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コーヒーにスプーン一杯のミステリーを

オリジナル小説ブログです。目指しているのは死体の転がっていないミステリー(たまに転がりますが)。掌編から長編まで、人の心を見つめながら物語を紡いでいます。カテゴリから入ると、小説を始めから読むことができます。巨石紀行や物語談義などの雑記もお楽しみください(^^)

 

[雨53] 第9章 若葉のころ(2) 

義母の入院するサナトリウムを訪問した真と、仕方なく付き合ってくれている竹流。
真15歳の際どいエピソードその2です。
この頃は、多分、竹流の中での真の重みって、5%くらいだったのでは……良くて10%あるかないか。
それも、妹の葉子込みの存在価値、恩人の息子・娘への義理という形。
……時は流れているのですね。






 ようやくサナトリウムを離れたが、一時間もたたないうちに竹流の車はあまりいい状況ではなくなったようだった。
「迷子になってるのか?」
 真はそう聞いたものの、別に迷子になっていることなど、どうでもよかった。
「そうらしい」
 秩父の山の中である。その上、雨が降りだしていた。
「しかも、腹も減ったな」
「いのししでも探したら?」
 興味なく真は言った。

「そりゃあ名案だ」
 淡々とした声だった。ここで言い争いはしたくないとでもいうようだった。
 そのうち、本当にボタン鍋の登り旗を挙げた一軒の食事処を見つけたが、あいにく店仕舞の用意をしているところだった。ふと時計を見ると、もう五時を回っている。そこの主人が、この道の先に一軒宿があるから、そこでなら食事も宿泊もできると教えてくれた。

 行ってみると、大きな敷地に二階建ての古い、いかにも隠れ宿といった風情の旅館が建っていた。意外にも車が五台ばかり、この季節の平日にも泊りに来る人がいるようで、玄関脇の敷地に停められている。
 開き戸を開けると、小さな受付のようなフロントの奥から年配の男性が出てきた。
「お食事ですか。お泊まりですか」
 竹流は一瞬、真の方を見た。
 真は返事をせずに視線を逸らせた。勝手にしてくれたらいいと思っていた。

「泊まれますか」
 竹流が意を決してそう言ったように見えたので、真は一瞬緊張したが、それならそれでいいと思った。
 はい、と短く返事をして、男性はフロントの奥の方へ呼びかけた。しばらくして比較的若そうな地味な女性が出てきて、彼らを部屋に案内した。
「先に風呂をお使い下さい。その間にお部屋にお食事をご用意いたします」

 彼らが廊下を歩いて奥へ向かう時も、後ろの引き戸が開いて、食事の客がやって来た。まんざら怪しい旅館でもないらしい。
 風呂は旅館の規模にしては大きすぎるくらいの造りだった。内湯から外に出ると、川の流れを見ながらの露天風呂になっている。川の向こうは切り立った崖だった。彼らが入っていくと、ひとりの老人が露天風呂の方から中に戻ってきたところだった。老人は彼らに穏やかに会釈をした。

 以前から時折、功が海外に連れていってくれていたが、その時に、風呂というものをこんなふうに裸体を他人に晒して楽しむ習慣は日本人くらいしか持たないのだと聞かされたことがあった。特定の民族を除けば、不特定多数の赤の他人に裸体を晒す時点で、彼ら外国人は抵抗があるのだと聞いていたが、竹流は一切平気そうだった。郷に入っては郷に従えが彼のモットーらしかった。

 竹流の全裸の姿を見たのはそれが初めてではなかった。
 功は、この男を随分気に入っていたようで、葉子と真と一緒に北海道に帰るときには、いつも竹流を誘った。山中の川床に作られた、功のお気に入りの天然露天風呂があって、功はよく真と竹流を連れていってくれたのだが、その時もこの男を見て、これはまさに古代の彫刻から抜け出してきたような姿だと思った。綺麗で無駄のない神の造形そのものに思えたからだった。

 その日も竹流は何のためらいもなくあっさりと全裸になり、身体を洗ってそのまま外へ出ていく。真は何となく自分自身がみすぼらしい気がして、少し間をおいてから後を追った。
 竹流は露天風呂の湯に浸かって、背中にある岩に腕を広げるように凭れかかり、まだ雨の降り止まない空を仰ぐようにしていた。それから、竹流と離れたところで膝を抱えてぼんやりと湯に浸かっていた真の方を見た。
「お前、学校に休むって連絡したのか」
 保護者然として竹流は言った。真は返事をしなかった。

 風呂から上がって部屋に戻ると、食事の用意がされていた。
 突然の泊りにしては、豪勢な料理だった。
 時々見たことのないような山菜や川魚の料理などにぶつかると、竹流はいちいち興味深そうで仲居に根掘り葉掘り聞く。仲居もさすがによくは知らないらしく、次には年配の女性を連れてきて竹流の攻撃を躱した。本当に変わったやつだな、と真は思った。何でも興味を覚えるし、周囲を簡単に巻き込み、その中へ溶け込んでしまう。

 食事が終わると、仲居が布団を敷きにきた。仲居がごゆっくり、と言って部屋の扉を閉めたあと、真は窓辺の板間の椅子に座って夕刊を読んでいる竹流の前までいった。
「どうした?」
 真が黙っていると、竹流は真の方を見ようともしないまま尋ねた。
 とにかくここは躊躇っていても仕方がないと思っていた。相手がその気なのだから、下手に待つよりは自分のほうから行ったほうが気が楽だと思ったのだ。

 真が浴衣の帯を解くと、竹流がようやく新聞から顔を上げた。
「何の真似だ?」
「そういうつもりで、ここに泊まったんじゃないのか」
 竹流はしばらく真の顔を黙ったまま見ていた。
「なるほどね」

 真が十分に不安になるほどの時間を置いて、竹流はゆっくりと子どもに言い聞かせるように告げた。
「じゃあ、とにかく布団に入ろうか。だが、浴衣は着たままでいい。風邪をひくぞ」
 意を決した割にはあっけない返事に戸惑いながら、真は言われるままに浴衣の帯を結んだ。脱いでするよりも着たままのほうが扇情的で燃える、とかそういう話なのだろうと勝手に想像した。その腰を急に竹流が抱き寄せた。

 同じ布団に入ると、竹流はそのまま真の身体を抱き締めるようにした。大きな手が真の背中を撫でるようにして、僅かに開いた浴衣の裾に相手の足の温度を感じたとき、真は覚悟をして目を閉じた。実際には、この期に及んで覚悟が必要なことだったのかどうかはわからない。明らかに自分の方からこの男を誘ったのだという自覚が、真になかったわけではない。

 だが、竹流は真の耳の下、首筋にキスをして、耳元に囁いた。
「ちなみに、俺は女しか抱かない。だから、俺に対してそういう気遣いは無用だ」
 真が拍子抜けして竹流を見ると、竹流は、多分真がこれまで見たどんな人間の顔よりも綺麗に微笑んだ。
「抱かれないと不安なのか」
「どういう意味だ?」
「相手が何かを要求してこないのは、おかしいと思うのか、と聞いた」

 真は何とも答えなかった。確かに、無条件で自分に優しくするような人はいないと思っていた。世の中の人間は優しくする場合、何か見返りを求めてくるのだと考えていた。だからさっさと自分から差し出したつもりだった。
「まぁいい。じゃあ、こういうことにしようか。俺はお前の親父さんに恩義がある、だから彼がいない今、息子のお前にその恩義を返す気でいる、と」

 竹流が何を言っていて、真をどうしようとしているのか、その時の真にはまだよくわかっていなかった。第一、真自身どうしてこの男を頼ってしまったのか、自分の感情すら全く考えてみたこともなかった。だが、交通手段がないからと言っても、いつものようにバスで行けば済むのに、本当は誰かに、いや恐らくはこの男に一緒に来てもらいたかったのは事実だった。

 竹流は、黙って真を抱き締めてくれていた。
 家庭教師と生徒の関係にしてもそれほど親密でもなかったし、真はあまりいい生徒ではなく、良好な関係を築いているとは言いかねた。もちろん、優しい言葉をかけてもらったことは何度もある。しかし、それ以上に厳しい言葉を投げつけられる方が多かった。だが、嫌なことにぶつかるとヒステリー発作のようにパニックになって気を失ってしまう真に、何の遠慮もなく、本当のことをずけずけと言ったのは竹流だけだった。そういうことは、真の周囲の他の誰もしなかったことだった。
 竹流は真の置かれた事情というものを詳しくは知らなかったはずだし、知っていたとしても彼の判断基準からは情状酌量の余地はなかったようで、周りの大人が何故真をこうまで甘やかすのか、腫れ物を触るように扱うのか、見ていて苛々していたようだった。だから、真に対して腹が立っていたのだろう。

 尤も真は、それを自分でも意外なことに、真正面で受け止めた。たとえインディアンのシャーマンが運命だとか必然だとか言わなかったとしても、真は、この男が本音で自分に向かい合ってくれていることを肌身で感じていたし、嘘のない、掛け値なしに裏表のない人間であると認めていた。馬や犬の言葉はあんなにも簡単に理解できるのに、周囲の大人や周りの同世代の子供たちの言葉を全く理解できなかった真が、竹流の言葉だけは、自分にとってどんなに辛辣で嫌な言葉でもちゃんと理解できたのも、その言葉に裏表がなかったからだった。
 真は、竹流に叱られたり怒鳴られたりしてから、気を失うような事はなくなっていた。

 竹流の腕の中はただ暖かかった。それは、牧場の馬小屋の藁の中と同じだった。馬たちの呼吸の気配を接した身体から感じるとき、犬たちの毛の中に埋もれているときに感じるのと全く同じ温もりだった。それが一番自分を安心させ眠らせてくれる場所だと知っていた。そういう場所は、あの北の大地にしかないと思っていた。
 真はようやく目を閉じて、少し躊躇ってからさらに身体を竹流の方に寄せた。そして、本当に不思議なことに、いつも他人の傍では眠れたことなどなかったのに、この日はいつの間にか眠りに落ちていた。



 心地よいBGMのような川の流れの音で目を覚ました。尤もそれはせせらぎの音ではなく、昨日の雨で水かさを増した川のダイナミックな流れの音だった。ただ、天気は昨日と変わって晴れ渡っていて、朝の光が心地よくカーテンを通して真の眼瞼の上まで届いた。
 まだ夢の余韻があって、あたりに風が吹いているように思った。

 夢の中でずっと牧場の草原を歩いていた。他に誰もいなくて、馬たちも犬たちも姿を見せなかったが、寂しくも怖くもなく、他の誰かの気配を常に傍に感じていた。
 地平線は永遠の彼方にあって、これが真の知っているいつもの牧場なのかどうかもわからなかった。その草原に立っていると、大いなるものの意識の風が真の身体を吹き抜けていった。

 幸せ、という感覚がそういうものなのかどうかはわからない。ただ、自分の身体がこの大きな自然の中に溶け出して、周囲の全てのものと、細胞も核も分け合っていると思えるとき、真は本当に安心していられた。そのとき、真の目も耳も肌も、あらゆる自然界の神(カムイ)の目や耳、肌となり、高い空から森を見下ろして飛び、おのれの身体に光る鱗で川の水を跳ね返し、黒々とした毛の生えた足の裏で地面の息吹を踏みしめていた。
 これまでは、そういったものは、厩舎の藁の中、牧草地の土の上、大きな蕗の下、そして祖父の背中に負われて見上げる大宇宙の中だけにあったはずだった。

 ふと、何か自分を抱き締める重みを感じて、真は跳ね起きた。そして、傍に竹流が眠っているのに気がついて、自分でびっくりした。その気配に竹流が目を覚ます。
「おはよう」
 眠そうに竹流が片目だけ開けて言った。真はまだ半分記憶が混乱していて、事態を飲み込めていなかった。
「何時だ?」
 枕元の腕時計を見ると、六時前だった。
「早いな」

 そう言うと、竹流はまだぼんやりしている真を下から抱き寄せた。真はバランスを失って、竹流に倒れ込んだ。
「何だか、新婚初夜の翌朝って感じだな」
 何のこっちゃと思ったが、返事をしなかった。

 だが抱き寄せられて胸の音を聞いた時、不意にあの奇妙に穏やかな気分に包まれた。
 この腕の中は、厩舎の藁の中や、真を包み込む牧草地の上に広がる大宇宙と全く同じなのだ。真の身体の全ての細胞は、あの大自然の空気の中にいる時と同じように穏やかに呼吸し、やがて全てを周囲の光や空気やわずかな湿度と共有し、宇宙の空気を通し、太陽や星や月の放つ温度を受け入れる器のようになった。

 ふわり、と竹流の手が真の頭を抱いたように思った。真はぼんやりと、別に何をしたわけでもないのだから、何かの翌朝、とかいうのはどうなのだろうと思った。
 それから真は身体を起こして、上から竹流の綺麗な顔を見つめた。ややくすんだ金の髪に深い深い海の青、顔つきはどうやってこう配分すれば神に見紛うのかというような、南の国の意志の強そうな気配と、北の国の人間のもつ鋭い美しさを上手く組みあわせたように見えた。竹流は、その頃肩を越えるくらいに髪を伸ばしていて、時々多少伸びると自分で適当に切ったり結んだりしていた。

 真は、この男がどういう人間なのか、その頃は全然知らなかった。生まれた国も、確信のない功からイタリアだろうと聞かされただけで、はっきりとは知らない。日本に来た事情も詳しくは聞いたことが無かった。
 真が考えていると、竹流が下から真の頬に手で触れ、優しく撫でるようにした。その左手の薬指の指輪が頬に引っ掛かるように思った。
「結婚してるのか」
 何となく、気になって聞いてみた。

「結婚?」
 竹流は始め何のことか分からないようだったが、やがて自分の手の指輪に気がついたようだった。
「これか?」
 竹流はちらりとそこに掘られたイエス・キリストの棘と十字架に目をやった。
「結婚はしていない。これは契約の証だ。結婚よりもずっとタチの悪い契約だ」

 意味がよくわからなかったが、追及はしなかった。自分は他人の過去や事情を知るには、本来の年齢も心の成熟度もまだ十分ではないと思えたからだった。
 竹流はしばらく自分の薬指の指輪を見ていたが、やがて真の方へ視線を移した。真も、その視線に絡みとられるように竹流を見つめ返した。

 長い時間ただ見つめ合っていて、そのことにお互いに耐えられなくなったとき、不意に竹流の手が真の頬に触れ、どちらからというのでもなく、ただ自然に引き寄せられるように唇が触れた。
 だが、触れているだけで安心するという気持ちの延長に過ぎなかったキスは、真が僅かに相手の唇を強く吸った瞬間に意味合いを変えた。竹流は何を考えていたのか、真の唇に噛み付くようにしながら、やがて直ぐに真と入れ替わって自分が優位に立つと、何度も確かめるように真の顔を見つめ、強く舌を絡めてきた。

 身体が興奮していたわけではなかったが、真はしがみつくように竹流の背中に腕を回し、自分のほうも夢中になって相手の息を吸っていた。
 さっきの夢の続きなのか、風が吹き抜けるような感じがした。それからその風は天空へ、宇宙へ舞い上がった。大きな意識の風の中で、DNAは物凄い勢いで螺旋を駆け戻り、真は自分が宇宙の中でまだ小さなひとつの細胞だった頃に戻っていった。今まで感じたことのない気配だった。もちろん、滝沢に抱かれたりキスをされているときにも、こんな感覚はなかったから、セックスやキスがこういう状態を導くわけではないのだと思った。
 真は確かに、自分が今この男を求めているのだと感じた。
 心が震えていた。

 気がついたとき、竹流は真を抱いて子どもをあやすように頭を撫でてくれていた。
「風呂、行こうか」
 時計を見ると七時前だった。一時間もキスをしていたのかと思って、びっくりした。
「風呂?」
「日本人は温泉に来たら、一日何回も風呂に入るんだろ」
「え、そうかな」
 真もよく分かっていなかった。

 風呂場に行きながら、竹流が小さいがいい声で民謡を歌っている。
 会津磐梯山は宝の山よ
 何歌ってるんだ? と思ったら、歌いたいのはその先のフレーズだったらしい。
 小原庄助さん、何で身上つぶした、朝寝、朝酒、朝湯が大好きで……
「それ、県が違うと思うけど」

 ここは福島ではなく、埼玉県である。それよりも何だってこの男はそんな日本の民謡を知ってるんだと思った。三味線を弾く祖父母の影響で、真は子どもにしては多くの民謡を知っていたし、祖母の唄の伴奏のために自分自身もいくらか三味線で弾けるものもあったが、外国人が覚えるような歌には思えなかった。
 それに、あんなふうに求め合うようなキスを交わした後で、会津磐梯山なんかどうでもいいじゃないか、と思っていた。するりとかわされて、感情を置き去りにされたようで、真は奇妙な寂寥感に押し包まれていた。

「日本の民謡はいいなぁ」
「何で」
「何でも歌になる、朝寝、朝酒、朝湯、って歌にすることでもないように思うけど、しかも身上を潰すなんてのも歌詞にはなりそうにないけど、歌ってみるといいもんだ」
 分かったような分からないような感想だが、何れにしてもこの男は日本の風習や歴史、民族を多いに気に入っているようだった。何となく幸福そうにしている顔を見ると、腹を立てても仕方がないと思える。

 その日、家まで送ってもらって車を降りたとき、竹流が真を呼び止めた。
「真、俺は何百万や何千万の金なら右から左へ動かせる人間だ。もう二度とこういうことはするな。困ったら必ず俺に頼ってこい。いいな」
 真は何とも返事をしなかったが、ただ彼を見つめていた。竹流は軽く手を上げると、愛車のフェラーリで走り去った。






次回は、真のバイトが学校にばれて、ちょっと事件になった下り。
竹流の啖呵をお楽しみください。
1回でアップするにはやや長いので、2回に分けます。
際どい話があれこれ書いてありますが、読後感は爽やか系です(^^)

ついでに、ここまで竹流は多分、長髪ではありませんが、やや長めの髪だったのです。
それを、真のために?バッサリ切ってしまい、多分以後は全く伸ばしていないと思います。

もう一つついでに、民謡には決まった歌詞というものがありません。
一応型はありますが、自由に歌っていい。
この会津磐梯山の歌詞は1例です。身上をつぶしてないバージョンもあります(^^)



以下、言い訳を畳んであります。
…続きを読む


それに、あんなふうに求め合うようなキスを交わした後で、会津磐梯山なんかどうでもいいじゃないか、と思っていた。

真の本音、ここに炸裂!じゃありませんが、今回のアップした部分の要はこの文章に尽きるかもしれません??
これはもう、子どもの感覚です。お母ちゃん、かまって、という感じ。

あれこれ思われることもあると思いますが、この章の始めに述べましたように、しれっと読み流してくださいませ。普通の恋愛小説なら、いわゆるファーストキスの微笑ましいシーンなのですが……全然、そういう気配はありません。
というよりも、何かに突き動かされたとしか言いようがありません。

ここまで書いといて、いまさらですが、それでもやっぱりこの二人の関係は、あまり単純ではありません。
つまり、恋愛関係かと言われると、もちろん答えはイエスでもありますが、ノーでもあります。
今後も、必ずしも良好という関係の時ばかりではありませんし、最後は多分、誤解とか苦しみとかのほうが多かったかもしれません。恋愛の結果の誤解じゃないのか、と言われたら、そうとも取れる、というお返事です。

恋かどうか、恋愛かどうかは、実はあまり重要なことではないのかもしれない…
いや、最後のほうで、真が「命を燃やすなら恋がいい」とチャゲ/飛鳥の『恋花』を聞きながら言っているから、恋かもしれませんね。

あるいは、一度親になったからには、最後まで、子どもがどうなろうと何をしようと、味方であるべきだと、そういう親子関係の話かもしれません。

あるいは、異文化の者同士の間にある、理解のための努力と敗北、あるいは乗り越えていく過程、そういった話なのかもしれません。

ただ、かなり濃厚で、場合によっては、濃厚過ぎてプラトニックなだけでは収まらなかった人間関係(つまり、肉体的な関係を結ぶ、あるいは暴力をふるうという形で)であることは確かで、そこから何が生まれて、何が失われたのか、という話ではあるかもしれません。
竹流の罪悪感(神に対する)がなければ、この話はそもそも成立しません。
(そのために、あの始章があったのですから)
だって、将来の真の恋敵は、ヨハネパウロⅡ世! 


正直私にもよく分かりません。
物語の筋は変わりませんが、意味合いは動いているのかもしれません。
書いている方の年齢によって、同じことを書いていても意味合いが変わってきているような気がします。

でも、もう少し、気が向かれましたら、彼らに付き合ってやってください。

ちなみに、彼らだけではなく、関わる人間たちはそれぞれ、意味があってそこにおります。
お互いにとって。
そして、まだまだ謎解きとしても楽しんでいただける予定です。
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Category: ☂海に落ちる雨 第2節

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コメント


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竹流、いいですね~。
この時の竹流に、惚れちゃいます。
(いや、いつもいい男なんだけど、この時はシンプルに真に向き合えてたぶん、彼の本質がすごく伝わってきて)
上から見るのでもなく、哀れんでいるのでもなく、ちょうどいい位置から真を見ていてくれたんですね、この頃。
だからこそ、翌朝のキスが、なんとも言えず読者の胸に来る。
竹流が真に抱いているのは、いったいどの種類の愛情なんだろうと、ドキドキしながら、真と一緒に探りたくなるんですよね。分かりそうで、わからない。このへんかたまらない。

真、27歳の今(更新中)でも純粋だけど、この頃は更に青くてまだ子供で、見てるほうがヒヤヒヤ(親目線?)
夜のことは、真の幼さ故の行為かもしれませんが、そこもいじらしくて、ねえ(なに)
今、「水死体」と合わせて読んでいますが、やっぱり真が竹流に求めているのは、女に求めているものとは違いますね。
体というより、心を求めてる。
真って、あまり女性の心を求めていないように思えるんです。
本当に心で繋がりたいから、竹流に対して、あんなに苦しむんでしょうね。本人もそのことに気づいていないから、自分って異端なんじゃないかと思ってしまうのかも。
それは竹流のDVがあっても、何があってもきっと変わらないんでしょうね。なんか、切ないなあ。
(すいません、ここまでは、勝手に私が感じたことです><)

竹流は竹流で、背徳感に苦しむことになるんでしょうが。
ヤマアラシくん2匹、ですね(>_<) 。この先も見守って行きたいです。

lime #GCA3nAmE | URL | 2013/06/11 17:57 [edit]


limeさん、ありがとうございます(^^)

単純に嬉しいです(^^)
実は、竹流はこの頃が一番いい男かも?? それは多分、彼に余裕があったからなんですよね。真に対して、大人でいられたし、自分の弱みなんてこれっぽっちも見せなくて済んだし。後々彼が自分で述懐しておりますが、真の入試の直前、ちょっと箍が外れてしまいまして、その時初めて、嫉妬なんて低俗だと思っていた感情に自分が晒されて、それで初めて相手が『生きて(自分と同じように)何かを考えている、自分に語りかけている、まったく対等の人間だ(かなり壊れてるけど!)』と直感したんだと思います。でもこの時は、完全に余裕でしたから(^^) 
でも、確かに、竹流は自分の気持ちにも気が付いていなかったかもしれませんね。思えば、真がパニック障害みたいなので苦しんでいた時、心理学・精神医学の本を読みまくり、あげくに「これは幼少の時に無償の愛情で抱きしめてもらったことがないからだ!」と思って、本を投げ捨てて、猫可愛がりした人ですから……
(その時に気がつけよ!って…)
対等に思っていたかは怪しいのですが、真っ直ぐ向かい合っていたのは確かですね!
本当にどう思っていたのか……彼自身にもわかっていないのかも。
でも実は、余裕がなくなってからの彼の魅力が伝わるように書けてたらいいなぁ、というのが今の大事な目標です。
ちなみに、時々私は、みんな、竹流に惚れてくれ~と叫びながら書いています(^^)
真に対しては思ったことがありません^^;

あ、でも、とりあえず、さりげなくキスを受け入れていただいて嬉しいです。いや、もう、こういうシーンを出すとき、ドキドキしますね。書いてある元原稿をどこまでぼかすか、考えちゃいますもの。
でも、こんなところで躓いていたらダメなんですが。

真のほうは、相手が神に等しい存在だということは直感しているので、始めから手に入らないものを求めていると分かっているんです。それが本当に思い知らされたのが、あのイタリア旅行。シエナの頃は、多分、不安のピークだったと思うけれど、まだ実態をみていないので、不安と幸福との狭間で揺れている感じかな。だから変なものが見えちゃったんですかね……
これだけ濃厚な想いを抱く相手がいたら、それから先、まともな恋愛などできない、という気もしますね…だから、limeさんのおっしゃる通り、女には心を求めていないのか…なるほど! だから美和ちゃんに対してあんな態度だったのか!
(って、書いている本人が今更気が付いてどうする!?)

ヤマアラシ、考えてみればまさにその通りですね……う~ん、ヤマアラシは真と実父、竹流とチェザーレだと思っていたんですが、こっちもでしたか。
でも傷ついてでも、近くにいたいんだよね……

色々と感じていただいて、本当にいつもありがとうございます。
次は、猫のほうをアップしますね(最終回)。

大海彩洋 #nLQskDKw | URL | 2013/06/12 00:44 [edit]

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