FC2ブログ
11 «1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31.» 01

コーヒーにスプーン一杯のミステリーを

オリジナル小説ブログです。目指しているのは死体の転がっていないミステリー(たまに転がりますが)。掌編から長編まで、人の心を見つめながら物語を紡いでいます。カテゴリから入ると、小説を始めから読むことができます。巨石紀行や物語談義などの雑記もお楽しみください(^^)

 

【雪原の星月夜-8-】 第2章 霧の港(4) 指先 

【雪原の星月夜】8回目です。
前回のシーンの続きで、久しぶりに登場したあの人とのシーンにどっぷり浸かっていただく回です。

このお話には本歌があるってことを何度か書いていますが(このシリーズ自体、大元が本歌取りなんですもの。え? 本歌は何かって。アンデルセンの『人魚姫』です。お魚なのに人間の王子に恋をしちゃって、ああなってこうなって、結局海の泡になる……)、その渡辺淳一氏の『阿寒に果つ』をこの間、何十年かぶりに読み返しました。
実は細かいところはすっかり忘れていて、自分の中の神路月(昴)の物語が既に本歌を押しのけていた事に気がつきました。さて、どこまで本歌に近づけるのか、読み返して自分で面白がっていたのでした。

さらにこのお話、しょうも無いトライアルをしていることがあります。
ここは「指だけでえっちなシーンを書く」って試みだったのですが、見事に玉砕しました。指だけでいたしているようなシーンが書いてみたかったんです。そもそもなんで、こんなトライアルしてたんかな? 多分、ずっと以前に友人とそんなチャレンジについて話していたことがあったのかも知れません。実際にあれこれなさっているよりも、いろっぽいシーンになってたらいいんだけれど。

今回で第2章『霧の港』はおしまいです。
次回から第3章『プラネタリウム』。【奇跡を売る店】シリーズの保育園児・和子の原型、つまり、本家・真シリーズで立ち位置を同じくする保育園児・あかりが登場します。
といっても、年内は旅行記の続きアップと、60000Hitのリクエストを1つ2つアップして終わりそうだなあ。こちらの第3章は年明けですね。

【真シリーズについて】
【雪原の星月夜】の登場人物紹介はこちら→【雪原の星月夜】(真シリーズ)登場人物紹介
万が一、前作【海に落ちる雨】に挑戦したいと考えてくださる方は→左のカラム・カテゴリから選択してくださいね。
【海に落ちる雨】部分読みも可能
【海に落ちる雨】始章:竹流と真の生い立ち
【海に落ちる雨-52-】第9章 若葉のころ:真の中学生の頃。
【海に落ちる雨-59-】第11章 再び、若葉のころ:真が高校生の頃。
『若葉のころ』には真の学生時代が登場、今回の物語で登場する母校の院長(校長)先生や灯妙寺も少し登場。



【雪原の星月夜・第1節】 第2章 霧の港(4) 指先

「あんたこそ、聞かないのか」
「何を」
 闇の中には薄暗い灯だけなのに、目が慣れてくるとすぐに明るすぎると思える。誰にも見えないように隠してあった、泣き出したいのか叫びだしたいのか分からない心を、この灯りの下で晒すわけにはいかなかった。

 真が答えないでいると、竹流は言葉のひとつひとつを自ら確かめるように言った。
「お前がもし、本当にそういう依存症なら、責任の半分は俺にあるのかと考えていた」
 淡々とした他人事のような調子に苛立って、半分、と真は声に出していた。もっともそれは相手に届いていたかどうかはわからない。竹流は何も反応しなかった。

 混乱している。福嶋の威圧感ある重み、雪原に黄金の光を落とす星月夜、神路月のブラウスの文様、事務所の周りを見張っている警察官とヤクザ、図書館の窓から零れる冬の陽射し、昔通っていた学校の制服と校章、この世に彷徨う死者が求める契り、涙を飲み込んだ悲鳴のような美和の声、霧に包まれた港に逃げ込む幾つもの人の心。
 抱けよ、と言った時も、竹流は黙って真の頭を撫でていた。やはり、低く呟いた声が相手に届いた陽には思えなかった。だが、少しの躊躇うような間を置いて、竹流はベッドサイドの灯りを消し、ベッドに潜り込み、真を背中から抱きしめてきた。

 背中から感じる温もりは現実のものとも思えず、これは夢の中かも知れないと思いながら、真はそのまま目を閉じた。いつかのように、現実と夢の境が曖昧になっている。そう言えば、何百回と同じ役を演じている役者は、現実の生活に戻っている時間にも、自分が自分なのか、その役の人物なのか分からなくなる時があるという。
 自分という器はなんと曖昧なものなのだろう。境が曖昧になると、一番始めに失われるのは重力だ。なにひとつ、重さを感じない。身体は浮き上がり、あの崖からも飛べると思う。

 頭を締め付けるように抱かれて、不意に真は現実の重みを思い出した。闇に溶け出そうとする真を無理矢理に現実に引き戻す強さを持ちながらも、彼の左手はただ子どもをあやすように頭を撫でているばかりだ。
 真はたまらなくなって、自分の腹の近くにあるあまりにも静かな竹流の右手を摑み、自らの下腹部へ手繰り寄せようとした。
 しかし、その手に触れた瞬間、皮膚の内側から悲鳴のようなものが真の内側へなだれ込んできた。真は氷に打たれたように、自らの手の力を抜き、竹流の手を離した。竹流の右手は重く、血の巡りが失われたように冷たかった。

 注意してみなければ、どれほどの不自由が残されているのか分からない右手だったが、冬ともなると、体温の調節機能を失ってしまったのか、時に恐ろしく冷たく重く感じることがあった。やはりあの時、神経の一部が切れてしまって、本当は、それ以後も全く回復していないのではないか、竹流はもしかすると例のごとく自分の弱みを一切見せないように、上手く隠し通してるだけなのではないか、そんなふうに思えるのだ。
 そういう時、真には、なにひとつとして彼にしてやれることがなかった。どれほど想っても、替わってやることもできない、彼の苦しみを離れたところから見ているだけで、ただ怯えているしかなかった。

 だが、皮膚の内側に恐怖と闇を閉じ込めた彼の手を離した時、逆に竹流の手が突然、失われた機能を取り戻したかのように真の手を追いかけ、その指先が微かに、探るように触れた。
 真は震えた。

 竹流の指先はやはり冷たいまま、真の手の甲を探り、皮膚の内側に潜む骨、腱、血管をゆっくりと撫でてゆく。
 真は身体の奥が昂ぶるのを感じて、それをやり過ごそうと僅かに身動ぎした。その心の震えを察したかのように、竹流の指が拳の関節で止まる。
 真は唾を呑み込んだ。体液の全てが指先に移動してしまったのか、口の中は乾いていて、咽喉がひきつった。躊躇うような動きで、竹流の指が真の指に絡む。触れていると、彼の冷たい指先よりも、真の指のほうが遥かに温度を失っていることに気がついた。

 やがて重ねた手を強く握りしめ合う。身体の全ての機能が止まり、同時に、時間が止まった。
 重ねた手の温度は、徐々に上がり始める。竹流の手のひら、指が微かに汗ばんでくる。汗は真の皮膚を介して、筋肉や血管に沁み込んだ。傷つき何もかも失ったように思えるこの右手には、まだ生命が宿っていた。その体温と湿度を感じながら、真は目に見えないあらゆる束縛の隙間を掻い潜り、そして、自分自身を開放した。

 真の指先にも温度が戻り、時が動き始める。
 真は竹流の指の関節を探った。
 衣擦れの音ひとつなく、静かだった。その深い静寂の中、全ての感覚が指先に移動し、指だけが躊躇いながら探るように絡み合った。神経という神経が、その場所だけに集まり、相手を感じる。

 熱を帯びていく指先とは裏腹に、身体の芯は静まり返っていた。指以外の全ての器官が消えてしまっていた。わずかに残された生命の機能の全てが、指先だけで蠕き、求め合い、指と指の間の敏感な皮膚を食み合う。
 時折、竹流の右手はもどかしげに動きを止めた。一度刃で貫かれた手ではどうしてもできない動きがあるのか、あるいは感情が指の運動よりも先に走ってしまうからなのか。躊躇うように竹流の指が止まると、真はその指に自分の指を絡みつかせた。

 真が昂ぶる感情を持て余して指を止めると、竹流がその心を追いかけるように真の指を愛撫した。絡めるごとに更に指先に熱が集まり、昂ぶる。皮膚は呼吸し、相手の息を求め、じっとりと湿った体液を絡ませあう。どうやってこの指先を溶かし合い、ひとつになればいいのかと、もがくように複雑に絡んだ指は、このまま縺れきってしまいそうになっていた。

 やがて予想もしない何かとてつもないところに昇り詰めたかのように、二人の手が止まった。いつの間にか、手のひらを合わせて強く握り締めあう。全ての温度も湿度も、二つの手のひらの間に閉じ込められていた。
 咽喉もとに、大事なものを取り零すまいとするかのように、竹流の左の手が触れた。身体が痙攣したように震え、真は微かに硬直する。長い時間止めていた呼吸がようやく戻り、真は肩を震わせた。

 昂ぶった感情の余韻で、遠くに取り残されていた意識が、自らの身体のうちに緩やかな速度で戻ってくる。
 震えるままに、涙が零れた。ようやく蘇った背中の神経が、竹流の胸から熱と湿度を直接伝えてくる。竹流の呼吸がいつもより速いことに、真は今更ながらに緊張した。

「歌」
 声を出してみて、喘ぐように掠れた声だったので、自分でも戸惑った。竹流が、求め合った指先を微かに解いた。
「あんたの店の名前、なんかの歌と関係あったんじゃなかったっけ」
「それがどうかしたのか」
「いや、何か、今日ふと気になったのに、思い出せなかったから、気持ち悪くて」
 会話など必要がなかったのに、身体のどこかを動かしておかないと、このまま本当に溶け合って、原型を留めない生命体に変わってしまうような気がした。

 咽喉から言葉を零すごとに、身体の細胞が本来の機能を思い出して、活動を再開する。こうしてようやく、相手を別の生命体だと認識できるようになり、竹流も同じように感じていたのか、溶け合うことなどない別の個体に戻った真の身体を改めて、確かめるように抱き寄せた。
 異なった身体のうちに戻ってしまった魂を、幻だけでも引き戻そうとでもいうようだった。
 だが、その力は以前のように乱暴なものではなく、ただ静かで、包み込むように優しかった。

 高校生の頃、つまり真の首を絞めたあの女が亡くなった頃、竹流はよく真をこうやって抱きしめてくれた。それは、親が子どもを理屈抜きに赦し愛するのと同じようなものだった。何もかもお前のせいじゃないと言われているようだった。
 そして今、あの激しい想いと力とで愛された時間を過ごした後では、その優しさは逆に苦痛でさえあった。真はその苦痛を、縋るものは何一つない大海原の真ん中に浮かび、もはやどうすることもできないという静かな諦念のうちに受け止めた。

「天の海に 雲の波立ち 月の船 星の林に 漕ぎ隠る見ゆ」
 竹流が耳元で囁くように歌う。震えるような吐息は、三十二音の言葉が語られる間に、天の海が凪いでいくように静かで穏やかなものに変わっていった。
 本当はその歌を忘れてしまっていたわけではなかった。ただ、この声で囁くように耳元で歌って欲しかっただけなのだ。

「柿本人麻呂だったっけ」
 真は確かめ、自分の声が、うちに押し込んだ感情よりも遥かに穏やかであることに、不思議に安堵した。
「日本の古代の人麻呂なんて名前の人が、宇宙を歌ってるってのは、やっぱりどう考えても不思議な感じがする。宇宙は古代から変わりなくそこにあるのに、人はひとつの人生の中でどれほど大事なものを失っていくんだろう」
 竹流はまだ真の頭を撫でていた。耳元をくすぐる呼吸は、すでに平静だった。

 十代の若者のようにセンチメンタルなことを言っていると考えて、真は自分で自分の言葉を貶める。それでも竹流の声は暖かく、柔らかく、真の汚れていないどこかを包み込むようだった。
「俺が、何であの店にそんな名前をつけたか、話したかな」
「いや」
「『天の海』、『月の船』、『星の林』……この歌を教えてくれたのは功さんだよ。日本の古代の歌人の歌だ、洒落てるだろうって。あの人が居なかったら、俺は深く人を信じることをやめてしまっていたかもしれないと、今でもそう思っている」

 竹流は今でも、真の伯父の功に心の底から感謝しているのだ。だから、功が息子として大事にしていた真のことを気に掛けているのだと、全ては功への恩義に報いるためだったと、そのように聞こえる言葉を、真は耳の中でしばらく持て余していた。
 そして、福嶋の事務所の奥にある彼の私室で手に取った、功の本の重さを思い出し、右の手をひとり、握りしめた。

 迷い苦しみながらも真を育ててくれた功の手は、いつも真の前に幾千万もの星々を映し出して見せてくれた。本の中にも、書斎の天井にも、不安で潰れそうになっていた心のうちにも、確かな軌跡を描いてくれた。
 功の『宇宙力学論』、あの本を福嶋のところに残してきたことを後悔した。意地を張るものでなかったのだ。本当なら頼み込んででも、あの本を受け取って来るべきだった。

 真は背中から沁み入るような温もりを感じたまま、目の前の真っ暗な空間を見つめた。
 その空間の直ぐ先にはブラインドを下ろした窓があり、窓の向こうには冷えた廊下、その向こうに五角形のベランダが切り取った暗い空が、星を宿している。その距離の永遠に、真は震えた。
 この目の前の暗闇は距離にすれば僅かに一メートルほどのはずなのに、その深さに身体ごと震えるような心地がする。今背中に感じている温かさも、距離にすれば一分の隙もないはずなのに、その間に深い深淵が横たわっているような気がした。

 真は目を閉じた。今でも、この男は真を殺したいと思ってくれているだろうか。いや、そうではないから、この男はあの時、真の手を離したのだ。そして真のほうは、今もこの男を殺したいと願っている。これはまさに鬼宿の妄執なのだろう。

 真は夢を見ていた。それは確かに見覚えのある光景だった。
 その女は真がこれまでに見たどの女よりも美しい女だった。窓の向こうには、木々の緑でさえ透明に染めた真っ白な光の世界が広がり、女は無造作に束ねた長い髪を肩の下にまで垂らして、ベッドの上に座り、窓枠に半分身体を投げ出すように預けている。赤い唇は時々歌うように開かれる。淡い茶色の光を湛える瞳に、真の影を取り込むと、女はいつも微笑んだ。

 あの人は、真を誰だと思っていたのだろう。自分を捨てた男の息子だと知っていたのだろうか。それとも彼女の夫だと思っていただろうか。だが真の外見は功にも武史にも似てはいなかった。ただ彼女と同じ孤独という闇を彷徨う魂、いや魄だと思っていたのではないだろうか。

 鬼宿、という言葉を眼にしたときから、真はそれがまさにあの女と自分のことだと、ずっとそう考えていた。周囲で起こっている出来事、流れている時間に全くついていけずに、ただ何もかもを自分の内側に押し込んで混乱し、自分自身は全く動けずにいる。過去に縛られ、その時間を共有した誰かを同じ闇の中に引きずり込もうとする妄執が、真の、そしてあの女の足首を捕まえている。その相手はもう既に、過去ではなく現在を、未来の時間を生きているというのに。

 何度も何度も同じ夢を、それも現実と区別のつかない夢を見ていた。意識は覚醒したままだったのだろう。
 同居していた時、朝、先に目を覚ましているのは、いつも竹流のほうだった。もっとも、真は先に目を覚ましたときには大概走りに出てしまっていたので、竹流の寝顔をじっと見つめていたことなどなかったから、そのように誤解しているのかもしれないし、竹流も時々夜通し仕事をしていることもあったので、先に眼を覚ましているのか、それとも一晩中眠らずにいたのかはよく分からないこともあった。

 離れてからは、ここに泊まりに来ると、真はまた草食動物のように短いスパンの眠りを繰り返すようになった。短い眠りは脈絡のないシーンだけの夢を伴っていて、その夢はしばしば強く記憶に刻まれた景色であるからか、現実感が強く、夢の中にも関わらず五感の全てが鋭く働いていて、ほとんど身体を休めていないような気がしていた。
 短い眠りにつくのは大概朝方で、気を失っているだけのような時もある。

 一度は命の向こう岸に連れて行かれ、右手の機能の一部を失うことになった出来事からずっと、竹流は眠っているのか、本当は眠らずに目を閉じているのか、よく分からない時が多くなった。
 ただ眠っているふりをしてしまいたいと思っているのかもしれなかった。

 ベッドサイドの柔らかなオレンジの灯りで、竹流の髪がさざめく波のように光を照り返している。通った鼻筋も、影を伴うとよりくっきりと浮き立つような彫の深い顔立ちも、気品に満ちた唇も、何もかも昔のままだったにもかかわらず、時間は確実にその上を過ぎてゆき、それ故に真は、これまでよりも遥かに深い想いでこの男を見つめているような気がした。その想いは、あまりにも色々な色を放り込んでしまったために、元の色合いが分からなくなった絵具のように、暗く深い。

 真はそっとベッドを出た。
 朝食を一緒に食べることもあったが、やはり後ろめたさを夕食まで引きずるのは忍びない気がして、相手が眠っているうちに、早朝にこのマンションを出て行くことが多くなっていた。この期に及んで、何を妻に対して繕うというのか。だいたい、あの女は、真にそんなことを期待していないはずなのに。

 リビングに出て、ふと時計を見ると、あまりにも暗くて分からなかったがもう七時前だった。冬で、空が曇っているからなのかもしれない。真が着替えを済ませた時、遠慮をするようなドアホンが鳴った。
 このマンションは、コンシェルジェの前を通らなければエレベーターホールに行き着くことはできない。不意の客の来訪の場合には、コンシェルジェからインターホンで知らせがある。ドアホンが鳴るのは、コンシェルジェを通した来客ではないということだから、ある程度親しい人間、あるいは竹流が予めその人が訪ねてくることをコンシェルジェに告げている場合だけだった。

 寝室からは気配はなかった。真は少し時間を置いてから、玄関に向かった。
 ドアを開けると、立っていたのはギャラリーの修復助手だった。真を見て、修復助手の篠田朔は、少しひるんだような顔をした。ある意味ではどちらも、見られたくない現場を目撃されたような状況だったのかもしれない。
「あ、いえ、あの、オーナーはまだお休みですか」

 真は一瞬リビングのほうを振り返り、多分、と答えた。決まり悪そうに立っている篠田を放っておくわけにいかず、真は上がるように促した。この男がここに来ることを、少なくとも竹流は知っている状況には違いなかった。
「どうぞ。俺はもう行きますので」
 顔つきも服装も、総じて地味な男だった。このまま服装を変えて公園に眠っていたら、誰もが浮浪者だと一瞬で信じてしまうほどに、周囲の景色で存在を失うようなムードの男だ。だが、竹流はこの男の真面目な側面を随分と買っているようだった。

 修復というのは、もともとは科学的根拠に基づいて丁寧に技術を身に付けて行えば誰にでもできることのはずだ、必要なのは根気とそれにかけてきた時間なのだと、近頃後進の育成に力を入れている竹流が話していた。幾人かの修復助手を育てながら、それぞれの特性を見極めて仕事を覚えさせ、一人前に育てる、神の手を失った修復師の、今はそれが誇りでもあったのだろう。この篠田という男は、まだ音大の学生であった時から竹流の助手を務めていたし、一番弟子と言ってもいいのかもしれない。

 篠田は困ったような顔のままだったが、しばらくして真の後ろに視線をやって、ようやくほっとしたような顔になった。
「悪いな、いつも」
 竹流はそう言って篠田を促して奥に上げた。それまでのおどおどした気配は消え、篠田はするりと運動靴を脱いで、促されるままに真の脇をすり抜けるようにして奥へ進んでいった。
「帰るのか」
 真が答えないまま篠田が閉めたリビングの扉を見つめていたからか、竹流が言い訳というのでもないだろうが、淡々とした声で言った。

「最近、夜中に仕事をしすぎて、朝方、起きられないことが多くてな、近くに住んでるんで時々来てもらってるんだ」
 そうなのか、と真は小さな声で答えた。何を言い訳されたのか、よく分からなかった。
 竹流が後ろめたいなどと思うことは何もないはずだった。少なくとも、真がポケットに結婚指輪を忍ばせていることに比べたら、どれほどのことだというのだろう。
 真はじゃあ、とだけ言って、靴に足を滑り込ませた。

 同居を解消した後、一人の夜が寂しくて一晩中仕事に没頭している、あるいは一人の朝が耐えられなくて修復助手を目覚まし代わりにマンションに来させて朝食を振舞う、こういう孤独への単純な付け薬を、竹流が利用していてもおかしくはない。もちろんそれはあくまでも一時的な効果しか得られない付け薬に過ぎず、根本的な解決方法には程遠いのだが、真よりは余程にこの男は孤独に弱いのだろう。
 少なくともローマでの彼の幼少時を知れば、いつも誰かが側にいて、彼を愛していたことがよく分かるし、竹流のほうでも彼らに深く愛されるための本能的な努力を惜しんでこなかったことが窺い知れた。

 幼少時の体質は、基本的に大人になっても変わらないものだ。真が孤独と簡単に付き合えるようになってしまっているのもまた、幼少時の習慣の結果に過ぎない。
 いや、少なくとも竹流は、もう真の首を絞めるような愚かな真似はしたくないと考えているに違いなかった。
関連記事
スポンサーサイト



Category: ☆雪原の星月夜 第1節

tb 0 : cm 8   

コメント


更新、お疲れさまでした。

一話ほぼまるまるベッドシーンとは、なんとも色っぽいことで。
指でナニする件は、なかなか斬新で濃厚でしたよ。しかもエロい。でも、やっぱりアレでナニしてるように読めてしまって……。なんだかだめですね、年を取ると想像力が弱くなるなぁ。
もっとも、手だけでいけてしまうとは、この二人、やはりただならぬ関係のようですね。なのに、竹流の店の名前の件で会話をはじめたりするあたり、どこか醒めている部分もあるようで。功さんの話になると、なんかもう言い訳めいてすら聞こえてしまいます。
ほんとに、このぎくしゃくした感じ、ぐるぐるとはまた違っうヤキモキ感がありますね。う~ん。

それで、いまごろ気が付いたんですけど、真と竹流って、魂の在り方が対極的なんですね。
人にすがっていきながらも孤独に走ってしまう真、人に助けを借りようとしないのに多くの人と関係を結んでしまう竹流。
どっちも、見る人が見たら、放っておけないんだろうなぁ。

で、すこしずつ進んでいる感のある「阿寒に果つ」ですが、あかりちゃん(ん、なんだこの既視感はw)も、神路月の関係者のひとり、とか?
続きはすこし先になるとのことですが、次話を楽しみにお待ちします。

TOM-F #V5TnqLKM | URL | 2018/12/19 22:15 [edit]


ううむ。凄い描写でした。単なる例の行為よりも、よっぽど官能的です。

でも、やっぱり納得がいかないなあ。ここまでお互いにとって特別なのに、なんでこの二人はわざわざ遠回りをしなくてはならないんだろう。その結論は、前回出したんじゃなかったのか、それでも離れなくちゃならないほどの、強い理由があって現在別々になっているのか、でも、だったらなぜ未だにここまで近いのか。

件の手のシーンは、実際の感覚の問題であると同時に、二人の魂の睦み合いでもあると思うんですよね。竹流が珠恵さんとこういう関わり方をするかも疑問ですけれど、真と舞さんは……絶対になさそう。

この小説の不思議なところは、なんだろう、女性の存在感がものすごく希薄なんですよね。前回から真は、仁と竹流を疑い、途中にこのシーンがあるというのになぜかわからないけれど確信しないで、なんか後から来たお兄ちゃんとの関係も疑っていたりするような記述があり、自分はおっちゃんに慰めてもらっていて。珠恵さんとか、美和ちゃんとか、ちゃんと出てきているし、体の関係だけじゃなくてそれぞれにとって特別な存在だと書いてあるんだけれど、でも、例えば、長さやキャラの多さを三分の二に切らなくてはならなくなったら、まず女性から切っていくような、そんな立ち位置に思うんですよ。しかも切られるとしたら筆頭が結婚して間もない妻っていうのが……。

で、それが、読者である私にとっても当然に感じるんですよね。そこが彩洋さんの筆致の神髄なんだろうなあと思います。

でも、やっぱり納得いかない。真が荷物まとめて、ここにまた引っ越してくれば、それでいいのになあ。絶対に周りも(舞は知らないけれど)みんなそう思っているよな……。

八少女 夕 #9yMhI49k | URL | 2018/12/22 06:08 [edit]


指だけの、濃厚な愛撫とか、すごく引き込まれます。
性格的なものか、どうもあからさまなラブシーンが、しんどくて。
そしてこの2人の濃厚なつながりを描くには、そういうあからさまなシーンよりも、こういう「なんでその先に行かないんだ」的もどかしさが募る描写が一番似合っています。
あんなに大きな事件を乗り越えて来たのに、やはりこの2人が抱えているのは、逃れられない過去であり、そしてそれから逃れられないのがまた、この2人なんだろうなあ。
次は、視線だけで殺してしまうシーンなど見てみたい←ただのマニアやん!

この物語は本当に多重構造で大河ドラマで、紐解くのが難しいけど、『人魚姫』なんだと思うと、すっと理解できます。
そうは問屋が卸さない作者に、いろいろいたぶられてしまいますが、これからも見守っていますから!
たまにはサービスで、甘えるマコト、いや、真を見たいです(*´ω`)

lime #GCA3nAmE | URL | 2018/12/23 11:49 [edit]


TOM-Fさん、ありがとうございます(^^)

> 一話ほぼまるまるベッドシーンとは、なんとも色っぽいことで。
わわわ。こう書いて頂くと、なんかこちらが照れちゃいます(o^^o) ベッドシーン(o^^o) なんか、言い方が昭和な処も含めて、ドキドキします。えっと、たしかにそう言われてみれば、そうだ……(o^^o)(どんだけ照れる)

指で何とかなシーン、楽しんでいただけたでしょうか。う~ん、自分としては不完全燃焼でして。もっとえろっぽく書きたかったのですが、もともと私の書くその手のシーンは湿っぽさがない、テンション的には乱闘シーンと変わらないってものなので、今回もイマイチでした。こういうのが上手に描けたら、そっち系の小説家にもなれるのかしら。いや~普通のシーンよりも難しいんですよね。何しろ、今更なシチュエーションを、どうやって手を替え品替えして、オリジナリティを出して読ませるかっての、本当にむずかしい。
で、姑息に「手だけ」にしてみたらどうかな~なんて思ったけれど、いや~、これがどうして。
要するにですね、きっと「手だけ」ってのは「本当はちゃんとしたいけれど?それを許されないシチュエーションなので、手で我慢する」ってところがえろっぽさを引き出す要件なんだと分かりました。たとえば、隣の部屋に誰かいるとか、バスとか電車の中でこっそりとか、そういう感じ?

だから、これってそもそも二人きりなんだから、誰に遠慮が、ってことですね。つまり、シチュエーションを間違えたわけでした。
とは言っても、タケル、じゃない、竹流は今、そういうことの出来ない身体というのか、心の状態というのか、なので(受け身ならともかく)、これが精一杯なんでしょうけれど。そう考えたら、周辺環境はともかく、精神的には障壁があるといってもいいのかな。う~ん。
精神的な壁があるから、あれこれ、訳の分からん言い訳をしているのでしょうか……。えっと、功の話に至っては、竹流の店の名前にかこつけて、「この話は功の話でもある」ってところをさりげなくインプットするというところでして(あ~要するに伏線ですね。あらら、ここでそんなこと言っちゃっていいのかしら)。

> ほんとに、このぎくしゃくした感じ、ぐるぐるとはまた違っうヤキモキ感がありますね。う~ん。
ぎくしゃくしているのに、離れられない、そういう関係ですからね。ぐるぐるはそれでも尻尾を追いかけ合ってるけれど、ぐくしゃくはね……キモチはもうわかりきっているけれど、言えないんですよね。
いや、こういう生ごろし系、個人的には好きです^^;

> それで、いまごろ気が付いたんですけど、真と竹流って、魂の在り方が対極的なんですね。
おおお。いいところを突っ込んでくださいました。そもそも、この二人、どこまで行っても、どれほど愛情を感じ合っていても、仰るとおり存在自体が対極にあるので、決して相容れないってのがこのシリーズのコンセプトでもありまして。
真は放っておいたらずっと一人でいて、一人でも平気な生き物(パンダか)。
竹流は、ああ見えて、絶対群れでしか生きられない生き物(イワシ? え?)。
はい、くっつきそうでくっつかないのですよね。あんなに熱烈に……だったのに。でもね、今回のお話の中で竹流のキモチがなんか少し伝わるといいなぁと思いました。でも、相変わらず、分かりにくいですけれど。

> で、すこしずつ進んでいる感のある「阿寒に果つ」ですが、あかりちゃん(ん、なんだこの既視感はw)も、神路月の関係者のひとり、とか?
あはは^^; 既視感! 平仮名だとぱっと見は分からないですけれど、たしかに音声にすると既視感というのか、既聴感ですよね。あ、でも、このあかりは、単に、マコトの、じゃない、真が剣道を教えるのを手伝っている道場に通ってきている子どもなんですよ。このお話も、主人公がこんなのなので、まぁ、結構どす黒い(オフ会でなんかこの単語が飛び交っていたような)のですが、清涼剤は用意してありまして。美和ちゃんは今回あれこれ大変なので、かわりにあゆみとあかりという平仮名コンビが頑張ります。あれ、別に全く関係ない二人なのですけれど。もうひとり、真の従妹が登場します。北海道の弘おじさんの娘ですね。この子がまたいい働きをしてくれる予定(o^^o)
月はね、なんといっても、『阿寒に果つ』ですからね。うしし。

次はあかりの家出話です。この子、6歳にしてすでに5回ほどの家出の名人ですし。
コメントありがとうございました!!

彩洋→TOM-Fさん #nLQskDKw | URL | 2018/12/23 11:54 [edit]


夕さん、ありがとうございます(^^)

(ひえ~~~、コメントのお返事、ぶっ飛ばしてしまった! 何を書いたのか忘れちゃった)
> ううむ。凄い描写でした。単なる例の行為よりも、よっぽど官能的です。
ありがとうございます(o^^o) うう、でも自分ではなんか不完全燃焼です。手だけってことは、そうせざるを得ないシチュエーションの設定が必要でした。小説的にはね……たとえば衆人の中ってことで、バスの中とか電車の中とか。気がつかれたら不味い状況だからというドキドキ感が良いのですよね、きっと。
この場合は……二人だけじゃん、って事になるのですが……実は、ふわっと雰囲気だけ醸し出していると思いますし、後からちゃんと出てきますが、これは竹流の身体の状態が関係していて。この人、今は受け身はともかくED状態なのですよね。まぁ、行き着くところまで行っちゃったので、しょうがないのですけれど。
それでこういうシーンになったというわけなのです。えっと、書いている方としては、それなりに楽しんだのですけれど、なんかなぁ、ちょっと書き切れていないというのか、湿っぽさが足りないというのか。ちゃんとした描写をしたシーンであっても、私が書くと格闘シーンとかわらないので、ま、こんなものかなぁ。

> でも、やっぱり納得がいかないなあ。ここまでお互いにとって特別なのに、なんでこの二人はわざわざ遠回りをしなくてはならないんだろう。
あはは~。あ~、夕さんのこの疑問というのか、質問というのか、怖いわ~^^;^^;
そうそう、前回ね、あんなに想いを満たしたはずなのにね。でもこれって、きっと夕さんと私の共通の作品に対する態度によるのではないかと。そう、「そうは問屋が卸さない」んですよ。でも、同じ事を書いていても、夕さんの場合は淡々とそれを綴るじゃないですか。私が書くと、しつこい。しつこいし、どす黒い? ことになっているのですね。
二人だけで生きていけるなら、それはそれで良かったんでしょうけれど、まさか本当に竹流がローマのあの家にいて、真が彼の用心棒兼愛人になって、なんて構図は成立しませんよね。じゃ、二人でどこか違う土地に行っていつまでも幸せに暮らしました、なんておとぎ話も成立しないし。実際には、彼らはしばらくローマに留まった後、まさに恋の逃避行?じゃありませんが、しばらくヨーロッパを旅しているのですが、何回か心中まがいの状況があったり、あんなことやこんなとや。
本編でまたちらちらと事情が出てきますので、お付き合いくださいませ(o^^o)
そうそう、結局離れられないんだったら、それまでに何か違う行動を起こせよって事なんですけれどね……でも、一番始末に負えないのは、竹流はこの状況は意外に居心地がいいのかも。精神的に安定するというのか。何よりも弱みを見せたくない人ですから。

> この小説の不思議なところは、なんだろう、女性の存在感がものすごく希薄なんですよね。
ううむ。たしかに、このお話は前回の【海に落ちる雨】と違って、完全に真視点で貫いているので、真の関心の向きがどうなっているかによっているのでしょうか。前のは美和ちゃん視点が混じっていたので、多視点だったけれど。
竹流と仁の事は「火のない所に煙は立たぬ」なんですが、この朝やって来た兄ちゃんはただの修復助手なんですけれどね。竹流は最近、女は遠ざけているので(珠恵には会っているだろうけれど、相変わらず、弱みは見せない。もしも、珠恵が事情を察して東京についてきたら、かえってしんどいだろうから、珠恵は絶対そういうことはしないし、一番良い形で自分の存在を置いておける人)、まぁ、普通のお友達とか、仕事の関係者ばかりなんですけれど、真にしてみたら、縄張りに入ってきた侵入者に見えているのかな? え、出て行ったのは自分でしょ、っていう声が聞こえてきそうですけれど^^; あまのじゃくですからね。
時々、縄張りにかえってきたいのですかね。いや~、複雑なんですよ。ごにょごにょ。

多分、嫁は嫁で大事に思っているのだろうけれど(少なくとも籍を入れたときは)、いったん言葉を交わすチャンスを失うと、次どうしたらいいのか、分からなくて、距離が生まれちゃうんでしょうね。
竹流は竹流でやっぱり生きがいとしての修復という仕事があるし、一方で、ローマでパパ様から帰っておいでコールをされているし。真はやっぱり美和のことは心配だし、宝田や賢二のことも心配だし。嫁は昔、真の失踪人調査の対象だったことがあって、実際にはそれなりに想いの交錯があったりするので、今はあんなのですが、それはそれでちょっと大事。
もしも真がだれかを切り捨てられるようなら、きっとこの話は成立しないんでしょうね~。それがまた大河ドラマたるゆえん?

> でも、やっぱり納得いかない。真が荷物まとめて、ここにまた引っ越してくれば、それでいいのになあ。絶対に周りも(舞は知らないけれど)みんなそう思っているよな……。
あはは。それはそれで結構面白いけれど……^^; 舞も別にそうなったらそうで、しかたないって思うかな。彼女は私の中では、女であり、母となることに執着している立ち位置なので、真がいることよりもそうで無い何かに執着しているかも、です。でもまたそれは後日に。
はぁ、ぶっ飛ばした内容はだいたいこんな感じだったかなぁ? もう忘れちゃって、なんかもっと別のこと書いていたような気がするけれど、とりあえず(o^^o)
コメントありがとうございました!!

彩洋→夕さん #nLQskDKw | URL | 2018/12/23 16:33 [edit]


limeさん、ありがとうございます(^^)

limeさん、年末のお忙しいときにありがとうございます(^^)
そして、この指だけシーン、楽しんでいただけてよかったです(^^) あ~でも、自分では微妙だなぁと思っていたところです。なんか、こういうのって、状況設定を上手くやらなければならなかったんだなぁと。
ここはまぁ、二人は今、精神的にはともかく、実生活の中で距離があるので、その心の状態が障壁となっているので、実際の行為をすることは出来ないというわけで、一応「指だけ」には意味があるのですけれど、そもそも、こういうシーンは「もっとくっつきたいけれど、人目があるからくっつけないのでとりあえず」って状況設定が必要だった!と思ったのでした。
でも、仲良しこよしの恋人同士ならこのシーンは成立しませんよね。なんか事情がないと、ここで留まる必要はないんだし。うん、そういうことにしよう!
真は竹流のED状態の事情を分かっているんですけれど、これはもう仁を見て「いらっ」としたんでしょうね。ほんとに「なんでその先に行かないんだ」ですけれど、竹流が多分避けてる。竹流は「行きすぎる自分」が怖いんですよね。もうね、今は居場所をどう再構築するかに精一杯なんだと思うのです。ローマに帰ることについては自分の中である程度は覚悟はしているけれど、まだ未練がね……日本にも、修復という仕事にも、真や珠恵にも。そして、帰るなら、基本的に真を連れて行く気はないと思うし。

> あんなに大きな事件を乗り越えて来たのに、やはりこの2人が抱えているのは、逃れられない過去であり、そしてそれから逃れられないのがまた、この2人なんだろうなあ。
うう。そうなんですよ。実は今回、真が19の秋に崖から落っこちた事件、本人が逆行性健忘になっているので、事故か自殺未遂かまだ分からないのですが(私は知ってる^^; 当たり前か)、その話が実は真の大きなくびきで、これが真にとっての『阿寒に果つ』になるのかも。いや、神路月を追いかけていきながら、結局自分の過去も追いかけてしまうんですね。
はい、逃れられない過去からどこへ向かっていくのか、また語っていきますので、よろしくお付き合いくださいませ(^^)

> 次は、視線だけで殺してしまうシーンなど見てみたい←ただのマニアやん!
あはは~。これは難しい。うううむ。覗き? いやいや(何を言っとる^^;)

> この物語は本当に多重構造で大河ドラマで、紐解くのが難しいけど、『人魚姫』なんだと思うと、すっと理解できます。
> そうは問屋が卸さない作者に、いろいろいたぶられてしまいますが、これからも見守っていますから!
> たまにはサービスで、甘えるマコト、いや、真を見たいです(*´ω`)
(「らいむしゃ~ん、ぼく、よんだ~?」「呼んでない!」「そうなの?(しょぼん……)」「最近、手作りコピー本で遊んでやってるんだから、それで満足しなさい」「う~ん…………やっぱり、らいむしゃんとあそぶ~」「め」)
うん、ありがとうございます。いつも大概、真自身の事情が事件の背後に絡むというのか、真の神経を逆なでするような話になっているので、結果的に彼の話になっていくという仕組みなので、彼の『人魚姫』ぶりにどっぷり浸かってやってくださいませ。
おさかななのに、間違えて人間の王子に……というと、おさかなの王子はおらんかったのか、って話なんですよね^^; おったとしても、やっぱり、恋に落ちちゃったらしょうがないんですよね。
ディズニーが映画の時に筋を変えちゃったけれど、原作の残酷さは、王子と結婚する人間のお姫様も結構いい人ってところなんですよね。そして、最後は泡になると言うよりも、神さまに召されるって感じになっているけれど。う~ん、こちらは基本的にはただの泡? 
ま、子孫は意外に繁栄するから、いいか! これもそれも、舞の遺伝子が「しぶとい」からで、彼女のDNAに感謝しよう!

コメントありがとうございました!!

彩洋→limeさん #nLQskDKw | URL | 2018/12/23 17:17 [edit]


ピアノの記事を読んだ後にこちらを拝読したからなのか、
まるで二人の指の動きが繊細のピアノの調べのように感じられました〜
彩洋さん的には不完全燃焼ということですが、いつもと違ってなんとなく
抑え(いい意味の)が効いているように感じられたのは、二人の身体感覚の違いによるものなんだろうなっ、って思ってしまいました。性器という一番敏感な部分を介していない分、思考が焼き切れることなく、お互いに「理性」の側にとどまっていてそこで二人の気持ちを確認し合っているようなそんな感じがしました。そして、ある意味それは竹流にとって理想形の交合なのかもしれない、と思ってしまいました。

さてTOM-Fさんや夕さんのコメントを拝見していて思ったのですけれど、
この二人は魂も正反対だし指向する方向も正反対ですよね。
この章のラストの描写でそれをより具体的に感じさせられました。
こう、いろんな人との関わりの中で自分がある、という竹流の姿に
「ああ」となんかすごく納得させられてしまって。

以前彩洋さんが仰られていたと思うのですが、この二人がぐるぐるどころか本当にとても遠回りして(というか多分遠回りしても交わることはない)いるのは、
真というよりは竹流側によりその原因があるのですよね。
で、この章のラストの竹流の描写を見て、この方にとって真と共に生きていくということは、イコール彼の背景にあるいろんな人たちの想い(黒いも純粋もひっくるめて)をバッサリ切り捨てることと同義なのかな……と思いました。
だとしたら、こうして「人」の中で生きていくことが骨の髄まで、魂にまで染み付いている竹流にとって、真と関わっていくことはやっぱりとても怖いことなのだよなぁ……
と思ってしまいました。

でも、冒頭を見て、ああ、真はやっぱりこの方と魂をすり合わせることで心底から
満たされるのだな……て改めて感じて切なくなってしまいました。
夕さんのコメントにあった「女性の存在感が希薄」はわたしも前からすごい感じていたのですが、わたしはなんとなくこの女性の存在感が希薄なってしまう感覚が分かる気がします。何がどう、と説明できないのだけれど。
お嫁さんの舞さんにしても決して嫌いとかそういうのじゃないのだけれど、
魂が満たされないんですよね、どうしても心は竹流に帰っていく。
女性って魂とかそういうのと一番遠い生き物という気もするので、女性相手ではそこの部分まで満たすのは難しいというか。
でも頼みの綱? の竹流は「人」なので、野生の真の巣に足を踏み入れてくれないというか、いつも寸止めで人間界に帰ってしまう……(竹流がパンダの例え、かわいいですね^^
笹で釣ればもしや!?……いやいや)
ううん、こういうあたりも人魚姫ですよね。
続きは年明けということですが、引き続きこの二人の想いと錯誤する事件の謎を
追わせていただきたく思います……!

canaria #- | URL | 2018/12/24 22:23 [edit]


canariaさん、ありがとうございます(^^)

> ピアノの記事を読んだ後にこちらを拝読したからなのか、
> まるで二人の指の動きが繊細のピアノの調べのように感じられました〜
わ~お。そう言っていただけると、なんだかちょっと嬉しいです。いや、こんなシーン、書いてみたけれど、実は自分だけ楽しいんでいて、しかも玉砕したので、皆様に何と感じていただけるか、ちょっと微妙だなぁって思っていました。でも、そんな風に言っていただけると嬉しいです。
そうそう、楽器を弾く人の手っていいですよね。私は手に目が行っちゃうので(フェチと言うほどでもないけれど。でも大野くんの手が大好きで)、特に楽器を弾く人の手には惹かれます。ピアノはもう、手をガン見しちゃいますよね。ピアニストの手って、本当に指が全部別の神経で動いているというくらい、特別なものに思えます。
あ~でも、このシーンはそんないいものじゃないなぁ。でも嬉しいですう。ありがとうございます。

もともとこの話は、そういうシーンをオブラートで包まない、という方向なので(そういうシーンだけではないのですけれど、全体としてオブラートに包んだ書き方はしない、なぜなら、一応、ハーフボイルドだから←ハードにはなっていないゆで卵状態^^;)、割と何でもくっきり書いているのですけれど、なんか、色気がないですよね。えっちなことしてても、あんまり色気はないので、本当にダメだなぁと思うのですけれど、まぁ、そういう話だからいいか。
理性があるなら、もう会わなければいいのに、でも、そこまでは思い切れないし、言い訳ながら、マコトはマコトで、ちがう!、真は真で、竹流を放っておいて大丈夫かどうか、心配でもあるのです。そもそも何が起こっても高瀬(大和家の執事)がいるから大丈夫なのですが、自分の目で時々は確かめないと、それはそれで不安なんでしょうね。
で、顔見ちゃったら、やっぱり離れがたくて、でも、相手はいまED状態なので、こんな話になったのですよね。竹流にとって、理想的な交合かぁ。うん、たしかにそうかも知れませんね。彼は元々、キリストの子どもですから、絶対に墜ちるわけにはいかないということなんですよね。

元々彼らは、西洋的叡智と東洋というのかアニミズム的自然(じねん)の象徴なので、決して相容れることはありません。ずっと平行線なんですよね。これが男女なら、詩織とロレンツォみたいに愛が全てを越えるって勘違いできるんですけれど、真と竹流ではね。しかも、竹流はもう、幼少のころから愛されっこでしたから、人がいないとダメなんですよ。それが、真である必要はないわけで、いや、もちろん、そう出来ればいいのでしょうけれど、結局真が求めるものは与えてやれないし、自分が墜ちるのは怖いし、こうなっているという。
canariaさんがおっしゃるとおり、竹流側に原因があります、うん。この人、最後はローマに帰るのですが(真が亡くなってやっと足枷が外れたから、かも)、すがすがしい気持ちではないにしても、そこに帰ることは自分の運命であることは理解しているし、彼がお仕えする教皇はヨハネ・パウロII世という設定なので、まぁ、逃れようがありません。心から敬愛していますから。

真は、それでも生きていないと行けないので、何か代替物を探す必要があるわけです。それが嫁なのか、というと、う~ん、それはまた違うのかなぁ。真って、年下のものに対しては結構優しいし、なんとかしてやりたいと思うので、舞に対しても、自分がなんとかしてやるという気持ちがはたらいているようです。が、舞にとっては、余計なお世話なんですけど。
きっと、真の危ない面は、竹流によって対称的に浮かび上がるのかもしれませんね……あ~あ。お互いが存在していなければ、そんな自分の本質(または別の側面)に目を向けることなく、生涯を送れたかもしれないのに。

> 夕さんのコメントにあった「女性の存在感が希薄」はわたしも前からすごい感じていたのですが、わたしはなんとなくこの女性の存在感が希薄なってしまう感覚が分かる気がします。何がどう、と説明できないのだけれど。
うぅ。このお話は魂のお話、なので、性別はまぁ、後付け的な面がありまして。でも意識していなかったけれど、たしかに、女って現実的なので、魂がどうとかいう話にはなりにくいのかも。それで結果的にそんなふうに感じていただいているのかも知れませんね。しかも、真の場合、女性に対して潜在的恐怖心があるので(今回のお話であれこれ出てきますが、母親が怖いという)、本当に心を譲り渡せる相手にはなりにくいのでしょうね。
でも慎一は、ちゃんとお母さんに育ててもらっていないのに、女性にはちゃんと恋をしているなぁ。あ、でも、葉子おばちゃんに大事に育ててもらって、しかもローマでは母親代わりになってくれた人がいて。まぁ、慎一は人タラシなので、みんながいつのまにか面倒を見てしまうという、それが相手が女性の場合は母性本能をくすぐられる系なのかしら。真は、「私のことなんてどうでもいいみたい、しかもこの人、一人で放っておいてもいいか」、な人なので……sの点、舞は自分もひとりで生きていけるから良かったのかも。

あ、パンダは真の方でした。パンダって、あんなに「ままといっしょ」がかわいいのに、基本的に単独行動のどうぶつで、下手すると、恋の季節に誰とも出会わないならそのままずっとひとり、って事になるみたいです。真そっくり。
それはともかく、今年も読んで頂きありがとうございました。
来年もよろしくお願いいたします!!

彩洋→canariaさん #nLQskDKw | URL | 2018/12/29 17:24 [edit]

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://oomisayo.blog.fc2.com/tb.php/824-8901e34a
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)