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コーヒーにスプーン一杯のミステリーを

オリジナル小説ブログです。目指しているのは死体の転がっていないミステリー(たまに転がりますが)。掌編から長編まで、人の心を見つめながら物語を紡いでいます。カテゴリから入ると、小説を始めから読むことができます。巨石紀行や物語談義などの雑記もお楽しみください(^^)

 

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【雪原の星月夜-1-】 第1章 月の船(1) 行旅死亡人 

いよいよ連載開始です。初っぱなから18Rにするべきかもしれない内容なので、ご注意ください(中身はたいしたことはありませんが、誰と誰、という辺りにはかなり問題が^^;)。
さて、【海に落ちる雨】のあらすじをうまく書けたらいいのですが、とても書けそうにないので、事件の内容については割愛します。

【海に落ちる雨】事件後の大事なポイントは……
先の事件の際に、大和竹流は修復師として「神の手」と言われた右の手を負傷しています。それだけではなく精神的にも肉体的にもかなり痛めつけれたので、表向きは穏やかにしていますが内心では荒れ狂っているはず。
【海に落ちる雨】のラストで、相川真は竹流=ジョルジョの叔父、チェザーレ・ヴォルテラに雇われて、竹流と一緒にローマに向かうことになりました。竹流はその時点では、集中治療室から出て間もなく、退院を止められながらも、チェザーレがどうしてもローマに連れて帰るというので、真はボディガードとして雇われたわけです。
チェザーレの計画の中では、そのままジョルジョをローマに留め置いて(もちろん、彼はヴォルテラ家次期当主ですから)、真を側近に雇い続けるつもりだったのですが、あれやこれやあって、結局二人して東京に戻ってきました。その間の出来事は、また外伝などで書くかも知れませんし、本文中にもたまに出てくるかも。
【海に落ちる雨】の事件前から竹流と真は同棲していたのですが(恋愛関係ではなく、真が生活落伍者?で、当時危ない女と付き合っていて心中しかねなかったので、竹流が面倒を見ていた……そのままずるずる居候、という状態)、東京に戻ってからも一緒に住んでいました。ただ、精神的に荒れていた竹流は、ちょっと暴力的になっていて、最終的に二人は同居を解消(もっとも真は殺されてもいいと思っていた)。

さて、相川調査事務所は、浮気調査もしますが、メインは失踪人調査です。下請けに使ってくれている名瀬弁護士事務所は企業の顧問弁護士なども請け負っている中堅事務所ですが、少年事件でも有名です。
今回の事件は、まさに相川調査事務所の真骨頂? 失踪事件の調査を頼まれたのですが、きな臭い連中の姿が見え隠れし、また真自身の過去にも関わりを示すような事実が重なり、素直に受けることが出来ません。
例のごとく、おっちゃんたち、大活躍。まずは、真の伯父・失踪している相川功の過去について、真の知らない事実が明らかに。また、真にとって味方なのか敵なのか分からないおっちゃん、真の実父と若い頃先輩後輩関係だったいかにも役人という香月(真には河本という偽名を使っていた)、前回の事件で真を使って邪魔者を消そうとしていたかも知れない裏社会の住人・福嶋鋼三郎、功の親友だった循環器内科医・斉藤宗彦、などなど。

タイトルはまだ仮題なのですが、もうこのまま行くかもしれません。「星月夜」というのは、星が月夜のように明るく瞬いている夜、のこと。クライマックスの舞台は真の故郷の浦河町~襟裳岬~阿寒湖。行方不明の若い女性童話作家を探す旅の行方は?

以前にも書きましたように、この物語にはいわゆる「本歌」があります。渡辺淳一『阿寒に果つ』……多分、あの時代、私にとっての「先輩・先生」たちの世代が経験した学生運動などが吹き荒れていた熱い時代、その残り香が感じられる物語ですが、今の世代の人たちにはどう映るのでしょうか。
ちなみに、このシリーズ自体にも本歌があって、それはアンデルセンの『人魚姫』と『源氏物語』を足して2で割った感じ?(え?)

最近何かと話題の文字数について。今回は6200字あまり。もう少し短くしてもいいのですが、私の文章の性格上、ワンシーンを途中で切るとかなり間抜けな内容になるので、とりあえずこのくらいでアップしていこうかなと思います。あ、でも、ワンシーンが短いときは短めにしてみます。
ちなみに短編の時はもっと長くても一気にアップしちゃっていますが……どうなのかなぁ。代わりに栞代わりのマーク入れてみたり。コメントを毎回丁寧にくださる人もいるので、それはもうまとめてでいいよ、って気持ちもあったり。



【雪原の星月夜・第1節】 第1章 月の船
(1) 行旅死亡人
 18R

 天井は重厚な深い茶色の木材が組み合わされていて、時代がかったシャンデリアの光を吸収して震えている。
 幾つもの丸い輪が揺れながら、網膜から無防備になった脳に侵入してくるときには、これが現実なのか、それとも夢なのか、もうまるで分からなくなっていた。それでも、この部屋に入り、始めに天井を見た瞬間には、まだ前頭葉はまともに働いていたはずだ。
 狂っているな、と真は思っていた。

 この部屋に入ったのは何時だったか、何度目なのか、この身体が受け止めている重みは一体何なのか、一瞬だけ自分の存在を実存として受け止める隙があると、脳の片隅で僅かの時間、考えていた。だが、それは本当に一瞬に過ぎない。
 自分の身体が快楽に異常に素直だと理解したのは、まだ中学生の時だったように思う。こうした行為が、愛とか恋とかとは別の次元で成立するのだということを、真は自分の身体で自然に受け入れてしまっていたのだろう。それでも、どこかの時点までは、常識から外れないように上手く制御できていたはずだった。

 十代の頃、思春期独特の肥大した自分自身を持て余していたにしても、自分に関わる事象はそれほど多くはなかった。十代の始め、都会で生活しなければならないという現実とどうしても折り合えず、毎日が戦いだった時も、状況が好転した十代の半ばからも、学校、勉強、剣道、数少ない友人、少しばかり複雑だった家族、付き合っていた女の子、つまり自分の抱えきれる事象はせいぜいそれくらいだったのだ。
 だから深くその中へ没入した。生きているということがそれだけで、時には重く苦しくさえあったが、同時に、若い身体には乗り越えるための内なる力も与えられていたはずだった。

 あの頃、意志や思想や理屈を全て超えたところにある何かに、真は恐ろしいほど素直に反応する自分を持て余していた。
 それはいつも極めて身近なところにあった。多くの十代の若者にとって、時にあの世とこの世の敷居が簡単に低くなってしまう瞬間があるのだろうが、真にはひどく低い時が長く続き、それは今、もうあれから十年以上の時を経ても変わっていないような気がした。
 死も、性的に興奮する身体も、全てが単純な細胞の営みのひとつとして、真には制御できなくなる時がある。そう、快楽に溺れるとき、真の身体はあの時の恍惚を、いつもなぞっていたのだろう。

 十九の秋、浦河の崖から落ちた、あの瞬間の恍惚。
 真の記憶にある暗い溝だった。時々、真はあの日までの自分自身と、そして帯広の病院で意識を取り戻して以降の自分自身が、本当に繋がった一人の人間なのか、わからなくなる。身体にも記憶にも、確かに深い亀裂があった。
 思い出せないのだ。逆行性健忘だと説明を受けた。その言葉の本当の意味が、今もまだ理解できない。思い出せないのは、思い出してしまったら、今ここにある自分が誰かの夢の中でのみ存在する幻なのだということを、認めざるを得なくなるからかもしれない。
 この世にしがみついたのには確かに理由があった。だがそれが失われている今、この世に存在している理由が、また分からなくなっている。

 こうして身体の奥深くに他人の重みを受け入れ、自分自身を痛めつけている時だけ、この身体がこの世に留まっていることを実感できる。
 その時、真は鍵を掛けたはずの記憶の引き出しの前に立っている。そのイメージに、真は恐ろしく興奮していた。握りしめていた右手を開くと、そこに鍵がある。もう少しでその引き出しを開けることができる。あたりは真っ白で何の音もなく、ただ明るい靄に包まれている。真以外の生きているものの気配はない。いや、真自身の息遣いさえ聞こえない。真は鍵をゆっくりと鍵穴に差し込もうとする。

 イメージはいつもそこまでだった。咽喉が痛いのは喘いでいるからだと分かっていた。喘いでいる、という次元ではない。福嶋鋼三郎は、真が泣き叫んでいるという。真には記憶がないが、翌朝、いつもまともに声が出ないのは、福嶋の言うことが満更嘘ではないということなのだろう。
 朝、真はぼろぼろになっていた。何故殺してくれなかったのだろうといつも思っていた。その相手が福嶋なのかそうではないのかもよく分からない。呼吸はまともではなく、心臓の音も不規則であてにならなかった。天井にあるはずのシャンデリアの丸い灯りは網膜の上で揺れて、平衡感覚にまで影響し、胃が咽喉まで押し上げられたようになっていた。いや、視覚の異常ではなく、朝方になってもう一度深く沈められた福嶋の身体が、真の身体の中心を突きあがってきているからだった。

「兄さん」
 呼びかけられた時、確かに目を開けたつもりだったが、視野は僅かに明るくなっただけだった。
「ちょっと緩められんか。きつすぎるわ」
 福嶋の低い声は、その男の中心と接している深い部分から真の身体全体に伝播して、いつも真を狂わせた。緩めるどころか余計に相手を締め付ける。そして福嶋はその効果を分かっていて、わざと真を狂わせるような言葉を投げかけているのだろう。意識をすればするほど、相手を呑み込もうと締め付けてしまうのだ。

 福嶋が太い声で喘ぎ始める。そのまま身体の重みがのしかかってきた。厚い唇が真の鼻と薄めの唇を覆い尽くすようにして舌が絡み付いてくる。不快な臭いと何かとてつもない恐怖に身体を撫で回され、突き上げられ、探られていた。
 ふと、一瞬正気だと思った。正気のまま喘がされ、身体を開かれ、快楽に溺れていた。
 俺はやはり狂っている。意識がはっきりしてなお、たまらないほどの気持ちで相手にしがみついている。真は自分の手が福嶋のざらついた頬を弄っているのを視界の中に浮かべた。

 どこか頼る先を求めているのだ。その真の左手の薬指に、銀の指輪が暗い照明の中でゆらりと鈍い光を放っている。いつもなら指輪を外してこの部屋に入っていたのに、昨夜は何をとち狂っていたのかと考えていた。
 福嶋が真の手を取り、真の目を意地悪く見つめたまま、その指輪に厚い唇を押し当てた。
「二重の罪悪感やろ。わざと自分を追い込んでんのとちゃうんか」
 真は答えなかった。
 わしも年やな、と呟きながら福嶋がバスルームに消えた。一人きりで残されると、見上げる天井の焦げ茶色の板に映るシャンデリアは、いっそう異様にくっきりと輪郭を際立たせた。

 真はまだ硬いままの自分自身に手をやり、ゆっくりと扱いた。結婚指輪を見た瞬間に、恐ろしく興奮したような気がしたが、同時に急速に冷めたような気もした。だが、バスルームから水の音が伝わってくると、身体の中に燃え燻っている火がどうにも納まらなくなった。福嶋が戻ってくる前に、あともう一度だけ吐き出してしまいたかった。
 だが、一晩のうちに数え切れないほど達して疲れ果てた身体は、中途半端に快楽の行き着く先を探すだけで、昇りつめることはできなかった。

 福嶋はバスタオルを腰に巻きつけただけの姿で出てきたが、気が抜けたようになっている真を見て、呆れたような、蔑むような、あるいは哀れむような表情を一瞬浮かべた。何の意味も無い逢瀬でも、時を重ねるごとに同情や憐憫の気持ちが育っていくものなのだろうか。
 たとえば、夫婦の間でも。

 福嶋はサイドテーブルの煙草を取り上げ、銜えて火をつけると、魂が抜け出したままの真の唇に煙草を譲った。真は福嶋の指を添えられたまま煙をひとつ吸い込んで、そのまま煙草の替わりに触れた福嶋の唇を自分からも求めた。ついさっき自分自身が福嶋の口の中に放った残滓の味が絡みつく。真は福嶋の背中に腕を回してしがみつき、その背中に残る水滴の冷たさに震えた。
「嫁には仕事や、ゆうてるんか」
 真は答えなかった。福嶋がそんなことを聞いてくるとは思っていなかったので、答えを準備していなかったこともあるが、実際に、彼女に何か言い訳をしたのかどうか、思い出せなかったからだった。

 もっとも、夫が家の外で何をしているか、彼女が気にかけているのかどうかさえ、真には分からなかった。
「嫁とやるだけやったら満足でけへんのやろ。なぁ、兄さん、女は大事にしたらなあかん。せやけど、兄さんは狂いたいんや。もう今更、愛しい可愛いゆうてるような優しいセックスじゃ、何も感じんようになっとるんやろ」
 真はゆっくりと身体を起こし、福嶋の差し出した煙草を受け取った。
「いっぺん聞きたい、思てたんやけどな、なんで結婚なんてあほな真似したんや。あの男と別れたんは暴力に耐えられんかったんやとしても、あてつけに結婚したんやとしたら、相手も可哀相やろに」

 やはり真は答えなかった。別れたつもりはない、と言うべきだったのか、あるいは、ちゃんと妻を愛していると言うべきだったのか。少なくとも、福嶋は真と結婚した女がどういう夫婦関係を築いているか、知っているはずもなかった。
「まぁええわ。兄さんのプライベートに口を出すんはわしの主義に反するさかいな。ま、せやけど、そないに欲求不満なんやったら、わしがもっと適切な相手、世話したろか。安全で後腐れの無い、それでいて狂いまくっても構わん相手が必要やろ。わしもな、自分があんまりまともな人間やとは思てへんけど、セックスしながら相手を殴ったり、妙な道具使うたり縛り付けて犯すような変態ごっこは趣味とちゃうさかいな」

 福嶋の指が真の下顎を撫でた。
「今の兄さんがほんまに満足するんには、もっともっと無茶苦茶にされんとあかんのとちゃうんか。わしの言うてた通りやろ。それが兄さんの本性やて」
 真は福嶋の手から逃れて、煙草を二、三度吹かすと、直ぐに揉み消してベッドを出た。
 福嶋と寝た後はいつも起き上がれないほどになっていた。意志の力だけでどうにかできることなど多くはないということも、こうなってみて改めて思い知らされていた。それでも、真は崩れそうになる身体を何とか持ち上げていた。足の間を伝う粘液の感触に、一瞬叫びだしそうになったが、それも押さえ込んだ。意志はともかく、意地だけでも手離すまいと思っていた。

 熱めの湯温に設定したシャワーを浴びながら、真は壁に手をつき、腹の奥から込み上げてくる嘔気と闘った。身体の奥は既にとてつもなく汚らわしいはずなのに、もっと汚れなければ立っていられないような気がする時がある。何が不安なのか、不満なのかもよく分かっていない。分かりたくもなかった。
 意識が清明でいられる時間が、ある一定を超えると、あの引き出しを開けてしまうかもしれないと思っている。開けるときは終わりの時だ。だから、狂ってしまっていたい。

 真は、自分が舞の前では物分かりのいい夫を演じていることを知っていた。そしてまた、舞がそんな夫の秘密を何もかも知っているかもしれない、とも思っていた。具体的にではなくても、気配が分かっている、そういうことはあるに違いない。妻を愛おしいと思っていないわけではない。少なくともそう信じたい。
 だが、例えばゲイの男が自分の性癖を隠すために、それは他人の目からだけではなく自分の心からも隠すためかもしれないが、社会的には結婚という手続きを踏むのとは少し違っているような気がした。

 社会的になら隠すことは何もない。もう既に、周囲の人間たちは、真とあの男の間にあったことを知っていた。確かにひと時、狂うほどに求め合っていたし、ぼろぼろになって殺されてもいいと思い続けていた。他人の好奇の目など全く気にならなかった。
 真は何故自分が結婚という偽善を選んだのか、ある意味ではよく分かっていた。この結婚という事象に最も傷ついているのは真自身だった。少なくとも結婚という契約を結ぶに至る過程では、舞を愛しいと思っていたはずだが、彼女を愛しいと思うそのことで傷ついていた。その一方で、こうして時々会っては寝るような関係の相手が幾人かいる、そのことでも傷ついていた。
 だが、本当に傷ついている理由は、そのことではなかったのだ。

 もちろん偽善であり、卑怯でもあった。自分が卑怯者であることに傷つくほどには偽善者ではないからこそ、誰かに無茶苦茶にしてほしいと願っている。福嶋はそのことを知っているのだ。だが真がそう願えば願うほど、福嶋は言葉や態度とは裏腹に、優しい人間になっていく。もちろん、これは相対的な問題だった。真が傷つけて欲しいと願うほどには、福嶋は真を傷つけないというだけのことだ。決して、福嶋が本当に真に優しいというわけではない。

 部屋に戻ると、ガウンを着た福嶋が真をソファに誘った。
 真が無視をして着替えようとすると、福嶋は、もう今更急いで帰っても遅いやろ、と言った。真は結局言われるがままにソファに座り、スコッチを受け取った。福嶋は向かいのソファに大きな身体を預け、脚を組むとゆったりと煙草を吸った。
 真がスコッチをほんの少し、申し訳程度に口に含むのを見届けると、福嶋はテーブルに投げ出してあった大き目の茶封筒を、顎でさし示す。
 真は福嶋の顔を確かめ、訝しみながら茶封筒に手を伸ばした。

 定形外の茶封筒は厚みがあって、持ち上げた感触からは本だろうと思った。真は福嶋の顔を窺ったまま、封筒から本を出してみて、思わずその重みに震えた。
 ソ連の科学者が書いた『宇宙力学論』という古い本だった。
 福嶋は茶封筒の下に置かれた何かの記事のコピーも見るように促した。

 行旅死亡人。
 官報に載せられた身元不明の死亡者の欄には、ある男性の死亡報告が綴られていた。
 五十台後半、男性。自称、相川武史。職業、発見当時無職。死亡の状況、アパートの自室で餓死。所持品、作業用ズボン、作業用上衣、シャツ数枚、下着数枚、布団一式、本(訳本『宇宙力学論』)。

 わずか数行の中に押し込められた誰かの人生の終焉の報告には、明らかにあり得ない自称が貼り付けられていた。
 真は本の裏表紙をめくった。微かに震える指が支えた裏表紙の内側に、古い万年筆の青黒い跡。
 伯父は自分の本には小さな星座の印を入れていた。
「その本、見覚えあるんか」
 真は福嶋を睨んだ。
「何の真似ですか」

「兄さんがその本に見覚えがあるようやったら、連絡してきてくれ、ゆうて伝言をことづかっとるんや」
「どういう意味ですか」
「死人の名前には驚くわな。せやけど、名前ひとつなら偶然かもしれへん。けど、もしも兄さんがその本にも見覚えがある言うんやったら、偶然が二つ重なっとる。それはもう偶然ではあり得へんわな」
「伝言って……」
「せや、香月からや。兄さんの事務所に直接言うたれ、ゆうたんやけどな、香月の嫌がらせや。兄さんがわしんとこに来てることを知っとる、ゆうんを兄さんに分からせたいんやろ。香月らしい、嫌味なやり方や」

 真はしばらくの間、その本の裏表紙を見つめ、福嶋には分からないようにそっと星の印を撫でると、そのままテーブルの上に戻し、固い声で言った。
「知らない、と河本さんに伝えてください」
「なんや、興味ないんか。仮にも親父と同じ名前を自称しとった人間の死亡記事やで」
「あの人がどこかで野垂れ死にしようが、俺には関係のないことです。河本さんがうちの事務所に正式に仕事を依頼されるのであれば、受けないでもありませんが」

 福嶋は例の豪快な笑いを見せた。
「そらそうや。調査事務所にタダ仕事を押し付けるんはタチが悪いて、香月には言うといたるわ」
 真はソファから立ち上がり、脱ぎ散らかしていた服を身に付けた。その様子を福嶋が黙って見つめている、その凍りつくようで熱い視線を背中にずっと感じていた。
 震えていることを、福嶋が見咎めただろうと思いながらも、もう継ぐべき言葉はなかった。
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Category: ☆雪原の星月夜 第1節

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コメント


こんばんは。

R18シーン、予想通りのお相手でした!
って、以前にどこかでこのシーンの予告なさっていらっしゃいましたよね。それで予想していたんですけれど。おっちゃんの身も蓋もない指摘、そりゃ素直に認めたくないでしょうけれど、あれこれ小さな声で抵抗している真が、相変わらずだなあと納得な新シリーズ幕開けでした。

上手だなと、ひとしきり感心したのは、確かに濃い内容で情報量も多いのですけれど、真の複雑すぎる内面の描写と、このストーリーの重要なファクター(相川パパの遺品らしきもの)を違和感なく散りばめて、冒頭でガッチリ読者を掴まえる構成になっていることです。簡単なようで、これはとても難しいし、彩洋さんならではの熟練したテクニックなんだろうなと思いました。

前回までのあらすじと、今回までの間に起こったこともさらっと入っているし、読む方は、「そうか、この世界とあの人たちは今こんなことになっているのか」と、あっという間に引き戻してもらえるようになっているのですね。

さて、真。自分で何がしたいのか今ひとつわかっていないような印象です。前作で何もかも吹っ切ってイタリア行った……はずでしたが、まあ、そう簡単にハッピーエンドにならなかったのは世の常として、その後、結婚しても落ち着けないのはあれとして、狂いたいと身を任せるのはおっちゃん。いや、だったら、暴力振るったけど忘れられない張本人のところで狂えばいいのに……って、まあ、冒頭からそれでは22万字書いてくださった彩洋さんの立場がありませんよね。この、うちのぐるぐるとはひと味違う迷いっぷりこそが真シリーズの醍醐味かもしれません。とにかく今後の濃〜い展開を楽しみにしています。

蛇足ですけれど、羨ましいなと思ったのは、方言の使い方ですね。標準語と方言を使い分けられるのって憧れます。

八少女 夕 #9yMhI49k | URL | 2018/08/06 04:41 [edit]


お帰りなさい!
夕さんもおっしゃられていましたが、お休みの間の
空白期間もなんのその、読む側から一瞬でこの世界に引き戻される……
これこれっ!
も〜これぞ彩洋さんの「真打ち!」なんですよ!
そして真打ちなだけに真ですが……
そうか…おっちゃんと……そうかそうか……
と妙に納得している自分がいました。
そうか、竹流とは結局あのあと紆余曲折(なんて言葉では片付けられない)あって
同棲を解消していたのですね。
あの事件で万全だった(と思われていた)竹流も半分壊れちゃったことで
これまでの二人のバランスが崩れちゃったのかもしれないですね……
この辺りは外伝でも語ってくださるということで……

福嶋の元に還ってしまった真。
なんだろう、夕さんも仰られてるように竹流の元にすっ飛んでいって狂うのはきっと
いろいろ難しいのだろうな。
これはある種の内罰行為(?)のようにも見て取れるので
竹流相手だったら罰にならず意味をなさないのかなとも思ったり。
福嶋みたいに、こういったらなんだけれどどちらかというと「下衆」な相手だからこそ
真もこうして自分の穢れのようなものをぶつけられるのだろうな。
でも真もちょっと言ってたように、今回の福嶋さん、ちょっと優しいように
わたしも感じました。でも真も指摘してるようにそれは彼が優しいのではなくて
真の求めているものがとうとう福嶋の度量すら上回ってしまったってことですよね。
それともやっぱり、何回もこうして身体を重ねていると擬似情愛のようなものが
お互いに生まれるのかな。

真の中にあるウロのようなもの、そこを満たせるのは竹流だけなのに
他の誰かでは絶対に埋められないから他の誰かのジャンクな愛(といったらまた語弊がありますがあくまでジャンクな、という意味で)、狂気、想いを
一緒くたに取り込んでウロを埋めているのかな、って思いました。(奥さんもその対象の一人?)

とはいえ真の心の外側では時間は確実に流れているわけで、真も竹流のことだけに
とどまっていられないのですね。
探偵、真の出番でしょうか?
ここからどう失踪事件の依頼につながっていくのか、次回も楽しみにお待ちしております!

canaria #- | URL | 2018/08/06 12:10 [edit]


夕さん、ありがとうございます(^^)

夕さん、早速ありがとうございます。
あ、そうか、そういえば、どこかでこのシーンの一部を放映、じゃなくてアップしたような記憶があります。でもその時は確か相手が福嶋だとは分からないようになっていたような? でもさすがです。あっさりと相手も当ててくださいましたね。リアル友が「そう来たか!」とびびってくれたこの冒頭シーンでしたが、意外に夕さん始めこちらに遊びに来てくださる方々には「やっぱり」だったのかも。そうそう、【海に落ちる雨】で福嶋が愛人契約?迫ってたんですよね、実は。真はあの時は無視していましたが。どうやって再会して現在に至っているのかは敢えて書く予定はないのですが、あれやこれや妄想して遊んでいます^^;
福嶋は悪人ですが、誰にも言わないけれど戦争のPTSDを抱えているおっちゃんなんですよね。前線で死闘の後、死んだと思っていたら、仲間と敵が入り乱れての屍の山の中で目を覚ましたという。だから、後はもう、人生なんてどうでもなっちゃえと思っているんでしょう。真に関しては、ミイラ取りがミイラになった系かもしれませんが(^_^;)

真のあれこれ小さな声での抵抗を指摘してくださってありがとうございます(^^)
そうそう、真って口数少ないけれど、心の中ではいつも流氷とか火山とか台風とか、渦巻いているんですよね。で、一応小さい声で抵抗? 
そうそう、夕さんちのグルグルメンバーってグルグルしながらも前に進んでいる、もしくはせめて同じところでグルグルしているような気がするのですが、真の場合、グルグルしているうちに反対方向へ飛んで行っちゃうようなところがありまして、こんなことに陥っております。
しかも、このおっちゃんだけにとどまらず、あちこちで悪さをしている(わけではないけれど)んですよ。なんだかなぁ、です。このぐるぐるどろどろの主人公に加え、せっかくの元気印だった美和ちゃんまで、今回は仁のせいでぐるぐる。しかも仁は仁で、あんなにすぱっとした性格だったのに、美和のことになるとぐるぐる三重奏。
仕方がないので、清涼剤を出しました。この中では悪妻さえも清涼剤かも知れないのですが、実は真の母校が登場。母校の女子高生(そのうち事務所に手伝いに来る)と仲良くなったり(いや、さすがに未成年には手を出しません)、剣道の生徒で保育園児の家出娘に心配してもらったり、う~ん、人タラシなのは、息子以上かも知れません。

> 上手だなと、ひとしきり感心したのは、確かに濃い内容で情報量も多いのですけれど、真の複雑すぎる内面の描写と、このストーリーの重要なファクター(相川パパの遺品らしきもの)を違和感なく散りばめて、冒頭でガッチリ読者を掴まえる構成になっていることです。
わは、ありがとうございます。いやいや、やることやりながら何をうだうだ言ってるんだよ、って気もしますが^^; でもこの冒頭、いろんな意味で気に入っています。ミステリーの鉄則、「冒頭に困ったら死体を転がせ」に半分適合しているような?冒頭です。死体は出てきませんが、タイトルは「行旅死亡人」で、しかも18Rから始まる物語(ひどい)。
真は依頼を受けて、童話作家を探す傍ら、自分の過去も探す羽目になる、例のごとく二重らせん構造(多重構造)物語のスタートです。すぐ多重構造にしてしまうのはくせなのかなぁ、読み手さんには申し訳ないような。

「今こんなことになっている」部分は、まだこの先にいくつも用意されているのですが、たぶん一番の問題は竹流ですね。あの人、もともとの性格がストイック系なので、修羅場の後で今本当に菩薩のようになっています。やっぱり地獄には行けない系の人間で、結局、例のごとく「こんなことではいけない」という虫が騒いでしまったのですね。たぶん、いらっとすると思います。そこまで決心したんだったらもう、地獄まで一緒に行けよ!って私も思うのに、あ~あ。真はね、もう心中する気、満々だったのに。だから今、真は狂いたくてもそこ(竹流のところ)では狂えないのです。狂わせてもらえない。しかも、ここではちょっと言いにくいけれど、要するにDVの結果、DVの加害者側がEDになっているというのが現状。ほんとに、世の中ままなりません。

> 蛇足ですけれど、羨ましいなと思ったのは、方言の使い方ですね。標準語と方言を使い分けられるのって憧れます。
方言、迷いますよね。実は耳で聞いているとそうでもないけれど、文字にして書くと関西弁も分かりにくいんですよね。以前、『天の川で恋をして』を書いたとき、迷った結果、標準語で書いちゃったのは、目で見る(読む)と方言はしんどいと思ったからなのですが……この話は、おおかた東京が舞台で登場人物は標準語なのですが、ここにばりばりの八尾のおっさんが出てきて同じように標準語でしゃべってたら間抜けだなぁと思ったのと、福嶋に標準語はあり得ない(だって下品なおっさんだもん)と思ったのと、あれこれでこうなりました。珠恵も、祇園の芸妓なので、さすがに標準語では書けないし。でも本当の祇園言葉で書いたら、もうなんのこっちゃわからないので、ある程度アレンジはしています。東北弁は文字で書いたら、ほんとに、何語?ってことになるんだろうなぁ。このへん、やっぱりちょっと迷います。

そんなこんなでスタートした第1節、引き続きよろしく御願いいたします。
次回は、くだんの真嫁の登場です。
コメントありがとうございました!!

彩洋→夕さん #nLQskDKw | URL | 2018/08/06 19:47 [edit]


canariaさん、ありがとうございます(^^)

canariaさん、早速ありがとうございます(^^) 
いや~、なんでこの冒頭はこんなことになっちゃったのでしょうか。自分でもよく分からないんですよ。そもそも、【清明の雪】は陽の物語、【海に落ちる雨】は陰の物語、となると次は陽の物語の順番のはずなのに、なぜかいきなりの怒濤の冒頭に^^; 意識したものではなく、もう勝手にこうなっちゃったとしか言い様がありません。
作家さんが、キャラが勝手に動いて、とか言うことがあるけれど、それは確かにそうなることもあるけれど、なんでしょうね、このシリーズ、私にとっては「ちょっと遠い親戚の物語=史実を書いている」って感じで、書きながら策を弄することってないのですけれど、勝手に複雑になってる……私の頭の中の構造を暴露しているだけのようで申し訳ないのですけれど。

でも、真骨頂と言って頂いて、嬉しいです。真はもう「好感度を気にしてどうこうするキャラ」ではないので、作者の意思は完全に無視されます。みんなに嫌われても、ここからどうすることもできない人。幸い、こんな危なっかしい人ですが、それなりに皆様に受け入れて頂いていて、ほんと、ありがたく思います。
確かに、この話で書いている文章は、同じ自分の書くものの中で、他の話よりも分厚いんだろうと自分でも思います。最近ピアノを弾いていて「この部分は音を分厚く」って言われて「分厚い音?何じゃそれ?」と思ったのですが、自分の中で解釈すると、そうかこの話の1ページ分くらいの気合いを入れて1音弾いたらいいんだと解釈(よけい分からん^^;)。
他の話を書いているときよりも、文章量が圧倒的に多くなってしまって、絶対にブログ向きじゃないですよね。でもブログ用にライトに書き直すなんて芸当はできないし、もうこれでいいや!と。

竹流とはあれから紆余曲折あったんですよ。いえ、別に隠し事をするような内容ではないのですが、そもそも今まで人並み以上の身体能力を持ち合わせていた人が、いきなりの不自由で、歩くのもままならないし、そもそも神の右手がぎこちないなんて、本当に行き場のない感情でぐちゃぐちゃの竹流の側にいたわけですから、しかも、竹流にとって、真以外に怒りとか悲しさとかぶつける相手もいなかったし……なんですよ。何回も一緒に「あっち」へ行ってもいいかって思ったようですが、そのたびに何かしら邪魔が入るし、紆余曲折で東京に戻ってきたけれど、老朽化した建物を改装するよりは壊して建て替えた方が早いって感じで(どんなたとえ……)、もう一緒にいたら何も解決しないし改善しないなと見切ったわけでした。
実はこの同居解消の裏に、竹流がある女性と密会していた?(本人はそのつもりなし)、まさにその相手が実は真の嫁なのです。あ、その時はまだ嫁じゃなかったのですけれど。だから、実はここはかなり歪んだ三角関係があるという。同居解消まで竹流はこれまでつきあっていたどの女とも関係を持っていないし、会ってもいないんだけれど(珠恵のぞく。彼女は心の妻ですから、例外。病めるときも健やかなるときも比翼の鳥・連理の枝)、それなのに、なぜか彼女とは多少仕事絡みもあってしょっちゅう会っていたのですね。真? いや、そりゃ面白くないでしょう。それで横からちょっかい出して嫁にしちゃったってほど単純でもないのですけれど、結果的には半できちゃった婚みたいなものだし。
でも、真の嫁って、竹流からしたら15も年下なんですよ。あ、でも、美和と仁も16歳ほど違うか。歴史の陰には女あり、ということで(なんのこっちゃ)。

福嶋は悪人ですからね~、真にはこの状況では丁度良かったのかも。たぶん、精神的な繋がりを全く求めなくてもいい相手、損得勘定全くなし、たまに情報のやりとりはあるけれど、後腐れないし、きっと楽だったのかも。「下衆」! 思わず「そうそう」と膝を打ってしまいました(^^)
一方で、嫁などは、自分の手元に取り込んでしまったら、どんなに冷えた夫婦仲でも精神的影響を被らずに済む相手じゃないのですね。
竹流のところはなおさらダメ。しかも、竹流は真にしてしまった事については後悔の念があるし、結局のところ真の望むように一緒にあの世まで行ってはくれなかったし(しかも、真はローマでどれほど彼が愛されて次期当主として期待されているかを見ちゃいましたから)、同居解消後はまるきり菩薩のような人になっておりまして。この人、真面目すぎるんでしょうね。しかも、DVの次は基本的にED状態なので、真をどうしてあげることもできませんし。
なるほど、内罰行為というのは、面白い表現ですね、うん、真側からしたらそれもあるのかも。なんだかんだと言いつつ、ころしてほしいとまで思っていた反面、この苦しさから逃れたいという気持ちもなかったわけでもなくて。最終的に同居を解消することを自分が決めたという後ろめたさは確かにあったかもなぁ。

> でも真もちょっと言ってたように、今回の福嶋さん、ちょっと優しいようにわたしも感じました。
そうそう、ここ、結構ミソなんですよね。真の求める穢れが、福嶋が与えてくれる穢れでは済まなくなっているという、ほんとに残念な状況。それに、本当のところは、多少なりとも情愛も生まれているんでしょうね。福嶋にしたら、真って、自分をこてんぱんにやっつけてた北海道のヒグマ(=長一郎じいちゃん、もちろん剣道の話)の孫。どこかでそういう思い出も関係してるのかもしれません。でも「福嶋をいい人にはしないで」とリアル友にも頼まれているので(だって、すごい悪人だけれど、実はいい人、なんてつまらないじゃないですか)、いい人にはなりません。一方で、真が死んだとき、「葬式には行かない」とある人に言うのですが、その理由は「死んだ顔見てもしょうがない」って。これってもしかしてやっぱり情愛なんでしょうかね。

しかもまた名言、「ジャンクな愛」……上手い表現だなぁ、さすがcanariaさん。
本当に必要なものってなかなか手に入らない、でも、本当にそれでなければだめなのか、もしかして他のもので埋め合わせたっていいんじゃないかって部分もあるのですよね。以前から言っていたように、ケイと真の類似点であるこの依存症(単に○○依存症というのではなくて、渇望し続ける事への執着みたいなもの)は、たとえばもっとも大事な核を手に入れても、まだ何か足りないって思ってしまうのかもなぁと。この物語の本歌となっている『源氏物語』でも、光源氏って紫の上が一番大事だったはずなのに、この期に及んでまた(藤壺の縁戚だからもしかして、なんて思って)女三の宮を正妻に迎えたりしてるし、どこまで行っても終わらない渇望……

そして。そうそう、真もね、お仕事しなくちゃいけません。自分の事に絡んだ仕事じゃなくて、今からちゃんと依頼人の登場? でも依頼人さえ一筋縄ではいかないようで。
次回は、真の嫁の登場です。お楽しみに!
コメントありがとうございました!!

彩洋→canariaさん #nLQskDKw | URL | 2018/08/06 22:18 [edit]


祝、連載開始!
大海彩洋さんの小説、しかもこのシリーズはとくに大作なので、これからしばらくの間は楽しませていただけそうですね。

そして、らしいといいますか、なんといいますか。
いきなりの超濃厚ラブシーンで、度肝を抜かれました。あらあ、真っちゃん、福嶋のオッチャンと続いていたんですね。他にもそういう相手がいそうな感じだし、いつのまにかヨメ貰ってるし。
ううむ、真っちゃんを「満足」させられる相手って、とどのつまりは別れちゃったあの御方だけなのでしょうし。まあ、だからこそ、ややこしいんでしょうけどね。
で、真っちゃんみたいな、死に憑りつかれたような状態の人間が、『阿寒に果つ』系の事件を追うというのは、どうもロクなことになりそうもないですね。
そして衝撃の記事。え、真パパ、し、死んじゃったの? しかも餓死って。なんかありえなさそうだけど。

まずは人物や状況の提示というところなのだと思いますが、すでにこのボリュームと内容の深さは、さすがです。
これからも気合を入れて読ませていただきます!
次話、ワケありげなヨメの登場が楽しみです。

TOM-F #V5TnqLKM | URL | 2018/08/07 16:20 [edit]


始まったあ♪
何かと話題な(ぷぷ^^)文字数ですが、もう一気に最後まで行きましたよ。
もう、冒頭から掴まれましたから、最後まで行くしかないじゃないですか。
読者よりの文字数うんぬんはもう、読者次第じゃないですかね。
なので、作者の決める文字数で何の問題もないはずです。

餓死ですかあ?(←いきなりここ -_-;)
この件をめぐるオッサンと真とのやり取りを追いながらのニマニマが止まりませんでした。まさに怪しい読者化(^^;)
凍りつくようで熱い視線、これで妄想がどこまでも行ってしまう…(←おかしい><)

思ったのですが、前作を読んでいなくても、この物語から参入したとしても十分に理解できるし、楽しめる流れとなっていると思います。
新読者さんが増えるとイイなあ^^
大勢で物語についてワイワイと語りたい。

あとは皆様のおっしゃることに大いに共感しますので、同じことは繰り返しません。
あれこれに余韻を残しながらのスタート。
今後の展開が楽しみです♪

けい #- | URL | 2018/08/07 20:46 [edit]


TOM-Fさん、ありがとうございます(^^)

連載開始を祝して頂いてありがとうございます!
うぅ、でも、済みません(>_<) やっぱりこの冒頭、まずかったかなぁ。実は恐れていたのは、このシリーズ初めてさんがここから読み始めたら「なんじゃそれ?」って引かれないかということだったのですが、でもなぁ、今さらマイルドに書き直せるって訳でもないし、いいや!って開き直ってアップしました。それに、きっと滅多に初めてさんはおられないだろうし。でも、ここで躓かずに果敢に?飛び込んできて頂きたいと願うのでした。
しかもですね、この部分書いたのって、たぶんまた相当前で(ブログを始める前にはできあがっていた部分)、その頃の方が恥ずかしげもなくこんなシーンを書けたのですが、この酸いも甘いもかみ分けるって歳になってから読み返すと、自分でちょっとこっぱずかしいのですね。まぁ、でも、この話はこういうシーンが出てくるけれど、それはご飯のシーンと同じ程度の位置づけでして、ほんとに真が何やってても「朝ご飯食べてる」って感じで流してやってください(全然違うけど^^;)。
福嶋のおっちゃんとはたぶん、あの事件の後、別に会いに行く用事がなかったらそのままだったと思うのですが、なんかあったんでしょうね。町で偶然ばったり、はなさそうだから、敢えて会いに行ったのか、それとも調査絡みで何か情報が欲しかったか。【海に落ちる雨】で福嶋が愛人契約?迫ってましたものね。たまに情報売ったろか、報酬は身体で払ってくれたらええとかって。でも、ここに至って、全然情報とか介在してなさそうです。この辺は作者も想像して楽しんでいるだけです。

そして、問題は、他にもいるって事ですかね~。っても、そんなにたくさんではなく(ヘンな表現だな)、一番の問題は竹流の元カノのひとりとつきあってるってことでしょうか。さらに、嫁をね、いつの間にかね、うんうん。
真の嫁、人物像が二転三転しました。たぶん、相当初期の頃の私のイメージは悪妻だったのですね。悪妻というのは、悪女とは違って、かなり中途半端なイメージですが、多分に外から見た印象の問題で、「夫婦とは大概こうあるべきだろう」「少なくとも結婚するとき位は愛し合ってる、もしくは少なくとも嫌ってない」「少なくとも気持ちは夫の方を向いている」という状態とは違っているという意味合いかなぁ。女としてはそんなに悪い子じゃないんですけれどね。たぶん。でも貞操はやや危うい。それはもう、夫がこんなんだから、どっちもどっちってところでしょうけれど。あ、誰とでもどうこうというようなんじゃないんですけれど、「それなのにどうして真と結婚したのか」ってあたりでは、真にとっては悪妻、なんですよ。

たぶん、私のリアル友たちが知っていた頃は、舞(嫁)のイメージは、珠恵だったんですよね。珠恵という人物は、実は後から出てきたのですが、舞のイメージを良妻へ方向転換した際に、書きながら「でもこれって竹流の好みなんだよな~」と思ってて、なんか真の嫁としては違和感があったのです。で、竹流の嫁(籍は入れられないけれど)に座らせたらぴったりはまっちゃって、やっぱりこっちだよなぁ、と。そこに同じ系統のキャラを重ねることは物語上あり得ない。で、真の嫁を悪妻に戻したら、なんかしっくりきちゃって。でもコンセプトの芯は変わってないのです。
真の嫁のコンセプトは、「夫に替わって私が闘う」というタイプ。夫を愛しているから夫に何かあったら、夫のために私は闘う、んじゃなくて、夫が甲斐性ないから私が闘うわ(夫なんてどっちでもいい)って感じかも? ただ……もしかすると結構可愛い女かも。

でも、真の方もね、元家庭教師よりも大好きな女と結婚したんだったら、この話、身もふたもなくなっちゃいますからね~。4代も先でめでたくハッピーエンドを迎えるなんて流れは要らなくなっちゃうわけで。インディアンのおじいちゃんに言われたように、「出会ってしまったから運命が拓けた」って話ですものね。

> で、真っちゃんみたいな、死に憑りつかれたような状態の人間が、『阿寒に果つ』系の事件を追うというのは、どうもロクなことになりそうもないですね。
おぉ、これはもう、さすがTOM-Fさん、はい、もう全くもってその通りです! こんなふわふわした男が『阿寒に果つ』ですからね~。【海に落ちる雨】は、真が今の自分にぶち当たって行く物語でしたが、今回は過去の自分に(そして二人の父に)ぶち当たっていく話になっているかも。

> そして衝撃の記事。え、真パパ、し、死んじゃったの? しかも餓死って。なんかありえなさそうだけど。
さぁ、どうでしょうか! うん、でもこの人、ろくな死に方はしそうにありませんよね。謎解きというような話ではないのですが、この行旅死亡人には真の親たちの過去が関わっているのですね。
実は、この第1節自体が、物語の大きな「起」になっていまして、それこそ「起」しつつ「承」しながら「転」して、なんて事態は進むのに、真はずっとぐるぐるじたばたしています。でも、夕さんちの愛しきぐるぐるメンバーとは違って、「おい! 大丈夫か! そっちじゃないよ!」な真です(あ、以前からそうでしたね、成長しとらん)。
いやいや、そんなに気合いを入れずに、ほわ~っとおつきあいくださいませ!(って、言いつつ、どろどろの世界にようこそ!って感じの話になってるなぁ)
はい、真の嫁、お楽しみに!
コメントありがとうございました!!

彩洋→TOM-Fさん #nLQskDKw | URL | 2018/08/07 21:26 [edit]


けいさん、ありがとうございます(^^)

けいさん、よかったぁ。文字数気にならないよと言って頂いてありがとうございます(^^)/
文字数が多いと問題なのは「とっつき」かなぁと思うのですよね。ぱっと見た印象で読む気がしなくなったりされるんだろうなぁと思ったりして。でも逆に、文字が少なくて妙に行間を空けてあったりすると、内容が薄っぺらく見えて、それもやっぱり読む気がしなくなったり。中身を考えたら読みやすさだけじゃダメだろうなぁと思うけれど、読み始めてもらわなければ始まらないし。
ブログで小説をアップするのって、その辺りちゃんと考えないとダメなんだろうなぁ。って、いつも思うけれど、結局自分勝手にしちゃってます。
文字数気にせず、読み始めたら中毒になるってのが理想だけれど、読み始めるのがひとつの高いハードル。だからこそ、冒頭って大事なんでしょうね。最初の3行だな、勝負は、って思うけれど、それが上手くいったためしがない。情報を詰めすぎてもダメだし、ぺらっぺらでもその先を読む気がしなくなるし。
この冒頭は、実はちょっと気に入っています^^; えっと、えっちなしーんだからというわけではなくて、インパクト大だってところで。でも、これは自分でも意図したわけじゃなかったのですよね。【海に落ちる雨】を書き終えたとき、既にこのファーストシーンが勝手に生まれちゃってたので。
取っ付き悪そうだとは思いますが、掴まれちゃってくださってありがとうございます!!

> 餓死ですかあ?(←いきなりここ -_-;)
はは。餓死ですかね。なんか皆さん、餓死に引っかかってくださってるなぁ。まぁ、ろくでもない死に方しかできなかったんでしょう。っても、これが誰だってのはまだこれから、なので、もうちょっと引っ張らせてください。とは言え、真がその気になる(この件を調べる気になる)のは、第1節ではないので、まだしばらく暖めておいてくださいませ。

> この件をめぐるオッサンと真とのやり取りを追いながらのニマニマが止まりませんでした。まさに怪しい読者化(^^;)
> 凍りつくようで熱い視線、これで妄想がどこまでも行ってしまう…(←おかしい><)
おっさんと真もやり取りも、楽しんでいただけて何よりです! ここの会話も、なかなか楽しそうですよね。いや側で見てたらこわ~いと思うけれど、ちょっと離れて鑑賞するには楽しいはず。この話では福嶋は別に重要人物ではないので、前回みたいに真に悪いことをさせようとかってのはないです。でも、ちょっとした気付け薬くらいの役割は果たしてくれそうですので、胡椒風に使ってみようと思います(くしゃみが出る?)。
しかも! 私が自分で引っかかっていた「凍り付くようで熱い視線」に引っかかってくださるとは!
いや、なんかこの部分、書き換えようと他の表現を考えたんですよ。でも、福嶋が実際にどう思っているかじゃなくて、真がそれを背中でどう感じたか、だから、これでいいか!と。福嶋がどう思っているかってちょっと興味ありますよね。この人、女も男も何でもありだと思うけれど、意外に純なところもあったりして? いや、でも、文章に書くときは悪人です(きっぱり)。

> 思ったのですが、前作を読んでいなくても、この物語から参入したとしても十分に理解できるし、楽しめる流れとなっていると思います。
わ。本当ですか? そう言っていただけると嬉しいなぁ。でもいきなりこのシーンから読まされた方、「いったい何の話?」って思われたろうな。でも「いったい何?」って思ってもらう事って大事なのかも知れませんね(開き直り^^;)。
でも、真の複雑な心情、中身はともかく、その雰囲気は掴んでもらえたかなぁ。全く別口の登場人物も沢山出てきますし、レギュラー陣、特に真の事情などは文章内にしっかり書いていきますので、多分大丈夫かなぁ。
読者さんは増えそうにないけれど、一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです(^^)/

次回は、真の嫁、初登場です。期待されるほどじゃないと思うけれど、ちょっとは面白いかも(^^)
引き続きよろしくお願いします。
コメントありがとうございました!!

彩洋→けいさん #nLQskDKw | URL | 2018/08/08 02:14 [edit]


大海さん~、本当に久々のシリーズ再会!
早くから読んでいたんだけど、来るのが遅くなりました><

長く間が空いたにもかかわらず、数行であの独特の空気が戻ってきました。説明しにくい上、答えのない真の感情も、今までの読者ならすっと受け入れられるはず。
最初のシーンが福島と一緒というのも、なんだかうれしいです。
こんな状況ですが、真が福島のそばに居ると、なぜかホッとする(笑)

私の記憶違いでないなら、真が奥さんを貰っている状況と言うのは、今回初めて……ですよね。前回から、真の身辺もいろいろ変わったという事なんですね。

真が結婚。ものすごくミスマッチな感じですが、真自身もそこに葛藤があるのが、なんだかすごく理解できます。彼なりの考えがあったんでしょうが、いまだにしっくり来ていない。世間で言うと無責任なんだけど、真の行動は、動物的で、人間社会の常識にあてはめてはいけない気がします。(この不可解さも楽しい)

そして、思わぬものが舞い込んで来ましたね。この死亡報告書みたいなもの、正式なものなのか。
真の動揺は、この後どういう感情に変化していくのか。
この後も、楽しみにしています。

lime #GCA3nAmE | URL | 2018/08/10 09:11 [edit]


limeさん、ありがとうございます(^^)

limeさん、お忙しい中、ご訪問&読んでくださってありがとうございます!!
うんうん、久しぶりです。ここんとこ、新作は短編逃げしていたので、こうして以前に書いたものとは言え長編をアップし始めると、なんか身が引き締まる思いがいたします。って、身が引き締まっていきなりこのシーンからスタートするってどうよ、って気がしますが、もうこの人、しょうがないので、みなさま、多分諦めてくださっているだろうなぁと。

> 長く間が空いたにもかかわらず、数行であの独特の空気が戻ってきました。説明しにくい上、答えのない真の感情も、今までの読者ならすっと受け入れられるはず。
うぅ。そう言っていただけると、とても嬉しいです。今更ですが、他の誰の話を書くときよりも、真を書いている時の自分が一番テンションが高いというのか、熱量が違うというのか。それをアップするための校正中にも感じます。真も竹流ももう修正不可能というのか、ああいう人たちで、今更もっと世間受けする感じのいい人物に書き換えようってもできないんですよね。
だから、最初にこのシーンを予備知識なく読まれた方がいたら「なんじゃ、こいつ」って事にならないかなぁと心配したのですが、だからといって書き換えることの出来るような対象ではないので、このまま放置です^^; う~ん、ここから初めて読んでくださった方が万が一いらっしゃったら、ほんと、申し訳ない。逆に、こいつ、一体何者でなんでこうなってるの? って思っていただけたら、もっと嬉しいのだけれど。

そして、お久しぶりの方々には、このシーンであの世界に引き戻されたと言っていただけて、とても嬉しいです。わ~い。
で、さすがlimeさん。最初のシーンでいきなり福嶋といっしょって、どういうこと? じゃなくて、なぜかほっとすると言ってくださって、ちょっと感動しました。ん? 変な表現だな。でもこのシーン、【海に落ちる雨】を書き終えた瞬間に浮かんできたシーンだったので、もう書いちゃえって、聞き終えた途端にファーストシーンを書いていたという。
真は相手によって自分を変えているようなところがありますが、年上のおっさんには基本的に逆らいつつ甘える、のかも知れないなぁと思います。いや、甘えているわけではないか。父親とあんなことになっているので、本当に信頼できる父親のような存在をいつも探しているのかも知れません。まぁ、それが竹流だったのだけれど、どこかの時点で竹流はただのお父ちゃんじゃなくなってたからなぁ。
実のオヤジへの不信感、それに不信感の裏にある、それでもどこかで信じたい思いと、あれこれ複雑な気持ちがあって、その結果、けっこう「ヤバいおっさん」には馴染むのかも。特に唐沢(今、服役中。それなのに、真ったら、時々面会に行ってるし)には、どう考えても可愛がられてたしなぁ。唐沢は怪しすぎるおっさんですけれど、真は嫌ってないんですよね。福嶋も悪人だけれど、それは真が嫌う理由にはなっていないのかもしれません。

> 私の記憶違いでないなら、真が奥さんを貰っている状況と言うのは、今回初めて……ですよね。前回から、真の身辺もいろいろ変わったという事なんですね。
はい。真の「その後」ってのは一度も書いていないんですよね。短編とか外伝でも。それなのに、いきなり息子とかやしゃ孫の話を書いているという。
前回の【海に落ちる雨】から2年半くらい経っているので、あれこれ状況は変わっています。その事はお話の中で書きながら、話を前に進めていきます。そもそも真の過去とか、家族の過去とか、色々絡みながら進んでいる話なので、前回書けていない家族の事情とかもあれこれ書いていくことになると思います。まずはお父ちゃん(実父ではなく伯父さん)の事情が絡みますので、何となくでもイメージを思い出していただけるようにしていきたいと思います(^^)/

真が嫁をもらっている……そうそう、ミスマッチといいますか、なんといいますか、なんでそうなってるのかに興味がありますよね(いや、興味を持って頂いてたら嬉しいなぁ)。そちらは物語の中で出てきますので、またお楽しみくださいね。いや、まぁ、引っ張るほどに濃い内容ではないのですけれど^^;
結婚に到る過程では、真はあんまり考えていなかったかも。なんかもう、勢いだったとしか言えないんですよ、ほんと、limeさんの仰るとおり、動物的?な衝動のほうが……誰かが言ってましたが、結婚ってフィーリングじゃなくてタイミングって誰かが言っていましたが、まさにそんな感じだったかも。要するに竹流とあれこれあって疲れてたんでしょうかね……どっちにしても無責任には違いは無いのですが、そこはもう夫婦共にお互い様、なんです。だから、喧嘩両成敗?

この行旅死亡人というのは、身元不明の死者のことですが、官報に載っているので、誰でも閲覧できるのですね。その気になれば。この件は、いずれまたあの小役人?香月=『河本』が福嶋に言われて(調査事務所にタダ仕事押しつけるなよ~って)会いに来ますので、その時に詳しく(^^)/
そして、依頼を受けた事件と真自身に絡む事件がオーバーラップしていく、例のごとく多重構造のお話です。今後ともよろしくお付き合いくださいませ。
コメントありがとうございました!!
そうそう、コメント、本当にお忙しい中、済みません。あんまり気になさらずに、読み逃げでも全然問題ないですからね~(って、それじゃあ読めって言っているみたいだなぁ)。

彩洋→limeさん #nLQskDKw | URL | 2018/08/11 11:06 [edit]

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