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コーヒーにスプーン一杯のミステリーを

オリジナル小説ブログです。目指しているのは死体の転がっていないミステリー(たまに転がりますが)。掌編から長編まで、人の心を見つめながら物語を紡いでいます。カテゴリから入ると、小説を始めから読むことができます。巨石紀行や物語談義などの雑記もお楽しみください(^^)

 

☂[6] 第1章 同居人の留守 (6)(改) 

 レストランのオーナーとしての材料の選択、それを任すべき人材の選択、またユニークな料金システムから始まるインタビューの内容は、確かに新しい試みと彼の人を見る能力が存分に散りばめられたものだった。

 レストランは、上層階には上品で料金も半端ではない店が入っていて、その下の階にかなりカジュアルな店を入れていた。
 このカジュアルな店の方が大人気で、ただし予約は一切入れない、料金もその日の持ち合わせで、困れば予算を言えば適当に見繕ってくれる、しかし恐らくレストラン側が損をしているのではないかというほどの旨いものが食べられる、名前も洒落ていて『かまわぬ』という日本名だった。どこでどうしたのか歌舞伎の名門のご贔屓になっているらしい。

 上層階のレストランは、それこそドレスコードが要求されるようなところで、ただしあくまでも少人数のための静かな環境を大事にしていて、パーティーなどには開放されていない。おそらく、最高級の料理とワインを味わえるが、メニューはなく、客はただ、その日の気分と、どのイタリアの地方の料理を食べたいかという注文だけを聞かれるという。

 行列ができる、というような店ではないが、週末はまず予約がなければ入れないというし、平日でもほぼテーブルが埋まっている。カジュアルな店のほうは、まず連日満席で、遅めの時間を含めても余程運がよければ入れる程度、という話も聞く。

 これだけ人気がありながら、数ある二号店・三号店のオファーをことごとく断っている。曰く、自分の目と鼻と舌の届かないところに自分の店があるというのは、耐えられないということなのだ。大体が、自分が美味いと思うものを食べるために作ったレストランなのだから、自分が通えないところにあるのでは本末転倒ということらしい。
 可愛いお店、というわけですね。
 インタヴューアーの女性の台詞も気が利いていた。

 もっとも、本人が家で作る料理は基本的には和食で、ただし、レストランで和食を提供することはない。それは分を弁えているということなのかもしれないが、その代わり有名無名を問わずやたらと日本料理店には出入りしていて、料理人とも随分親しくしているようだった。
 とある一流の料理人がこの男の舌を唸らせたら自信を持てる、とまで言ったらしい。

 雑誌の記事には、ハリウッドスター並みの容姿を存分に見せびらかすような写真が何枚も添えられていた。
 あの青灰色の瞳を、その色合いや内に籠められた光をどうしてここまで上手くカメラが捕らえたのかと思う写真ばかりだ。
 これまで何度もインタビューを依頼してきたが、ようやく受けてもらえた、というコメントがついていた。カメラマンは久しぶりに腕が鳴るほどの被写体に出会って気合が入ったことだろう。
 何より、記事を企画した編集者は、この号を売る方法を十分に心得ていたと思えた。

 何故か会員制のクラブの話題には一切触れず、話題はギャラリーの事に代わり、そこからインタビューの内容にも熱が入ってくる。
 ギャラリーは物を売っているだけではなく、バブルに向かって俄か金持ちが増えている日本で、本物の芸術の国からやってきた本物の目を持つ男が、洗練された生活の中で持つべきあらゆる貴重品・芸術品のコーディネートをしてくれる、つまり芸術コンサルタントとも言うべき仕事について書かれていた。

 具体的に同居人の仕事がそういうものなのかどうか、真には心当たりもない。
 実際、企業や有名会社の社長がこの男に芸術財産の管理を依頼したという話もあり、あるいは華族や没落した会社の関係者、もしくは神社や寺が、美術品の整理を頼んだというようなことは聞いたことがあったので、そういう意味合いなのかもしれない。

「でも、自分の本当の仕事は地味な修復師だって、何かかっこよすぎますよね」
 だがそれは本当かも知れないと思った。
 これは地道で科学的で冷静な判断能力を必要とする仕事で、一切自分を出さない仕事だと書かれている通り、同居人がその仕事に傾けている情熱と時間と、そして何よりもこの派手な外見の男が、文字通り寝食忘れて没頭している様を見ている真には、彼のその仕事へのエネルギーと作家たちへの尊敬の気持ちが、時に湧き立っているように思えることがあった。

 だが、問題はそんなことではない。あの男の本当の顔はもっと別だと真は知っていた。
「でも、注目すべきは男も女も惚れる男のプライベートって小見出しの先ですよ。先生、怒っちゃだめよ」
 美和は真の視線の先を追いかけて、解説を挟んできた。言われた時には真の目は既にその先を読み始めていた。

@ ところで、そんな大和さんの私生活は、どうなんでしょう。
$ それは、恋人のことですか。
@ もちろん、それも含めて。指輪を左の薬指にしていらっしゃいますが、御結婚されているわけではないんですね。
$ これは家の紋章です。結婚もある種の契約とすれば、それに近いものはあるかもしれません。
@ では、いずれイタリアに戻られるのですか。
$ いいえ、そのつもりはありません。日本は私にとってもう既に故郷のようなものですから。
@ 日本にお住まいになってから二十年ですよね。ちなみに、お住まいは都内のマンションとお伺いしていますが。
$ ええ。他に多摩に屋敷が、あとは仕事柄、京都にも家があります。
@ 恋人のことを伺ってもよろしいですか。
$ もちろん。
@ 噂では、恋人はお一人ではないとも。
$ 付き合いの深さは色々ですが、どの女性も平等に愛していますよ。
@ 世の男性が聞いたら怒りそうですね。
$ 女性との時間は、仕事の疲れと緊張を癒してくれる大切な時間です。彼女たちとの会話もそれ以外の行為も、仕事のインスピレーションを高めるのには欠かせないものです。それに、こちらがそのつもりでなくても、時にはとんでもなく危ない目に遭うこともありますからね、安らかな気持ちにさせてくれる女性の存在はどうしても必要なのです。
@ 御結婚への願望は。
$ ありませんね。というよりも、私のような男と結婚する女性は不幸でしょう。
@ では、恋人が他の人と結婚したら、どう思われますか。
$ それは止むを得ませんね。その人の幸せを願うしかありません。
@ もう一つ、気になる噂を聞いています。お聞きしていいものかどうか迷うところですが、男の方の恋人もいらっしゃるとか。
$ それはなかなかユニークな噂ですね。確かに、同居人は男ですが。
@ 今お伺いしようとしていたところですが、同居人がいらっしゃるというのは本当なのですね。しかも、それはかなり有名な話とも伺っています。本当に恋人なのですか。
$ ご想像にお任せします。そうでないとしても、彼は私にとっては全ての女性の恋人と比べても、勝るとも劣らない存在なので、噂にも一片の真実があるのかもしれませんね。
@ どういう方なのか、気になりますね。
$ 愛しているのかと聞かれたら、その通りだと答えます。尤も、恋人であるかどうか、つまり肌を合わせる相手であるかどうかというのは、また別のことです。しかし、一緒に住んでいる最大の理由は、彼が私の恩人の息子であることと、放っておくと食事も一人でできないので私が料理を作っているからです。
@ お料理の腕も半端ではないと伺っていますが、それは本当なのですね。
$ それについては自信を持ってイエス、ですね。もちろん、うちのシェフには敵いませんが。
@ そんなお料理をいつも食べていらっしゃる同居人の方は羨ましいですね。二重の意味で、世の女性の羨望の的です。
$ このあたりで勘弁してください。これ以上余計なことを話すと彼に怒られそうなので。




ついついインタビューで口を滑らしてラブラブをアピール?
いえ、これは実は『わざと』なのです。
多分この時代(1979)、カミングアウトってとっても大変だったでしょうから。
インタビューしているお姉さんは、結構わくわくだったかもしれませんが。

そう、昔、友人たちとコピー誌を内輪で作っておりました。
同人誌というほどちゃんとしたものではなかったのですが。
そこで、毎月、みんなが書いている小説の各登場人物たちにインタビューのコーナーがあったのですね。

これがなぜかとても面白かった。
内容はしょうもないんだけど、面白くて。
だから、あのインタビューをきっかけにした話を書いてみよう!と思ったのが、実はこのお話のきっかけなんです。

おまけ映像は、北海道ノーザンホースパーク。11月で、粉雪が舞い、寒かった……
真くんの故郷、浦河ではありませんが、牧場の雰囲気、ということで。
牧場
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Category: ☂海に落ちる雨 第1節

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コメント


NoTitle

ふふふ。
なかなか楽しいインタビューですよね。
読みながら、真の反応がすごく気になります。
このあと、怒られるのか、呆れられるのか。
ちょっと口の軽い竹流も、それはそれで、魅力的です。

lime #GCA3nAmE | URL | 2013/05/02 17:53 [edit]


limeさん、ありがとうございます

ふふふ…(#^.^#)
インタビュー、本当に楽しいコーナーだったのですよ。
聞いていることと言ったら、本当にしょうもない。
もちろん、醍醐味は本文には出てこない、誰かさんと誰かさんの関係を暴く!ってのがメインでして、本当はどう思ってるの?ねぇねぇ、という、ただただミーハーな内容。
このコピー誌、大学生の頃に、中高の友人と作っていて、もちろん読んでいるのは内輪だけ。内容は近況報告と小説と、そしてこのインタビューと、インタビューを受けた人がイラストになったカレンダー。
ある意味、進歩的な?コピー誌だったかも??
もう二十○○年も前の話…
インタビューの目的はみんなのミーハー精神を満たすことのみ、ですから、極めて品のない…でも本心が丸見え的なところが美味しい。
いやいや、いずれ、チラ見でお出ししたいです。

真は…文句言う前に彼がえらいことになっているので、怒るチャンスも呆れるチャンスもなくて、結果的に、このインタビューの裏にある事情が分かって、むしろ愕然…

さて、またまた続き、まったりお楽しみいただけると幸いです(*^_^*)
あ、ところで、さっき(18時前)ユニークアクセスがカウント以来2000に乗りまして…
ちょっとワクワクしていたら…実は2000人目はlimeさんのような気がします…
ありがとうございます(*^_^*)
これからもよろしくお願いいたします。
なんもプレゼントがなくて…^^;
イラストの一つも描けたらいいけれど、描けないし。
描いてほしいくらい…いやいや、何を言うやら。
古いカレンダーでも探そうかしら。

大海彩洋 #nLQskDKw | URL | 2013/05/02 19:19 [edit]

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