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コーヒーにスプーン一杯のミステリーを

オリジナル小説ブログです。目指しているのは死体の転がっていないミステリー(たまに転がりますが)。掌編から長編まで、人の心を見つめながら物語を紡いでいます。カテゴリから入ると、小説を始めから読むことができます。巨石紀行や物語談義などの雑記もお楽しみください(^^)

 

【雑記・本】疫病退散の願い~Master KEATONを読もう!~ 

Masterキートン表紙
私がバイブルとしている作品(漫画であろうと小説であろうと)のひとつがこの『Master KEATON』
今回のCOVID-19流行に限らず、感染症のことを考えるたびに、医学の歴史についての本を読み直しますが、その中になぜかこの『Master KEATON』もいつも含まれているのです。
ビッグヒストリーの中では今回のCOVIDも意外な流行ではないし、人間は自分たちと科学を過信してはいけないということは自明のこと。もちろん、科学こそ光明でもある。科学というのは、発見・進歩だけではなく、検証の学問なので、常に過去と現在の出来事を分析する冷静さが必要ですね。

この『Master KEATON』の中には、2つの感染流行についての物語があって、なぜかものすごく心に残っているのです。
キートン博士は考古学者であるけれど、それでは食っていけなかったり、色々思うところがあって英国の特殊部隊でサバイバル術を身に着け、保険会社の調査員をしている。彼のテーマは大陸のケルト文明もしくはその前にあった巨石文化を築いた文明の発掘だったり、あれこれ私のツボにはまるところが多くて、時々読み返しては色々考えさせられています。
ハーメルンから来た男
まずひとつは、第5巻の『ハーメルンから来た男』
当時、阿部謹也氏の『ハーメルンの笛吹き男』が愛読書のひとつであった私は、このエピソードにものすごく惹かれたわけですが、物語は現在に近いところに舞台を置きながら、過去の出来事の謎にも迫るという作られ方をしているので、常に2重の謎を追い掛けているという仕組み。これはナチスによるジプシー(シンティ・ロマ)虐殺事件と、ハーメルン伝説の二重の謎を解き明かしていくのですが、ハーメルンの笛吹き男がシンティ・ロマの医師もしくは知恵者で、当時大流行していた天然痘の免疫を持った子供たちを連れて、各地に天然痘の免疫を広めて旅をしたという落ちになっています。ハーメルンの笛吹き男の話は、天然痘ではなく、黒死病(ペスト)のほうと結びついていますが、当時は天然痘も黒死病の一種と考えられていたので、あり得ない話ではありません。
祈りのタペストリー
もうひとつは、第10巻の『祈りのタペストリー』
スペインの古城持ちの老人が、自分の城を日本の観光業者に高く売りつけたいと思いながら、日本にやって来た。
実はこの城の教会にはあるタペストリーがあって、飢饉で食料を求める人々に城の上から石を落として追い払っているという場面が描かれていて、この老人はそれを自分の先祖の暗い歴史だと思っているのです。このタペストリーはもともと対になっていて、もう一方がどうやら売り払われて日本にあるらしい、そこにどんな暗い歴史が描かれていても、揃っていたらあと1億は高く売れるだろうともくろんでいる。そこで祇園祭です。
祇園祭というのはご存知のように「疫病退散」を祈るまつり。疫病に対する予防も分からず治療法もなかった時代、人々は祈るしかなかったのですね。キートンと山車の側面のタペストリーを見た老人、自分の城にあるタペストリーの隅っこに描かれたネズミをヒントに、もともと自分の城にあったタペストリーに対面しました。
そこには、領主夫妻と領地の民衆が城の中で仲良く平和に暮らしている絵が描かれていた。城の外の病人をどうすることも出来ないけれど、自分の領民を守るために隔離政策をとり、ネズミを追い出しているという図だったわけです。
科学としての医学が確立していたわけではないけれど、黒死病がネズミと関係していること、隔離政策が一定の効果があることは知られていたのですね。
老人は、自分の祖先が決して悪魔のような人間ではなかったと知って、城を売るのをやめたという話でした。

科学は完璧ではない。感染症に対して100%の治療策・対応策をまだ人類は手に入れていないし、今後も手に入れられないかも知れない、何しろ、敵は人類よりもしたたかな生命体だから。
そのなかで、人々がどう生きて、どのように他人を思いやるか、それをその都度試されているのかもしれないと思うのでした。
災害もまた然り。できることなら、太平洋高気圧と大陸高気圧の位置を変えたいけれど、出来ないから、今できる最善の策を考えていかなければなりませんね。今だけを見てはいけない。ビッグヒストリーがはやるのも、そういうことなのでしょう。そこに必要なのは、分析する能力だけではなく、未来に対する想像力、他人の立場・状態を思いやる想像力、かもしれません。

『Master KEATON』、持っている方は読み返してみてください。読んだことがない方は、この機会に是非!
(全18巻+1)

ところで、祇園祭。
疫病退散のお祭りを取りやめるのは、仕方がないとは言え、なんだかつらいですね。
もしかして、ちまきの通販とかしてくれないかな。いつもは手に入らない長刀鉾のちまきが買えるかも?
牛頭天王
・・・・・・牛頭天王に怒られるかしら。
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Category: 本(ご紹介・感想)

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コメント


食いついちゃおうっと

『Master KEATON』、サキも愛読しています。
といってもこの本、先やサキの蔵書ではなくて、近所の飲食店にずらりと並んでいたんです。
サキは時々訪れては(先と一緒ということが多かったですが)読み続け、全巻を何度も読み返しています。
ハーメルンの話やタペストリーの話、忘れていましたがこれも読んでいたのを思い出しました。
読んでみていつも思うのですが、何と言うか設定がとても綿密で、念入りです。そしてどこから調べたんだろうと不思議に思うくらい深く考察され、考古学者?と思うくらい博学です。登場するキャラも子供から老人まで幅広く、それぞれ皆強烈に個性的で興味深いキャラです。そしてキャラの過去や心理状態や行動やすべてが裏も表も考え抜かれています。オチも気が利いていて素敵です。
考古学者でSATの猛者でサバイバルの教官、そしてそんなことはおくびにも出さず、普段は保険会社のオブ、こんなキャラよく考え付いたと思いますよ。
そしてこのキャラが動き回るお話が面白くないわけがないじゃないですか。

こうやって焚きつけられるとまた読みに行きたくなってきました。
ええい、めんどくさい!大人買いしちゃおうかな!!!

あ、『MASTERキートン Reマスター』もいいですね。
老眼鏡を使うキートン、大人になった百合子、なかなか魅力的です。なかなか教授(MASTER)にはなれないみたいだけど・・・。

山西 サキ #0t8Ai07g | URL | 2020/07/10 19:30 [edit]


ご無沙汰してます~。
前回の記事にも、コメントを返そうとしたのですが、想いが膨大になりすぎて、結局、何を書いても蛇足な感じがして、大きく頷くだけで終わってしまったという……。

本当に、大変な状況に世界は置かれてしまいましたね。
専門家(と言われる人たち)も、マスコミも、一般人も、手探りで、何を本当に信じていいか分からず、恐れたほうがいいのか恐れ過ぎない方がいいのか、不確かなものばかり。
『もう今までの生活に戻れるとは考えない方がいい』という意見が多いけど、でも、出来る事なら、また、触れ合ってじゃれ合えるような、生のライブをガンガン楽しめるような世の中に戻ってほしいなあ……。演劇やドラマの世界も、変ってしまうのが怖いし、辛い。音楽関係のアーティストも、本当に死活問題だし。
芸術文化が、廃れていかなければいいなと、そんな事ばかり思っています。

『Master KEATON』のその物語、すごく興味深いです。
好きな漫画家さんなんだけど、まだ読んでいませんでした。最近、これは、と思う小説に出会えないので、買ってみようかな。

lime #GCA3nAmE | URL | 2020/07/11 16:38 [edit]


『Master KEATON』かぁ、私もひと昔まえに、行きつけの喫茶店に置いてあったのをよく読んでいました。『YAWARA!』の作者だったので興味をもって読み始めたら……どっぷりと嵌りました。
膨大な下調べの成果と深い考察が、さらりと描かれていて、痺れたなぁ。ただ、そこにあったは何巻か飛んでいたので、このエピソードは読んだ記憶がありません。
ハーメルンの方は、集団免疫作戦ですよね。現代の医学ならそういう理解も得られるだろうけど、きっとどこに行っても疫病神扱いだっただろうなぁ。
タペストリーの方は、ふつうにいいお話ですね。病人と接触しなければ罹患しない、ということになんとなくでも気づいていたんでしょうねぇ。
仰る通り、病気にしろ天災にしろ、まだまだ人知の及ばないことは多いですよね。神に祈りを捧げることが、そういう認識を改めて持つ機会になるのかもしれませんね。
祇園祭、残念ですね。八坂神社の神事は行われるんでしょうけど、やはりハイライトは山鉾行事ですからね。コロナ対策でしかたないのでしょうけど、なんか寂しいなぁ。

TOM-F #V5TnqLKM | URL | 2020/07/11 19:46 [edit]


サキさん、ありがとうございます(^^)

おぉ。サキさんも愛読してくださっていますか。
はい、もう、私は連載当時、これを読むためだけにビッグコミックを毎号買っていたのです。ほんとに大好きで、私が押しかけ女房をしたいと思った2次元キャラの2人のうちひとりです。あれ、大好きの方向がおかしいか。
ちなみに、うちのお客さん(って言い方は妙ですけれど)が閑をしているときには(あまりにもおちびちゃんには無理だけれど)、私のこの全集が彼らの助けになっていたりして、まぁ、何度、自分の家と職場とをこの本たちは往復したことか。もうひとつ、私がバイブルにしている漫画(そっちは32巻ある^^;)と共に……

もともとは考古学者というので食いついたのですが、原作者もいるし、かなりしっかり書き込んでありますね。私は、子どもの時の夢は考古学者だったので、色々イメージしながら読んでいました。この本の中で「世界四大文明のわけがない」という部分がもうツボでして。砂漠サバイバルとか、あれこれ危険を乗り越えるすべとか、キャラたちも魅力的だし、全てが面白いですよね。特に、時々挟まれるキートンパパ・太平のエピソードが好き(^^)

そして。文中に「全18巻+1」と書いた「+1」がReマスターのことなのですが、はい、こちらもね(^^)
私は百合子がマルタにいるというのがツボで。私が追い求める巨石文明のあのマルタの地下神殿のコマがで~んと出てきたときには、個人的に驚喜しておりました(^^) 忘れられない場所のひとつ。

もう大人買いしちゃってください!(あ、焚き付けちゃダメかも。先さんにおねだり? あ、先さん、ごめんなさい)
エピソードの拾い読みで楽しいですよね。これと同じパターンで、『鬼平犯科帳』も時々拾い読みしておりますが……そうそう、ブックカバーチャレンジで漫画をするかどうか悩んだですが(あまりにも多岐にわたっていて、選べなさそうだったのでやめたけれど)、もしもしていたら、この漫画はトップに来る予定でした(^^)
うん、ほんとに、よい漫画からは学ぶことが多いですね。
そうえいば、私たちが子どもの時、フランス革命とロシア革命を教えてくれたのは、池田理代子さんだった(^^)

コメントありがとうございました!!

彩洋→サキさん #nLQskDKw | URL | 2020/07/12 21:32 [edit]


limeさん、ありがとうございます(^^)

わぁい、limeさん、こんにちは~
私もばたばたしているうちに日々が過ぎちゃっております。今困っているのは、PCを見る根気がなくて。すぐに目が疲れてしまうんですね。というよりも、この事態になってから仕事でPCの画面を見ることがより増えちゃって、仕事以外でも見ていると、本当に目が疲れて。最近は、時々右目の視力が恐ろしく低くなる瞬間があって(視野欠損?と焦ることもあるけれどどうやらそうではないらしく)、しばらくしたら戻るんだけれど、ちょっと怖くなっております。やっぱりブルーベリーとかなんか考えようかな(と、夜中の怪しい通販番組に食いつきそうになる^^;)。

『今までの生活に戻れるとは考えない方が良い』という話。
そもそも経済というのは根本的に「膨大なムダ」で世の中を廻している仕組みですからね~自由経済が根本にある世界では、このムダがないと世の中回らないのですね。ミニマムな生活がいいというのは理屈では分かりますが、それを本当にやると、食べていけない人たちが増えて大変なことになるし、でもこんな危機は大きな歴史の中では初めてではないから、それぞれの場面で何とか乗り越えてきたわけで、どういう形でかは状況は前に進むとは思うんですけれど、それが私たちが思っている「前進」かどうかは別問題ですよね。どうランディングできるのか……
私も、伝統産業の多くがもうもたないだろうなと思うので、複雑な気持ちです。大手の和楽器屋さんも倒産してしまったし、経済が回らないならミニマムで生活したらいいとは簡単には言えないです。野球もね~。もう屋外なんだから、そんなちまちまじゃなくても、と思うけれど、ここで何かあったらまた振り出しに戻るし。
ライブとか、本当にどうなるんでしょうね。大きなホールとかが倒産したら嫌だなぁ。飛行機とか交通手段も、利用する人が減ったら、安全性とか確保できるのかって心配になるし。嵐もラストイヤーだったのになぁ。

もとを正せばたかがコロナのくせに~とか言いながらも、出来る限り注意を払いながら生活するしかないですもんね。
でも、今回のことで思ったけれど、日本人ってもともと距離を取るのが比較的得意な民族性なので、こんな程度で済んでいるのかも知れませんね。感染症の基本は隔離ってのは、SARSの時にも話題になっていましたから。
果てしない戦いだなぁ。そして、感染症には必ずしも勝てるとは限らないってこと、改めて分かっておくべきだということですよね。

そうそう、『Master KEATON』、limeさんもお好きなタイプの話だと思いますよ。ぜひご一読を!
limeさんも、お身体お気をつけて!
コメントありがとうございました!!

彩洋→limeさん #nLQskDKw | URL | 2020/07/12 21:57 [edit]


TOM-Fさん、ありがとうございます(^^)

私の方は、実は『YAWARA』は全部読んではいないのですよ。こちらは、たまたま連載中に、職場の先輩がビッグコミックを何時も読んでいて、読み終わったのを放っておいてくれるので読み始めて、先輩が転勤になった後は、仕方ないので自分で買って読んでいたのでした。もちろん、コミックが出る度に買って、何度も楽しむという(^^)
部分読みでももちろんOKな話なので良いと思います! でも機会がありましたら是非全巻制覇を!
以前から、日本にしても世界にしても、医学の歴史と災害の歴史には興味があって、結構本を読んでいたので、この2つの疫病エピソードは、記憶に残ったのかも知れません。大きな歴史の流れの中でこういうのを捉えると、視点が変わっていいんじゃないかと思ったりしていたのでした。

天然痘に関しては、もともと牛痘が予防になるというのは知られていたし、ジェンナーがいわゆる「予防接種」を始める前から、家畜を扱う村などでは、民間療法的に牛痘をしていたんですよね。わざわざかかった人のところに行って、うつしてもらってたりしてたらしいので、だから実は、天然痘にかかって良性の菌種を持つ人がいたら、喜んでうつりにいったかもしれません(そういえば、子どもの頃って、まだ麻疹とか水痘とかおたふくとか、うつし合うのが当然的な感覚もあったような)。
医学というかたちがなかった頃から、いわゆる「広場の医学」というのがあって、病人についての情報交換は広場で盛んに行われてたとか。今のように病院任せの医療状況よりも、昔のほうが民間人の病気に対する感覚というのは鋭かったかも知れませんね。ただ、原因が分からないことが多かったというだけで。

祇園祭。本当に、人々は祈るしかなかった時代から始まったものなので、集まったらうつるとかってことよりも、とにかく邪気を払う!って感じだったとは思いますが、今となっては神さまに祈るよりも現実的な問題が一番大事なのは確かで。でも、祈るのもまた大事かもなぁと思ったり。先日、京都の人と話していたら「ちまき、毎年もらうのに、なかったら不安」って。そりゃそうだ! ちまきは売ろう! たくさん作ってネット販売して欲しいわ~。買う!  
何よりも、「正しいこと(かもしれないし、そうでもないかもしれないけれど)」を声高に言いすぎて、過剰になってしまわないように、気をつけなくちゃと思いました。まぁ、あまりにも無頓着なのはどうかとは思いますが。こういう事態になると、人間の品性が試される気がしますね。
コメントありがとうございました!!

彩洋→TOM-Fさん #nLQskDKw | URL | 2020/07/12 22:29 [edit]

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