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コーヒーにスプーン一杯のミステリーを

オリジナル小説ブログです。目指しているのは死体の転がっていないミステリー(たまに転がりますが)。掌編から長編まで、人の心を見つめながら物語を紡いでいます。カテゴリから入ると、小説を始めから読むことができます。巨石紀行や物語談義などの雑記もお楽しみください(^^)

 

[雨131] 第26章 戻り橋(4)命の還る場所 

【海に落ちる雨】第4節・第26章『戻り橋』の第4話(最終話)です。
晴明神社は堀川通りという大通りに接するようにあり、もっとオドロオドロしい場所を想像していた観光客をちょっぴり拍子抜けさせてしまうのですが、平安の頃にはこの場所はどんなふうだったのでしょう。
私にとっての京都の町は二重構造。現在目に見えている町と重なるように、次元の違う世界が張り付いている。何かの拍子にその世界が見えてしまうのです。例えば、御所の堀の角、道が十字に交わるところ、橋を渡ったところ。結界と言われる見えない境界が、ほら、そこにも。
この町で、真が見たものは一体なんだったのでしょう。

【海に落ちる雨】再開に向けてのキーポイント
【海に落ちる雨】登場人物



 大通りの向こうの闇に半分飲み込まれている神社。古い写真のように懐かしい景色だった。その鳥居に漂う青白い炎にに惹かれるように、真は大通りを渡った。
 日中なら車の行き交いの激しい通りも、今は遠くに微かなテールランプが見えるだけだった。そこはまるで今日の客を渡し終えた三途の川の渡し場ように、静まり返っている。
 鳥居を潜って少し奥まで歩くと、細い道を一本挟んで、神社の境内に繋がっている。青白い炎は真を導くように神社の本殿の辺りを彷徨いながら、ゆらゆらと膨らみ、やがて真の身体ごと包み込もうとしていた。

 突然、真は背中から羽交い締めにされた。瞬間に、さっき軽トラックの男は、何かを話したのではなく、顎でこの神社の方向を指していたのだと理解した。
「振り向くな」
 低く掠れた声は切羽詰った響きを残していた。

 聞きたいことが山のようにあった。だが、その一言で、真は全ての問いかけを呑み込まなければならなかった。男の大きな右手が真の口を塞いでいた。真は何気なく指の気配を数え、それから身体が震えてくるのを感じた。
「いいか、よく聞け。お前、香野深雪から何か預かっているだろう。そいつを大事に持っていろ。いずれ重要な担保になる。それから、澤田顕一郎に伝えろ。恋人はまだ待っているってな」

 男は一旦言葉を切った。だが、躊躇する時間を惜しむように先を続ける。
「それから、もしもその必要があると思った時は、ねえさんにも伝えてくれ。あの男はまだ昔の伝を頼っていると。俺が、とても感謝していたと、彼女にそう言ってくれ」

 真は男の手を逃れようと、一瞬、もがいた。男の手は更に強く真を締め付けた。強い腕だったが、声は掠れて時々形をなさなくなった。
「寺崎さん」
 真は搾り出すように呼びかけた。微かに血と汗と、土臭いにおいとが入り混じって真の鼻腔を刺激した。
「竹流を、頼む。結局はお前にしか、あいつを救えない」
「寺崎さん」
 真の頭は押しつぶされそうになっていた。唐突に寺崎昂司の手が、真を塀の蔭に押しやった。
「お前はその場所を知っている。青龍の境界を辿れ。十分待って、タクシーを拾え」

 離れようとした昂司の手を真は思い切り摑んだ。
 気の所為ではなかったのだ。昂司の右の手には小指がなかった。
 それを何故江田島が持っていたのか。つまり、あれは担保の割符だったのか。江田島は竹流を寺崎孝雄のところへ連れて行き、寺崎孝雄がフェルメールの絵を取り返して江田島に渡してやるという契約が成立していたということなのだろう。
 だが、何故、昂司はこの小指を失ったのだろうか。一体、何があったのか。

 何かを察したのか、寺崎昂司は一瞬、真を引き寄せて、骨が砕けるのではないかと思うほどの力で抱き、そのまま突き放すように塀の蔭に再び押し込んだ。
 真が立ち上がったときには、昂司の姿は闇の中に紛れかけていた。
 直ぐに、強く踏み込まれたアクセルが、軽トラックの影を視界から奪い去り、大通りへ抜けていった。その後ろをさらに幾台かの車とタクシーが追うように走り去ってゆく。

 突然切り取られて別空間に放り出されたように静まり返った境内で、真はしばらく立ちすくんでいた。薄ぼんやりと幾つかの五芒星が浮かび上がっている。
 邪悪を祓い、死者さえも蘇らせようとした陰陽師の魂がまだそこにあるというのなら、今その実力を見せてくれと願った。
 神か、あるいは鬼に挑み掛かるような気持ちで、真は本殿の前に行き、ふと周囲を見回した。あまりの静けさに拍手を打つことは躊躇われ、ただ心の内だけで手を合わせた。

 混乱した頭は未整理のままだった。この神は頼るに値するのか、あるいは挑むべき相手なのか。
 じっと目を凝らしていたならその姿が見えるのかもしれないと、闇の奥を凝視していると、大型車のブレーキの音とドアを閉じる音が表の大通りの方角から響いてきた。同時に、複数の足音が慌ただしくこっちへ近づいてくる。
 真は反射的に、木の陰に身を隠した。とは言え、相手が本気ならば真の姿など簡単に見つけてしまえる程度のか細い木だった。

 砂利を踏む音は複数が絡み合いながら近付いてくる。
 だが、どうしたわけか真は焦りも恐怖も感じることなく、静かに呼吸を繰り返していた。身体が青い炎に包まれているような気がする。その空気は真の神経を鎮めるように冷ややかで、また穏やかだった。呼吸する必要さえ感じないほど、身体が楽に思えた。
 誰か一人が舌打ちして、唾を吐き出したような気配があった。

「あのサディスト親父も、下の息子だけは手懐けられないってわけだ。逃げ出す度にこうやって面倒掛けやがる。兄貴のほうは純血種で出来もいいってのによ」
「今度こそ、殺っちまってもいいんだろう」
 複数の声は、実際に発せられている声なのかどうかわからなかった。真は冷めた聴覚中枢にそれらの言葉を刻み込んでいた。

「馬鹿言え。まだまだ使える、ってのが口癖じゃないか」
「だが、イタリア人や不良外国人が血相変えて追っかけてきてるらしいぞ。やばいんじゃないのか」
「ここは奴らのシマじゃねぇよ。しかもこっちは動いたり、逃げたりするのは商売ときてる。またしばらく潜るだけのことよ。ちょっとの間、面白い遊びはお預けになるけどな」

「本当にこっちへ逃げ込んだのか」
「まぁいいさ。どうせまたそのうち戻らざるを得なくなる。あの息子も、結局は同じ穴のムジナってことさ。暗い穴から出て行ったところで、お天道様の光が眩しくって、目が開けられない。すぐに暗闇が恋しくなって穴に戻ってくる」
 会話は途切れ途切れになり、そのまま足音と共に遠ざかり、やがて大きなエンジン音が境内にまで響いてきた。
 震えるような音は、やがて振動の幅を下げていき、そのまま見えない遠くの闇に吸い込まれていった。

 真は木の陰から本殿の前に出て、本殿の屋根から立ち上る青い炎を見上げた。
 炎は耳のある動物の形のようにも見え、ぼんやりと見つめていると、その八房の尾のひとつが飛び去る方向を探すように天で彷徨い、一瞬の後には、青い龍の頭をもたげて勢いをつけたかと思うと、遥か東の空へ流星のように飛び去った。

 真はさっきの失礼を詫びるような気持ちで手を合わせて、晴明神社を後にした。
 大通りに戻ると、空車のタクシーが北上してきて、真が手を挙げるか挙げないかのうちにすっと止まった。どちらへ、と聞かれて、真は何かに操られたように呟いた。
「青龍の境界」

 運転手は不可解な顔をして振り返った。真はしばらく運転手の顔を見つめていたが、あ、と口の中で小さく叫びをあげた。
「一乗寺か修学院の界隈に龍泉寺というお寺がありませんか」

 運転手は首を傾げた。観光地でもない京都中の寺の名前を覚えておくようにとは、タクシー会社のマニュアルにも書いていないだろう。近くまで行けばわかるだろうと、とりあえず東に向かってもらった。
 タクシーの後部座席に背中を預けて、地面からの振動を感じているうちに、急激に現実に引き戻されていく。さっきまで神秘の力とでもいうようなもので無理矢理に温度を下げられていた真の頭は、突然回復した血流に血管が膨張し、脳細胞は痺れを訴え始めた。

 耳の奥、目の奥でも強烈な痛みが湧き起り始める。自然に呼吸が速くなってくるのがわかった。運転手が一度だけ、大丈夫ですか、と尋ねてきたが、真は首を縦に振っただけだった。
 また鳩尾の辺りに捻られたような痛みが起こった。冷や汗は、湧き出してはそのまま皮膚から吸収されていった。その温度が身体を冷やしていく。頭の中でだけ、湯が沸騰するような音が弾けている。

 青龍の境界。
 京都の町を守る四つの聖獣のうち、東の守りが青い龍だった。つまり鴨川のことだが、そのさらに東側を走る白川通りがもう一つの清流の境界だ。
 真が知っている京都の町の景色は幾つもない。
 寺崎がどうしてそれを知っているのか、考えられることはひとつしかない。いや、寺崎だからこそ、竹流が話したのだと理解できる。あの場所は、人目を忍ぶには格好の隠れ家だ。

 真はスラックスのポケットに手を入れた。
 取り出した銀の指輪は、くすんで鈍い光を跳ね返すばかりだった。

 この指輪を、あの寺の庭に捨ててやろうと思っていた。
 六年前、竹流は、真が未練がましく持っていた美沙子に贈るはずだった指輪を、あの寺の庭に捨ててしまった。今でもあの指輪はあそこに眠っているのか、それとも地面に溶け出して姿を失ってしまっただろうか。そして、真はあれからずっと、いつか自分が、彼を異国の象牙の塔に縛り付けるこの指輪を捨ててやれるほどの人間になりたいと願っていた。

 タクシーは暫くの間、真の六年ばかり前の記憶を辿ってその周辺を探してくれたが、曖昧な記憶は、全ての路地を同じ景色に見せるばかりだった。運転手は不機嫌ではなかったが、幾らか運転が荒くなってきていた。
 やがて真は申し訳なく思って車を降りた。

 ドアが開いた途端、ひやりと湿った空気が真の身体を包み込んだ。タクシーの運転手はそれでも心配してくれていたのか、しばらく真の行方を窺っていたようだが、やがてゆっくりと走り去った。
 何時なのか、見当もつかなかった。街灯はタクシーの走り去った先に小さく霞んで見えているだけで、空には月も星もなかったが、うっすらと手の形がわかる。夜がゆっくりと明け始めているのかもしれない。
 
 真は暗い坂道を登り、目的の寺の入り口を求めた。東の山の方向へ登る道は、どれも同じように見覚えのある景色に見えたが、本当に求めるものは見当たらず、真は何度も道を登っては降り、記憶の回路をぐるぐると回り続けた。
 薄ら闇の中で、少しずつ真の身体は輪郭を明らかにしていく。それは夜が明けかかっているからなのか、真の目と耳と肌が、夜と自分自身との境を見分けられるようになってきたからなのか。

 この夜と真自身の境がはっきりしてしまってからでは、何もかももう遅い。真は焦り始めた。
 何度も夢の中に彼が苦しむ姿を見ていた。あれがただの夢でないのなら、彼の命は既に儚くなってしまっているのかもしれない。いや、この闇が彼のしっぽを捕まえる最後のチャンスだ。何故かそう確信して、ただ闇雲に走り廻っていた。

 足の甲から身体の温度ごと奪われるように血が滲み出し、指の先の感覚が失われ始めた。頭は少しも回復の兆しなく痛み続けていた。
 そして、永遠に時間が繰り返しているような錯覚に陥り始めたとき、遠くに微かに青白い灯りが見えた。

 ぼんやりと宙に浮かんでいる丸い灯りは、誘うように小さな円を描いている。
 真は走った。走ったと思ったが、あるいは動けてさえいなかったのかもしれない。だが小さな円は、その辺縁を空気中の湿気に曖昧に残しながら、少しずつ大きくなり、やがて円を持つ手がはっきりとしてきた。

 和尚さん、と真は話しかけた。
 小柄な和尚は、六年前と全く変わらない袈裟を身に付け、その小さな目を長く伸びた眉毛の下に隠したままだった。無言のまま和尚は何度か頷いて、先に立って歩き始めた。長いゆっくりとした階段を滑るように登っていく和尚の後ろを、真は黙って追いかけた。

 寺の小さな潜り戸も以前と変わらず、暗く静かに浮き上がって見えた。和尚は黙ったまま、潜り戸の前に立っている。真は促されるように、自らの手で潜り戸を開け、先に寺の奥へ進んだ。
 真が寺の建物への暗い入り口を眺めているうちに、和尚の灯りは地面を叩く雨の音と共に、するりと優雅に真の脇をすり抜けていき、庭の奥を進んでいた。真は取り残されないように和尚の後を追った。

 いつの間にか、雨がまた降り始めていた。
 覚えのない道だが、玄関脇の小さな庭を回って、奥の枯山水の庭に繋がる抜け道なのだろう。庭の端の塀を辿るように、和尚の灯りは先をゆっくりと進んでいる。真は導かれるままについていった。
 走っているのか、歩いているのか、あるいは浮いているのか、もう現実がどこまでなのか、はっきりと分からなくなっていた。

 頭痛はまだ続いている。手足の痺れは域値を超えてしまったようで、もう感覚さえなくなっていた。胸は苦しくなり、もともと不規則な真の心音は、雨音に重なるように、ますます不規則なリズムを叩いていた。時々、不整な脈が十連発ほど走ったかと思うと、血圧が下がってしまったように意識が薄れかかり、またやたらと間延びした時間を間に挟んで、うまく走れなくなった馬の足音のような振動を腹に送り出していた。

 やがて少し前を進んでいた和尚の灯りが止まった。
 寺の敷地を出て裏の小山に上がっていく木戸の前だった。この先には、古の時代の祈祷所、つまり古い神社の境内の名残がある。いや、この寺全体がもともと、平安の時代から続く、雨乞いの聖所だったと聞かされていた。

 きぃ、と湿った音を立てて、風に弄られたように木戸が開いた。和尚はまだ黙って立っている。真はもう今更何も聞くこともせず、促されるままに木戸を潜った。
 いや、「この」和尚が何かを答えるはずはなかった。

 真の背中で木戸が閉まった。頭の上で鳥が飛び立つような音が聞こえる。重なり合った木々のために、空は全く気配すら感じられない。僅かな音を何百倍にまで増幅させて捉える機能でも身に付いたかのようで、真の頭の中では、過剰に反応するあらゆる神経細胞がのたうっていた。
 和尚の姿はもうなかったが、最早完全に輪郭を失った青白い炎が先を進んでいた。

 陰陽師の念力は馬鹿にならないと真は思った。死者を呼び戻すことはできなくても、真のような、時々あの世のものもこの世のものも区別がつかなくなってしまう神経の持ち主に対しては、その式神という鬼をほんの少し操れば、あとは勝手に真の脳の方が見たものを暴走させてしまうのだ。
 この先は地獄だぞ、と草薙の言葉が先を急ぐ真の足に絡み付いていた。真は重い足を平然と持ち上げていた。地獄を歩く靴は持たなくても、素足の裏はその痛みを平然と受け止めて、恐れもなかった。

 灯りはこの先の注連縄が張られた結界の辺りで、ゆらゆらと誘うように揺れていた。
 真はついに走った。
 重く湿って苦しくなっていた肺は、悲鳴を上げながらそれに従った。足のあらゆる筋肉は、これまで感じてきた全ての種類の痛みを思い出したかのように軋んで唸っていた。心臓は完全に頻拍の発作を起こしていた。
 全てが意識を突き抜けて先を進んでいた。

 そして真は立ち止まり、林の中に数メートル四方に切り開かれた結界の四隅に渡された注連縄を摑んだ。
 引き千切られんばかりにたわんだ注連縄と竹の歪みは、一瞬引き絞られた後で開放された弓のようになり、天に放たれた途端に、風が大きく空を引っ掻き回し、あらゆる霊木が巨大なざわめきを反響させ、鳥たちと全ての獣たちは夜明け前の空に狂ったような叫びを上げた。

 結界の一方の端に立つ樫の木に、髪の長い細い身体がゆらりと浮かび上がっている。高く掲げられた両の手は結わえられて、樫の枝に吊るされていた。その身体は濃い色の着物を纏っているように見えた。着物の裾は重く、地面の重力に逆らいきれないように垂れ下がっている。
 その足がつくかつかないかの辺りの地面に、四角い板のようなものが置かれていた。

 そして、その樫の木と真の中間、結界の内側に。
 巨大な五芒星が描かれていた。

 真はたった今、自分は狂ったかもしれないと思った。泣き叫んだのか、高笑いをしたのか、あるいは何か別の形の興奮を覚えたのか、身体は全て外に向かって弾け出した。

 五芒星の形に重ねるように地面に横たえられた身体に、真は、おのれの命の全てをぶちまけるような勢いで摑みかかった。
 何かを叫んでいたのかもしれないが、もう耳は自分の声さえも聞こえなくなっていた。その冷たい裸体を抱いたかもしれないが、もう真の手は温度をひとつも感じなくなっていた。その光を失った目を見つめたかもしれないが、網膜は何の映像も結ばなかった。その血の気を失い陶器のように冷ややかな唇に触れたかもしれないが、ついに真自身の命の核も、身体の中心から突き上がって、唇の端から零れ落ちてしまったようだった。

 幾人もの人間の手が、真の身体を揺らしていた。振動にならない声や騒音が頭の上を飛び交っていた。木々の間から僅かに覗く白い天と真との間に、幾つもの強い光が錯綜している。
 脳は低酸素に喘ぎ、身体の隅々の血管は、届かない血液を諦めたように収縮した。

(第26章『戻り橋』了)




あれ? と思われたかもしれませんが、真はついに竹流のしっぽを捕まえました。
でも、実はまだ尻尾なんです。命を取り戻せるのか。あと少し、お付き合いください。

<次回予告>
「相川さん」
 呼びかけられた言葉に反応ができなかった。机の上に載せた両肘は震えて、指が折れるほどの力で組んだ両手は唇にがたがたと当たっていた。真は親指に我知らず、噛み付いていた。
「相川さん」
 二度目の声と同時に腕を摑まれて、真は我に返った。
「お会いになられますか。意識は全く戻っていませんし、直接面会できる状態かどうかは分かりませんが」
 真は今度こそ、すがるような思いで『河本』を見つめた。

次回から第27章『ずっとここに』です。お楽しみに!!
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Category: ☂海に落ちる雨 第4節

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コメント


ううむ

こんばんは。

相変わらず、わかっていたつもりで実はさっぱりわかっていなかったことを、二度読みしてから理解した私でした。

でも、幽霊猫のお話は探偵ものだけれど、これは探偵ものじゃないということははっきりしました。竹流の居所への手がかりは、推理ではなくてコロボックルを見る能力の方を使っているんですものね。

でも、真と竹流の結びつきから考えると、推理という理性に根ざすものよってではなくて、もっと深くてずっと底にある情動で探す方がふさわしいと思いました。たぶんここの描写が、(読んできたここまでの中で)一番訴えかけてくるのもそのせいかなと。

最後に出てきたのが、現実なのかそうでないものなのかが、この時点でははっきりしないのですが、それは続きを読めばわかるんですよね。

そして、深雪もちょろっとではなくて、かなり核心に近いところで関わっているのですね。まあ、いいや、私は謎解きは完璧に放棄して、続きを読むことにしましたので。

そろそろ竹流、助かるのかな。早く助けてあげてほしいんだけれどな……。
続きも、早めにお願いします。

あ、この作品とは関係ないことですが、2011年に行った晴明神社は(夜明ではなくて真っ昼間だったせいか)、当時の面影が全く感じられなくて戸惑いました。コンクリートやプラスチックを使っちゃいけないとは言えませんけれど、なんというか「昨日作りました」って趣で、ああなってしまうと「何かがこもっていそうな雰囲氣」はそがれますよね。たぶん人氣が出て、思い切って綺麗にしたんでしょうけれど。

八少女 夕 #9yMhI49k | URL | 2015/07/03 06:21 [edit]


うむむ

更新、お疲れ様でした。

これは……リアルでというより、象徴的なシーンだと考えた方がいいのでしょうか。
あの世とこの世の境目で、真の手がやっと竹流に届いた、と。和尚さんも、実体なのか幽体なのか狸(失礼)なのか、微妙に不明ですしね。
竹流を救い出したのは真の念に呼応した青龍や式神なのか、あるいは、大物がぞろぞろと動き出してさすがにヤバイと思った連中が竹流を放り出したのか。
いろいろと、勝手に解釈させていただきました。

これから物語がどのように収束していくのか、次話を楽しみにしています。

TOM-F #V5TnqLKM | URL | 2015/07/03 12:10 [edit]


うおおお

この回は今まで以上に緊張して、食い入るように読んでしまいました。
まさに大海さんの本領(いやまだまだ奥が深いと思うけど)をジンジンと感じました。
あの世とか彼岸とか幽玄とか、そんな言葉の当てはまらない真が肌で感じる空間と空間の狭間を垣間見た感じ。
あの清明神社も、昼間だと「あれ?」という感じなんだけど、この深夜、そして真の周りはすっかり古の妖気。神も鬼も式神も、ほんのすぐそばで真の感覚に寄り添って導いてくれてるようで、息をのみますね。

そしてようやく・・・。
結界の中に見たものがすべて実像なのかはこの段階では分かりませんが、 五芒星の上の体は彼なのですよね。実態にせよ幻影にせよ、もうすぐそこにいるんですよね。
ここで、竹流は生きるんだと知ってなかったらものすごく胃が痛むところでしたが、知っててよかった~。
それほど真の慟哭が伝わってきます。
真なんてもう、すぐにでも夜叉になりかねないですから。気が気じゃないです。
次回は、この状況がどういうものなのかはっきりわかるのかな・・・。

一度、字数を気にせずとことん思うまま、なにも削らずに表現してみたいな・・・と大海さんの作品を見て思うのですが、それでもやっぱりこの洗練された言葉の使い方は真似できないな。

そして白川通り。あの辺かな、龍泉寺、どこだろうと、思いをはせています^^

lime #GCA3nAmE | URL | 2015/07/03 21:53 [edit]


夕さん、ありがとうございます(^^)

わ。すみません、夕さん。二度読みしていただいたのですね……うぅ、確かに分かりにくいかもしれないと、自分でも思いました。あ、でもわからなくても適当に雰囲気を楽しんでいただけたら、それで十分かも。

この辺りは、どこまでが現実なのか幻なのか、わざと分からないように書いています。あの和尚さんのお寺の界隈はもう、魑魅魍魎闊歩宴会状態なので……京都の町の不思議感を前面に出させていただきました。【清明の雪】ほどはファンタジックなものは出てきませんが(^^)
読みようによっては、真が頑張って勘と記憶を頼りに、かつて来たことのある寺を足で探した!って感じにも取れるし(オショウサンはただの幻。あ、リナ姉ちゃんバージョンのままなのか片仮名になっちゃった?)、いややっぱり、和尚さんが式神を操って龍とか自分の幻影とかを出してきたとも取れるし。
どちらでもお好きなバージョンでお楽しみください(^^) 次回には、一応真以外の人の見聞きしたことは、少しだけ解説があります。そして、和尚さんが実は……ってのも。

> でも、幽霊猫のお話は探偵ものだけれど、これは探偵ものじゃないということははっきりしました。竹流の居所への手がかりは、推理ではなくてコロボックルを見る能力の方を使っているんですものね。
はい、この読みは大正解です(*^_^*) 居場所については、もっともっと謎解き風にしても良かったのですが、もう犯人が分かった時点で、うだうだしていても飽きるだけだし、この話の「竹流を探せ!」の部分はもういいだろうと。
それよりも、これから先の真の「怒り心頭」がどうなるのか、そっちの方が大事だろうと。まだまだ精神的にはハラハラすることが多いのですが、どうか応援してやってください。

> 真と竹流の結びつきから考えると、推理という理性に根ざすものよってではなくて、もっと深くてずっと底にある情動で探す方がふさわしいと思いました。たぶんここの描写が、(読んできたここまでの中で)一番訴えかけてくるのもそのせいかなと。
うぅ。ありがとうございます。あ、決して、手を抜いたわけでは無いのです(多分^^;)。推理だったらもっと面白かったかもしれませんが、書いている自分ももうこれ以上ややこしくするのに飽きちゃったので、後はもう事態を収拾させる方向へと突き進みます。この先、夕さんのおっしゃって下さる、まさに「情動」の物語になっていきます。
泣きそうになったり、笑いそうになったり、ツッコミたくなったり、あれこれすると思いますが(えっと、そんないいものじゃないか。一番の泣きのシーンは……次回かな? いや、私だけか。書きながら、わ、真が可愛い!と泣きそうになっていました。いや、単に滅多に可愛くないから……だな)

あ、深雪と澤田の話も、ちょっと泣かせる部分もあります。彼らもまたそれぞれの人生を生きていますので、ちょっとかっこいいエピソードも(蓮生家絡みで)出てくると思います。えぇ、もう謎解きは不要です。ただ、人生ドラマを追いかけてやってくださいませ!

> そろそろ竹流、助かるのかな。早く助けてあげてほしいんだけれどな……。
> 続きも、早めにお願いします。
うん。さすがに大海も、もうSに飽きましたので、必死で助けます!
次回の章は、今までになく短めなのですが、12000字あまり。2回に切るべきなのですが、内容がずっと繋がっているので、切ったらマコト状態に(「つづく~~~???」)なるかもしれませんが、早めに、アップしたいと思います。一応、この先真面目に、月・木更新を目指しているのですけれど。

そうそう、晴明神社、ちょっと「え?」な感じですよね。戻り橋も「え?」ですし。
でもまぁ、京都の「別次元」はそこかしこに潜んでいるということで……
コメント有難うございました!!

彩洋→夕さん #nLQskDKw | URL | 2015/07/04 07:11 [edit]


TOM-Fさん、ありがとうございます(^^)

すごい勢いで追いついてくださったTOM-Fさん、またまたありがとうございます!!
このシーンですね。そうなんです。ちょっと「京都っぽいだろ~」ってのを前面に出し過ぎましたでしょうか。まさに、リアルと非リアルの境界ぎりぎり、象徴的と取ってくださってもいいし、文字通りのまんまに取って頂いても読めなくもないし、って感じではあります。
次回に、何があったかはは他の人の伝聞で多少は分かりますが、真からしたら、もう現実だったのかなんだったのか全く分からんちんのとっちめちん、だったと思われます。
雰囲気を楽しんでいただいて、そう……
> あの世とこの世の境目で、真の手がやっと竹流に届いた、と。和尚さんも、実体なのか幽体なのか狸(失礼)なのか、微妙に不明ですしね。
まさにこの、TOM-Fさんのお言葉通りです! えぇ、実はタヌキだったんですよ!って、違うか^^; でもこの和尚さんの「実は……」は次回に事情が分かります。そして、第5節ではもっとはっきりと、和尚さんの有難さが分かるようになっています。只者では無さすぎて、ほんのちょろっと出て来るだけなのに、やっぱりオショウサン(リナ姉ちゃん風に)はすごいインパクトなんですね~。

> 竹流を救い出したのは真の念に呼応した青龍や式神なのか、あるいは、大物がぞろぞろと動き出してさすがにヤバイと思った連中が竹流を放り出したのか。
わお。この辺りも、ちょっとどきっとさせられます。さすがにストーンヘンジやタワーブリッジを吹き飛ばす作品の作者さま! 鋭いところを突かれます。実は、「もうほとんど死体だった」のをいいことに、最後の賭けに出た「彼」のお蔭で助かったのかもしれませんし、真の情念(「天城ぃごぉえ~♪」)だったのかもしれませんし、いや、自らの姿を模した式神を操った和尚さんのもののけパワー勝ちだったのかもしれませんし(#^.^#)
ある程度の事情は後に語られますが、色んな風に解釈していただけるのはとても嬉しいです。ちなみに、「奴ら」のボスは「ヤバいと思う」ようなまともな精神状態の人間ではなかったのですけれど……五分はないけど一分くらいの魂はあるようで、事情をまた語ることになると思われます。

> これから物語がどのように収束していくのか、次話を楽しみにしています。
はい、ありがとうございます(;_:) 頑張って更新します。
次章は短めではありますが、真の可愛さ(めったにない)をちょびっと楽しんでいただければ、と思います。
コメント有難うございました!!

彩洋→TOM-Fさん #nLQskDKw | URL | 2015/07/04 07:15 [edit]


limeさん、ありがとうございます(^^)

おぉ、ありがとうございます(^^) ちょっと、どうなってるのよ! って感じの回ですよね。これは特に狙ったわけではないのですが、真の立ち位置からはこんな感じだったのだろうと、自然にこんな展開・描写になってしまいました。真の立ち位置描写だったのが、皆さんに喜んでいただけたのかな……ありがたいです。
基本的に「真の一人称」って話じゃないので、サスペンス的に見どころは少ないのかもしれませんが、これ、一人称だったらもっとわけ分からんことになってましたね~。だって、真の一人称、人に理解してもらいにくそうじゃないですか。三人称だからこそ話が書けているのですけれど、ここは一人称に近い書き方に自然になっていたのが良かったのかな……ま、分析するようなものでもありませんが^^;
> あの世とか彼岸とか幽玄とか、そんな言葉の当てはまらない真が肌で感じる空間と空間の狭間を垣間見た感じ。
ほんと、真って、追い詰められたらこんなふうにあの世とこの世の隙間でばたばたするんですね。次回はそこから少しこっち側に帰ってきますので、その過程もお楽しみいただければと思います。

そうそう、晴明神社、きっと観光客をあれ? って言わせていますよね。でも、夜にこっそり一人で来てみたら、十分パワースポット感を味わえるに違いありません。夜の京都って、けっこう車の通行も多いけれど、あ、自転車もね、でもなんか、どこから来てどこに行くのかな~って不思議感がありますよね。
どうやらこれ、和尚さんパワーのようで……今回、この和尚さん、すごい瞬間出場なのですが、ものすごい仕事をしてくれたんですよ! それがはっきりするのは第5節の中でなんですが、あれから6年、ずっと二人を見守っていてくれたんでしょうかね。もちろん、寺に住んでいる小僧たちのこともね。

今回の場面の整合性については、一部は次回に、大筋はまた第5節で悪人どもの語りの中で確認できますので、そちらもお楽しみに! そうそう、崖に行ったら、悪人もしゃべらなくちゃね!
そして次回は、多分、わたし的に「(精一杯)可愛い真」の回です。あ、精一杯でこの程度か!って思われるかもしれません^^; 夕さんにもさっさと更新するようにコメをいただきましたので、早めにアップしなくちゃ(*^_^*)
いや、本当に、紙ものなら、気になったらず~~っと読めるのに……

> ここで、竹流は生きるんだと知ってなかったらものすごく胃が痛むところでしたが、知っててよかった~。
あ、ほんとですね。そうです、そうです。知らなくて読んでいただいていたら「死んだか~」って部分ですものね。この話、内容と登場人物の数の割には死者は割と少ない……かなぁ? 竹流はね、うん、大丈夫、生きてます。でもこれから、それはそれで大変なんですよね……何しろ精神力の塊みたいな人が打ちのめされたらどうなるって話になっていきまして……(これはむしろ、この物語の後で、のことですけれど)。
> 真なんてもう、すぐにでも夜叉になりかねないですから。気が気じゃないです。
う。はい、第5節では思いきり、夜叉になっています。周りはもう、止められない状態に……この辺りもぜひお楽しみに!

> 一度、字数を気にせずとことん思うまま、なにも削らずに表現してみたいな・・・と大海さんの作品を見て思うのですが、それでもやっぱりこの洗練された言葉の使い方は真似できないな。
え! いやいや、全然そんなことはないですよ。limeさんの表現力はもう、その引き出しの数と言い、洗練された感じと言い、素晴らしいのに……いや、これは表現のタイプの問題だとおもうのですよね。私って(友人曰く)「がしがし書く」らしく、多分読んでくださる方の迷惑顧みず、内容も表現もしつこいのかも^^; 
でも、自分流のスタイルってのがあるので、これってなかなか変えられませんよね。limeさん流はまた別のスタイルで、だからこそ、その違いが面白いのかもしれませんね~。私だったらここはこういう風に展開するけれど、これも面白いな~的な。

> そして白川通り。あの辺かな、龍泉寺、どこだろうと、思いをはせています^^
そうそう、limeさんにはなじみの場所ですよね! どこかですれ違っていたかもしれないあの場所。私、limeさんの大学から徒歩2分のところに住んでいたと思われます。ヤさんのおうちの裏に……^^;
【清明の雪】でこのお寺を書いた時には、名前も出ていなかったのですが(ここで初めて出てきたんです)、このお寺のモデルは以前どこかに書いたように、当時白川通り近くに住んでいた私の散歩道、詩仙堂~曼殊院界隈なのです(^^)
limeさんの想像の中にある、まさにあの辺り、ですよ、きっと(*^_^*)

コメント、ありがとうございました!!

彩洋→limeさん #nLQskDKw | URL | 2015/07/04 08:34 [edit]


青い炎が・・・? 和尚さんが・・・?
真の精神世界に入っていたのでしょうか。見ていたのではなくて、感じていたのですかね。で、見えたところで走った・・・?
感じるものを文章化するのは本当に難しいのですが、大海さんはさすがです。じんじん来ました。

そうか。このシーンはここではあれ?だったけど、後でよくわかるのですね。
やっとここまでと、やっとここから、が交錯します。
竹流はやはり声を聞かないと生きてるって実感がわいてこないですぅ~(T^T)

けい #- | URL | 2015/07/28 17:57 [edit]


けいさん、ありがとうございます(^^)

この辺り、現実と幻?が混沌としておりますね……青い炎はドラゴン(青龍)、京都の東の守りです。そして和尚さんは?? この和尚さんの登場のわけは、実は第5節の途中の珠恵の言葉で分かるようになっています。でも、今は、この幻と現実のはざまをお楽しみくださいませ。そう、竹流が見つかるシーン、きっと真にとってはもうどこまでが現実で、どこからが熱に浮かされていたのか、もう何が何だか分からないんだろうと思っていたので、自然にこんな形のシーンになっていました。実際に目に見えていたのではないのかもしれませんね。六感をフル回転しての竹流捜索、ようやく尻尾だけ、つかまえたようです。
何か感じていただけるシーンであったなら、とても嬉しいです!

次章では、あれ、現実の場面としてはそういうことだったのか、というのは他の人間の解説で分かると思いますので、そちらもお楽しみに。あんまり捻りはないのですけれど、何しろ相手は箍が少し外れた「猟奇的」連中ですから。
> 竹流はやはり声を聞かないと生きてるって実感がわいてこないですぅ~(T^T)
うん、そうですよね! まだまだ声は聴けませんが、真の超かわいいシーン(と、私の中では絶賛、でも皆様の反応は……微妙だったけれど^^;)が見られます。普段あまり感情を表に出さない子が……一緒に泣いてやってくださいませ。
次章もお楽しみに、そしてよろしくお願いいたします。
あ、けいさん、追いつきそうですよね…・・・・
コメントありがとうございました!!

彩洋→けいさん #nLQskDKw | URL | 2015/07/29 07:20 [edit]

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