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コーヒーにスプーン一杯のミステリーを

オリジナル小説ブログです。目指しているのは死体の転がっていないミステリー(たまに転がりますが)。掌編から長編まで、人の心を見つめながら物語を紡いでいます。カテゴリから入ると、小説を始めから読むことができます。巨石紀行や物語談義などの雑記もお楽しみください(^^)

 

【8888Hitリクエスト・短編】人喰い屋敷の少年・(4)女の事情と猫を抱いた少年 

limeさんlimeさん天使と男160
あれ? 今回は表紙絵(?)が2枚? その事情は本文で探ってください。
(はい、省エネをしてしまいました。)
さて、『人喰い屋敷の少年』(4)です。
省エネとは書きましたが、実は合わせ技をしたら今回のアップ分が長くなってしまいました。でもどうしても、少年に会いたかったので、7000字の掟(って、なぜ掟?)を破って10000字です。長くてごめんなさい!
何はともあれ、お楽しみくださいませ(*^_^*)
ちなみに第1・2・3話はこちら→(1)カグラの店(2)夫の死を願う女(3)人を喰らう屋敷

登場人物
相川真>大学を中退し、唐沢調査事務所に勤めている私立探偵見習。子どもの頃の遊び相手はコロボックルという不思議青年。3年ほど前に崖から落ちて生死の境をさまよってから、ますます霊感に磨きがかかっているという噂もあり。
カグラ>真の上司・唐沢が出入りする三畳酒場の女主人。本人がホラーのような存在。
作家>カグラの店の常連。本当に小説家かどうかは不明。真を観察して小説のネタにしようとしているらしい。
教授>カグラの店の常連。何の教授か、本当に教授か不明。おっとりとした声で理屈を言うのでそう呼ばれている。
窓さん>カグラの店の常連。いつも酔っ払っているサラリーマン。
松岡綾>真の依頼人。夫・松岡圭吾の生死を知りたいという。
ルカ>「人を喰らう屋敷」で真が出会う、猫を抱いた少年。(なかなか会わないなぁ^^;)
唐沢>真の勤め先『唐沢調査事務所』の所長。戦時中は十代、その後アメリカにも長く住んでいた、傭兵あがりのおっちゃん。ギャンブルと酒と女が好き。ちゃらんぽらんだが、どこか憎めない。
田代>7年前、綾の夫・松岡圭吾の失踪事件を調査した班の元刑事。若くして警察に嫌気がさし、今は喫茶店をやっている。
真田>綾の夫・松岡の元同僚の刑事。松岡は、綾と真田の関係を疑っていた。



【人喰い屋敷の少年】(4)女の事情と猫を抱いた少年


 綾はアトリエの鏡の前に座っていた。
 また朝が来た。昨日はベッドにも入らず、アトリエのソファで眠ってしまっていた。

 アトリエと言っても、夫がいなくなってからマンションの一室をそのように使っているだけだ。夫がいる間は、家で絵など描くことはできなかった。
 可哀相に思ってくれた絵の先生が、彼のアトリエを時々使わせてくれたが、夫はその男と綾の関係を疑っていた。

 いや、夫が、妻との関係を疑う男はこの世に数限りなくいたのかもしれない。
 その中でも特に夫の猜疑心を煽っていたのが、夫の同僚だった真田俊克だ。今でも真田とは時々顔を合わす。会話も交わす。手が触れるほどに近くにいることもある。触れたいと願う時もある。

 夫がいなくなってから、朝はいつもひっそりとやって来るようになった。夫の怒鳴る声も聞こえないし、何かを割る音も聞こえない。時々窓の外から鳥の声が聞こえるだけだ。もちろん、車の音や電車の音、何かしら都会にありがちな雑多な音はそこかしこに溢れているはずだが、綾の耳には上手く届かなかった。
 左耳は、夫に何度も殴られたことで聴力を失いかけていたが、そのせいではない。

 カーテンを閉めたままの薄暗い部屋の中には絵具の匂いが籠っていた。この部屋に入るのは久しぶりだったので、昨日、あの探偵事務所から戻ってきて扉を開けた時、しばらく忘れていた匂いに眩暈がした。
 時々、全く絵を描けなくなる時がある。描きたくないし、描くのが怖い。魂が絵の中に表れて、誰かに知られてしまうことを恐れているのだ。

 画家の中には自画像を描く作家も多い。綾には信じられない。自分の顔を描くなど、恐ろしいことだ。
 自分の顔を見つめていると、その顔の奥にいる誰か別の人間の顔が見えるような気がする。よく二重人格とか多重人格の話を耳にするが、人は誰だっていくつかの顔を持っている。ある人に向けている顔だけが全てではない。

 私のこの顔は、昨日の若い探偵にはどんなふうに映ったのだろう。
 夫が失踪してしまった可哀相な妻? あるいは夫の死を願う悪魔のような女? もしかすると、他の男の手を待っている淫乱な女?
 あの若い探偵は、何かを見透かすような目をしていた。印象的なオッドアイ。あの碧の右眼には、この世のものではない何か、人の心の奥の闇も見えてしまうのかもしれない。

 鏡の中に映ったアトリエは、小さな箱庭のようだ。
 綾の背中の先には描きかけの絵がある。
 昨日あの探偵と話をしてから、突然また絵を描きたくなった。

 この頃、誰かがじっと綾を見ている。失踪した夫かも知れない。あるいは別の男かも知れない。もしかすると、綾自身の恐怖心が身体から抜け出して、自分自身を見ているのかもしれない。いや、あるいは、既にこの世のものではない夫が、霊魂となって綾の行く先を見張っているのかもしれない。

 かつて愛した男でも、生きているのか死んでいるのか、その気配を察知するような能力は綾にはない。すでに愛していたかどうかも思い出せないほどに時間が経ってしまったからだろう。あるいは、今関心を寄せている他の男の想いさえも、目の前にいる時でさえ、やはりはっきりと知ることはできない。

 私は知りたいのだ。誰が私を愛しているのか。私は誰を探しているのか。今、私を見つめているのは誰なのか。
 夫が死んでいるのなら、もう探さなくてもいい。

 あの絵には何かが足りない。綾は鏡の中の絵を見つめる。
 綾は、絵の中にいつも天使を描いた。亡くした子どもを思い出しているのかもしれないし、自分の心に蓋をする手段なのかもしれない。
 描かれているのは椅子に座っているあの男。少し若いころのあの男を想いながら描いた。何かを思いつめているような目。私を置いてどこかへ行ってしまうあの人の姿を、ここに留めておきたかった。

 私は悪い女だろうか。
 あの日、あの男の手が私の肌に触れた時の微かな温度を思い出している。思い出すだけで、肌のその部分がちりちりと痛むように泡立つ。
 やはり小さな天使を描き入れよう。自らへの戒めと永遠に失われた子どもの魂を鎮めるために。


「先輩、また飲み過ぎたんですか?」
 田代はコーヒーの豆を挽き、少しだけ冷ました湯を注ぎ始めた。挽いた豆が湯を吸って膨らみドームを作る。同時にマンデリンの少し癖のあるいい香りが上ってきた。
 刑事をやっていた時にはこの匂いを楽しむ余裕さえなかった。コーヒーはただの眠気覚ましで、それさえも利尿効果を考えると、幾らでも楽しむというわけにはいかなかった。

 喫茶店の中にはジャズが流れていた。それなのに、何故か店の名前は『モーツァルト』だ。田代が警察を辞めてこの店を前のオーナーから引き継いだとき、店名を変えないというのが条件だった。特にこだわりもなかったし、別に店名などどうでもいい。

「あぁ。くそぅ」
「そうやって非番の日は飲んだくれて、挙句に二日酔いで過ごすなんて勿体ない。さっさと嫁さんを貰ったらどうなんです」
「お前はいいよな。こんなクソッタレの仕事にはさっさと見切りをつけて、可愛い嫁さんと二人で楽しく店をやってる」
 田代の横では、お腹が大きくなり始めた小柄な女性がにこにこと笑っている。
 そうだ。女は明るくて、笑顔が可愛くて、些細な事にはこだわらないのがいい。

「真田さんはどんな人が好みなんですか? 私、友達を紹介しようかしら」
 田代の妻がオムライスのデミグラスソースの味を見てから、振り返って尋ねた。彼女の作るオムライスが評判で、この店はそれなりに流行っていた。昼時になればテーブルはほとんどが埋まる。
 だが、この二日酔いの先輩刑事、つまり田代の刑事時代の署の先輩である真田は、今日はオムライスを味わうことはできないだろう。

 二日酔いでわざわざ喫茶店になど来なければいいのに、一人でいるのは寂しいらしい。それとも誰かと待ち合わせているのだろうか。時々、外を窺っている。
 それが「彼女」だったらいいのだが。
「だめだめ。真田さんは好きな人がいるんだよ」
「もしかして、綾さんのこと?」

 二日酔いの頭をカウンターに預けていた真田がむくりと起き上った。
「馬鹿言っちゃいけないよ。あれはただ、放っておけないから気にしているだけだ」
 田代は妻に向かって肩をすくめてみせた。
 そうだ、真田は「彼女」に会いたい一方で、会うことを恐れてもいる。

 それから田代は壁にかかった可愛らしい天使の絵を見つめる。
 四号の小さな絵だが、妻が気に入って、作家に直接交渉して購入したものだった。作家はプレゼントすると言ったのだが、妻はちゃんとした値段で買いたいと譲らなかった。

 天使は蓋の開いたグランドピアノに頬杖をついていて、うっとりと目を閉じている。誰かがピアノを弾いているのだろうか。『モーツァルト』という店名も悪くないと思うのは、この絵を見る時だった。
 控えめに書かれたサインはAya K.

 松岡綾は絵を描くときには旧姓を使っていた。時々、童話の雑誌や何かのデザインのための画を描いている。優しく柔らかな色調の絵は、彼女に似つかわしいとも思うし、一方でまるきり彼女らしくないと思うこともある。
 それもそうだ。元刑事の夫の失踪、そして秘めた恋。複雑な想いの中にいる女の顔が、ひとつとは限らない。

 もうすぐ松岡綾の夫、同様に元刑事の松岡圭吾が失踪して七年だ。七年経って申立てをすれば、綾は自由の身になる。田代は、あの日から時間が止まったままの綾と仕事熱心な元先輩が結ばれてくれたら、と思っていた。

 松岡圭吾が失踪する前、真田は松岡と組んでいた。真田は、口は悪いが仕事熱心で真面目な男だ。最後まで松岡の勝手に振り回されていたが、先輩を立てることも忘れない律儀なところもあった。
 松岡失踪事件を調査したのは田代の班だったので、田代は何度か真田に話を聞いたのだが、真田は多くを語りたがらなかった。

 松岡圭吾には、暴力団の一部と懇ろな関係にあったとか、事件解決の影では金が動いていたり暴力沙汰があったりで、黒い噂が絶えなかった。それでも真田は二年先輩の松岡を立てて、よく尻拭いもしていたようだし、悪く言うことはなかった。先輩後輩の関係ゆえなのか、あるいは綾を挟んで微妙な関係にあったからなのか、そのあたりも当時署内では噂になっていた。

 しかし、警察としても有難くも失踪してくれた松岡圭吾というトカゲの尻尾の在り処をこれ以上追及して、世間への警察の不祥事への関心を煽りたくなかったこともあって、一般的な失踪事件の中にうまく埋もれさせたというのが正解だろう。
 そうした警察内の尻拭いの駆け引きに嫌気がさして、田代は、当時通っていたこの喫茶店のウェイトレスとの結婚を機に、刑事を辞めたのだ。

 真田はようやくコーヒーの香りに気が付いたようで、コップ一杯の水を飲み干してからコーヒーカップを持ち上げた。
「あぁ、うめぇ。お前はどうも鼻持ちならねぇが、お前の淹れるコーヒーは最高だ」
「そりゃどうも。それで、綾さんとは会えたんですか?」
「いや」
「探偵事務所に行こうだなんて、綾さんも一体何がどうしたって言うんでしょうね。ただ待っていればいいものを。あるいは、もしかして松岡さんが生きているんじゃないかって怯えてるんでしょうか」
「本気で松岡を捜したいのかもしれないじゃないか」
「まさか、あの暴力夫を捜すなんてあり得ませんよ。俺はね、先輩、あなたと綾さんが」
「どっちにしても俺の知ったことじゃないさ」

 真田が田代の言葉を遮った。それから何かを気にするように、また店の外を振り返った。
 店は、真田が今も勤務する区内の警察署の近くにある。窓からは通りと川が見えているだけだ。
 田代は、綾があの扉を開けて入って来てくれたらいいのにと思った。

 だが、真田は決して綾に本心を打ち明けたいとは思わないらしい。松岡圭吾はろくでなしの刑事で、失踪してもうすぐ七年。この世から消えるという境界まであと少しだ。そうすれば真田と綾は晴れて結婚することだってできるようになる。
 時々、真田と綾はこの『モーツァルト』で会っている。いや、偶然居合わせる。言葉少なげに向かい合い、たまに目が合ってもまた目を逸らす。別のことに関心があるように振る舞いながら、お互いの存在を誰よりも近くに感じている、そんなふうに田代には見えた。
 大人の恋って難しいものらしい。いや、単なる意地っ張りにも見えるのだが。

 その時、真田が思い立ったようにサングラスを手に取って席を立った。非番の日であっても、署の管轄内で酔っぱらっている姿を見られるのはまずいから、出かける時はサングラスをかけているが、あんなもの役に立つのかと田代は思う。
「帰るんですか?」
「あぁ、悪いけど、つけといてくれ」
 足元が危うい。

 一か月ほど前、田代は松岡綾に誰か探偵を紹介して欲しいと相談された。警察官上がりで探偵業をしている者はそこそこ知っていた。信用できる男を紹介したつもりだったが、後からその男が店にやって来て言った。
 いきなり、死んだ人間と話ができるかと聞かれたぞ。あの女、イカれてるのか。
 オカルトがかった依頼だったので、そちらの方面に明るそうな別の事務所を紹介したのだという。

 もちろん、綾が探偵を探しているということはすぐに真田に伝えたが、真田は知ったこっちゃないという顔だった。気になったので、あれから何度か綾に探りを入れてみたが、実際に彼女が依頼に行ったのかどうかは分からなかった。
 追及してどうしようというのでもない。ただ、綾と真田がもう少しお互いの気持ちを確かめ合うきっかけができればと思っていたのだ。

 それにしても「そっちの方面に明るそうな探偵」がいるというのは驚きだった。
 真田が扉を開けると、扉の上につけたカウベルが鳴った。それを合図にして、外から車の音や風の音、蝉の声などが交じり合って飛び込んでくる。
 外は朝よりもまた温度が上がっているようだった。

 真田の開けた扉が閉まる前に、入れ替わるように二人連れが入ってきた。
 胡散臭い目つきの中年の男と、どこかにまだ少年のような面影を残した若い男だ。
 こういう組み合わせを見ると、つい元同業者ではないかと思ってしまう。だが、胡散臭い中年男は突然にかっと笑った。若い男のほうは肩にぶつかりかけてそのまま去っていった真田を少し振り返ってから、田代の顔を見た。

「カウンター、いいかい?」
 中年男が常連のように話しかけてくる。
「どうぞ」
 警戒していることを相手に察知されるような声を出してしまった。こういう時は、俺もまだまだ客商売に染まり切ってはいないらしいと思ってしまう。

 中年男に促されて、若い男の方もカウンターに座った。
 馴れ馴れしく若い男の肩を抱く中年男の左手には古い大きな傷があった。元同業者ではなくて、あちらさんのほうかもしれない。若い男は顔色を変えない。
 男らしい顔ではあるが、どこかに中性的なムードを持っているように感じるのは、その目と髪の色のせいだろう。いや、どっちかというと、野生の獣のような雰囲気だ。

「松岡綾って知ってるだろ?」
 いきなりの名前に田代は驚いた。若い男が幾分窘めるように中年男の横顔を見る。
「いや、いいんだ。知ってるのは知ってる。あ、俺ぁね、六本木で調査事務所をやってる唐沢ってんだ。こいつは俺の弟子で相川。お、いい匂いだなぁ。デミグラスソース。オムライスか? おい、食おうぜ。可愛い奥さんの作るオムライス、二つ」

 綾の名前と、唐突に現れた探偵。結びつくものはひとつしかない。ではこの目の前にいるのが「そっちの方面に明るい探偵」なのか。

 唐沢という中年男はオムライスの方に夢中になったらしく、お前知ってるか、オムライスってのは日本で生まれた洋食で、大正時代にはその原型があったんだ、とか何とか薀蓄を語り始め、オムライスを出したら、完全に黙り込んですごい勢いでぺろりと平らげ、こりゃアネモネのオムライスにも勝る、奥さん、あんたのソースは最高だ、デミグラスソースの中に優しさや愛情が融け込んでいるとか何とか褒め称え始めた。
 妻はにこにこ笑って客の話を聞くモードになっている。

 繊細からは程遠いこの男に幽霊が見えるとは思えない。むしろこいつは根っからの詐欺師だと田代は思いながら、無言のまままだ半分もまだ食べていない若い男のほうを見つめる。
 可哀相に、こんな男に雇われていたら、さぞ面倒くさいだろうと同情してしまう。だが、なるほど、この若い男なら、幽霊が見えますと言っても、いかにもそれらしい。

「綾さんはあんたたちのところに依頼に行ったというわけか」
 唐沢が相川という若い男の頭をぽかんと叩く。
「あれ、お前何時そんなこと喋ったよ」
 喋ったのはあんただよ、と田代は思ったが何も言わなかった。
 いや、喋ったわけじゃないか。綾の名前が出たのと、この男が調査事務所の者だと言っただけだ。

「まぁ、いいですよ。綾さんのことは俺も心配しているんだ」
「あんた、元刑事だってね。いや、俺らはね、綾さんの旦那のことを調べる羽目になったんだが、当時その松岡圭吾って旦那の失踪を調査してたのがあんただって聞いたからね。いや、もちろん、俺もさ、あれこれ警察の事情は分かるよ、だから細かいことはいいんだ。その旦那の遊びまわっていた場所だけでも教えて貰えたら有難いねぇ」

 やばい男だと思った。田代が警察を辞めているからには、あまり警察にいい思いを持っていないことも計算に入れて、正攻法で来たのだろう。いや、あるいはもと同業者ってこともあるのか? このいかにもあちらさんふうの男が? いや、似たようなものだから区別はつかないか。
 そんなことはともかく、あの時、十分に松岡の行方を探れなかったことには、田代は今でも不完全燃焼な思いを持っているのも確かだった。

「いいですよ。綾さんの不利益にならない範囲でなら喋りますよ。て言っても、松岡圭吾はひとつところで遊ぶような男じゃなかったし、あちらさんたちとの交友関係も随分と深そうでしたけど、特にどの組ってのでもなかった。しかもどんな大悪党を想像してるのかか知りませんけど、警察の人間ってのは多かれ少なかれあんな感じですからね。つまり、ヤクザ者と張り合えるくらいでなけりゃ、やってられませんよ」

「仕事は熱心だったのか」
「えぇ、色んな意味でね」
「嫁さんへの暴力は?」
 田代は一瞬躊躇ったが、答えた。
「あったでしょうね。自分を押さえられないところがありましたから」

 その時、若い男が突然顔を上げた。
「綾さんのほうはどうだったのですか?」
 唐突な問いかけだった。
 田代は意味を考えた。綾が暴力ゆえに松岡から逃げたいと思っていたかどうか、という意味だろうか。

「いえ、つまり、綾さんはご主人を愛していたのかどうかと」
 へぇ、また随分と根本に立ち返った質問だな、と田代は思った。
「さぁ。女性の気持ちはよく分かりませんが」
 そう言って田代はちらりと妻を見た。妻は食後のコーヒーの豆を挽き始めていた。
「愛し合って結婚したのだとしても、暴力ばかり振るわれていて、しかもいきなり失踪、悪事のにおいがプンプンする、とくれば、他の男を頼ったり、結果として好きになってしまうこともあるでしょうね」

 田代は、当時調査した記憶を思い起こし、松岡圭吾がよく出入りしていた店を幾つか彼らに教えた。
 奇妙な組み合わせの二人連れの探偵は、食後にコーヒーを注文した。
 若い男はコーヒーを待つ間にふと店内を見回し、何が気になったのか席を立ち、綾の描いた天使の絵に近付いていった。しばらくじっとグランドピアノに頬杖をつく天使を見つめていたが、その後は窓の外を少しの間眺め、やがて気配さえ殺すように静かに元の場所に戻ってきた。
 唐沢と名乗った中年男はこの界隈の美味い店を田代や妻から聞きだしながら、ほとんどずっと喋っていた。田代は、若い男の方が唐沢の煙草に火をつける仕草に、何故か引きつけられた。今時、銀座のホステスでもあんな色気のある仕草を醸し出す女はいない。いや、銀座になど行ったことはないし、何よりその手はしっかりとした骨組みの男のものだったけれど。

 それから唐沢の裏表のわからない、あるいはあると思わせて裏など全くないのかもしれない顔を見て、改めて、よくもこんな上司と付き合っていられるものだと感心した。
 

 唐沢は当てになるようで当てにならない。
 真は今ひとりで、昨夜、例の三人と歩いた道を辿っていた。同じ道なのに、夜と昼ではまるきり顔がちがう。あっけらかんとした強い夏の光のせいで、町の光景は色や形のディテールが飛んでしまい、あまりにも白々しく輝いて見えた。

 そう言えば、子どもの頃は逆のことを思った。昼間に人気のない森の中を歩いた夜、布団の中で考えたのだ。
 今、この時間、あの場所はどんなふうなのだろう。岩や木、土、ひそかに生きる動物たちが微かな息遣いが、夜の闇の中に漂う景色を思い、心は誰もいない密やかな森に遊んだ。

 北海道育ちだが、暑さに弱いというわけではない。それでも真昼間の太陽は身体から生気を奪っていく。
 唐沢が後は自分で頑張れと逃げ出したのは、実はこの暑さのせいだけだとは思いたくないが、そもそも夜人間の唐沢に昼の光はきついのだ。

 真は『人喰い屋敷』の表に立っていた。
 昼の光の中で見ると、人が住まない家はやはり周囲の家から浮き上がっていた。
 黒ずんだ厚い木の門に隅が黒ずんだ木の表札があり、『門倉』という名前が刻まれている。石の門柱は、積み上げられた石の隙間から小さな植物が顔を出していた。塀は細かな石が塗り込められていて、色瓦の屋根が設えてあった。敷地内の木は手入れされていないために、家屋を覆っているように見える。

 真は昨日、「作家」に案内された裏路地を回り、二軒の家に挟まれた細い通路の前に来ると、躊躇いもなくその中に入った。ここで逡巡して周囲をうろうろしては余計に目立つ。それよりは、まるで関係者のように当たり前に振る舞うに限る。
 ここは住宅街で、見知らぬ人間がいればどちらにしても目立つのだから、その時間を短縮するのが賢い。

 裏側から改めて見る『人喰い屋敷』は昨夜見たとおり、塀の一部が金網になっていた。
 ここに来る前に図書館で古い地図を確認したら、もともと裏側の家も含めて『門倉』という屋敷の敷地だったようだ。相続などで土地の一部を手放し、改めて表側と見合った塀を作ろうとして放置されたようだ。金網の一部が切られて、人が潜れるようになっているのは、誰かの悪戯かもしれない。

 あれ。
 昨夜ここを出る時、「作家」は切られた金網を留めた針金を直していたはずだ。
 だが、針金が外され、金網はめくれあがっている。
 誰かがここを通ったのだ。しかもまだ中にいるかもしれない。

 真はめくれ上がった隙間を通り、『人喰い屋敷』の敷地に入った。一瞬何を思ったのか、鳴くのをやめた蝉が、またすぐに煩く騒ぎ始めた。木々が繫っているせいで太陽の熱気は幾分か遮られて、足元には湿気がある。おかげで足音は吸い込まれていった。通り抜けた風が木々を微かに唸らせて、木漏れ日が家屋の壁で模様を変えている。

 家屋はどちらかといえば洋風の作りだった。壁は白い漆喰で、屋根は傾斜がきつく、黄土色の焼き瓦を葺いてある。二階建てで、煙突が立っていた。真は家屋の表に回った。玄関には雨除けの屋根があり、通常の家の二枚分はある扉だ。
 試しに玄関扉を押したり引いたりしてみたが、やはり鍵がかかっていた。
 どの窓にもカーテンが引かれているか、雨戸が閉められている。開いている窓がないか確かめながら、真は木々に覆われている屋敷の周りを歩いたが、やはりどの窓も内側から鍵が掛けられていた。

 時折、何かに気が付いたように、蝉が鳴き止む。風が止まる。真は耳を澄まし、何か動くものがないか確かめる。
 少なくとも、霊魂とか幽霊とか、そういうものの気配はない。

 だが、最後に裏手を向いた角を回った時だった。
 視界の隅に、開いている窓の光景が残ったまま、別のことに気を取られた。

 微かに、生き物が唸る声を聞いたような気がしたのだ。
 いや、それだけなら、紛れ込んだ猫や犬かも知れないと思うのだが、誰かが、あるいは何かが息を呑む気配が重なった。

 その瞬間、白いものが木々の間を素早く駆け抜けるのが見えた。
 真は急いで後を追った。
 と言っても、抜け道となった金網までの距離がそれほどあるわけでもない。真は直ぐに「彼」に追いついた。

「驚かせてごめん。君は、夕べここにいたよね」
 びくり、と背中を震わせた少年が、意を決したようにゆっくりと振り返る。

 髪は真と同じような淡い色で、目の色も明るかった。真を見る目には、怯えというよりも、相手を値踏みするような気配が漂っている。肩には白い猫。猫は真に怯えるように毛を逆立て、少年のシャツを掴んでしがみ付いていた。

 だが、目が合ったのは一瞬だった。猫は素早く少年の肩から飛び降り、金網の隙間を潜って逃げた。そして、すぐに少年も、真から目を離さないように後ずさりし、しゃがんだと思った途端に金網の向こうへ滑り出ていた。

 真は追いかけることをすぐに諦めた。
 何より、開いている窓に興味を引かれていた。
 それに、あの少年にはまた会えるような気がしたのだ。

 窓枠に手を掛けて潜り込んだ先は、洋風の書斎のような部屋だった。不法侵入だがやむを得ない。

 テーブルやソファ、机と思しき家具には全て白い布が掛けられている。昼間だが、夕暮れ時のように暗い。それでも夜ではないので、目は直ぐに慣れた。壁には硝子戸のついた書棚が並んでいる。本はそのまま残されていた。背表紙は読めないが、かなり年季の入った本のようだ。ドアの脇の壁には柱時計。もちろん動いてはいない。
 真はドアノブに手を掛けた。その冷たさに一瞬背筋が緊張した。

 廊下はさらに暗かった。もちろん、人の気配はないし、ネズミや入り込んだ小動物は息を殺しているのか、ひっそりとしている。
 足元は絨毯のようだった。古い黴のような臭いがしている。
 だが空気は籠ってはいない。少なくとも、時折風が通っているようだ。

 扉をひとつずつ確かめた。廊下は階段の裏側で二手に分かれていて、家の裏手側には台所、ダイニングが並び、最後の扉の所まで来ると、玄関が見えた。玄関から真正面に階段があり、真っ直ぐ二階に上がっている。
 薄闇に慣れてきた目でも確認しにくい階段の先をちらりと見てから、真は玄関脇の扉を開けた。

 瞬間に、ふわり、と何かのにおいがした。
 一瞬漂い、消えてしまった。どこかで嗅いだことのあるようなにおいだが、香水か整髪剤か、少し人工的な香りだった。

 そこは小さな部屋だった。ベッドと机、それだけだが、この部屋だけは他の部屋と明らかに違っていた。ベッドにも机にも白い布が掛けられていない。椅子はなく、机の高さが少し低い。子どもの部屋だったのだろうか。
 真はベッドに残された布団を確かめた。皺があり、枕に凹みもある。
 足が何かを踏んだ。拾い上げてみると、スナック菓子の袋だった。
 机の上に暗い影を作っているのは灰皿だ。吸い殻はなかった。

 一旦廊下に出て、玄関の反対側を見ると、最初の扉は応接室のようだった。やはりソファにもテーブルにも白い布が掛けられている。一方の壁に暖炉がある。暖炉の上にも白い布があり、いくつかの置物をまとめて覆っているらしく、でこぼこしていた。

 隣の部屋がリビングだった。ここも同じような状態だったが、一方の壁に何か四角いものが立てかけてあり、やはり白い布が掛けられていたが、隅がめくれあがっていた。
 この部屋は雨戸が閉められておらず、カーテンだけだったので少しだけ明るい。
 どの部屋の白い布もきっちりと中のものを隠しているのに、そのめくれ上がった様子が妙に気になった。

 その布をそっと持ち上げてみた。
 そして思わず息を呑みこんだ。
 二十号ばかりの大きさの絵が額縁に収められている。そこに描かれていたのは少年だった。椅子に座り、膝に猫を乗せている。

 まさにさっき会ったあの少年がそこにいた。
 いや、絵の中の少年はもう少し幼いから、昔の絵なのかもしれない。
 そして、少年が膝の上に抱く猫は、さっき真に唸っていたあの白い猫だった。

(5)役者は揃った、に続く。




またまた遊びすぎちゃった。
遊びついでに(いや、遊ぶために?)2時間ドラマ仕立てに変更しました。
やっぱりミステリーって視点を動かすほうが断然いいですね。
あ、お恥ずかしいことに、ミステリーってほどに上等な出来ではありませんけれど。
さてさて、やっとですよ! 絵のシーンが登場しましたね! なので、大きく掲載。limeさん
あれ、少年、どうしてそんなにシャツがはだけてるのかしら?? これって、limeさんの罠?
改めてアップにしてみて、どきどきしている大海でした。

それから、綾が描いたということにした絵はこちら。
limeさん天使と男400
この絵の事情は、limeさんの妄想落書き:羽根のある君とをご覧ください。でも、綾はこれから天使を描き加えようとしていたようですね。
で、このコップは?? 聖書をモチーフにした絵のように、コップには何か宗教的な意味が?
いや、単なる飲んだくれか?

*どちらの絵も著作権はlimeさんにあります。無断での転用はお断りします。

次回は失踪事件の謎に迫りますね。そしてそこには少年の秘密も(*^_^*)
(あぁ、大したことないのに、誇大広告^^;)



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Category: ★短編(1)人喰い屋敷の少年

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コメント


おお、絵が♪

なんと今回、あの妄想らくがきまで使ってくださったのですね。
すごい!そして、ありがたいです。
綾さんが描いた、失踪旦那の絵。複雑な感情の入り混じった絵なんでしょうね。
心底嫌いな男の絵など描けないから、まだどこかに愛情があるのか。天使を添えたところにも、いろんな想いを感じます。

綾さん、なかなか陰りがあって、素直に魅力的な女性と言えない何かがあるような(考えすぎ?)
真田さんにとっては、放っておけない薄幸の女性なんでしょうね。
いや、この二人が結ばれればそれなりに幸せに暮らせそうな気もするんですが。旦那が、どっかに潜んでそうな気もするし・・・。
田代も、いい感じで物語をつなげてくれていますね。
はい、今回の萌えポイント。
唐沢に火をつけてあげる真の仕草を見つめる田代の感想(w)

そして、ついにあの絵のシーンですね。
なんとなく描いたシーンに、いつも大海さんは忠実に合わせてくださって、感激です。
そうか、あの猫は真を見て毛を逆立ててたんですね!幽霊ではなく・・・。ん、近い存在??いやいや。
少年のシャツ、はだけていますねww これは策略です。こっそり露出度高めで参ります。
猫の爪が痛そうだと、後で気づきました。><

それにしても、1000文字なのですね!展開が鮮やかで退屈しなかったので、長さを感じませんでしたが、そうか、1000字って、アリなんだと安心しました。
いや実は今連載中のやつの最終話が7500文字くらいになりそうなので、どうしようと悩んでいたんです。吹っ切れました!

とにかく、少年と真が出会ったし、このあとの展開が楽しみです。そして、はい、私もドラマ的な演出、好きです^^


lime #GCA3nAmE | URL | 2014/09/21 11:31 [edit]


limeさん、ありがとうございます(^^)

limeさん、こちらにも有難うございます。
妄想落書きのほう、あれこれ考えていたのですが、書く時間ないなぁと思っていたら、あ、ここで使えるじゃん、と。そうそう、絵を描く女性ってのは時々使いたくなるキャラなのですよ。でも、ふと思ったのですけれど、limeさんちの絵描きさんは圧倒的に男性だなぁ、と。いや、だからなんだってこともないのですけれど。これもひとつの嗜好なのかと……^^;
省エネ使用ですみません!!

> 綾さんが描いた、失踪旦那の絵。複雑な感情の入り混じった絵なんでしょうね。
> 心底嫌いな男の絵など描けないから、まだどこかに愛情があるのか。天使を添えたところにも、いろんな想いを感じます。
あぁ、やっぱり、limeさんは絵を描く人ですよね。そうなんですよね。
奥さん、どうなんだ、あんたの本心は!って感じで……ちょっとぶっ飛んでいるかもしれません。一見弱く見えて、その実 はかなり怖い……??(なぜかlimeさんにはバレているみたい?)
真田なんて、女の魔の手に引っかかれば、ほんとちょろいって感じで。
> 旦那が、どっかに潜んでそうな気もするし・・・。
あららら~。語るなかれ~聞くなかれ~(あ、湯殿山に行こうとしているからつい……)
> 田代も、いい感じで物語をつなげてくれていますね。
そうそう、ちょい役に力が入り過ぎちゃった^^;
萌えポイント、もっといやらしく書こうと思ったのですけれど、ここは18Rにはしないと決めていたので、さらりと流しました。でも、limeさんは引っかかってくださると思っていましたので、目いっぱいいやらしく想像してやってください(*^_^*)

> そして、ついにあの絵のシーンですね。
はい、やっと出てきました! お待たせしました。もう4話目ですよね~!
そうそう、ポイントは「あの猫は真を見て毛を逆立ててたんですね!幽霊ではなく・・・」って、ところだったのです。幽霊ではなく真……、あぁでも、近い存在かあ。確かに・……^^;^^;^^;
> 少年のシャツ、はだけていますねww これは策略です。こっそり露出度高めで参ります。
> 猫の爪が痛そうだと、後で気づきました。><
ほんとですね! そうかぁ、策略かぁ。
あまりこだわっていませんでしたが、この露出度ということは……えーっと、少年は何を……?
というような点はもうlimeさんのお話にお任せするとして(?)、私は「皆様の想像にお任せ」にしちゃいまする^^;

> それにしても、1000文字なのですね!展開が鮮やかで退屈しなかったので、長さを感じませんでしたが、そうか、1000字って、アリなんだと安心しました。
はい。えっと、10000ですね。そうなんですよ。最後の真視点の部分を切れば7000だったので、そうしようかとも思ったのですが、1話に1度は真を出しとかないと! と。いや、妙に影の薄い主人公だから、忘れられちゃ困るし。
あぁ、でも、長いと感じなかったと言っていただいて、ホッとしました。ありがとうございます!

> とにかく、少年と真が出会ったし、このあとの展開が楽しみです。そして、はい、私もドラマ的な演出、好きです^^
うふふ。そうですよね。視点をうまく操るのって難しいですけれど、これはこれでいいことにしましょう!
さあ、今度は誰視点? 2時間ドラマももう半分に来ました(*^_^*) 後半もお楽しみに!
コメントありがとうございました!!

彩洋→limeさん #nLQskDKw | URL | 2014/09/21 18:52 [edit]


わたしは「省エネお題小説」というパンドラの箱のふたを開けてしまったのだろうか(笑)

しかしlimeさんの絵をこう使われますか。うむむ。

ポール・ブリッツ #0MyT0dLg | URL | 2014/09/21 21:17 [edit]


ポール・ブリッツさん、ありがとうございます(^^)

> わたしは「省エネお題小説」というパンドラの箱のふたを開けてしまったのだろうか(笑)
そうそう、そうですよ! これって、新しいジャンルですよね?
実はポールさんがされた「省エネ小説」、ちょっと羨ましかったんですよね!
でもあれと同じパターンを思いつかなくて、ちょっと別バージョンでチャレンジしてみました!
まさにパンドラの箱でしたね(^^) でも開いちゃったからには、もうこれからは様々な省エネバージョンが登場するに違いない……人って、安きに流れる……^^;
> しかしlimeさんの絵をこう使われますか。うむむ。
えへへ。絵を挿絵として使うんじゃなくて、劇中劇、ならぬ、劇中画?として使わせていただきました。
これもありですよね?

コメントありがとうございました!!

彩洋→ポール・ブリッツさん #nLQskDKw | URL | 2014/09/21 23:18 [edit]


そうきましたか!

彩洋さん、こんばんは♪

今回の更新も楽しく拝読させていただきました♪

冒頭にあった松岡綾の独白シーンはとても印象的でしたね。
様々な面を内蔵している女の情念というのか、怖さとか哀れさとか狡さとかを、『絵を描く』という無心の行為とうまく絡めてあって、このシーンだけ切り取って読んだとしても堪能できたように思います。

それにしても彩洋さんは、こういう煮え切らないというかジトジトとした感じの(←褒めてるんですよ……(笑))女性を描くのがほんとにお上手だな、と感じ入りました。女性の内面はすごく複雑なので、物語作りにおいてどこから切り込んでそれを暴いていったらよいのか、いつも悩むところなんですよ。
今回の冒頭シーンは色んな意味で参考にさせていただきたいところが盛り沢山だったように思います。

その後の田代眼線で展開していくシーンも面白い構成だなと感じました。
本編とはほとんど関係ないキャラだけど、微妙に主な登場キャラたちと接点を持つ人物から見た人間模様の描き方が実にドラマチックで、読んでいて楽しかったです。
とくに、唐沢さんの煙草に火をつける真の仕草のくだりは最高の萌えポイントでした(*´∀`*)

最後に登場してきた少年と猫。ここで彼らが実在していることが明らかになりましたね。失踪中の松岡刑事がここからどんな絡みを見せてくれるのかも楽しみですし、ますますお話から眼を離せなくなってきました。

続きの更新を楽しみに待たせていただきますね♪
いつも素敵なお話を読ませてくださり本当にありがとうございます(*^_^*)

三宅千鶴 #- | URL | 2014/09/21 23:40 [edit]


ううむ、ということは?

ここで奥さん視点が出てきて、こう思うということは、奥さんがやっちゃったわけじゃないのか。手記なら「アクロイド」ってこともありますが。

そもそもなぜ「死んでいるか」を知りたいんだろう。「なぜいなくなったか」「殺されたとしたら誰に何のために」ということはどうでもよさげな様子ですしね。唐沢の想像の通りなのかしら。ううむ。

そしてそもそもの少年と猫がこの事件と無関係というのも変だから、なんかの関係があるのでしょうね。さてさて、どうなるのか続きをお待ちすることにしましょうか。

八少女 夕 #9yMhI49k | URL | 2014/09/22 04:15 [edit]


千鶴さん、ありがとうございます(^^)

今回はちょっとばかり方向修正しました。ずっと真視点て動くつもりだったのですが、やっぱり他の誰かの視点が出てきた方がミステリー的にはドキドキ感が増すなぁと。でも、これ、ミステリーっていうほどの謎解き感はないので、ほんと、いつものようになんちゃってミステリーです^^;

物語の中で女性を書くのって、やっぱり難しいですよね。
そう、女の書き手が女を書くと、どちらかに行っちゃう。生々しいか、非現実にすがすがしいか、極端になるって感じです。
どうしても結構どろどろのほうが楽しいのですけれど。でも読むほうは、極端すぎるといやだったりしますよね。女性の内面のむずかしさって、あんなに固執してたのに、どうしてそんなにあっさりと見切れるの?って当たりだったりして^^;(やっぱり秋の空ですかね)
この綾という女、怖さもあるけれど、かわいさもある、そう、まさに千鶴さんの仰る通り、哀れさもあって、複雑な人になっちゃいました。真って、こういう女に弱いなぁ。本編の深雪なんて人も、まさにそんな感じで、せフレ状態ですけれど、つきあっちゃっていますし。(男もずるいね)
でも、何はともあれ、別視点も楽しんでいただけて良かったです(^^)

田代視点は、時々使いたくなる、全くの第三者が主人公を見る視点ですよね。
これ、やりたくなりますよね~。実は本編で一度使って(水死/体を見に行くシーンで、全く無関係の水上警察のオッチャン視点で真を分析していた)、こっそり病み付きになりました。オッチャン、接点はほとんどなかったのに。たまに主人公は他の人間からはこう見えるのよっていうのを書きたくなるんですよね。
真は一人称では特に魅力的な人間ではないので(淡々としていますから……情熱的ではないというのか)、単調になりやすいんですね……
あ、でもここで、「本編とはほとんど関係ないキャラだけど、微妙に主な登場キャラたちと接点を持つ人物から見た人間模様の描き方」とちゃんと分析していただけて、さすが千鶴さんだと思いました。そうなんですよ。その中にあれこれ鍵があるんですよね。
> とくに、唐沢さんの煙草に火をつける真の仕草のくだりは最高の萌えポイントでした(*´∀`*)
やっぱり、これ、萌えていただけますか(このあたり、同世代感を覚える『萌えのポイント』)。うぅむ。実はもう少しじっくり「描写」しようか迷ったのですけれど、別に唐沢と真はそんな関係じゃないし、さらりと描写せずに田代の感想だけで流しました。はい、もう、想像しちゃっておいてください(^^)

> 最後に登場してきた少年と猫。ここで彼らが実在していることが明らかになりましたね。失踪中の松岡刑事がここからどんな絡みを見せてくれるのかも楽しみですし、ますますお話から眼を離せなくなってきました。
はい、やっと出てきました!
いや~長かった。次回からは起承転結の転になるのかな。でもあんまりすごい展開はないので、じわっと楽しんでくださいませ。納得の結末になればいいのですけれど。
いつもありがとうございます!!

彩洋→千鶴さん #nLQskDKw | URL | 2014/09/22 06:51 [edit]


夕さん、ありがとうございます(^^)

ややや。「アクロイド」……いや、そんな、上等なことではないのですけれど、わぁ、ドキドキするなぁ。奥さんがやっちゃった! あるある、ってみんな思っていますよね。そうそう、そういうこともある^^;
(わぁ、ちょっとテンパっちゃった)
でも、そうんなんですよ、夕さんいいところに気が付かれました。犯人ならどうして死んでいるかを知りたいんでしょうね。あれれ~
(コメント欄でテンパってどうするのだ、私)
いや、これはもう、夕さんのご想像のどれが正解か、最後に納得いただけたら、と思いまする。

> そしてそもそもの少年と猫がこの事件と無関係というのも変だから、なんかの関係があるのでしょうね。さてさて、どうなるのか続きをお待ちすることにしましょうか。
わぁ、もう、物書きさんたちって、ほんと、鋭いですよね。そうそう、物語に出てくるからには「無関係は変」なのですよね。そうなんですよ。無関係なわけないんですよね。
(まだまだテンパる^^;)
2時間ドラで言うと、最初はチョイ役っぽく出てきた人がアップで映って、微妙な表情を浮かべているシーンですね。あ、こいつ怪しいんだ。という下り。でもあのシーンが無かったら、そんな無関係の人が急に犯人だなんて言われても納得がいかないわってことになるし。
そう、犯人は「最初(始めの方)から出ていないと」というミステリーの掟。
えっと……また最後に絡まった糸をほどきますので、お楽しみに!
(と言って、逃げる^^;)
コメント、ありがとうございました!!

彩洋→夕さん #nLQskDKw | URL | 2014/09/22 07:03 [edit]


こんばんは。

綾の様子は気になりますが、この人、何をどう考え、どうしたいのか、まだまだよくわかりません。穏やかな生活を送っているようですが、サキは不穏なものを感じています。
自画像を書くことが恐ろしい……綾の精神状態をチラリとのぞいたような気がしました。
登場している絵は圭吾を描いているものなのでしょうか?綾がそこに書きいれようとしている天使っていったい何の象徴なんでしょう。

そして幸せそうな夫婦が登場しましたね。立場的には圭吾や真田の元同僚ということでホノボノ一辺倒という訳にはいかないんでしょうが、どんな動きをするのか楽しみにしています。奥さんが良いですね。
ここでも綾の描いた天使が登場しますが、またまた気になっています。
現実を生きる登場人物の複雑な人間関係と心理状態はとても興味深く読むことができますが、生きているのか死んでいるのか、こちらから見て現実を生きていない圭吾にはどうしようも無い事なのでしょうね。
謎が謎を呼んで、圭吾っていったい何をしているんでしょう?あるいは何をしていたんでしょう?サキはモヤモヤしています。

唐沢と真の調査は進んでいるようですが、唐沢の態度は相変わらずでとても楽しいです。分かっていて動いているのでしょうか?セオリー通りなのかなとも思うのですが、やっぱり真は1人で放り出されてしまったみたいですもの。

ようやく屋敷内での展開になり、少年と猫の登場ですが、あっという間に逃げてしまいましたね。
“瞬間に、ふわり、と何かのにおいがした”え?何の臭いだろう?気になります。
そしてまたまた絵の登場ですね。綾の描いた絵なのかな?
たくさんのアイテム、そして登場人物、どのように繋がっていくのか「人を消す方法」楽しみに待っています。
タイトルも怖いです。

山西 サキ #0t8Ai07g | URL | 2014/09/22 19:58 [edit]


サキさん、ありがとうございます(^^)

「少女」でもない、「姫さま」でもない、普通の女性を書くのって難しいですよね。
長編などでは比較的ゆっくりと内面を掘り下げていけるので、書いている自分も少しずつ、あぁこのオンナってこんなヒトなのか、と気が付きながら書いていけるのですが、こういう短編ではちょっとエキセントリックな部分がないとインパクトもないし、そもそも駆け引きなしの「可愛い女」なんてないよね~と思っている私は、ついつい怪しさと妖しさを併せ持った女を書きたくなります。
でも、どこかに可愛いところがある、そこが出たらいいなぁ。
綾が夫のことをどう思っていたか、天使は何を表すのか、またちゃんと出てきますので、お楽しみに!

喫茶店のシーンはお遊びです。
真視点を外した結果の……つまり、第三者から真を見る方式を取り入れてみました。
でもそれだけではなくて、実は秘密が隠れていたりして? なんちゃって。
(コメ欄、って怖いなぁ……)
でも、酒場での会話とか、喫茶店での会話、本編の内容に関係あるようなないような会話って、結構好きなんです。他愛ないようでいて、登場人物の立場や考え方がちらちら見えるシーン。物語の流れの中に上手く入れるのって難しいですけれど。
ちなみに、奥さんはもうここっきりの登場です^^;

> 現実を生きる登場人物の複雑な人間関係と心理状態はとても興味深く読むことができますが、生きているのか死んでいるのか、こちらから見て現実を生きていない圭吾にはどうしようも無い事なのでしょうね。
> 謎が謎を呼んで、圭吾っていったい何をしているんでしょう?あるいは何をしていたんでしょう?サキはモヤモヤしています。
サキさんは細かいところを拾いながらがっしり読んでくださるので嬉しいです。でも、ちょっと怖いような^^;
そうそう、生きているのか死んでいるのか分からない……綾の不安と期待と複雑な願望の理由はそこにありますよね。そして、これが人喰い屋敷とどういう関係があるのか。えっと、でも実は短編なので、そんな深い中身はないのですけれど、さらりと面白く仕上がったらいいなぁと思っています。
でも、昭和ですからね。平成よりもいささかどっしり感のある謎、かもしれません。

唐沢は、多分、何も考えていないと思います^^;
あてずっぽうでやっています。でもこの男のすごいところは、真も本編で言っていますが、何かヒントがひとつあったら10くらいの可能性はぽんぽんと出てくるんですね。そして、その中で一番適切なものを選んじゃえる。多分この人的にはそれが違ったら次の可能性を調べるってだけの手順なんでしょうが、この適切なものを上手く選んじゃうというのが、戦争でちょっと精神的に歪められて傭兵になっちゃって生死の場面に自ら飛び込んでいった経験のある男の動物的勘、なのかもしれません。
でも、途中で面倒くさくなるので、真は放り出される^^;

そして、はい! やっと少年とねこ、登場です。
彼らは実は出番が恐ろしく少ない。でも、重要な役割なのです。
においがするということは……誰かいたんですよね。多分ね^^;
そして「人を消す方法」……これはカグラの店でみんなが話題にしていた、少し哲学的な話? かな? 決して特殊な薬品をかけたら溶ける~とかいう話ではありません^^;
コメント、ありがとうございました!!

彩洋→サキさん #nLQskDKw | URL | 2014/09/23 09:36 [edit]


うわ。圧巻です。10000文字というと、うちの4~5回分です。

喫茶店のくだりがお見事でした。ドアを開けるとせみの声が聞こえて、閉めると消える。が、見えて聞こえて消えました。
大海さんのお話を読むとき、お話がはしばしば絵画を見ているように流れるのですが。オムライスのところ、うまそうでした。ってそこですみません。いえ、せみのところとか、たばこのところとかあ・・・・えっと、いいわけ遅し(-_-;)

ビジュアルを含めて凄く感覚に訴えてくるのですよ。文字という二次元を超えてくる。私はこれ、全体的にセンスの世界だと思うのですが。

少年と猫ちゃんの登場ですね。次なる展開をお待ちしております。

けい #- | URL | 2014/10/24 20:38 [edit]


けいさん、ありがとうございます(^^)

わわわ。やっぱり長すぎましたよね。
なんか、シーン的に切れなかったんですよ……でも、長すぎたと反省……(@_@)
あらら、けいさんちの4~5回分ですかぁ、う~む。今後の検討材料にしようと思いまする(p_-)

喫茶店のシーン、ときどきこういうのやりたくなるのです。
主人公は外野、別の次元で進んでいる物語に、少し主人公が顔を出す感じ。
主人公が出てくると、どうしてもその行動や感情をどう見せるかに集中していて、情景への配慮が足りなくなってしまうのですが、無関係な人が動いているシーンって、人物も情景のひとつなので、そのまま描写できていいですよね。
でも、余計なシーンだったかも……^^;

> 大海さんのお話を読むとき、お話がはしばしば絵画を見ているように流れるのですが。オムライスのところ、うまそうでした。ってそこですみません。いえ、せみのところとか、たばこのところとかあ・・・・えっと、いいわけ遅し(-_-;)
> ビジュアルを含めて凄く感覚に訴えてくるのですよ。文字という二次元を超えてくる。私はこれ、全体的にセンスの世界だと思うのですが。

ありがとうございます! 絵のようと言っていただけるなんて思わなくて、本当に嬉しいです(^^)
竹流が絵画関係者(修復師)なので(って、関係ないか)、何だか有難いです。
オムライス、永遠に子供と大人の大好物ですよね。でも食堂とかで不用意に頼むとチキンライスが冷凍だったり残念なことも^^; で、昔ながらの洋食屋さんにすごくおいしい一品とか、あるんですよね(^^)
煙草……あはは、これはサービスシーン? いやいや、唐沢の真の扱い方は完全におもちゃ、です。
真は……認識してるのか、いないのか。未必の故意、かも。
そして、あれ?この「センス」とは、あのSSのことを言ってくださっているのでしょうか。
あの「センス」の書き方はともかく、世界観はいつも自分が考えている頭の中の世界には一番近いかもしれません。それが日常世界の描写の中に表れているのだとしたらうれしいです(*^_^*)

> 少年と猫ちゃんの登場ですね。次なる展開をお待ちしております。
はい、ありがとうございます。この一連の修羅場が終わったら、続きをアップしたいと思います(*^_^*)
コメントありがとうございました!!

彩洋→けいさん #nLQskDKw | URL | 2014/10/25 10:44 [edit]

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