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コーヒーにスプーン一杯のミステリーを

オリジナル小説ブログです。目指しているのは死体の転がっていないミステリー(たまに転がりますが)。掌編から長編まで、人の心を見つめながら物語を紡いでいます。カテゴリから入ると、小説を始めから読むことができます。巨石紀行や物語談義などの雑記もお楽しみください(^^)

 

☂[15] 第2章 同居人の入院(2)(改) 18禁?/ ラブホ談義? 

注:ビデオのシーンですが、一応18禁でお願いします。


 一瞬、記憶の網膜の上に蘇ってきた光景を真は必死で確かめようと思ったが、湯気のせいなのか、記憶にかかった靄のためなのか、はっきりとは思い出せなかった。

 あれは去年の秋だった。
 夕方にいきなり事務所にやって来た同居人に引きずられるようにして、新潟に連れて行かれた。一体何事かと聞けば、急に旨い酒が飲みたくなったから付き合え、という。

 同居人にはそういう、言い出したらきかないところがあって、時々他人の都合を考えずに行動する。
 もっともその対象になっているのはほとんど真なのだが、全く意見も都合も聞かずに強引に真をどこかへ連れ出す。それに付き合ってやらないと、子どものように不機嫌になることもあるし、第一、あまりにも力関係がはっきりしているからかもしれないが、真のほうに選択権がないことが多い。
 一時竹流がマンションに預かっていた高遠賢二も、居候したての頃はその唐突な強引さに面食らっていたようだが、それが相手のテンポだと分かると、いや何より、そのお蔭で本当に旨いものに出会えると分かった後では、何も言わなくなったどころか、その強引さを歓迎するようにすらなった。
 賢二のように、あの強引さには屈服してしまうのがいいに違いない。

 新潟に着いたのは十時前で、それから旨い酒と魚を味わった後、車を運転するのは不可能で、時間が時間だけに、気が付けば海に近いラブホテルに泊まることになっていた。
 平屋のラブホテルは別荘のように部屋が立ち並び、各部屋には大名の名前が並んでいて、案の定ホテルの名前は『大名屋敷』で、車はそれぞれの部屋に横付けできるようになっている。
 部屋に入ると、先に風呂を使えと言われた。竹流はその間にフェラーリの具合を確認しにいっていたのかもしれないが、部屋にはいなかった。真が風呂から上がってベッドに潜り込んだ後で、竹流は風呂に入っていたようだが、こういうホテルにありがちなことに風呂はガラス張りで、ベッドからも中の様子が微かに分かる造りになっている。

 もちろん、部屋は薄暗かったし、バスルームの照明も同様だった。
 竹流の背中をまともに見たわけでもないし、大体そんなものをじっと見つめていたりなどしたら、後で墓穴を掘るのは目に見えていた。
 ガラスの向こうの湯気に煙る薄暗いバスルームに浮かび上がる同居人の身体は、その細部はともかく、昔と変わらずに張り詰めた確かな力強さを感じるもので、今思い出しても記憶の中のその背中には翳など全くなかった。
 真は深くベッドに潜り込んで、とにかく同居人が風呂から上がってきて、真につまらないちょっかいをかけてくる前に寝てしまおうとしたが、それは無理な相談だった。

 竹流は確かに少し酔っ払っていたかもしれない。
 ベッドに入ってくると、頭の上のボードのスイッチをいじって、部屋の明かりを落とし、何を思ったのかテレビのスイッチを入れた。突然、何の脈絡もなく、絡み合う男女が画面に登場する。
 ラブホテルに配信されてエロビデオを一日中流しているチャンネルだ。

『あぁん……、あ、あ…、もっと、もっと……、あぁ、イク、イク、いっちゃう』
 明らかに芝居がかった声が、はしたないほどの音量で耳に飛び込んできた。
 真は思わず同居人を振り返り睨んだが、彼は音を下げようともしない。

『この売女め、さっきまでのイヤイヤはやっぱり嘘だな。お前のここはぐちゃぐちゃで厭らしい音をたてているぞ。ほら、後ろの穴まで濡れてやがるな。助平な身体だ』
 同じように芝居がかった男の声と同時に、同居人が、背中を向けて丸まった真を後ろから抱き締めてきた。

 真は再び同居人を振り返り、その青灰色の目を見る。
 同居人は真ではなくテレビの画面を見つめている。
 真がきまり悪くテレビのほうへ視線を戻すと、がっしりした中年の男が、細身だが胸だけは極端に大きい若い女の膝を深く折って、濡れた別の穴に女の蜜で濡れた男根の先端をあてがっていた。男はそのままそれを後ろの狭い穴にねじ込み、激しくピストン運動を始めた。女は例の如く芝居がかった悲鳴を上げて、乳首の勃った乳房を揺らしている。

『どうだ。アナルは初めてか』
『許して……、あ、あ、いやぁ、あ、ん……、いい、あぁ、もっとぉ』
『はぁ、はぁ、こっちもいいぞ、前の穴よりいい締まり具合だ。う……、出そうだ、中で出すぞ』

 真は身体を強張らせた。その反応を敏感に感じ取ったのか、同居人は真の耳に唇を押し当ててきて、舌を差し入れてくる。
『酔ってるのか』
 拒否をするつもりで呟いた声は擦れて、かえって厭らしかった。
 飲みすぎた、と同居人は呟いたが、声はしっかりしていた。
 画面の中の男女は更にヒートアップしている。
 その大音響の喘ぎ声に紛れるように、同居人は真の耳朶を噛んだ。

『しようか』

 耳に熱い息と共に囁かれた言葉に、真は驚くほど敏感に反応した。
 同居人の手がガウンの中に差し入れられ、しばらくの間、その薬指に嵌められた指輪の冷たい感触が真の胸を弄っていた。指先は、真の肌、筋肉をひとつひとつ確かめるように蠕き、首筋に当てられたままの唇からは熱がそのまま伝わってくる。
 こんな形で触れられたのは、一体どれくらい久しぶりのなのか、と真は思い、目を閉じて欲情に身体を開放していいものかどうか躊躇っているうちに、同居人の指の動きは少しずつ曖昧になっていった。
 やがて真のガウンの腰紐にかかったまま、手は動きを止めてしまう。
 真は振り返り、同居人の顔を見つめた。同居人はもう目を閉じて、微かに寝息を立て始めている。

『するんじゃないのか』

 真はとりあえず呟いてみたが、寝ていたわけでもなかったのか、同居人は真を抱き寄せた。そのまま頭を抱いて、真の耳元に囁く。

『お前、奈落の底まで俺に付き合う気があるか』

 返事をした記憶はない。というよりも、同居人はそのまま本当に眠ってしまったようだった。
 真はテレビ画面の中で第二ラウンドに突入して縺れ合っている男女にわけもなく腹が立ってきて、同居人を押しのけて頭の上のスイッチを切った。

 彼が酔っていなかったら、することをして、その背中にも触れて、そしてあの問いかけに返事をしていたのだろうか。いや、酔っていたからこそ、同居人はわざとテレビなどをつけて、あんな言葉を投げ掛けてきたのだろう。
 答えを聞きたくなかったのかもしれない。

 真は不意に自分の手を見つめた。
 途端に、エレベーターの振動が現実のものとして身体に響いてきた。
 俺は何に酔っているのだと思って、真は各駅停車のエレベーターの数字を見上げた。

 八階でエレベーターを降りて、会話が他人の耳に入らない状況になると、添島刑事は話を続けた。
「新しい傷は全てまともとは言いがたい弾傷や刃物の傷。本人は意識が戻った途端、ヤクザの抗争に巻き込まれたって言うの。そんな情報は全くなかったし、どう聞いても嘘は見え見えなのに、被害者が何故怪しまれなきゃならないんだ、の一点張り」

 真は添島刑事の言葉に一瞬刑事のもの以上の何かを感じたが、それが何かは分からなかった。
 廊下は随分と先まで続いているように見えたが、それはT字になった突き当りが窓になっていて、そこから溢れこむ光が、ここが病院の廊下であるという現実を消し去っているからだった。

「死にかかってたことはともかく、十分凶悪な事件に巻き込まれたように思えるわ。誰が見ても暴行を受けたようにしか見えない。あんなに強運で屈強な男がそういう目に遭うからにはそれだけの理由があるんでしょう」
 そう言って、ある病室の前に立つ警官から敬礼の挨拶を受けると、添島刑事は立ち止まり真を振り返った。真も足を止める。

「あなたは善良な市民ね」
「何故?」
「大和竹流を拘束する理由はないけど、あなたに彼を預けるわ。彼はどうしてもしゃべる気はないみたいだけど、誰にやられたのか、あなたが聞き出して知らせて頂戴」
「それは警察の仕事でしょう? それに病院が不審な怪我人がいると通報したんだとしても、本人が被害届を出す気がないんだとしたら、逆に、あなた方が動いている理由は何です? 捜査一課ってのは、どういう理屈です?」

 添島刑事は一つ息をついたが、真の質問には答えなかった。
「尋常じゃない怪我、それに弾傷と思われる傷痕だって言ったでしょう。 それに、あの男が一筋縄ではいかないことは、あなたが一番よく知ってるんじゃないの」

 結局、添島刑事はそれだけ言うと、ノックをしたものの、中からの返事を待たずに引き戸を開けた。
 真は僅かに躊躇してから、後に続いた。

 本当は『背中の火傷の瘢』にまだ引っかかっていた。

 雑誌の件でもそうだったが、自分が一番彼の身近にいる人間だという自負心があったし世間もそう思っているはずのに、正確な年齢も誕生日も、ましてや背中の火傷なんてものも知らない。
 一緒に住み始める前にも同じような不安な気分になったことがあった。あの時、ある人が言った言葉を今も思い出すことがある。

 あなたは彼のことを知りたいの? それとも彼に傍に居て欲しいの?

 親に捨てられた自分を生かしてきたものが本当は何だったのか、よく分かっているだけに、こういう事があると傍に居るだけでは何の役にも立たないと思い知らされる。女だったら、傍にいるということだけで足りたかもしれないが、それだけでは不安になる。知らないことはそのまま不安に繋がった。

 部屋は個室で、扉を開けて入ると、右手に洗面台と電気調理器具の置かれた小さな流し台が備え付けてあった。その向かいの扉はトイレのようだった。奥が部屋になっていて、ベッドの足元だけが見えている。
 黙って添島刑事についていくと、ほんの少しだけ上体を上げたベッドで、真がよく知っている男が横たわっていた。






ちなみに、当時は今のように通常のビデオもDVDもケーブルで見放題の、なんて物はありませんでしたが、ラブホにだけ特別配信されていたエロ番組があったそうで、真と竹流が見ていたのはそれです。
しかし、この二人、本当に『やっちゃえ!』って思うけど、基本ニアミス(一応^^;)

少しだけ、ラブホ話?(期待しないでください、健康なラブホ話?)はコラムへ。

さて、背景や舞台に登場する『実在もの』。
物語に信憑性、それっぽさ、を与える詳細を描きこむために必要な小道具や舞台背景。

今回の場合、それはこの大名屋敷、というラブホ……^^;
このお話では新潟になっていますが、実際に私が見たのは東尋坊の近くだったと記憶している。
平屋造りで、全ての部屋が離れ形式、戦国大名の名前付き。車は部屋に横付け。
田舎って土地があるからすごい贅沢な感じ。

ま、個人的な事情は置いといて、田舎町のラブホテルには、本当にびっくりするようなものがありまして。
今はずいぶん違っているのでしょうが(行かないのでわからない…でもうちの近所のラブホはあんまり変わってないなぁ。でもそういえば、ご飯付きになってる)、あの頃、いかにも『昭和』という、無意味に凝ったホテルがあったりした。

そこで懐かしく思い出すのは、『北の国から』で純がシュウちゃんと(だったかな、記憶違いかも)ラブホテルに入るのに、混んでいて順番待ちのため、車で並んでるシーン。
何だかHするためだけにラブホの前に並ぶって、変なシーンなんだけど、すごく昭和で、すごく純粋で、何となくそのシーンに惚れ惚れした。
だから、真の叔父の弘が(浦河の牧場のオヤジになっている)、学生時代に彼女とラブホに並んだってエピソードに使ったりした。

もう一つ、結構気に入っているBL漫画『キャッスルマンゴー』
これも、ちょっと昭和なラブホが舞台。
ラブホの跡継ぎの高校生と、映画監督?の恋物語。

キャッスルマンゴー 1 (MARBLE COMICS)キャッスルマンゴー 1 (MARBLE COMICS)
(2011/04/20)
小椋 ムク、木原 音瀬 他

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あれ、何の話だっけ? ラブホ談義になっている…
でも語るほど知識はありません^^;
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Category: ☂海に落ちる雨 第1節

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