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コーヒーにスプーン一杯のミステリーを

オリジナル小説ブログです。目指しているのは死体の転がっていないミステリー(たまに転がりますが)。掌編から長編まで、人の心を見つめながら物語を紡いでいます。カテゴリから入ると、小説を始めから読むことができます。巨石紀行や物語談義などの雑記もお楽しみください(^^)

 

【天の川で恋をして】(1) 天野が原・雨の七夕 

予告しておりました乙女な話【天の川で恋をして】をスタートします。
と言っても、かなり短い話ですので、5回以内で終わる予定。
とか言って、【幻の猫】みたいになったら困るので、あえて何回とは書きません^^;

ところで、七夕って終わったんじゃないの?という方もおられるでしょう。
いえいえ、行事とは本来旧暦でするもの。
旧暦なら、今年の七夕は8月13日です。

ファンタジーでもミステリーでもありません。恋愛小説。
え? 大海が恋愛小説?
いえ、本人が一番驚いていますから、そのあたりはさらりと流してくださいませ。
幽霊が出てくるかどうかはわかりませんが、この話、実は下敷きになったホラー映画があります。
でも、その話はあとがきで。

本日はただのプロローグ。さらりと読み流していただければ幸いです。
特に捻ってありませんので、疑いを抱かず?お読みくださいませ。
なお、本来は1回でアップしてしまいたいお話なので、本日夜にはさっそく第2話が登場予定。
ちなみに、【海に落ちる雨】13章もアップされるやも??





「ほら、もう窓を閉めて。雨が入るから」
 少女はまだ諦めきれないように開け放した窓から外を見ていた。

 引っ越しのトラックはもうこの町を出て行ってしまっていた。雨が降り始めたら面倒だからと、早朝からやって来た引っ越し業者は、多くはない家財道具を一時間足らずで小さなトラックに詰め込んでしまった。
 祖父の軽自動車が少女とその母親を迎えに来たとき、雨は降り始めていた。

 両親が離婚し、少女は母の実家である丹波の山の中に引っ越すことになった。
 天野川よりもっと綺麗な川があって、山は緑豊かで、野菜は美味しいし、星がいっぱい見えるのよ、と母親は言った。でも、その場所には七夕の伝説はないだろう。

 数年前、幼稚園で演じた織姫様。あの時からすでに両親は上手くいっていなかったのに、父親は優しい顔で舞台の上の娘の晴れ姿をビデオに撮っていた。
 七夕の度に両親に手を繋がれてお参りした機物(はたもの)神社。参道の両脇に立てられた大きな笹に下げられた沢山の色とりどりの願い事。
 七夕の日にこの町を去ることになったのは偶然だが、それは巡り合わせだったのかもしれない。

 軽自動車に乗ってから、少女はずっと俯いていた。車は機物神社の傍を通った。短冊に願い事を書いてからこの町を出ようかと、母親が言った。
 少女はようやく顔を上げた。そして赤い短冊に願い事を書いた。

 お父さんとお母さんがなかなおりできますように。

 母親が見せてと言ったが、後ろに隠し、社務所の前に置かれた箱の中にそっと入れた。
 降り始めた雨で色とりどりの短冊が濡れていた。

 お金持ちになれますように。宝くじが当たりますように。おじいちゃんの病気が治りますように。お母さんが牛になりますように。仮面ライダーになりたい。アンパンマンのあんこになりたい。東大に合格できますように。世界が平和でありますように。髪の毛がこれ以上抜けませんように。阪神が何かの間違いで優勝しますように。彼と一生幸せに暮らせますように。
 少女にはどれが実現可能な願いで、どれが不可能な願いなのか、区別はつかなかった。

 母親と一緒に車に戻り、乗ろうとしたとき、足元に一枚の短冊が落ちていることに気が付いた。
 短冊の淡い碧色は晴れた空の色だった。そこに綺麗な字でまるで手紙のようにたくさんの言葉が書かれていた。少女にはもちろん、読めない文字がたくさん綴られていた。

 雨が少しだけ強くなった。
 今年もまた織姫様と彦星様は会えないのかしら。
「早く乗って」
 母親の声に急かされて思わずその碧い短冊を拾い上げ、そのまま車に乗り込んだ。

 短冊には吊るすための紙縒りも糸もついていなかった。神社に持っていく前に落としてしまったのだろうか。
 一度だけ、少女は前の席に座る母親に声をかけようかと思った。祖父でもよかった。神社に戻って、この短冊を神社の笹に吊るしてあげたかった。だが二人の重く悲しそうな気配に言葉を飲み込んだ。

 代わりに窓を開けて外を見た。降り落ちる雨と、濡れていく町。いつも友達と一緒に遊んだ天野川の川原。全てが雨の向こうに掻き消えていく。
 少女は何かに縋るように碧い短冊を握りしめた。

 一号線に入る交差点を曲がって、天野川が見えなくなってから、もう一度母親が窓を閉めるように言った。少女はようやく窓を閉め、視線を上げた。

 もしも、いつか交野と枚方に跨る天野が原と呼ばれるこの土地、七夕伝説の発祥の地に戻ってくる日があったら、今日書いた願い事がかなう日なのかもしれない。
 けれど、それはきっと叶わない方の願いなのだ。

 幼い心にもそのことだけははっきりと分かっていた。
 七夕に降る雨。今の暦では七月七日は梅雨の真っ最中だ。織姫と彦星は引き裂かれたまま、かささぎは雨の中で羽根を連ねて橋を作ってあげることもできず、同じようにどこかの木の陰で濡れているのだろう。





絵馬と違って、七夕の短冊に書かれている願い事は縦横無尽といいますか、それはないやろうと思うものがいっぱい。多分、書く人の年齢層の問題もあるのだろうけど、面白すぎる。
何か嫌なことがあったら、「七夕 願い事」で検索してみてください。
しばらく苦しいくらい笑えます。多分免疫力も上がり、いやなことも吹き飛ぶでしょう。
そのオリジナリティはここでそのまま頂いちゃうと、著作権に触れるのではないかと思うくらいです。
ここに載せたものは、小説に使えそうな範囲ですが、本当はこの10倍は面白いです。
それにしても、人の願いって、本当に何でもありだなぁ。




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Category: 天の川で恋をして(恋愛)

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コメント


交野、枚方

よその土地の方には読みにくいであろうこの地名。私にはなじみ深いのです。
あのあたりには星の伝説があるようですね。
なんたって「天の川」がありますものね。あの川の風景が目に浮かんできます。

「阪神がなにかのまちがいで優勝しますように」
この願いごとで、だいぶ昔のお話かなと思いました。(^^(^^
 最近は優勝しても「なにかのまちがい」ではないような……昔はほんと、まちがいでもなかったら優勝はあり得ませんでしたものね。

新暦の七夕のころって梅雨ですから、星空は見えないんですよね。やっぱり旧暦でやったほうがいい気もします。

主人公が少女で「恋愛小説」。どんなふうになるのか楽しみに読ませていただきます。

あかね #- | URL | 2013/07/15 13:39 [edit]


あかねさん、ありがとうございます(^^)

あかねさんのコメントを読んで、あ、そうか、もう何の疑問も感じず、誰でも「かたの」「ひらかた」と読めるのだと思っていたことに気が付きました。(2)に天野川の解説をしていた前書きに、あわてて読み方を入れました。そうでした。迂闊でした。
このあたりの地名は星だらけですものね。なんでも平安貴族の狩猟の場だったとか。
星が綺麗だったんでしょうね。
私はここの出身ではないのですが、事情があってよくここを通ります。
「天の川」の名前を見た時、この題名が降ってきました。
形にできて良かったなぁと思います。
そう言えば、この川を遡っていけば、以前【石紀行】でご紹介した磐船神社です。

> 「阪神がなにかのまちがいで優勝しますように」
> この願いごとで、だいぶ昔のお話かなと思いました。(^^(^^
あはは、そうですね。
話の本筋は現代なのですが、このシーンは10年ちょっと前なのですね。
多分、この短冊のお蔭で、2003年の優勝があったのだと……(・・?
でも阪神って、いいところにいても、優勝となると、何かの間違いで……になっちゃうくらい、詰めが甘いので、やっぱり今も『何かの間違いで』なのかも。
ちなみに、この原文は、『楽天が……』だったのです。勝手に変えました。

> 主人公が少女で「恋愛小説」。どんなふうになるのか楽しみに読ませていただきます。
はい、というのか、実はこの少女、主人公ではありません^^;
すみません、ひねりはないと言っておきながら、そこかしこ、小さく捻ってあるかも^^;
この子がどういう役割かは、最後までお預けです。
短いので、数日の間に終わります。少しだけ、楽しんでいただければと思います(*^_^*)

彩洋→あかねさん #nLQskDKw | URL | 2013/07/15 16:27 [edit]


最後まで読んでからコメントしようと思ったのですが、「枚方」「交野」となじみの深い地名が出てきたので、絡んでしまいました。笑。
彩洋さんも大阪の方ですか? 不躾でスミマセン。

そう言えば、昔、鳩山さんが首相だったときに「子ども手当がうまくいきますように」と、絵馬に書かれているのを初詣で見ました。
結局、期待には添えませんでしたね。
人の願いなんてそれぞれなんですね。小さなことから大きなことまで。
欲張らなければ、叶うかな~。

ヒロハル #- | URL | 2013/12/28 22:09 [edit]


ヒロハルさん、ありがとうございます(^^)

あ、まるきり反対の季節に来てくださったのですね(^^)
ありがとうございます。
はい、これはもう、「地名から始まるミステリー」じゃなくて「地名のタイトルありき」からスタートしたお話なのです。内容はミステリーではなく、ごくごくありきたりな恋愛小説で、私には最もあり得ないタイプのお話ですが、なぜか降ってきたので書いてみました。
そもそも、時折所用で出かける場所の交差点が「天の川」……なんてロマンチックな名前なのだということから、「天の川で恋をして」というタイトルで話が書けたらいいなぁ、と思ったまま内容はなくて、数年が経過したという。
皆さん、地名に反応してくださいます^^;
ご当地ソングみたいなものでしょうか。
私はただ今、兵庫県在住ですが、生れは大阪。ちなみに自分にとって最もよく動きまわった町は、10年暮らした京都でした。三都物語を巡ってきています(^^)
枚方・交野はある事情で時々行くだけなので、実はなんちゃって枚方・交野。
自分で言うのもなんですが、関西弁って読むのが鬱陶しいかなと思って(恋愛小説だし)、標準語で通しています。

絵馬や短冊、本当に自由ですよね。でも、七夕の短冊は、年齢が低いからか、かなり荒唐無稽です(^^)
アンパンマンのあんこになって、何をする!?って感じですよね。
ちなみにここに書かれているのは、実際にネットで発見したもので、誰かが本当に書いたもの。本当はもっと面白くてオリジナリティに溢れていたんですが、あまりにもユニークなものは著作権があるのではないかと思って、ここに載せられませんでした(それくらい面白かったのです^^;)。
> 人の願いなんてそれぞれなんですね。小さなことから大きなことまで。
> 欲張らなければ、叶うかな~。
本当ですね(*^_^*)
叶える努力も必要、と。

ごくごく軽い前半のお話~やや重めの後半、でも最後は丸く収めています。
テーマはいつもように「再生」……かささぎの橋が架かるのをご期待ください(*^_^*)
いつもありがとうございます(*^_^*)

彩洋→ヒロハルさん #nLQskDKw | URL | 2013/12/29 00:04 [edit]


おおお!!大阪の人間には親しみのある地名がいっぱい♪
阪神タイガース、何かの間違いで優勝したらいいですね(涙)
いや毎年始まるときは信じています!今年こそはと!そしてシーズン半分くらいで「よっしゃ、また来年に持ち越しじゃ!」と切り替えてます(笑)最後まで信じてはいない酷い人間です(笑)いや、ファンというほどのファンではないんですが、それでもやっぱり阪神が勝つと嬉しいという程度の者です(笑)

だいぶずれました、すみません(汗)本題に戻しまして(笑)
家族がバラバラになるというのはやっぱり子供からしたら辛い体験ですよね。そしてその上家も引っ越さなきゃいけない・・・。
お友達とも慣れ親しんだ土地ともそしてお父さんともお別れしなきゃいけない。
少女の気持ちは察するにあまりある感じですね(涙)
少女の願事が叶わない事と七夕に雨が降り出会う事のできない彦星と織姫の悲しみがリンクしていてとても素敵でしたー!!

続きが楽しみです♪

ぐりーんすぷらうと #- | URL | 2014/02/07 00:41 [edit]


ぐりさん、ありがとうございます(^^)

そうなんですよ! 大阪の人間にとっては、そこ知ってる!って思っていただける地名。
この「知ってる!」って思うのって、お話読むときに結構ポイントだったりしますね(^^)
他のお話でも、できるだけ現地ロケ(ロケハン)に行ったりしています。
もっとも、時代が違っていて、あくまでも場所のイメージを掴むためだけだったりもするのですけれど。

そして短冊の願い事は……シーズンになったら、色んな人が見かけたものをブログでレポートしているのですけれど、ほんと、面白いですね。私がここに書いた以上に面白いオリジナリティに溢れるものがぶら下がっていました。あまりにも面白いので、著作権があるんじゃないかと思ったくらい(^^)

> 阪神タイガース、何かの間違いで優勝したらいいですね(涙)
あ、ぐりさんもなんちゃって阪神ファンなのですね!
私も昔は熱血系で、最近は年によって盛り上がったり盛り下がったり……勝っているか負けているか、よりも、自分が甲子園に通える時間が多い年と少ない年によって変わっている感じ。
勝ってても負けてても、あまり関係なく、阪神ファンはいつも阪神ファンですものね。

> いや毎年始まるときは信じています!今年こそはと!そしてシーズン半分くらいで「よっしゃ、また来年に持ち越しじゃ!」と切り替えてます(笑)最後まで信じてはいない酷い人間です(笑)
分かります、分かります(*^_^*)
いや、これが阪神ファンのすべき姿ですね(*^。^*)

はい、ここに出てくる女の子は実は、ある意味では大事な役割なのですけれど、チョイ役なのです^^;
紛らわしいプロローグですみません^^;
あ、チョイ役は言い過ぎかなぁ。脇役、ということで。
> 少女の願事が叶わない事と七夕に雨が降り出会う事のできない彦星と織姫の悲しみがリンクしていてとても素敵でしたー!!
あ、そう言っていただけると、もしかしてこの雨のイメージが、最後に晴れる世界へ転換する大事な要素だったのか知れないと思えてきました。
うん、楽しみにしておいてください!
読んでくださって、本当にありがとうございます(*^_^*)

彩洋→ぐりさん #nLQskDKw | URL | 2014/02/09 09:25 [edit]

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