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コーヒーにスプーン一杯のミステリーを

オリジナル小説ブログです。目指しているのは死体の転がっていないミステリー(たまに転がりますが)。掌編から長編まで、人の心を見つめながら物語を紡いでいます。カテゴリから入ると、小説を始めから読むことができます。巨石紀行や物語談義などの雑記もお楽しみください(^^)

 

[雨147] 第30章 巷に雨の降る如くに(5)愛しさと罪の原点~18禁~ 

【海に落ちる雨】第4節・最終章(第30章)『巷に雨の降る如くに』 その(5)です。今回は18禁とさせていただきます。とは言え、甘々ラブラブなラブシーンは期待しないでくださいませ(あ、期待してませんね)。
今回から4回(もしかしたら切り処の都合で3回になるかもしれません)、竹流の怒涛の独白になりますが、ベースのエピソードの半分は既に始章の『邂逅~アレルヤ‐予言~』で登場しており、また真の方からは第2節の『若葉のころ』などの回想シーンで何度か出てきているエピソードです。それを竹流の側から見るとこんなことに……
何はともあれ、引かずに読んでいただけると嬉しく思います(^^) 何しろ、竹流は大まじめですが、冷静になって考えてみると、なんだか必死に言い訳しているみたいで、ちょっぴりおかしいのです……恋は盲目? ま、そうとも言います。
*参考→ラス=カサス

【海に落ちる雨】再開に向けてのキーポイント
【海に落ちる雨】登場人物



 真に初めて会ったとき、竹流は不思議な既視感に襲われた。
 この世に存在する方法が分からず戸惑っているような、それでいて原始の生命力に溢れた綺麗な生き物が目の前に現れたように感じ、神は彼の前に、間違えて別の世界の生き物を落としてしまったのではないかとさえ思った。そしてその時一瞬にして、竹流は既視感の理由を理解した。
 それは彼が僅か八歳の時に与えられた本に書かれた、現実の地獄の光景だった。まさにそれこそが、竹流が心と身体の中に持っている罪の原風景だった。その罪は、古くから血の中に受け継がれてきたもので、彼自身が犯したものではなかったが、彼はそれを背負って生まれてきたようなものだった。

 ラス・カサスの書いた地獄絵は、スペイン人がアメリカ大陸に渡り、虐殺と略奪を繰り返してきた歴史を、スペイン人司教が自国の罪の告発のために、もしくは記録のために書いたものだった。竹流の叔父は彼に厳しい帝王学を授け、彼に自分の力と心で考えることを教えてきた。幼い頃から教科書代わりだったダンテが描いた地獄図と、白人が遠い大陸で犯した罪の絵図は、そのまま彼の頭の中で癒合し、荒れ狂った。

 真に初めて会った時、竹流はスペイン人たちが初めて異郷のインディアンたちを見たときの感覚とはこのようなものだったのではないかと思った。彼らは自然の中のあらゆるものに神を見出し、自然を支配するのではなく共存していた。彼らはまた、自分たちは自然の一部にすぎないことを知っており、滅びを恐れながらも滅びを受け入れるという、西洋人の価値観とはかけ離れた世界の中に生きていた。

 この野蛮で文明を知らない生き物に教育を授け矯正することは、神が彼に与えた使命だと思えた。それからずっと、真を厳しく教え諭してきた。真は竹流に従い、竹流の知識を吸収し、そして大人になった。
 それでも時々、突然に太古の自然に帰ろうとするかのように、真はこの世から零れてしまいそうになる。竹流の教えを守りながらも、時折、自然のままに生きようとしていた昔を想い、あの懐かしい世界に帰ろうとするのだ。竹流がそれを嗜めると、真は混乱し、それから自分が悪かったと認めて、また彼を頼ってきた。

 そんな時、竹流は本当に良い気分を味わった。そう、彼は思い通りにならないはずの野生動物を手懐けたのだ。そして、その可愛い生き物は、どれほど遠くへ放っても彼の手の上に必ず戻ってきた。竹流は教育という名前の調教の楽しみを味わいながら、時々弄ぶように真を空に放ち、手元に返ってくると褒めてやった。

 珠恵は、旦那はん、この頃楽しそうどすな、と言った。
 恋でもしたはるんどすか。
 竹流はそうかもしれない、と答えた。それでも珠恵以上に彼を慰める存在は他にはない、他の何を失っても珠恵を失うことだけはないと、心の底からそう思っていた。

 珠恵に初めて会ったときから運命を感じていた、というような生易しいものではなかった。
 興味のない顔をしつつも、偶然を装ってみたり、さりげなく雨の日に迎えに行ったりしながら、竹流はいつか必ずこの女を自分のものにすると思い続けていた。まさに十代の学生のような恋をしていたのだ。珠恵が以前から世話をしていた染谷和枝の料理の腕を知ってからは、彼女に取り入るべく弟子入りし、和枝と珠恵が住んでいた古い町家に出入りしては、女将に怒られたこともあった。

 女はその場で口説き落としてベッドにまで行くような付き合い方しかしてこなかった竹流にとって、全くあり得ないほど回りくどいやり方だったが、実際に、珠恵とは「あの日」まで手を握り合ったこともキスを交わしたことさえもなかった。
 あの日。珠恵に良い筋からの縁談の話があり、珠恵の母親代わりであった女将が大乗り気であると知ったとき、竹流は、後から思い出しても滑稽なほどに慌てた。珠恵を娘のように思っている女将は、竹流の気持ちを知っていて、特に結婚や女の幸せという意味では、珠恵にとって、大和竹流が決していい相手ではないと思っていることはわかっていた。

 あの日、女将は結婚を渋る珠恵に、理由を問い詰めていた。その時、珠恵は真っ直ぐに女将を見つめ、好いた人がおるんどす、せやから結婚はできしまへん、と答えた。本当のことを言えば、それが自分の事だという確信は、その時まで全くなかった。それまで一度も珠恵は、竹流に是という気配を見せたことがなかったからだ。
 だが、ただたまらなくなって部屋に飛び込んでいき、珠恵の目を見た瞬間、竹流は自分の恋が成就したことを知った。何もかも引き受けたと思った。竹流は畳に頭を擦り付けるようにして、女将に、この人を愛している、生涯不幸にはしないと誓った。

 あの時、竹流はこれから先、珠恵以上に愛する女はもう現れないという確信を抱いていた。それは決して間違いではなかったし、十代の若者のように純粋な恋をした結果、その恋を成就した深い満足に酔ってさえいた。
 だが、それが逆らえない必然だったのかどうか、まさにその同じ年に、竹流は真に対して、自分の欲情の赴くままにしてしまった。

 珠恵との恋の成就は竹流の心を満たしているはずなのに、その一方で、何かの拍子に別の人間の顔がちらつくことに気が付いていた。一人でいて何かに集中しているはずの時でさえ、不意に他人のことを考えるという事態そのものに、竹流は不思議な感慨を覚えていた。
 もしかしてまた恋をしているのかと錯覚するほどだったが、竹流自身はその時自分の感情を楽しんでさえいた。
 性行為をしなくても他人をこれほどまでに可愛いと思えるのだという事実は、我が事ながら非常に興味深かった。その感情を自分で楽しみながら、時にはからかうようにキスをしたり抱き締めて眠ったりした。

 竹流が女しか抱かないと聞かされてから、真は親を頼る子猫のように全く無防備だった。こいつは完全に俺を馬か犬だと勘違いしていると思ったが、それさえも心地よく、新鮮な気分だった。まさに馴れない野生動物を手懐ける面白さを味わっていたのだ。
 勉強の面倒を見てやったのは成り行きでもあったが、教えたことを抵抗なく吸収する深い湖のような精神に、竹流自身想像もしなかった満足と喜びを感じたりもした。

 本を読んでいる時に真は、文字や計算式の中に無限の何かを感じ取って、ふと恍惚に陥るような瞬間があった。ある時、その横顔を見た瞬間に突然襲い掛かってきた欲望に、竹流は狼狽えた。それはあまりにもはっきりとした欲情だった。
 真はその時、竹流の視線に気が付いて戸惑ったように彼を見た。説明を求められていると思ったのだろう、困ったような声で答えた。
『何か、一瞬見えたような気がしたんだ』
 竹流が聞き返すと、真は幾分か照れたような表情で俯いた。

『あんたが言っただろう。微分ってのは、果てしなく変動するものを一瞬だけ止めて、その瞬間を切り出そうとすることだ、その法則を数式に表しているんだって。何だかその一瞬が、形になって目の前に浮かんだっていうのか』
 そこまで言うと、真は、言葉にするということ自体の混乱に捕まってしまったかのように、突然黙ってしまった。それでも、その視線は無限の瞬間を連ねる数式の上に、愛おしげに落とされていた。

 一体、その言葉や表情の中に何があったというのだろうか。竹流は身体の芯から、今直ぐにでも真を抱きしめたいと思ったのだ。
 いや、そんな曖昧なことではなかった。竹流の身体の中に、空虚に過ぎて明らかに今までその存在や質量を感じることができなかった空洞、その内側から立ち上ってきたものは、明らかに情動だった。もっとはっきり言えば、竹流は、今目の前にいて愛しげに数式を見つめている真を、この場で組み敷いてその身体に自分自身を突き立てたいと思ったのだ。

 その感情が何なのか突き詰めることも恐ろしく、竹流は目を伏せ、忘れようと思った。だが、女しか抱かないと言ってやってからはただ無防備な真は、竹流の葛藤などそっちのけで、本人は挑発する気は全くないのだろうが、時々心の内側を引っ掻き回すような幼く健気な、期待と希望に満ちた表情を竹流に向けた。

 光に照り返された明るい髪の色、本人はずっと気にしていた目の色も、未来への期待と希望の中では些末なことに過ぎなかった。その頬の内側を流れる血の色、この輝いた世界からの恩寵を全て宿したような唇の震え、竹流の言葉を聞き漏らさないようにと何もかもを受け入れている耳、その耳から綺麗な曲線で繋がっていく首筋の金の産毛、ひとつひとつが、竹流の欲情の対象になった。
 それでも、さすがにそれを真に突きつけるほど、竹流も理性の持ち合わせがないわけではなかった。

 その頃、真は本当に勉強を楽しんでいたのだろう。知らなかったことに出会う楽しさ、それを理解し自分の頭の中で再構築していく喜び、そして果てのない一歩先への期待感。真は具体的に宇宙を翔ける船のエネルギーを数式の上に描いていたに違いなかった。
 だが受験というシステムを前にすると、真は別人のように困惑し始めた。それを利用したという認識が、その時の竹流の中にあったかどうか、彼自身にもわからなかった。何とか保っていた理性らしきものは、真が誘うように叩いていた太棹三味線の絡みつくような音に、完全に持っていかれた。

 真の祖母の奏重は金沢の芸妓の家に生まれていて、彼女自身は民謡を生業にする家に養女に出されていた事情で、お座敷で奏でられるような唄よりも民謡を得意とした。よい声の唄い手で、頼まれて人前で唄うときには、『お祖母ちゃんと孫の共演』を披露するのが嬉しくて、必ず孫の真に三味線の伴奏をさせていた。
 真が高校生のとき、東京の民謡酒場で奏重が唄う機会があった。その時、真の三味線を聞いたある有名な民謡歌手が、よい伴奏はぴったりと唄に絡み付いてこちらの声を引き出してくれるものだが、この若者は唄どころか身体に絡みつくような三味線を弾く、下手な歌い手では唄が三味線に持っていかれてしまう、と言って唸っていた。竹流はそれを聞いて、自分自身の身体の芯が燃え立つような、これまでに味わったことのない明らかな欲望を覚えた。

 居ても立ってもいられないような気持ちだった。ただ自分の身勝手な想いを遂げるためだけに、真を大和の屋敷に連れ帰った。真がまともに生きていけるようにあれほど勉強の面倒を見てやったのに、受験のことなどどうでもいい気持ちになっていた。
 十代の若者が身体の欲望のままにやりたいばかりで、愛や恋やらという感情とは無縁なことがあるように、既に二十代も半ばを過ぎながら、竹流はどうやって目の前の獲物を彼の身体の下に組み敷くかということしか考えていなかったような気がする。
 それでも竹流は最後の理性と闘っていた。そもそもあの瞬間まで、女性以外に性的な興奮を覚えたことなど一度もなかった。竹流は自分の欲望と闘うように、目の前のイコンと格闘した。

 竹流が持っているイコンのほとんどは、彼自身の知り合いであったイコン画家の作品だった。まだ十代の半ばだった彼はその画家のイコンに衝撃を受けた。これは聖堂に飾るべきではない絵だ、と思った。イエス・キリストは明らかに神の恩恵を疑っていて、十字架に架けられた時にも絶望の表情を天に向けていた。だがその内に宿る深い悲しみと、民衆に理解されないという絶望の表現の直接的で重い響きは、竹流の身体のうちを引っ掻き回した。

 竹流は聖画の修復を学びながら、幼いときから心の内に溜め込んでいた後ろめたい気持ちの捌け口を求めるように、画家のイコンにのめり込んだ。その画家が聖職者でありながら、彼に邪な欲望を抱いていることを知ったとき、ただ弄ぶように画家を誘った。身体には触れさせたが、決して許さなかった。そして画家の描く絵はますます苦渋に満ち、竹流を興奮させた。
 ある時から画家は石像を彫り始めた。もうその時には画家の目は狂い始めていた。

 既にまともに生活ができなくなっていた画家は、石の中に眠っている彼自身の苦しみを掘り出すように食も欠き一睡もせずに石を彫り続け、もうこれ以上は掘り起こせないと思うところに来たのか、未完成のままの彫刻を抱くようにしてこの世を去った。
 死の瞬間においてさえも鑿を離さなかった画家が彫っていたのは、十字架に架けられたイエス・キリストだったが、その立ち姿や顔だちは、明らかに画家が愛したジョルジョ・ヴォルテラのものだった。そしてその目にだけは、画家の狂気に彩られた苦しみが、そのままの姿で宿っていた。

 彫刻は佐渡にある隠れ家の地下の礼拝堂に埋めた。恐ろしくて誰の目にも触れないように隠したのに、逆に、時々その目を見なければ、竹流自身落ち着くことができなくなった。罪人が己の犯した罪を確認することによって、自分の存在理由を確かめて安心する心理は、竹流自身にも不可解なくびきだった。
 だが、その杭を身体から抜き去ることはできなかった。時々自分自身の罪の瘢を見ては、震えて血を流すような思いで祈り、救われることがないということを確かめると、逆に救われたような気持ちになって佐渡の島から戻った。

 大和の屋敷には、画家が描いていたイコンを全て持ち込んだ。これが、誰か知らない者の目に触れることが怖かった。その一方で、焼くことも捨てることもできなかった。傷み始めても修復することもできなかった。それができるようになった時、竹流は自分を許せるかもしれないと思っていた。

 あの日、竹流はどうしてもそのイコンのキリストと対峙なければならないと感じた。本当は見てはいけなかったのかもしれないが、見ずにはおれなかった。だが、結局、イエス・キリストの欲望と苦痛と絶望を湛えた目に、竹流の感情はただ引っ掻き回されただけだった。
 そして、真が彼の過去に触れた僅かな言葉をきっかけに、ただたまらなくなった。真は竹流の複雑な感情には全く気が付かないままで、残酷なほど無邪気に竹流に話しかけていた。いや、残酷ではあったが、邪気がなかったわけではないのかも知れない。

 真が自分から話を繋いでいるなどということは珍しい。珍しいどころかほとんどあり得ないことだった。それはつまり、真が何かの気配に緊張していて、その感情の捌け口として言葉を繋いでいるに違いなかった。
 ただ黙らせたかったのだ。この無邪気で無防備な魂は、竹流の心の内にある空洞の存在を知っていて、そこに棲みつこうとしている。それをただで許すわけにはいかなかった。

 後からも真は何も言わなかったが、その表情には確信が見て取れた。要するに、明らかに竹流を誘惑したのだ。何かの拍子に触れた手は、一瞬にして滑車を回してしまった。
『滝沢基も、こんなふうに誘ったのか』
 真は何を言われているのかわからないような顔をした。それもまた無意識でありながら確信犯だったのかもしれない。
『俺はあの男のように慣れていないからな、少々乱暴でも辛くても我慢しろ』

 本当は身体ごと狂いそうになっていた。だから、押さえつけるような勢いで言葉を継いだ。真は驚いたような顔をしていたかもしれないが、竹流には記憶がない。
 貪るように求めると、真は竹流の背中に爪を立ててしがみついてきた。獣が食らいついてくるような痛みだった。爪を立てるなと言うと、真は言われた一瞬だけ竹流の背中に廻していた手の力を抜いたが、すぐにしがみついて爪を立ててくるので、結局竹流も諦めた。彼の背中は血が流れているのではないかと思うほどにきつく痛んだが、そのことはむしろ興奮に繋がっただけだった。

 真のことは何でも知っていると思っていたが、こういう癖があるとは知らなかったと思った。そしてその瞬間に、竹流は内側に巣くっている不可解な自分自身の正体を見いだした。
 ずっと余裕があって構えているつもりだった。出会ったとき、功に対して抱いていた誤解のゆえに真と睨みあっていた時にも、真が滝沢基に写真を撮らせていた時にも、勉強を見てやっている時も、竹流はいつも優位にいた。真が何をしていようと、どう思っていようと、竹流自身の感情は一定で穏やかなはずだった。
 それが、無意識に滝沢基の名前を口にし、真が写真家に見せたであろうベッドの上での癖を知って、嫉妬している自分に気がついたのだ。

 そうか、俺は嫉妬している。
 その単純な感情は、竹流がこれまでに抱いたことのない感覚で、人から聞くよりも書物に語られるよりも、遥かにどす黒い重みを持っていた。
 もちろん、真が滝沢に心を許していたわけではないのは分かっている。だが、この身体を何ヵ月もの間自由にさせていたのだ。しかもあの男は真の初めての相手で、恐らく真にベッドの上でのあらゆるマナーも手管も教えたはずだった。真が今見せている何もかもが、あの男と関わっていると思うと、気がどうかなりそうだった。

 嫉妬などという感情は自分とは無縁のものだと思っていた。そもそも今まで女に不自由したことはなかったし、その一瞬に愛を注げる相手はいくらでもいた。逆に言えば、彼にとっての愛は、ただひとつの例外を除いて、そういう類のものだった。
 その感情がどこかでひどく冷たく淡白であることを知っていたが、彼女たちを抱いている自分は非常に優しく愛情豊かな人間であるような気がしていた。少なくともそう思い込むことができるほどには、ベッドの上での彼は女性たちに優しかった。彼女たちに、抱きあう時以外の時間にも彼への愛や忠誠を求めたことはなかったし、彼女たちのほかの日常は竹流にとっては意味のないもので、嫉妬の対象にもならなかった。

 それなのに、この不可解な感情は何なのだろう。真はこのような潤んだ瞳で滝沢を見つめ、その男の背中に爪を立てて悶えていたのか。そう考えただけでぞっとした。
 ただその精神だけではなく、真の震えるような唇も湿っぽい身体も、吐息とともに漏れる熱い息も、全て自分のものにしたいと思っていることを理解したと同時に、これは彼が愛でている美術品でも歴史の遺物でもないことを知った。生きて何かを考え、彼に問いかけ語りかけている、対等の人間であることを、ようやく理屈ではなく身体の芯で認識したのだ。そして、これまでは、まるで同じ平面の上に立っている人間と考えていなかったことに、たった今気が付いた。

 あの暗黒の時代に、同じ人類でありながら、異なる人種を人間とは考えなかった先祖たちの心に突き刺さっていた悪魔の杭。それを抜き去ることができないままに、竹流は真に接してきていたのだ。だが、今目の前で竹流を見つめている碧と黒の複雑な瞳を持つ命は、明らかに確かな意志をもったひとつの魂だった。

 愛だとか恋だとかは思わなかった。たまらない気持ちだった。ただ、どうあってもこれを手に入れたかった。後から冷静に思えば、手に入れる方法はもっと他にあったのかもしれない。いや、あるいはもう彼は既にそれを手に入れていたのかもしれない。だがあの時は、他に方法などなかった。これを、一分の隙もないほど完璧自分のものにしたいという感情に支配されていた。

 実際には、もう何度も何度も繰り返しているキスをしながら、それでも竹流は最後までさすがに自分にそういうことが可能なのか、疑っていた。それは竹流が何とか冷静になろうとした無駄な努力の故だった。火遊びで男に抱かれたことはあっても、その行為に快楽を覚えたことはなかった。反対に自分が能動の側になって同性を抱いたことはなかったし、自分自身がそういう人種だとは思っていなかった。だが、ふと足を広げさせた時、ただ馬鹿みたいに冷静でいようとしているだけだと気がついた。

 無茶苦茶に興奮していた。竹流のものは、彼自身がこれまでに経験したことがないほどに硬く大きくなり、痛みすら覚えるほどだった。真の身体にこれをねじ込み、溜まったものを全て吐き出してしまわなければならなかった。竹流は真の舌をちぎれるほどに吸いながら、もうこれ以上我慢していられなくて、そのまま相手の中に分け入ろうとした。
 真は一瞬に身体を緊張させて、何か喚いて逃げようとした。だが、竹流の方はもう離すつもりも待つつもりも、大体そんな余裕もなかった。竹流は、自分にこれほどに残酷で乱暴な力が出せることに驚き、自分自身も引きちぎられるほどの痛みを覚えながら、その時には泣き喚いていた真の頭と肩を押さえつけて、準備のできていない身体をただがむしゃらに貫いた。

 竹流の脳は一晩中、あらゆる種類の快楽に溺れ続けた。
 そこにあったのは愛かもしれないが、ただ痛めつけ、苦痛に耐える顔を見ていたいという暗い喜びであったかもしれなかった。愛しさの裏には強烈な支配欲があり、竹流は、自分だけがこの組み敷いた身体に何をしても許されるのだという快楽を、背中で感じ続けていた。指を一本ずつ舐め、どこか頭の隅ではこの指を噛み千切ろうと思っていた。肌理の細かな肌に歯を立て、熱を帯びて腫れ上がっている粘膜を狂ったように擦った。それは震えるほどの悦楽だった。

 真は痛みと苦しみに耐え、血を流しながら竹流を受け入れていた。その表情は竹流が女を抱いているときには決して見ることのない顔だった。身体のつくりが女とは違っていて、苦痛を伴わずに彼を受け入れるための器官が真に備わっているわけではない、ということは理解していたはずだったが、その苦痛を取り除いてやるだけの準備をする余裕は、竹流には全くなかった。
 竹流を受け入れている真の器官は狭く、彼の熱を帯びて硬く大きくなったものでいっぱいに満たされると、もう潤滑油になるような一分の隙間もなくなった。真は何度も失神していたようだが、狭い器官の中の襞は竹流の欲望に擦られて発赤しながら、驚くほどの意志を持って彼を銜え込み、吸い尽くし、ひたすら貪欲に彼を欲しがった。
 竹流は何度も達して身体中の精液を全て与えつくし、最後にはもう何も出せなくなっても興奮し続けていて、ひどい苦痛を覚えるほどになったが、それでもまだ何とかして身体を合わせていたいと思った。

 その時、竹流は真を完全に支配したと感じて、一晩中己の欲望に甘んじ、ただ求め続けた。真の方も逃れようとしたのは始めだけで、途中からは竹流の身体の下で我を失くし、狂ったように喘ぎ続けていた。
 竹流は、その日まで彼がしていた性行為が、ほとんどうわべだけの快楽だったことを認めざるを得なかった。そこには苦痛など全くないものだと思っていたからこそ、彼は女たちに優しくしてやることができたのだろう。だが、これは全く苦行に近いものだった。

 いく種類かの生物が、子孫を残す性行為の後に死を迎えたり、時には雌が雄を食い殺すような行為に走ったりする理由が、竹流には今理解できるような気がした。
 鮫は海で生きている生物の中では珍しく交尾をするが、雄は雌の身体の中に性器を挿し入れながら、雌の身体に鋭い歯で噛み付いているという。本来ならば神々しい営みであるはずの子孫を残すための行為に、それほどの苦痛を強いる根拠は一体何だというのだろう。
 だが、今、竹流はその理由を腹の奥で納得した。理解したわけではなく、ただ了解した。そして真も、動物的本能でそれを知り、痛みと共に彼を受け入れているのではないかと思えた。

 翌日になって我に返ると、一体自分は何をしたのかと思った。
 それでも、後悔の念よりも深い充足と安堵の感情が竹流を満たしていた。真は傍らで子猫のように身体を丸めて眠っていた。まだ身体が興奮しているのか、呼吸が幾らか速く、唇はやはり軽く喘いでいるようにも見えた。
 竹流はゆっくりと布団を剥いで、その身体を見つめた。それは神が作り上げたまま、いや、自然が進化の錯誤の結果として産み出したままの完全な形をしており、不意に竹流は強い感動を覚えた。

 その時、竹流は自分が真の親であるような錯覚、いや確信を抱いた。親はきっと生まれ落ちたわが子を見て、生命が太古の昔から紡いできた遺伝子の旅を一瞬に思い描き、深く心を動かされるのだろう。
 その指の一本一本、髪の一筋一筋に、生命の螺旋が密やかに、四十億年の音楽を奏でている。

 ふと真の髪に触れたとき、竹流は自分の左の薬指に指輪がない事に気が付いた。
 どういう感情の表れなのか、真は昨夜、竹流の指輪を捥ぎ取ろうとした。竹流が自分で指輪を抜いて真に手渡すと、暫く真は指輪を見つめ、ベッドの下に捨て去るように放り投げ、そして明らかに誘うような目で竹流を見た。
 竹流は、こいつは何故指輪のことなど気にしていたのだろうと思いながら、ベッドを出た。その時不意に、真の足の間にねっとりと伝う白い粘液が視界に入った。

 それは、これが綺麗ごとなどではないと、竹流を責め諭しているように見えた。一晩中もう吐き出す欲望がなくなるまで求め続けた瘢を、竹流は暫く見つめ、真の足に触れ、彼を喜ばせ続けて傷ついた器官に指を挿れ、その内側を確かめる。真の唇はまだ興奮で赤みを失っておらず、眼瞼は軽く痙攣したように見えた。
 真は微かに喘ぐような息を吐き出し、無意識のまま竹流の指を締め付けるようにして、震えた。男を受け入れた経験があるとは言え、それはもう随分と以前の話で、真がそういう行為に慣れていないことは十分に分かっていた。

 シーツには所々に血の瘢が残っていて、真は眠っているというよりも失神していたのだろう。ボクシングや幾種類かの格闘技を教え鍛えてやっていた身体は、決して細っこいだけの華奢なものではなかったが、とはいえ、真の身体は竹流よりもずっと小さく頼りない。
 それを思うままに犯したのだと認識したとき、いく種類かの体液のにおいを微かに鼻粘膜で受け止めながら、竹流は覚悟を決めたような気持ちになった。

 こいつは今はもう完全に俺のものになったのだと思い、優しくしてやろうと考えた。これまでもその心を所有している気持ちがあったことは否定できないが、この身体まで完全に支配したのだと感じた。ここまで傷つきながらも彼を受け入れて、それでもなお傍を離れることがない存在だと、全く疑うこともなくそう思っていた。

(つづく)





皆さんが期待されているような独白でなかったかもしれませんが、これだけ溢れるような竹流の声はなかなか聴くことができませんので、じっくりお楽しみいただければと思います(^^)
(ラストの方にもう一度だけでてきますけれど)
少し長いでしょうか。実は10000字余りあるのです。次回も実は切り処に困っています。切りのいいところに収めると、あと2回で13000字あまりと12000字あまり、という計算です。3分割にするか……う~、でも、やっぱり感情が入るシーンだけに、切りにくいなぁ。
何はともあれ、次回はトニー(竹流の親友、だけど、ねこ)と真の楽しい会話から始まります。え?

<次回予告>
『俺は子どもの頃、俺が王子だったら人魚姫を泡になんかしない、と思ってたな』
 真は竹流の腕の中でゆっくりと顔を上げた。碧の目はベッドサイドの明りを吸い込んで静かに搖れている。
『俺はきっと選び間違えたりしない、と思った。だけど、あの物語の残酷なところは、人間のお姫様のほうも本当に王子を愛していて、優しくていい人だってところなんだ。でも、俺は、人魚姫を泡にしないことのほうが大事な仕事に思える、と言った。俺を育ててくれた人は、それならそれがお前の仕事だと』
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Category: ☂海に落ちる雨 第4節

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コメント


うん

いや、期待通りの独白でした。
今までに断片として聞いてきたものを、ここで一気にまとめ上げてくださった感じで、納得しながら読んでいました。
竹流の事を、最初はものすごく複雑なものを抱えている遠い人だと思っていましたが、こうやって見ると、本当に自分の欲望にストレートに生きている人(男)なのだと・・・あ、こう言ってしまうといろいろ語弊がありますが(><)、私にはすごく納得な過去の感情でした。
竹流を通してみる真って、さらにいいですね。
純真な部分と無意識の魔性の美が混在していて。
いやもう竹流。とんでもない生き物と出会っちゃったんだなあ・・・と。
珠恵姐さんには少し嫉妬してたんだけど、これを読んで安心しました。

この感情をすべてストレートに真に伝えていれば、もっと二人は幸せだっただろうに。
それは出来なかったんでしょうね。それは竹流のプライドなのか、それともやっぱりどこかで真を支配しておきたい感情があったのか。
竹流は親の感情だと言ったけど、やっぱりどこかにサディスティックな感情が強くありますよね。
でもだからこその2人です。これでちょうど釣り合ってるんですよ。

そうか、佐渡のあの場所には、そんなものが埋められていたのですね。既出だったらごめんなさい。
竹流にとって特別な場所だという事も、わかりました。

今回はかなり濃厚な独白でしたが、さらに濃厚な語りが続くのですね。
心して待っています!

lime #GCA3nAmE | URL | 2015/10/04 03:28 [edit]


そっか

こんばんは。

おぼろげながら「そうかな」と思っていたこと、やっぱりそうかと納得したみたいな感じでしょうか。
竹流の願いは「真を独占すること」に集約できるのかなあ。でも、それは、できないからより強く求めてしまうのかなと思ったり。

もし珠恵が前夫なり、他の男なりの方を見ていて、全く振り向いてくれなかったら、彼ももっとなりふり構わず珠恵を追うんだろうな。でも、彼のものになってしまって、どこにも行かないと確信しているから、ああいう扱いなのねと、これまた納得。

竹流が受けた拷問の中で、もっとも辛かったのは、他の人間にやられている真が感じちゃっている映像だったんでしょうけれど、そうなると「復讐に行ってきます」状態の真、またつかまって二の舞になりそうなその状況は、第二の拷問みたいなものなんじゃないかと。そういえば止めるかな、真。いや、やめないか。

八少女 夕 #9yMhI49k | URL | 2015/10/04 03:49 [edit]


うひゃあ

更新、お疲れ様でした。

キリスト教徒にとって、神の下で平等なのは同じキリスト教徒だけ、ということですな。竹流はそんな価値観を、もうDNAレベルで刷り込まれているのですね。

竹流は真のことを、そんなふうに見ていたんですね。
あ~、でもなんかわかる気がしますね。手なずけて、突き放して、それでも自分のところに帰ってくることを喜ぶ。精神的にも肉体的にも、圧倒的優位にあると思っていたのに、ふとしたことで自分と対等の精神と肉体をもった存在だとわかってしまった。その瞬間に、竹流に根付いていた価値観が爆発してしまったと。やはり竹流は支配する側の人間なのだと、改めて感じました。

それにしても、ヘビーですね、今回は。
相手に対する征服欲って、相手が異性でも同性でも、肉体的にも精神的にも同じことになるんですねぇ。今更のようですが、新鮮でした。
竹流と真の関係って、やはり簡単なようで難しい。いや、じつはすごくシンプルなのかもしれませんが、男性と男性だということで話がややこしくなっているような気がします。衝撃のベッドシーンにすっかりあてられて、うまく言葉にできません。

竹流が珠恵にプロポーズしたくだりは、意外性がありましたね。なんだ、竹流にも可愛いところがあるんですねぇ。竹流、もう、珠恵さんだけでいいじゃん(笑)
真もね、異性に素敵なお相手がいるんだから、無理目な相手を求めなくても……。
でも、そうか、それがないとそもそもこのお話が存在しないか。

次話、ネコとの対話も楽しみですにゃあ(笑)

TOM-F #V5TnqLKM | URL | 2015/10/04 11:13 [edit]


limeさん、ありがとうございます(^^)

> いや、期待通りの独白でした。
あ、そうですか! 良かった(*^_^*) いや、良かったとか言うところではないですね。今回のところはある意味すでに周知の事実ではあるのですけれど(竹流が自分で賢二とかに白状してたし)、でも登場は初めて。いや、これって男女の恋愛小説ならもうハッピーで仕方がないってだけのシーンになるし(逆に生々しいシーンになるか)、BLでももうちょっとラブラブ感満載なシーンになるはずなんだけれど、あれ? って感じですね。うん、まぁ、いいか!(って、とりあえずマコト化する)
もっとラブラブな恋愛小説なら良かったかもしれませんが、これって所詮そんな話じゃないし……
limeさんはいつも「みんながついてきてくれるかな」って心配されていますよね。でも私の方がもっと心配……このシーンも隠そうかと思ったのですが、この先まだ微妙なシーンがいくつかありますので、ここで隠してもな……って、ちょっと開き直っておりました。でもアップしてから、あの竹流が辛かったシーンよりももっと恥ずかしいシーンだと気が付きまして。
え~っと、ま、いいか!(って、やっぱりそれ?)

> 竹流の事を、最初はものすごく複雑なものを抱えている遠い人だと思っていましたが、こうやって見ると、本当に自分の欲望にストレートに生きている人(男)なのだと・・・あ、こう言ってしまうといろいろ語弊がありますが(><)、私にはすごく納得な過去の感情でした。
ありがとうございますです。竹流って何でも器用にこなす人なのですが、本気の時だけは不器用ですね。珠恵に対しても真に対しても、大事な人間に対する態度がなっていません。珠恵のことも、決して真の次、とか思っているわけではなくて、まるで別の次元で大事なのです。多分、珠恵が去って行ったら狼狽えると思います。それにおとーちゃん(チェザーレ、本人は叔父だと固く信じていると思うけれど)に対する気持ちだって、素直じゃありませんものね。
真への気持ちは……単純に愛とは言えないので、こういう複雑な表現になるのですけれど、う~ん、皆さん引かれるかなぁと今もちょっと心配しています。あ、でも、limeさんだけは大丈夫と確信していましたよ(*^_^*)(何で? いや、それは……ごにょごにょ)
竹流はやっぱり一神教の影響を受けていますので(というのか、その申し子みたいなもの)、原始的な生そして性のあり方にはどうしても抵抗があって、でもそういう在り方があるのは本人も古い文明を研究するなかでよく分かっていて(日本じゃなくても)、でも自分はそこには嵌りこまない、とタカをくくっていたんですよね。それが真のせいで覆されちゃった。これはもう「悪魔に出会ってしまった」感覚かもしれません。真はただただ「素」なのですけれど……でも、モラルのレベル、低すぎますね。
竹流が真に自分の感情の全てをぶつけるのって、本当に難しそう。でも、それができないところも含めて竹流なのかもしれませんね。そして、どうしても支配者気質だってところも。生まれもって恵まれているし、しかも教育が全て帝王学ですから、仕方ないですよね。真の方もそれはもう分かっちゃってるし。珠恵も多分、色々分かって受け入れて、あくまでも受け身のふりをしてくれているけれど、実はちゃんと掌で転がしてくれていると思います。

> そうか、佐渡のあの場所には、そんなものが埋められていたのですね。既出だったらごめんなさい。
> 竹流にとって特別な場所だという事も、わかりました。
はい。うん……既出だったかなぁ? えっと、あの場所は出てきましたが、そこまではっきりとは書いていなかったかもしれません。その特別な場所だってことは、多分、竹流の仲間たちはみんな知っていますが、真は知らなかったと思います。

> 今回はかなり濃厚な独白でしたが、さらに濃厚な語りが続くのですね。
> 心して待っています!
ありがとうございます! はい。もう少し続きますが、多分「え?」ってのは独白の最後の方に登場します。そしてそのことにいちばん深くかかわっているのは享志だったりして。
何はともあれ、引き続きよろしくお願いいたします。コメントありがとうございました!!

彩洋→limeさん #nLQskDKw | URL | 2015/10/04 17:17 [edit]


夕さん、ありがとうございます(^^)

> おぼろげながら「そうかな」と思っていたこと、やっぱりそうかと納得したみたいな感じでしょうか。
> 竹流の願いは「真を独占すること」に集約できるのかなあ。でも、それは、できないからより強く求めてしまうのかなと思ったり。
はぁ~(ほっと溜息)、実は結構「意を決して」のアップ記事となりました。出来事については竹流が賢二にも白状していたので、既出の事実なのですけれど、そこに伴う感情は……うん、ただの「ラブラブ~」じゃありません。これって説明するのが難しくって、上手く表現できているのかどうか分かりません。でも「愛情」と一面だけで見て欲しいとは思わなかったんです。時にはまるで反駁することもあるし、お互いに受け入れられない面もあるし。それでも、受け入れちゃってるので、是とか非とかじゃなくて、「そこに在るから登る」山みたいなもの?

> もし珠恵が前夫なり、他の男なりの方を見ていて、全く振り向いてくれなかったら、彼ももっとなりふり構わず珠恵を追うんだろうな。でも、彼のものになってしまって、どこにも行かないと確信しているから、ああいう扱いなのねと、これまた納得。
う~ん。それも確かにそうですね。あるいは逆に「頑張れ」って応援しちゃうかもなぁ~。竹流って、複雑でよく分からないのですよ(うちのキャラだけれど、謎も多い(^^))。
反面、確かに自分の方を向いてくれなかったら、珠恵に必死になっていて、真どころではなかったかもしれませんね。でも釣った魚には餌をやらない、のではなくて、それはそれでとっても大事なんですよ。その大事さは、他の女に対するのとは全然違う。
珠恵に対する態度はちょっとひどいでしょうかね~。でも、あれでお互いに深く理解しあって、大事に思っていて、そして生涯その愛情は変わらないと確信しているんだと思います。これもまた、不思議な男女の愛情の機微ですよね。
はっきり言えているのは、2人とも、「君さえいれば他に何もいらない」とは思っていないということ。真のことが無くても、竹流はいずれローマに帰らなければならないと思っていただろうし、珠恵は祇園を離れることはないと町を愛している。珠恵は特に、彼以前に結婚もしていますし、既に男女の愛が脆いことも知っている。
2人とも、其々の義務に忠実に生きている相手を尊敬して愛しているのだと思うのです。

> 竹流が受けた拷問の中で、もっとも辛かったのは、他の人間にやられている真が感じちゃっている映像だったんでしょうけれど、そうなると「復讐に行ってきます」状態の真、またつかまって二の舞になりそうなその状況は、第二の拷問みたいなものなんじゃないかと。そういえば止めるかな、真。いや、やめないか。
あ! あ~えっと~、うん、そうですね!(何を狼狽える?)
いや、まさにそうなんですけれど、夕さんはこういうのに相当抵抗がおありだろうなと思いつつ、ほんと、申し訳ないと思いながらいつもお話をアップしております。いつか呆れらないかしら、引かれないかしらと心配しつつ……(>_<)
でも、まぁ、真のコンセプトが「原始的な感覚の持ち主」ってところなので(ワイルドってわけじゃなくて)、これはもう、仕方がないですよね。竹流のおかげでずいぶんまともに育ったはずなのに……、そういう扱いを受けると本性って出ちゃうんですよ。だから竹流はものすごく衝撃なのかも。ちゃんと正しく教育したはずなのに……(そして、それによって、自分がそこに引きずり込まれる罪を犯さなくても済むようにしているはずだったのに)
でも、私たちはすっかり一神教の影響を受けてモラルを大事にするようになったけれど、そもそもの原始ってもっと性的には開放的で残酷な面もありますよね。あるいは、シュメールなどの時代においても、神殿の巫女ってのはそういう存在だったとも言われいてるし、多様な神の中にはそういう神もいるし、何だか掘り下げると人間の存在の根源に触れて行くことになるのかなぁ。
っても、これが犯罪となると話は全く別ですけれどね(と、そもそものテーマに立ち返り憤りを覚えるのでした)。

さて、夕さんご指摘通り、二の舞になりそうなことをしてほしくない!んですけれど、真もあの時ほど「やられっぱなし」じゃありませんからね……竹流はまだ真が自分の身を守れないと思っているかもしれませんが、実は真自身が恐れているのは「怒りに我を忘れた自分は何をするか分からない」という点。つまり自分は人殺しの息子だと思っている点なのです。
果たしてどうなるのか。それはまた第5節をお待ちくださいませ。
いつもありがとうございます。そして、ちょっと恥ずかしい展開にもお付き合いくださり、ありがとうございます(*^_^*)

彩洋→夕さん #nLQskDKw | URL | 2015/10/04 17:51 [edit]


TOM-Fさん、ありがとうございます(^^)

おぉ、本当にこんなところへさしかかってしまってすみません(>_<)
皆さま、あの大変なシーンを乗り越えて? 読んでくださっているので、この辺は大丈夫かな、とも思っていたのですが、アップしてから自分で読んでみると、前の部分よりも妙に恥ずかしいシーンでした^_^; 当人同士だから、というのもあるのかもしれません。
きっとラブラブな恋愛小説を求めておられる人たちには、まるきり受入れがたいよな~って思ってしまいました。でももうこれ、こんな話なので仕方ないか!と開き直っております。

> キリスト教徒にとって、神の下で平等なのは同じキリスト教徒だけ、ということですな。竹流はそんな価値観を、もうDNAレベルで刷り込まれているのですね。
うん。これはもう、竹流は育った環境的にも民族的にも「神に選ばれた」側の人間ですものね。天の神への絶対的な信仰を持ち、現世における神の代理人からは認められ、そして彼にとっての現実世界の神(チェザーレ)からは盲目的な愛情を注がれ……自分を「正しい」と思わずに育て、ってほうが無理ってものです。
それがもう、真に会ってからは調子が狂いっぱなし。何しろ、始めに噛まれましたからね! 「え? こいつは猿?」って竹流は思ったに違いありません。本当はね、そんな環境で育っても聖人のような彼は、猿っぽい真に対しても素晴らしい愛情を……なんてお話になるべきなんでしょうけれど、そもそも目的はその葛藤なので、これも仕方がありません。
(やっぱり開き直る^^;)

> あ~、でもなんかわかる気がしますね。手なずけて、突き放して、それでも自分のところに帰ってくることを喜ぶ。精神的にも肉体的にも、圧倒的優位にあると思っていたのに、ふとしたことで自分と対等の精神と肉体をもった存在だとわかってしまった。その瞬間に、竹流に根付いていた価値観が爆発してしまったと。やはり竹流は支配する側の人間なのだと、改めて感じました。
ありがとうございます。うん、もうまさに、こういうことなんです。
二人の関係、美化するつもりはありません。素晴らしい愛情たっぷりの関係だとも思っていません。愛情なのか何なのか、本人たちにもわけ分かっていなくて、竹流に至ってはそういう行為自体が愛情というよりも完全に情動というレベルで動いちゃって、自分でいささかパニック。ものすごく熱烈に想い合っていることもあれば、北極?ってくらいに冷たく反駁していることもあり、理解できなくて離れることもあり、そんなこんなを乗り越えて、DNAが何世代か荒波に揉まれた後でようやくの詩織とロレンツォです。(ちゃんちゃん!)

> それにしても、ヘビーですね、今回は。
ううう(>_<) す、すみません。いや実は、これってBLとか同性愛とかに比較的慣れた(変な表現だな?)年代・性別のものにとっては「ま、この程度」って話なのかもしれませんが……実のところTOM-Fさんに受け入れていただけるかしらと不安いっぱいでありました。だって、この話、かなり異質な部分が多いですから。もっともBLってのは男女の恋愛と同じように素敵な恋愛小説ってスタンスみたいなので、この話は全然あてはまりませんが。
あ、別に真と竹流って2人の組み合わせが恋愛かどうかって話に集約されているのではなく、その生まれ持った立場や葛藤の根源も含めてなのですが……

うん、真は美和とか、将来の奥さんとかで満足できんかったんでしょうかね。竹流はどうして珠恵だけで満足できなかったんでしょうかね。あるいは、真が女だったら? うん、多分その場合は、この話の半分以上のエッセンス、エピソードは無くなっていているんだろうな~。もしも男女だったら、立場の違いはあっても、こんな葛藤はありませんよね。ハーレクィーンロマンスになるだけだったかな。それに竹流は相手が女性だったら、こんなひどいことはしません。でもそれじゃ、なんだ、ただのラブラブじゃん、ってことに^^;
う~ん、別に恋愛小説を書いているつもりじゃないので……う~ん、でもちょっと恋愛かもしれないし??
想い合うって、本当に、奥が深くて、難しいですね。えっと、衝撃のベッドシーンでしたか? う~ん、やっぱりそうかぁ。一方的にやられてた時はただの暴行って感じでしたが、今回はやっぱりベッドシーンですものね。でも、うん、そうなんですよ。二人の世界には綺麗ごとばかりじゃない、むしろ思いの深さと反比例するような後ろめたいものがいっぱいあるんですよ。
綺麗なシーンじゃなくて、本当にすみません。でも耐えて読んでくださって本当に感謝です。

> 竹流が珠恵にプロポーズしたくだりは、意外性がありましたね。なんだ、竹流にも可愛いところがあるんですねぇ。竹流、もう、珠恵さんだけでいいじゃん(笑)
> 真もね、異性に素敵なお相手がいるんだから、無理目な相手を求めなくても……。
> でも、そうか、それがないとそもそもこのお話が存在しないか。
ほんとに、ほんとに、全くもってその通りです。いやいやいや、本当だ。なぜ珠恵だけじゃダメなんだ??(笑)
真もね、本当にね~。人間ってどこまで行っても現状に満足しない生き物なんですね。

> 次話、ネコとの対話も楽しみですにゃあ(笑)
えへへ。トニーはこのお話のキーニャンコですから(え? そうなの?) マコトのようにはしゃべりませんけれど……マコト以上に相手の表情は読んでいるかもしれません。
何はともあれ、あれこれ驚かせてすみません。でもいつも読んでくださってありがとございます。
コメント、ありがとうございました!!

彩洋→TOM-Fさん #nLQskDKw | URL | 2015/10/04 19:16 [edit]


出逢いから来ましたね。始章のところを思い出します。
実家(?)からこれだけは、というものを持ち込んでいるのですね。それもいわくつき。
珠恵さんとのくだりは真視点では全く分からない部分でしたね。なるほどです。

そして真とは・・・
物欲でも精神欲でもなく。独占欲でも支配欲でもなく。
そもそも、欲、というものではないですね。
ただこうなのである。みたいな。
これは映像だと、セリフのない遠いBGMだけの流しになるのでしょうかね。(どんなBGM?)

次はどのようにDNAが流れていくのでしょう。
何万文字でもOKですよ~。なんなら、一気に終わりまで^^

けい #- | URL | 2015/10/05 17:35 [edit]


けいさん、ありがとうございます(^^)

> 出逢いから来ましたね。始章のところを思い出します。
はい。独白って、事件の内容? と思わせちゃっていたかもしれません……そうそう、ちょっと私の書き方が曖昧でした。この男、今起こっている事件については「まだ」語る気はないみたいです。で……そうなんですよ。出逢いの部分から来ました。始章の部分を思い出していただいて何よりです(^^)
逆らってはいるけれど、彼はあくまでも骨までキリストの教えに忠実なる男ですから、真には理解できない部分で相当に葛藤しているはずで……いやいや、聖人でも何でもありませんから。でも彼の立場は常に「問いかける側」。この辺りはまた第5節をお楽しみにお待ちくださいませね(^^)
珠恵とのラブストーリーは結構純情だったのですよ(^^) 珠恵が年上で、竹流にとって高嶺の花ってのもあったのですけれど(だって、竹流にしてみたら異文化の中にいる深窓の令嬢みたいなものですし)……いや、本気になったら結構初心なんですよ。

> そして真とは・・・
> 物欲でも精神欲でもなく。独占欲でも支配欲でもなく。
> そもそも、欲、というものではないですね。
> ただこうなのである。みたいな。
うぅ。こちら、ありがとうございます。読み取っていただいて感謝です。なかなか言葉にはしにくいんですけれど、実はこの次のお話で真が……なことになっているのですけれど(って、まるで分らん^^; あ、次作では何と、結婚している)、もうね~、ありのままで~って感じを出せていたらいいなぁ。この男、犯罪的なことはしないけれど、我が身については本能の赴くままってところがあったりします。竹流はそれが嫌なんだと思います。でも、これはもう、DNAだから仕方がないですよね。それなのに、引き合っちゃった。出会って拓けた運命はある意味では過酷ですよね。

> これは映像だと、セリフのない遠いBGMだけの流しになるのでしょうかね。(どんなBGM?)
えへへ~、誰か作曲してくれないかな~。でもラストシーン~タイトルロールはB'zのCallingで!

> 何万文字でもOKですよ~。なんなら、一気に終わりまで^^
ええええええ~、ほ、ほんとですか? 実は次回、ちょっと長いので2回に切るかどうかまだ迷い中。
予約投稿にはなっているのですが、けいさんのお言葉でちょっと勇気が?
そうなんですよ、感情の流れがあるから、あまり切りたくないシーンってあるのですよね~
もうちょっと迷います(^^)
コメント、いつもありがとうございます!!

彩洋→けいさん #nLQskDKw | URL | 2015/10/06 07:00 [edit]

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