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コーヒーにスプーン一杯のミステリーを

オリジナル小説ブログです。目指しているのは死体の転がっていないミステリー(たまに転がりますが)。掌編から長編まで、人の心を見つめながら物語を紡いでいます。カテゴリから入ると、小説を始めから読むことができます。巨石紀行や物語談義などの雑記もお楽しみください(^^)

 

[雨111] 第22章 死んだ男の息子(1)/あらすじ付 

【海に落ちる雨】第3節・第22章その(1)です。第3節の最終章になります。
左の最新記事のリストから前回のが消える前には次をアップしようと考えていたのですが……

もう書きあがった作品なのですが、あちこち言葉や表現を手直ししながらアップしているので、忙しいと延び延びに……
でも、真の回想章はもうなくて(竹流視点の回想は、最後の方に想いが溢れるように出てきますが)、再開したら怒涛の展開になるので、これまでみたいに時間を空けていたら気が削がれるなぁ……と思い、頑張って(月)(木)くらいの週2連載を心掛けることにしました。
頑張りまする←できてないよ^^;(2015/6/13追記:以下にあった、あらすじまとめコーナーは新しい記事へ移動しました)

登場人物一覧はこちらのページを→→【海に落ちる雨】登場人物
登場人物もほぼ出揃っています。
重要人物はあと2人:竹流の女房・珠恵と怪しいおじちゃんがもう1人

さて、ローマからやって来たチェザーレ・ヴォルテラは真を「使う」つもりだったようですが……
真が日常に戻るために「河本」から出された条件は「大和竹流に関わるな」。
真はこれを条件に事務所に戻ることを許可されます。
「河本」は「もう1人のキーパーソン」と何か取引していたようですね。






「先生」
 相川調査事務所というドアの逆さ文字の向こうに立っている人影を見つけた美和は、ドアを引き開けて、半分悲鳴のような声を上げた。そして思わず真の腕を握り、そのままゆっくりと事務所の中に引き入れた。
「添島刑事から電話があったの。もう先生が事務所に帰っても大丈夫だからって」

 真は黙ったまま美和の腕を握り返し、それからソファから身体を浮かした宝田と賢二のほうを見た。
 宝田は稀に見る機敏さで、身体を浮かした途端に真のところに駆け寄っていた。何を思ったか、宝田の身体よりも十分ひとまわりは小柄な真を、目一杯力を込めて抱き締めると、わんわん泣き始めた。

 泣く役を奪われてしまった、と美和は思い、それから突っ立ったままの真からようやく宝田を引き離すと、皆のために暖かいコーヒーを淹れた。
 真は久しぶりに触れる事務所のソファの座り心地を確かめているように見えたが、心はどこかに置き忘れているような顔だった。

「名瀬先生が、先生が戻ったら連絡をしてくれって」
 コーヒーを渡しながら、美和は努めて穏やかな声で言った。
 真の肌には血の気がなく、まるで動いている彫像のように思える。唇は何も語るまいと決めているようで、堅く引き結ばれ、ひどくやつれたような目はいつもの碧の光を失っていた。

「それから、三上さんからも」
 添島刑事は多くを話さなかった。
 だが、真が無事に事務所に戻り、元通り仕事をしていくにあたって、某かの取引がなされたような気配があった。大和竹流のことにはもう関わるな、というような取引だ。

 先生は納得したんですか。
 美和が尋ねると、添島刑事は長い間を置いて、そのようね、でも、とだけ言った。
 明瞭に言葉にしなかったのは、添島刑事なりの心の表れだったのだろうか。
 もちろん、自分の恋人を見捨てるような言葉を言えるわけがない。たとえ、大和竹流の叔父という人がやってきて、その人がどれほどの力を持っていようとも、真が大和竹流を諦めるということは、添島刑事にとっても彼を見捨てることになる。

 真はコーヒーを飲むと、まず名瀬に電話をし、午後からの面会の約束を交わしていた。それから三上に電話をして、心配する三上に言葉少なく謝っていた。声は極めて冷静で、抑揚さえなかった。
 電話の向こうの名瀬や三上が何かを感じてくれたらいいのに、と美和は思っていた。美和は横目でちらちらと真の顔を見ながら、落ち着かない気持ちで、時々宝田や賢二と視線を交わした。

 真が午後から名瀬弁護士のところに出掛けていくと、美和はようやく息をつき、机の一番上の引き出しをそっと開けた。
 あのように言われてしまった後では、仁に頼ることもできなかった。もちろん、真を守るのは自分と宝田や賢二の仕事だと言いたい。だが、これまで大和竹流がしてきたようなことを、果たして自分たちにできるだろうか。何より、一体どんなふうに支えたらいいのだろう。

 もちろん、自分たちこそが真を守る筆頭であるべきなのは分かっている。この期に及んで、真をもう一度危険の中に放り込むことはできないという気持ちも、もちろんある。
 だが、何だか気に入らない。
 不可解なことに、急に今になって、色々な人間が一気に真を「庇う」方向へ進み始めている。その上、庇うための条件が突き付けられたことも確かだ。

 その条件とは、今まで彼にとって最も堅固な砦だったものを打ち壊すことで、その上で、付け焼刃的に別の柵を作り上げようとしているかのようだ。
 真が自ら、手を引くことを望んでいるのなら仕方がない。だが、本当の真自身は何を願っているだろう。

 宝田も賢二も何も言わないが、美和の逡巡を察知している気がした。
 窓を見ると、現実の闇を覆うように、街はわざとらしい明るさに満ちていた。サイレンの音もクラクションの音も、はるか彼方の次元にあるようだ。

 もしも、真が大和竹流の捜索を諦めて、ここで静かに今まで通りに仕事をして、そして自分たちが真を助けていくなら、それはそれで穏やかで幸せなんだろうか。
 もう一度だけ、その可能性を考えた。

 今なら目を瞑る、と仁に言われたとおり、今度こそ真の手を握って離さないようにしたら、新しい何かを積み上げていくことができるだろうか。しばらくは辛いかもしれないが、やがて時が解決してくれるのかもしれない。
 美和はボールペンを机の端から転がし、それが向こうへ落ちていくのをぼんやりと見つめた。

 私はそれで幸せだろうか。先生は……本当に諦めることができるだろうか。
 真を危険に追い込むのは確かに不本意だ。だが、一度失ったら永遠に取り戻せないものを心に背負ったまま、ただ余生を生きていくような人を、傍で見つめているなんて、多分不可能だ。

 賢二が床からボールペンを拾い上げて、机の上に戻してくれた。
「いいのか」
 賢二が呟くように言った。美和は頬杖をついた。

 丁度その時電話が鳴って、宝田が受話器を取り上げた。電話の会話は短く、宝田が数度、相手の言葉に分かりました、という意味の返事をしただけで終わった。
「何?」
 真に明日の刑務所の面会が許された、という電話だった。

 夕方真が戻ってくるまで、皆、何をするでもなくただ待っていた。
 この事件が始まってから真が事務所に戻れなかった時間を思えば、ほんの数時間という短い時間だったにも関わらず、それはとてつもなく長い不在だった。

 真は窓からの光が橙に染められる頃に戻ってきて、食事に行こうと皆に声を掛けた。真のほうから食事に誘うなどということは、どちらかというと珍しかった。宝田が、刑務所の面会の件を真に告げると、真はただ頷いた。
 表情の乏しい顔は、体中から血を抜かれてしまった美しく冷たい彫像のままだった。
 その真を見つめているうちに、美和の腹の底の方から湧き上がってくるものがあった。

 やっぱり我慢がならない。
 何より自分の性分に合わない。我慢は一日すれば十分だ。
「行こうか」
 静かな声で真が言ったとき、美和は机の一番上の引き出しを大きな音をたてて開けた。

 宝田も賢二も、そうこなくちゃ、という顔をしたように見えた。真は血の気の薄い顔のまま美和を振り返っている。
「やっぱり、納得できない」
 美和はどう気持ちを表現していいのか分からず、とにかく自分に言い聞かすように叫んでみた。
 真は怪訝そうに美和を見ている。

 美和は、机の一番上の引き出しから一枚の名刺を取り出し、真に突きつけた。
「先生、どこで何言われたか知らないけど、やっぱり大家さんを探しに行くのは先生しかいないわ。仁さんは先生を一人にするなって言ったけど、それに添島刑事も、先生が事務所に帰れる条件はもう首を突っ込まないことだって言ってたけど、こっちは納得も我慢もできない」
 真は美和の差し出した名刺を受け取り、しばらく黙って見つめていた。

「これは?」
 やっと少し、真らしい声のトーンが聞こえた気がした。
「村野耕治の息子から」
 真はまだしばらく名刺を見つめていた。静かなまま、まるきり動かなかったが、頭の中で何かが大きく動いている、そんな顔だった。
「会ったのか?」
 美和は頷いた。

「九州日報で、昔、澤田代議士や秘書の村野耕治と一緒に働いてたって人に会ったの。その人が古い名簿を持ってて、澤田と村野の出身地だってところに行ってきた」
 美和が一度言葉を切ると、真は出て行きかけていた事務所の扉を閉めた。それから四人で事務所の接客用のソファに座った。

「二人は同じ村の出身だった。といっても、村野家ってのは何か複雑な事情があったみたいで、村野耕治がまだ小さい時に父親と一緒に新潟に移ったみたいだけど、そもそも村野家と澤田家ってのは親戚だったんだって。村野は高校生のときに、新潟から九州に戻ってる」
 美和は、真の横顔に僅かな手応えを感じながら続けた。

「村野の最初の奥さんも同じ村の人で、もともとは澤田代議士の恋人だった。と言っても、澤田が高校生で相手が中学生なんて年回りの頃の話だけど。澤田が大学進学のために東京に出て、その恋人とは遠距離恋愛が続いていたの。澤田は一旦東京の出版社に勤めてから九州日報に入ったでしょ。澤田はその頃から記者として精力的で、取材で飛び回っていた。恋人はほとんどほったらかしだったみたい。その恋人が、いつも澤田の帰りを新聞社の廊下の椅子で待っていたんだって。可愛らしい人で、いつも涙を溜めたみたいな目をしてたって。村野のほうは、新潟から九州に戻った後は地元から出ることはなかったらしいけど、ものすごく金回りが良かったそうなの。何でも戦争中から始めた事業が大当たりしたんだって話だったらしいけど、誰も詳しいことは知らなかった。大分だけじゃなく、福岡あたりの不動産も随分所有していたらしいし」

 美和は一枚の写真を机の上から取り上げて、真に差し出した。陸井から借りた写真だった。
「それが九州日報に入った同期の人たちの写真。澤田は分かるでしょ。その隣にいるのが村野耕治だって」
 真はしばらく写真を見つめたままだったが、やがて小さな声で呟いた。
「もっと、いかにも悪人という顔の男を想像していた」
「うん。私もそう思った」

 真はようやく、美和の顔をしっかりと見た。美和は頷く代わりに見つめ返した。真の顔に少しずつ生気が戻ってくる。
「人混みを歩いていれば目立たないような、印象の薄い男でしょ。澤田代議士の方は身体つきもしっかりしてるし、取材焼けの顔も、一瞬で人を惹きつける感じだけど」
 返事はないまま、真はまだ写真をじっと見つめている。自分自身の感覚の中にある違和感を、何かで埋める作業をしているように見えた。

 やがて納得したのか、真は青い名刺を手元に残したまま、美和に写真を返した。
「大当たりした事業って、麻薬かな?」
 真の心の在り処を確かめようと尋ねてみる。今度は、真は答えずに、手元に残った名刺に視線を戻した。
 美和は、陸井と敷島清美が話してくれたことを、自分なりに順を追って話した。

 経緯を話す間、真はただ名刺を見つめていたが、美和が話し終えるとようやく顔を上げた。
 それは美和の待っていた、いつもの真の顔だった。目は碧に光を放ち、唇にも血の色が戻っている。美和の横で宝田がほっと息をついたように感じた。
「村野の息子は、その花って人の息子なのか」

「そうみたい。澤田は、村野と花が結婚してから後は、福岡を離れることが多くなって、政治資金の裏金調査の取材とかで長い間関東に行ったり、同じような事件を追いかけて北陸にも行ったり、とにかく精力的に日本中を歩き回っていて、地元にはほとんど戻らなかった。で、新潟で仕事をした後、突然記者を辞めちゃったんだって。それからは人が変わってしまって、九州に帰っても大分にはもう澤田の家はなくて、福岡ではかなり自堕落な生活を送ってたみたい。その澤田を助けたのが村野だった。村野は自分の財産を資金にして澤田の後ろ盾になって、彼を市議会に担ぎ出した。これが澤田の政治家としての出発点だったわけ。澤田も、もともと福祉や芸術方面では記者時代から民間には協力的で、市民レベルの大陸外交なんかを盛り上げて地元の活性化に貢献していたから、世間の覚えも目出度かったみたい。村野って男は、澤田にくっついて、澤田を担ぎ上げることで自分も存在価値を見出しているみたいな、そんな感じに見えたそうよ。全面的に澤田をバックアップして、それはもう崇め奉るようなムードだったんだって」

「その後、村野は澤田の秘書に納まったってわけか」
 美和は頷いた。真は再び手元の名刺を見つめている。
「澤田の話では、村野は癌で亡くなったってことらしいが」
「うん。澤田の右腕というか、ほとんど戦友って言われてたらしいけど、最後はあまりべったりではなかったみたいね。郷里の大分で亡くなったって」

 美和は立ち上がり、机の上に束ねてあった資料から、何枚かの新聞記事のコピーを選び出した。確認してから、それを持って真の隣に戻る。

「これ、澤田が書いた翡翠仏事件の記事。それによると、大昔、佐渡に金が埋まっているって教えたのは神仏の遣いで、江戸時代に金山で翡翠の仏像が掘り出されたって古文書が、古い家から見つかったんだって。翡翠ってもともと古代天皇家が呪術のために使っていて、その中でも糸魚川の翡翠は太古の昔から珍重されていた。その翡翠仏がある人の家の屋根裏から見つかった。その後、その人は小さな商売から大成功して、今では誰もが知っている大企業の創始者になった。その成功を見納めた後、翡翠仏は姿を消したって、ありがちな怪しいお話が伝わってる。その翡翠仏が実は新潟のある旧家に眠ってて、密かに売りに出された。つまり『莫大な富を産む』翡翠仏が、闇で売られているっていう噂があって、結構闇世界ではまがい物っぽい仏像が高値で売られたりしていたそうよ。で、、澤田はあちこち取材をして回って、その古文書からしてでっち上げで、つまりありもしない『幻の翡翠仏』を売るための偽情報が操作されていた、しかもそこから出た利益が政治資金として活用されていたという記事を書いたわけよ。その偽翡翠仏の製作に関係していたのが、深雪さんのご両親だったんでしょ」

 なんだって世間は、そんな巨万の富を生む翡翠仏があるなんて、馬鹿げた話を本気にするんだ。言葉にしないながらも、真の顔はそう言っている。

「あのね、先生、政治家とか企業家とかはね、ものすごく大事な決断をするとき、今でも神様にお伺いを立てるのよ。みんな大っぴらには言わないけどね。だから、座敷童に会える旅館とかに偉い先生やら社長さんやらが集まるの。日本って今でも『神』に頼る国なのよ。苦しい時の神頼みは日本人の遺伝子に組み込まれた本質的な体質なのよ」
 美和が真の顔を覗き込んで笑ってみせると、真は少しの間驚いたような顔をしていたが、やがて納得したように新聞記事に視線を戻した。美和はもう一枚別の新聞記事を上に重ねる。

「それから、これは、澤田が原爆のことで賞をもらった記事。戦争時には正義なんてどこにもないけど、後に残る犠牲に対しては必ず報いてあげなくちゃならないっていうようなことが書いてある。澤田の記事って真っ向勝負っていうのか、ちょっと青臭いって感じもあるけど、何て言うのか、優しいとこがある」
 真が顔を上げて美和を見た。
「こういう取材ができる記者になりたい。いつかね」
 真が自分を見つめる目が、随分と優しく思えた。

「それから、これ」
 美和は問題の記事を取り上げた。
「戦争の資金源の話だけど、当時、世界中で、一応国際基準なんてのがあったみたいだけど、つまり兵士を戦場に送るのに阿片を使ってたって話。日本も例外じゃなかったし、多分他の国も。そういうことからして、村野家が羽振りが良くなったのは、阿片絡みだった可能性は高そう。戦時中に軍の阿片事業に協力していた民間人がいたらしいけど、その一人が村野耕治の父親だったんじゃないかって。この辺の話になるとみんな口が重くなるんで、十分に聞けなかったんだけど」

 真は十分だよ、というように頷く。
「九州の小松って暴力団の幹部がいるんだけど、タイ人のヤクザと関係があって、当時澤田の政治資金の一部はそこから来てるんじゃないかって噂があったの。結局、澤田は嵌められたって話に落ち着いたみたいだけど、噂の出所に村野が関係していたんじゃないかって」

「村野が、澤田を嵌めた、ということか?」
「もしくは、小松と関係があったのは澤田じゃなくて、村野の方だったのかもしれない。でも、そのすぐ後から村野は体調を悪くして入退院を繰り返すようになって、結局亡くなったわけだけど。澤田の事務所で働いていた人の印象では、澤田の政治生命が絶たれるようなことは何もなかったけど、ちらちらと澤田の立場を追い込むような暗い噂が出ては消える、みたいなことが何回もあったんだって。澤田はその度に少し落ち込んでいるように見えたりもしてたみたいだけど、それを村野耕治が一生懸命励ましてたのを、何度か見たそうよ」

「どういう意味だろう」
「澤田は、地元では大らかな印象でどっしりと構えてて、頼りがいがある政治家だったみたいだけど、たまに何かにひどく傷ついているように見えたって。政治生命には関わらなくても、精神的には追い詰められるようなことは結構あったみたいだし、それも政治家としての仕事より、記者時代の取材のこととか、昔のことで。その人が言うには、時々、澤田は村野に操られているように見えたこともあるって」

「操られる?」
「うん。村野は精神的に澤田を支配したがっているように見えたみたいよ。自分が澤田を支えている、澤田は自分がいなければ何もできない、そういうふうに澤田に思わせたかったのかな。でも、澤田って男は、傷つきやすい一面もあったけど、内情はものすごく情熱的で優しい人だったみたいだし、結局は支援者が沢山いたみたいだしね」

「どこかの誰かと一緒だな」
 真はぼんやりとした声で呟いた。
 やっぱり大家さんのことを考えてるんだ、と美和は思った。真は新聞記事のコピーをひとつひとつ確かめるように読んでいる。美和はその手を見つめ、それから顔を上げたとき賢二と目が合った。

 美和は賢二に頷いて見せた。そう、ここからが大事なのだ。
「ね、先生、私たちが上手く庇うから、とにかくその男に会ってみてよ。何だかんだといって、向こうも先生が簡単に引き下がるとも思ってないだろうし。それに、添島刑事の話のニュアンスでは、絶対誰かが先生を見張ってるはずだから、上手く撒けるかどうかは分かんないけど」

 井出がいつか言っていたように、誰も信じられないかもしれないが、私たちだけは別だよ、という気持ちを目一杯込めたつもりだった。
 ただ、真はまだ何かを躊躇っていたのか、とりあえず食事に行こうと言って、立ち上がった。






<予告編?>
次回は、真が以前勤めていた探偵事務所の所長、自分の事務所を爆破しちゃって刑務所に入っている唐沢を面会する真、そして、村野耕治の息子のファイティングバー?を訪ねる真です。

「北条仁に伝えてくれ。(中略)それから、うちの可愛い弟子に妙なことすると、後で火傷するぞって言っとけ」
 真がいちいち言葉を理解できないうちに、唐沢は真のほうにちょっと身を寄せた。
「もっとも、お前さんがたまらなくなってケツを差し出すんなら別だけどな」

(どこを切り取るんだ^^; 相変わらず下ネタ好きのおっさん^^;)

 
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Category: ☂海に落ちる雨 第3節

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コメント


続きだ^^

あらすじとおさらいを読んで、改めてこの話の壮大さと複雑さに驚きます。
これ、わたしだったら設定書書くだけでノート半分埋まりそうです。大海さんの脳内はきっと設定が整然と整理されて繋がってるんだなあ。
うっかり忘れてしまっている人物たちもいたので、この解説は助かります。
そして、真も戻り、美和ちゃん俄然その有能さを発揮してきましたね。
読者もここで真が引くとは思ってませんし、(そしたら終わっちゃうし)あとは的を絞って進むだけですね。
澤田を取り巻く謎は、はたして一番竹流に近いのか。ここが一番気になるところです。
そして次回は、唐沢のおっちゃん登場ですか! たのしみ。
前回の回想から数年が経ってるんですよね。でも獄中にいても衰えていないようで安心しました。
しかし大海さん、予告で切り取る場所がなぜそこ(笑)
次回も楽しみにしています。

lime #GCA3nAmE | URL | 2014/04/20 21:44 [edit]


待ってました!

彩洋さん、こんばんは♪

前回はパソコンのことでご心配をおかけしてしまいましたね。
取り急ぎ修理に出して突然フリーズの恐怖に怯えずに済むようになりましたが、どこがどう悪かったのか未だに不明……(^_^;)

今の時代、パソコンがないと仕事も趣味もできにくくなってしまいましたが、『海に落ちる雨』の舞台の頃はそんなものがなくても十分に仕事ができていたんですよね。
情報収集に長けた美和ちゃんの弁に耳を傾けながら、ついそんなことを考えてしまいました。

というところで、首を長くしてお待ちしておりましたよ!第3節の最終章!!
前回、竹流の身に降りかかった危機を知って心のどこかが壊れたようになってしまった真でしたが、そこからどうやって自分を取り戻すのか、とても気になっておりました。
こんな場面で持ち味を発揮してくれるのが、やっぱり美和ちゃん!
持ち前の弁舌で、弱々になってしまった真を鼓舞するあたり、読んでいて最高にかっこよくて気持いいいです。将来はきっと肝っ玉のしっかりした姐さんになるんだろうなと、ついついそんな先まで想像してしまいました。
仁さん、ある意味お気の毒(笑)

さて、ここから先、真にも美和ちゃんに負けないだけの底力を見せてもらいたいものですね。事件解決への近道は足を使っての情報収集。次回はあっちこっちを訪ね歩く真を見れそうで、実に楽しみです♪
唐沢のおっちゃんの登場もまた見ものになりそうで、彼の口から次はどんな豪語が飛び出すのか、期待しちゃいます(笑)

ではでは、次回の更新をまた楽しみに待たせていただきますね♪
いつも心ときめく素敵なお話を読ませてくださり本当にありがとうございます(*^_^*)

三宅千鶴 #- | URL | 2014/04/21 00:12 [edit]


設定、半分以上忘れてた……

こんばんは。

ちゃんと読んでたつもりだし、今回のまとめを読んだら思い出したけれど、はい、すみません、かなり忘れていました。

頭のいい真に、有能な美和だけれど、見ず知らず人が被害者の事件ではなくて、それぞれの心の行方も定まっていない揺れ揺れの状態で、真実を求めて進んで行かなくてはならないのは大変なことなんだろうなあと思います。

前文を読んで驚いたのですが、一度完結したものを、発表前に書き直されていらっしゃるのですね? 私は「てにをは」の間違いなどを見つけたら訂正しますが、書き直しは考えたこともなかったです。彩洋さんは完璧主義者なのかな。

八少女 夕 #9yMhI49k | URL | 2014/04/21 01:49 [edit]


うわあ、8881だっだ。
まだ甘いな。出直します。

lime #GCA3nAmE | URL | 2014/04/22 07:47 [edit]


limeさん、先にこちらにお返事

8888を超えたら、少々近くなくても、多分お受けします~(*^_^*)
なぜなら……多分、そんなにリクエストは来ないし、何名かはまだ決めていないので……
(一応先着3名と書いたけれど、「プラスアルファ」つき。いつもお世話になっている人のプレミアム枠?)
むしろ、リクエストしていただけるのがうれしいです(*^_^*)
あ~でも、今日越えるのかしら?

彩洋→limeさん #nLQskDKw | URL | 2014/04/22 08:09 [edit]


管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

# |  | 2014/04/22 19:17 [edit]


limeさん、ありがとうございます(^^)

いや~、これは複雑ですけれど、壮大かどうかは……
でも、自分で並べてみて、あ、こんなに色々あったんだとびっくり^^;
それでも、記憶に頼って書いているので、まだ漏れていることがあるかもしれません。
limeさんだったら、もっとすっきりとした、分かりやすくて、でもしっかりとした作品を書かれているのだろうなと、自分の頭のなかのぐちゃぐちゃさにがっかりしておりました((+_+))
ただ、これ、全てが絡まっているけれど(因果関係はある)、重要なこととそうでもないことがあるだけで、ものすごいトリックがあるというわけでもありません。簡単に言うと、それぞれの人の人生が絡まっているだけで、謎解きというよりも、人生行路?

> うっかり忘れてしまっている人物たちもいたので、この解説は助かります。
うっかり忘れちゃってくださっていても大丈夫です。
そのうちまた、その人が出てくるときに、少し思いだせるようになっている……はず。
で、そこで、あ、この人こんな風に関係していたのか、というようになっているはずなのですけれど……
後半はどちらかというと、竹流を探す→見つける→真の怒りの爆発、みたいな展開なので、謎解きよりも「動き」をお楽しみくださいませ(^^)
美和ちゃんも、真がいて、元気になるのかも。この二人はやっぱり鏡みたいだなぁ。
ほんと、どうしてくっつかなかったんだろう????

> 澤田を取り巻く謎は、はたして一番竹流に近いのか。ここが一番気になるところです。
澤田の存在……近いような、近くないような?
でも、これは実は、例のごとく私の好きな二重写しなのです。
あ、これはヒントかなぁ。この話、三角関係、多いと思いませんか?(うふふ(^^))
澤田が最後に登場するシーン、大好きなんです。
(自分で書いていて、何を言うやら)
何はともあれ、お楽しみに!

> そして次回は、唐沢のおっちゃん登場ですか! たのしみ。
> 前回の回想から数年が経ってるんですよね。でも獄中にいても衰えていないようで安心しました。
唐沢って、もっとすごい目にあっていますから……戦争の時期にも、その後の某国特殊部隊にいた時も。
だから日本の刑務所なんてぬるま湯、なんでしょうね。でもこの人のすごいところは、どんな環境も自分流に変えてしまえるところでしょうか。決して屈することはない^^;

> しかし大海さん、予告で切り取る場所がなぜそこ(笑)
あはは~、だって、ここが一番「唐沢節」って感じがしたから^^;

コメ返遅くなってすみませんでした!
週明けから忙しくてi-6
でも、いつもほんとうにありがとうございます(*^_^*)
次回、予定通り、木曜日更新です!

彩洋→limeさん #nLQskDKw | URL | 2014/04/23 07:07 [edit]


千鶴さん、ありがとうございます(^^)

千鶴さん、パソコン、何だか分からないけれど無事に帰還?したのですね。良かった。
精密機械って、何が何だかよく分からないですよね。壊れたらお手上げ……です。確かに……
本当に、今の時代、パソコンに頼っていることばかりですね。
既に、もうこれがない世界は考えられなくなっているなぁ……
でも、ない時代を知っているだけに、ないならないで、すぐに慣れそうな気はします(よね?)。
今の若者は分かりませんけれど……
そう、真の時代……アナログな器械が全盛だったころでしょうか。バブルまっしぐらの時期ですし。

この話の舞台を考える時、いつも浮かんでくるシーンがあって。
すごい好きなイタリア映画に『マカロニ』があるのですけれど、そのワンシーンで、ナポリの役所かどこかに勤めているおじちゃん(マルチェロ・マストロヤンニ)が、いっぱいの書類を壁に貼り付けていて、もう無茶苦茶雑然としてるのですけれど、聞かれたら、そのごみ溜めのような中から、的確に必要な情報を取り出すんですよね。
人間って、やっぱりアナログにすごいんだわ、と思うシーンなのでした^^;

美和ちゃんは、確かに、真よりもはるかに探偵業に向いているのかも……情報収集能力、高いですし、情報を集めて、ちゃんと机の上に並べて吟味ができる子ですものね。
そして、何よりも「活きがいい」(って、食材じゃないけれど^^;)
そうなんですよ、打ちひしがれた真を陰で支えるのは、この事務所の「愉快な仲間たち」?
どいつも頼りないけれど(美和ちゃんは別)、いなくちゃならないんですよね。
でも、かく言う美和ちゃんも、この「活きの良さ」は変わりませんけれど、結構乙女なんですよ。
今後の仁との恋模様、お楽しみください。肝っ玉姐さんになるかどうかは、次作に持ち越しです(^^)

> さて、ここから先、真にも美和ちゃんに負けないだけの底力を見せてもらいたいものですね。事件解決への近道は足を使っての情報収集。次回はあっちこっちを訪ね歩く真を見れそうで、実に楽しみです♪
> 唐沢のおっちゃんの登場もまた見ものになりそうで、彼の口から次はどんな豪語が飛び出すのか、期待しちゃいます(笑)
この辺り、ご期待ください!「足」と「身体」を使っての情報収集……
(あ^_^; え~っと^^; 笑えないようなこともしています、この人。ある意味節度がなくて、ある部分で倫理観が欠落している((+_+)))
そう、やっと、紐が解かれていきます。真は核心に迫っていきます。
そして、乱闘シーンもあれこれ登場(ちょっとハードボイルド?)。
木曜日予定通り、格闘シーン付(いや、格闘と言っていいの?)、さらにご期待の(?)「唐沢節」付、次話の更新です! お楽しみに!!

いつも心温まるコメント、ありがとうございます!!

彩洋→千鶴さん #nLQskDKw | URL | 2014/04/23 07:39 [edit]


夕さん、ありがとうございます(^^)

> ちゃんと読んでたつもりだし、今回のまとめを読んだら思い出したけれど、はい、すみません、かなり忘れていました。
いえ、もう、この話は忘れてくださっても構わないエピソードが山のようにあるのですね^^;
というよりも、大事な話は「再度出てくる」仕組みになっていて、後半では、前半のエピソードを拾いまくりながら話が進んでいくので、何が何に繋がっていたのか(誰が何をどうややこしくしたのか?)、一応、ひもが解けていくようになっているのです(はず!)。

こちら、自分の記憶に従って書いたあらすじ、なので、細かいエピソードは漏れているかもしれませんけれど。大筋この辺りの名前だけでも(「あ、そんな人いたなぁ」で)思いだしてくださったら、後で、お話の中で絡んだ事情が分かるという感じで。

そして、後半ではどちらかというと、真が「動き」ます。
前半はうだうだしていましたけれど……乱闘、格闘、身体を張ってのあれこれ(すみません、これはもう……これ以上言えない……)、そして何よりも、竹流の女房との心理的対戦(いや、迎合とも言う)……ぜひ、お楽しみください!
真も美和も、自分のことがそれぞれ絡んできていますから、その心と付き合いながら、そして何かを掴んでいくと思います。真は、今からどちらかというと「落ちて(堕ちて?)」行きますけれど、最後は上がる、予定。

> 頭のいい真に、有能な美和だけれど、見ず知らず人が被害者の事件ではなくて、それぞれの心の行方も定まっていない揺れ揺れの状態で、真実を求めて進んで行かなくてはならないのは大変なことなんだろうなあと思います。
これ、ミステリーとしては、痛いパターンですよね。
そうなんですよ。探偵や刑事が活躍する話、主人公の身に影響がない話って、ちょっと他人事的でのめり込み感が低いのですけれど(「間に合わなかったか!」でもあまり心理的に影響しない^^;)、自分が絡むとなると……本当に、書いていても、後から読んでいても、そこそこ痛いです。
以前からお話しているように、少し痛い世界に入っていくので、それが一番心配なのですけれど(皆様の反応が……)、何とか再生に向けて階段を上っていきたいと思います(その前に、降りるんだけど……(;_:))。

> 前文を読んで驚いたのですが、一度完結したものを、発表前に書き直されていらっしゃるのですね? 私は「てにをは」の間違いなどを見つけたら訂正しますが、書き直しは考えたこともなかったです。彩洋さんは完璧主義者なのかな。
あ! これはですね、本当に、夕さんくらいに始めから完成度の高い文章を書けたらいいのですけれど、単に、直しても直しても粗が多くて、本当に独りよがりになりやすいので、直し続けなければとても読めないからなんですよ! いえ、もう気になるところだらけで……書く時はすごい勢いになるので、あまり考えながら書いていないし……
あぁでも、直しても、まだ直したりないです。
完璧主義者ではなくて、多分、あまりにももとがひどい(;_:)
読みにくいところ、多々あると思いますが、適当に差し引いて、読んでやってください!

いつもありがとうございます!
引き続き、唐沢節とマコトの乱闘シーン、じゃなくて、真の乱闘シーン、お楽しみに!

彩洋→夕さん #nLQskDKw | URL | 2014/04/23 07:56 [edit]


鍵コメLさま、お帰りなさい~(^^)

> やった、間に合った(いやもう8894だし)
間に合ってますよ!
お待ちしておりました!

> リクエスト、何か考えます~。
> 大海さんが読み切り一回で終われるようなネタで!
あはは~~~、お気づかいいただきまして、ありがとうございます(^^)
いや、これは、何をやっても長くなる私には、読み切り自体が難しいのかも^^;
でも、どんなネタでも頑張らせていただきます。
って、何だか、鍵コメの意味なし??
はい、お待ちしております!!

彩洋→鍵コメL様 #nLQskDKw | URL | 2014/04/23 08:49 [edit]

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