですね。
私がこういう手の映画に嵌ったのは大学生の時でしたから (今のように、中学・高校生が映画を楽しむためのツールがなかったからかもしれません)…一人で映画館に行くようになったのは大学になってからでしたし。ビデオとか持ってなかったし・・・・・
やはり時代、ですね^^;

大海彩洋 #nLQskDKw | URL | 2013/06/09 20:20 [edit]


limeさん、ありがとうございます(^^)

あ、こんなところに…来てくださって嬉しいです。
多分、真は美和ちゃんをほっぽって、思い出に浸っているので……
この【海に落ちる雨】、3章分の回想が挟まっています(正確には3.5章なんですが)。小説としては、回想シーンはできるだけ書くな、時間の流れ通りに、とよく言われますが、でも、この人を理解してもらうには必要な章かな、と思ったりもしています。
ただ、外して読んでもらっても、別にして読んでもらっても一向に構わないので、読者任せ、ということで。

中学生…女の子はまた別の意味での危険な時期ですが、自分とは対極にある世界というものへ視点を移せる時期ってのはもっと早いと思うのですね。女性は社会的な生き物だとはよく言われますけれど(もちろん、個人差はあるでしょうけれど)、世界というものが自分の外にあると直感する年齢というのか。私は、実はその瞬間を覚えています。5・6歳だった。
でも、男性はそういう時期が遅いような気がする。自分が中心にいる生き物だからでしょうか。もっとも、ごく一部の男性の意見かもしれません。
ま、お話ですから! 十把ひとからげに言うべきことでもないんでしょうね。

でも、私が接する多くのこの年齢の若者たちは、本当に精神的にも肉体の変化としても危うい面があって、いつも無事に乗り越えてもらいたいと思っておるのです。それは実は、性/的に健全に大人になれるかどうかの分かれ道でもあるからかもしれませんね。

真のことに限定して、の話にします。一般論にしたら、世の男性陣に怒られそうですし…^^;
この人は、実は、竹流よりも性質的には雄だと思うのです。より性/的に雄っぽい。よくB/Lで言われる受けとか攻めとかいうのとは違う意味です。衝動的、ということかもしれません。そして、この時期、かなり危なかったのも事実です。多分、いじめとか受けている中でも、きわどいことはあれこれあったので、知識は持っていただろうし、実際にあの時代、結構白黒はっきりした「知識を得る方法」があったのも事実ですしね。今よりもある部分ではオープンなところもあったような印象があります。
で、真は、一緒にそういう知識の共有を楽しむ同年代の仲間を持っていなかったので、自己にこもってしまって、こんな複雑な形になったのかもしれません…
イケナイとか、そういうことを考えてなかった…まさにlimeさんのおっしゃる通りです。
特にこの写真家、真に運命を狂わされたかも、と思います。いささか反社会的な風/俗を芸術的に撮っていたんですが、真を撮ったことを境に(というのか、写真だけでは飽き足らず、その『人間』としての全てを手に入れたくなってしまったことを境に?)、人間の生死を問わずにはいられなくなって、戦場に走ってしまった(=自分を究極のところに置きたくなってしまった)。で、飛行機事故(戦場の)で亡くなるのです。一度だけ、真と再会していて(というよりも、真がふらふらと彼の写真展などを見に行ってしまった…)、その直後に。真が死神みたいになっていますね……^^;
美和が絡み取られたという、真の写真、蔦の絡まる煉瓦の壁の前で、うつむいているところから顔を上げていく4枚組の写真、その目がいやらしい!と美和は思ったようですが、これは裏話があります。おまけに書いた話(【吾輩は猫である】と同じように^^;)で、この日、写真撮る前に、宣言されてるんです。この日までは、ひたすら普通に?写真を撮ってたんですが(って、まぁ、ファインダーを間に挟んでの感情は置いといて)、この日は外での撮影に出かける前に、今夜お前を抱くと。
あらら、書いちゃった。
えーっと、しれっと無視しといてください。
B/Lの仲間には入れてもらえないんですが、というのも別に性別をどうとかいう話ではなく、男女関係も普通に書かせていただいているし、もし必要があれば女性同士も書くかもしれないし(今まで必然がなかっただけで)、ただもうそういう面も外せないと思って書いているだけで、ここに拘っているわけでもなくて。あれこれあれこれある、人生の局面の一部という捉え方です。
 
> 私は敢えて男の子の性というものを避けて物語を構築していますが、リアルな少年を書きたいと思ったら、そこは外せない部分ですよね。
> そんな意味でも、そこをしっかり描くこの物語を、すごいな~、と羨望を含めて読ませてもらっています。
うぅ…limeさんのお話、それを匂わせるところは沢山あるし、その片鱗だけで十分色っぽいときがありますよ。ちら見のほうがいやらしいというのは世の常ですし^^;
それにそういうスタイルのほうが、広い世間に?受け入れられやすいと思うのです…。ただ、いつかlimeさんの中で気持ちが熟するときが来るかもしれませんね……

> さあ、この危うい時期の真に、竹流はどう接するのか。
> そんなことにも注目して、読ませてもらいます。^^
あ、それは…あまり大したことはしないのですが……^^;
この頃、まだまだ竹流は、ちょっと傍観者ですからね。でも、少しずつ、心理的距離が縮まっていく感じをお楽しみいただけたらと思います。
え? 真の蜘蛛の糸に絡み取られていく竹流をお楽しみに…と聞こえました?^^;^^;^^;

大海彩洋 #nLQskDKw | URL | 2013/06/09 21:27 [edit]

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