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コーヒーにスプーン一杯のミステリーを

オリジナル小説ブログです。目指しているのは死体の転がっていないミステリー(たまに転がりますが)。掌編から長編まで、人の心を見つめながら物語を紡いでいます。カテゴリから入ると、小説を始めから読むことができます。巨石紀行や物語談義などの雑記もお楽しみください(^^)

 

☂[10] 第1章 同居人の留守 (10)(改)18禁? 

注:やっぱりたいしたことはなのですが、一応18禁でお願いします。


 身体の相性からだけ言えば、これほどにいい女は他にいなかった。
 深雪の一番深いところに自分のものが当たるのを感じると、そのまま意識も身体も砕かれていくような心地がした。
 真が無理矢理に興奮したものを押し込むと、深雪は始めこそ苦しげな顔をするが、この女の内側は欠けたものを待っていたかのように真の形のままに変化し、緩やかに、やがて激しく真の身体から全てを吸い取ろうとするように締め付けてくる。
 その合わさった感じの堪らないほどの感覚は、他のどの女性とも分かち合ったことのないものだった。

 だから、そこに愛情があるのかといえば疑わしいが、身体は彼女との関係に極めて満足していることを分かっている。

 真が今日は随分と溜め込んでいてそれを全て彼女の中に出したことを、深雪はその締め付けた粘膜の内で感じただろうと思ったが、気恥ずかしい気分にもならなかった。
 そういう部分で、真は、自分が心の内ではやはり深雪の事を商売のために身体を使う女だと思っているのかもしれないと感じる。
 真が射精した後でも、深雪の内側の襞は、まだ足りないというように貪欲に真を締め付け、最後の一滴までも吸い取ろうとしていた。

 その足の間の生き物とは別物のように、赤い唇が冷めた声を吐き出す。
「続きはホテルに戻ってから」
 駄々っ子を窘めるように深雪が言った。

 ある意味これでもう満足だった。けれども今日は帰っても一人だと思うと、深雪の言うままにホテルに行く気になった。今夜だけは、誰もいない左隣を感じるのは御免だと思った。
 適当に身繕いをして、タクシーでいつものホテルに向かった。

 タクシーの中から見る東京の町の景色は、今が夜なのか、いや夜なのだが、実際に存在しない異質な時間帯に思えて、真の中の生物としての時計を狂わせている。深夜にも関わらず溢れている色とりどりのネオンや車のライトが、人間の脳を壊していっているのだろう。
 いつか祖父が、木に昼夜問わずライトを当てていると、その木は弱ってしまって花を咲かせないと言っていたことがある。

 北海道の牧場の深夜は穏やかな闇だった。だが、遠くで啼いている何か生き物の叫びにも、果てのない彼方の闇から吹き込んでくる風にも、一度も恐ろしいと思ったことはない。それはアイヌ人の老人がいつも子どもの目を静かに見つめて話してくれたからだ。
 完全な闇というものはない。草も木々も星明りを微かに跳ね返し、昼間の太陽の光を内に湛え、闇の中でも僅かな温度を放出している。お前を守るカムイたちの声も聞こえるはずだ、と。

 だが、この町は違う。これほどに光に満ち溢れているのに、ここは昼も夜も、真の神経の脆いところを知っていて叩きのめそうとする。
 東京に出てきてから自分は弱ってしまっているだろう。
 窓ガラスに映る影が、まさに真の今の姿そのものだった。頼りなく、儚い。周囲の闇や光の加減で、時々姿かたちは曖昧にかすれて消えてしまい、また現れるときには元の形を失っている時もある。

 今はある意味で充たされているはずだった。
 毎日とはいかなくても、その男が傍にいて、手を伸ばせば届くところに温もりがある。生命の根源を支える食物も精神を休める水も、その男の手から与えられる。あるいは、呼吸する空気でさえも与えられているように感じる。真の命も身体も、今は全てあの男の手が支えている。真の身体から温度が失われるような日は、いつでもあの男が自分の体温を分け与えるように暖めてくれる。
 少しの間出掛けると言われただけで、細胞のひとつひとつが、人間としての生命の形を保てない。
 なんと情けなく、馬鹿げた存在なのだろう。

 ガラスの中に浮かんだ自分自身の曖昧な感情を、見ていられなくなって目を閉じた。
 いつの間にか深雪の手が真の膝を撫でている。その手は膝から身体の中心へ優雅に滑ってくる。
 頭の中にある全ての思考を否定したくて、何かから逃れるように深雪を抱き寄せ、着物の袷から手を滑り込ませて直に乳房に触れると、深雪は唇を真の顔に寄せてきた。
 タクシーの運転手がバックミラーを気にしているのを感じたが、それをちらりと見て、滅多にないことなのに、逆にその気になった。

 一体何が不安なのだろう。
 時々見る夢の中で、自分自身が梟のカムイに変わってしまうことなのか。夜中に鳴る電話と、異国の言葉が持つ激しい残響のせいなのか。あるいは、あの男が、月が綺麗だと呟くからなのか。

 あからさまな欲情を隠しもせずに唇を吸い合って、真は深雪の脚を開かせてそのまま着物の裾の下を弄った。そういう行為を他人に見られていることの恥ずかしさよりも、今自分が感じている正体不明の孤独感を知られるほうが、恐ろしいように思った。

 タクシーの運転手はゆっくり走っていては身体に毒とでも思ったのか、さっさと客を目的地まで運んだ。
 深雪はいつものようにたっぷりとチップと上乗せした料金を払って、着物でも慣れた仕草で車を降りる。ホテルのベルボーイが彼女のためにタクシーのドアを持って、お帰りなさいませ、と声をかける。
 そのいつもの光景をドラマのシーンのように見つめて、真は黙って深雪についてホテルのエントランスに向かった。タクシーの中での行為にも関わらず、その時にはもう冷めた気分に包まれつつあった。

 どうやら深雪はこのホテルに半分住んでいるような感じで、真も金を払ったことがない。
 もっとも深雪も、自分が部屋代を払っているわけではないと言っていたので、彼女のパトロンが出しているのかも知れなった。それが本当なら、真がここで彼女と情事を重ねていることは困ったことを引き起こさないのかと思う。割と上品で大きなシティホテルだし、部屋も二間続きのセミスィートのようで、安い値段とは思えない。

「お先にシャワーをどうぞ」
 深雪は真をシャワールームに追いやって、彼女自身はその間に着物を脱ごうとしていたようだった。

 重く湿った心を抱えたまま一人シャワーを浴びている時、真は意外にもまた欲情してくるのを感じた。
 俺はどうしたんだろうと思った。
 そして、急に自分の手でそれを慰めたい気分になった。外に女が待っているのにどうなってしまったのか分からないまま、自分のものに手を触れた瞬間、高校生の時以来滅多に味わうこともなかった、痛みとも快感ともつかないものに襲い掛かられて、何度か手で扱いただけで簡単に昇り詰めてしまった。

 射精した瞬間、自分の五感に触れていったものに震えた。
 大和邸の主人の寝室の大きなベッドに広げられたサテンのシーツの手触り、不思議な媚薬のような油絵具の匂い、肌に触れていた冷たい銀の指輪の感触、自分を見つめている深い青灰色の瞳、舌の先に吸いつく甘い唇の熱さ、時々耳元に囁かれる異国の音楽のような暖かい言葉、そういったものが遠い昔のことのはずなのに、一瞬にこの身の上に蘇った。

「真ちゃん?」
 妙な記事を読んだせいだと思ったし、吊広告のせいだとも思った。あんな表情でなく、もっと特別な個人的な表情を自分は知っていると思いたかったのだろうか。それを思い出すことで、正体不明の孤独感から逃れられると信じていたからだろうか。
 シャワーから出てベッドに入った後、何を察したのか、深雪は何も求めず真を抱き締めてくれていた。





実家に帰ったら、恐ろしく年季が入ってしまった本がたくさんあります。
姪が私の部屋を使うので、整理してくれと言われて見てみたら…

こんな本も読んでいたのか、と思うような本がゴロゴロ。
(プリンスマルコシリーズとか、火星シリーズとか、ロバート・ハインライン、徳川家康などなど!)
漫画も含めて。

大事な本はもともと持ってきてあったのですが、実家に取り残された本の中から、全部はとても無理なのですが、いくつか持ち帰りました。

佐藤さとる『だれも知らない小さな国』
竹宮恵子『ジルベスターの星から』『ロンド・カプリチオーソ』『変奏曲』『地球へ…』
『デューン・砂の惑星』シリーズ

時々、自分の読書遍歴を振り返ると、まったく自分が覚えてもいない本が出てきて、びっくりしますね。
一体、中学・高校のころの自分は何を思ってこの本を読んでいたのだろう。

懐かしくて、ちょっとこっぱずかしい気も致します。

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Category: ☂海に落ちる雨 第1節

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