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コーヒーにスプーン一杯のミステリーを

オリジナル小説ブログです。目指しているのは死体の転がっていないミステリー(たまに転がりますが)。掌編から長編まで、人の心を見つめながら物語を紡いでいます。カテゴリから入ると、小説を始めから読むことができます。巨石紀行や物語談義などの雑記もお楽しみください(^^)

 

【物語を遊ぼう】18-3.探偵役の造形~探偵は風~ 

【物語を遊ぼう】18-2.キャラの魅力~探偵役の造形~に続く話題。
そうそう、もうカテゴリ【雑記・小説】と【物語を遊ぼう】の違いが自分でもわからなくなってきちゃいました。なので、本当に適当です。小説についてのいろんな話題がどちらにもあれこれ詰まっていますので、よろしければカテゴリからお楽しみくださいね。

今回、探偵役の造形について、その2を書くに至ったきっかけは……ケーブルテレビで市川昆監督・石坂浩二主演の横溝正史シリーズをずっとやっていまして、ことごとく見てしまったのですね。そこで石坂浩二さんのインタビューコーナーがあって、探偵役(つまりここでは金田一耕助)のキャラ像について語られていたのです。

原作を読んだのはもう○十年前。そこに描かれていた金田一耕助像についてはちょっと記憶が曖昧で、その後に見た映画やドラマのイメージに引きずられちゃっているかもしれません。そもそも石坂浩二さんは7代目くらいの金田一耕助で、それまでは結構二枚目で、あんなマントにぼさぼさ頭の金田一ではなかったそうで。
そこで石坂浩二さんが金田一のキャライメージについて市川昆監督に尋ねたところ、「金田一耕助は風なんだよ」。

風? つまり探偵役は事件のドロドロに染まらず、通り過ぎるだけという立ち位置、って意味のようです。金田一は物語の主人公ではなく、主人公はあくまでもドロドロを生み出したり、どろどろに巻き込まれている○○家の人々。だから彼の立ち位置は(外見はともかく)「風」なんです。

そもそも、金田一は桃さん(桃太郎侍)よろしく「しまった!」ってな感じで、全然事件を未然に防げていないし、大概犯人は毒をあおったり飛び下りたりあれこれで死んじゃうし。職業的には探偵としては役に立っていないみたいに見えることもあります。もちろん、物語の最後に謎解きはしてくるので小説的には十分役にたっていますが、大体主要人物は死んじゃっていますしね。
でも、彼が主人公ではないと言われると、あ、そうか、と納得です。

金田一は○○家の人たちに感情移入をすることなく、むしろ事件の成り行きの方に興味を覚えているようで、自分が事件に巻き込まれたり「誰かを守らなければ!」というヒーロー的義務も持たない。まるで読者と同じ立場ですよね。そういう立ち位置で、最後は風のように去っていくのです。
市川昆監督の映画の最後では、いつも金田一は経費だけを受け取り(謝礼は断る)、見送りの人を躱して(見送りされるのは苦手なので)、列車にこっそり飛び乗って去っていってしまう。「不思議な人だったね」と周りの人に好印象を残して……

あ、そうか。探偵小説における探偵の役割はやっぱり「事件の語り部」であり、自分は「事件に振り回されない」ってことなんだな、としみじみ。いや、前回の結論とは少し違う方向ではありますが。
そもそも○○家の事情なんて、もうそんな事情の家がどこにあるんだろってくらいすごい世界だけれど、そのどろどろを見せられた後でも映画の印象が陰湿ではないのは、金田一の「風」的存在感のおかげ、なんだろな。

この○○家。これは日本の映画ならではのドロドロぶりだそうで、海外の映画ではどちらかというとつながりは「横」。恋人とか職場関係とか、家族にしてもせいぜい2世代ほどの世界。でもこの百年単位の怨念渦巻く血族の「縦」のドロドロは、さすが日本映画というおどろおどろしさなのだと……海外の映画でも血脈ドロドロは無いわけではないと思うけれど、そうなると大体○○王家みたいな話になるのかな? やっぱり歴史のあるところにドロドロが生まれるのか……

で、わが身を振り返る。うちの探偵、事件に巻き込まれ過ぎだなぁ……気がついたら渦中も渦中、自分が事件の引き金だったり、感情的にも巻き込まれまくり。猫の迷探偵に至っては、自分で事件を作ったりしてるし^^;
ふむ、探偵小説って難しいものです。

ところで、昔の映画って、本当によく首が転がるので、「制作者の意図により敢えて当時の作品のまま放送いたします」ってコメントが出るのですけれど、確かに、現実とファンタジーの区別がつかない子どもらには見せられんなぁ~と思った次第。何しろ最近は映像にリアリズムを求めすぎていますから。ただあそこまで「作り物」って印象が強いと、それほど「見ちゃいけない!」感は強くなくて、それでも作品が浮き上がらないのは、人の心の描写部分にはちゃんとリアルがあるからなのかもしれません。
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Category: 物語を遊ぼう(小説談義)

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コメント


 こんばんは。
探偵かぁ… 理想では台風の目なのですよ 僕の中では。
周りは暴風雨で騒がしくても 静かに晴れやかに 安楽椅子に座って物事を見詰めている。
でも 実際の僕の書く探偵は… 好奇心のままに 突き進んでいく。
探偵役になってないなぁーーー

確かに 横溝の世界ってドロドロだし 金田一って個性の塊だし… 其れでも 読後感がけっこう爽やかなーー そうかぁーー 金田一は風なのか 納得。

そして 題名ですが ああっーーいいなぁと思ったのが 8月の転校生 一番インパクトがあったのが 死と乙女 ですね。
僕の題名では ミステリー系の場合 ヒントになっている事多いです。
今まで書いた中で 一番遊んだのが 主人公が記憶を失くしていく話で…
長い文章の様な題名だったのですが 主人公の記憶がどんどんなくなっていくにしたがって 題名の文字が欠けてきて 最後は単語が表れるって仕掛けをした事ありますよ。

ウゾ #- | URL | 2015/12/12 18:24 [edit]


八墓村の祟りじゃ

 たしか渥美清さんが出ていた八墓村は主人公が金田一幸助ではありませんでしたね。主人公はあくまでドロドロの中心人物でした。金田一は風・・・成程。事件は飽くまで当事者性質が主役で、探偵さんは所詮よそ者。脇役ですものね。
 金田一の舞台となる家は金持ちの旧家。長年積もりに積もった怨念がとぐろ巻いてますから、そらもうおどろおどろしいのも当然。こうなると家そのものが妖怪の様な気がしないでもない。家は人の暗い魂を食らって生き延びる・・・怖い。

miss.key #eRuZ.D2c | URL | 2015/12/13 10:43 [edit]


ウゾさん、ありがとうございます(^^)

あ、台風の目、うん、それもいい表現ですね。周りが吹き荒れていても自分は静かにその状況を見つめて分析している、そんな感じでしょうか。探偵は吹き荒れる風に巻き込まれちゃダメなんですね。追い込まれ型のミステリーはそれはそれでいいけれど、探偵小説の醍醐味はそこじゃないんですね。
そんな静かで頼りになる探偵に事件を任せるからこそ、あるいは一緒に安楽椅子に座って事件を俯瞰するからこそ、探偵小説は面白いのかも。
> でも 実際の僕の書く探偵は… 好奇心のままに 突き進んでいく。
あはは~、確かに! しかもウゾさんちの探偵は好奇心の対象がかなり特異な方向へ向きがちですしね。いや、それはそれで読むほうは楽しいのですけれど(^^)
物語・事件がドロドロであればあるほど、探偵は爽やかな方がいいんですね。そういう意味では金田一はまさに大正解なんですね。あれはバランスなんだなぁ~と何だか納得しました。

あ! 『8月の転校生』、そうですか。ありがとうございます。8月に転校生はいないだろう、ってあたりにピンと来るのはさすが、現役の学生さん。私も思いついた時にはいいタイトルだと思ったのですが、なんかインパクトが無いなぁと思ったのは、やっぱり私を含め、歳をとるとその現場から離れてからの年数が長くてピンと来なくなるんだなぁと^^;
『死と乙女』は単にシューベルトの歌曲から取ったのですよ。死を怖がる乙女に「死」が優しく語りかけるという何とも言えない歌ですが……うん、曲のイメージ通りに書けるのかどうか、また頑張ってみますね。
ウゾさんのタイトルも結構面白い独特の雰囲気がありますね。あ、そうか、タイトルがヒントなんだな~そういう目で見ていなかったので、今度から気を付けておこうっと。 

> 長い文章の様な題名だったのですが 主人公の記憶がどんどんなくなっていくにしたがって 題名の文字が欠けてきて 最後は単語が表れるって仕掛けをした事ありますよ。
わ、これは面白いですね。いや、こういうの、思いつく辺りが、さすがウゾさんです。こういう言葉遊びみたいのは、純粋に文学的だなぁと思うのですよね。私は全然思いつかないなぁ。発想がすごいです。これからますますウゾさんのタイトルに着目しようっと!
コメントありがとうございました!!

彩洋→ウゾさん #nLQskDKw | URL | 2015/12/14 00:53 [edit]


miss.keyさん、ありがうとございます(^^)

あの「祟りじゃ~」の撮影された旧家に行ってきましたよ! って、行ってから知ったのですけれど、今回映画を見返して、ほんとだ、あの家だ!って。そうそう、その風景を含めて、どろどろの渦巻く旧家の人間たち、村の中に蠢く者たち、そういうのが本当の主人公なんですね。私も市川昆監督のお言葉を聞いて、はぁ~なるほど、と納得しました。そして探偵はどこからともなく吹いてきて、そして吹き抜けて行く風。どろっとしたものを吹き飛ばし、そこから消えていくんですね~。う~ん、深いです。
家そのものが妖怪ってのはあるかもしれませんね。いや、なんかそんなホラーありませんでしたっけ? ハウス? 確かに、複雑な人間の思いが積もりに積もったら、それはもう家そのものになっていくのかもしれません。家を存続させるために養子を入れたり、って、考えてみれば血脈が途絶えたらそれはそれで終わりでいいじゃないって思うけれど、「家」はそうは許さず誰かを呑み込んでいくのですね……う~む。まさに人喰い。あ、人喰い屋敷の話、そういうことだったか! 続きを書こうっと!
コメントありがとうございました!!!

彩洋→miss.keyさん #nLQskDKw | URL | 2015/12/14 01:55 [edit]

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