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コーヒーにスプーン一杯のミステリーを

オリジナル小説ブログです。目指しているのは死体の転がっていないミステリー(たまに転がりますが)。掌編から長編まで、人の心を見つめながら物語を紡いでいます。カテゴリから入ると、小説を始めから読むことができます。巨石紀行や物語談義などの雑記もお楽しみください(^^)

 

【物語を遊ぼう】7.竹宮恵子『ジルベスターの星から』 

私の漫画遍歴はどちらかというと貧弱なのですが、その中で竹宮恵子さんには大きな影響を受けたような気がします。
もちろん、あの時代(!)ですから、萩尾望都さん池田理代子さんなど、そうそうたる大作家さんがおられて、どの作家さんにも強い影響を受けているのですが……
そもそも私たちの世代、日本の歴史は大河ドラマ、世界の歴史は漫画で学んだわけですし。

それはともかく、思えば、事の起こりは『キャンディ・キャンディ』ですよ!
私の『そう簡単に物事はうまくいかない感覚』の根源は。
なかよし、なんて可愛らしい少女漫画の本に連載されていて、目もおっきくてキラキラ、いかにも少女漫画という顔をしていながら、中身と言えば、相手役の男の子はすぐ死んじゃうわ、喧嘩しながらもやっと気持ちの通じあった恋人は他の女にもっていかれるわ(しかもその女も結局は悪い人間じゃないところがつらい、しかもラストのほうで!)、結果的には老人と思っていたあしながおじさんが結構若かったという下りで、ま、いずれくっつくんだろうと予測されて終わるわけだけど……
読んでいる小学生はやっぱりテリーとのHappy Endを望んでいたはずなのに!
……幼心にびっくりした展開だった。
ただ、あの時、物語って面白い、と思ったのも事実。やられた!って感覚かもしれません。

そして、さらに追い打ちをかけたのが、マジンガーZ(アニメですが)。
最終回、負けて終わってしまった。
あれはいったい何だったのだろう。最後の最後に正義が勝つとは限らない!って話?
しかも、続きで出てきた新しい主人公がどうにもいけすかない。

今でこそ仮面ライダーもロボットものも複雑で、敵も味方もそれぞれ事情があるってのは当たり前になってるけど、あの頃、ちょっと子供心に傷ついたりしました。
でも、あの頃、確かに暗いアニメは多かった。
キャシャーン、デビルマン、などなど。でもそれは設定の暗さであって、最終回にいきなり負けるのはどうかと思う。

さて、また脇道でしたが、竹宮恵子さんのこと
実は、握手してもらったことがある唯一の漫画家さんなんです。
サイン会に行って、登場人物のマスコットを作って持って行って、けなげなファンでした。
だれのマスコットだったか……それは私の大好きな漫画『変奏曲』のエドアルドくんだったはず。

一番好きな作品は、と聞かれたら、二つで迷うけれど…『変奏曲』『地球へ…』と一応答えている。
もちろん、本当に好きなんですけど…
でも、最も好きな作品は多分、だれも知らない、あるいは覚えていないかもしれない短編なのです。

『風と木の歌』であの当時、漫画界に嵐を巻き起こしたと言っても過言じゃない竹宮さんですが、実は竹宮さんの本領が発揮されるのはコメディじゃないかと今も思っている。
それは、しばらく漫画から離れていた私が、ものすごく久しぶりに竹宮さんの漫画を手に取って、本当に面白いと思ったのは『私を月まで連れてって!』で、これを読んだとき、これこそ竹宮恵子さんだわ、と思った。
ユーモアのセンスが抜群。こじゃれたユーモア。
もしかして、私の中で『変奏曲』も『地球へ…』も抜いたかも、と思いました。
これは本当におすすめ。

さて、私の愛する短編をご紹介します。
この間、アマゾンで検索しました。
もう売ってないんじゃないかと。
そうしたら短編集の中にありました。

『ジルベスターの星から』
ジルベスター(これは私の持っている古い本)

演劇部だった私は、実はこれを何とか舞台でやりたいと思った。
(しかし実現しなかった。宇宙戦艦ヤマトと赤川次郎さんの作品はやったんだけど…それにしてもなんて画期的な中学生だったんでしょうか! 30年ほど前? え? いやはや、自由な学校だった)
でも、この世界がとても愛しく思えて、そのまま大事においておくことにした。

今でも、読むと、そこはかとなく心が温かくなる。

放射能で汚染され、ドームの外には出られない未来の地球。
宇宙パイロットになる夢を持った少年、アロウのもとに幽霊のような少女とも少年ともつかない子ども(ジル)が現れる。それは遠い星、ジルベスターから送られてきたテレパシーが作った映像。
その辺境にある星は、汚染された地球から移民団が移り住んだ星なのです。
ジルはアロウに、ジルベスターがどんなに素敵な星か、どれほど夢のある場所か、そしてラベンダーの空がどれほどに美しいか、話して聞かせる。
時には意見が合わないこともあったけれど、語り合いながら夢を紡いでいったのです。
いつかジルベスターを見たい、その気持ちがアロウを動かし、優秀なパイロットになった彼は、周囲が進めるエリートへの道を断ってでも辺境の星ジルベスターへ行きたいと願う。
しかしある時、依頼していた調査の返事が返ってくる。
ジルベスターでは宇宙線の影響で子どもが育たず、10歳前後で死んでしまう、移民は失敗だったと。
ジルはそこにいるのになぜ。
どうしてもこのままにしておくことはできない。この目で確かめなくては。
アロウは、恋人を置いて、ついに辺境の土地、ジルベスターへ旅立った!
そこでアロウが見たものは、荒廃した灰色の土地、まったく人の姿もない枯れた土地、白い墓碑。
いったいジルはどこに……
そして、アロウの恋人、ヴェガの驚きの行動とは!

古い漫画なのでネタバレしてもいいのかしら。
でも、読んでほしいです。たった50Pに込められた本当に深く美しい物語。
短い中に出てくる登場人物の魅力的なこと、そして何より、描かれた世界の美しさ。
物語って、美しいことが大事なんだと思わせてくれる。
『美しい』って使い古された言葉だけど、ある時、村下孝蔵さんの故郷を歌った『夕焼けの町』を聞いて、あぁ『美しい』ってなんて素晴らしい言葉かと思った。
素直に使うと、そして心を込めて語ると、本当に伝わる言葉だと。
修飾語で飾り立てなくても、心を込めて、そのまま言えばいい。

背景に流れているリルケの詩が心に触れます。

だれがわたしにいえるだろう
わたしのいのちがどこまで届くかを……


竹宮恵子さんは、私にクラシック音楽の素晴らしさを、そしてロルカやリルケ、ヴェルレーヌの詩の美しさを教えてくださった漫画家さんです。
この切り取られた詩の数行が、本当に物語の中を泳ぐように流れている。

もしかしていつかチャンスがあれば、やっぱり私はこの物語を三次元の映像で見たいと思うのです。
映画? あるいは舞台? それとももっと違う何か。
いえ、やっぱり私の心の中の世界に置いておくほうがいいのかしら。
私が物語を語るとき、いつも支えにしているいくつかの作品のひとつ。

竹宮恵子さんのもう一つ、素晴らしい作品は『ロンド・カプリチオーソ』です。
スケートの話ですが、兄弟の葛藤がたまらなくて。
おかげさまで、拙作にはやたらと兄弟葛藤が出てくるようになってしまいました。
そしていつも私は、弟の才能や自由さに嫉妬して苦しみながらも弟を愛する兄貴の味方なんですよね…
またいつかご紹介します。

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