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コーヒーにスプーン一杯のミステリーを

オリジナル小説ブログです。目指しているのは死体の転がっていないミステリー(たまに転がりますが)。掌編から長編まで、人の心を見つめながら物語を紡いでいます。カテゴリから入ると、小説を始めから読むことができます。巨石紀行や物語談義などの雑記もお楽しみください(^^)

 

[雨164] 第34章 交差点(4)放蕩息子への帰還命令 

【海に落ちる雨】第34章最終話です。
実はちょっとややこしい事をしてありまして……時間順に並べると、享志が海外出張から帰ってきて→仁が京都に行って竹流に啖呵を切る、ってのが正解なのです。何でこんな順番になっているのかと言うと、33章の最後に竹流が出てきているので、先に竹流のことを書いちゃおうとしたのでした。後からひっくり返そうかと思ったのですが、享志のシーンを書くには、真のシーンを先に書かなければならなくて、でも真がどうなっているかを書くのは仁が啖呵を切ってからの方がいいなぁ、しかも享志視点ってのは新しいので、あんまり唐突に出てきてもなぁ……とかあれこれ悩んでこんなことに。
ま、もうこの辺、時間の順番はあまり大した問題ではないので、さら~っと流してやってください。

この期に及んで享志のサイドからの描写も避けたかったんだけど、どうしても仁・享志、竹流・享志の絡みが書きたくなって、今後(after『雨』)にも響くので、唸りつつもこんなことになりました。
でも、享志のサイドって、このお話では初めてですが、【学園七不思議シリーズ with オリキャラオフ会】を読んでくださった方々には、もうお馴染みかもしれませんよね。だから逆にこっちの享志が不思議なイメージになるのかも。いや、あれから10年以上たっているので、享志も大人になっているのです。それなりに(*^_^*)

えっと、本当は、やっちゃえ、という気持ちで書いていた、なんてのは内緒です。しかし、さすがに享志も仁も大人です。手負いの獣を襲ったりはしませんね。作者が走ろうとしても、馬鹿言っちゃいけないよ、ってなもんで。
でも、享志、なかなか乙なことをやってくれます。そして真の盲目的な享志への信頼も笑えちゃうんです……

あ、タイトルですか? えっと……もう思いつかなくて……アイディアの枯渇です。

 登場人物などはこちらをご参照ください。
【海に落ちる雨】再開に向けてのキーポイント
【海に落ちる雨】登場人物



 その朝、真は目を覚ましたとき、隣に享志がいてすやすや眠っているのを見て、暫く何が何だか分からずに享志の寝顔を見ていた。
 昨夜の事は全くといっていいほど覚えていなかった。ただ享志が何か大事なことを耳に囁いてくれていた、その気配だけを記憶していた。真は耳に手をやり、それから不意に、左耳が聞こえにくくなっていることを思い出した。

 ずっと身体中愛撫されていたような気だるさはあるのに、無理矢理抱かれた覚えも何もなかった。女と寝たときには記憶がはっきりしないこともあり得るだろうが、男相手ではそうもいかないだろうと、真は自分の身体を確認し、思わず可笑しくなった。
 第一、享志が真にそんなことをするはずがなかった。

 微かに享志の呼吸が変わり、軽く寝返りを打つ。真が身体を起こして、乱れた着物の襟をかき合わせるように整えたとき、目を覚ました享志と視線が合った。
「大丈夫か」
 享志はそう言ってから、何だか後朝の何とかって感じだな、と呟いて勝手に照れ笑いをしている。それから享志は真の顔をまともに見つめた。

「京都に行こう。一人で行きづらいんなら、俺が一緒に行くから」
 真は首を横に振った。
「会いたいんだろう?」
 真は返事をしなかった。まだ混乱していてよく分からなかった。あの傷ついた姿を冷静に見る自信がなかったし、自分が何をしたかもよく分かっていた。

 映像の中でひどく傷つけられていた竹流を見てどこかで興奮していたかもしれない自分自身を、怒りと性的興奮の区別がつかなくなっていた自分自身を、福嶋という男に貫かれて理屈もなく喘がされていた自分自身を、どうしても理解できずに、そのままの形で竹流の顔を見る勇気もなかった。会ったら今度こそ真は我を失うかもしれない。
 だから、どうあっても今は会えないと思っていた。いつになれば会えるようになるのか、それも分からなかった。もしかして、もうこのまま会う勇気さえ持てないのかもしれないと、思った。

 突然、享志は寝転んだまま下から真を抱き寄せた。真はいきなりの事でバランスを崩して、享志に倒れこんだ。
「何するんだ」
「キスしていいか」
「寝ぼけてるのか」
 享志は腰を抱き寄せた手とは別の手で、真の唇に触れた。
 その享志の、真がこれまで見たことのない男らしい真剣な表情に、真は言葉を飲み込んだ。享志はいつもの彼らしくもない、笑みを一切含んでいない目で、真の唇を見つめている。

「こうして見たらお前って時々隙だらけなのにさ、何で俺には今まで付け入るチャンスがなかったんだろうな」
「何、言ってるんだ」
「俺も大人の男になったってことだよ。大和さんじゃなくてもお前を守ってやれる男がいるってことだ。お前が葉子の手を取ってバージンロードを歩いてきた時、俺、本当はお前の手ごと、二人とも抱き寄せようかと思ったんだ」
 臆面もなく享志はあっさりと言う。真はこいつは何を言ってるんだと思った。

「バージンロードを歩いていたのは葉子だ、俺はただのエスコートだって」
「どっちでも一緒だよ。俺はお前の手も一緒に取ったつもりだし、葉子にもそうプロポーズした。なぁ、真、素面でキスさせろよ。何だったら、新婚初夜にするか。朝だけど」
 真は事実慌てた。真の認識の中ではそんなことを全く言うはずもない親友が、真剣な目で真を見つめているわけで、上手くかわす方法も思いつかなかった。
「悪いけど、操を立ててるんだ。何でもいいから、とにかく離せって」

 混乱して口をついて出た言葉は、半分は真自身も理解していない。語気は後半で荒くなっていた。享志は暫く真の顔を見ていたが、急に表情を変えて、大笑いを始めた。
「何だよ」
「俺にしちゃ、上手い言い回しだったと思わないか?」
「仁さんに何か吹き込まれたんだな」
「いや。俺の本心だよ。からかったわけじゃない。俺は、北条さんみたいに、女の人とセックスするみたいにお前を抱きたいわけじゃないけどさ、なんて言っていいのか分からないけど、強いて言えば、ずぶ濡れの捨て猫見て放っておけないような気持ちかなぁ」

「それはただの憐憫だ」
 享志は寝転がったまま、真面目な顔で真を見つめている。
「雨の中で感じた憐憫だけじゃ、捨て猫は拾って帰れないんだよ。あとの面倒をちゃんと見る気でなけりゃ」
 享志はそう言って起き上がった。
「でも、抱いてくれと言われたら、多分俺はお前を抱けるよ。昨日それがわかった」

 すぐ傍に感じる享志の身体は、それなりに鍛えようとしてきた真よりも一回りは大きかった。真は、いつの間にかすっかり立派な人間になり、あるいは享志の言うとおり、誰かを確かに守ることができる大きな男になった享志に、眩暈がするような憧れと嫉妬と、どうしても逆らえない微かな恐れを感じた。
 享志は、目を逸らすことは許さないというように真を見つめたまま、真面目な顔で続ける。

「お前さ、俺じゃなくて、大和さんにちゃんとそう言うべきだよ。あなたのために操を立てています、って。あの人はさ、お前が思っているよりも繊細で傷つきやすい人だと思うからさ、本当は色んなことで苦しんでる。いや、俺が言うことじゃないか。お前が一番良く知ってるはずだもんな」
 ふと享志が見せた暗い翳りのある横顔に、真は見覚えがあった。

 この横顔は、あの結婚式の二次会で、歩き去るりぃさの後姿を見つめていた横顔と同じだった。
 それは、真が見知っている享志の表情の中ではあり得ないほど享志に不釣合いな表情で、だからこそ真は何かの見間違いかとも思い、あるいは見てはいけない顔を見たような気がして、あの時、記憶の底に沈めてしまったのだ。

 だが今、はっきりと思い出してしまったあの時の横顔、愛しさと憎しみと憐れみと、あるいは思いつく限りの喜怒哀楽の感情を畳み込んで静かにならざるを得なかったような横顔をもう一度目にしたとき、記憶の深い沼の底から湧きあがってきたのは、さらに具体的な色合いに染められた享志の感情そのものだった。
 真が黙り込んだまま、享志の顔を見つめていると、享志が何だ、というように真を見た。真は視線を外し、一旦なんでもない、と言てから、改めて享志を見た。

 その時にはすでに脳の活動は止まっていて、真の口は勝手に言葉を送り出していた。
「ごめん」
「何?」
 享志の声に、僅かに冷たい響きが伴っている。真は一旦息をつき、引っ込みがつかなくなったという、それだけのことでその先を続けてしまった。
「りぃさのこと、俺は何も気が付かなくて」

 享志は暫く身動きもしなかった。黙って真を見つめるその目は、怖いくらいだった。
 真は他人とのコミュニケーションにおいて時々こういう失策を犯してしまうということに、自分でも気が付いていた。だがそれに対して、享志や竹流は、いつもあっさりとかわして、冗談に受け流してくれる。それが真には真似のできない彼らの度量だということに、真はとっくに気が付いていたはずだった。

 真は言ってはいけない言葉を口にしたと気が付いて、一旦目を逸らしたが、享志が自分をじっと見つめたままであることに気が付いて、どうすることもできずに彼と目を合わせた。享志はようやくひとつ、息をついた。
「俺、お前のそういう無神経なところ、嫌いじゃないけどさ、それ以上言ったら本当にお前を襲うよ」
 享志は真から視線を外さなかった。

「頼むから、りぃさのことは忘れてくれ。お前の中でなかったことにしてくれたら、それでいい」
 享志は真からようやく視線を外した。でも、と言いかけた真は、享志のその無表情とも見える横顔に口をつぐんだ。
「悪いけど、お前には関係のないことなんだ。俺とりぃさのことは」
「でも彼女の自殺は、やっぱり俺が彼女を……」

 突然享志が起き上がり、真の肩を強く掴んだ。真は享志の目を見て恐ろしくなり、そのまま口を噤んだ。
「勘違いしないでくれ。りぃさは俺が死神を雇って殺したんだ」
 そう言うと、享志は真の頭を自分の肩に抱き寄せた。
「二度と、小松崎りぃさの話はするな。大和さんの前でもだ」

 小さな疑惑の炎は、真の内側で立ち上がり、そのまま雨に打たれて消されようとした。
 享志の声は、真がこれまでにこの親友の口から聞いたことのないものだった。そして真は、自分が確かに、この義理の弟となった親友と、あの男に守られていたのだと理解したように思った。
 真は了解したことを伝えるために、自分のほうから親友の身体に手を回し、抱き締めた。そして、今初めて、享志が震えていることに気が付いた。

 俺はずっと自分だけが苦しんでいたと思っていた。
 真は突然に強い感情に突き動かされた。
 何かを勘違いしていた。他人と自分の間に線を引こうとしてきたのは、ただ自分を守るためだった。だが、こうして友は他人である自分を、自らを貶めるような真似をしてまでも、守ろうとしてくれていたのだ。
 何故、それに気が付かないままにしていたのだろうか。

 だが、縋りつくような真の感情がまだ冷めないうちに、案の定、享志は気を取り直したようだった。真の背中を宥めるように二度叩くと、ゆっくりと諭すように言った。
「京都に行こう。お前は大和さんの傍にいなければだめだ」

 真は恐ろしく静かな気持ちで首を横に振った。時間が欲しかった。考える時間と、納得する時間が。その時間がもしかして永遠に彼と自分を裂くのなら、それもやむを得ないと思っていた。
「お前は行けよ。葉子の顔を見てきてやって欲しい」
 真がそう言うと、享志は、葉子なら大丈夫だよ、お前よりずっと、と答えた。そしてひとつ息をつく。

「お前、本当に頑固だな。会ってキスのひとつもすれば済む話だろ」
「どうしても、会っておかなければならない人がいるんだ」
「大和さんのことより大事なわけじゃないだろう」
 そんなものがあるのなら言ってみろ、とばかりに享志は畳み掛けてくる。真はどうとも返事ができずに、曖昧な表情を浮かべた。

 福嶋に名刺をもらったものの、その女の顔を見る勇気がなかった。今更、という気持ちもあった。だが、享志がここに来てくれて、そのことが真に冷静な判断のチャンスを与えてくれた。
 会っておかなければならない人は、村野花だけではなかった。どうしても澤田顕一郎に会いたかった。いや、澤田顕一郎に会いたかったら、真は村野花に会いたかったのだ。きっと今、会っておかなければ、後悔するのは分かっていた。会わないでいるということは、義務を放棄するような気がしたのだ。

「仁さんが何言ったのか知らないけど、俺は大丈夫だから、葉子のところに行ってやって欲しい。彼女を守ってくれるんだろう? 強がってるとは思うけど、竹流の様子を見ていて、心細くないとは思わないよ」
 じゃあ、北条さんが帰ってくるまではここにいるよ、と言われたが、真は首を横に振った。
「竹流の顔も、見てきて欲しいんだ」
「お前が行けって言ってるだろう」

 享志の声が幾らかいらついて聞こえる。それでも真は拒否した。
「それに、珠恵さんに、俺は無事だから、竹流のところに行ってやって欲しいって伝えてくれないか」
「あぁ、そりゃ絶対にないな」
 享志はふて寝するように布団に転がった。
「俺は少しあの人に会っただけだけど、あの人はお前より先に大和さんに会いに行くことはないと思うよ。つまりお前が大和さんに会わなければ、珠恵さんも大和さんに会えないわけだ。お前のせいで彼女は大和さんに会えないってわけだぞ」

 天井を睨んだまま享志は息をつき、堂々巡りだな、と言った。
「三日、だな」
 真が何を言ってるんだと思って享志を見ると、享志は静かに続けた。
「ま、いいとこ三日が勝負だ」
 享志は天井から真のほうを向き直った。
「ヴォルテラの大親分が、放蕩息子を連れてローマに戻ってくる」

 真は意味が理解できず、ぼんやりと享志の顔を見つめたままだった。
「俺がロンドンで聞いた噂だよ。既にヴォルテラの自家用機がローマを発ったっていう話も聞いている。俺たちはお前に何を用意してやればいい? 必要なら、たとえ宇宙船でも作ってやるよ。北条さんだったら、宇宙船の船長の知り合いくらい、いるに違いない。でもな、お前が大和さんのところに行かないと、話にもならない」

 享志は起き上がった。
「俺が大和さんをもう二、三発殴って起きられないようにしとくか。重病人を飛行機に乗せるのは難しいだろうし」
 そう言ってから享志は心配そうに付け加えた。
「チェザーレ・ヴォルテラって人は、死に掛けてても大和さんを連れて帰る気だぞ。悠長なこと、言ってる場合か」
 享志は真を見つめている。真はひどく冷静な気持ちだった。

 このことが片付いたら、彼を帰国させます。
 始めから、チェザーレはそう言っていた。そう、『片付いた』のだ。そして、今更計画を覆すことはないだろう。真は、チェザーレの言葉を思い起こして息をついた。
 あなたに決心ができたなら、一緒にいらっしゃい。

 決心など、どうやってつければいいのか分からなかった。
「とりあえず、愛してるって伝えとくよ。三日で縄かけに戻ってくるから、覚悟を決めとけよ」


          * * *

 享志は京都の病院に着いて、まず葉子を呼び出した。
 葉子は直ぐに詰所に現れ、二人は病棟の待合のソファに腰掛けて、少しの間再会してほっとしたということを、お互い言葉には出さずに確認しあった。
 結婚する前にもそういう雰囲気はあったのだが、結婚してからなお、彼らは恋人同士というよりも、むしろ真ではなく享志と葉子の方が兄妹ではないかと思うような家族の親しさを積み重ねていた。

「彼、どう?」
 ようやく享志は聞いた。
「うん」
 葉子は少し逡巡したように見えた。
「何だか、ちょっとずついたたまれないような感じになってきた。身体も、何だかすっかり弱ってる感じだし、それにどっちかというと」

 享志は、震えるように拳を握りしめている葉子の手を握った。葉子は顔を上げた。
「起きてるときは、むしろ変に空元気を見せようとしてる時もあるし、時々訳がわからなくなるときもあるし、それに夜は、時々どうかなっちゃうんじゃないかと思うくらい魘されてる」
「医者は何て?」
「肝機能は三桁から下がってこないし、まだ酸素から離れられないし、でも快方に向かっていますからって。足のリハビリとかは、もうそれどころじゃないって感じだし」
「肺炎は大丈夫そうって?」
「多分」

 葉子はまた自分の手を見つめ、それから顔を上げた。
「北条さんが昨日来たの」
「うん、知ってる」
 葉子はちょっと考えるように享志を見つめた。
「お兄ちゃんに会ったの?」
 享志は頷いた。
「来ないの? 北条さんは、お兄ちゃんを迎えに来い、って竹流さんに言ってたけど、動けるようには思えないし、それに」

 葉子はちょっと言葉を切って、先に享志の返事を待った。
「真はまだ会わなければならない人がいるからって。一緒に行こうって言ったんだけどね」
「今朝早くに竹流さんの叔父さんが来たの。イタリア語で話してたからよく分からないけど、飛行機の話をしてた」

 享志は頷いた。
「向こうでも噂になっていた。何か言われた? いつ帰るとか」
「うん、世話をかけて有難う、というのと、あなたとお義父様によろしくって。その後、主治医の先生と話してたから、多分飛行機に乗って大丈夫かってことだと思うけど」
「じゃあ、医者に聞くのが早いな」

 噂は嘘ではなかったのだ。
 享志は詰所に行き、医者と話がしたいということを告げたが、外来中なので話ができるのは午後になると言われた。
 仕方がないので、取り敢えず竹流に面会に行くことにした。

 竹流は、享志が病室に入ったとき、眠っているようだった。数週間前に見たときよりも更にやつれたように見えた。享志が側に座ると、その物音で静かに目を開けた。竹流は享志の方を見、それが享志とわかって少し目で挨拶するような表情をした。
「大丈夫ですか」
 竹流は頷いた。
「熱は?」
「今は微熱がある程度かな。思ったより参ってしまったみたいだ」

 享志は竹流の綺麗な青灰色の目を見つめた。
「真に、会いましたよ」
 享志は務めて穏やかに言った。
「思ったよりは元気そうでした。あなたに会いたくて狂いそうなくせに、認めない理由は知りませんけどね」
 竹流はただ頷いた。

「東京に帰れそうですか?」
「さあ、医者は、肝機能はひどいし、骨髄機能も下がっていて血球が全て低い上に、何より体力もままならない状況なので、それが良くならないと無理だ、と言ってるみたいだけどね」
「飛行機なんか当分無理ですよ」
 竹流は享志を見た。
「叔父が来たことを言っているのか?」
 享志は答えずに、いつですか、と聞いた。

「さあ、医者と何か話したんだろう」
「帰る気ですか?」
「今の俺に選択権がないのは確かだ。叔父が怒っているのもわかっている」
 それは怒っているからではなく、本当に心配しているからだろうと思ったが、享志は何も言わなかった。

 享志の父の話では、ローマのヴォルテラ家はこの男以外の跡継ぎなどこれっぽっちも考えておらず、あんな雑誌のインタヴュー記事など何かの丁稚上げだと主張しているらしいし、もともといつまでもこの男を東京で遊ばせておく気はないのだから潮時だろうということだった。
「真は」享志は、相手の表情を読み取るように見つめていた。「どうするんです?」

「どうって、何が?」
「放っておくと、どうなるか知りませんよ。ただでさえ、あいつに懸想してるろくでもない種類の人間がいるのは知ってるでしょう? それに、危なっかしくて」
「君が言っているのは、真をローマに連れて行くかどうか、ということか」
「二人で駆け落ちすればいいってことですよ。ローマに連れて行くかどうかってのは、最悪でも、ってところですね」

 竹流は静かに息を吐き出し、目を閉じた。
「それは、無理な相談だな。あいつのことは北条さんや君たちがいるから、大丈夫だろう」
「本気で言ってるんですか」
 享志は結局その日、葉子を珠恵のところに帰して、病院に泊まった。
 さて、どうしたものかと、真剣に忙しく考えていた。自分が親友にしてやれることと、そのことで周りに与える影響を考えていた。
真は何を望むだろう。

 夜になると、病院の静けさは享志の気持ちを逆に煽り立てた。昨日抱きしめた真の身体を、その意外な幼さと熱さを手の中にまた感じた。だが、もう二度とそういうことはないだろう。葉子の兄だからでも、親友だからでもなく、自分の常識を逸した感情の在り方を消したかったからでもなかった。真が、自分に求めていることがそういうことではないということを、享志はちゃんと知っていたからだった。

 享志は横になることもなく、ただベッドの脇に座っていた。この男がいなかったら、自分はどうしていたのだろう。葉子よりも真自身を求めただろうか。自信がなかった。
 真を、あの時々馬鹿みたいに儚くなってしまう感情を、誰かが支えてやらなければならないと思っていた。真は時々上手くこの世に適合できないような気配を見せることがあった。その役割をずっと果たしてきたのはこの男ではなかったのか。この男だから、嫉妬心は別にして、享志は安心していられたはずだった。

 真が北海道で崖から落ちたとき、真があの牧場の周辺の広大な土地を庭のように知っていて、さらに賢明な馬たちが真を危険に近づけるはずがないのに、真がそこから落ちたのは何か特別なことだったのだと、皆が話しているのを聞いた。それが誰かの意志ではないかという意味だった。
 誰もそれ以上は言わなかったが、享志はあの牧場から空を見上げた時、それが亡くなった飛龍という馬、あるいは森に息づく神々ではないかと直感的に悟った。真のその儚い感情を愛おしく思っているのは、人間だけではなく、馬たちも犬たちも同じ感情を真に抱いていたのだ。神々から真を引き離してしまった人間は、その後の真を守ってやる義務があると思っていた。

 この男が、その義務を放棄しようとしているとは思えなかった。だから多分、この男は自分自身のむしろ人間らしい欲情の結果を差引きしたのだろう。義務を放棄することで、却って真を救えるのではないかと思っているのかもしれなかった。
「それは誤解だな」
 思わず享志は声に出して呟いた。

 真は、この男が生きているかどうかも分からないで引き離されていることよりも、多分どんな目に遭おうとも一緒にいたいと思っているだろう。
 だが今真は混乱し、迷っている。わけが分からなくなっているのだ。

 享志が椅子に座ったままうとうとしていたとき、現実と夢の狭間に、叫びのようなものが響いた。享志は跳ね起きた。そしてすぐに、竹流が魘されているのだと知った。
 一瞬、真の叫びと重なった。享志は、竹流を揺り起こそうとしてその肩に手を触れたが、思ったよりもやつれてしまった肩の感触に自分の手を疑った。

「大和さん」
 呼びかけてみたが、その男が苦しむ様を楽しんでいる悪夢は、簡単には竹流を離さなかった。
 叫びかけて息を詰めるようにして呼吸を止め、跳ね起きた竹流を、享志は抱き留めた。享志が差し伸べた腕の中で、竹流は肩で激しく呼吸をしながら、突然力を失ったようになり、そのまま享志に身体を預けてきた。

 しばらく享志は彼を抱きしめていた。
 自分よりもずっと大きな相手だと思っていた。
 その男が足元も覚束なく、起き上がることもやっとで、目の前で苦しんでいるのは合点がいかなかった。真が仇を殺しても殺し足りないと感じているのは当然だと思った。

 少しして竹流が正気に戻ったのか、自ら享志から離れるようにした。
「すまない」
「いいえ、大丈夫ですか」
 竹流は返事をしなかった。享志は氷枕をとって、竹流を横にさせてから、詰所に行って氷を替えてもらった。
 冷たい氷枕を頭の下に戻してやって、享志はやっと息をついた。
「僕が言うのは何ですけど、真を側から離さないほうがいいですよ。何より、あなた自身のために。あなたが真なしでやって行けるとは、僕には思えません」

 竹流は返事をしなかった。
 夜の帳が下りてくる。何時までも上がらない幕のように、静かに世界を闇に染めて、時間だけは確実に流れていった。

(第34章『交差点』了、第35章『恋花』につづく)





さて、次章は短いのですが(ほぼワンシーン)、それでも1回でアップするには長すぎるので、2回に分けてお届けします。
この物語の中で、何故か私が妙に力を入れちゃった章です。一体、村野花を描写するのになぜこだわったのか……読んでいただいて何かを察してくださると嬉しいかもしれません。
えぇ、イメージはまさに毒蜘蛛です。それでは次回、クラブタランチュラでお会いしましょう。

<次回予告>
 激しい恋情を心の内に秘めて、それにさえも毒の味を滲みこませて、自らを毒に変えてしまい、己を殺しながら生きることは、とてもできない。砂漠の蜘蛛にとっては、己の毒だけが餌になっているのかもしれない。そんなことになれば、俺は簡単に死んでしまうのだろうと真はぼんやりと考えていた。
 突然、女は短くなった煙草を持ったままの手をすっと差し伸ばし、太い薬指と小指で真の顎に触れた。毒虫のように粘液を指からも吐き出しているのかと思えば、意外にも乾いた手だった。
「あんたは綺麗だね」女が近付くと複雑な香水の匂いが真の鼻腔を満たし、頭が痺れて気分が悪くなった。それと同時に甘美な快感が身体を走りぬける。「血の匂いがするよ」
 この女には、俺の人殺しの血がわかるのだと真は思った。
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Category: ☂海に落ちる雨 第5節

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コメント


享志いい仕事してます

享志ったら、いつの間にかこんなに男らしくなって・・・。
って、近所のおばちゃんかw

でもしょっぱなの朝のシーンはちょっとヤバかったですね。
夜明けのコーヒーでも飲む勢いで>< 真といっしょにドギマギしましたよ。
真って、こういう享志の気持ちは何%くらい気づいてるんでしょうかねえ。
その辺、いつかインタビューしてほしい!(そんな企画はないか)
ああもう、猫も杓子も真にご執心なんだから。
竹流、寝てる場合じゃないですよ!

で、ここで久々の竹流でしたね! 少し会話もまともになって来て、竹流らしくなってきたのは嬉しいけど、やっぱり退院は難しそうですね。
ここは気付け薬を差し上げないと・・・。
でも、もう一仕事残ってる真をここに連れてくるのは難しいんでしょうね。
もういいじゃん>< おいでよ・・なんて言ってしまいたくなるんですが。

だけど次回はその村野花の登場なのですね。名前が可愛いからちょっと可憐な花を想像しちゃったけど、毒グモなのかあ・・・。うわあ。真、食われたりしないでしょうね。(齧られるくらいなら多めに見・・・いや、だめです)

今回は前回と別の意味でドギマギしちゃいましたが、うん・・・享志視点と真視点の交互も、いいもんだなあと、妙に楽しんでしまいました(見るところをきっと間違えてると思うけどすみません><)

lime #GCA3nAmE | URL | 2016/02/03 22:41 [edit]


享志よく頑張ってます

更新、お疲れ様でした。

享志、いい仕事してますねぇ……って書こうと思ったら、思い切り被った(爆)
天然というか、くそまじめに直球勝負なんですね。しかもわりと危険球ぎみで(笑)
対等な関係だけに、真の反応も今までと違って、いろいろと積極的というか面白いですね。かなり回復してきたというのも、あるんでしょうか。
わだかまっていた(という感じはなかったけど)りぃさの件も、とりあえずは決着したみたいですし。
こういうお話を読んで、ハリポタトリオの頃を思い出すと、なんかちょっと切ないですね。まあオトナになれば、いろいろとありますからね。
竹流パパは、なんというか、読者にも見えないところで動き回っていますね。ヴォルテラ家の本領発揮、というところでしょうか。こりゃあ享志が竹流に二三発お見舞いしたところで、強制連行待ったなしですな。あと三日とか期限切られている感じですけど、真、のんびり村野花に会っていて間に合うのでしょうか。
ちょっと、いろいろ心配になってきました。

次話も楽しみにしています。

TOM-F #V5TnqLKM | URL | 2016/02/03 23:07 [edit]


享志心友だよぉます

友情ぉぅ・・・(T^T)
ご承知のように、友情物には心揺れるけいです。

なんというか、究極のスキンシップというのか(?)
これは友人ではなく、家族レベルで保護者レベル? 
真が包まれているのが前提で。

私は七不思議シリーズを読んでいないので、天然の級長という享志の姿は知らないのです。だから、この彼には天然のかけらも見ることはなく、学生ではない、大人の友人として見ております。やはり、長年にわたって培ってきた距離感が良いですね。仁の言葉とはまた違う言葉が真にかけられる。良い感じです。

東京で真が魘されるのを面倒見、京都で竹流が魘されるのを面倒見、自分のできることをして、言えること言う。これだけの仕事をしているのに二人とも・・・

けい #- | URL | 2016/02/04 19:07 [edit]


通常空間に復帰しました

こんばんは。

いろいろある回だけれど(っていうか、毎回そうだけれど)、とくに氣になったのは、この享志の発言で、真はりぃさの死の真相を悟ったのかな……。わかったと、書いてありますけれど、ああいうことだったと本当にわかる人なのかなと、ちょっと思いました。

逆に言うと、自分の価値というものにとことん疎いというか、もしくはそれが引き起こしていることをいまいち理解していないので、さらに別ベクトルに事態を持っていってしまうのかなと思いました。わかってやっているとしたら、とんでもない奴ですものね。

仁もそうですけれど享志も「なんだかなあ」な役割を淡々とやっていますよね。自分の心は犠牲にして。ここまでお膳立てしてもらっているのに、二人はいったい……。どう考えても真がいくべきなのは村野花の方ではなくて、京都の病室だと思うんだけれど、いう事きかないままですね。

それに、お迎え(あ、パパのですよ)がくるまで三日かぁ。竹流の方も、わかったような事を言っている場合じゃないと思うんだけれど。

八少女 夕 #9yMhI49k | URL | 2016/02/05 04:19 [edit]


limeさん、ありがとうございます(^^)

> 享志ったら、いつの間にかこんなに男らしくなって・・・。
> って、近所のおばちゃんかw
あぁ、なんか、こういうの分かります! 私ももう、KinKiのコンサートや光ちゃんのSHOCKなどはこの気分で……ファンはファンだけれど、親戚のおばちゃん・近所のおばちゃんの立ち位置で応援しています。
享志もそんなふうにlimeさんに思っていただけて、いやぁ、果報者です。

> でもしょっぱなの朝のシーンはちょっとヤバかったですね。
うふふ。このシーンの笑えるところは、バカな真が(自分で墓穴を掘っておいて)「俺ってやられちゃったのかな」とか布団めくって(かどうかは分からないけど)確認しているところ。書きながら、お前は何ておバカなんだと突っ込んでおりました。で、挙句の果てに「いや、享志はそんなことしないよな」って納得している……この人、口では何を言っていても、享志には盲目的な信頼を置いているのですよね。自分を裏切らないという……それもどうかと思うのですが、基本的に発想は半飼い猫です。
「この人はちゃんとエサ、くれるよな?」

> 真って、こういう享志の気持ちは何%くらい気づいてるんでしょうかねえ。
> その辺、いつかインタビューしてほしい!(そんな企画はないか)
うん! この人、気が付いているような、気が付いていないような……あ、でも、享志のベクトルが自分に向いていることは分かっていても、その真剣度は分かっていないですよね。というよりも、葉子に向いていると思っているだろうし、やっぱり「いや、俺に向いているわけないし」って感じでしょうし(愛とかじゃなくて、友情であっても)。
でも、どこかに一部、確信犯の一面が……^m^

インタヴュー! もちろん、インタビュアーは美和ちゃんですね。でも美和ちゃん、勝手に決めつけて、勝手に話をまとめる時があるからなぁ……「先生は心の中でこう思っているに違いない! はい、おしまい!」って感じで。でも恐ろしいことに、たいてい合っているけど。

この辺り、マコトが、じゃなくて、真があまりにも落ちるところまで落ちたので、救い上げてくれるような「真を支えてくれる人たちオンパレード」なんですね。
真って、基本的に周囲の人たちからは敬遠されるタイプ。敬遠なのか、近づかないようにしようと思われているのか、近づいたらヤバいと思われいてるのか、嫌われているのかは分かりませんが(竹流の女たちには嫌われてるな)……でも、なんか気に入られると、深く入り込ませちゃうというのか、狭く深くタイプなんですよね。
嵌ったら抜け出せない? なんて怖い人……アリジゴク・真と呼ぼうかしら。

竹流も確かに、寝てる場合じゃない!というよりも、もう帰る気満々になっていますものね。結局、この男も、パパの手からは逃れられないと諦めたようですし……逆らっても逆らってもお釈迦様の手のひらの上……
退院できなくても、しばりつけてでも、飛行機に乗せられるんだろうなぁ~

それなのに、マコトは、じゃなくて、真は村野花が気になって仕方がない。
(マコトが村野花に会ったら凍り付いちゃうかも^^;)
でも、思えば、最初の依頼人というのか、契約相手は澤田顕一郎だったので、真の職業意識からは澤田のためにケリをつけておかなくちゃ、竹流に会えないって感じなのです。まぁ、いいわけなのですけれど。
そんな真ですが、いつも応援してくださりありがとうございます!
はい、見るとこ、間違えてくださって大いに構わないのです。だって、きっとこの辺り、書いている方も、ちょっと息抜きがてら、サービスシーンのつもりですから!(自分への? 読者さんへの? えっと~。でも、limeさんとは波長は同じじゃないかと^^;)

もう少しこんなぐるぐる真にお付き合いくださいませ。そのうち意外な(いや、当然かも)人が、真の背中を押します(いや、背中を押したのか、罠にかけてぐるぐる巻きにして捕まえたのか……)。
いつもありがとうございます。
引き続き、よろしくお願いします!!

彩洋→limeさん #nLQskDKw | URL | 2016/02/05 07:42 [edit]


TOM-Fさん、ありがとうございます(^^)

享志の仕事を褒めていただき、ありがとうございます!
あ、そうかぁ、limeさんもTOM-Fさんも同じような掛け声?を彼にかけてくださろうとしたのですね(^^) うん、ほんと、いい仕事したようです。彼のいいところはその天然ブリで、ちがう! 魚じゃない! 天然ぶりなのですけれど(平仮名でも魚に見える)、その辺は歳をとっても変わらないようで……書いていてもほっとします。

あ~、でも実は危険球? どうやら親友の扱いには危険物取扱資格なる試験を通らなきゃならないみたいですね^^; この二人、ボケとツッコミなのか、ボケボケなのか(多分後者ですね)、それでもこの雰囲気は真と竹流では出せない世界、かな。
そうそう、真面目に直球危険球しか投げられないので、こういう人をからかったら怖いということですよね。なのに、真ったら……無防備すぎて怖いですが、やっぱり結局確信犯かな。ご指摘の通り、積極的!ってことは、確信犯ってことですよね。

りぃさの件は、う~ん、多分、真は半分くらいしかわかっていないですよね。というのか、やっぱり知るのが怖いって言うのもあると思うのです。彼らが自分のためにしてくれたのか、もっとも享志の方は、彼自身のためもあったのかもしれませんけれど、この件は享志はこれ以上は絶対に語らないだろうな。葉子にも言わないし、真にも言わない。ついでに、作者にも読んでくださる方にも、これ以上は何も言わない……んですよ。
ハリポタ時代、きっと大事な青春のひとコマ? だったのかな。いっぱい悩んで、いっぱい苦しんで、でも友達を想い、恋人にも一生懸命で、そして勉強も、たくさん頑張っていたのだろうなぁ~。で、ついでに七不思議にチャレンジして、オフ会に巻き込まれる、と。でもそんな時代があったからこそ、今があるのだ!?

> 竹流パパは、なんというか、読者にも見えないところで動き回っていますね。ヴォルテラ家の本領発揮、というところでしょうか。こりゃあ享志が竹流に二三発お見舞いしたところで、強制連行待ったなしですな。あと三日とか期限切られている感じですけど、真、のんびり村野花に会っていて間に合うのでしょうか。
う。と、とりあえず、今はノーコメントにさせていただきます。いや~、チェザーレ、ほんとに怖いですから。
真は真で、やっぱりケリをつけたいことが色々とあるのですよね。落ち込んでいる場合じゃないんです、実は。さて、どうなっていくのか、ちゃんと答えになっていないかもしれませんが、一応のけりは全てつけさせていただきます!
次回もよろしくお願いいたします。
コメントありがとうございました!!

彩洋→TOM-Fさん #nLQskDKw | URL | 2016/02/05 22:56 [edit]


けいさん、ありがとうございます(^^)

けいさん、友情に反応してくださってありがとうございます。あ、ちょっと危険な? 直球過ぎて危険球という友情ですけれど……^^; 学生時代って、性別よりも何よりも、その相手が信じるに値するかどうかってことが大事で、愛とか恋とか友情とか、そもそもあんまり区別がつかない時だと思うのです。だから同性だからどう、という線引きなんてできない。苛めとか無視とかってのも、そんな危うい感情から出てきてしまうんですよね。そして、享志のこの感情も、恋心と言えば恋だし、友情と言えば友情だし、でも何よりも、こいつを生涯信じると決めたから信じる、という感情なのだと思います。
そうそう、家族であり、保護者であり……いやもう、享志は始めから「君たち兄妹を守りたい」って言っていて、それを生涯守り抜いた、超絶律儀男なんですよ! こんな天然も一人くらいいないと、このお話、大変なことになっちゃいますから……
あ、でもね、本当はみんな、其々の場所で一生懸命なのです。一生懸命だからこじれて、嫉妬して、苦しんで、こんがらがっている・……解けることはないかもしれませんが、それでもどこかへ向かって物語は進んでいきます。

七不思議シリーズは、まぁ、まるきりお遊びなので、はい、気になさらず^^;
あのハリポタトリオが、まんまの状態で活躍(享志は騒いでるだけ?)しておりますが、単に私が学生時代を懐かしんで書いているだけという……うちの学校、結構レトロなムードの学校だったんですよ。昭和、しかもどこかにまだ明治や大正の雰囲気まで背負っていて。そのイメージをどこかに残しておきたい、って感じかもしれません。
そんな時代を共有していた友人同士。けいさんの仰る通り、それがあったからこそ、微妙な距離感を保ちながらも通じ合うものがあるんだろうなぁ。

そして、ほんとに困った主人公二人ですが……想えば思うほど、一歩が踏み出せないんですよね。
そんな彼らのこともあとしばし見守ってやってくださいませ。
いつもありがとうございます!!
引き続きよろしくお願いいたします!!

彩洋→けいさん #nLQskDKw | URL | 2016/02/05 23:10 [edit]


夕さん、ありがとうございます(^^)

おぉ、scriviamo!、本当にご苦労様です!! えっと~、私もまた後出しじゃんけん状態ですが、ぎりぎりくらいに参加させていただきますね。このくそ忙しいのに、また明日、歴史散歩(明日は柳生街道)に行こうとしている不届きな私です。
本当に、この季節にはスイスまで肩を揉みに行って差し上げたいような気がします。

そんな中にコメントを頂きありがとうございます!
はい、毎回色々ありますが、この辺りは正直なところ、作者には思い切り息抜きでした。だって、前後が大変だったので、享志でも出して楽しもうと……ほんと、清涼剤ですから。
りぃさの件、うん、真は分かっているのか分かっていないのか、それともちょっと知るのが怖いってのもあるのかな、って気がします。大体、彼女が亡くなる前、彼女の部屋で竹流の残り香を嗅いでいますから……それって絶対気が付いていたと思うのですよ。でも封印しちゃった。あ、真が気が付かないふりをしたので? あんまりはっきりとは書いていなのですが、ベッドで懐かしい香りが、的なところがありまして。「こうなってああなって、こうなりました」ってのははっきりとは分かっていないと思うけれど、どういう内容のことかは大まかには分かっているんじゃないのかなぁと思います。でも、きっと追求しない。追及するのが怖いってのもあるし、享志がその話をするなって言ってくれたのをいいことに、封印する……そんな軟弱な奴なんです。

> 逆に言うと、自分の価値というものにとことん疎いというか、もしくはそれが引き起こしていることをいまいち理解していないので、さらに別ベクトルに事態を持っていってしまうのかなと思いました。わかってやっているとしたら、とんでもない奴ですものね。
うぅ。夕さんの解説が結構怖いです(@_@) そうそう、分かってやっているとしたら、とんでもない奴……でももしかしたら「トンデモナイ奴」かも……一部確信犯? もっとも、大筋はイマイチ理解していないのかもしれません……特に、自分の価値、は分かっていませんね。いや、自分の価値が「特別な人間の息子」という部分にあると勘違いしているみたいですけれど。

> 仁もそうですけれど享志も「なんだかなあ」な役割を淡々とやっていますよね。
いやいや、きっとこの二人は、それがサガだと思うし、それはそれで楽しんでやっていると思います。それにね、この二人にとって真は大事だけれど、彼らがあの余裕をかましているのは、やっぱり他にも守るべきもの、大事な人がいるからだと思うのです。真が彼らのナンバーワンではないんだと思うし。でもまぁ、損な性分ではありますよね。
仁は「お山の大将」性質なので、内輪のことはすごく大事にする人だし、竹流にあんなこと言っているけれど、彼は彼で身内のもののためには命を張ると思うんですよね。享志は、えっと……ただの天然ですけれど^^;
そして、お膳立てしてもらっているのに、動かない二人……次章で真の悩みの根本が何かは出てきますが、うん、本当に、夕さんちの某主人公みたいにぐるぐるしています・……

> それに、お迎え(あ、パパのですよ)がくるまで三日かぁ。竹流の方も、わかったような事を言っている場合じゃないと思うんだけれど。
えっと~(どきどき)、この辺りは享志の勝手な期限なので(じたばた)……この後、真にとっては急転直下って事態に展開しますが、まだもう少しぐるぐるさせてやってくださいませ^^;
引き続きよろしくお願いいたします(^^)
コメントありがとうございました!!

彩洋→夕さん #nLQskDKw | URL | 2016/02/06 01:00 [edit]

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