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コーヒーにスプーン一杯のミステリーを

オリジナル小説ブログです。目指しているのは死体の転がっていないミステリー(たまに転がりますが)。掌編から長編まで、人の心を見つめながら物語を紡いでいます。カテゴリから入ると、小説を始めから読むことができます。巨石紀行や物語談義などの雑記もお楽しみください(^^)

 

[雨143] 第30章 巷に雨の降る如くに(1)姫君降臨 

【海に落ちる雨】第4節・最終章(第30章)『巷に雨の降る如くに』 の幕開けです。
そう言えば学生時代、ありがちなことですが、詩に嵌ったことがありました。その筆頭にあったのがランボーとヴェルレーヌ。この章題はヴェルレーヌの『言葉なき恋唄』の冒頭です。そう言えば、ノートに書いてあるジョルジョ・ヴォルテラ(大和竹流)の物語の何章めかの最終ページはランボーの『永遠』でした。
え? 自分では書かなかったのか? う~ん。どうやら短い言葉でぐっと感動を誘うのは昔から苦手だったようです。ま、長文でも残念ながらそんなに感動的なことは書けないのですけれど。
第30章は、大和竹流の怒涛の独白に至る章です。少し長めなので、ゆっくり参りたいと思います。
あ、プチタイトルはふざけました。ごめんなさい。

【海に落ちる雨】再開に向けてのキーポイント
【海に落ちる雨】登場人物



 一体、この状態で葉子と享志がやって来て、竹流が彼らに会いたいと思うのだろうか。
 真は、黙ったまま目を閉じている竹流の顔を暫く見つめていたが、問いかけることを諦めた。竹流からは静かで頑なな気配が伝わってきた。
 陽が高くなり、気温が少しずつ上がっている。カーテンを閉めに窓際に行き、ふと外を見た。雨の上がった後の地面からは、湧き上がるような湿度が充満している。木々の碧葉は、気紛れな雨と太陽の光線を受けながら、徐々に深みを増していた。

 カーテンを閉めて振り返ると、竹流が目を開けて天井を見つめていた。綺麗な青灰色の瞳は、この頃ようやく光がはっきりしてきたように思える。少なくとも、一見のところは以前の大和竹流に戻っているように見えた。
 おかげで会話は徐々に長く続くようになっているが、それでも、時々歯止めの利かなくなる感情は、真の知らないところでも周囲を混乱させているようだった。

 会話の途中で、不意に脈絡のないところへ繋がる。すっかり回復したように思って話していると、突然裏切られるといった具合だ。ただ、自分でそれに気が付くことが多くなって、ふと我に返ることも多くなっていた。
 会話の中では、意識的になのか、あるいは無意識なのか、核心を避けている。たまに身体のどこかの不調を訴えることはあるが、それでも彼が受けた傷が、その程度の訴えで済むようなものには思えなかった。
 この男は、それでもまだ弱みを見せまいと思っているのか。
 いや、覚醒している時はまだいいのだ。一体今、魂はどこを彷徨っているのかと思う。

「人に会うの、辛いんじゃないのか」
 竹流は不思議そうに真の方へ顔を向けた。
「困ってるんだろう?」
 あんたのほうが余程困ってるだろう、と言いかけて、真は息をついた。困っている、という感覚自体が竹流の認識の中にないのかもしれない。
「葉子はともかく、享志は」

 真は竹流と享志の接点が全く理解できなかったので、漸くそれだけ言って、先の言葉を失った。竹流は相変わらず不思議そうに真を見つめたままだった。
「お前が好きなんだ」
 真は省略された主語を考えた。竹流は真が理解していないことを察したのかどうか、ベッドに身体を深く沈めるようにしてから、目を閉じた。
「お前が好きだから、結婚したんだ」

 真は布団を掛けなおしてやろうとしたが、竹流は僅かな身体の動きで拒否した。そのまま竹流は暫く身動きひとつしなかった。その目尻に、涙の破片がカーテンを通した光で微かに橙に揺らめいた。
「仁さんは、あんたに何を言ったんだ?」
 その涙を目にした途端に、真の頭の隅に燻っている不安が膨れ上がってきた。

 もちろん、仁が真に告げた言葉が本当だとは信じていなかった。仁はもっと有意義な言葉を竹流に言ったに違いないのだ。だが、竹流は全く答えようとせず、ただ身体を強張らせたように見えた。
 沈黙のうちに、唇は紫に血の気を失ったように震え、やがて涙が目尻から耳まで伝うのを見ると、真は身体の芯が凍るような気がした。竹流はやはり感情の域値が随分と低くなって、簡単に零れだそうとする激情と闘っているように見えた。
「やっぱり、葉子たちに会うのは止めよう。彼らだって不安になる」

 真が竹流の耳に零れた水滴を拾おうとすると、竹流はその手を左の手で捕まえ、ただ力を入れて握りしめてきた。それ以上、彼にはどうすることもできないように思えた。そして、竹流は彼らに会いたいのだと真に告げた。真は理解できずに聞き返した。
「彼は、共犯者なんだ。だから、いいんだ」
 混乱した竹流が何を言っているのか、やはり真は理解でいないまま、わかったから少し眠ったほうがいい、と答えた。竹流はまだ暫く真の手を握っていたが、やがて仁が来る前に飲んでいた安定剤が効いてきたのか、静かになり、手の力が消えていった。

 昼間は熱が随分と下がっているのだが、夜になるとまた熱が上がった。傷自体はそれなりの速度で良くなっているように思えるが、身体の方は、その器に入った心ごと、逆にどこか壊れていっているように思えた。夜眠っているときは、何かとてつもないものに追われているように魘されることが多くなった。

 その夜、真は、何度も彼を起こそうとしなければならなかった。
 真が触れると、竹流は始め狂ったようにもがき、それから怯えて許しを乞うような不安な顔をし、真が声を掛けると漸く自分の今の状況を理解するのか、少し安心してまた目を閉じた。そんなことが何度も繰り返され、真は結局、一睡もできずに側に座っていた。

 共犯者というのは何の話だろうと思った。竹流を苦しめているものが、本当は何なのか、真はやはり十分に理解してやることができずにいる。まるでそれを理解できるのは、葉子や享志であるかのような口ぶりだった。
 随分とまともに見えるようになってきている反面、逆に混乱している時とのギャップは大きくなり、その落差が彼を更に苦しめているのではないかと思えてきた。
 そういう不安にかられると、竹流につかみ掛かって、具体的に誰に何をされたのか話させたい気持ちが込み上げてきた。それを聞けば、真が身体の内側に飼っている冷淡で残酷な塊に火がついて、多分引き返すことができなくなることも分かっていた。

 翌日、真は朝方、一度岡崎に戻った。ひと風呂浴びて待っている間に、和枝が弁当を作ってれて、それをもらって病院に戻ってきた。案の定、和枝は、旦那はんの食事は私の仕事と思っているようで、真が戻って来るのを待っていたようだった。
 昼過ぎに、本当に享志と葉子がやって来た。驚いたことに、美和も一緒だった。

 美和は二人の後ろに隠れるように立っていた。真は美和の顔を見たとたんに、ふと身体の力が抜けたような気がした。目で享志と挨拶を交わすと、直ぐに美和の傍に行き、思わず彼女の腕を摑んだ。
「大丈夫なのか」
 美和は頷いて、それから不安そうな顔をし、そして真に軽く抱きつくようにした。

 真は一瞬葉子の視線が気になったが、美和の感情の切れ端が見えるような気がして、遠慮がちに抱きついた美和を一度強く抱き締めた。
「怪我は?」
 美和は真から少し離れるようにして、くすんと一度鼻を鳴らした。それでも顔を上げた時、美和はいつも通りの元気な声で答えた。
「うん、全然大丈夫。井出さんが助けてくれたの」
「井出ちゃん?」
 美和は頷いた。

 無理をしなくてもいいのに、と思ったのが顔に出たのだろう。真の顔を見た美和は、しょんぼりとした様子になって目を伏せた。
「後で話そう」
 真はそう言って、享志と葉子を振り返った。
 葉子はさすがに少し痩せたように見えたが、精神的に参っているような不安な顔はしていなかった。

 真の不安は、葉子が実の母親の精神的な病気の素因を受け継いでいないかということだったが、彼女の顔を見ているとそれは取り越し苦労に過ぎないような気がした。
 葉子は昔のまま屈託のない笑顔で真に微笑みかけたが、竹流の怪我のことを聞いているらしく、不安を隠せないように見えた。それでも、幼い少女のようだったお姫様は、すっかり落ち着いた若奥様になり、その傍らに立つ享志は随分貫禄もつき始めて、天然ボケの性質までは変わったとは思えないが、男らしく逞しくなったような気がした。友人ながらに頼もしい気がして、真はこの男に葉子を任せてよかったと改めて思った。

「竹流さん、悪いの?」
 すぐに葉子が心配そうに聞いてきた。真の様子から彼女が何かを察したことは確かだろう。
 どう答えていいものやら、と思った。そもそも仁がどのようなことを伝えたのか、定かではなかった。今更、やはり会わないでくれとも言いがたく、真は病室に彼らを案内した。
「お兄ちゃん、疲れてるみたい。大丈夫?」
「ああ、俺は、適当に休んでるから」

 病室の前まで来て、真は改めて迷いながら享志と葉子を見たが、結局どうしようもないかと思って、彼らを中に招き入れた。
 美和に目を向けると、彼女はどうしようか、という顔をしたが、真の顔を見て納得したようで、結局一緒に病室に入ってきた。
 廊下の隅に、見かけたことのある北条の若い衆の顔がちらりと見えた。若い衆は真と目が合うと、厳つい顔のまま会釈をした。さすがに美和のボディガードとなると、仁も相当に覚悟のある者を選んでいる。

 扉を開けたとき、竹流はリクライニングのベッドに身体を預けたままながら、全く驚くほどの極上の笑顔を見せた。逆におかしくなったのか、と真は心配した。
「遠いところまで悪かったね」
 当然のことだが、葉子はかなり驚いたようで、駆け寄るように竹流の側に行った。
「竹流さん、大丈夫なの?」
「怪我だから、いつかは治るよ。今は多少辛いけど」

 一体どこにそのまともな頭の細胞が残っていたのだと思うほど、竹流は滑らかに言葉を継ぎ、無茶苦茶に心配そうな顔になった葉子に笑いかけた。何だってこの男は葉子の前ではこんなに頑張るのだろう、と真は思った。
 葉子は竹流の顔を見て安心したのか、今度は泣き始めた。慌てた竹流が彼女の髪に触れ、殊更に優しい声で話しかけた。
「馬鹿だな、大丈夫だよ」
「びっくりしたの、ごめんなさい」

 竹流の声は、誰が病人なのかわからないほどに落ち着いて、慰めるように優しく聞こえた。真に話しかけている時とも、珠恵に話しかける時とも全く違う、まさに姫君に傅く騎士の如く高貴で誇りに満ちた声だった。葉子は、自分を慰めてくれる竹流の包帯だらけの手を見てまた泣いてしまい、竹流はまた慌てて葉子をさらに慰めなければならなくなった。
 彼らの睦まじい様子を見ながら、美和が、取り残されたような不安げな顔をしているのを見て、真は美和を連れ、葉子を残して享志を外に誘った。

「悪かったな。こんな状況だとは知らなかった」
 病棟の待合コーナーの向かい合わせのソファに座った途端に、享志が話しかけた。
「いや、彼はお前たちに会いたいみたいだったから。怪我は随分良くなってきてるんだけど、まだ熱も下がりきらないし、あまり口に出しては言わないけど、痛みは酷いみたいだから、誰かに会ったら気も紛れるのかもしれない」

「あれは何だ? ただの怪我には見えないけど」
 真はただ首を横に振った。享志はさすがに、昔のように簡単に狼狽えることもなく、落ち着いた声で言った。
「それで、彼の叔父さんが来ていたのか」
「何で知ってるんだ」
「仕事関係で会ったという人がいたんだ。それより、お前も大丈夫なのか」

 そう言えば、富山コーポレーションの仕事のひとつにイタリアからの輸入雑貨を扱っている部門があって、竹流の叔父を知っているという話は聞いたことがあった。真が竹流のマンションで安寧に暮らしている間にも、享志は社会の中で立派な人間になっていっている、そう感じて真はまた取り残されたような気持ちになった。
 それでも、今更何かを後悔しているわけではない。

「あぁ、俺は」真は何と答えたものかと思った。「いわゆる看病疲れってやつだろう。自分の身体の調子が悪いわけじゃない」
 享志は少し複雑な表情をした。
「お前がついてるのか」
「うん、まぁ、ひとりにはできないし」
 真はそれ以上は何を言えばいいのかわからず、話題を振り替えた。

「で、どうしたんだ。仁さんの話じゃ、何か相談があって来たんだろう」
「こんな状況なら、日を改めたよ。一刻を争う話じゃなかったのに」
「でも、ここまで来たんだから話せよ」
「いや、こんな状況でお前に余計な心配を掛けたくないのに」
 美和が遠慮するように立ち上がりかけたので、享志がいいから座ってて、と声を掛けた。美和は心配そうに真を見る。真は頷いて美和を座りなおさせた。

「葉子のことか」
 享志はちょっと息を吐いた。
「いや、正確には俺たちふたりのことさ」
 一瞬真は不安を覚えた。だが、享志は落ち着き払っていた。
「別に仲が悪くなって、って話じゃないぞ。俺が浮気してるわけでもないし」
「じゃあ、何だ」
「結婚して二年半だ」
「それで?」
「まだ子供ができない」
 真は享志の真面目な表情を見た。

「俺の母親の性格は知ってるだろう。もともとこの結婚も快くは思ってなかった。昔から結婚して三年子供ができなかったら嫁は里に返すものだ、とまあこんな感じだ」
 確かに、享志の母親は一人息子可愛さのあまり、葉子との結婚には無茶苦茶に反対していた。豪快な性質である享志の父親がいなかったら、この結婚は成立していなかったはずだった。
 その上、享志の母親の血縁である小松崎りぃさと、花嫁の兄である真の恋愛沙汰は、姑の嫁への心象を恐ろしく悪くしているはずだった。

 りぃさのことは、享志も葉子も何も言わないので、真のほうも敢えて謝ったこともないが、特に享志がどう思っているのかくらいは確かめておいたほうがよかったのかもしれない。小松崎りぃさは享志の従姉で、富山一族の鼻つまみ者であり、その女性と花嫁の兄の恋愛事件が富山の一族に与えた悪印象は、享志をこそ追い込んだかもしれないのだ。

「本気か」
「まさか。あの家にいたら、ストレスで子供どころじゃないだろう。ちょっと斎藤先生に相談にのってもらったけど、結局、俺たちあの家を出て別居することにしたんだ」
「別居?」
「ああ、葉子と俺が、じゃないぞ。親たちとだ」
 真はほっと息をついて、改めて享志の顔を見た。

「俺は子供の時から住んでる家で、あんまり感覚がなかったけど、葉子には結構なストレスだったかなあ、と思う。始めっから何で別居しなかったんだろうな。俺、お前に申し訳なくって」
 申し訳ないのは自分のほうだと真は思った。どう考えても、葉子の状況を追い込んだのは、享志ではなく真のほうだった。
「プロポーズしたとき、絶対に彼女を守るって、お前に約束したのにな」
「でも、葉子が同居でいいって言ったんだろうが」
「そうだけど、でも、本当はさ、不安だったんだと思うよ。俺が気づいてやれなかっただけで。まぁ、そんなで俺が父親に相談したら、今度はあの親父のことだから、そりゃあいい、早々に出ていけ、とけしかけられてね。何でもっと早く言いださないかと思っとっただってさ」

「それで、その報告にわざわざ?」
「うん、住むとこ探したり、引越の準備したり、色々しなきゃならないけど、仕事も忙しくてなかなか進まない。かといって親父が母親に断言した以上、何か葉子を昼間ひとりであの家に置いとくのも可哀想で、本人は大丈夫って言うけどさ。親父はああいう人だから、言い出したからには自分で責任を持て、ってわけだよ。かといって仕事の手を抜くことは絶対許さない人だし、しかも、明後日から俺、海外出張なんだ。で、その間葉子を預かってもらえないかな、と思ってさ。こんなときに、悪い」
「いや」

 真は、そもそも自分が足を引っ張ったことだと思うと、何とかしなければならないと思った。だが、たとえ東京にいても竹流のマンションに居候している状態だし、この京都では居候よりももっと始末の悪い状況で身動きがとれない。
 しかし、一旦病室に帰ると、竹流が既に葉子から事情を聞きだしていたようで、真に言った。
「東京に帰れないか、医者に相談してくれないか」
 真は呆気にとられて竹流の顔を見つめた。
「それは、結構無理な話だと思うけど」
「じゃあ、珠恵に話してくれ」

 完全に無茶苦茶なのも気がついていないようだな、と思った。だがそれが自分の妹のためだと思うと、本当なら有り難いと思わなくてはならないはずだった。
 それに仁の言うとおり、お姫様が見張り役という状況はある意味歓迎できることもしれなかった。仁は、真も見張られる対象に数えていたようだが、真にしてみれば、竹流が本当にまだ手を引く気ではないというのなら、葉子に竹流を見張らせておくのは実に効果的だといういう気がした。
 そうすれば、真は安心して『狩り』に出て行くことができる。
 ただ、夜な夜な魘される竹流を、葉子が見て何と思うか、それはひどく気に掛かった。

 しかし実のところ、葉子を守ると決めたことで、竹流がこの苦しい事態を、何よりも精神的に乗り越えてくれるのかもしれないと、真は幾らか期待した。いずれにしても辛いのは仕方がない。
 真は、自分が側にいても役に立っていないことは重々承知していた。この不安な精神状態では竹流をひとりで放っておくことはできないと思うものの、自分がここにいることが何の助けにもなっていないことを、真は痛みのように感じていたのだ。

 葉子なら、何か別の形で竹流を救ってくれるかもしれない。多分魘される竹流を見ても、葉子は彼女なりに受け止めて精一杯面倒を見ようとするだろう。葉子の持つ根源的な強さは、誰よりも竹流が知っている。それは、彼の女たちの誰よりも、竹流にとって力になるような気がした。

 竹流は真の存在を忘れたように享志に話しかけ、今日は岡崎に泊まっていくように勧めていた。享志は明後日から海外出張だという事情を伝えていたが、竹流はそれを聞いているようで聞いていない。
 その会話の空気を見つめながら、真はこの二人の間に真が知っていた以上の親密さを感じて、違和感を覚えると同時に、何か真に知らされなかった事情があるのだろうと思った。

 ようやく竹流は真に顔を向け、和枝に電話して享志と葉子を泊めるように伝えてくれないか、と言った。
 電話を掛けに行く時に、真は、ほとんど何も話さずに自分の傍を離れない美和の腕を取り、一緒に病室を出た。そして先に電話を済ますと、真は美和を誘って、病院の外へ出た。

(つづく)





そうそう、享志は「どこかの御令嬢との政略結婚」を避けて、葉子が卒業した途端にさっさとプロポーズして、世間様に既成事実を作ってしまったのです。だから、彼らはまだまだ若くて、まだ少し大人たちに翻弄されている部分もあります。
そして、「姫様」の前ではやたらと頑張る大和竹流。
この真シリーズの総論として、以前にも書いたような気がしますが、以下のような会話にすべてが集約されています。
「お月様取ってきて」
「分かりました、姫君」
「お兄ちゃんをよろしくね」
「分かりました、姫君」
そう、この男は姫の頼みなら、たとえ月でも太陽でも、取りに行くのです。自分の女が言ったら「あのな、月はここから38万4400kmも離れていて……」なんて理屈を言いそうですが、姫の言うことなら聞いてしまう^^;

<次章予告>
「聞いてるのか?」
 真は、竹流が何を確認したのか、分からなかった。
「聞いてるよ。そんな人が京都にいるとは、一緒に住んでても知らなかったけどな」
「馬鹿言うな。何でお前にそんな話ができる?」
「あぁ、必要のないことだよ」
「お前、何言ってるんだ」

何故か、わが友を萌えさせたこの会話……噛み合っていない会話って、面白い……がるる(いや、その噛むじゃない)
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Category: ☂海に落ちる雨 第4節

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コメント


竹流は夜な夜な同じ夢を見ている・・・?
病人の薄化粧は無駄なこと。

よりによってまた色々な事情が絡み合いますね。
竹流の周りに人が集まってきて、真がフリーになりやすくなる、な流れ?
美和ちゃんも絡んでどう展開していくのか。
まだまだ来そうな一山二山を楽しみにしています。

けい #- | URL | 2015/09/10 20:18 [edit]


な~んだ

更新、お疲れ様でした。

竹流、お姫さまが現れたとたんにピンピンしてるじゃないですか。なんだよ、さんざん心配させといて。
あ~あ、もう、いるんだよなぁ、こうやってお姫さまを甘やかしまくるヤツが(笑)

冗談はさておき、相当な無理をしてでも、がんばっちゃうんですね。ほんとうに葉子は「特別な人」なんですね。無理した反動が、こないといいけど……。
お姫さま、か。なんかちょっと分かりますね、そういうの。でも、いきなり東京に戻るとかは、さすがにどうかと。
葉子が相手じゃ、真もほかの人も、ヤキモチの焼きようもなさそうだし。あ、でも珠恵さんはどうなんだろ……やっぱり、大丈夫なような気がする、たぶん。
享志は、北海道オフのお話を読んだあとだけに、いささかギャップが(笑)
難しい立場なのに、葉子をしっかり守ろうとしているあたりは、いい男ですね。まあでも、ああいう立場の人間も、一筋縄ではいかないことが多いですからね。今後の活躍に、期待してます……って、出張に行っちゃうのか。
お姫様ご一行の影で、ひっそりと真に甘えている美和ちゃんが、いじらしかったです。

次話のかみ合わない会話、その前後が楽しみです。

TOM-F #V5TnqLKM | URL | 2015/09/11 19:37 [edit]


けいさん、ありがとうございます(^^)

うん、この頃の竹流、一体どんな夢を見ていたんでしょうね。
竹流視点がここまでないので、真から見た「強がっている」「何かを隠したままの」竹流ですから、内面は身体と同じように心も記憶も沸騰していると思われます。それでも、もうこの人は「心頭を滅却すれば火もまた涼し!」って人ですし。
所々で綻びが出ているようですが、まだまだ踏ん張ります。はい、姫が出てきましたからね、姫の前では女たちを前にした時よりもはるかに頑張りますからね。まったく、超・ナイト気質なんです。

> 竹流の周りに人が集まってきて、真がフリーになりやすくなる、な流れ?
あ、ばれましたね。そうなんですよ。このままだと、真は竹流を放っておけないじゃないですか。珠恵は真に多少遠慮もしているし、その上、彼女自身が事情に巻き込まれていますからね(真とタメ張るくらい、この人も怒っているのかも)、傍にじっとしていないし、今の竹流は24時間、誰かの付添が必要な状態だし。
これで、真をフリーにすることができます。
そして、美和ちゃんは、まぁ、そんなに事件にはこれ以上絡みませんが、背後ではいつも支えて糸を引いて?いるかもしれません。でも彼女もね、実際にはか弱い女子大生なのです。少しだけ、彼らの会話もお楽しみください。
この章も、なかなかどっしりしていますので、この先もよろしくお願いいたします(^^)
あ、次回は、萌え萌え真と竹流の会話?(??)
コメントありがとうございました!!

彩洋→けいさん #nLQskDKw | URL | 2015/09/12 10:34 [edit]


TOM-Fさん、ありがとうございます(^^)

ははは^^; 竹流ったら完全なるナイト気質ですから、女が現れてもびくともしませんが(甘えてるし)、姫が来たら「ピシッ」となっちゃう、これはもう条件反射ですよね。竹流にとっての葉子は「恩人の一人娘」=「わが娘も同然」であり、何でも話せちゃう「唯一無二の親友」でもあります。だからね、姫が言ったら「たとえ火の中水の中、仏の御石の鉢でも蓬莱の玉の枝でも火鼠の裘でも龍の首の珠でも燕の産んだ子安貝でも、何でも取ってきますよ!」ってやつ。「お月様取って」「了解!」って二つ返事ですよ、きっと。」
> あ~あ、もう、いるんだよなぁ、こうやってお姫さまを甘やかしまくるヤツが(笑)
そうそう、だからこのお姫様、どんどん素っ頓狂になって来たのかも知れません^^; だいたい、お兄ちゃんに女の虫がつくのが気に入らないからって「竹流さんは許す!」ってどんな短絡思考?ってことなのですけれど。
あ、珠恵は、きっと全然気にしていませんね。だって、彼女のライバルは真(なんで?)。姫ではないのです!?
姫のために無理した反動はすぐに来ちゃいますが、これで真がフリーになりましたので(竹流の付添から解放)、ついに復讐劇が……真よ、どこへ行く?ってので、この先もお楽しみくださいませ。

> 享志は、北海道オフのお話を読んだあとだけに、いささかギャップが(笑)
あはは~。そうそう、享志って、あの七不思議のシリーズとはかなりギャップがありますね。でも、もうあれから10年経っていますからね、社会にも出ているし、いい男になっているんですよ。あの当時「いい人なんだけれど、どこか残念」の評価でしたが、今は評価が上がっているのでは……でも、相変わらず「どこか抜けている」らしく、最後の方で仁との会話で暴露されるという^^;
美和ちゃんと真の会話はまた次回、お楽しみくださいませ!
あ、噛み合わない会話^^; いや、これ、男女なら微笑ましいのかも? 私は本当に何気なく書いたのですけれど、友人が萌えてくれたので、あ、そうか、確かにこれはちょっと○○なんだな~なんて。でも、なんだよ、こいつら!って思うかもしれませんが、笑ってスルーしてやってください。
次回もお楽しみに!!コメントありがとうございました!!

彩洋→TOM-Fさん #nLQskDKw | URL | 2015/09/12 11:26 [edit]


ふふ

今回は、何だか少しほのぼのとした気持ちで読んでいました。
竹流が、かなり自分を取り戻してきたように見えるのに、真の前では気が緩むのか、妙に噛み合わない(笑)

気になるのが、「お前が好きだから、結婚したんだ」って言葉。
諸語はどうした! って、真じゃなくても突っ込みたくなりますよねw
どっちにも取れるし・・・。ねえ。

そして、享志たちの心配事というのが、そう言う系の話だったとは!
この物語の闇が大きいので、「そんなこと?」と一瞬思ってしまいましたが、現実世界では本当に深刻ですよね。
何がって・・・、分からず屋の石頭のお姑の居るところに嫁いでしまった新妻の悲劇。(享志のママさん、奏絵を見習いなさい)
竹流や真の姫に、なんてことを!!と、つい怒りが。なんだか他人事とは思えない。
でも、それを報告&相談に来るには、やはりちょっとここは場違いな気も・・・。

ところが、どうした竹流! そんなにニコニコ・・・。
竹流にとって葉子は本当にお姫様なのですね~。真もびっくりするくらいw

さあ、葉子が来たことによって、真が少し自由になるのですね。
良い事だったのか、悪い事だったのか。
次回も楽しみにしています。

lime #GCA3nAmE | URL | 2015/09/12 18:03 [edit]


limeさん、ありがとうございます(^^)

あ、今回、ほっとしていただけましたか! そうか、あんまり意識していませんでしたが、うん、この大変な事態に「え? そんなこと?」って感じですよね。いや、享志も言っていましたが、そんな事情なら改めてで良かったのに、って感じですよね。
起こっている自体があまりにも日常からかけ離れているので(いえ、実際にはそんな世界が隣では展開しているのかもしれませんが)、でも日常はむしろこういうことでじたばたしているんですよね。
そんな部分が交錯することで、日常と(一見)非日常の危うい線が浮き彫りになったらいいなぁ~と思います。

享志のママは別に悪意はないのでしょうけれど、まぁ、ありがちな姑の姿ですね。
享志は大事なひとり息子だし、他の楽しみがないのかも。それなのに、どこの馬の骨とも知れない嫁が来ちゃって、肝心の旦那(享志のパパ)は、いい意味で比較的鷹揚な人なので、「いいじゃないか! 息子が選んだんだから! でも、息子よ、自分で解決しろ!」って人ですから……享志も頑張るしかないですしね。
享志のママと葉子は、真が殺人の疑いを掛けられた辺りでは関係がますますこじれて、結局葉子は富山家を出て行くんだけれど、晩年は意外にも関係修復する予定です。先の予定ですけれど。

竹流と真の会話、なんで噛み合わないのかしら? う~ん。きっと言いたくても言えないことがいっぱいあるんだろうなぁ。そうして話せないうちに、だんだん言葉が役に立たなくなってきて……がるるる……(だから、その噛むじゃないって!)

> 気になるのが、「お前が好きだから、結婚したんだ」って言葉。
> 諸語はどうした! って、真じゃなくても突っ込みたくなりますよねw
> どっちにも取れるし・・・。ねえ。
はい、こちらは、主語がないと分かりにくいですよね(^^) でも、実はあんまり大したことはなくて、えっと……答え合わせはこの章の最後のほうにあるかな……取りあえずその時にまたご確認くださいませ(^^)
竹流の姫に対するデレデレ度は、もう「なんなの、この男は!」って感じでしょうけれど、多分、誰を前にするときよりも「いい恰好」をしたいんだと思います。その一方で、意外にも「究極のところで頼りにしているのかもしれない」って面もあります。姫は、最後にすごいパワーを持っている可能性がありますものね。

> さあ、葉子が来たことによって、真が少し自由になるのですね。
> 良い事だったのか、悪い事だったのか。
そして、まさにその通り。ここら辺を書いている時、このままじゃ、真が病院で竹流とデレデレしてるだけじゃん!ってちょっと焦っていたのです。病院という、ある意味非日常の中にいると、それはそれで納得してしまう感じになりますものね。
何よりも真がフリーで動けること(しかも、竹流を安心して任せられるのは、真にとっては葉子しかいないんですよね)、そして、何となく竹流が元気そうに見えることで復讐心が萎えそうになるので「もっと追い込んでくれる状況」が必要なんです。
それは苦しんでいる竹流を実際に見ること、そして、ターゲットが確認されること。
これからそこに向かって突き進みます。あ、またそんなことやこんなことが?って展開になりますが、さらり~と読み流してくださいませね!
コメントありがとうございました!!
引き続きよろしくお願いいたします。

彩洋→limeさん #nLQskDKw | URL | 2015/09/13 10:46 [edit]

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