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コーヒーにスプーン一杯のミステリーを

オリジナル小説ブログです。目指しているのは死体の転がっていないミステリー(たまに転がりますが)。掌編から長編まで、人の心を見つめながら物語を紡いでいます。カテゴリから入ると、小説を始めから読むことができます。巨石紀行や物語談義などの雑記もお楽しみください(^^)

 

[雨128] 第26章 戻り橋(1)死の影/18禁 

【海に落ちる雨】第4節・第26章『戻り橋』のスタートです。
このお話はもう10年以上も前に書いたもので、それ以降何度か手を入れたり、文章を直しているのですが、まだまだ読みづらい部分も多くあります。幾分か目をつぶって頂かなければならないところもありますが、書いていた当時の熱はそのままお伝えできたらいいなぁと思っています。

戻り橋、というのは堀川一条に架かる橋のことです。平安時代、陰陽師・安倍晴明のお屋敷がこの辺りにあったとか。晴明が亡くなった父親を呼び戻したのだとかで「戻り橋」という名前がついているのですが……今や大通り・堀川の脇の、川とも言えない「溝」に架かる石の橋。その向かいにある晴明神社に、少し古い時代の橋が残されています。
平安のころ、ここは町から外れた藪の中、だったのでしょうね。

話を大方忘れてしまっている方も、もしかして途中から何とかついていけないかなんて思ってくださっている方も、こちらの記事でご確認くだされば、意外にあっさりついていけるかも……(でも、ちょっと身も蓋もなくなるけど^^;)
【海に落ちる雨】再開に向けてのキーポイント
【海に落ちる雨】登場人物

なお、公開限定記事にはしておりませんが、この回はいささかきつい18禁ですので、注意してお入りください。不快に感じられる方は、竹流の回想(もしくは夢)のシーンが終わったら、途中をかっ飛ばして、最後の10行くらいだけ読んでいただいてもよろしいかと……えぇっと、ハードボイルドですから、色気は「け」の字もありません。




「なんや、楽しそうどすな」
 庭の萩の花から露が零れるような、心地よい彼女の声が聞こえる。竹流は座卓に身を乗り出すようにして、向かい合った男と今日の予定を相談していた。内緒話をするように額を突き合わせていた二人は、悪戯を見つかった子どもように顔を見合わせて苦笑いをした。彼女の前では二人ともがまだ小僧のようなものだった。

「また賭け事どすか。男はんはなんでそないに賭け事がお好きなんやろ」
 それでいて賭けている内容は得てしてつまらないことだということも、彼女は知っている。これから出かける先も、朝まで帰ってこないことも、それに、今、スリー・クッションの勝敗がどうなっているのかということも。

 こうして向かい合っていると、一方が外国人だということを除いても、二人は外見的には似ていない部分の方が多い。似通っているのは、恵まれたその体格くらいなものだ。
 寺崎昂司のほうがずっと男らしく意思の強そうな顔つきで、目にも鼻筋にも力があった。黒い髪に、しっかりとした顎から首、さらに肩にかけてのラインは、彼の性質をよく物語っていた。
 一方の竹流は、甘く柔らかい顔つきをしていた。背丈は寺崎と変わらなかったが、剛健な体つきには見えなかった。もっともそれは一見のことで、実益を兼ねた水泳とロッククライミングで鍛えられた身体はしなやかに力強く、まるで隙がなかった。

 少し話をしてみると、寺崎昂司のほうが話しやすく、人に避けられるような近寄り難さがないことも分かる。夜の街・裏の街でも彼は胡散臭い連中にも好意をもって受け入れられていた。一方、竹流は、少なくとも自分が彼に簡単に話しかける立場にないことを知っている者には近づくことのできない、身体から発する強いオーラのようなものを持っていた。それ故に、彼は選ばれし特別な人間に見えた。

 だがもしもより注意深い人間であれば、すぐにまた気が付くだろう。竹流は生来人懐こく、自分のオーラになどまるきり気が付いておらず、誰も彼をも懐に受け入れる性質だった。それ故に、逆に後ろめたいことのある人間には彼の存在はどこかで疎ましく感じたかもしれない。
 そして、寺崎の方は、時折、剣呑な表情を見せることがあった。それは彼の出自によるものであったが、深い部分に憂いを抱えていて、決して人を懐には入れない人間であることが理解できるだろう。

 それでも、行きつけのバーやプールバーでは、よく二人はどことなく似ていると言われた。何よりも勝負事では、どんなに小さなことでも手を抜かないムード、獲物を追い詰める時には明らかに狩人を思わせる気配が似通っていたようだ。周囲に、民族が同じであれば兄弟と言われても信じると言われると、竹流は悪い気がしなかった。
 裏表のような外観と内面が、共にいることで調和を生み出していたということかもしれない。

 当初から竹流は寺崎の複雑な立場を知っていたが、いかにも彼を「苦難から救い出してやろう」とでもいうような傲慢な踏み込み方はしなかった。それ故に、寺崎の方でも適度な距離から竹流を観察する時間があった。
 始めは、竹流が扱う美術品の運送を寺崎が請け負うだけの関係だったが、徐々に信頼関係は深まり、国内だけでなく海外の仕事に於いて逃がし屋としての寺崎を雇うまでになった。危険な仕事で自らの命を預けることになるのだから、その信頼の深さは傍目からも明らかだった。

 昇や東道たちはそんな竹流の無防備さを常に心配していたが、竹流には憂いも疑いもなかった。
 それには理由があった。竹流の寺崎への信頼が決定的になったのは、真が外国人ヤクザに攫われてひどく傷つけられたのを、寺崎が救い出してからだった。
 だから、竹流は一切の隠し事を寺崎にはしなかった。自分の最も脆い部分を既に知っている寺崎に、今さら隠し事をする意味がなかった。一を信じたら、十まで信じる、そして信じることにここまでという限りはない。それがヴォルテラの後継者に求められる資質でもあった。

 それに、竹流と寺崎が友として信頼関係を深めていくことは、竹流にとって最も大切な女にとっても喜ばしいことに違いなかった。東京だけでなく、こうして京都の彼女の家で食事を共にしたり、仕事の相談をすることが、竹流が京都に忘れずに通う理由となっていたからだ。
 もっとも、竹流の方が完全に打ち解けたと思っていても、寺崎は時折悲しげで難しい顔をした。それがどういう理由かは、竹流の方もよく分かっている。

「俺は葛城や東道に信頼されていない」
 寺崎は何度かそう言って、竹流が求める対等で親密な関係を拒否しようとした。言葉にはしなかったが、彼は時折、服従しろと言われる方が楽だと訴えるような目で竹流を見ることがあった。竹流は一笑に付した。
「そんなことはない。お前の逃がし屋としての腕は彼らもよく承知している」

「お前を傷つける可能性のある人間に対しては、あいつらは異常に敏感だ」
「お前が俺を傷つけるのだとしたら、今のところほんの僅かに俺がリードしているスリー・クッションの結果が逆転することくらいだな」
 冗談に躱してしまった竹流の言葉に苦笑いをして、グラスに三分の一ほど残ったバーボンを飲み干した寺崎の横顔がふと思い出される。並んで座っていた祇園のバーだったか、あるいは銀座のどこかの店だったか。
 寺崎は高級なバーでは幾分か居心地の悪そうな顔をしていたが、それでも彼は女たちだけでなく店の男たち、誰からも好かれた。さらに性質の悪い連中とも、実に上手くやっていくノウハウを知っていた。

「お前はいかれてるよ。どうしてそんなふうに人を信用する?」
 バーボンの琥珀が寺崎の溜息に揺れた。
「多分これは習性だな。俺がいかれているなら、俺を育てた男はもっといかれている。もっともあの男は、裏切りの代償には命を求めるがな」
「それでは、もしも俺が裏切ったら、お前も命で償わせるつもりか? いや、もしもお前がその気なら、俺の命はとっくに消えているか。あるいは、もっと効果的な時を狙って代償を請求するつもりか」
「それは考えておこう。だが、少なくとも、俺がお前を特別に必要としていることは確かだ。それは忘れないでくれ。何しろ、お前以外に互角に張り合える相手がいないんだ」
「ビリヤードのことだろうが」
 そう言ってようやく寺崎は仕方がないというように笑った。だが、それは完全な笑顔ではなかった。

 グラスの底で氷がカランと音を立てて位置を変えた。空になったグラスはバーテンの手で、新しく満たされたグラスと取り換えられた。
 いつかこの男に完全な笑顔を取り戻してやりたいと、竹流は心から願っていた。
 真が恐ろしい仕打ちを受けた時、怒りのあまり鬼神のようになった竹流を止めた寺崎の手が、グラスの中の琥珀を揺らす。その光を孕んだ揺らめきが、障子の上で踊る水面の照り返しに重なる。竹流が京都の岡崎に住まわせている女の家の、中庭の池に面した縁側の障子に光が踊っている。

 ふと目を開けた時、彼はそれが夢だったと気が付いた。
 頭上で揺れていた光は、そのような明るい色合いではなかった。暗い天井から吊り下げられた、薄暗い電球が微かに振動しているのだ。

 現実と夢の境は既に曖昧になっていた。魔法使いに捕まって、杖ひとつで身動きができないようにされて、はらわたを引き千切られる呪文をかけられたとしても、あるポイントを過ぎると何も感じなくなるのかもしれない。
 視界の真ん中に薄汚いぼろを纏った男が立っていた。男は目だけが異様に光っていて、誰か他の者に促されるように一歩前に出た。男の歳は分からないが、もうくたびれて、脚は半分あの世に突っ込んでいるように見えた。

「あなたには随分ご贔屓にしていただきましたからね、お礼をさせていただきたいと思っていたのですよ」
 男は、その醒めた声にぶつぶつと何かを答えている。そこには、不安と不満と諦めが同居していた。
「心配はいりませんよ。もう何も持たないあなたから代金を頂くようなことはしません。それどころか、後でもっと酒も薬も差し上げますよ。ほら、どうです? かなりぼろぼろになっちゃいますが、今のあなたには手に入りようもない上玉でしょう? 多少歳がいってトウがたってはいますけどね、そのあたりのガキとはわけが違う」

 彼の身体に、冷えた空気があらゆる角度から突き刺さった。男はごくりと唾を呑み込んだ。動いた咽喉仏が異様に尖って見える。男は肩を上下しながら息を吸い込み、彼の身体に恐る恐る手を触れた。
「いいんですよ。お好きになさい。この男はね、ついこの間までは手を触れることなどできない場所にいたんですよ。大きな声では言えませんがね、ローマ教皇さえ出したという家系の末裔だ。それが今、こうやってあなたに脚を開いてくれているんですからね。十分にいたぶっておやりなさい」

 男は二、三度荒い息を吐き出すと、突然に彼に圧し掛かってきた。こびり付いた垢や汗の臭いと、食べ物が腐ったような残酷な悪臭が彼の身体を包み込んだ。
 吐こうとしても、もう何も身体の中に残っていなかった。男の口からも、アルコール混じりの酷い臭いがした。男は悪臭を振り撒きながら彼の唇を吸い、いかにも栄養状態の悪そうな荒れた舌で顔中を舐め、骨ばったゴツい手で彼の身体を撫で回した。

 身体中に仕込まれた針が、限りなく連鎖して痛み続け、意識は何度も消えかかった。やがてそのゴツい指は何本も彼の身体の中心にねじ込まれ、永遠とも思える時間をかけて、彼のただれた粘膜を傷つけた。粘膜が引きちぎられ、血が流れ出していくのがわかった。
 どれくらいの時間、どれくらいの数の恐怖を銜えさせられたのか、もうそこは完全に緩みきって、血液も便もあらゆる体液も、そして彼の命さえ、流れ出していこうとしていた。そして男は、感じることなど全くできなくなっている彼の性器をしゃぶり始め、彼は自分が何か極めて不快なものに対して反応しているのを感じた。
 頭はものすごい勢いで細胞を揺り動かして拒否し続けているのに、同じだけの勢いで彼の身体は男が突っ込んできた凶器を吸おうとしていた。

 ついに狂ったのだと思った。
 意識は身体ごと浮き上がるように、彼の頭の上を彷徨っていた。彼の身体はずっと振動していた。身体は何度も突き上げられて、その度に脳の細胞が壊されていった。咽喉がからからに渇いていた。呻くと声が掠れた。男は彼の身体の奥に突き上げ、堪らないというように動くスピードを上げていき、やがて彼の上で獣が吠えるような呻き声を上げて達した。

 もう何も分からなくなっていると思っていた彼の粘膜は、男が恐らくは久しぶりに放ったのであろう粘度と温度の高い体液の感触を、ぶるぶると震えながら受け入れた。だが、恐怖はそれだけでは済まされなかった。男は性器を彼の身体の奥深くに挿れたまま、しばらく肩を震わせていたが、そのまま再び動き始める。彼は男のものが更に一回り大きくなっていることを、粘膜に残された残酷な感触で味あわされていた。身体が引きちぎられていく。男は一段とスピードを上げて、また同じような呻き声と共に果てた。
 このまま、永遠に繰り返されるような錯覚に陥り、彼の脳細胞は苦痛のあまり粉々に砕け堕ちようとしていた。

「あなたは御自分のものを銜えさせるのがお好きでしたね」
 ねっとりと纏わりつくような声が頭の上から聞こえていた。狂い始めた脳の細胞でも、本当に恐ろしい敵は、自分の上にのしかかっているぼろきれのような男ではなく、このねっとりと甘い声で耳元に囁きかける悪魔だと理解できていた。
 彼の乾いた唇に湿った手が触れる。彼は思わず噛み付こうとしたが、動くことができたのかどうか、自分でもわからなかった。

「ここまできてもたまに暴れようとするんですよ。もしもあなたのものを銜えさせたいのなら、歯を全部折ってさしあげましょうか」
 そうか、この声はただ俺を恐怖で苦しめたいだけなのだ。抵抗するチャンスを与えられず、ただ怯え、少しずつ頭を狂わせられる。世の中にこのような理不尽があると、俺は知っていたつもりだったが、感じたことはなかった。まさかこの身で思い知らされることになるとは思っていなかった。

 では、あの少女は、どれほどの恐怖を与えられたのだろう。
 負けることなど知らない屈強な体に鍛え上げられた自分でさえ、こうして完全に打ちのめされている。それなら、あのまだ何も知らぬ少女にとっては、どれほどの恐怖だったろう。そして、まだ子どもだった昂司にとっても。
 だが、怒りが彼を奮い立たせることはなかった。彼はもう完全に打ちのめされていたのだから。

 男は彼の肛門から性器を引き抜くと、歯のことは聞き逃したのか、そのまま彼の口の中にそれを突っ込んできた。彼の口の中はもうからからで、粘膜は歯茎とひっついてしまっていた。無理矢理に突っ込まれた性器には、幾人もの男の体液の臭いと、あらゆる種類の不快な臭いがこびり付いていた。
 目は腫れ上がっているのか、もううまく開かなくなっていたが、細い視界の中で男が彼を見下ろしていて、その口が綺麗な三日月のように笑うのが見えたような気がした。男はずっと能面のような顔で彼を見て笑いながら、単調な動きを繰り返し、やがて彼の口の中でもう一度射精した。咽喉の奥に、すえた蛋白質の臭いがこもり、鼻から頭のほうへなだれ込んできた。それでも、乾いた咽喉は、男の放った液体を貪欲に呑み込んだ。
 咽喉仏が動くと、叫びをあげることもできないのに、焼けるような痛みでまた意識が遠のいた。

 右足に巣くっている豚のような寄生虫は、今日も活動していた。がしゃがしゃと厚く硬い紙をくしゃくしゃにするような音が身体の骨を伝わって耳にまで届く。熱く重い。男の精液を飲みつくした後も食道から下はまだ乾ききったままで、焼けて干からびた身体は水分を欲し、舌は乾いた唇を舐めた。
「まだ咽が渇いているみたいですよ。ほら、飲ませておやりなさい」
 ぼろぼろの男がぼろぼろの彼の上に立ち、顔を跨いでいた。

 唇にぽたぽたと水滴が落ちてきて、やがて顔の上に土砂降りの雨のように降り注いだ。目を開けることはできなかった。体温を残したアンモニア臭が鼻と口の内側の粘膜を刺激した。彼は咳き込んだ。食道にも肺にもアンモニア臭は流れ込み、同時に喘息のような呼吸になった。もう意識は溶けて崩れかけていた。腐った身体を蛆虫が這っているのが分かる。紙を揉みしだくような音が体中を這い回っている。
「どうですか、小汚い浮浪者に犯されるというのは」
 もう何も答える力はなかった。いよいよ呼吸が苦しくなってきた。

「この薬、効きすぎるんじゃないか。もう駄目そうなのに、あそこだけが勃ってやがる。突っ込んだら千切られるんじゃないかと思うくらい締めてきやがるしよ」
「だが、いいフィルムができたな。これは色んな意味で相当高く売れるぞ」
 切れ切れに言葉が耳に入り込んできた。耳の中でも、今度は小さな甲虫が時々羽根を震わせるようにして蠕いている。心臓の音は弱く、規則的ではなかった。

 彼は意識が起きたまま、マンションのベッドの上に横になっている夢を見た。
 傍に丸まって身体を預けてくる真の胸に耳を当てると、そのリズムはまるきりいい加減だった。愛おしくて狂いそうだった。同時に首を絞めてしまいたいほどに憎く思った。その相反する感情が自分の内に並んで存在する理由は分からなかった。いっそこの不可解な生き物の息の根を止めてしまおうと首に手を掛けると、既に真は彼の傍らで冷たくなっていた。

 もうずっと前から、この世にはいなかったのだと気が付いていた。それなのに彼がこの世に呼び戻し引き止めてきた身体は、夜になると魂が抜け出して、ただの骸になっていた。彼は何度も地獄へ迎えに行った。陽の光と共に、真の魂はこの世に呼び戻され、果てのない苦行を強いられていた。
 強いたのは彼だった。だからこそ、彼自身も苦行を共にしなければならなかった。先が全く見えない闇の道を、足下だけは針が敷き詰められていると分かる道を、血を流しながら悠然と歩き続ける真の手を、彼の手は震えながら強く握りしめていた。彼の足にも、もう形を留めないほどに血の穴が開き、脳髄までしみ込んでくる痛みが、身体を引き裂きながらも彼を歩かせ続けていた。

 もう頭にまで血が届いていないのだろう。心臓には血液を十分に送り出す力がないようだった。一瞬、激烈な痛みが右足に突き刺さったが、彼は何の反応もできなかった。この熱っぽい身体は、既に痛みと快楽の区別もつかなくなっていた。
 意識が途切れ途切れになっていた。からからという何かが回る音とブーンというモーター音が耳の底で唸っている。指の爪の間ひとつひとつに針が突き立っている。痛かった。だが、あまりにも強烈で途切れることのない痛みのために、もう痛くないという状態がどういうものかを思い出すことができなくなっていた。

 いつの間にか脳の防衛本能は、痛み自体を麻薬に変え始めたのだろう。意識は少しずつ鎮静化し、恐らく、あと少しで何も感じなくなるに違いない。
 その時、すっと顔の上に光の矢が落ちてきた。
「おや、坊ちゃん、間に合いましたね」
 また誰かが彼を嬲りに来たのだ。彼は何とか目を開けようとした。抵抗のためではなかった。ただ、反射的に目を開けようとした。
しかし、目はアンモニアや他の腐敗臭で沁みて、もうほとんど本来の感覚器の役割を果たしていなかった。

 それなのに、耳だけは研ぎ澄まされたように、聴覚器としての義務を果たし続けている。死ぬ直前に最後まで残る感覚器は聴覚だと聞いたことがある。いよいよその時が来ているのだろう。
「こいつはもう駄目ですわ。呼吸がおかしくなってる。普通の人間だったらもうとっくにくたばっちまってるでしょうけどね、随分頑張ったもんだ。どうです、最後に逝っちまうまで突っ込んでおやりになりますかい。それとも指か歯を一本ずつ、落としていきますか。こうなってもまだ、恐ろしいくらい綺麗な手をしていやがる。すっかり血の気はありませんがね」

 指の先に受容体の全てが移動したようだった。むず痒いような痛みが十本の指の先を撫でていく。そこにだけ、脳の活動する場所があるようだった。
 吸い込んだ空気は肺には届かないように細く、頼りがない。眼瞼は重く、動かすことはできなかった。
 あぁ、もういいと思った。恐怖よりも、ただ逃れたいと思った。このまま意識を無くしたら、きっと楽になるだろう。永遠に息をする必要もなく、心臓も義務を果たす必要などなくなる。
 全てがどうでもよくなった。静かで、ただ苦しかった。

 突然、彼の身体は何度も大きく揺り動かされた。
 あぁ、もうやめてくれ、もういいんだ。
 口が実際にそう言っているのが分かった。そして耳にも甘い言葉が流れ込んできた。

 ずっと、ここにいてもいい。東京にも、ローマにも帰らないで、ずっとここに。

 確かだと思っていた唯一の感覚器もついに狂ったのだろう。それでも、最後に耳が聴いた言葉が、たとえ幻聴であってもあの声でよかったと思った。遥か以前に囁かれた言葉なのに、耳の中にずっと残っていた声は、今実際に耳から脳のどこかに昇ってくると、崩れてしまった彼の意識の細胞を無茶苦茶に揺り動かした。
 痛みが身体の境界を越えて、がんがんとはじけ始めた。

 やめてくれ、お願いだから触らないでくれ。
 声は彼の身体の中でだけ反響を繰り返し、死に瀕した恐怖に耐えるための媚薬を与えてくれるどころか、その振動はさらに恐ろしい苦痛を強いた。





やっと、怖いシーンは終わりました(多分)。
まだ、真は東京にいます。竹流の命と心はもう限界にきているようです。
早く助けに来て……


<次回予告>
「真、俺が言ってるのはな、あいつがどうなってても覚悟しとけ、ってことだ。奴らは楽しいっていう理由だけで、あいつを縛り付けて死ぬまで突っ込んだ後で、あいつの剥製でも作って、さらにそれを犯しているかもしれないような連中だ。変態で残酷で理屈もない。そんな連中に筋が通ると思うなよ。だから、お前はあいつが死体になってまで犯され続けてるのを見たら、もう何もかも諦めて、それっきり忘れちまうほうがいい」
 弥彦からずっと真の身体の一部を蝕んでいる寄生虫が蠕き、叫びをあげたようだった。昇の制止は、今度は役に立たなかった。真は向かいに座る仁に摑みかかろうとした。
「狼狽えんじゃねぇ!」

次回もお楽しみに!!
(次回予告でシーンのごく一部を切り取るって面白いですね~。何で、そんなことになってるの!?的な……)
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Category: ☂海に落ちる雨 第4節

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コメント


ううむ

こんばんは。

読み直して、手を入れつつ、時間をかけて公開をためらわれる感覚、よくわかりますけれど、でも、彩洋さんの他の場面の書き方の密度を考えると、ここだけ発表しないわけにはいかないですよね。
それに、この辺りのシーンがあるからこそ、彩洋さんにとっての真と竹流の特別さが、理解できるようにも思います。

竹流、ローマで守られて生きていれば、たぶん生涯体験することのなかったような地獄に、それ以前に、ごく普通に生きている現代人はほとんどが無縁のところに、入り込んでしまっている、もしくは結果的に自分で飛び込んでしまったつらさがありますよね。

彩洋さんが既にあちこちで語られているので、ここでは死なないし、回復するというのもわかっているのだけが救いです。

ここでつらいシーンが終わりというニュースも、ちょっと嬉しい。あとは早く助けてあげて……と願いつつ、先を待ちましょう。

八少女 夕 #9yMhI49k | URL | 2015/06/17 04:20 [edit]


ううん

最後に来たのは誰なのかがすごく気になったけど、当然真ではありえないし・・・><
悔しいなあ。幻聴で聞く真の声に、あんなに安堵する竹流に、真を会わせてあげたいって、切実に思わせますね。
そういう気持ちに持っていくためにも、ここの残酷ともいえるシーンはやっぱり必要なんですよね。
ある意味、こうやって公開することを前提にしていなかったからこそ、ここまでじっくりと、必要な部分を端折らずに書けたとも言えるのでしょうね。
そう言う意味ではすごくうらやましいです。
この憎たらしい男が誰なのかまだ分からないんですが、もう一刻も早くギッタギッタに切り刻んでやりたい衝動に・・・。(でもそんなシーン美しくなさそうだ)
とにかく、これを10年前に書いたという大海さんの力量に、改めて感服です。わたし、先日、8年前に書いたほぼ処女作のラビットを読んで、あまりの拙さにのけ反りまくったんですが、やっぱり書いてきた年月って言うのは正直ですね。わたし、よくこの文章を平気でUPしてたもんだと・・・焦りながらちまちま校正してたんですが。しつくせませんでした。
話しが逸れてしまいましたが・・・。
ここのシーンには凄く人間の一番卑劣な部分や悲しい部分が溢れているんですが、たとえば北●映画なんかのように、ただ人の顔を殴りつけているシーンとか暴力シーンよりも、まっすぐ「憎しみ」として読むほうに入ってくるんですよね。あくまで、私の感覚なのかもしれないけど。
ただ血みどろになる暴力シーンだと、もうその場から立ち去りたい、入り込みたくないという気持ちにさせてしまうけど、こういう凌辱シーンって、なんだろう、救ってあげたい気持ちに凄くさせて来るんです。
うーん、何言ってるか分からなくなってきましたが・・・。
とにかく真! 早く来てちょうだい!!
ってことです!!

真の事を思い出して、そしてまた苦悩する竹流のシーン、好きです。

lime #GCA3nAmE | URL | 2015/06/17 07:22 [edit]


夕さん、ありがとうございます(^^)

はぁ~、本当に、よくお付き合いくださいました。ありがとうございます。ここから先は何かあっても、外力によるものではなく、完全に自己責任な展開なので、こんなに辛い思いはしませんので、ご安心くださいませ。いや、ってことは自己責任な展開はあるのねってことなのですが^^;(^^)
それはまぁちょっと置いときまして。
うぅ、そうなんですよね。ここだけかっ飛ばすとバランスが悪いというのか、ちょっと描写がしつこいぞ、とも思うのですが、フェルメールの説明も、澤田の過去の下りも、かなり濃厚に描写・説明しているので、あんまりにもここを薄っぺらくすると、何だか妙な感じになっていまって。こんな展開の中にも、かなりの心理・心情と、たまに伏線が交錯して書かれているので、マイルドな表現に置き換えていくとなると、そうしたディテールも飛んでしまうので、まさに1から書き直すことになっていまいます……そうなると、もう別のお話になっちゃいますよね。
「あれこれ迷っても結局公開するなら、さっさとしろよ」って自分でもツッコんでいたのですが、ようやく山場を越えたので、後はちょっぴり休憩もあるし(やっぱり珠恵のおうちは憩いの場なんですよね~。いくら静かな三角関係が渦巻いていても……(^^))、少しは落ち着いて読んでいただけるかと思っています。しかし、これだけ間があいて読んでくださる方は、ショックが和らぐ時間があったかもしれませんが、一気に読まれる人がいたら引くだろうなぁ~~(@_@)

竹流へのこの仕打ちはちょっと反省してます。でもこの人、通常の暴力には120%屈しませんから、たとえ火の中に放り込まれても、自尊心は壊されることがないと思うのです。このとんでもない野郎は、そのことは重々承知だったようで、どうあっても彼の精神力・自尊心を粉々にしたかったのでしょう。
でもね、竹流だから(バックにあのとんでもないオヤジがいるから)最終的に助かるわけですが、逆らう術のない小さな子供が、この世界のどこかでは犠牲になっていると思うと、もうギッタギタに……
でも、そんなシーンは書きたくないので、代わりに打たれ強いはずの彼に犠牲になってもらうことになったけれど……でも書いてみて気が付いたけれど、あまり打たれ強くなかった。これがきっかけで、彼はかなり壊れていきます。いや、精神力が強いので、外見的にはよりストイックになっていくだけなんですけれど、それがかえって痛々しくて。
それにしてもこの野郎は何故こんなに竹流が憎かったのか……それはもう少しお待ちください。理由も聞かずにぶった切っても良かったのですが、一寸の悪人にも、五分とは言わないけれど、一分くらいの魂はあるようですから。

> 竹流、ローマで守られて生きていれば、たぶん生涯体験することのなかったような地獄に、それ以前に、ごく普通に生きている現代人はほとんどが無縁のところに、入り込んでしまっている、もしくは結果的に自分で飛び込んでしまったつらさがありますよね。
うぅ。そうなんですよ。「自分で飛び込んでしまった」んです。なぜって……江田島が言っていましたが「彼はどうしても返してほしいものがあった」んですね。そして、「話せばわかる」とどこかで信じていたんです。結果的には仁の言うとおり「変態で残酷で理屈もない」野郎だったのですけれど。
現代人はほとんどが無縁のところ……本当にそうなんですよね。でも無縁でいられるのは、本当に偶然かもしれない……その偶然に感謝しなくてはならないと思っています。平和に見えるこの国でも、年間に行方不明になる子供の数は相当なんですよね……

> ここでつらいシーンが終わりというニュースも、ちょっと嬉しい。あとは早く助けてあげて……と願いつつ、先を待ちましょう。
はい。真に期待しましょう。そして、今は一緒にいるあの男にも……!
ただし、ここから先、徐々に鬼神になっていく真が怖いかも……
いや、せめて少しだけ、穏やかな時間を彼にあげることにしましょう。
読んでくださり、そしてコメントを下さって、本当にありがとうございます。

彩洋→夕さん #nLQskDKw | URL | 2015/06/17 22:30 [edit]


limeさん、ありがとうございます(^^)

あれ? これまた、夕さんの下さったコメのタイトルとシンクロ? 今度は意識されました^m^??
何てことはさておき、こんなトンデモナイ展開のお話をこうして読んでくださり、そしてコメントを下さって、いつも本当にありがとうございます。ここを越えたら、もうそんなには「辛い」シーンはないので、ご安心ください。勝手に自己責任で真が何かやらかしても、それはもう自己責任なのでいいとしましょう! って、どんな話やねん、これ。真ってほんと、とんでもない奴です。でも自己責任なので(しつこい)、そのあたりは「あぁ、この子ったら」と思いながら暖かく?見守ってあげてください。

さて、そうなんですよ。ようやく竹流が「何に足元をすくわれていたのか」はっきりしてきます。
でも思えば第1節の最初の方から「誰が直接絡んでいたか」は書いてあるし、その後色んな連中が絡んできて事態をややこしくしたけれど、竹流が何をしていたかの部分だけを拾い読みしていったら、彼がしていたのはひとつだけだったと分かるのです。
でもまぁ、これは別に謎解きってわけでもないので、仁曰く「ケチな野郎がケチなことをしている」話なのです。もっと言うと、崇高な志は下品な連中に簡単に踏みつけられるということなのですけれど。その暴力的な力に、果たして屈することなくいられるのか……本当に人間は小さな生き物です。だから、海に落ちる雨……
でも、真は実は相当に打たれ強いかもしれません。この先の彼の健気さと、怒った彼の手の付けられなさとをお楽しみくださいませ(って、楽しめるかなぁ~~)。

> ある意味、こうやって公開することを前提にしていなかったからこそ、ここまでじっくりと、必要な部分を端折らずに書けたとも言えるのでしょうね。
うぅ。本当にそうかもしれません。これを書きながら、「ギッタギッタに切り刻む」理由を作者である私が探していたのかもしれませんね。ついつい「一寸の虫=悪人にも、五分は無くても、一分くらいは魂もあるやろ~」って話にしたがる私が、もうこいつは切り刻んでもいいかもしれん!と割り切るだけの理由が欲しかったのか……
例のあの本を読んだときも、誰をどうやって断罪すればいいのか分からなくなっていたんです。あんなふうにしか生きられない連中を生み出す社会・貧しさのせいなのか、いや、欲望に身を任せるケダモノのような「文明人」のせいなのか、何をどうやっつけたらいいのか、分からなくて。
だから、こんなものを書いてしまったんだけれど、結果的にはますますわからんくなってしまった。竹流を人身御供に差し出した江田島? あるいは実際に弄んだ連中? あるいはやはりこの首謀者? もしくはその首謀者と竹流の間に挟まっている誰か……? でもあのゴッドファーザーには理屈はありませんから、言い訳なんて聞く気はないと思いますけれど。目には目を、です。

> この憎たらしい男が誰なのかまだ分からないんですが、もう一刻も早くギッタギッタに切り刻んでやりたい衝動に・・・。(でもそんなシーン美しくなさそうだ)
うん。真が怒り狂いますから、どうなることやら(真って基本的にヤマネコもしくはサルだからな~。あ、マコトはねこ)。
でもやっぱりあのゴッドファーザーが怖いかも~。きっとlimeさんの代わりにギッタギッタに……^^;

いや~、これは本当に文章もひどいし、直しても直しても気になるところばっかりで、本当にすみません(@_@)
昔書いたものを読み返すと、結構血の気が引きますよね^^; でも、もうこれは仕方がないですよね。「ええ~、これは酷い」と思える今の自分が、その時よりも一歩進んでいるのだということで、自分の進歩に拍手しておくことにしましょう!!

limeさんの仰る通り、これは卑劣な話なんです。人の痛みが分からなくなっているというのは(分かりたくないのではなく、本当に感じることができない)のは恐ろしいことですよね。人間を壊していくのはこういう力だろうと思いながら書いていました。つまり、どうやって絶望させるか、なんです。ただの暴力だったら、竹流は絶対屈しませんから。自分がこういうのを受け入れてしまうことこそ、絶望以外の何でもなくて……
でも、そんな絶望の中で、真の言葉が、ただひとつ、彼の自尊心の中に光を灯しているのです。
そうだよ、竹流! 君はあの人間を噛んでいた山猿を手懐けたんだからね!(山猿? 山猫?)
そして、山猿(いや、山猫)、相当に律儀な子に育っています。ただね、根が野生なので、怒ったら怖いです……

> 真の事を思い出して、そしてまた苦悩する竹流のシーン、好きです。
はい、ありがとです(*^_^*) もうこの先、美味しいシーンが山盛りです。実は、きっとlimeさんはお好きだろうなぁ~と思えるシーン、満載なのです。あんなシーンやら、こんなシーンやら、そして溢れ出す竹流の想いも……
そして、自ら危険に突っ込んでいく真をまた、切ない思いで見守ってやってくださいませ!(あ、それは第5節)
って、誇大広告をして、コメ返、終わります!(なに書いているのか、分からなくなってきた^^;)
コメント、ありがとうございました!!

彩洋→limeさん #nLQskDKw | URL | 2015/06/17 23:18 [edit]


うおう

現実世界と精神世界のあや・・・
脳内に響くのはやはりあの声、あの言葉・・・

竹流、どこでどうなっているの、とずっと追ってまいりましたが、ここでこうなっていたのね。
読んでいる者には見えるのですが、真は未だに探し中。真、ごめん。見ちった・・・
いあ、見ちったからといって、助けてあげることができるわけではなく。
竹流はここからどう戻ってくるのでしょうか。

前章から5ヶ月の間を経て、大海さんにとっては意を決しての公開なのに、私はほんの数日のインターバルで訪れております。
なんか申し訳ない。10年たってやっと日を当ててくださったことに感謝。

それにしても、物語を残すことって、本当に凄いことですね。
私も「夢叶」に関しては書き直しをずーっとしていくのではと思っているのですが、それでも第一稿を書き始めてから4年、書き終えてからまだ1年というところです。10年・・・
いつか見せてくださった、大海さんの手書きのノートの山が思い出されます。
このトピックで大海さんからお話を伺いたい気分です。

けい #- | URL | 2015/07/25 23:00 [edit]


けいさん、ありがとうございます(^^)

おぉ、けいさん、引き続きありがとうございます。
確かに、私が躊躇っている期間、5か月くらいあったのですね^^; だからけいさんももう追いついてくださるところまで来てくださって……有難いです。このままでは終わらないので、最近は真面目に更新していますので、また追いかけてきてください(*^_^*)

そう、真の言葉、それを軸にこの物語は回っています。
そして、竹流の想いがあれこれ錯綜しておりますが、実は竹流の気持ちが怒涛のように語られるのは30章なんです。もう、これでもか!ってくらいに彼の本心があふれ出てきます。実は竹流視点でも彼の想いがちゃんと語られるところ、なかったと思うのです。だからもうまさに「怒涛」です。
竹流はやっぱり自分には欠けたことろがあると思っていて、それを埋めているのが真の存在なのかもしれません。愛とか恋とか、そういうのとはちょっと違っていて、喪失を埋める何かなのかも。
でも、一方では人間らしい欲もあって、そこにまたキリスト教的禁忌ってのもあって、混沌……で、こんなことになっております。

さて、この竹流がいじめられているシーン、この物語のあるキーワードによって真の目にも入っちゃうのですよ。で、真の怒り心頭。怒った真はもうほとんど悪鬼のようになってしまいます。そして……第5節がこの余計なこと=復讐で成立してしまう。
でもその前に、ここから竹流を救いだしますので、もう少しお付き合いくださいね。
うん、もう十分いじめたから、後は割とスムーズに帰ってきます。でも、返してくれたのは「あの人」。あの人の運命もどうなるのやら。
たくさんの人の想いが錯綜しますが、とりあえず今回は大和竹流の帰還をお待ちくださいね。

物語を書く時のエネルギーって、やっぱりすごいものがありますね。短編と違って長編は、もうそれこそ心血を注いでる時があって。【清明の雪】は自分を切り詰めなくても書けたけれど(好きなものをてんこ盛りに詰め込んで、そして和尚さんで味付け)、こちらの話は文字通り必死でした。でももとの形からは随分と変わっていると思います。中身は一緒だけれど、表現という意味で。
少しずつ読みやすいように変えていっていたのですが、うん、それでも目が行き届かなくて、まだまだなのです。でもこれ、冒頭を書いたのはもう20年以上も前……びっくりするなぁ。私にとっては「モナ・リザ」ですね。
けいさんの『夢叶』がけいさんの中でどんどん練られて、発酵して、そしてさらに深みを増していく日が楽しみです。けいさんらしさをそのままで、深みが増していく……うん、そうですよね。

> いつか見せてくださった、大海さんの手書きのノートの山が思い出されます。
> このトピックで大海さんからお話を伺いたい気分です。
えっと……あの手書きの山、メインはジョルジョ・ヴォルテラと慎一(真の息子)の親子葛藤物語。本当に、あれもまた心血を注いでいた……はい、いつかじっくり語る日が来るでしょう……(^^)
コメント、そして引き続き読んでくださってありがとうございます(*^_^*)

彩洋→けいさん #nLQskDKw | URL | 2015/07/26 02:09 [edit]

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